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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】飛散物防護装置
(51)【国際特許分類】
   A62B 99/00 20090101AFI20240409BHJP
   F16P 1/02 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A62B99/00 Z
F16P1/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019139112
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021019941
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅人
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 誠司
(72)【発明者】
【氏名】手塚 泰治
(72)【発明者】
【氏名】八木 健次
(72)【発明者】
【氏名】門脇 剛
(72)【発明者】
【氏名】二本木 健治
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0168702(US,A1)
【文献】特開平11-019837(JP,A)
【文献】特開平01-264765(JP,A)
【文献】特開昭50-026189(JP,A)
【文献】特開昭55-098513(JP,A)
【文献】米国特許第05228237(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 1/00-99/00
F16P 1/00- 7/02
F41H 5/00- 5/26
E01F 13/00-15/1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機器に隣接して配置される飛散物防護装置であって、
前記回転機器側に配向される前面と、前記前面とは反対側に位置する背面と、を有する防護板と、
長さ方向を有し、前記長さ方向の一端部が土台に固定され、且つ、前記防護板を前記背面側から支持するように構成された少なくとも一つの支持柱と、を備え、
前記少なくとも一つの支持柱は、
第1支持柱と、前記第1支持柱に対して前記防護板の幅方向に離間して配置された第2支持柱と、を含み、
前記飛散物防護装置は、
前記第1支持柱と前記第2支持柱とを接続するように構成された補強部材をさらに備え、
前記補強部材は、前記土台の床面よりも鉛直方向における上方に離間した位置を調整可能に配置された、
飛散物防護装置。
【請求項2】
前記支持柱の前記一端部と固定される固定部と、前記防護板の前記前面よりも前記回転機器側に向かって延在する延在部と、を含む固定板をさらに備え、
前記固定板は、前記延在部において前記土台と締結されている
請求項1に記載の飛散物防護装置。
【請求項3】
前記防護板における前記第1支持柱と前記第2支持柱との間の位置に、前記回転機器からの飛散物が衝突するように構成された
請求項1又は2に記載の飛散物防護装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つの支持柱は、前記長さ方向に沿って前記防護板に対して固定されている
請求項1乃至3の何れか1項に記載の飛散物防護装置。
【請求項5】
回転機器に隣接して配置される飛散物防護装置であって、
前記回転機器側に配向される前面と、前記前面とは反対側に位置する背面と、を有する防護板と、
長さ方向を有し、前記長さ方向の一端部が土台に固定され、且つ、前記防護板を前記背面側から支持するように構成された少なくとも一つの支持柱と、を備え、
前記少なくとも一つの支持柱は、前記防護板の幅方向の一方側の端部から前記幅方向の他方側に離れた位置にて前記防護板を支持するように構成された一方側支持柱を含み、
前記飛散物防護装置は、前記防護板における前記一方側の端部と前記一方側支持柱との間の領域と、前記回転機器とを連結するように構成された連結板をさらに備える
飛散物防護装置。
【請求項6】
回転機器に隣接して配置される飛散物防護装置であって、
前記回転機器側に配向される前面と、前記前面とは反対側に位置する背面と、を有する防護板と、
長さ方向を有し、前記長さ方向の一端部が土台に固定され、且つ、前記防護板を前記背面側から支持するように構成された少なくとも一つの支持柱と、を備え、
前記防護板は、前記前面が前記土台に対して鋭角に傾斜するように設けられた
飛散物防護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機器に隣接して配置される飛散物防護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばエンジンなどの回転機器(例えば、特許文献1参照)には、機器構造壁面に他の部分よりも強度が劣る脆弱部が存在する。図12は、従来の回転機器を説明するための説明図である。図12に示されるように、従来の回転機器011は、回転体012を収容する内部空間013を画定する機器構造壁面014と、機器構造壁面014に設けられて機器構造壁面014の内外を連通する貫通孔015を閉止可能に構成された蓋016と、を備えている。蓋016は、隅部をボルト018により締結することで、機器構造壁面014に固定されている。図示される例では、蓋016は、機器構造壁面014よりも薄肉に形成されており、回転機器011における脆弱部017となっている。
【0003】
図12に示されるように、回転機器011の内部空間013に収容される回転体012がバーストしたときに、回転体012の断片が飛散物012Aとなり、脆弱部017(例えば、蓋016)を突き抜けて回転機器011の外部に飛散する虞がある。よって、回転機器011からの飛散物012Aに対する安全対策が求められる。
【0004】
