(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】塵芥収集車
(51)【国際特許分類】
B65F 3/00 20060101AFI20240409BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20240409BHJP
E05C 9/04 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B65F3/00 C
B60P3/00 Q
E05C9/04
(21)【出願番号】P 2019217186
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-08-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中倉 章夫
(72)【発明者】
【氏名】山内 正輝
(72)【発明者】
【氏名】前川 亘
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-285317(JP,A)
【文献】特開2019-018978(JP,A)
【文献】実開平01-083702(JP,U)
【文献】特開2002-004682(JP,A)
【文献】特開2010-228850(JP,A)
【文献】実開昭54-176598(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 3/00
B60P 3/00
E05C 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵芥収容箱と、
前記塵芥収容箱の後方に配置され、後部に塵芥が投入される投入口を有する塵芥投入箱と、
前記塵芥投入箱内に投入された塵芥を前記塵芥収容箱に積み込み可能な積込装置と、
前記塵芥投入箱の後端部において、前記投入口を閉鎖する下位置、及び前記投入口を開放する上位置の間で上下移動可能に設けられたカバー部材と、
前記カバー部材が前記下位置から上側に移動するのを規制するとともに、前記カバー部材が前記上位置から下側に移動するのを規制するロック装置と、を備え、
前記ロック装置は、
前記カバー部材において車幅方向に移動可能に設けられたロックピンと、
前記塵芥投入箱における前記投入口の車幅方向の側端部に設けられ、前記カバー部材が前記下位置にあるときに、車幅方向外側に移動した前記ロックピンと係合して当該ロックピンが上側に移動するのを規制する係合面を有する下係合部と、
前記塵芥投入箱における前記投入口の車幅方向の側端部に設けられ、前記カバー部材が前記上位置にあるときに、車幅方向外側に移動した前記ロックピンと係合して当該ロックピンが下側に移動するのを規制する係合面を有する上係合部と、を備え、
前記下係合部及び前記上係合部のうち少なくとも一方の係合部は、前記一方の係合部の前記係合面に対して車両前後方向の少なくとも一方側に配置されて車両上下方向に延び、前記ロックピンが前記一方の係合部の前記係合面に係合した状態から前記一方側に移動するのを規制する規制面を有し、
前記一方の係合部は、前記投入口の前記側端部に対して別体に取り付けられ、当該側端部から車幅方向内側に突出して
おり、
前記規制面は、前記一方の係合部の前記係合面に対して車両前後方向の両側に配置され、
車両前後方向の両側に配置された前記規制面の少なくとも一方は、車幅方向外端から車幅方向内端へ向かうにつれて、車両前後方向の両側に配置された前記規制面同士の間隔が徐々に広くなるように傾斜している、塵芥収集車
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥収集車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、塵芥収集車は、塵芥投入箱内に投入された塵芥を塵芥収容箱に積み込む積込装置と、塵芥投入箱の投入口を開閉するカバー部材と、そのカバー部材を所定位置に保持するロック装置と、を備えている。カバー部材は、塵芥投入箱の後端部において、投入口を閉鎖する下位置と、投入口を開放する上位置との間で上下移動可能に設けられている。ロック装置は、カバー部材が自重等により上位置から下側に移動するのを規制するとともに、カバー部材を上側へ付勢する付勢手段等によりカバー部材が下位置から上側に移動するのを規制する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたロック装置は、カバー部材(扉)に対して車幅方向に移動可能に取り付けられたロックピン(プッシュロッド)と、塵芥投入箱の側壁の下部に取り付けられた下係合部(第1のストッパー)と、塵芥投入箱の側壁の上部に取り付けられた上係合部(第2のストッパー)とを備えている。下係合部の下面は、ロックピンが係合する係合面とされ、上係合部の上面は、ロックピンが係合する係合面とされている。
