(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】粉末
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4172 20060101AFI20240409BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20240409BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20240409BHJP
A61K 35/60 20060101ALI20240409BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240409BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240409BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240409BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240409BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240409BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240409BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20240409BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20240409BHJP
【FI】
A61K31/4172
A61P3/02
A61P39/06
A61K35/60
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/42
A23L33/18
A23L17/00 Z
(21)【出願番号】P 2019154177
(22)【出願日】2019-08-26
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390023456
【氏名又は名称】株式会社極洋
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】前川 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】川端 康之亮
(72)【発明者】
【氏名】澤田 亮
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-016166(JP,A)
【文献】特開2018-134068(JP,A)
【文献】特開2018-100226(JP,A)
【文献】アカマンボウ、疲労抑制機能物質「バレニン」を高含有~食品開発展2018セミナー,日本食品機能研究会(JAFRA)[online], 2018年(検索日:2023年9月25日),https://www.jafra.gr.jp/f455.html
【文献】バレニンEX イミダゾールペプチドの一種バレニン含有率が高いマンダイエキスを1袋に5000mg(100粒)配合, Amazon[online], 2019年5月31日(検索日:2023年9月25日),https://amzn.asia/d/7DYMu32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アカマンボウ由来の粉末であって、
バレニン
と賦形
剤と、を含有
し、
質量比において、前記バレニンを含有する抽出物を1としたときに、前記賦形剤が1超4以下である、
粉末。
【請求項2】
前記賦形
剤が、マルトデキストリン、ガラクトマンナン、サイクロデキストリン、デキストリン、でんぷん、マンニトール、結晶セルロース、乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メタアクリル酸コポリマー、マクロゴール、デンプン、ゼラチン、プルラン、カンテン、及びアラビアゴムからなる群より選択される少なくとも1種である、
請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
質量比において、前記バレニンを含有する該抽出物を1としたときに、前記賦形剤が1超2以下である、
請求項1に記載の粉末。
【請求項4】
前記粉末は、魚肉由来であり、かつ
前記魚肉における血合肉から形成された該粉末の割合が5wt%未満である、
請求項1乃至請求項3
のいずれか1項に記載の粉末。
【請求項5】
水分量が0wt%超10wt%以下である、
請求項1乃至請求項4
のいずれか1項に記載の粉末。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の粉末を含む、又は該粉末由来の、
錠剤、カプセル剤、散剤、丸剤、シロップ剤、液剤、ドリンク剤、トローチ剤、ドロップ、又は水飴である、
製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末、特にバレニンを含む粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
