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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】アルコール飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/06 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
C12G3/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018199684
(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公開番号】P2020065477
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真理
(72)【発明者】
【氏名】竹内 曜
(72)【発明者】
【氏名】関 勝之
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143213(JP,A)
【文献】特開2016-106537(JP,A)
【文献】特開2018-042526(JP,A)
【文献】特開2019-198282(JP,A)
【文献】特開2000-312580(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0189732(US,A1)
【文献】国際公開第2017/119354(WO,A1)
【文献】特開2015-192667(JP,A)
【文献】特開昭60-054664(JP,A)
【文献】特開2013-203911(JP,A)
【文献】特開昭58-053995(JP,A)
【文献】特開2002-125653(JP,A)
【文献】特開2015-084751(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104481(WO,A1)
【文献】Bhupesh C. Roy et al.,Extraction of Citrus Oil from Peel Slurry of Japanese Ctrus Fruits with Supercritical Carbon Dioxide,Journal of Applied Sciences,2005年,vol. 5, no. 8,pp. 1350-1355
【文献】Ash Gok et al.,Comparison of lemon oil composition after using different extraction methods,Journal of Essential Oil Research,2015年,vol. 27, no. 1,pp. 17-22
【文献】Determination of volatile organic compounds in English vineyard grape juices by immersion stir bar sorptive extraction-gas chromatography/mass spectorometry,FLAVOUR AND FRAGRANCE JOURNAL,2007年,vol.22,206-213
【文献】坂野保吉,壜詰蒸留酒のpHについて,容器に関する研究,第58巻第10号,1963年,67-70
【文献】Commercial-Scale Pulsed Electric Field Processing of Orange Juice,Food Chemistry and Toxicology,2003年,Vol.68,Nr.4,1265-1271
【文献】Free and Bound Volatile Compounds in Juice and Peel of Eureka Lemon,Food Science and Technology Research,2014年,vol.20,(1),1-8
【文献】Analysis of Volatile Components in Fresh Grapefruit Juice by Purge and Trap/Gas Chromatography,J. Agric. Food Chem.,1994年,vol.42,782-784
【文献】Volatile Composition and Biological Activity of Key Lime Citrus aurantifolia Essential Oil,Natural Product Communications,2012年,Vol. 7 (11),1523-1526
【文献】Strong Salted Lemon Flavour Spirit Drink,Mintel GNPD, [online], ID#4866569,2017年06月,[検索日:2023年3月24日],internet <URL: https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/4866569/from_search/zdhxMQHtxK/?page=1>
【文献】Lemon Tea Flavored Alcoholic Drink,Mintel GNPD, [online], ID#4409799,2016年11月,[検索日:2023年3月24日]internet <URL: https://www.gnpd.com/sinatra/search_results/?&search_id=cNBFduGaT7&page=0&search_type=products>