図13は、従来の回転機器における安全対策を説明するための説明図である。図13に示されるように、従来の安全対策として、飛散物012Aが貫通しないように、脆弱部017(例えば、蓋016)の増厚を行うことがある。また、飛散物012Aが蓋016に衝突したときの衝撃力により、蓋016を機器構造壁面014に固定しているボルト018が破断しないように、ボルト018を外径が太いものに変更することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-049653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蓋016を増厚すると蓋016が過度に重量化するため、蓋016の取り付け作業や取り外し作業が困難となるという問題がある。また、ボルト018を外径が太いものに変更する際には、機器構造壁面014にすでに設けられたボルト孔019を拡大する施工が必要となるが、上記施工は困難であるという問題もある。
【0007】
上述した事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態の目的は、容易に設置することができ、且つ、簡単な構造で回転機器からの飛散物から人や物を防護することができる飛散物防護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示にかかる飛散物防護装置は、
回転機器に隣接して配置される飛散物防護装置であって、
上記回転機器側に配向される前面と、上記前面とは反対側に位置する背面と、を有する防護板と、
長さ方向を有し、上記長さ方向の一端部が土台に固定され、且つ、上記防護板を上記背面側から支持するように構成された少なくとも一つの支持柱と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、容易に設置することができ、且つ、簡単な構造で回転機器からの飛散物から人や物を防護することができる飛散物防護装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態にかかる飛散物防護装置の概略構成図である。
図2図1に示す飛散物防護装置を背面側から視た状態を示す概略構成図である。
図3】第1の実施形態にかかる飛散物防護装置に飛散物が衝突したときを説明するための説明図である。
図4】飛散物防護装置に飛散物が衝突したときを説明するための説明図である。
図5】第1の実施形態にかかる飛散物防護装置の変形例を説明するための説明図である。
図6】第2の実施形態にかかる飛散物防護装置を背面側から視た状態を示す概略構成図である。
図7】第3の実施形態にかかる飛散物防護装置の概略構成図である。
図8】第4の実施形態にかかる飛散物防護装置を背面側から視た状態を示す概略構成図である。
図9】第4の実施形態にかかる飛散物防護装置を鉛直方向における上方から視た状態を示す概略構成図である。
図10】第5の実施形態にかかる飛散物防護装置の概略構成図である。
図11】第5の実施形態にかかる飛散物防護装置に飛散物が衝突したときを説明するための説明図である。
図12】従来の回転機器を説明するための説明図である。
図13】従来の回転機器における安全対策を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0012】
(飛散物防護装置)
図1は、第1の実施形態にかかる飛散物防護装置の概略構成図である。図2は、図1に示す飛散物防護装置を背面側から視た状態を示す概略構成図である。本開示の幾つかの実施形態にかかる飛散物防護装置1は、図1、2に示されるように、回転機器11からの飛散物12Aから人や物を防護するための装置であり、回転機器11に隣接して配置される。ここで、回転機器11は、その内部に回転体12を回転可能に収容するように構成された機器である。
【0013】
飛散物防護装置1は、既に設置されている回転機器11に対して後付け可能に構成されている。また、飛散物防護装置1は、回転機器11から取り外し可能に構成されている。例えば、回転機器11に隣接する機器のメンテナンス作業を行う際に、メンテナンス作業を行う作業者が回転機器11に近づくことになるため、作業者を回転機器11からの飛散物12Aから防護する必要がある。このため、飛散物防護装置1は、回転機器11に隣接する機器のメンテナンス作業前に回転機器11に対して設置され、メンテナンス作業後に回転機器11から取り外されてもよい。つまり、飛散物防護装置1は、回転機器11に対して一時的に設置されてもよい。
【0014】
図示される実施形態では、飛散物防護装置1は、図1に示されるように、回転機器11の機器構造壁面14における他の部分よりも強度が劣る脆弱部17に隣接して配置されている。図1に示される実施形態では、回転機器11は、回転体12を収容する内部空間13を画定する機器構造壁面14と、機器構造壁面14に設けられて機器構造壁面14の内外を連結する貫通孔15を閉止可能に構成された蓋16と、を備えている。蓋16は、隅部に形成された貫通孔161を挿通するボルト18が、機器構造壁面14のボルト孔19に螺合することにより、機器構造壁面14に固定されている。図1に示される実施形態では、蓋16は、機器構造壁面14よりも薄肉に形成されており、回転機器11における脆弱部17となっている。このため、飛散物防護装置1は、蓋16に隣接して配置されている。
【0015】
上述した回転機器11としては、例えば、クランクシャフトを収納するクランクケースと、クランクケースに設けられた貫通孔を閉止する蓋と、を備えるエンジンなどが挙げられる。また、回転体としては、例えば、クランクシャフトに装着され、クランクシャフトとの連動により、ピストンの往復直線運動を回転運動に変換するコネクティングロッドなどが挙げられる。
【0016】
上述した飛散物防護装置1は、例えば図1に示されるように、回転機器11側に配向される前面31と、前面31とは反対側に位置する背面32と、を有する防護板3と、防護板3を背面32側から支持するように構成された少なくとも一つの支持柱4(縦リブ)と、を備えている。少なくとも一つの支持柱4は、長さ方向を有し、上記長さ方向の一端部41(下端部)が土台20に固定されるように構成されている。つまり、少なくとも一つの支持柱4は、土台20に片持ち支持されている。
