(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】空調機及び空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 3/14 20060101AFI20240409BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20240409BHJP
F24F 3/147 20060101ALI20240409BHJP
F24F 11/72 20180101ALI20240409BHJP
【FI】
F24F3/14
F24F7/06 B
F24F3/147
F24F11/72
(21)【出願番号】P 2019204526
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-08-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000120401
【氏名又は名称】荏原実業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】福村 貴司
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-059692(JP,A)
【文献】特開2007-263527(JP,A)
【文献】特開2012-077968(JP,A)
【文献】特開2018-063086(JP,A)
【文献】特開2012-172877(JP,A)
【文献】特開2010-019440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/00-3/167
F24F 7/04-7/06
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から送風される外気及び居室内の還気を除湿冷却し、下流から給気として居室内に送風する空調機であって、
前記外気を取り入れる外気取入部、
前記還気を取り入れる還気取入部、
前記外気及び前記還気を混合する給気部、
前記外気取入部と前記還気取入部をつなぐ連通部、
前記外気取入部と前記給気部をつなぐ第1通過部、
前記還気取入部と前記給気部をつなぐ第2通過部、
前記外気取入部に設置され、低温な冷水を使用して少なくとも前記外気を冷却除湿可能な第1コイル、
前記還気取入部に設置され、前記第1コイルよりも高温な冷水を使用して少なくとも前記還気を冷却除湿可能な第2コイル、
前記第1通過部に開度を調整可能に設置される第1ダンパ、
前記第2通過部に開度を調整可能に設置される第2ダンパ、
及び
前記給気部から前記外気及び前記還気を送風する空調送風機、
を有する空調機と、
前記外気及び前記還気の間で熱交換を行う全熱交換ローター、前記熱交換した前記外気を前記第1コイルよりも高温な冷水を使用して冷却除湿可能な高温冷水コイル、及び、前記空調機に前記外気を送風する外調送風機を有する外調機と、
前記居室の状態に応じて、前記第1ダンパ及び前記第2ダンパの開度を制御する制御部と、
前記居室の湿度を取得する居室湿度取得部と、
を備え
、
前記制御部は、前記湿度から潜熱負荷を求め、前記潜熱負荷が前記外気のみによる除湿処理より大きい場合、前記第2ダンパの開度を前記第1ダンパの開度よりも小さくする
ことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
上流から送風される外気及び居室内の還気を除湿冷却し、下流から給気として居室内に送風する空調機であって、
前記外気を取り入れる外気取入部、
前記還気を取り入れる還気取入部、
前記外気及び前記還気を混合する給気部、
前記外気取入部と前記還気取入部をつなぐ連通部、
前記外気取入部と前記給気部をつなぐ第1通過部、
前記還気取入部と前記給気部をつなぐ第2通過部、
前記外気取入部に設置され、低温な冷水を使用して少なくとも前記外気を冷却除湿可能な第1コイル、
前記還気取入部に設置され、前記第1コイルよりも高温な冷水を使用して少なくとも前記還気を冷却除湿可能な第2コイル、
前記第1通過部に開度を調整可能に設置される第1ダンパ、
前記第2通過部に開度を調整可能に設置される第2ダンパ、
及び
前記給気部から前記外気及び前記還気を送風する空調送風機、
を有する空調機と、
前記外気及び前記還気の間で熱交換を行う全熱交換ローター、前記熱交換した前記外気を前記第1コイルよりも高温な冷水を使用して冷却除湿可能な高温冷水コイル、及び、前記空調機に前記外気を送風する外調送風機を有する外調機と、
前記居室の状態に応じて、前記第1ダンパ及び前記第2ダンパの開度を制御する制御部と、
前記居室の湿度を取得する居室湿度取得部と、
を備え
