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特許7468989ポンプ装置の健全度評価方法、健全度評価装置及びポンプ設備管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ポンプ装置の健全度評価方法、健全度評価装置及びポンプ設備管理システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/10 20060101AFI20240409BHJP
   F04B 51/00 20060101ALI20240409BHJP
   F04D 11/00 20060101ALI20240409BHJP
   F04D 13/00 20060101ALI20240409BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240409BHJP
   G01N 21/954 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F04B49/10 311
F04B51/00
F04D11/00 101
F04D13/00 A
G01M99/00 Z
G01N21/954 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018208692
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020076342
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-06-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 和哉
(72)【発明者】
【氏名】木戸 光広
(72)【発明者】
【氏名】久永 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 高嗣
(72)【発明者】
【氏名】大寺 文也
(72)【発明者】
【氏名】森下 力
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】八木 敬太
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-72195(JP,A)
【文献】特開2015-96707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
健全度評価装置に備えた状態監視型評価部により自動的に実行され、内視鏡を用いてポンプ装置の内部から撮影した保全対象部品の観察画像と予め準備された評価基準画像とに基づいて、所定の評価項目毎に前記保全対象部品の劣化状態を点数付けして状態評価値(EVc)を算出する状態監視型評価ステップと、
前記健全度評価装置に備えた時間監視型評価部により自動的に実行され、前記ポンプ装置の納入後の経過時間に基づいて劣化状態を点数付けした耐用評価値と、前記ポンプ装置の整備後の経過時間に基づいて整備状態を点数付けした修復評価値とから経時的評価値(EVe)を算出する時間監視型評価ステップと、
前記健全度評価装置に備えた健全度評価部により自動的に実行され、前記状態評価値(EVc)及び前記経時的評価値(EVe)のそれぞれに所定の重み係数(W1,W2)を乗じた値に基づいて健全度判定値を算出する健全度評価ステップと、
を含むポンプ装置の健全度評価方法。
【請求項2】
前記状態評価値の重み係数(W1)は、前記経時的評価値の重み係数(W2)より大きな値に設定されている請求項1記載のポンプ装置の健全度評価方法。
【請求項3】
前記状態監視型評価ステップは、前記評価項目毎の点数の合計値を最大点数の合計値で正規化した値を前記状態評価値(EVc)として算出するように構成されている請求項1または2記載のポンプ装置の健全度評価方法。
【請求項4】
前記時間監視型評価ステップは、前記耐用評価値と前記修復評価値のそれぞれの点数の加算値を最大点数の合計値で正規化した値を前記経時的評価値(EVe)として算出するように構成されている請求項3記載のポンプ装置の健全度評価方法。
【請求項5】
前記時間監視型評価ステップは、前記耐用評価値と前記修復評価値のそれぞれの点数に所定の重み係数を乗じた値の加算値を最大点数の合計値で正規化した値を前記経時的評価値(EVe)として算出するように構成されている請求項3記載のポンプ装置の健全度評価方法。
【請求項6】
前記健全度判定値は複数段階に区分されたポンプ装置の補修の緊急度を示す値である請求項1から5の何れかに記載のポンプ装置の健全度評価方法。
【請求項7】
前記評価基準画像は前記保全対象部品の劣化状態示す各点数に対応した複数の限界基準画像を含む請求項1から6の何れかに記載のポンプ装置の健全度評価方法。
【請求項8】
前記保全対象部品に、少なくともケーシング、主軸、羽根車、ケーシングライナの何れかまたは複数が含まれる請求項1から7の何れかに記載のポンプ装置の健全度評価方法。
【請求項9】
前記評価項目に、塗装状態、腐食状態、摩耗状態、破損状態の何れかまたは複数が含まれる請求項1から8の何れかに記載のポンプ装置の健全度評価方法。
【請求項10】
内視鏡を用いてポンプ装置の内部から撮影した保全対象部品の観察画像と予め準備された評価基準画像とに基づいて、所定の評価項目毎に前記保全対象部品の劣化状態を点数付けして状態評価値(EVc)を自動的に算出する状態監視型評価部と、
前記ポンプ装置の納入後の経過時間に基づいて劣化状態を点数付けした耐用評価値と、前記ポンプ装置の整備後の経過時間に基づいて整備状態を点数付けした修復評価値とから経時的評価値(EVe)を自動的に算出する時間監視型評価部と、