健康は市民生活を豊かにし、活力ある社会の構築に貢献する。健康の維持又は増進に役立ち得る食品を提供することは、今や先進国のみならず開発途上国においても重要な課題である。そのような食品の代表格の一つは、魚に代表される水産物である。人間は、長期にわたって魚を食しており、その良質な動物性たんぱく質、低カロリー、及び脳機能の改善といった特徴については、従来から注目されてきた。
【0003】
近年、人間の生理機能を高めると言われる水産物のうち、抗酸化作用及び/又は抗疲労作用等に着目した魚にも注目が集まっている(非特許文献1)。
【0004】
例えば、イミダゾールジペプチドに分類される物質は主として3種類が存在し、一般的には、魚の中に存在するイミダゾールジペプチドの種類は偏っている。具体的には、イミダゾールジペプチドのうち、アンセリンとカルノシンが主として魚に含まれている。例えば、カツオ、マグロといった高速回遊魚は、アンセリンを比較的多く含むことが知られている。また、カルノシンとアンセリンは、魚介類以外にも、例えば豚肉又は鶏肉に豊富に含まれている。そのため、カルノシンとアンセリンについての研究は盛んに進められている。特にカルノシンについては、血清又は組織中に存在するカルノシンジペプチダーゼによってカルノシンが分解され、カルノシンの機能発揮の障害となっていることから、カルノシンジペプチダーゼ阻害用組成物が開示されている(特許文献1)。
【0005】
また、本発明者は、アカマンボウ(「マンダイ」とも呼ばれる)が、海棲哺乳類であるミンククジラよりも多い、イミダゾールジペプチドの一種であるバレニンを含有していることを見つけ出し、その事実を公開している(非特許文献3、非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第WO2017/104777号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】西谷,他3名,「総説 新規抗疲労成分:イミダゾールジペプチド」,日本補完代替医療学会誌 第6巻第3号,2009年10月,p123-129
【文献】高橋,他4名,「アンセリン含有サケエキスの高脂肪食飼育ラットに対する脂肪蓄積抑制効果」,日本水産学会誌 第76巻第6号,2008年,p1075-1081
【文献】大村,他8名,「アカマンボウ Lampris guttatus筋肉中のバレニン含量」,平成30年度日本水産学会春季大会 講演要旨集,2018年3月26日,p92
【文献】大村,他9名,「アカマンボウに疲労抑制機能があるバレニンが高含量存在することを発見」,研究のうごき(中央水産研究所主要成果集),2018年9月,p11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
バレニンは、イミダゾールジペプチドの中でも、これまで着目されてこなかった物質である。というのも、バレニンを筋肉等に含む動物は、上述のとおり海棲哺乳類である鯨、あるいはホタテガイ等、極めて限定されているためである。加えて、他のイミダゾールジペプチドとともにバレニンを比較的多く含む肉として知られている鯨肉は、捕鯨が容易ではない状況では、摂取することが不可能又は非常に困難となっている。そのため、かつて捕鯨国であった国であっても、現状ではバレニンを摂取する機会が非常に少なくなっている。
【0009】
しかしながら、イミダゾールジペプチドの中でも、バレニンは、餌も食べずに長距離を泳ぎ続けることができる鯨の生態からも、他のイミダゾールジペプチド(カルノシン、アンセリン)と比較して、抗酸化作用及び/又は抗疲労作用の観点で優位性があると考えられる物質である。また、従って、捕鯨が容易ではない状況であっても、イミダゾールジペプチド、特にバレニンを継続的に摂取するための方法を見出す努力を続けることは、健康の維持又は増進を図る社会にとって極めて重要である。
【0010】
一方、上述のとおり、本発明者は、魚類にもかかわらずアカマンボウが多くのバレニンを含有していることを見つけ出したが、バレニンの抽出過程において、そのバレニンを含有する抽出物の吸湿性(潮解性を含む)が非常に高いことが明らかとなった。
【0011】
従って、該バレニンをどのような形態で取り出すことが、バレニンの有効活用につながるか、あるいは、経済面又は社会面において求められる生産性、物流、保存性、管理性等の観点から好適であるか、については未だ検討されていないため、様々な観点によって検討と分析をすることが求められる。従って、魚類からのバレニンの抽出と利用方法についての研究開発及び具体化は、緒に就いたばかりといえる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、バレニンを豊富に含み得る粉末の実現に大きく貢献するものである。
【0013】
本発明者は、鯨肉が容易には摂取しづらい状況を踏まえ、鯨に代わる、又は鯨を超えるバレニンを含む可能性のある海洋生物について、その生態を含めた研究と分析に取り組んだ。多くの調査と分析を重ねた結果、本発明者は、連続的運動に対応できる回遊魚という観点に加えて、何らかの影響によって抗酸化作用及び/又は抗疲労作用を体内で発揮しているであろうと思われる魚類、特に深海魚にも着眼するに至った。