、
前記制御部は、前記湿度から潜熱負荷を求め、前記潜熱負荷が前記外気のみによる除湿処理より小さい場合、前記第1ダンパの開度を前記第2ダンパの開度よりも小さくする
ことを特徴とする空調システム。
【請求項3】
前記居室の二酸化炭素量を取得する居室二酸化炭素量取得部を備え、
前記制御部は、前記居室の前記二酸化炭素量に応じて前記外調送風機の送風量を制御する
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記空調送風機は、1台である
ことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1つに記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱処理と顕熱処理を分離して行う潜熱顕熱分離用の空調機及び空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つのコイルを直線上に並べ、高温冷水でできるだけ除湿し、低温冷水で最終的に必要な除湿量を確保する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、2つのコイルを使用しているが、全風量を直線的に配置された2段コイルで処理しているので、最終的な出口の空気状態は、1つのコイルで冷却除湿したものと同じである。そのため、梅雨期等の外気が高湿度で居室内負荷が小さい低顕熱負荷の場合、除湿を優先すると吹き出し温度が低下し、室温が低下してしまう。したがって、快適性を損ない、部屋の顕熱負荷を大きくすることになり、負荷が大きくなり、全体の効率が低下する。
【0004】
そこで、本出願人は、省エネルギーで潜熱と顕熱の分離処理を行い、居室内温湿度条件を快適に保持する技術を開示した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-007484号公報
【文献】特開2018-063086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低価格でありながら、省エネルギーを確保しつつ、居室内温湿度条件を快適に保持する空調機及び空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる空調システムは、
上流から送風される外気及び居室内の還気を除湿冷却し、下流から給気として居室内に送風する空調機であって、
前記外気を取り入れる外気取入部、
前記還気を取り入れる還気取入部、
前記外気及び前記還気を混合する給気部、
前記外気取入部と前記還気取入部をつなぐ連通部、
前記外気取入部と前記給気部をつなぐ第1通過部、
前記還気取入部と前記給気部をつなぐ第2通過部、
前記外気取入部に設置され、低温な冷水を使用して少なくとも前記外気を冷却除湿可能な第1コイル、
前記還気取入部に設置され、前記第1コイルよりも高温な冷水を使用して少なくとも前記還気を冷却除湿可能な第2コイル、
前記第1通過部に開度を調整可能に設置される第1ダンパ、
前記第2通過部に開度を調整可能に設置される第2ダンパ、
及び
前記給気部から前記外気及び前記還気を送風する空調送風機、
を有する空調機と、
前記外気及び前記還気の間で熱交換を行う全熱交換ローター、前記熱交換した前記外気を前記第1コイルよりも高温な冷水を使用して冷却除湿可能な高温冷水コイル、及び、前記空調機に前記外気を送風する外調送風機を有する外調機と、
前記居室の状態に応じて、前記第1ダンパ及び前記第2ダンパの開度を制御する制御部と、
前記居室の湿度を取得する居室湿度取得部と、
を備え、
前記制御部は、前記湿度から潜熱負荷を求め、前記潜熱負荷が前記外気のみによる除湿処理より大きい場合、前記第2ダンパの開度を前記第1ダンパの開度よりも小さくする
ことを特徴とする。
【0010】
本発明にかかる空調システムは、
上流から送風される外気及び居室内の還気を除湿冷却し、下流から給気として居室内に送風する空調機であって、
前記外気を取り入れる外気取入部、
前記還気を取り入れる還気取入部、
前記外気及び前記還気を混合する給気部、
前記外気取入部と前記還気取入部をつなぐ連通部、
前記外気取入部と前記給気部をつなぐ第1通過部、
前記還気取入部と前記給気部をつなぐ第2通過部、
前記外気取入部に設置され、低温な冷水を使用して少なくとも前記外気を冷却除湿可能な第1コイル、
前記還気取入部に設置され、前記第1コイルよりも高温な冷水を使用して少なくとも前記還気を冷却除湿可能な第2コイル、
前記第1通過部に開度を調整可能に設置される第1ダンパ、
前記第2通過部に開度を調整可能に設置される第2ダンパ、
及び
前記給気部から前記外気及び前記還気を送風する空調送風機、
を有する空調機と、