【文献】Lemon Beer,Mintel GNPD, [online], ID#564137,2006年07月,internet <URL: https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/564137/from_search/uKUmeQw4Yr/?page=1>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 1/00 - 3/08
A23L 2/00 - 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
日経テレコン
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非加熱果実エキスと、その濃度が30ppb以上1000ppb以下であるα-ピネンとを含有し、
pHが3.5以上であり、
前記非加熱果実エキスの濃度が0.005~10.0g/Lであり、
前記非加熱果実エキスが、加熱せずに凍結したレモン果実を液化炭酸ガスを溶媒として使用して0~30℃で抽出することにより得られるエキスである、アルコール飲料。
【請求項2】
前記非加熱果実エキスの濃度が0.005~5.0g/Lである請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
果汁を含有し、果汁含有率が5%(w/v)以下である、請求項1または2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
炭酸ガスを含み、ガス圧が3.0~4.0ガスボリュームである請求項1から3のいずれか一つに記載のアルコール飲料。
【請求項5】
アルコールの含有量が5体積%以上である請求項1から4のいずれか一つに記載のアルコール飲料。
【請求項6】
糖類を含有し、その含有量が5%(w/v)以下である請求項1から5のいずれか一つに記載のアルコール飲料。
【請求項7】
アルコール飲料の調製において、非加熱果実エキスをその濃度を0.005~10.0g/Lとして含有させること、α-ピネンをその濃度を30ppb以上1000ppb以下として含有させること、およびpHを3.5以上とすることを含む、後口のキレを損なうことなく飲みごたえを改善する方法であって、
前記非加熱果実エキスが、加熱せずに凍結したレモン果実を液化炭酸ガスを溶媒として使用して0~30℃で抽出することにより得られるエキスである、前記方法
【請求項8】
非加熱果実エキスをその濃度を0.005~10.0g/Lとして含有させること、α-ピネンをその濃度を30ppb以上1000ppb以下として含有させること、およびpHを3.5以上とすることを含み、
前記非加熱果実エキスが、加熱せずに凍結したレモン果実を液化炭酸ガスを溶媒として使用して0~30℃で抽出することにより得られるエキスである、アルコール飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルコール飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の酒類市場では、飲みごたえや刺激感が強く、また、低甘味あるいは甘味のない、いわゆるプレーン系、ハード・ストロング系と呼ばれるチューハイ飲料の需要が高まっている。一方で、飲みごたえや刺激感を求めつつも、飲みやすさも有するチューハイ飲料の開発も期待されている。
アルコール度数が高く、飲みごたえや刺激感の強いハード・ストロング系チューハイにおいて飲みやすさを付与するには、果糖ぶどう糖液糖などの甘味料を使用することが有効であるが、同時に、甘味料由来の風味の後引きにより、後口のキレが損なわれるのが課題であった。また、飲みやすさの付与のために果汁や果実エキスを使用することも有効であるが、果実の加熱殺菌による加熱臭が生じるために、後口のキレを損なう傾向にあった。
なお、後口のキレの改善に係わる発明としては特許文献1および2が、また、飲みごたえの改善に係わる発明としては特許文献3が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-192667号公報
【文献】特開2017-225404号公報
【文献】特開2016-106537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、後口のキレが損なわれることなく飲んだときの飲みごたえを改善できる新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鋭意研究の結果、本発明者は、アルコール飲料中に非加熱果実エキスとα-ピネンとを含有させ、pHを3.5以上とすることで、該アルコール飲料を飲んだときに後口のキレが損なわれることなく飲みごたえを改善(より強める)できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、α-ピネンと非加熱果実エキスを含有させ、pHの値を従来のチューハイ系アルコール飲料よりも高めの3.5以上とすることで、呈味のボリューム感を向上させ、飲みごたえを有するとともに、果実由来の加熱臭をもたらすことなく、従来と同程度またはそれより強い後口のキレを有するアルコール飲料の作製が可能となった。
【0006】
なお、本明細書において、飲みごたえとは、ボディ感ともいい、飲んだときにコクや重さのある風味があり、飲み込むときに喉に抵抗を感じられるような感覚をいう。飲みごたえがより強いと飲料を飲んだことをより強く実感できる。
また、後口のキレとは、飲用後の後味がスッとなくなるような感触であり、甘味、苦味、酸味、うまみ、塩味も含めて飲用後の後味がなくなっていく感覚をいう。後口のキレがより強いと後味がより速くなくなる。