【0014】
その後の本発明者による更なる試行錯誤と分析により、深海魚の一種であるアカマンボウ(「マンダイ」とも呼ばれる)が、豊富な量のイミダゾールジペプチド、特にバレニンを含有していることを本発明者は知得した。そこで、本発明者は、魚類の一種であるアカマンボウの研究と分析を集中的に行った。その結果、例えばアカマンボウの略全ての部位に対して熱を加えた場合であっても、バレニン含有量が実質的に変動しないという、大変興味深い技術的知見を得た。
【0015】
また、イミダゾールジペプチドの中でもバレニンは、抗酸化作用、抗疲労作用、活性酸素消去作用、自律神経調節作用、アルコール代謝促進作用、血糖値上昇抑制、尿酸値低下作用、鉄吸収促進、眼精疲労低減、創傷治癒促進作用、金属キレート作用、及び乳酸によるpH低下に起因する筋活動の低下の抑制作用の群から選択される少なくとも1種が奏され得ることを本発明者は知得した。
【0016】
さらに分析を進めたところ、アカマンボウの可食部(普通筋)と該可食部と異なる部位のそれぞれが含有するイミダゾールジペプチドが、下記の(1)~(5)の特徴を有することも、本発明者は知得した。
(1)アカマンボウの、いわゆる可食部(普通筋)と異なる部位(頭部、内臓、及び皮)も、可食部(普通筋)に匹敵する量のバレニンを含んでいること。
(2)アカマンボウの、いわゆる可食部(普通筋)と異なる部位(内臓、及び皮)が含有するイミダゾールジペプチドの量は、該可食部(普通筋)が含有するイミダゾールジペプチドの量よりも顕著に多いこと。
(3)アカマンボウの、いわゆる可食部(普通筋)が含有するイミダゾールジペプチドの種類ごとの量と、該可食部(普通筋)と異なる部位(特に、内臓及び皮)が含有するイミダゾールジペプチドの種類ごとの量とが顕著に異なっていること。
(4)アカマンボウの普通筋と比較して、血合肉のイミダゾールジペプチド(バレニンを含む)の量のバラつき(標準偏差)が非常に大きいこと。
(5)骨、及び尾部90がバレニンを含むこと。
【0017】
加えて、バレニンの抽出過程において本発明者が知得した、そのバレニンを含有する抽出物の非常に高い吸湿性(潮解性を含む)によって生じ得る技術的課題を解消する又は緩和することは、例えば生産性を高める、物流の効率化を実現することにつながる。本発明者が、上述の技術的知見に基づいてバレニンの有効活用について研究と分析を重ねた結果、ある製造方法の採用が、該抽出物の生産性の向上、物流の効率化、保存性の向上、及び管理の容易化の群から選択される1つ又は2つ以上について貢献し得ることを本発明者は知得した。本発明は、上述の視点、及び技術的知見に基づいて創出された。
【0018】
本発明の1つの粉末は、魚肉、魚の頭部、魚の内臓、魚の皮、魚の尾部、又は魚の骨由来であって、バレニンと、スプレードライに適用可能な賦形剤又は結合剤と、を含有する。
【0019】
この粉末は、バレニンとともにスプレードライに適用可能な賦形剤又は結合剤を含むため、吸湿性が解消又は緩和され得る。また、この粉末はバレニンを含有しているため、該粉末を摂取することにより、例えば、抗酸化作用、抗疲労作用、活性酸素消去作用、自律神経調節作用、アルコール代謝促進作用、血糖値上昇抑制、尿酸値低下作用、鉄吸収促進、眼精疲労低減、創傷治癒促進作用、金属キレート作用、及び乳酸によるpH低下に起因する筋活動の低下の抑制作用の群から選択される少なくとも1種が奏され得る。
【0020】
ところで、本願において「皮」又は「皮部」とは、魚(例えば、アカマンボウ)の最表面から内側(体内側)に向けて10mm未満の厚みを有する部位を意味する。また、本願において「血合肉」とは、魚類の体側にある筋肉のうち、暗赤色を呈する部分をいう。別の指標で見れば、本願において「血合肉」とは、「普通筋」に含まれる鉄分量の2倍以上の鉄分量を含有する部位をいう。本願において「粉末」の用語は、「粒体(代表的には、外径が10μm~150μm)」、及び「粉体(代表的には、粒体よりも小さいもの)」の総称である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の1つの粉末によれば、吸湿性が解消又は緩和され得る。また、例えば、該粉末によれば、抗酸化作用、抗疲労作用、活性酸素消去作用、自律神経調節作用、アルコール代謝促進作用、血糖値上昇抑制、尿酸値低下作用、鉄吸収促進、眼精疲労低減、創傷治癒促進作用、金属キレート作用、及び乳酸によるpH低下に起因する筋活動の低下の抑制作用の群から選択される少なくとも1種が奏され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1の実施形態の粉末の製造工程を示すフローである。
【
図2】第1の実施形態のアカマンボウの切断箇所、及び部位を示すアカマンボウの一部を示す写真である。
【
図3】第1の実施形態の変形例(2)の、所定条件における粉末の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態として、魚肉、魚の頭部、魚の内臓、魚の皮、魚の尾部、又は魚の骨由来であって、バレニンと、スプレードライに適用可能な賦形剤又は結合剤と、を含有する粉末及びその製造方法を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。