前記外気及び前記還気の間で熱交換を行う全熱交換ローター、前記熱交換した前記外気を前記第1コイルよりも高温な冷水を使用して冷却除湿可能な高温冷水コイル、及び、前記空調機に前記外気を送風する外調送風機を有する外調機と、
前記居室の状態に応じて、前記第1ダンパ及び前記第2ダンパの開度を制御する制御部と、
前記居室の湿度を取得する居室湿度取得部と、
を備え、
前記制御部は、前記湿度から潜熱負荷を求め、前記潜熱負荷が前記外気のみによる除湿処理より小さい場合、前記第1ダンパの開度を前記第2ダンパの開度よりも小さくする
ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる空調システムでは、
前記制御部は、前記二酸化炭素量に応じて前記外調送風機の送風量を制御する
ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる空調システムでは、
前記空調送風機は、1台である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる空調機及び空調システムによれば、低価格でありながら、省エネルギーを確保しつつ、居室内温湿度条件を快適に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本実施形態の空調機の第1の使用状態を示す。
【
図3】本実施形態の潜熱負荷が外気のみでの処理量より大きい場合の第1の例を示す。
【
図4】本実施形態の潜熱負荷が外気のみでの処理量より大きい場合の第2の例を示す。
【
図5】本実施形態の空調機の第2の使用状態を示す。
【
図6】本実施形態の潜熱負荷が外気のみでの処理量より小さい場合の例を示す。
【
図7】本実施形態の空調機を用いた空調システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明にかかる空調機1の実施形態を説明する。
【0016】
【0017】
本実施形態の空調機1は、外気OAを取り入れ潜熱処理を行う外気取入部21と、居室内からの還気RAを取り入れ顕熱処理を行う還気取入部22と、給気SAを居室内に供給する給気部23と、を有するケーシング2を備える。
【0018】
外気取入部21と還気取入部22は、開口等によって形成される連通部24でつながっている。外気取入部21と給気部23は開口等によって形成される第1通過部25でつながっており、還気取入部22と給気部23は開口等によって形成される第2通過部26でつながっている。
【0019】
外気取入部21には通過する空気を冷却除湿可能な潜熱処理する第1コイル11が設置される。第1コイル11は、約3~10℃の水又は冷媒が流れるコイルを有し、コイルの隙間を通過する外気OAを冷却除湿(主に除湿)する熱交換器である。水又は冷媒の温度は、5~7℃がより好ましい。第1コイル11に冷水を流さない場合、通過する外気OAは、冷却除湿されない。なお、第1コイル11には、連通部24を通過した還気RAが通過してもよい。
【0020】
還気取入部22には通過する空気を冷却可能な顕熱処理する第2コイル12が設置される。第2コイル12は、約12~20℃の水又は冷媒が流れるコイルを有し、コイルの隙間を通過する還気RAを冷却除湿する熱交換器である。水又は冷媒の温度は、13~17℃がより好ましい。第2コイル12に冷水を流さない場合、通過する還気RAは、冷却除湿されない。なお、第2コイル12には、連通部24を通過した外気OAが通過してもよい。
【0021】
給気部23には、空調送風機13が設置される。給気部23には、外気取入部21から第1通過部25を通過した外気OA及び還気取入部22から第2通過部26を通過した還気RAが流入し、混合され給気SAとなる。なお、第1通過部25を通過した外気OAには、連通部24を通過した還気RAが含まれる場合がある。また、第2通過部26を通過した還気RAには、連通部24を通過した外気OAが含まれる場合がある。給気SAは、空調送風機13によって吸気部23から居室内に送風される。本実施形態では、1つの空調送風機13で送風するので、従来と比較して省エネルギーとなる。
【0022】
第1通過部25には開閉可能な第1ダンパ14が設置され、第2通過部26には開閉可能な第2ダンパ15が設置される。第1ダンパ14及び第2ダンパ15は、それぞれ開度を調整可能であり、それぞれの開度を調整することで、第1通過部25及び第2通過部26を通過する風量をそれぞれ調整する。また、第1ダンパ14及び第2ダンパ15の開度を調整すると、連通部24を通過する外気OA又は還気RAの風量も調整することができる。なお、第1ダンパ14及び第2ダンパ15は、少なくとも1つずつ設置すればよく、それぞれ複数設置してもよい。
【0023】
空調機1の吹き出し温湿度は、以下の場合に負荷と一致する。