【0007】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 非加熱果実エキスと、α-ピネンとを含有し、pHが3.5以上であるアルコール飲料。
[2] 前記非加熱果実エキスの濃度が0.005~5.0g/Lである[1]に記載のアルコール飲料。
[3] 前記α-ピネンの濃度が30ppb以上である[1]または[2]に記載のアルコール飲料。
[4] 果汁を含有し、果汁含有率が5%(w/v)以下である、[1]から[3]のいずれか一つに記載のアルコール飲料。
[5] 炭酸ガスを含み、ガス圧が3.0~4.0ガスボリュームである[1]から[4]のいずれか一つに記載のアルコール飲料。
[6] アルコールの含有量が5体積%以上である[1]から[5]のいずれか一つに記載のアルコール飲料。
[7] 糖類を含有し、その含有量が5%(w/v)以下である[1]から[6]のいずれか一つに記載のアルコール飲料。
[8] アルコール飲料の調製において、非加熱果実エキスとα-ピネンとを含有させること、およびpHを3.5以上とすることを含む、後口のキレを損なうことなく飲みごたえを改善する方法。
[9] 非加熱果実エキスとα-ピネンとを含有させること、およびpHを3.5以上とすることを含む、アルコール飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、後口のキレが損なわれることなく飲んだときの飲みごたえを改善できる新規な技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の1つの実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態はアルコール飲料に関し、非加熱果実エキスと、α-ピネンとを含有し、pHが3.5以上である。
【0010】
本明細書において、アルコール飲料とは、エタノールなどのアルコールを含有する飲料をいう。本実施形態のアルコール飲料において、アルコールの含有量は特に限定されず当業者が適宜設定することができるが、例えば1~10体積%とすることができる。また、本発明の構成を適用することで、5体積%未満である場合に適用したときと比較して、後口のキレを強める効果がより得られるため、アルコールの含有量が5体積%以上であることが好ましく、より好ましくは5~10体積%である。
アルコール飲料は通常、水にアルコール源となる酒(ベース酒)が配合されて製造される。ベース酒は特に限定されないが、例えば蒸留酒を挙げることができる。蒸留酒としては、ジン、ウィスキー、ブランデー、焼酎、スピリッツ、及び原料用アルコール等が例示でき、例えばこれらのうち1種または2種以上が本実施形態のアルコール飲料中に含有されるようにすることができる。
【0011】
また、非加熱果実エキスとは、果実の一部または全部を対象として抽出処理を行い得られた抽出物であり、抽出処理を開始してから製品(果実エキス)となるまでの間に実質的に加熱されないで製造された抽出物をいう。抽出処理に用いられる溶媒としては、水、アルコールのほか、液化された炭酸ガス(超臨界ガスを含む)などを挙げることができる。果実エキスの製造を行う温度は、好ましくは0~30℃、より好ましくは5~20℃である。
具体的な非加熱果実エキスを製造する方法は特に限定されず、例えば特開昭59-73002号公報や特開2007-229590号公報を挙げることができる。
【0012】
好ましい果実エキスの原料としては、生の果実、又は生の果実を冷凍した冷凍果実を使用する。これらは加熱されておらず、香味成分が減少又は変化していないので、原料として使用することで、果実の生のフレッシュな香味に優れた果実エキスを得ることができる。
【0013】
また、果実エキスを抽出する果実は、特に限定されない。例えば、レモン、ぶどう、桃、パイン、梅、リンゴ、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、シークァーサー、シトラス、みかん、およびチェリーなどが挙げられる。果実エキスは一種類が用いられてもよく、複数の種類が用いられてもよい。
【0014】
また、非加熱果実エキスとして市販されているものを用いるようにしてもよい。具体的には、湘南香料株式会社製の非加熱果実エキス(商品名:凍結レモンエキス)や、塩野香料株式会社製の非加熱果実エキス(商品名:テイストエキス)などを挙げることができる。
【0015】
果実エキスの含有量は、果実の種類や抽出方法等を考慮し当業者が適宜設定することができるが、0.005~5.0g/Lが好ましく、0.005~3.0g/Lがより好ましく、0.005~1.0g/Lがさらにより好ましい。果実エキスの含有量を0.005g/L以上とすることで0.005g/L未満である場合よりも飲みごたえをより強めることができ、また、5.0g/L以下とすることで、5.0g/Lより多い場合よりもエグ味、雑味をより抑えることができる。また、後口のキレをより強めることができる観点から、3.0g/L以下がより好ましく、1.0g/L以下がさらにより好ましい。
【0016】
また、α-ピネンとは、モノテルペンの1種である化合物であり、針葉樹(例えば、松)の針葉油又は柑橘類果実及びブドウ等の精油中に存在する香味成分である。α-ピネンにはR体とS体が存在しているが、本実施形態のアルコール飲料においては、R体、S体、あるいはラセミ体などのいずれであってもよい。なお、本実施形態において、αーピネンは、例えばヒノキ、松、及びジュニパーベリー(西洋杜松)から選ばれる原料から得られたエキスとして添加してもよいし、或いは、ジン等のα-ピネンを多く含有する蒸留酒等を添加することによって飲料に含ませるのでもよい。
【0017】