【0017】
土台20は、図1に示されるように、飛散物防護装置1を載置可能な床面21を有している。床面21は、水平方向に沿って延在している。「或る方向に沿って」とは、或る方向だけでなく、或る方向に対して傾斜する方向(例えば、或る方向に対して±45°以内)をも含むものである。土台20は、飛散物防護装置1よりもその剛性が高く設けられている。土台20は、例えば回転機器11が設置される設置面を有する床板であってもよいし、回転機器11の一部であってもよい。また、土台20は、複数の部材により構成されていてもよい。
【0018】
図示される実施形態では、土台20は、回転機器11の機器構造壁面14から水平方向(図1中左右方向)に沿って突出し、且つ、水平方向に沿って延在する上面221を有する水平延在部22を含んでいる。飛散物防護装置1は、水平延在部22の上面221に載せられる。図示されるように、飛散物防護装置1の一部が、水平延在部22の上面221からはみ出る場合には、スペーサ23を設けて、飛散物防護装置1の上面221からはみ出た一部をスペーサ23の上面231に載せるようにしてもよい。つまり、土台20は、水平延在部22と、スペーサ23と、を含んでいてもよい。スペーサ23は、スペーサ23の水平方向に沿って延在する上面231の高さ位置が、水平延在部22の上面221の高さ位置に揃うように、水平延在部22に隣接して設けられる。
【0019】
図示される実施形態では、飛散物防護装置1は、例えば図1に示されるように、支持柱4と土台20との間に設けられて、支持柱4を土台20に固定するように構成された固定板5をさらに備えている。なお、他の実施形態では、支持柱4が固定板5を介さずに土台20に直接固定される構成にしてもよい。
【0020】
図示される実施形態では、防護板3は、長さ方向と幅方向とを有する矩形の板状に形成されており、長さ方向が鉛直方向(図1中上下方向)に沿って配置されている。防護板3は、前面31が脆弱部17(例えば蓋16)に対向するように配置されている。防護板3は、その幅方向(図2中左右方向)が機器構造壁面14の外壁面や蓋16に平行な方向、且つ、水平方向に沿って配置される。
【0021】
図示される実施形態では、少なくとも一つの支持柱4は、長さ方向と幅方向とを有する板状に形成されており、長さ方向が鉛直方向に沿って配置されている。支持柱4は、支持柱4の幅方向(図1中左右方向)が、防護板3の幅方向に直交する方向、且つ、水平方向に沿って配置されている。
【0022】
図示される実施形態では、例えば図1、2に示されるように、防護板3は、支持柱4に対して位置がずれないように、支持柱4に取り付けられている。図1、2に示される実施形態では、防護板3は、背面32の上端縁部321から、回転機器11から離れる側(図1中右側)に向かって突出する突板部33と溶接により一体的に設けられている。支持柱4は、長さ方向の他端部42(上端部)上に設けられる上端板部43と溶接により一体的に設けられている。防護板3は、突板部33を上端板部43の上に載せて、突板部33と上端板部43とを締結部材24(例えば、ボルト24Aやナット24Bを含む)により締結することで、支持柱4に固定されている。なお、他の実施形態では、防護板3は、支持柱4に取り付けられなくてもよく、支持柱4に立て掛けられてもよい。
【0023】
固定板5は、板状に形成されており、土台20の床面21上に配置される。図示される実施形態では、固定板5は、図1に示されるように、支持柱4の一端部41と固定される固定部51と、防護板3の前面31よりも回転機器11側(図1中左側)に向かって延在する延在部52と、を含んでいる。固定板5は、延在部52において土台20と締結されている。
【0024】
図1に示される実施形態では、支持柱4は、支持柱4の一端部41の端面411が固定部51の上面53に当接し、一端部41の下端縁部412と固定部51の上面53とが溶接により接合されることで、固定部51と一体的に設けられている。また、固定板5は、延在部52に固定板5の厚さ方向(図1中上下方向)に沿って貫通する貫通孔521が形成され、上記貫通孔521を挿通し、且つ、土台20に形成された雌ネジ孔201に螺合する雄ネジ部251を有する締結部材25(例えばボルト25A)によって、土台20に締結されている。
【0025】
なお、他の実施形態では、支持柱4は、溶接以外の方法(例えば、ボルトなどの締結部材による締結)により固定板5に固定されてもよい。また、固定板5は、防護板3の前面31よりも回転機器11から離れた側において土台20と固定されてもよい。
【0026】
上述したように、幾つかの実施形態にかかる飛散物防護装置1は、例えば図1に示されるように、前面31と背面32とを有する上述した防護板3と、長さ方向の一端部41が土台20に固定され、且つ、防護板3を背面32側から支持するように構成された上述した少なくとも一つの支持柱4と、を備える。
【0027】
図1に示されるように、回転機器11の内部空間13に収容される回転体12がバーストしたときに、回転体12の断片が飛散物12Aとなり、回転機器11の脆弱部17(例えば、蓋16)を突き抜けて回転機器11の外部に飛散する。
【0028】
上記の構成によれば、回転機器11に隣接して配置される飛散物防護装置1は、前面31が回転機器11側に配向される防護板3と、防護板3を背面32側から支持するように構成された少なくとも一つの支持柱4と、を備える簡単な構造となっている。上記飛散物防護装置1は、例えば回転体12のバーストなどにより、回転機器11から外部に飛散物12Aが飛散したときに、防護板3の前面31が飛散物12Aを受けるようになっている。防護板3は、長さ方向の一端部41が土台20に固定された支持柱4により背面32側から支持されているので、前面31に衝突した飛散物12Aの移動方向を安全な方向(例えば鉛直方向の上方や下方)に向けることができる。つまり、防護板3は、前面31に衝突前の飛散物12Aの移動方向に向かう速度成分をなくす、又は減らすことができる。飛散物防護装置1により飛散物12Aの移動方向を安全な方向に向けることで、飛散物12Aから人や物を防護することができる。また、上記飛散物防護装置1は、図1に示されるように、飛散物防護装置1を土台20に載せて、支持柱4を土台20に固定することで設置が完了するため、容易に設置することができる。
