IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-サーボ制御装置 図1
  • 特許-サーボ制御装置 図2
  • 特許-サーボ制御装置 図3
  • 特許-サーボ制御装置 図4
  • 特許-サーボ制御装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】サーボ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/46 20060101AFI20240409BHJP
   G05B 19/416 20060101ALI20240409BHJP
   G05B 19/414 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H02P5/46 A
G05B19/416 Q
G05B19/414 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019133482
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2021019418
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】中邨 勉
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 聡史
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-075864(JP,A)
【文献】特開2010-221221(JP,A)
【文献】特開2019-092239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/46
G05B 19/416
G05B 19/414
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用機械を駆動するドライブ用の電動機と、
前記ドライブ用の電動機の負荷又は消費電力量を検出する負荷検出部と、
前記負荷検出部の検出結果に基づいて前記ドライブ用の電動機に電力を回生するバッファ用の電動機と、
前記ドライブ用の電動機に電力を回生する前の前記バッファ用の電動機の予め設定された一定の第一のベース速度から減速して前記ドライブ用の電動機に電力を回生した後、前記バッファ用の電動機の予め設定された前記第一のベース速度よりも低く設定された第二のベース速度に復帰させ、前記第二のベース速度で前記バッファ用の電動機を駆動した後、前記第二のベース速度から前記第一のベース速度まで回転速度を上げて前記バッファ用の電動機を前記第一のベース速度に復帰させるベース速度設定部と、
を備える、サーボ制御装置。
【請求項2】
前記ベース速度設定部は、前記ドライブ用の電動機の前回の給電、蓄電操作に対応して前記第二のベース速度を設定する、
請求項1に記載のサーボ制御装置。
【請求項3】
前記第一のベース速度が前記バッファ用の電動機の略定格速度に設定されている、
請求項1または請求項2に記載のサーボ制御装置。
【請求項4】
前記産業用機械がプレス機である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のサーボ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、機械工作の分野では、CNC(コンピュータ数値制御:Computerized Numerical Control)技術を適用し、移動量や移動速度などをコンピュータで数値制御することにより、同一動作の繰り返しや、複雑な動作などを高度に自動化している。また、プレス機や、射出成形機、工作機械やロボットなどの産業用機械の軸などを駆動するためのサーボモータ(電動機)は、回転量、速度、トルク等が駆動制御されている。
【0003】
一方、例えば、プレス機でのプレス時、射出成形機での型締め時、工作機械での切込み時など、サーボモータのトルクなどの負荷が急激に上昇する際には、サーボモータの消費電力が急激に跳ね上がり、ピーク電力が上がるほど、契約電気料金を高く設定する必要が生じる。
【0004】
このため、従来、例えば、図4に示すように、それぞれドライブ用のサーボモータを制御する複数のサーボアンプに共通電源から電量供給を行うようにするとともに、ドライブ用のサーボモータの消費電量が急激に跳ね上がるタイミングでバッファ用のサーボモータから電力を供給(回生)することによって、ピーク電力を下げる(ピークをなくす)制御を行っている。