α-ピネンの本実施形態のアルコール飲料における含有量も特に限定されず、当業者が適宜設定できるが、より飲みごたえを強めることができるため30ppb以上が好ましく、また、500ppbより多い場合よりも後口のキレも強めることができるため、30ppb以上500ppb以下がより好ましく、50ppb以上250ppb以下がさらにより好ましく、さらにより一層好ましくは80ppb以上250ppb以下である。
なお、飲料中のα-ピネンの含有量は、例えば製造に用いられる原材料に基づき算出することができるほか、ガスクロマトグラフィ(GC)分析を用いて測定することができる。
【0018】
また、本実施形態のアルコール飲料においては、pHは3.5以上である。pHの値の調整は例えば公知の方法により行うことができ、特に限定されない。
【0019】
本実施形態においては、果実エキス、α-ピネンに加えて、本発明の課題を解決できる範囲で必要に応じて他の成分を適宜、アルコール飲料中に含ませることができる。
本実施形態の飲料において含有される他の成分としては、例えば、水の他、糖類や高甘味度甘味料などの甘味料、酸味料、香料、ビタミン、着色料、酸化防止剤、乳化剤、保存料、食塩、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤、増粘剤などの、飲料に通常配合される成分を含有することができる。酸度などは当業者が適宜設定でき、特に限定されない。
ここで、本発明の構成を適用することで5%(w/v)より高い場合に適用したときと比較してより飲みごたえを強める効果が得られるため、糖類を含有する場合にはその含有量が5%(w/v)以下であることが好ましく、さらに、4%以下であることがより好ましい。なお、本明細書において糖類とは、ブドウ糖、果糖、砂糖、乳糖、麦芽糖などの単糖類および二糖類をいう。
【0020】
また、本発明の構成を適用することで5%より高い場合に適用したときと比較してより飲みごたえを強める効果が得られるため、果汁を含有する場合には果汁含有率が5%以下であることが好ましい。
果汁とは、果実を破砕して搾汁又は裏ごし等をし、必要に応じて皮、種子等を除去した液体成分をいう。また、本明細書に係る果汁には、当該液体成分を濃縮したものや、これらの希釈還元物も含まれる概念である。
果汁が由来する果物については、例えば、柑橘類、バラ科植物の果物、ブドウ、パイナップル、グァバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、ライチ、パパイヤ、パッションフルーツ、ブルーベリー、キウイフルーツ、メロンなどが挙げられる。柑橘類としてはオレンジ、うんしゅうみかん、グレープフルーツ、レモン、ライム、柚子、いよかん、なつみかん、はっさく、ポンカン、シークワーサー、かぼす等が例示できる。また、バラ科植物の果物としてはアンズ、イチゴ、ウメ、サクランボ、スモモ、西洋ナシ、日本梨、ビワ、モモ、リンゴ、プルーン、ラズベリーなどが例示できる。例えばこれらのうち1種または2種以上の果物の果汁が選択されて本実施形態の飲料に含有されるようにしてもよい。
【0021】
果汁含有率とは、果実等の食用部分を搾汁して得られ、濃縮等の処理を行っていない搾汁(ストレート果汁)のBrix値または酸度を100%としたときの、相対濃度である。また、本明細書においてBrix値は、JAS規格に基づき、試料の温度(液温度)20℃における糖用屈折計の示度をいう。Brix値の測定は、公知の方法、装置を用いて行うことができる。また、酸度は、100g中に含まれる有機酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100g)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
果汁含有率をBrix値または酸度のいずれに基づいて算出するかはJAS規格に基づき果物の種類ごとに定められている。例えば、グレープフルーツ、モモやリンゴはBrix値に基づいて算出され、レモンの場合は酸度に基づいて算出される。果汁含有率をJAS規格のBrix値に基づいて換算する場合、果汁に加えられた糖類、はちみつ等のBrix値は除いて算出される。
【0022】
また、本実施形態のアルコール飲料は炭酸ガスを含むようにしてもよい。炭酸ガスを含む場合のガス圧については特に限定されず当業者が適宜設定できるが、飲みごたえを強めるため、ガス圧が3.0~4.0ガスボリュームであることが好ましい。
【0023】
なお、本明細書において、ガスボリュームとは、1気圧、20℃における容器詰飲料中に溶解している炭酸ガスの容積と飲料の容積比をいう。
ガスボリュームの値は、試料を20℃とした後、ガス内圧力計を取り付け、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)操作を行い、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、圧力が一定になった時の値として得ることができる。
【0024】
本実施形態のアルコール飲料は例えば、アルコールと、非加熱果実エキスと、α-ピネンと、その他必要に応じて含有される成分とを混合し、pHを3.5以上に調整するなどして製造することができる。
例えば、一態様として、アルコール源、非加熱果実エキス、α-ピネン、原料水、その他必要に応じて加えられる成分を混合して得られる飲料を挙げることができる。この場合、蒸留酒等のアルコール源に原料水を加えて希釈し、次いで当該希釈液に非加熱果実エキス(例えば、得られる飲料で0.01~1.0g/Lとなる量)、α-ピネン(例えば、得られる飲料で50ppb以上となる量)、および必要に応じて加えられる成分を添加するなどし、次いでpHを3.5以上に調整して飲料を調製すればよい。