湿度(潜熱)条件
潜熱負荷=外気量K1×(室内絶対湿度-吹出絶対湿度)
顕熱条件
顕熱負荷=空調風量K2×(室内温度-吹出温度)
ただし、
K1は、蒸発潜熱×空気の密度、
K2は、空気の密度×空気の比熱
である。
【0024】
一般的な冷水温度(5~7℃)で一般的な外気量(5m3/h・m2)の時には、人体からの潜熱負荷>外気量のみを利用した空調機1による潜熱処理量となる。このため、不足分は、還気RAを混合し、風量を増加させることで、潜熱処理量を負荷に見合うまで増加させる。本実施形態では、還気RAが還気取入部22から連通部24を通過して外気取入部21に流れるように、第1ダンパ14及び第2ダンパ15を制御する。
【0025】
逆に、在室人員が少ないなど人体からの潜熱負荷<外気量のみを利用した空調機1による潜熱処理量となった場合、外気OAを全て冷却除湿しても無駄である。したがって、本実施形態では、外気OAが外気取入部21から連通部24を通過して還気取入部22に流れるように、第1ダンパ14及び第2ダンパ15を制御する。
【0026】
図2は、本実施形態の空調機1の第1の使用状態を示す。
【0027】
図2に示す空調機1の状態は、潜熱負荷が外気OAのみによる除湿処理より大きい場合である。潜熱負荷が外気のみによる除湿処理より大きい場合、外気OAのみでは除湿不足となる。そこで、第2ダンパ15の開度を小さくして抵抗を大きくすることで、還気RAの一部を還気取入部22から連通部24を通過させて外気取入部21へ流す。その後、還気RAの一部は、外気OAとともに、第2コイル12よりも低温の第1コイル11を通過する。
【0028】
外気取入部21に流入した外気OAは、還気RAの一部と混合し、第1コイル11を通過する。第1コイル11を通過する外気OAは、冷却除湿された後、第1通過部25を通過し、給気部23に流入する。
【0029】
還気取入部22に流入した還気RAは、一部が還気取入部22から連通部24を介して外気取入部21へ流れ、残りが第2コイル12を通過する。第2コイル12を通過する還気RAは、主に冷却された後、第2通過部26を通過し、給気部23に流入する。
【0030】
給気部23に流入した外気OAと還気RAは、空調送風機13によって、給気SAとして居室内に送風される。
【0031】
図3は、本実施形態の潜熱負荷が外気のみでの処理量より大きい場合の第1の例を示す。
【0032】
例えば、室内にいる人があらかじめ設定した在室率の100%、すなわち潜熱負荷が100%で、そのうち外気OAのみでの処理量が70%の場合、
図3に示すように、除湿が30%足りなくなる。そのため、
図2に示したように第2ダンパ15の開度を小さくし、連通部24を介して第1コイル11に還気RAを流す。すると、第1コイル11に流される還気RAは、第2コイル12よりも低温で冷却除湿されることで、外気OAのみでは足りない除湿を補うことができる。
【0033】
図4は、本実施形態の潜熱負荷が外気のみでの処理量より大きい場合の第2の例を示す。
【0034】
例えば、外気OAを室内のCO2で制御するシステムで、室内にいる人があらかじめ設定した在室率の50%、すなわち潜熱負荷が50%で、そのうち外気OAのみでの処理量が70%、つまり全体の35%の場合、
図4に示すように、除湿が15%足りなくなる。そのため、
図2に示したように第2ダンパ15の開度を小さくし、連通部24を介して第1コイル11に還気RAを流す。すると、第1コイル11に流される還気RAは、第2コイル12よりも低温で冷却除湿されることで、外気OAのみでは足りない除湿を補うことができる。
【0035】
CO2制御は1か所の検出部で複数の空間を一括して制御することが多いため、検出されたCO2の値は平均値となる。このため、平均値より高い空間は在室人員が多く、潜熱負荷も多くなるため、更に潜熱負荷が多くなる。このような場合でも還気RAを多くすることで負荷に見合う除湿が可能となる。
【0036】
図5は、第1実施形態の空調機1の第2の使用状態を示す。
【0037】
図5に示す空調機1の状態は、潜熱負荷が外気OAのみによる除湿処理より小さい場合である。潜熱負荷が外気のみによる除湿処理より小さい場合、外気OAのみでは除湿過多となる。そこで、第1ダンパ14の開度を小さくして抵抗を大きくすることで、外気OAの一部を外気取入部21から連通部24を通過させて還気取入部22へ流す。その後、外気OAの一部は、還気RAとともに、第1コイル11よりも高温の第2コイル12を通過する。
【0038】
外気取入部21に流入した外気OAは、一部が外気取入部21から連通部24を介して還気取入部22へ流れ、残りが第1コイル11を通過する。第1コイル11を通過する外気OAは、冷却除湿された後、第1通過部25を通過し、給気部23に流入する。還気取入部22へ流れた外気OAは、還気RAと混合する。