【0005】
このとき、図5に示すように、バッファ用のサーボモータは、イナーシャが付加され、予め設定した同じベース速度(ベース速度1)で回転させて蓄電を行い、電力回生が必要になったときにバッファ用のサーボモータの駆動速度を下げてドライブ用のサーボモータに電力を供給する。また、複数のドライブ用のサーボアンプ間の通信によってどのサーボアンプに電力回生を行うかを決め、効率的且つ効果的にドライブ用のサーボモータの消費電力の低減を図るようにする。ピーク電力を下げた後は、バッファ用のサーボモータの駆動を加速し、電力を蓄積するとともにベース速度(ベース速度1)に戻す。
【0006】
例えば、特許文献1には、「フライホイールと、前記フライホイールに結合された発電電動機と、交流側が前記発電電動機に接続され直流側が直流リンク部に接続されたインバータとを備え、前記インバータから前記発電電動機に可変周波数の交流を供給して前記フライホイールの回転数を制御することにより、前記直流リンク部と電気エネルギーの授受を行う蓄電装置であって、前記インバータは、前記直流リンク部の電圧を検出する電圧検出器と、前記電圧検出器からの検出電圧と前記フライホイールの回転数とに基づいて、前記直流リンク部の電圧指令値を第1の電圧指令値と第2の電圧指令値とのいずれかに設定する電圧指令値設定部と、前記電圧検出器からの検出電圧と前記フライホイールの回転数とに基づいて、前記フライホイールの回転数の最大回転数を第1の最大回転数と第2の最大回転数とのいずれかに設定する最大回転数設定部とを備えることを特徴とする蓄電装置。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-号114994公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、従来、バッファ用のサーボモータはドライブ用サーボモータの動作に依存せず、蓄電/給電動作を終えた後は、バッファ用のサーボモータをある一定のベース速度(ベース速度1)に復帰させる制御を行い、予め定められたエネルギー値を確保するようにしている。
【0009】
しかしながら、このようにバッファ用のサーボモータを制御した場合には、図5に示すように、イナーシャが大きいバッファ用のサーボモータであるほど、回生制御後に、急激に加速してバッファ用のサーボモータによる電力の蓄積制御が必要になり、この蓄電制御に起因して、バッファ用のサーボモータの速度が過大になってエネルギー損失が生じ、結果、効率の低下を招くという不都合があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のサーボ制御装置の一態様は、産業用機械の軸を駆動する電動機を制御するためのサーボ制御装置であって、前記軸を駆動するドライブ用の電動機と、前記ドライブ用の電動機の負荷又は消費電力量を検出する負荷検出部と、前記負荷検出部の検出結果に基づいて前記ドライブ用の電動機に電力を回生するバッファ用の電動機と、前記ドライブ用の電動機に電力を回生する前の前記バッファ用の電動機の予め設定された一定の第一のベース速度から減速して前記ドライブ用の電動機に電力を回生した後、前記第一のベース速度よりも低く設定された第二のベース速度に復帰させるためのベース速度設定部と、を備える構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本開示のサーボ制御装置の一態様によれば、ドライブ用の電動機の回生時にバッファ用の電動機の速度が上がり過ぎることを防止でき、バッファ用の電動機の最高速を低く抑えることが可能になる。これにより、例えば、フライホイールの摩擦に伴う消費電力を抑えることが可能になる。
【0012】
また、バッファ用の電動機の最高速を低く抑えることができることによって、ベース速度上限設定(第一のベース速度)を従来よりも高く設定することができる。すなわち、バッファ用の電動機の略定格速度まで第一のベース速度を高めることができ、イナーシャあたりの供給電力の増大を図ることが可能になる。
【0013】
さらに、バッファ用の電動機がドライブ用の電動機に供給する電力と、ドライブ用の電動機の回生電力を蓄電する電力との総和(バッファ用の電動機が供給/蓄電する電力の和)を低減することができ、結果、エネルギー損失の低減を図ることも可能になる。
【0014】