【0024】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態の粉末の製造工程を示すフローである。本実施形態の粉末及びその製造方法においては、
図1に示す各処理工程が、該粉末の製造方法における全工程又はその一部となり得る。従って、本実施形態の粉末の製造方法は、必ずしも
図1に示す各処理工程の全てを含むことを要しない。また、
図2は、本実施形態の魚の一例であるアカマンボウ100の切断箇所、及び部位を示すアカマンボウ100の一部を示す写真である。
【0025】
(冷凍工程及び切断工程)
具体的には、
図1に示すように、漁獲されたアカマンボウ100が冷凍される(ステップS1)。その後、
図2に示すように、アカマンボウ100の、頭部10、筋肉20(より細かく分類すれば、普通筋20a及び血合肉20b)、内臓部30、図示しない骨、並びに尾部90が、それぞれ分かれるように、略直線状にC
1、C
2、及びC
3に沿って冷凍状態のアカマンボウ100を切断する、切断(解体)工程が行われる(ステップS2)。なお、
図2においては、背びれを含む一部の部位が写真に表れていないが、表示されていない部位は、本実施形態の粉末の原料ではないため、当該部位の説明を省略する。
【0026】
ここで、
図2におけるC
1に示される切断は、本実施形態のアカマンボウ100のカマが筋肉20に含まれないように、かつ該カマにおける筋肉20側の端部の略接線方向に沿って実施される。また、
図2におけるC
2に示される切断は、本実施形態のアカマンボウ100の目と口が頭部10に含まれるように実施される。加えて、C
3に示される切断は、本実施形態のアカマンボウ100の筋肉20が、極力、尾部90に含まれないように実施される。また、
図2に示されていない骨については、包丁などの刃物を用いた切断処理、又は公知の電動グラインダーなどの切断機器によって他の部位から分離される。なお、本実施形態の切断(解体)工程においては、公知のバンドソー装置が用いられているが、該工程においてアカマンボウを切断する手段は、該バンドソー装置に限定されない。C
1、C
2、及びC
3に沿って冷凍状態のアカマンボウを切断することができる他の公知の切断方法も採用され得る。
【0027】
その後、公知のチョッパー装置(例えば、株式会社なんつね製、型式:MC-22)による細片化を行うために、該チョッパー装置に導入することが可能となる程度に、冷凍状態であったアカマンボウ100の各部位(頭部10,普通筋20a,血合肉20b,内臓部30,皮部40,骨,尾部90)を、それぞれ完全に又は不完全に解凍する。その後、該チョッパー装置を用いた細片化工程が行われることにより、例えば、10mmφの貫通孔を備えたプレートから細片化されたミンチ状の該各部位を得ることができる。なお、本実施形態の細片化工程においては、公知のチョッパー装置が用いられているが、該工程において細片化された該各部位を得る手段は、該チョッパー装置に限定されない。例えば、公知のサイレントカッターも、細片化工程において採用され得る。
【0028】
(抽出工程)
[魚の各部位から抽出されるイミダゾールジペプチド含有量の分析]
ここで、本発明者は、本実施形態の細片化された各部位が含有する、バレニンを含むイミダゾールジペプチドの量について分析を行った。具体的には、上述のように細片化された各部位から、過塩素酸抽出エキスを調製した上で、公知のアミノ酸自動分析計を用いて、細片化されたアカマンボウ100の各部位(頭部10,普通筋20a,血合肉20b,内臓部30,皮部40,骨,尾部90)に対する、遊離アミノ酸及び結合アミノ酸に関する分析を行った。
【0029】
なお、表1における「Bal.」は「バレニンの含有量」を意味する。また、表1における分析対象としての皮部40は、筋肉20の部位の皮である。
【0030】
【0031】
また、この分析においては、塩酸加水分解して結合アミノ酸を分析することにより、高濃度の3-メチルヒスチジンが検出された結果に基づいて、バレニンの存在が明らかとなった。また、バレニンの標準品を用いた加水分解液中の3-メチルヒスチジンに基づいてバレニンの量を定量することにより、細片化された各部位中のバレニンの量が定量された。なお、このバレニンの量の定量方法は、後述する粉末化工程におけるバレニンの量の定量方法と同じである。
【0032】
表1に示すように、上述の分析により、細片化された各部位中のバレニンの量に関する下記(1)の特徴が明らかとなった。
(1)アカマンボウの、いわゆる可食部(普通筋)と異なる部位(頭部、内臓、及び皮)も、可食部(普通筋)に匹敵する量のバレニンを含んでいること。
【0033】
また、表1には示されていないが、本発明者が分析した結果、次の(2)~(5)の知見も得られた。
(2)アカマンボウの、いわゆる可食部(普通筋)と異なる部位(内臓、及び皮)が含有するイミダゾールジペプチド(バレニン、アンセリン、及びカルノシンを合わせたもの)の量は、該可食部(普通筋)が含有するイミダゾールジペプチドの量よりも顕著に多いこと。
(3)アカマンボウの、いわゆる可食部(普通筋)が含有するイミダゾールジペプチドの種類ごとの量と、該可食部(普通筋)と異なる部位(特に、内臓及び皮)が含有するイミダゾールジペプチドの種類ごとの量とが顕著に異なっていること。