【0039】
還気取入部22に流入した還気RAは、外気OAの一部と混合し、第2コイル12を通過する。第2コイル12を通過する還気RAは、主に冷却された後、第2通過部26を通過し、給気部23に流入する。
【0040】
給気部23に流入した外気OAと還気RAは、空調送風機13によって、給気SAとして居室内に送風される。
【0041】
図6は、本実施形態の潜熱負荷が外気のみでの処理量より小さい場合の例を示す。
【0042】
例えば、室内にいる人があらかじめ設定した在室率の50%、すなわち潜熱負荷が50%で、外気OAのみでの処理量が70%の場合、
図6に示すように、除湿が20%過多になる。そのため、
図5に示したように第1ダンパ14の開度を小さくし、連通部24を介して第2コイル12に外気OAを流す。すると、第2コイル12に流される外気OAは、主に冷却に使用されることで、外気OAのみでは過剰に除湿してしまう分をバイパスすることができる。
【0043】
図7は、本実施形態の空調機1を用いた空調システム100を示す。
【0044】
本実施形態の潜熱顕熱分離方式の空調システム100は、
図1に示した空調機1と、外気OAを空調機1に送風すると共に、還気RAの一部を排気EAとして外部に排出する外調機110と、居室120の状態から空調機1及び外調機110を制御する制御部101と、を備える。
【0045】
外調機110は、全熱交換ローター111と、高温冷水コイル112と、を有する。
【0046】
全熱交換ローター111は、主に外気OAと居室120から流入する還気RAとの全熱交換を行う。全熱交換された還気RAは、排気EAとして外調機110から排出される。全熱交換ローター111は、駆動部M1によって回転される。
【0047】
高温冷水コイル112は、全熱交換された外気OAを冷却除湿する。第1温度計T1は、高温冷水コイル112を通過した空気の温度を計測する。高温冷水コイル112で用いられる高温冷水の流量は、第1温度計T1の計測した温度に基づいて、第1制御バルブCV1の開度を変更することによって制御される。冷水の流量を制御することで、外気OAの冷却温度を制御可能である。
【0048】
外調機110に流入した外気OAは、全熱交換ローター111によって居室120から流入した還気RAと全熱交換される。続いて、還気RAと全熱交換された外気OAは、高温冷水コイル112で冷却除湿された後、外調送風機113で空調機1に送風される。
【0049】
外調機110に流入した還気RAは、全熱交換ローター111によって外気OAと全熱交換され、排気EAとして排出される。
【0050】
空調機1は、
図1乃至3に示した構造を有する。第2温度計T2は、第1コイル11を通過した空気の温度を計測する。第1コイル11で用いられる低温冷水の流量は、第2温度計T2の計測した温度に基づいて、第2制御バルブCV2の開度を変更することによって制御される。
【0051】
第3温度計T3は、空調送風機13から送風された空気の温度を計測する。また、第2コイル12の高温冷水の流量は、第3温度計T3の計測した温度に基づいて、第3制御バルブCV3の開度を変更することによって制御される。
【0052】
駆動部M1、空調送風機13、第1ダンパ14及び第2ダンパ15は、図示しない制御部によって制御される。制御部への入力は、外気OAの温度を取得する外気温度取得部To、外気OAの湿度を取得する外気湿度取得部Ho、居室120の温度を取得する居室温度取得部Ti、居室120の湿度を取得する居室湿度取得部Hi、居室120の二酸化炭素量を取得する居室二酸化炭素量取得部Ci等から行うことが好ましい。
【0053】
例えば、本実施形態では、制御部は、居室湿度取得部Hiが取得した居室120の湿度に応じて、外調送風機113の風量又は第1ダンパ14及び第2ダンパ15の開度のうち少なくとも1つを制御する。湿度が少ない場合には、外気OAの風量を少なく、湿度が多い場合には、外気OAの風量を多くして、居室内の状況に応じて、居室内温湿度を快適に制御することができる。また、制御部は、居室二酸化炭素量取得部Ciが取得した居室120の二酸化炭素量に応じて外調送風機113の送風量を制御する。ここで、居室120が複数系統になる場合、外気OAの量は二酸化炭素濃度の平均値で調整されるため、居室120により潜熱負荷にばらつきが生じる。一般の空調機では潜熱負荷が大きければ相対湿度は高く、小さければ低くなるが、本機の場合、いずれの場合も居室湿度取得部Hiにより潜熱負荷に合う除湿が可能である。したがって、居室内の状況に応じて、居室内温湿度を快適に制御することができる。
【0054】
