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  • 特許-すべり軸受およびその製造方法 図1
  • 特許-すべり軸受およびその製造方法 図2
  • 特許-すべり軸受およびその製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】すべり軸受およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/20 20060101AFI20240409BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20240409BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240409BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F16C33/20 Z
F16C33/20 A
B22F3/105
B33Y10/00
C22C9/00
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018146635
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2019044959
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】10 2017 119 728.1
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598113922
【氏名又は名称】レンク・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ヘンチュケ
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト・ピンネカンプ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ウンガー
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-262568(JP,A)
【文献】特表2016-513551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0138652(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014217570(DE,A1)
【文献】特開2016-108600(JP,A)
【文献】特開平11-043743(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051163(WO,A1)
【文献】特表2016-520718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/20
B22F 3/105
B33Y 10/00
C22C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料の軸受基体(2)が提供され、
非金属材料のすべり軸受層(4)は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から製造され、
a)前記すべり軸受層(4)は、中間層(3)を介して、前記軸受基体(2)に適用されており、
前記中間層(3)は、SLMにより、SLM中間層として形成されており、
前記金属材料の前記中間層(3)は、オーステナイト鋼または金属合金から製造されており、
前記非金属材料の前記すべり軸受層(4)が、その上に溶融またはその内に溶融することによって前記中間層(3)に塗布されるか
又は
b)前記すべり軸受層(4)は、前記軸受基体(2)に直接的に適用されており、
前記軸受基体(2)は、SLMにより、SLM要素として形成され、
前記金属材料の前記軸受基体(2)は、オーステナイト鋼または金属合金から製造されており、
前記非金属材料の前記すべり軸受層(4)が、その上に溶融またはその内に溶融することによって前記軸受基体(2)に塗布される
ことを特徴とする、機械すべり軸受を製造するための方法。
【請求項2】
前記すべり軸受層(4)に隣接する前記軸受基体(2)または前記すべり軸受層(4)に隣接する前記中間層(3)は、すべり軸受層(4)の材料がかみ合う輪郭(5)を有していることを特徴とする、請求項1に記載のすべり軸受を製造するための方法。
【請求項3】
前記輪郭(5)は、アンダーカットである、請求項2に記載のすべり軸受を製造するための方法。
【請求項4】
前記輪郭(5)は、ダブテール状またはハニカム状またはワッフル状または円錐形に形成されていることを特徴とする、請求項2または3に記載のすべり軸受を製造するための方法。
【請求項5】
付加製造法による前記軸受基体(2)および前記中間層の製造と並行してまたはそれに連続して、前記すべり軸受層(4)が導入されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のすべり軸受を製造するための方法。
【請求項6】
前記軸受基体(2)または前記中間層(3)は、金属合金、すなわち、0.5重量%から1.2重量%のCr、0.03重量%から0.3重量%のZrおよび残余のCuを有するCuCrZr1合金から製造されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のすべり軸受を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すべり軸受およびすべり軸受を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実務上知られているすべり軸受は、典型的には金属材料の軸受基体を含み、これは中間層を介して直接的または間接的に同様に金属材料からなるすべり軸受層が適用されている。実務上知られているすべり軸受では、軸受基体は、典型的には鋼から製造され、すべり軸受層は典型的にはホワイトメタルまたはブロンズで製造される。実務上知られているすべり軸受では、ホワイトメタル材料またはブロンズ材料は、すべり軸受層の良好な接着を保証するために、軸受基体内に、または軸受基体に適用された中間層内に、スプレーされる。
【0003】