前記状態評価値(EVc)及び前記経時的評価値(EVe)のそれぞれに所定の重み係数(W1,W2)を乗じた値に基づいて健全度判定値を自動的に算出する健全度評価部と、
を含むポンプ装置の健全度評価装置。
【請求項11】
内視鏡を用いてポンプ装置の内部から撮影した保全対象部品の観察画像と、前記保全対象部品の評価基準画像とを含む保全データをポンプ装置毎に管理するデータベースサーバと、前記データベースサーバに接続され、前記データベースサーバから読み出した観察画像及び評価基準画像に基づいて健全度を評価する健全度評価装置と、を備えて構成されるポンプ設備管理システムであって、
前記健全度評価装置は、
前記観察画像と前記評価基準画像とに基づいて、所定の評価項目毎に前記保全対象部品の劣化状態を点数付けして状態評価値(EVc)を自動的に算出する状態監視型評価部と、
前記ポンプ装置の納入後の経過時間に基づいて劣化状態を点数付けした耐用評価値と、前記ポンプ装置の整備後の経過時間に基づいて整備状態を点数付けした修復評価値とから経時的評価値(EVe)を自動的に算出する時間監視型評価部と、
前記状態評価値(EVc)及び前記経時的評価値(EVe)のそれぞれに所定の重み係数(W1,W2)を乗じた値に基づいて健全度判定値を自動的に算出する健全度評価部と、
算出された健全度判定値を前記データベースサーバに出力する出力部と、
を備えて構成されているポンプ設備管理システム。
【請求項12】
健全度評価装置に備えた状態監視型評価部により実行され、内視鏡を用いてポンプ装置の内部から撮影した保全対象部品の観察画像と予め準備された評価基準画像とを表示部に表示し、前記表示部を目視した点検者が点数付けした所定の評価項目毎の前記保全対象部品の劣化状態に基づいて状態評価値(EVc)を算出する状態監視型評価ステップと、
前記健全度評価装置に備えた時間監視型評価部により実行され、点検者が入力した前記ポンプ装置の納入後の経過時間に基づいて劣化状態を点数付けした耐用評価値を算出し、点検者が入力した前記ポンプ装置の整備後の経過時間に基づいて整備状態を点数付けした修復評価値を算出し、前記耐用評価値と前記修復評価値とから経時的評価値(EVe)を算出する時間監視型評価ステップと、
前記健全度評価装置に備えた健全度評価部により実行され、前記状態評価値(EVc)及び前記経時的評価値(EVe)のそれぞれに、所定の重み係数(W1,W2)を乗じた値に基づいて健全度判定値を算出する健全度評価ステップと、
を含むポンプ装置の健全度評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプ装置の健全度評価方法、健全度評価装置及びポンプ設備管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
河川ポンプ設備は設置後30年以上経過し、整備・更新時期に差し掛かっている。そのために要するコストを抑制しながら最適な整備・更新を行なうために、事前の精度の高い点検と診断が必要になっている。
【0003】
国土交通省による河川ポンプ設備の点検・整備・更新マニュアル(案)の維持管理の項には、以下のように記載されている。
【0004】
排水機場のポンプ設備は、大雨等の自然現象に対応して必要なときに確実に始動でき、かつ必要な時間中故障なく十分な排水機能が発揮できなければならない。日常はほとんど運転されないため稼働時間は少ないが、一旦出水となると連続運転が要求され、また、運転時は高温多湿、気圧低下があり、非出水期は低温下での長期休止となるなど、通常の常用系設備とは異なった環境下にある。
【0005】
一方、揚水機場のポンプ設備は、一旦稼働期に入ると確実に連続運転できることが要求され、設備を機能させながらの点検・整備の実施が求められるなどの特性を持っている。さらに、河川ポンプ設備共通のものとして、設備が多くの装置・機器等で構成されていて、一つが故障しても排水機能に何らかの影響を及ぼし、場合によっては機能停止という事態を招くことになるため、システム全体として確実に機能することが求められる。
【0006】
そのため、故障した設備、装置、機器、部品を復旧する事後保全よりも、故障を未然に防止するために行う予防保全が重視されている。保全とは、設備、装置、機器、部品が必要な機能を発揮できるようにするための点検、整備、更新をいう。
【0007】
予防保全には、予定の時間間隔で行う定期保全と設備や構成機器が予定の累積稼働時間に達した時に行う経時保全を含む時間監視保全と、設備を使用中の動作確認、劣化傾向の検出などにより故障に到る経過の記録及び追跡などの目的で、動作値及び傾向を監視する状態監視保全があり、設備の健全度の評価のために実用的な状態監視保全方法が求められている。ここに、健全度とは、設備の稼働及び経年に伴い発生する材料の物理的劣化や、機器の性能低下、故障率の増加などの状態をいう。
【0008】
特許文献1には、状態監視保全のために用いられる立軸ポンプの点検装置が開示されている。
当該立軸ポンプの点検装置は、ポンプケーシング内に水平に配置されるレールと、前記レールの一端部に取り付けられ、前記ポンプケーシングに設けられた点検口に前記レールを固定するための点検口固定具と、前記レールの他端部に取り付けられ、前記ポンプケーシングの内面に前記レールを固定するための内面固定具と、前記レール上を水平方向に移動可能な点検ユニットと、を備え、前記点検ユニットは、前記ポンプケーシング内部の画像を撮影する撮影装置を含み、前記撮影装置は、前記ポンプケーシング内を上下方向に移動可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-96707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された立軸ポンプの点検装置によれば、撮影装置により撮影されたポンプケーシング内部の画像に基づいて、ケーシング、インペラ、主軸、軸受などの機器の構成要素となる各部品の劣化状態を判定することになるが、点検者が各部品の撮影画像に基づいて適切に劣化状態を判定することができるようになるまでには相当の熟練を要し、経験の浅い点検者が適切な判定を行うのは非常に困難であった。