【0029】
図1に示されるように、上記飛散物防護装置1において、防護板3の前面31に飛散物12Aが衝突したときに、飛散物12Aの衝撃力Fは、支持柱4に長さ方向の他端部42側を背面方向に向かって曲げる曲げ荷重Mとして作用する。上記曲げ荷重Mは、支持柱4の長さ方向の一端部41の背面側(回転機器11から離れる側、図1中右側)に作用する圧縮荷重CLを含んでいる。上記飛散物防護装置1は、図1に示されるように、支持柱4が設計上の衝撃荷重(曲げ荷重M)により曲げ変形不能に構成した場合には、上記支持柱4に支持された防護板3が飛散物12Aを受け止めることができるため、飛散物12Aの運動エネルギを効果的に吸収することができる。
【0030】
図3は、第1の実施形態にかかる飛散物防護装置に飛散物が衝突したときを説明するための説明図である。図3においては、曲げ荷重M(圧縮荷重CL)により変形する前の防護板3や支持柱4を二点鎖線で示している。上記飛散物防護装置1は、図3に示されるように、支持柱4が設計上の衝撃荷重により曲げ変形可能に構成した場合には、支持柱4は、長さ方向の一端部41の背面側に作用する圧縮荷重CLにより座屈し、背面方向に向かって曲がることで、飛散物12Aの運動エネルギの一部を吸収することができる。支持柱4は、図2に二点鎖線で示されるように、圧縮荷重CLにより防護板3の幅方向に沿った方向に向かって座屈するため、飛散物12Aの運動エネルギの一部を効果的に吸収することができる。また、飛散物防護装置1は、図3に示されるように、支持柱4が背面方向に向かって曲がることで、飛散物防護装置1が飛散物12Aから受け取る運動エネルギを抑制しつつ、防護板3に衝突した飛散物12Aの移動方向を安全な方向(例えば鉛直方向の上方)に向けることができる。
【0031】
幾つかの実施形態では、例えば図1に示されるように、上述した少なくとも一つの支持柱4は、少なくとも一つの支持柱4は、長さ方向における中央よりも他端部42(上端部)側に、他端部42側に向かうにつれて徐々に幅寸法が小さくなるように構成されたテーパ部421が形成されている。少なくとも一つの支持柱4は、土台20に片持ち支持されている。このため、飛散物12Aから衝撃力Fが加えられると、長さ方向における一端部41側に荷重が集中して作用する。よって、上記荷重が集中して作用しない長さ方向における他端部42側にテーパ部421を設けることで、支持柱4の重量化を抑制することができる。支持柱4の重量化を抑制することで、飛散物防護装置1を容易に設置することができる。
【0032】
図4は、飛散物防護装置に飛散物が衝突したときを説明するための説明図である。
上述したように、幾つかの実施形態では、上述した飛散物防護装置1は、例えば図1に示されるように、支持柱4の一端部41と固定される固定部51と、防護板3の前面31よりも回転機器11側(図1中左側)に向かって延在する延在部52と、を含む上述した固定板5をさらに備えている。固定板5は、延在部52において土台20と締結されている。
【0033】
この場合には、飛散物12Aの衝撃力Fが、固定板5の機器から離れた側(図1中右側)の端部(固定部51)を土台20に押し付けるような曲げ荷重Mとして、固定板5よりも支持柱4を変形させるように作用する。これに対して、図4に示されるように、仮に固定板5が防護板3の背面32よりも回転機器11から離れた側において土台20と締結されている場合には、飛散物12Aの衝撃力Fが、固定板5の回転機器11側の端部(延在部52)や支持柱4が土台20から浮き上がるような曲げ荷重として、支持柱4よりも固定板5を変形させるように作用する。よって、上記の構成によれば、飛散物12Aの衝撃力Fが、支持柱4を変形させるように作用するので、上述した圧縮荷重CLを支持柱4の一端部41の背面側に効果的に生じさせることができ、支持柱4の背面方向への曲げ変形を促すことができる。
【0034】
幾つかの実施形態では、上述した少なくとも一つの支持柱4は、図2に示されるように、第1支持柱4Aと、第1支持柱4Aに対して防護板3の幅方向に離間して配置された第2支持柱4Bと、を含んでいる。防護板3における第1支持柱4Aと第2支持柱4Bとの間の位置に、回転機器11からの飛散物12Aが衝突するように構成された。
【0035】
図2における二点鎖線で囲まれた範囲SR(想定飛散範囲)は、設計上、回転機器11からの飛散物12Aが防護板3に衝突すると想定される範囲である。図示される実施形態では、回転体12の回転軸は、防護板3の幅方向(図2中左右方向)に対して平行な方向に沿って延在している。飛散物12Aは、主に回転体12の回転接線方向に沿って飛散するため、想定飛散範囲SRは、回転機器11の貫通孔15に比べて、鉛直方向における上方や下方に大きく拡大するようになっている。第1支持柱4Aや第2支持柱4Bは、防護板3における第1支持柱4Aと第2支持柱4Bとの間の位置に、想定飛散範囲SRが納まるように配置される。
【0036】
上記の構成によれば、防護板3における第1支持柱4Aと第2支持柱4Bとの間の位置に、回転機器11からの飛散物12Aが衝突するように構成されているので、防護板3における第1支持柱4Aや第2支持柱4Bが存在する位置に飛散物12Aが衝突して、第1支持柱4Aや第2支持柱4Bに運動エネルギが直接的に伝達されるのを抑制することができる。第1支持柱4Aや第2支持柱4Bに運動エネルギが直接的に伝達されるのを抑制することで、第1支持柱4Aや第2支持柱4Bの土台20との固定部(例えば、一端部41)に過度な荷重が作用することを抑制することができる。また、防護板3における第1支持柱4Aと第2支持柱4Bとの間に飛散物12Aが衝突したときに、防護板3を背面32側に撓ませることで、飛散物防護装置1が飛散物12Aから受け取る運動エネルギを抑制することができ、ひいては第1支持柱4Aや第2支持柱4Bの土台20との固定部にかかる荷重を緩和することができる。
【0037】