本実施形態の空調システム100は、外調機110の外調送風機113に高温冷水コイル112の圧力損失分を負担させる。そのため、低温冷水の第1コイル11と顕熱処理する第2コイル12の圧力損失がかなり近くなり、1台の空調送風機13であっても圧力差が大きくならない。したがって、本実施形態の空調システム100は、ファン台数を1台とすることができ、関連する制御も含めてコストダウンとなるため、低価格でありながら、省エネルギーを実現することができる。
【0055】
以上、本実施形態の空調機1は、上流から送風される外気OA及び居室120内の還気RAを除湿冷却し、下流から給気SAとして居室120内に送風する空調機1であって、外気OAを取り入れる外気取入部21と、還気RAを取り入れる還気取入部22と、外気OA及び還気RAを混合する給気部23と、外気取入部21と還気取入部22をつなぐ連通部24と、外気取入部21と給気部23をつなぐ第1通過部25と、還気取入部22と給気部23をつなぐ第2通過部26と、外気取入部21に設置され、低温な冷水を使用して少なくとも外気OAを冷却除湿可能な第1コイル11と、還気取入部22に設置され、第1コイル11よりも高温な冷水を使用して少なくとも還気RAを冷却除湿可能な第2コイル12と、第1通過部25に開閉可能に設置される第1ダンパ14と、第2通過部26に開閉可能に設置される第2ダンパ15と、前記給気部から前記外気及び前記還気を送風する空調送風機と、を備える。したがって、空調機1は、低価格でありながら、省エネルギーを確保しつつ、居室内温湿度条件を快適に保持することができる。
【0056】
さらに、本実施形態の空調機システム100は、前記空調機1と、外気OA及び還気RAの間で熱交換を行う全熱交換ローター111、及び、熱交換した外気OAを第1コイル11よりも高温な冷水を使用して冷却除湿可能な高温冷水コイル112を有する外調機110と、居室の状態に応じて、第1ダンパ11及び第2ダンパ12の開度を制御する制御部101と、を備える。したがって、デシカントローター又は熱回収型ヒートポンプ等を用いる必要が無いので、低価格でありながら、省エネルギーを確保しつつ、居室内温湿度条件を快適に保持することができる。
【0057】
また、本実施形態の空調機システム100は、居室120の湿度を取得する居室湿度取得部Hiを備え、制御部101は、湿度から潜熱負荷を求め、潜熱負荷が外気のみによる除湿処理より大きい場合、第2ダンパ12の開度を第1ダンパ11の開度よりも小さくする。したがって、第1コイル11に流される還気RAは、第2コイル12よりも低温で冷却除湿されることで、外気OAのみでは足りない除湿を補うことができる。
【0058】
また、本実施形態の空調機システム100は、居室120の湿度を取得する居室湿度取得部Hiを備え、制御部101は、湿度から潜熱負荷を求め、潜熱負荷が外気のみによる除湿処理より小さい場合、第1ダンパ11の開度を第2ダンパ12の開度よりも小さくする。したがって、第2コイル12に流される外気OAは、主に冷却に使用されることで、外気OAのみでは過剰に除湿してしまう分をバイパスすることができ、より省エネルギーを確保することができる。
【0059】
また、本実施形態の空調機システム100では、外調機110は、空調機1に外気OAを送風する外調送風機113を備え、制御部101は、居室二酸化炭素量取得部Ciが取得した居室120の二酸化炭素量に応じて外調送風機113の送風量を制御する。ここで、居室120が複数系統になる場合、外気OAの量は二酸化炭素濃度の平均値で調整されるため、居室120により潜熱負荷にばらつきが生じる。一般の空調機では潜熱負荷が大きければ相対湿度は高く、小さければ低くなるが、本機の場合、いずれの場合も居室湿度取得部Hiにより潜熱負荷に合う除湿が可能である。したがって、居室120内の状況に応じて、湿度を快適に制御することができる。
【0060】
また、本実施形態の空調機システム100では、空調送風機13は、1台である。したがって、本実施形態の空調システム100は、ファン台数を1台とすることができ、関連する制御も含めてコストダウンとなるため、低価格でありながら、省エネルギーを実現することができる。
【0061】
なお、この実施形態によって本発明は限定されるものではない。すなわち、実施形態の説明に当たって、例示のために特定の詳細な内容が多く含まれるが、当業者であれば、これらの詳細な内容に色々なバリエーションや変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…空調機
2…ケーシング
11…第1コイル
12…第2コイル
13…空調送風機
14…第1ダンパ
15…第2ダンパ
21…外気取入部
22…還気取入部
23…給気部
24…連通部
25…第1通過部
26…第2通過部
100…空調システム
101…制御部
110…外調機
111…全熱交換ローター
112…高温冷水コイル
113…外調送風機
120…居室