【0011】
また、設備の健全度を評価する場合に、上述した状態監視保全の結果を用いることが有用であるのであるが、より適切に健全度を評価するためには時間監視保全の結果も加味する必要があり、状態監視保全と時間監視保全とをどのように融合させるのかについて明確な知見が無く、総合的な健全度の評価手法が望まれていた。
【0012】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、経験の浅い点検者であっても各部品の撮影画像から劣化状態を適切に評価でき、状態監視保全と時間監視保全とを融合させた健全度の評価が可能なポンプ装置の健全度評価方法、健全度評価装置及びポンプ設備管理システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明によるポンプ装置の健全度評価方法の第一の特徴構成は、内視鏡を用いてポンプ装置の内部から撮影した保全対象部品の観察画像と予め準備された評価基準画像とに基づいて、所定の評価項目毎に前記保全対象部品の劣化状態を点数付けして状態評価値(EVc)を算出する状態監視型評価ステップと、前記ポンプ装置の納入後の経過時間に基づいて劣化状態を点数付けした耐用評価値と、前記ポンプ装置の整備後の経過時間に基づいて整備状態を点数付けした修復評価値とから経時的評価値(EVe)を算出する時間監視型評価ステップと、前記状態評価値(EVc)及び前記経時的評価値(EVe)のそれぞれに所定の重み係数(W1,W2)を乗じた値に基づいて健全度判定値を算出する健全度評価ステップと、を含む点にある。
【0014】
状態監視型評価ステップでは、予め準備された評価基準画像を基準にして、内視鏡で撮影された保全対象部品の観察画像から劣化状態が判断され、評価項目毎に保全対象部品の劣化状態が点数付けされて状態評価値(EVc)が算出されるので、例えば経験の浅い点検者であっても各部品の撮影画像から劣化状態を適切に評価できるようになる。時間監視型評価ステップでは、ポンプ装置の納入後の経過時間に基づいて劣化状態を点数付けした耐用評価値と、ポンプ装置の整備後の経過時間に基づいて整備状態を点数付けした修復評価値とから経時的評価値(EVe)が算出される。健全度評価ステップでは、状態評価値(EVc)及び経時的評価値(EVe)のそれぞれに所定の重み係数(W1,W2)を乗じた値に基づいて融合された健全度判定値が算出される。重み係数(W1,W2)を調整することにより、状態監視保全と時間監視保全とを融合させた健全度の評価が可能になる。
【0015】
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記状態評価値の重み係数(W1)は、前記経時的評価値の重み係数(W2)より大きな値に設定されている点にある。
【0016】
状態評価値の重み係数(W1)が経時的評価値の重み係数(W2)より大きな値に設定されることにより、定性的な評価値である経時的評価値よりも、実際の観察画像に基づく定量的な状態評価値の結果が健全度判定値に大きく寄与し、より実際の状況に適した評価ができるようになる。
【0017】
同第三の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記状態監視型評価ステップは、前記評価項目毎の点数の合計値を最大点数の合計値で正規化した値を前記状態評価値(EVc)として算出するように構成されている点にある。
【0018】
評価対象となるポンプ装置には様々な型式があり、全ての型式で共通する評価項目だけではなく、特定の型式でのみ要求される個別の評価項目もある。そのような場合であっても、評価項目毎の点数の合計値を最大点数の合計値で正規化することにより、型式が異なるポンプ装置間でも客観的な評価ができるようになる。
【0019】
同第四の特徴構成は、上述の第三の特徴構成に加えて、前記時間監視型評価ステップは、前記耐用評価値と前記修復評価値のそれぞれの点数の加算値を最大点数の合計値で正規化した値を前記経時的評価値(EVe)として算出するように構成されている点にある。
【0020】
耐用評価値は、ポンプ装置の納入後の経過時間が長いほど劣化状態が進むことを示す正の点数であり、修復評価値は、ポンプ装置の整備後の経過時間が短いほど整備状態が良好であることを示す負の点数となる。従って、耐用評価値と修復評価値の合計値(差分)により経時的な評価が可能になる。そしてそれぞれの評価値の最大点数の合計値で正規化した値をこの経時的評価値(EVe)とすることにより、正規化された状態評価値(EVc)との間で客観的な健全度の評価が可能になる。
【0021】
同第五の特徴構成は、上述の第三の特徴構成に加えて、前記時間監視型評価ステップは、前記耐用評価値と前記修復評価値のそれぞれの点数に所定の重み係数を乗じた値の加算値を最大点数の合計値で正規化した値を前記経時的評価値(EVe)として算出するように構成されている点にある。
【0022】