飛散物防護装置1は、飛散物12Aの飛散を防止するために適切な剛性を得ることができるように、支持柱4の数を増減させてもよい。つまり、他の実施形態では、飛散物防護装置1は、一つ又は三つ以上の複数の支持柱4を備えていてもよい。
【0038】
図5は、第1の実施形態にかかる飛散物防護装置の変形例を説明するための説明図である。幾つかの実施形態では、図5に示されるように、上述した防護板3は、その上端34(最上部)が、貫通孔15の上端151(最上部)や蓋16の上端162(最上部)よりも鉛直方向における上方に位置している。この場合には、飛散物12Aが鉛直方向における上方に向かう速度成分を有し、貫通孔15を通過後に斜め上方に飛散した場合であっても、防護板3の前面31により飛散物12Aを受けることができる。よって、上記の構成によれば、防護板3がより確実に飛散物12Aを受けることができるため、飛散物防護装置1の防護性能を向上させることができる。また、上記の構成によれば、防護板3を支持する支持柱4の長さ方向の長さを長くして、支持柱4の耐荷重を低減させることができる。支持柱4の耐荷重を低減させると、上述した曲げ荷重Mにより支持柱4が変形し易くなるため、支持柱4の土台20との固定部(一端部41)に過度な荷重が作用することを抑制することができる。
【0039】
図6は、第2の実施形態にかかる飛散物防護装置を背面側から視た状態を示す概略構成図である。
幾つかの実施形態では、図6に示されるように、上述した少なくとも一つの支持柱4は、上述した第1支持柱4Aと、第1支持柱4Aに対して防護板3の幅方向に離間して配置された上述した第2支持柱4Bと、を含んでいる。そして、上述した飛散物防護装置1は、第1支持柱4Aと第2支持柱4Bとを接続するように構成された補強部材6(横リブ)をさらに備えている。
【0040】
図示される実施形態では、図6に示されるように、補強部材6は、長さ方向を有する矩形の板状に形成されており、補強部材6の長さ方向が防護板3の幅方向(図6中左右方向)に沿うように、第1支持柱4Aから第2支持柱4Bまでに亘り延在している。上記補強部材6は、土台20の床面21よりも鉛直方向における上方に離間した位置において、補強部材6の厚さ方向における一方の面61が、第1支持柱4Aや第2支持柱4Bに当接して配置されている。そして、補強部材6は、その長さ方向の一端部62が第1支持柱4Aに溶接により接合され、その長さ方向の他端部63が第2支持柱4Bに溶接により接合されることで、第1支持柱4Aと第2支持柱4Bとを接続している。なお、他の実施形態では、補強部材6は、溶接以外の方法(例えば締結部材による締結)により第1支持柱4Aや第2支持柱4Bに固定されてもよい。
【0041】
上記の構成によれば、飛散物防護装置1は、防護板3の幅方向に離間して配置された第1支持柱4Aと第2支持柱4Bとを接続するように構成された補強部材6をさらに備えている。この場合には、補強部材6により、第1支持柱4Aや第2支持柱4Bにおける補強部材6に接続された部分44(図6参照)の背面方向への曲げ荷重Mに対する剛性を向上させることができる。また、補強部材6の第1支持柱4Aや第2支持柱4Bに接続される位置CP(床面21から補強部材6の下端64までの鉛直長さ)を調整することで、第1支持柱4Aや第2支持柱4Bの座屈長(上述した曲げ荷重Mにより変形する部分の長さ)を調整することができる。第1支持柱4Aや第2支持柱4Bの座屈長を調整することで、飛散物12Aの衝撃力Fによる第1支持柱4Aや第2支持柱4Bの曲げ変形量を調整することができるため、防護板3に衝突した飛散物12Aの移動方向をより精度良く安全な方向に向けることができる。
【0042】
例えば、補強部材6の第1支持柱4Aや第2支持柱4Bに接続される位置CPを高くすることで、座屈長を長くすることができ、飛散物12Aの衝撃力Fによる第1支持柱4Aや第2支持柱4Bの曲げ変形量を大きなものとすることができる。また、上記CPを低くすることで、座屈長を短くすることができ、飛散物12Aの衝撃力Fによる第1支持柱4Aや第2支持柱4Bの曲げ変形量を小さなものとすることができる。
【0043】
図7は、第3の実施形態にかかる飛散物防護装置の概略構成図である。
幾つかの実施形態では、図7に示されるように、上述した少なくとも一つの支持柱4は、支持柱4の長さ方向に沿って防護板3に対して固定されている。
【0044】
図示される実施形態では、上述した少なくとも一つの支持柱4は、図7に示されるように、溶接による接合により、防護板3に固定されている。この場合には、上述した飛散物防護装置1は、上述した突板部33や上述した締結部材24が不要である。
図7に示される実施形態では、上述した飛散物防護装置1は、防護板3の背面32に支持柱4の回転機器11側の端部45を当接させ、上記端部45の縁部451と背面32とを支持柱4の長さ方向に沿って溶接により接合する第1溶接部WP1と、固定板5の上面に防護板3の下端35を当接させ、それらの縁部を溶接により接合する第2溶接部WP2と、を備えている。つまり、防護板3は、溶接により支持柱4だけでなく、固定板5にも固定されている。この場合には、防護板3が支持柱4だけに固定されている場合に比べて、支持柱4の剛性を向上させることができる。
【0045】
上記の構成によれば、支持柱4は、長さ方向に沿って防護板3に対して固定されているので、支持柱4の剛性を向上させることができる。ここで、支持柱4は、飛散物12Aから受け取る衝撃力Fが大きいと、支持柱4の長さ方向の一端部41に荷重が集中して破断する虞がある。上記荷重が集中する範囲である応力集中範囲SCを図7において二点鎖線で囲んでいる。応力集中範囲SCは、支持柱4の長さ方向の一端部41における回転機器11側に存在している。上記の構成によれば、支持柱4の剛性を向上させることで、支持柱4の破断を抑制することができる。また、支持柱4の破断を抑制することで、支持柱4の許容曲げ変形量を大きくできるため、支持柱4により飛散物12Aの運動エネルギをより大量に吸収することができる。
【0046】
なお、図7に示される実施形態では、上述した第1溶接部WP1は、支持柱4の長さ方向における一端部41側および他端部42側の両方に亘り存在していたが、荷重が集中する支持柱4の長さ方向における一端部41側のみに存在するようにしてもよい。また、支持柱4が所望の剛性を有する場合には、第1溶接部WP1や第2溶接部WP2を設けなくてもよい。