(4)アカマンボウの普通筋と比較して、血合肉のイミダゾールジペプチド(バレニンを含む)の量のバラつき(標準偏差)が非常に大きいこと。
(5)骨、及び尾部90がバレニンを含むこと。
【0034】
なお、上述の特徴の(1)に関してより具体的に説明すれば、少なくともアカマンボウ100由来の細片化された各部位(頭部10,普通筋20a,血合肉20b,内臓部30)が含有するバレニンの量は、ミンククジラの背肉赤肉が含有するバレニンの量と同等、又は該バレニンの量よりかなり多いと言える。また、興味深いことに、表1の普通筋20aの中でも、普通筋20a中心から頭側の普通筋20aのバレニンの含有量、及びイミダゾールジペプチドの含有量が、普通筋20a中心から尾側の普通筋20aのバレニンの含有量、及びイミダゾールジペプチドの含有量よりも、約6wt%以上多いことが確認された。
【0035】
なお、本実施形態においては、「普通筋20a中心」の位置は、頭部10の先端(口部の先端)から普通筋20aの尾側の端(従って、尾部90を含まない)までの長さ(
図2における「L」)を1としたときの、頭側先端から0.5の位置と定義される。従って、バレニンの含有量が多い普通筋20aをより確度高く得るためには、頭側先端から0.4以下までの普通筋20aを含む普通筋20aからイミダゾールジペプチド及び/又はバレニンを得ることは好適な一態様である。
【0036】
本実施形態においては、その後、細片化された各部位を約60~約100℃の抽出媒体としての水(イオン交換水)に接触させる。より具体的には、細片化された各部位が、公知の容器内の約60℃~約100℃の該抽出媒体中に浸漬される抽出工程(ステップS3)が行われる。なお、本実施形態の抽出工程においては、意図的に該抽出媒体を撹拌することも採用し得る一態様である。
【0037】
(分離工程)
その後、本実施形態においては、細片化された各部位が該抽出媒体中に浸漬されてから約2時間後に、該細片化された各部位からの抽出物を含有する該抽出媒体(本実施形態においては、水溶液)を、遠心分離機を用いて該各部位(残渣として取り扱われ得る)と分離する、分離工程が行われる(ステップS4)。具体的には、300メッシュのろ布を用いた遠心ろ過処理を行うことにより、本実施形態の抽出物を製造することができる。なお、本実施形態の抽出物は、この段階においては液状である。また、本実施形態の分離工程においては、300メッシュのろ布を用いた遠心ろ過処理が採用されているが、本実施形態の分離工程はそのような態様に限定されない。公知の分離工程(例えば、遠心沈降による分離処理)も採用し得る他の一態様である。
【0038】
(濃縮工程)
本実施形態においては、上述の抽出物をさらに濃縮することにより、イミダゾールジペプチド又はバレニンを含有する濃縮抽出物としての抽出物(以下、単に「濃縮抽出物」ともいう。)を製造するための濃縮工程(ステップS5)が行われ得る。
【0039】
本実施形態の濃縮工程(ステップS5)においては、例えば、約1時間~約8時間、温度が約60℃であって、減圧(例えば、0.03MPa)状態の空間内に、分離工程において得られた抽出物を攪拌する又は静置させることにより、濃縮抽出物を製造することができる。
【0040】
ところで、本実施形態の濃縮工程においては、前述の処理条件が採用されているが、本実施形態の濃縮工程はそのような態様に限定されない。公知の他の濃縮工程も採用し得る他の一態様である。また、本実施形態の濃縮工程が行われる前に、殺菌処理(例えば、加熱処理)が行われることも、採用し得る他の一態様である。また、濃縮工程(ステップS5)において、分離工程において得られた抽出物を攪拌する又は静置させる温度が20℃以上、30℃以上、40℃以上、又は50℃以上であれば、本実施形態の効果の少なくとも一部が奏され得る。
【0041】
(粉末化工程)
本実施形態においては、
図1に示すように、上述の濃縮抽出物としての抽出物の製造工程によって製造された濃縮抽出物を、スプレードライ法によって該抽出物を乾燥させるとともに粉末化することにより該抽出物の粉末を得る、粉末化工程(ステップS6)が行われ得る。
【0042】
なお、本実施形態においては、上述の濃縮抽出物を対象として粉末化工程(ステップS6)が行われているが、本実施形態の粉末化工程(ステップS6)の対象は、該濃縮抽出物に限定されない。例えば、本実施形態の濃縮工程(ステップS5)が行われることなく、分離工程(ステップS4)の後に粉末化工程(ステップS6)が行われることも採用され得る一態様である。
【0043】
本実施形態の粉末化工程(ステップS6)においては、代表的に魚肉(普通筋20a)から得られる抽出物に対する適切な条件の粉末化工程を見出すために、公知のスプレードライ装置(東京理化器械株式会社製:型式SD-1010)を用いて、上述の濃縮工程(ステップS5)後の抽出物の量と、賦形剤又は結合剤(以下、総称して「賦形剤」という。)の量とを調製した、表2に示す4種類の試料が作製された。
【0044】
具体的には、試料Aは、質量比において該抽出物20と賦形剤80との割合で設定された。また、試料Bは、質量比において該抽出物40と賦形剤60との割合で設定された。また、試料Cは、質量比において該抽出物60と賦形剤40との割合で設定された。また、試料Dは、質量比において該抽出物80と賦形剤20との割合で設定された。なお、粉末化の結果を示す印である丸印は、少なくとも製造当初は粉末化することができたことを示し、三角印は、一部の生成物が粉末化されなかったことを示している。