耐用評価値は、ポンプ装置の納入後の経過時間が長いほど劣化状態が進むことを示す正の点数であり、修復評価値は、ポンプ装置の整備後の経過時間が短いほど整備状態が良好であることを示す負の点数となる。納入されたポンプ装置の設置環境によっては同じ経過時間でも劣化状態に変化が現れる場合がある。また、整備によりポンプ装置の機能は回復するが、整備状況によっては経年劣化の影響が現れる場合がある。そこで、耐用評価値と修復評価値のそれぞれの点数に所定の重み係数を乗じた値の加算値を最大点数の合計値で正規化した値を経時的評価値(EVe)として算出することにより、そのような変動要因を加味した客観的な健全度の評価が可能になる。
【0023】
同第六の特徴構成は、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記健全度判定値は複数段階に区分されたポンプ装置の補修の緊急度を示す値である点にある。
【0024】
健全度評価ステップにより算出された健全度判定値が、複数段階に区分されたポンプ装置の補修の緊急度を示す値となれば、健全度判定値に基づいて適切に対処方を選択することができ、予防保全の効果が増す。
【0025】
同第七の特徴構成は、上述の第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記評価基準画像は前記保全対象部品の劣化状態示す各点数に対応した複数の限界基準画像を含む点にある。
【0026】
評価基準画像が複数の限界基準画像で構成されているので、経験の浅い点検者であっても、内視鏡で撮影された保全対象部品の観察画像が各限界基準画像の範囲に含まれるか否かを適切に判断することができる。
【0027】
同第八の特徴構成は、上述の第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、前記保全対象部品に、少なくともケーシング、主軸、羽根車、ケーシングライナの何れかまたは複数が含まれる点にある。
【0028】
保全対象部品としてケーシング、主軸、羽根車、ケーシングライナの何れかまたは複数を含むことにより、ポンプ装置の適切な予防保全が可能になる。
【0029】
同第九の特徴構成は、上述の第一から第八の何れかの特徴構成に加えて、前記評価項目に、塗装状態、腐食状態、摩耗状態、破損状態の何れかまたは複数が含まれる点にある。
【0030】
塗装状態、腐食状態、摩耗状態、破損状態の何れかまたは複数に基づいて状態評価値(EVc)が算出されることにより、定量的で客観的な劣化状態の評価が可能になる。
【0031】
本発明によるポンプ装置の健全度評価装置の特徴構成は、内視鏡を用いてポンプ装置の内部から撮影した保全対象部品の観察画像と予め準備された評価基準画像とに基づいて、所定の評価項目毎に前記保全対象部品の劣化状態を点数付けして状態評価値(EVc)を算出する状態監視型評価部と、前記ポンプ装置の納入後の経過時間に基づいて劣化状態を点数付けした耐用評価値と、前記ポンプ装置の整備後の経過時間に基づいて整備状態を点数付けした修復評価値とから経時的評価値(EVe)を算出する時間監視型評価部と、前記状態評価値(EVc)及び前記経時的評価値(EVe)のそれぞれに所定の重み係数(W1,W2)を乗じた値に基づいて健全度判定値を算出する健全度評価部と、を含む点にある。
【0032】
本発明によるポンプ設備管理システムの特徴構成は、内視鏡を用いてポンプ装置の内部から撮影した保全対象部品の観察画像と、前記保全対象部品の評価基準画像とを含む保全データをポンプ装置毎に管理するデータベースサーバと、前記データベースサーバに接続され、前記データベースサーバから読み出した観察画像及び評価基準画像に基づいて健全度を評価する健全度評価装置と、を備えて構成されるポンプ設備管理システムであって、前記健全度評価装置は、前記観察画像と前記評価基準画像とに基づいて、所定の評価項目毎に前記保全対象部品の劣化状態を点数付けして状態評価値(EVc)を算出する状態監視型評価部と、前記ポンプ装置の納入後の経過時間に基づいて劣化状態を点数付けした耐用評価値と、前記ポンプ装置の整備後の経過時間に基づいて整備状態を点数付けした修復評価値とから経時的評価値(EVe)を算出する時間監視型評価部と、前記状態評価値(EVc)及び前記経時的評価値(EVe)のそれぞれに所定の重み係数(W1,W2)を乗じた値に基づいて健全度判定値を算出する健全度評価部と、算出された健全度判定値を前記データベースサーバに出力する出力部と、を備えて構成されている点にある。
【0033】
各プラントに設置されているポンプ装置の保全状態がデータベースサーバに統括して管理され、データベースサーバに格納された保全対象部品毎の観察画像と評価基準画像が健全度評価装置により読み出されて健全度が評価され、その結果がデータベースサーバに登録される。従って、観察画像を得る検査作業と、得られた観察画像に基づいて健全度を評価する評価作業とを分離して進めることができ、検査作業、評価作業、評価結果に基づく保守作業などの一連の作業を効率的に行なうことができるようになる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明した通り、本発明によれば、経験の浅い点検者であっても各部品の撮影画像から劣化状態を適切に評価でき、状態監視保全と時間監視保全とを融合させた健全度の評価が可能なポンプ装置の健全度評価方法、健全度評価装置及びポンプ設備管理システムを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】立軸斜流ポンプの説明図
図2】ポンプケーシングに設けられた点検窓を介した観察画像撮影の説明図
図3】ポンプ装置の予防保全の全体の流れを示す説明図
図4】ポンプ装置の健全度評価方法の手順を示す説明図
図5】評価基準画像を構成する限界基準画像の説明図
図6】主要保全対象部品の観察画像例の説明図