【0047】
図8は、第4の実施形態にかかる飛散物防護装置を背面側から視た状態を示す概略構成図である。図9は、第4の実施形態にかかる飛散物防護装置を鉛直方向における上方から視た状態を示す概略構成図である。
幾つかの実施形態では、上述した少なくとも一つの支持柱4は、図8、9に示されるように、防護板3の幅方向の一方側の端部36から幅方向の他方側に離れた位置にて防護板3を支持するように構成された一方側支持柱4Cを含んでいる。上述した飛散物防護装置1は、防護板3における上記一方側の端部36と一方側支持柱4Cとの間の領域37と、他の機器26とを連結するように構成された連結板7をさらに備えている。
【0048】
上述した一方側支持柱4Cは、上記端部36に最も近くに配置された支持柱4(4A、4B)である。上記端部36は、図8に示されるように、防護板3を背面32側から視たときに左側に位置する端部36Aでもよく、右側に位置する端部36Bでもよい。
【0049】
図示される実施形態では、図8、9に示されるように、他の機器26は、上述した飛散物防護装置1を含んでいる。つまり、二つの飛散物防護装置1が、防護板3の幅方向に沿って互いに離れた配置されている。図8中右側に位置する飛散物防護装置1は、防護板3における上記端部36Aと一方側支持柱4Cとの間の領域37(37A)に、防護板3を貫通する少なくとも一つ(図中4つ)貫通孔38(38A)が形成されている。図8中左側に位置する飛散物防護装置1は、防護板3における上記端部36Bと一方側支持柱4Cとの間の領域37(37B)に、防護板3を貫通する少なくとも一つ(図中4つ)の貫通孔38(38B)が形成されている。上記貫通孔38(38A、38B)は、防護板3の長さ方向における中央よりも下方に形成されている。連結板7は、長さ方向を有する矩形の板状に形成されている。連結板7は、長さ方向の一端部71が、図8中左側に位置する飛散物防護装置1の上記領域37Bに背面32側から当接し、長さ方向の他端部72が、図8中右側に位置する飛散物防護装置1の上記領域37Aに背面32側から当接している。つまり、連結板7は、一方の飛散物防護装置1の領域37から他方の飛散物防護装置1の領域37までに亘り延在している。
【0050】
図示される実施形態では、連結板7は、長さ方向の一端部71が、図9中左側に位置する飛散物防護装置1の上記領域37Bに締結部材27により締結されている。図9に示される実施形態では、連結板7の長さ方向の一端部71に少なくとも一つの貫通孔711が形成されている。締結部材27は、上記貫通孔711および上記領域37Bに形成された貫通孔38Bを挿通するボルト27Aと、ボルト27Aの挿入側とは反対側においてボルト27Aに螺合するナット27Bと、を含んでいる。
【0051】
図示される実施形態では、連結板7は、長さ方向の他端部72が、図9中右側に位置する飛散物防護装置1の上記領域37Aに締結部材27により締結されている。図9に示される実施形態では、連結板7の長さ方向の他端部72に少なくとも一つの貫通孔721が形成されている。締結部材27は、上記貫通孔721および上記領域37Aに形成された貫通孔38Aを挿通するボルト27Cと、ボルト27Cの挿入側とは反対側においてボルト27Cに螺合するナット27Dと、を含んでいる。この場合には、防護板3は、連結板7を介して他の飛散物防護装置1により支持されているので、飛散物防護装置1が受ける衝撃荷重(曲げ荷重M)を他の飛散物防護装置1に分散させることができる。
【0052】
なお、他の実施形態では、他の機器26は、飛散物防護装置1以外の機器を含んでいてもよい。図示に示される実施形態では、他の機器26は、図9に示されるように、上述した回転機器11をさらに含んでいる。つまり、連結板7は、防護板3の上述した領域37と、回転機器11とを連結するように構成されている。図示される実施形態では、連結板7は、図8、9に示されるように、連結装置8により回転機器11の機器構造壁面14に固定されている。なお、他の幾つかの実施形態では、他の機器26は、回転機器11のみを含んでいてもよい。
【0053】
連結装置8は、図9に示されるように、機器構造壁面14に固定される棒状部材81と、棒状部材81に固定されるとともに、連結板7の中央に形成された貫通孔701を挿通する挿通部823を含む連結部材82と、連結部材82の挿通部823に螺合するように構成されたナット83と、を備えている。
【0054】
図示される実施形態では、棒状部材81は、長さ方向における一方に形成された雄ねじ部811が、機器構造壁面14に形成された雌ねじ孔141に螺合することで、機器構造壁面14に固定されている。棒状部材81は、長さ方向における他方に雄ネジ部812が形成されている。連結部材82は、上記雄ネジ部812に螺合するように構成された雌ネジ孔821が形成された締結部822と、上述した挿通部823と、を含んでいる。図9に示される実施形態では、挿通部823は、締結部822よりも外径が小さく構成されており、連結部材82は、締結部822と挿通部823とを繋ぐ接続部825であって、締結部822側から挿通部823側に向かうにつれて徐々に外径が小さくなるように構成された接続部825をさらに含んでいる。締結部822は、回転機器11側から連結板7の貫通孔701に挿入され、貫通孔701から突出した先端部に形成された雄ねじ部824にナット83が螺合することで、連結板7に締結されている。この場合には、防護板3は、連結板7を介して回転機器11に支持されているので、飛散物防護装置1が受ける衝撃荷重(曲げ荷重M)を回転機器11に分散させることができる。
【0055】
上記の構成によれば、飛散物防護装置1は、連結板7により上記一方側の端部36と一方側支持柱4Cとの間の領域37と他の機器26とを連結することで、簡単な構造で防護板3の剛性を向上させることができる。防護板3の剛性を向上させることで、防護板3がより確実に飛散物12Aを受けることができるため、飛散物防護装置1の防護性能を向上させることができる。
【0056】