【0045】
【0046】
その後、本実施形態においては、該スプレードライ装置の二流体ノズルを用いて、液状の該抽出物及び水と、賦形剤の一例であるデキストリンとを、高温(設定温度として約100℃~約150℃)下、所定流量の範囲で混合させることによって、生成物が吹き出し口から吐出される。なお、本実施形態においては、質量比において、約95%のデキストリンに対して、約5%の該抽出物が混合された。
【0047】
また、本実施形態においては、二流体ノズルを用いたスプレードライ装置を用いて実施したが、本実施形態のスプレードライ法は二流体ノズルを用いた手段に限定されない。例えば、公知のロータリーアトマイザー又は加圧ノズルを用いたスプレードライ装置を用いて実施することも、採用し得る他の一態様である。
【0048】
その結果、試料A、試料B、及び試料Cは、いずれも粉末化を実現することができたが、試料Dは、生成物が一部の吹き出し口に付着するという事象が確認された。従って、本変形例の抽出物と賦形剤との質量比は、該抽出物を1としたときに、賦形剤が0.25超(より好適には、0.66以上、さらに好適には0.67以上)に設定されることによって粉末化を実現し得ることが明らかとなった。なお、該抽出物を1としたときの賦形剤の量の上限は特に限定されない。しかしながら、生成物である粉末中のバレニンの量を高く維持する観点から言えば、該抽出物を1としたときの賦形剤の量は、2以下であることが好ましい。
【0049】
さらに本発明者は分析を進めた。具体的には、本発明者は、試料A、試料B及び試料Cの生成物を、40℃の大気雰囲気下において1ヶ月間静置させることによって、各試料の粉末の状態を観察した。
図3は、本変形例における、前述の条件下において1ヶ月間静置させた各試料の粉末の状態を示す写真である。
【0050】
図3に示すように、試料Cは、吸湿又は潮解が進んだことによって粉末の凝集化が進んでいることが確認された。一方、試料A及び試料Bは、いずれも、前述の条件下において1ヶ月間静置させた場合であっても、当初の粉末状態をほぼ維持し得ることが確認された。
【0051】
上述の分析を含めた調査を行った結果、生成物(粉末)の長期保存性又は長期安定性を実現し得る観点から言えば、本変形例の抽出物と賦形剤との質量比は、該抽出物を1としたときに、賦形剤が1超(より好適には、1.25以上)に設定されることが好ましいことが確認された。
【0052】
なお、本実施形態のスプレードライ法による粉末の水分量は、適宜、公知の手段によって調整され得る。但し、運搬の容易化及び/又は取り扱いの容易化の観点から、該水分量が本実施形態の粉末の0wt%超10wt%以下であることは好適な一態様である。なお、前述の観点から言えば、該水分量が本実施形態の粉末の5wt%以下であることがより好ましく、本実施形態の粉末の3wt%以下であることが更に好ましい。
【0053】
上述の各工程を経て、本実施形態の粉末を製造することができる。
【0054】
<第1の実施形態の変形例(1)>
また、上述の第1の実施形態においては、抽出媒体が水であったが、上述の第1の実施形態の抽出媒体は水に限定されない。例えば、水の代わりに、又は水とともに、アルコール(例えば、エタノール)を抽出媒体(液状媒体)として採用することも、上述の第1の実施形態の変形例の一態様である。なお、前述の「アルコール」は、高純度のエタノール(例えば、99.5%、又は100%)に限定されない。例えば、該「アルコール」は、ビール、ワイン、及び日本酒を含む醸造酒、ウィスキー、焼酎、及びウォッカを含む蒸留酒、並びに、カシス及びカンパリを含む混成酒を含み得る。
【0055】
加えて、上述の第1の実施形態においては、魚肉(代表的には、普通筋20a)から得られる抽出物について説明しているが、上述の第1の実施形態は、魚肉又は普通筋20a以外の部位(頭部10,血合肉20b,内臓部30,皮部40,骨,尾部90)から得られる抽出物及び粉末についても適用され得る。
【0056】
上述のとおり、第1の実施形態及び各変形例によれば、次の製造方法の一つを採用することにより、多くの量のバレニンを含有する粉末を得ることができる。
(該粉末の製造方法の例(1))
魚(代表的には、アカマンボウ)における魚肉、魚の頭部、魚の内臓、魚の皮、魚の尾部、又は魚の骨を、生理学的に許容可能な液状媒体である抽出媒体(代表的には、水及び/又はアルコール)に接触させることにより、該抽出媒体に可溶なバレニン、あるいは該抽出媒体から抽出可能なバレニン、とを含有する抽出物を得る抽出工程と、該抽出物と、賦形剤又は結合剤とから、スプレードライ法によって粉末を得る粉末化工程と、を含む、粉末の製造方法。
(該粉末の製造方法の例(2))
上述の粉末化工程の前であって、上述の抽出工程の後に、上述の抽出物を濃縮し、上述のバレニンを含有する濃縮抽出物を得る濃縮工程を、さらに含む、粉末の製造方法。
(該粉末の製造方法の例(3))
上述の粉末化工程は、上述の粉末の水分量が0wt%超10wt%以下になるように該粉末を乾燥する処理を含む、粉末の製造方法。
【0057】