実務上知られているすべり軸受は、所望の摺動特性および所望の耐摩耗性に関して良好な特性を有しているが、それらの特性をさらに改善する必要がある。この理由のため、金属材料のすべり軸受層を非金属材料の滑り軸受層で置き換える試験が既に行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、すべり軸受層のための非金属材料が所望のすべり軸受の特性を提供しないか、またはそのようなすべり軸受を製造する方法が高価すぎるという問題がある。このことから出発して、本発明は、改善された特性を有する新たな種類のすべり軸受、およびすべり軸受の簡単な製造方法を作り出すことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に記載の、または請求項7に記載のすべり軸受を通して、および請求項9または10に記載のすべり軸受の製造方法を通して解決される。
【0006】
金属材料の軸受基体または金属材料の中間層は、請求項1に従って、オーステナイト鋼から、または例えばCu、Cr、Zrの金属合金から製造される。すべり軸受層は、非金属材料、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から製造される。そのような基体、そのような中間層およびそのようなすべり軸受層を有するすべり軸受は、所望のすべり軸受の特性を有するだけでなく、そのようなすべり軸受はまた、わずかな支出で製造することができる。
【0007】
優先的に、軸受基体または中間層は、金属合金、すなわち、0.5重量%から1.2重量%のCr、0.03重量%から0.3重量%のZrおよび残余のCuを含むCu、Cr、Zr1合金から製造される。特に、軸受基体または中間層がそのような銅-クロム材料から製造される場合、高い熱伝導率を有する有利なすべり軸受の特性を提供することができる。すべり軸受は特に、生成的製造方法(generative production method)の助けを借りて選択的レーザー溶融(SLM)を介して容易にかつ有利に製造することもできる。
【0008】
優先的に、すべり軸受層に隣接する軸受基体またはすべり軸受層に隣接する中間層は、すべり軸受層の材料がかみ合う輪郭、特にアンダーカットを有している。このようにして、非金属材料のすべり軸受層の中間層または軸受基体への改善されたフォームフィット接合を達成することができる。
【0009】
請求項7によれば、特にすべり軸受層が中間層を介して軸受基体上に直接適用されるとき、中間層はSLM中間層として形成されるが、特にすべり軸受層が軸受基体に直接適用されるとき、軸受基体はSLM要素として形成される。
【0010】
本発明の好ましいさらなる展開は、従属請求項および以下の説明から得られる。本発明の例示的な実施形態は、これに限定されることなく図面を用いてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の態様によるすべり軸受からの模式的な抜粋を示す。
図2図1の詳細部IIを示す。
図3】詳細IIに代わる図1の詳細部IIIを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、すべり軸受およびすべり軸受の製造方法に関する。
【0013】
図1は、本発明によるすべり軸受1の好ましい例示的な実施形態の構造を非常に概略的に示しており、図1のすべり軸受1は、金属材料の軸受基体2と、軸受基体2に適用される同様に金属材料の中間層3と、非金属材料のすべり軸受層4とを含み、非金属材料のすべり軸受層4は中間層3に適用されている。
【0014】
軸受基体2に適用される中間層3は、金属材料の層、すなわちオーステナイト鋼または金属合金の層である。
【0015】
非金属材料のすべり軸受層4は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のすべり軸受層である。
【0016】
図1に示す例示的な実施形態において、中間層3はSLM中間層として形成され、これは選択的レーザー溶融を介して、従って生成的製造方法を介して軸受基体2に適用されている。
【0017】
ここで、中間層3は、すべり軸受層4の材料がそこへかみ合う、優先的にはアンダーカットの輪郭5をすべり軸受層4に隣接して提供し、図2において、アンダーカットはダブテール状の輪郭5によって提供され、図3において、アンダーカットは、円錐形の輪郭5によって提供されている。アンダーカットを形成するハニカム状、ワッフル状、格子状、または他の輪郭5はまた、中間層3の領域において、すべり軸受層4に隣接して形成することができる。
【0018】
ポリエーテルエーテルケトンまたはポリテトラフルオロエチレンから製造されるすべり軸受層4は、アンダーカット上で溶融またはアンダーカット内で溶融することによって、特にアンダーカット5の後ろでかみ合うことで、中間層3に優先的に適用される。
【0019】
金属材料から製造される中間層3は、金属合金、特に好ましくはCuCrZr1合金から優先的に製造される。
【0020】
CuCrZr1合金は、0.5重量%から1.2重量%のCr、0.03重量%から0.3重量%のZrおよび残余のCuを優先的に含み、0.08重量%まで最大限に許容可能なFeの添加物、0.1重量%まで最大限に許容可能なSiの添加物および最大許容0.2重量%までの他の添加物を有している。
【0021】
従って、本発明の好ましい例示的な実施形態において、軸受基体2に適用される中間層3は、選択的レーザー溶融を介した金属材料の、すなわちオーステナイト鋼または金属合金のSLM中間層として形成される。金属合金としてCuCrZr1合金、およびオーステナイト鋼として優先的にX5CrNi18-10合金が用いられる。いずれの場合においても、中間層3は、選択的レーザー溶融によって軸受基体2に適用され、すなわちすべり軸受層4の適用を促進する輪郭形成を受け、これらの輪郭5は特にアンダーカットを形成する。非金属材料のすべり軸受層4は、耐摩耗性材料、優先的に高温耐性プラスチック、例えばポリエーテルエーテルケトンまたはポリテトラフルオロエチレンからなり、中間層3上で溶融され、特に中間層3の輪郭5内に溶融または圧入される。
【0022】
図1から図3に示された例示的な実施形態とは対照的に、軸受基体2それ自体が、選択的レーザー溶融によってSLM要素として具体化されることが可能である。この場合、別個の中間層3は存在しないが、すべり軸受層3のすべり軸受材料、すなわちポリエーテルエーテルケトンまたはポリテトラフルオロエチレンは、SLM軸受基体2に直接適用され、SLM軸受基体2はそれから、すべり軸受層4に面する表面上に、特にアンダーカットを有する輪郭5を形成する。この場合、軸受基体は、例えばCuCrZr1合金のような金属合金から、または例えばX5CrNi18-10合金などのオーステナイト鋼から製造される。
【符号の説明】
【0023】
1 すべり軸受
2 軸受基体
3 中間層
4 すべり軸受層
5 輪郭
図1
図2
図3