図7】保全対象部品の劣化状態の判定基準表の説明図
図8】(a)は耐用評価値と修復評価値の説明図、(b)は健全度評価の説明図
図9】(a)はポンプ装置の健全度評価装置の機能ブロックの説明図、(b)は健全度評価値の説明図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、立軸斜流ポンプ装置を例に本発明によるポンプ装置の健全度評価方法を説明する。尚、本発明による健全度評価方法の対象となるポンプ装置は立軸斜流ポンプ装置に限るものではなく、立軸軸流ポンプ装置などの縦軸ポンプ装置に好適に用いられ、さらに縦軸ポンプ装置以外の他の種類のポンプ装置にも用いることができる。
【0037】
図1には、立軸斜流ポンプ装置P(以下、「ポンプP」と記す。)が示されている。ポンプPは、下端部に羽根車3が取り付けられた主軸2が、鉛直姿勢の揚水管6に複数の軸受1を介して回転可能に支持され、揚水管6の先端に羽根車3を収容する羽根車ケーシング(吐出しボウル)4が接続され、さらに羽根車ケーシング4の先端に吸込ベル5が接続されて構成されている。羽根車ケーシング4及び吸込ベル5の内面には羽根車3と対向する位置にケーシングライナ4Aが配されている。
【0038】
揚水管6の上端側には、主軸2が水密かつ回転自在に貫通される吐出曲管7が接続され、主軸2はカップリング8を介して駆動機11の出力軸に接続されている。羽根車3側の軸受1の下方にメカニカルシールやグランドパッキンを用いた下部軸封装置9が設けられ、主軸2の上方の吐出曲管7との接合部にはラビリンスシール等を用いた上部軸封装置10が設けられている。
【0039】
主軸2は、軸封装置9,10で被覆されるとともに各軸受1が水密に連結された保護管13で被覆され、軸受1は保護管13に供給された冷却水により冷却されるように構成されている。羽根車ケーシング4と揚水管6と吐出曲管7とでポンプケーシング(以下、単に「ケーシング」と表記する場合もある。)が構成され、何れも鋳鉄製である。
【0040】
図2に示すように、当該ポンプ装置Pに対して適切な整備・更新を行なうために必要となる事前の精度の高い点検と診断が行なえるように、ポンプケーシングの周壁に形成された開口部12に点検窓ユニット20が設けられている。
【0041】
点検窓ユニット20は、アルミニウム合金や鋼材等の金属を用いて成形された窓枠体21と窓本体22とで構成され、ポンプケーシングの一部である吐出曲管7の周壁に形成された開口部12、詳述すると開口部12の周部に形成されたフランジ部に環状の窓枠体21が着脱自在に複数本のボルトで締付固定されている。
【0042】
窓本体22は、窓枠体21に対して縦軸心周りに回動可能な第1回動機構、及び、縦軸心P1と交差する横軸心周りに回動可能な第2回動機構を介して窓枠体21に支持されている。
【0043】
第1回動機構を介して窓本体22を縦軸心周りに回動させて開口部12を開放し、さらに第2回動機構を介して窓本体22を横軸心周りに回動させて、窓本体22の裏面が上を向く検査姿勢に姿勢変更させる。その後、測定器である内視鏡30のケーブル31を窓本体22で支持しながら開口部12から内視鏡30を挿入し、ケーブル31の繰り出し位置及び繰り出し量を調整して内視鏡30による検査位置を調整して保全対象部品を撮影して観察画像を得る。
なお、上述した窓本体22の取付け構造は一例に過ぎず、窓枠体21に対して横軸心周りに回動可能に取り付けられていてもよいことはいうまでもない。
【0044】
保全対象部品として、軸受1、主軸2、羽根車3、ケーシングライナ4A、ケーシング4,6,7、案内羽根、軸封装置9,10などが含まれ、少なくともケーシング4,6,7、主軸2、羽根車3、ケーシングライナ4Aの何れかまたは複数が含まれる。
【0045】
図3には、予防保全の手順が示されている。ポンプ装置の設置工事に伴って(SA1)、保全計画が策定され(SA2)、当該保全計画に基づいて点検が行われる(SA3)。当該点検は、例えば1年ごとに行われる定期点検であり、外観の目視検査に加えて、ポンプ装置の稼働状態での主軸の回転数、各部品の振動の周波数や強度、騒音の周波数や強度などを測定し、それらの特性が正常範囲に入っているか否かの点検である。点検の結果、異常が認められなかった場合には、ステップSA3に戻り(SA4,OK)、次の提起点検に備え、何らかの異常が認められた場合には(SA4,NG)、本発明による健全度評価方法が実行される(SA5)。
【0046】
図4には、健全度評価手順が示されている。上述した内視鏡30を用いて各保全対象部品を撮影して観察画像を得(SB1)、保全対象部品毎に予め準備された評価基準画像と観察画像が比較されて劣化状態が判定され(SB2)、観察画像が得られた保全対象部品全てで劣化状態が判定されると(SB3,Y)、状態評価値が算出され(SB4)、さらに計時的評価値が算出され(SB5)、状態評価値と計時的評価値から健全度判定値が算出される(SB6)。
【0047】
つまり、ステップSB2において、内視鏡30を用いてポンプ装置Pの内部から撮影した保全対象部品の観察画像と予め準備された評価基準画像とに基づいて、所定の評価項目毎に保全対象部品の劣化状態を点数付けして状態評価値(EVc)を算出する状態監視型評価ステップが実行され、ステップSB4において、ポンプ装置Pの納入後の経過時間に基づいて劣化状態を点数付けした耐用評価値と、ポンプ装置の整備後の経過時間に基づいて整備状態を点数付けした修復評価値とから経時的評価値(EVe)を算出する時間監視型評価ステップが実行され、ステップSB6において、状態評価値(EVc)及び経時的評価値(EVe)のそれぞれに所定の重み係数(W1,W2)を乗じた値に基づいて健全度判定値を算出する健全度評価ステップが実行される。