図10は、第5の実施形態にかかる飛散物防護装置の概略構成図である。図11は、第5の実施形態にかかる飛散物防護装置に飛散物が衝突したときを説明するための説明図である。
幾つかの実施形態では、図10に示されるように、上述した防護板3は、前面31が土台20に対して鋭角に傾斜するように設けられている。つまり、防護板3は、長さ方向の他端部側(上端34側)が長さ方向の一端部側(下端35側)よりも回転機器11側に傾斜している。図示される実施形態では、図10に示されるように、上述した少なくとも一つの支持柱4は、長さ方向の他端部42側が長さ方向の一端部41側よりも回転機器11側に傾斜している。
【0057】
上記の構成によれば、飛散物防護装置1の防護板3は、前面31が土台20に対して鋭角に傾斜するように設けられている。つまり、防護板3は、長さ方向の他端部側(上端34側)が一端部側(下端35側)よりも回転機器11側に傾斜している。図10に示されるように、飛散物防護装置1は、支持柱4が設計上の衝撃荷重(曲げ荷重)により曲げ変形不能に構成した場合には、回転機器11側に傾斜した防護板3が飛散物12Aを下向きに跳ね返すことができるため、飛散物防護装置1の防護性能を向上させることができる。また、図11に示されるように、飛散物防護装置1は、支持柱4が設計上の衝撃荷重により曲げ変形可能に構成した場合には、支持柱4の背面方向への許容曲げ角度や許容曲げ変形量を大きくすることができるため、支持柱4により飛散物12Aの運動エネルギをより大量に吸収することができる。つまり、図10に示されるような、前面31が土台20に対して鋭角に傾斜するように設けられた防護板3を支持する支持柱4は、図1に示されるような、土台20に対して鉛直方向に延在している防護板3を支持する支持柱4に比べて、防護板3の傾斜分だけ支持柱4の背面方向への許容曲げ角度や許容曲げ変形量を増やすことができる。
【0058】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0059】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0060】
1)本開示の少なくとも一実施形態にかかる飛散物防護装置(1)は、
回転機器(11)に隣接して配置される飛散物防護装置(1)であって、
上記回転機器(11)側に配向される前面(31)と、上記前面(31)とは反対側に位置する背面(32)と、を有する防護板(3)と、
長さ方向を有し、上記長さ方向の一端部(41)が土台(20)に固定され、且つ、上記防護板(3)を上記背面(32)側から支持するように構成された少なくとも一つの支持柱(4)と、を備える。
【0061】
上記1)の構成によれば、回転機器に隣接して配置される飛散物防護装置は、前面が回転機器側に配向される防護板と、防護板を背面側から支持するように構成された少なくとも一つの支持柱と、を備える簡単な構造となっている。上記飛散物防護装置は、例えば回転体のバーストなどにより、回転機器から外部に飛散物が飛散したときに、防護板の前面が飛散物を受けるようになっている。防護板は、長さ方向の一端部が土台に固定された支持柱により背面側から支持されているので、前面に衝突した飛散物の移動方向を安全な方向(例えば鉛直方向の上方や下方)に向けることができる。飛散物防護装置により飛散物の移動方向を安全な方向に向けることで、飛散物から人や物を防護することができる。また、上記飛散物防護装置は、飛散物防護装置を土台に載せて、支持柱を土台に固定することで設置が完了するため、容易に設置することができる。
【0062】
上記飛散物防護装置において、防護板の前面に飛散物が衝突したときに、飛散物の衝撃力は、支持柱に長さ方向の他端部側を背面方向に向かって曲げる曲げ荷重として作用する。上記曲げ荷重は、支持柱の長さ方向の一端部の背面側に作用する圧縮荷重を含んでいる。上記飛散物防護装置は、支持柱が設計上の衝撃荷重(曲げ荷重)により曲げ変形不能に構成した場合には、上記支持柱に支持された防護板が飛散物を受け止めることができるため、飛散物の運動エネルギを効果的に吸収することができる。
【0063】
また、上記飛散物防護装置は、支持柱が設計上の衝撃荷重により曲げ変形可能に構成した場合には、支持柱は、長さ方向の一端部の背面側に作用する圧縮荷重により座屈し、背面方向に向かって曲がることで、飛散物の運動エネルギの一部を吸収することができる。また、飛散物防護装置は、支持柱が背面方向に向かって曲がることで、飛散物防護装置が飛散物から受け取る運動エネルギを抑制しつつ、防護板に衝突した飛散物の移動方向を安全な方向に向けることができる。
【0064】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の飛散物防護装置(1)は、
上記支持柱(4)の上記一端部(41)と固定される固定部(51)と、上記防護板(3)の上記前面(31)よりも上記回転機器(11)側に向かって延在する延在部(52)と、を含む固定板(5)をさらに備え、
上記固定板(5)は、上記延在部(52)において上記土台(20)と締結されている。
【0065】
上記2)の構成によれば、固定板は、支持柱の一端部と固定される固定部と、防護板の前面よりも回転機器側に向かって延在する延在部とを含み、延在部において土台と締結されている。この場合には、飛散物の衝撃力が、固定板の機器から離れた側の端部を土台に押し付けるような曲げ荷重として、固定板よりも支持柱を変形させるように作用する。これに対して、仮に固定板が防護板の背面よりも回転機器から離れた側において土台と締結されている場合には、飛散物の衝撃力が、固定板の回転機器側の端部や支持柱が土台から浮き上がるような曲げ荷重として支持柱よりも固定板を変形させるように作用する。よって、上記の構成によれば、飛散物の衝撃力が、支持柱を変形させるように作用するので、上述した圧縮荷重を支持柱の一端部の背面側に効果的に生じさせることができ、支持柱の背面方向への曲げ変形を促すことができる。
【0066】
3)幾つかの実施形態では、上記1)又は2)に記載の飛散物防護装置(1)であって、
上記少なくとも一つの支持柱(4)は、
第1支持柱(4A)と、上記第1支持柱(4A)に対して上記防護板(3)の幅方向に離間して配置された第2支持柱(4B)と、を含み、