また、上述のとおり、魚肉の中でも、普通筋20aと比較して、血合肉20bのイミダゾールジペプチド(バレニンを含む)の量のバラつき(標準偏差)が非常に大きいことから、魚肉における血合肉から形成された該抽出物の割合が5wt%未満であることは、上述の第1の実施形態、あるいは上述の又は後述する各変形例において得られる粉末の含有するバレニンの量のバラつきを低減させる効果を奏させ得る。換言すれば、魚肉における血合肉から形成された該粉末の割合が5wt%未満とすることが、より安定した量のバレニンを含有する該粉末の製造を実現し得る。
【0058】
<第1の実施形態の変形例(2)>
また、上述の第1の実施形態においては、賦形剤又は結合剤の例としてデキストリンが採用されているが、上述の第1の実施形態の賦形剤又は結合剤は、デキストリンに限定されない。例えば、該賦形剤又は該結合剤が、マルトデキストリン、ガラクトマンナン、サイクロデキストリン、デキストリン、でんぷん、マンニトール、結晶セルロース、乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メタアクリル酸コポリマー、マクロゴール、デンプン、ゼラチン、プルラン、カンテン、及びアラビアゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種であれば、上述の第1の実施形態の効果の少なくとも一部が奏され得る。
【0059】
<第1の実施形態の変形例(3)>
本変形例においては、
図1に示すように、第1の実施形態の製造工程によって製造され粉末をさらに分級することにより、1mm未満(より好ましくは、0.8mm未満)の粒子径を有する粉体からなる微粉体としての粉末(以下、単に「微粉体」ともいう)を得るための分級工程(ステップS7)が行われ得る。
【0060】
本変形例の分級工程(ステップS7)を採用することにより、例えば、目開きが0.7mmの篩(ふるい)を通過する、微粉体のみを回収することができる。その結果、本変形例の粉末(1mm未満の粒子径を有する粉体からなる微粉体)を製造することができる。
【0061】
なお、本変形例の微粉体としての粉末の水分量も、上述と同様に、適宜、公知の手段によって調整され得る。但し、運搬の容易化及び/又は取り扱いの容易化の観点から、該水分量が本変形例の微粉体(粉末)の0wt%超10wt%以下であることは好適な一態様である。なお、前述の観点から言えば、該水分量が本変形例の微粉体の5wt%以下であることがより好ましく、本変形例の微粉体(粉末)の3wt%以下であることが更に好ましい。
【0062】
上述のとおり、本変形例における微粉体としての粉末は、精製工程を経ずに製造された微粉体である。より具体的には、該微粉体は、例えば、非特許文献2において開示されている方法のように、該微粉体を水等に溶解させた後、イオン交換樹脂(例えば、陽イオン交換樹脂)を利用してバレニンを含むイミダゾールジペプチドを抽出し精製する工程が行われずに得られた微粉体である。従って、精製されていない微粉体としての粉末であっても、例えば、抗酸化作用、抗疲労作用、活性酸素消去作用、自律神経調節作用、アルコール代謝促進作用、血糖値上昇抑制、尿酸値低下作用、鉄吸収促進、眼精疲労低減、創傷治癒促進作用、金属キレート作用、及び乳酸によるpH低下に起因する筋活動の低下の抑制作用の群から選択される少なくとも1種を発揮し得るイミダゾールジペプチド、特に、豊富な量のバレニンを含有していることは、特筆に値する。
【0063】
<その他の実施形態>
ところで、第1の実施形態及びその各変形例においては、アカマンボウ100の各部位(頭部10,普通筋20a,血合肉20b,内臓部30,皮部40,骨,尾部90)の特徴を知るために、個別に抽出工程(ステップS3)及び分離工程(ステップS4)、並びに必要に応じた濃縮工程(ステップS5)、粉末化工程(ステップS6)、又は分級工程(ステップS7)が行われているが、本実施形態はそのような態様に限定されない。
【0064】
例えば、本発明者が分析したところ、内臓部30と皮部40は、カルノシンを多く含むためにイミダゾールジペプチドの量が多いことが確認された。従って、内臓部30と皮部40とを混合し得る状態となるように、切断(解体)工程(ステップS2)以降の各工程が実施されることも採用し得る一態様である。また、バレニンを含むイミダゾールジペプチドを豊富に含有するという、顕著な特徴を有する各部位(頭部10,普通筋20a,血合肉20b,内臓部30,皮部40,骨,尾部90)の全てを混合し得る状態となるように、切断(解体)工程(ステップS2)以降の各工程が実施されることも採用し得る一態様である。
【0065】
また、第1の実施形態及びその各変形例においては、はえ縄漁船によって漁獲されたアカマンボウを、速やかに(例えば、60分以内)に漁船上において低温凍結処理(例えば、-65℃以上-15℃以下)を施したが、アカマンボウの漁獲方法、及びアカマンボウの漁船における保存方法は、前述の例に限定されない。但し、イミダゾールジペプチド(代表的には、バレニン)の量を自己消化によって減少させる可能性を低減する観点から言えば、漁獲されたアカマンボウを、速やかに(例えば、60分以内)に漁船上において低温凍結処理(例えば、-65℃以上-15℃以下)することは、好適な一態様である。
【0066】