【0048】
図3に戻って説明を続ける。ステップSA5で算出された健全度評価値は、健全度がランク1からランク5の5段階の評価値で表される。ランク1は保全対象部品の機能に故障が生じており緊急に措置(修繕、更新、取替)が必要な状態(SA7)、ランク2は保全対象部品の機能に支障が生じる可能性があり、予防保全の観点から早急に措置(整備・更新・取替)を行うべき状態(SA8)、ランク3は保全対象部品の機能に支障が生じていないが、2~3年以内に措置(整備・更新・取替)を行うことが望ましい状態(SA9)、ランク4は保全対象部品の機能に支障が生じていないが状態の経過観察が必要な状態(SA10)、ランク5は保全対象部品の機能に支障が生じていない状態(SA11)となる。
【0049】
当該健全度評価値に基づいて、ランク1では直ちに措置(修繕、更新、取替)に必要な工事計画の立案、部品の発注手配などが行なわれ、ランク2からランク5ではステップSA3に戻り、次の点検に備える。つまり、健全度評価値は、複数段階に区分されたポンプ装置の補修の緊急度を示す値となる。
【0050】
図9には、上述した健全度評価方法の実行に必要な健全度評価装置40の機能ブロックが示されている。健全度評価装置40は、CPUボード、メモリボードなどを備えたスタンドアロンのコンピュータで構成され、データ入力部としても機能するタッチパネル式の表示部42、観察画像の入力インタフェース44、評価基準画像及び観察画像などが記憶された記憶部46、健全度を算出するための演算を行なう演算部48A,48B,48C、表示処理部45などを備えている。
【0051】
点検者によって健全度評価装置40が操作され、内視鏡30により撮影された各保全対象部品の観察画像が入力インタフェース44を介して記憶部46に記憶された後に、表示処理部45が起動されて表示部42に観察画像と評価基準画像が表示され、観察画像に対する保全対象部品の劣化状態が点数付けされ、状態評価値算出部48Bで状態評価値が算出される。つまり、状態評価値算出部48Bが状態監視型評価ステップを実行する状態監視型評価部として機能する。
【0052】
また、点検対象となるポンプ装置Pの履歴として、入力部42からポンプ装置Pの納入後の経過時間、ポンプ装置Pの整備後の経過時間が入力され、経時的評価値算出部48Aによってポンプ装置Pの納入後の経過時間から点数付けされた耐用評価値と、ポンプ装置の整備後の経過時間から整備状態を点数付けした修復評価値が算出され、さらに耐用評価値と修復評価値とから経時的評価値が算出される。つまり、経時的評価値算出部48Aが時間監視型評価ステップを実行する時間監視型評価部として機能する。
【0053】
そして、健全度評価値算出部48Cによって状態評価値と経時的評価値とから健全度評価値が算出され、その値が表示部42に表示される。つまり、健全度評価値算出部48Cが健全度評価ステップを実行する健全度評価部として機能する。
【0054】
図7には、図4のステップSB2の劣化状態の判定のために用いられるチェックシートが例示されている。点検項目として、1.内部の塗装状況、2.内部の錆・腐食の有無、3.上部軸受部の状況、4.下部軸受部の状況、5.ボールブッシュの状況、6.主軸の状況、7.保護官の状況、8.冷却水漏れの有無、9.ケーシングライナ―の状況、10.羽根車の状況が挙げられ、各点検項目に対して劣化状態が0,1,3,5の四段階または0,1,3の三段階で評価される。チェックシート上でチェックされた項目に黒丸が標されている。
【0055】
例えば、ケーシングや案内羽根の塗装状況では、全体的に塗装剥離がある(3点)、部分的に塗装剥離がある(1点)、剥離なし(0点)の三段階評価が行なわれ、羽根車の状況では、破損(クラック・欠け・変形)がある(5点)、全体的に傷や錆・腐食がある(3点)、部分的に傷や錆・腐食がある(1点)、異常なし(0点)の四段階評価が行なわれる。即ち、評価項目には、塗装状態、腐食状態、摩耗状態、破損状態の何れかまたは複数が含まれる。
【0056】
評価対象となるポンプ装置には様々な型式があり、全ての型式で共通する評価項目だけではなく、特定の型式でのみ要求される個別の評価項目もある。ポンプ装置の型式や仕様によっては、点検項目の何れかが不要な場合もある。そのような場合には、該当なし(-)が選択される。点数の値が小さいほど正常に近く、大きいほど異常の程度が高いことになるが、不要な点検項目の存在を考慮すると、単に点数を合計しても客観性が得られないことになる。
【0057】
そこで、評価項目毎の点数の合計値を最大点数の合計値で正規化した値を状態評価値(EVc)として算出するように構成することにより、評価項目毎の点数の合計値を最大点数の合計値で除して正規化することにより、型式が異なるポンプ装置間でも客観的な評価が可能になる。図7の例では、評価点の合計が19点、最大点数が21点となるので、状態評価値(EVc)は0.90(=19/21)となる。即ち、正規化後の状態評価値(EVc)は0.0から1.0の範囲の値となり、1.0に近いほど劣化が進み、0.0に近いほど正常であることになる。
【0058】
図5には、記憶部46に記憶された評価基準画像が例示されている。当該評価基準画像は羽根車に対する評価基準画像であり、保全対象部品毎に予め準備されている。評価基準画像は保全対象部品の劣化状態示す各点数に対応した複数の限界基準画像を含む。経験の浅い点検者であっても、内視鏡で撮影された保全対象部品の観察画像が各限界基準画像の何れの範囲に含まれるかを適切に判断することができるようになる。
【0059】