よって、本開示の産業用機械のサーボ制御装置によれば、従来よりも電力効率に優れたシステムを構築することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一態様のサーボ制御装置を示す図である。
図2】一態様のサーボ制御装置を示すブロック図である。
図3】一態様のサーボ制御装置によるバッファ用のサーボモータの駆動制御方法を示す図である。
図4】バッファ用のサーボモータからの回生でドライブ用のサーボモータの消費電力を低減する説明で用いた図である。
図5】従来のバッファ用のサーボモータの駆動制御方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1から図3を参照し、一実施形態に係るサーボ制御装置について説明する。
【0017】
ここで、本実施形態のサーボ制御装置は、産業用機械の軸を駆動するためのドライブ用のサーボモータ(電動機)の高トルク時などの高負荷時の消費電力低減を可能にするサーボ制御装置である。
【0018】
なお、産業用機械は、その駆動時に急激な負荷の上昇が生じる産業用機械であり、プレス機、圧入器、ダイカストマシン、射出成型機、切断機、工作機械、ロボットが代表例として挙げられるが、搬送機、計測器、試験装置、印刷機、食品機械、包装機、溶接機、洗浄機、塗装機、組立装置、実装機、木工機械、シーリング装置など、他の産業用機械であっても勿論構わない。
ちなにみ、例えばプレス機では、プレス加工時にドライブ用のサーボモータに急激に負荷がかかり、急激に消費電力が上昇する。
【0019】
本実施形態の産業用機械のサーボ制御装置1は、図1及び図2に示すように、指令部のCNC(NC)2と、複数のドライブ用のサーボモータ(電動機)3と、CNC2からの指令に基づいて、各ドライブ用のサーボモータ3の駆動を制御する複数のドライブ用のサーボアンプ4と、各ドライブ用のサーボモータ3の負荷又は消費電力量(消費電力及び回生電力)を検出する負荷検出部5と、負荷検出部5の検出結果に基づいてドライブ用のサーボモータ3に電力を回生するためのバッファ用のサーボモータ(電動機)6と、バッファ用のサーボモータ6の駆動を制御するバッファ用のサーボアンプ7と、複数のドライブ用のサーボモータ3及びバッファ用のサーボモータ6に電力を供給する共通電源(電源)8と、を備えている。
【0020】
さらに、本実施形態の産業用機械のサーボ制御装置1は、ドライブ用のサーボモータ3の消費電力の許容範囲(消費側閾値及び回生側閾値)を設定する消費電力許容範囲設定部9と、ドライブ用のサーボモータ3の消費電力が前記許容範囲内か否かを判定する消費電力判定部10と、バッファ用のサーボモータ6で発電した回生電力を分配するための回生電力分配部11と、図3図1図2)に示すように、ドライブ用のサーボモータ3に電力を回生する前のバッファ用のサーボモータ6の予め設定された一定の第一のベース速度(図3図5)中のベース速度1)から減速してドライブ用のサーボモータ3に電力を回生した後、第一のベース速度よりも低く設定した第二のベース速度(図2中のベース速度2)に復帰させるためのベース速度設定部12と、を備えて構成されている。
【0021】
ドライブ用のサーボモータ3及びバッファ用のサーボモータ6は、例えば回転電動機である。但し、ドライブ用のサーボモータ3は、リニアモータなど、他の電動機であってもよい。
【0022】
ベース速度設定部12は、ドライブ用のサーボモータ3の前回の給電、蓄電操作に対応して、復帰させる第二のベース速度を設定することが好ましい。また、第一のベース速度はドライブ用のサーボモータ3の定格速度よりもわずかに小さい速度(略定格速度)に設定されていることが好ましい。
【0023】
上記のように構成した本実施形態の産業用機械のサーボ制御装置1においては、CNC2から指令がドライブ用のサーボアンプ4、バッファ用のサーボアンプ7に送られ、各サーボアンプ4、7によってドライブ用のサーボモータ3、バッファ用のサーボモータ6が駆動制御される。また、ドライブ用のサーボアンプ4、バッファ用のサーボアンプ7、ドライブ用のサーボモータ3、バッファ用のサーボモータ6は共通電源8から電力が供給されて駆動する。
【0024】
バッファ用のサーボモータ6は、イナーシャが付加されており、ドライブ用のサーボモータ3に作用する負荷が消費電力許容範囲設定部9で設定された許容範囲内である場合に、これを消費電力判定部10が判定し、ベース速度設定部12で設定された一定の第一のベース速度(ベース速度1)で回転駆動し、電力を蓄積する。