添加する順序などは特に限定されず、当業者が適宜設定できる。上記の原料水は、水自体のほか、含有されるその他の成分の溶液等であってもよい。非加熱果実エキス、α-ピネン、その他必要に応じて加えられる成分について、これらは単独で添加されてもよく、また、他の成分との混合物として添加されるようにしてもよい。
また、炭酸ガス入りの飲料とする場合、上記希釈において原料水として炭酸ガスを含有する水(炭酸水)を用いる方法のほか、容器に充填する前に所定のガスボリュームになるようにカーボネーションを行うようにしてもよい。
【0025】
製造された本実施形態のアルコール飲料は、特に限定されないが、例えば容器に封入された容器詰飲料とすることができる。
容器への封入方法などは特に限定されず、例えば常法に従って行うことができる。
容器も公知のものを適宜選択して用いることができ、素材や形状など特に限定されない。容器の具体例としては、例えば、紙容器、透明又は半透明のビン、PETボトル等の透明又は半透明のプラスチック容器、スチール缶やアルミニウム缶等の金属缶などが挙げられる。
【0026】
以上、本実施形態の飲料においては、後口のキレが損なわれることなく飲んだときの飲みごたえが強められている。そのため、より嗜好性の高い飲料の提供に寄与することが可能である。
【0027】
また、本発明の一態様として、アルコール飲料の調製において、非加熱果実エキスとα-ピネンとを含有させ、pHを3.5以上に調整することを含む、後口のキレを損なうことなく飲みごたえを改善する方法も提供することができる。
【実施例
【0028】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0029】
<試験例1>
ベース液に非加熱果実エキスとα-ピネンを表1または表2に記載のとおり添加したサンプル(実施例および比較例のアルコール飲料)を作製し、10℃に冷却した。これらのサンプルを用い、訓練されたパネリスト3名による官能評価を実施した。試験例1において非加熱果実エキスの含有量はいずれも0.1g/L(3体積%)とした。また、各サンプルのpHは3.6とした。
なお、ベース液は、アルコール7体積%、クエン酸酸度0.3g/100ml、ガスボリューム3.3VOLのアルコール含有炭酸飲料とした。ベース液は甘味料および香料を含み、甘味料は果糖ぶどう糖液糖(含有量:3.2%(w/v))を使用した。また、含有される香料中にα-ピネンは含まれないことを予め確認した。
非加熱果実エキスは、凍結した生のレモンを原料として使用し、液化炭酸ガスを溶媒として使用して0~30℃の範囲内の温度(常温)で抽出された湘南香料社製の凍結レモンエキスを使用した。
【0030】
各評価用語に対する評価尺度は以下の5段階とした。
5:強い
4:やや強い
3:どちらでもない
2:やや弱い
1:弱い
本評価実施に先立ち、予備試験として、パネリスト全員に予め比較例1及び2のサンプルを提供し、パネリスト間での協議により、評価用語に対する認識と各評点の強弱(尺度)に対する認識を統一させた。
試験例1においては比較例2を対照(評価を上記の3:どちらでもない、とした)として用いた。
なお、以下に記載する各試験例は、それぞれ独立して実施した官能評価であり、各試験例において用いられた同一組成のサンプルであっても、それぞれの評価結果は異なる。そのため、異なる試験例における各サンプルの評価結果を比較するのは妥当ではない。
試験例1の結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
試験例1の結果から、α-ピネンを含有する実施例においては、後口のキレが比較例2と同程度以上の強さでありつつ飲みごたえが強いことが理解できる。また、実施例4においては実施例5よりも後口のキレがより強いことが理解できる。
【0034】
<試験例2>
α-ピネン:100~500ppb近傍の濃度をさらに細かく設定し(実施例6、7の追加。すなわち試験条件は試験例1と同様である)、官能評価を実施した。結果を表3に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
その結果、実施例3、7においては、飲みごたえと後口のキレの両方がより強いことが理解できる。α-ピネンを500ppb含有する実施例4においては、実施例3、7ほどではないが飲みごたえ、後口のキレが比較例2よりも強いことが理解できるが、実施例3、7よりもエグ味・雑味が感じられる結果となった。
【0037】
<試験例3>
表4に示すようにα-ピネン含有量を250ppb、非加熱果実エキスの含有量を0.01~10g/Lに調整した実施例8~13のサンプルについて、評価を実施した。ベース液、サンプルのpH、パネル、評価方法は、比較例1を対照として用いた以外は試験例1と同様とした。結果を表4に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
表4から理解できるとおり、非加熱果実エキスを含有する実施例8~13は比較例1と比べて、後口のキレが同程度以上でありつつ飲みごたえが強いことが理解できる。また、実施例11は、実施例12、13と比較して後口のキレがより強いことも理解できる。
【0040】
<試験例4>
アルコール飲料におけるpHの違いによる風味への影響を確認するため、官能評価を実施した。
試験例1で使用したベース液に非加熱果実エキスとα-ピネンを表5に示す含有量となるように添加するとともに、pHを各々3.6および3.4に調整した実施例14および実施例15のサンプル(アルコール飲料)を作製した。
なお、本試験では、上述の実施例14及び15の2サンプル間での比較を行い、それ以外の評価方法は試験1と同様とした。
結果を表5に示す。
【0041】
【表5】
【0042】
評価の結果、pH3.4である実施例15と比較して、pH3.6の実施例14の飲みごたえは強く、後口のキレもよい結果となった。