図6には、ケーシング、ケーシングライナ、主軸のそれぞれに対する観察画像の例が示されている。上段は異常なしと判定される観察画像の例、下段は破損(損傷、摩耗など)があると判定される最も損傷の大きな観察画像の例である。
【0060】
図8(a)には、図4のステップSB5の経時的評価値(EVe)を算出するための評価点リストが示されている。時間監視型評価ステップでは、ポンプ装置Pの納入後の経過時間に基づいて劣化状態を点数付けした耐用評価値と、ポンプ装置の整備後の経過時間に基づいて整備状態を点数付けした修復評価値とから経時的評価値が算出される。
【0061】
耐用評価値Vxは、A.20年以上の場合に100点、B.10年以上20年未満の場合に100×(2/3)点、C.5年以上10年未満の場合に100×(1/2)点、D.5年未満の場合に100×(1/3)点に設定されている。耐用評価値Vxは、値が大きいほど劣化状態が進んでいることを意味する。
【0062】
修復評価値Vyは、A.20年以上の場合に0点、B.10年以上20年未満の場合に100×(1/10)点、C.5年以上10年未満の場合に100×(1/6)点、D.5年未満の場合に100×(1/3)点に設定されている。修復評価値Vyは、値が大きいほど修復程度が良好であることを意味する。
【0063】
時間監視型評価ステップは、耐用評価値Vxと修復評価値Vyのそれぞれの点数の加算値(Vx-Vy)を最大点数の合計値100点で正規化した値を経時的評価値(EVe=(Vx-Vy)/100)として算出するように構成されている。例えば、納入経過年数Xが20年、整備後経過年数Yが10年であれば、経時的評価値(EVe=(100-10)/100)=0.9となり、納入経過年数Xが5年以上10年未満、整備後経過年数Yが5年未満であれば、経時的評価値(EVe=(50-100/3)/100)=0.17と求まる。
【0064】
耐用評価値(EVe)は、ポンプ装置の納入後の経過時間が長いほど劣化状態が進むことを示す正の点数であり、修復評価値は、ポンプ装置の整備後の経過時間が短いほど整備状態が良好であることを示す負の点数となる。従って、耐用評価値と修復評価値の合計値(差分)により経時的な評価が可能になる。そしてそれぞれの評価値の最大点数の合計値で正規化した値をこの経時的評価値(EVe)とすることにより、正規化された状態評価値(EVc)との間で客観的な健全度の評価が可能になる。即ち、正規化後の経時的評価値(EVe)は0.0から1.0の範囲の値となり、1.0に近いほど劣化が進み、0.0に近いほど正常であることになる。
【0065】
図4のステップSB6の健全度評価ステップでは、状態評価値(EVc)及び経時的評価値(EVe)のそれぞれに所定の重み係数(W1,W2)を乗じた値に基づいて融合された健全度判定値(V)が以下の数式に基づいて算出される。
健全度判定値(V)=1-{(W1×EVc)+(W2×EVe)}
【0066】
重み係数(W1,W2)を調整することにより、状態監視保全と時間監視保全とを融合させた健全度の適切な評価が可能になる。本実施形態では、状態評価値の重み係数(W1)が0.7、経時的評価値の重み係数(W2)が0.3に設定されている。状態評価値の重み係数(W1)が経時的評価値の重み係数(W2)より大きな値に設定されることにより、定性的な評価値である経時的評価値よりも、実際の観察画像に基づく定量的な状態評価値の結果が健全度判定値に大きく寄与し、より実際の状況に適した評価ができるようになる。
【0067】
図8(b)には、上述したランク1からランク5に評価される健全度判定値(V)の基準値が示されている。ランク1は健全度判定値に拠らず、観察画像から認められる破損などにより、機能に支障が発生していることが明らかな状態である場合が該当する。
【0068】
図9(b)には、状態評価値の重み係数(W1)が0.7、経時的評価値の重み係数(W2)が0.3に設定された場合の健全度判定値(V)が示されている。
【0069】
本願発明者らが過去の事例を鋭意研究したところ、状態評価値の重み係数(W1)が経時的評価値の重み係数(W2)より大きな値に設定され、状態評価値の重み係数(W1)が0.7±0.1、時的評価値の重み係数(W2)が0.3±0.1の範囲に設定することにより、時間監視保全と状態監視保全を融合させた適切な健全度が得られること、そして、時間監視保全よりも状態監視保全を重視することにより適切な予防保全が可能であることが判明している。
【0070】
上述した実施形態では、スタンドアロンで構成された健全度評価装置40に対して点検者が納入後経過時間、整備後経過時間、劣化状態の点数を入力する例を説明したが、健全度評価装置40がネットワーク接続可能に構成されていてもよい。例えば、排水機場に設置された各ポンプ装置Pに対する納入後経過時間及び整備後経過時間を管理するサーバに接続されていれば、点検者が納入後経過時間、整備後経過時間を入力する必要が無く、例えば該当するポンプ装置の識別番号を入力することにより、サーバから納入後経過時間、整備後経過時間を読み出して、経時的評価値演算部48Aが自動的に経時的評価値を算出することができる。
【0071】
また、上述した実施形態では、点検者が表示部42に表示された観察画像と評価基準画像を目視して、観察画像に対する劣化状態を点数付けする例を説明したが、公知の画像判定プログラムをインストールしておき、観察画像が評価基準画像となる複数の限界基準画像のどの画像に最も類似するかを自動判定するように構成してもよい。また、累積された観察画像に基づいてチューニングされたニューラルネットワーク、つまり入力層に観察画像が入力され、中間層を経て出力層で劣化状態を示す点数が出力されるニューラルネットワークを用いて、入力された観察画像に対する劣化状態の点数付けを自動で行うように構成してもよい。当該ニューラルネットワークでは、例えば入力された観察画像から部品を識別するとともに該当する部品の劣化度を判定するパターン認識技術が用いられる。