また、第1の実施形態においては、細片化されたアカマンボウ100の各部位が、該容器内の約60℃以上約100℃以下の抽出媒体(例えば、水)中に浸漬される抽出工程(ステップS3)が行われるが、第1の実施形態はそのような抽出工程に限定されない。例えば、次の(a)~(c)に示すような抽出工程(ステップS3)を採用することも、第1の実施形態の好適な変形例である。
(a)温度が20℃以上、30℃以上、40℃以上、又は50℃以上の抽出媒体(例えば、水)中に、細片化されたアカマンボウ100の各部位が浸漬される抽出工程
(b)抽出工程の該容器内の圧力が、通常採用される約1atm(約0.101MPa)とは異なる圧力(例えば、約0.001MPa以上約100MPa以下(但し、約0.101MPaを除く))である抽出工程
(c)抽出媒体が、生理学的に許容可能な液状媒体(例えば、有機液状媒体)、及び/又は他の生理学的に許容可能な抽出媒体(液状媒体)の例としての塩水である抽出工程
ここで、前述の「生理学的に許容可能な液状媒体」が、水及びアルコールを含むことは言うまでもない。
【0067】
なお、上述の第1の実施形態の変形例として説明した各抽出工程(ステップS3)のうち、(a)の抽出工程が採用された場合は、より低温による抽出が実現されるため、省エネルギーに寄与し得る。本発明者が調べた結果、通常採用される約1atm(約0.101MPa)下において、該抽出媒体の温度が20℃であっても、第1の実施形態の一例としての温度(約60℃)において抽出できる量を1としたときに約0.77を抽出し得るという知見を得ている。
【0068】
なお、20℃という、抽出温度としてはかなり低温の抽出媒体であっても、相当量のイミダゾールジペプチド(代表的には、バレニン)を抽出し得る。
【0069】
また、上述の第1の実施形態の変形例として説明した各抽出工程(ステップS3)のうち、(b)の抽出工程が採用された場合は、例えば、通常採用される圧力よりも高い圧力によって抽出される場合は、より低温の抽出媒体を用いて抽出工程を実現し得る。
【0070】
また、上述の第1の実施形態の変形例として説明した各抽出工程(ステップS3)のうち、(c)の抽出工程が採用された場合は、抽出物の風味を向上させることに寄与し得る。例えば、エタノール(純度99.5%)を用いて上述の(c)の抽出工程が行われた場合のイミダゾールジペプチド(代表的には、バレニン)の量は、水を抽出媒体とした場合のイミダゾールジペプチド(代表的には、バレニン)の量の約70wt%であることが確認されている。従って、抽出媒体がアルコールである場合は、抽出媒体が水である場合よりも抽出量が減少するが、水の場合の抽出量の約70wt%であっても、相当量のイミダゾールジペプチド(代表的には、バレニン)が抽出されることは特筆に値する。従って、水以外の抽出媒体が採用された場合であっても、第1の実施形態の少なくとも一部の効果が奏され得る。
【0071】
また、第1の実施形態及びその各変形例、並びにその他の実施形態においては、アカマンボウ100の背びれが生理学的に許容可能な液状媒体に可溶な又は生理学的に許容可能な液状媒体を抽出媒体として抽出される抽出物(代表的には抽出物であるが、抽出物に限定されない。また、上述の濃縮抽出物を含む。以下、同じ。)から生成された上述の粉末に含まれていないが、該粉末は、そのような態様に限定されない。例えば、該粉末の製造工程をより簡便化するために、
図2におけるC
3に示される切断を行わずに、その後の各工程が行われることも、採用し得る一態様である。従って、背びれが、第1の実施形態及びその各変形例の粉末の構成成分の一つとして含まれることも採用され得る。
【0072】
さらに、第1の実施形態及びその各変形例、並びにその他の実施形態において製造された、以下の(a)及び/又は(b)を製造することは、採用し得る好適な一態様である。
(a)バレニンを含有する粉末を構成成分の少なくとも一部として含む、錠剤、カプセル剤、散剤(顆粒剤を含む)、丸剤、シロップ剤、液剤、ドリンク剤、トローチ剤、ドロップ、水飴等(以下、総称して「製剤」という。)
(b)バレニンを含有する粉末を生理学的に許容可能な液状媒体に溶解させた溶液又は該粉末から形成されるゲル等を構成成分の少なくとも一部として含む、該粉末由来の該製剤
【0073】
該製剤は、イミダゾールジペプチド、特に、豊富な量のバレニンを含有しているため、該製剤を摂取することにより、例えば、抗酸化作用、抗疲労作用、活性酸素消去作用、自律神経調節作用、アルコール代謝促進作用、血糖値上昇抑制、尿酸値低下作用、鉄吸収促進、眼精疲労低減、創傷治癒促進作用、金属キレート作用、及び乳酸によるpH低下に起因する筋活動の低下の抑制作用の群から選択される少なくとも1種が奏され得る。なお、該製剤は、公知の製造方法によって製造され得る。また、該製剤は、成形性の向上又は経口投与するときの容易性の向上等のため、上述の各実施形態又は各変形例において採用される賦形剤又は結合剤のほか、適宜、崩壊剤又は湿潤剤、あるいは蜂蜜等を混合することによって形成され得る。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の1つの粉末及び製剤は、バレニンを豊富に含み得る魚由来であるため、食品業及び水産業に限らず、医薬、健康、医療、美容に関連する各産業においても極めて有用である。
【符号の説明】
【0075】
10 頭部
20 筋肉
20a 普通筋
20b 血合肉
30 内臓部
40 皮部
90 尾部
100 アカマンボウ