上記防護板(3)における上記第1支持柱(4A)と上記第2支持柱(4B)との間の位置に、上記回転機器(11)からの飛散物(12A)が衝突するように構成された。
【0067】
上記3)の構成によれば、防護板における第1支持柱と第2支持柱との間の位置に、回転機器からの飛散物が衝突するように構成されているので、防護板における第1支持柱や第2支持柱が存在する位置に飛散物が衝突して、第1支持柱や第2支持柱に運動エネルギが直接的に伝達されるのを抑制することができる。第1支持柱や第2支持柱に運動エネルギが直接的に伝達されるのを抑制することで、第1支持柱や第2支持柱の土台との固定部に過度な荷重が作用することを抑制することができる。また、防護板における第1支持柱と第2支持柱との間に飛散物が衝突したときに、防護板を背面側に撓ませることで、飛散物防護装置が飛散物から受け取る運動エネルギを抑制することができ、ひいては第1支持柱や第2支持柱の土台との固定部にかかる荷重を緩和することができる。
【0068】
4)幾つかの実施形態では、上記1)~3)の何れかに記載の飛散物防護装置(1)であって、
上記少なくとも一つの支持柱(4)は、
第1支持柱(4A)と、上記第1支持柱(4A)に対して上記防護板(3)の幅方向に離間して配置された第2支持柱(4B)と、を含み、
上記飛散物防護装置(1)は、
上記第1支持柱(4A)と上記第2支持柱(4B)とを接続するように構成された補強部材(6)をさらに備える。
【0069】
上記4)の構成によれば、飛散物防護装置は、防護板の幅方向に離間して配置された第1支持柱と第2支持柱とを接続するように構成された補強部材をさらに備える。この場合には、補強部材により、第1支持柱や第2支持柱における補強部材に接続された部分の背面方向への曲げ荷重に対する剛性を向上させることができる。また、補強部材の第1支持柱や第2支持柱に接続される位置(拘束位置)を調整することで、第1支持柱や第2支持柱の座屈長を調整することができる。第1支持柱や第2支持柱の座屈長を調整することで、飛散物の衝撃力による第1支持柱や第2支持柱の曲げ変形量を調整することができるため、防護板に衝突した飛散物の移動方向をより精度良く安全な方向に向けることができる。
【0070】
5)幾つかの実施形態では、上記1)~4)の何れかに記載の飛散物防護装置(1)であって、
上記少なくとも一つの支持柱(4)は、上記長さ方向に沿って上記防護板(3)に対して固定されている。
【0071】
上記5)の構成によれば、支持柱は、長さ方向に沿って防護板に対して固定されているので、支持柱の剛性を向上させることができる。ここで、支持柱は、飛散物から受け取る衝撃力が大きいと、支持柱の長さ方向の一端部に荷重が集中して破断する虞がある。上記の構成によれば、支持柱の剛性を向上させることで、支持柱の破断を抑制することができる。また、支持柱の破断を抑制することで、支持柱の許容曲げ変形量を大きくできるため、支持柱により飛散物の運動エネルギをより大量に吸収することができる。
【0072】
6)幾つかの実施形態では、上記1)~5)の何れかに記載の飛散物防護装置(1)であって、
上記少なくとも一つの支持柱(4)は、上記防護板(3)の幅方向の一方側の端部(36)から上記幅方向の他方側に離れた位置にて上記防護板(3)を支持するように構成された一方側支持柱(4C)を含み、
上記飛散物防護装置(1)は、上記防護板(3)における上記一方側の端部(36)と上記一方側支持柱(4C)との間の領域(37)と、他の機器(26)とを連結するように構成された連結板(7)をさらに備える。
【0073】
上記6)の構成によれば、飛散物防護装置は、連結板により上記一方側の端部と一方側支持柱との間の領域と他の機器とを連結することで、簡単な構造で防護板の剛性を向上させることができる。防護板の剛性を向上させることで、防護板がより確実に飛散物を受けることができるため、飛散物防護装置の防護性能を向上させることができる。
【0074】
7)幾つかの実施形態では、上記1)~6)の何れかに記載の飛散物防護装置(1)であって、
上記防護板(3)は、上記前面(31)が上記土台(20)に対して鋭角に傾斜するように設けられた。
【0075】
上記7)の構成によれば、上記飛散物防護装置の防護板は、前面が土台に対して鋭角に傾斜するように設けられている。つまり、防護板は、長さ方向の他端部側が一端部側よりも回転機器側に傾斜している。上記飛散物防護装置は、支持柱が設計上の衝撃荷重(曲げ荷重)により曲げ変形不能に構成した場合には、回転機器側に傾斜した防護板が飛散物を下向きに跳ね返すことができるため、飛散物防護装置の防護性能を向上させることができる。また、上記飛散物防護装置は、支持柱が設計上の衝撃荷重により曲げ変形可能に構成した場合には、支持柱の背面方向への許容曲げ角度や許容曲げ変形量を大きくすることができるため、支持柱により飛散物の運動エネルギをより大量に吸収することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 飛散物防護装置
3 防護板
31 前面
32 背面
33 突板部
34 上端
35 下端
36,36A,36B 端部
37,37A,37B 領域
38,38A,38B 貫通孔
4 支持柱
4A 第1支持柱
4B 第2支持柱
4C 一方側支持柱
41 一端部
42 他端部
43 上端板部
5 固定板
51 固定部
52 延在部
6 補強部材
7 連結板
8 連結装置
81 棒状部材
82 連結部材
83 ナット
011,11 回転機器
012,12 回転体
012A,12A 飛散物
013,13 内部空間
014,14 機器構造壁面
015,15 貫通孔
016,16 蓋
017,17 脆弱部
018,18 ボルト
019,19 ボルト孔
20 土台
21 床面
22 水平延在部
23 スペーサ
24,25,27 締結部材
26 機器
CL 圧縮荷重
CP 位置
F 衝撃力
M 曲げ荷重
SC 応力集中範囲
SR 想定飛散範囲
WP1 第1溶接部
WP2 第2溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13