【0072】
観察画像を入力する入力インタフェース44は、特に限定されるものではなく、USBインタフェース、ブルートゥースインタフェースなど公知のインタフェースを用いることができる。尚、ブルートゥースは登録商標である。
【0073】
内視鏡30で撮影された観察画像に撮影箇所を示すID情報を付加するように構成すれば、入力インタフェース44を介して入力された観察画像がどの部位の画像であるかを点検者がその都度入力する手間が省け、また、ID情報に基づいて当該観察画像と評価基準画像とを対比可能に表示部42に自動表示することができる。
【0074】
上述した実施形態では、経時的評価値を、数式EVe=(Vx-Vy)/100を用いて算出する例を説明したが、耐用評価値Vxと修復評価値Vyのそれぞれの点数に所定の重み係数を乗じた値の加算値を最大点数の合計値で正規化した値を経時的評価値(EVe)として算出するように構成してもよい。
【0075】
耐用評価値Vxは、ポンプ装置の納入後の経過時間が長いほど劣化状態が進むことを示す正の点数であり、修復評価値Vyは、ポンプ装置の整備後の経過時間が短いほど整備状態が良好であることを示す負の点数となる。納入されたポンプ装置の設置環境によっては同じ経過時間でも劣化状態に変化が現れる場合がある。また、整備によりポンプ装置の機能は回復するが、一部部品が更新されないなどの整備状況によっては経年劣化の影響が現れる場合がある。そこで、以下の数式に示すように、耐用評価値Vxと修復評価値Vyのそれぞれの点数に所定の重み係数Wx,Wyを乗じた値の加算値を最大点数の合計値で正規化した値を経時的評価値(EVe)として算出することにより、そのような変動要因を加味した客観的な健全度の評価が可能になる。
EVe=(Wx×Vx-Wy×Vy)/100
【0076】
尚、上述した実施形態では0.0から1.0の間で正規化した例を説明したが、0から10の間で正規化してもよいし、0~100の間で正規化してもよいことは言うまでもない。
【0077】
以上説明した実施形態では、スタンドアロンで機能する健全度評価装置40を説明したが、保全対象部品の観察画像と評価基準画像を含む保全データをポンプ装置毎に管理するデータベースサーバと通信回線を介して接続可能な通信インタフェースを備え、ポンプ設備管理システムとして機能する健全度評価装置40を構築することも可能である。
【0078】
当該ポンプ設備管理システムは、内視鏡を用いてポンプ装置の内部から撮影した保全対象部品の観察画像と、前記保全対象部品の評価基準画像とを含む保全データをポンプ装置毎に管理するデータベースサーバ(図9中、破線で示されている。)と、データベースサーバに接続され、データベースサーバから読み出した観察画像及び評価基準画像に基づいて健全度を評価する健全度評価装置40と、を備えて構成される。
【0079】
そして、健全度評価装置40は、観察画像と評価基準画像とに基づいて、所定の評価項目毎に保全対象部品の劣化状態を点数付けして状態評価値(EVc)を算出する状態監視型評価部と、ポンプ装置の納入後の経過時間に基づいて劣化状態を点数付けした耐用評価値と、ポンプ装置の整備後の経過時間に基づいて整備状態を点数付けした修復評価値とから経時的評価値(EVe)を算出する時間監視型評価部と、状態評価値(EVc)及び経時的評価値(EVe)のそれぞれに所定の重み係数(W1,W2)を乗じた値に基づいて健全度判定値を算出する健全度評価部と、算出された健全度判定値をデータベースサーバに出力する通信インタフェースである出力部(図9中、破線で示されている。)と、を備えて構成される。
【0080】
ポンプ装置の設置現場で点検作業者が内視鏡30を用いて撮影した点検対象部品の観察画像が、通信回線を介してデータベースサーバにアップロードされる点検作業が行なわれる。
【0081】
その後、データベースサーバに格納された観察画像及び評価基準画像が健全度評価装置40に読み出されて上述した健全度判定値が算出される。算出された健全度判定値がデータベースサーバにアップロードされる。
【0082】
データベースにアップロードされた各ポンプ装置の健全度判定値が、メンテナンス作業者の端末から参照され、効率的なメンテナンス計画が立案され、保守作業が行なわれる。つまり、検査作業、評価作業、評価結果に基づく保守作業などの一連の作業を効率的に行なうことができるようになる。
【0083】
以上の説明は、本発明の一実施形態であり、各記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、状態評価値を求めるための点検項目、チェック項目、配点、経時的評価値を求めるための納入後経過年数、整備後経過年数、各配点、健全度評価値を求めるための重み係数などは、本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。
【符号の説明】
【0084】
1:軸受
2:主軸
3:羽根車
4:羽根車ケーシング(吐出しボウル)
4A:ケーシングライナ
5:吸込みベル
6:揚水管
7:吐出曲管
8:カップリング
9,10:軸封装置
12:開口部
20:点検窓ユニット
21:窓枠体
22:窓本体
30:内視鏡(測定器)
31:ケーブル
40:健全度評価装置
42:データ入力部/表示部
44:入力インタフェース
45:表示処理部
46:画像記憶部
48A:経時的評価値演算部
48B:状態評価値演算部
48C:健全度評価演算部
P:ポンプ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9