【0025】
一方、図3に示すように、例えばプレス機でのプレス工程で、ドライブ用のサーボモータ3に作用する負荷が増大し、負荷検出部5による検出結果がドライブ用のサーボモータ3の消費電力の消費電力許容範囲設定部9で設定した消費側閾値に達すると、これを消費電力判定部10が判定し、複数のドライブ用のサーボアンプ4を通信接続されたバッファ用のサーボアンプ7がこの結果を受け、バッファ用のサーボモータ6を減速制御し、蓄積した電力をドライブ用のサーボモータ3に給電する。
【0026】
このとき、複数のドライブ用のサーボモータ3のうち、どのドライブ用のサーボモータ3に電力を回生するか、複数のドライブ用のサーボモータ3にそれぞれどの程度の電力量を回生するかが消費電力判定部10で定められ、この判定結果に基づいて回生電力分配部11が各ドライブ用のサーボモータ3に電力を分配して供給する。これにより、負荷が増大し、消費電力が消費側閾値に達したドライブ用のサーボモータ3にバッファ用のサーボモータ6で蓄積した電力が供給され、消費電力が消費側閾値を下回るように、すなわち、許容範囲内となるようにされ、ピーク電力を下げる(ピークをなくす)ことができる。
【0027】
一方、プレス機のプレス工程の進行に伴い、ドライブ用のサーボモータ3の負荷が低減して消費電力が消費側閾値を下回ると(許容範囲内で安定すると)、バッファ用のサーボモータ6を加速し、電力の蓄積を再開する。
この電力蓄積再開操作時、本実施形態の産業用機械のサーボ制御装置1では、ベース速度設定部12によって、ドライブ用のサーボモータ3に電力を回生する前(例えば、前回)のバッファ用のサーボモータ6の予め設定された第一のベース速度(ベース速度1)よりも低く設定した第二のベース速度(ベース速度2)に復帰させ、この低く設定した第二のベース速度でバッファ用のサーボモータ6を駆動し、電力の蓄積を行う。
【0028】
そして、ドライブ用のサーボモータ3の負荷がさらに小さくなって消費電力が低下してゆき、回生側閾値に達すると、これを消費電力判定部10が判定し、複数のドライブ用のサーボアンプ4を通信接続されたバッファ用のサーボアンプ7がこの結果を受け、バッファ用のサーボモータ6を加速制御する。また、回生側閾値を上回ると(許容範囲内で安定すると)、徐々にバッファ用のサーボモータ6を加速する。このような段階的な加速によってバッファ用のサーボモータ6の速度を第一のベース速度に復帰させる。これにより、従来のように第一のベース速度への復帰操作時に急激にバッファ用のサーボモータ6の速度が上昇することがなくなる。
【0029】
したがって、本実施形態の産業用機械のサーボ制御装置1においては、ドライブ用のサーボモータ3の回生時にバッファ用のサーボモータ6の速度が上がり過ぎることを防止でき、バッファ用のサーボモータ6の最高速を低く抑えることが可能になる。これにより、例えば、フライホイールの摩擦に伴う消費電力を抑えることが可能になる。
【0030】
また、本実施形態の産業用機械のサーボ制御装置1においては、バッファ用のサーボモータ6の最高速を低く抑えることができることによって、ベース速度上限設定(第一のベース速度)を従来よりも高く設定することができる。すなわち、バッファ用のサーボモータ6の略定格速度まで第一のベース速度を高めることができ、イナーシャあたりの供給電力の増大を図ることが可能になる。
【0031】
さらに、本実施形態の産業用機械のサーボ制御装置1においては、バッファ用サーボモータ6がドライブ用のサーボモータ3に供給する電力と、ドライブ用のサーボモータ3の回生電力を蓄電する電力との総和(バッファ用のサーボモータ6が供給/蓄電する電力の和)を低減することができ、結果、エネルギー損失の低減を図ることも可能になる。
【0032】
よって、本実施形態の産業用機械のサーボ制御装置1によれば、従来よりも電力効率に優れたシステムを構築することが可能になる。
【0033】
以上、産業用機械のサーボ制御装置の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 産業用機械のサーボ制御装置
2 CNC(NC)
3 ドライブ用のサーボモータ(電動機)
4 ドライブ用のサーボアンプ
5 負荷検出部
6 バッファ用のサーボモータ(電動機)
7 バッファ用のサーボアンプ
8 共通電源(電源)
9 消費電力許容範囲設定部
10 消費電力判定部
11 回生電力分配部
12 ベース速度設定部
図1
図2
図3
図4
図5