【0004】
ロックピンは、カバー部材を上位置まで移動させたときに、車幅方向外側に突出して上係合部の係合面に係合する。これにより、カバー部材が上位置から下側に移動するのを規制することができる。また、ロックピンは、カバー部材を下位置まで移動させたときに、車幅方向外側に突出して下係合部の係合面に係合する。これにより、カバー部材が下位置から上側に移動するのを規制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の塵芥収集車にあっては、上係合部及び下係合部は塵芥投入箱の側壁に対して別体に取り付けられているので、前記側壁にロックピンが係合する係合孔を形成する場合に比べて、両係合部の位置調整を容易に行うことができるというメリットがある。しかし、上係合部及び下係合部におけるロックピンとの係合面は車両前後方向に水平な平坦面であるため、例えば積込装置の駆動中にカバー部材がロックピンと共に車両前後方向に揺れると、ロックピンが上係合部又は下係合部の係合面から外れてしまうおそれがある。この問題を解消するために、上係合部及び下係合部の係合面の車両前後方向の寸法を長くすることが考えられる。しかし、前記係合面の車両前後方向の寸法を長くし過ぎると、上係合部又は下係合部が積込装置等の他部材と干渉するおそれがある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、投入口を開閉するカバー部材が、ロック装置により上下いずれか一方向への移動が規制された状態から車両前後方向に揺れても、前記一方向への移動規制が解除されるのを抑制することができ、かつロック装置が他部材と干渉するのを抑制することができる塵芥収集車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、塵芥収容箱と、前記塵芥収容箱の後方に配置され、後部に塵芥が投入される投入口を有する塵芥投入箱と、前記塵芥投入箱内に投入された塵芥を前記塵芥収容箱に積み込み可能な積込装置と、前記塵芥投入箱の後端部において、前記投入口を閉鎖する下位置、及び前記投入口を開放する上位置の間で上下移動可能に設けられたカバー部材と、前記カバー部材が前記下位置から上側に移動するのを規制するとともに、前記カバー部材が前記上位置から下側に移動するのを規制するロック装置と、を備え、前記ロック装置は、前記カバー部材において車幅方向に移動可能に設けられたロックピンと、前記塵芥投入箱における前記投入口の車幅方向の側端部に設けられ、前記カバー部材が前記下位置にあるときに、車幅方向外側に移動した前記ロックピンと係合して当該ロックピンが上側に移動するのを規制する係合面を有する下係合部と、前記塵芥投入箱における前記投入口の車幅方向の側端部に設けられ、前記カバー部材が前記上位置にあるときに、車幅方向外側に移動した前記ロックピンと係合して当該ロックピンが下側に移動するのを規制する係合面を有する上係合部と、を備え、前記下係合部及び前記上係合部のうち少なくとも一方の係合部は、前記一方の係合部の前記係合面に対して車両前後方向の少なくとも一方側に配置されて車両上下方向に延び、前記ロックピンが前記一方の係合部の前記係合面に係合した状態から前記一方側に移動するのを規制する規制面を有する、塵芥収集車である。
【0009】
本発明によれば、カバー部材に設けられたロックピンが、下係合部及び上係合部の少なくとも一方の係合部の係合面に係合した状態から車両前後方向の少なくとも一方側に移動するのを、前記一方の係合部の規制面により規制することができる。これにより、ロック装置によりカバー部材の上下いずれか一方向への移動が規制された状態から、積込装置の駆動等によってカバー部材が車両前後方向に揺れても、ロックピンが係合面から車両前後方向に外れるのを抑制することができる。その結果、ロック装置によるカバー部材の前記一方向への移動規制が解除されるのを抑制することができる。また、規制面は、係合面に対して車両前後方向の少なくとも一方側に配置されて車両上下方向に延びているので、前記一方の係合部を車両前後方向にコンパクトに構成することができる。これにより、前記一方の係合部が他部材と干渉するのを抑制することができる。
【0010】
(2)前記規制面は、前記一方の係合部の前記係合面に対して車両前後方向の両側に配置されているのが好ましい。
この場合、係合面に対して車両前後方向の両側に配置された規制面により、ロックピンが係合面に係合した状態から車両前後方向の両側に移動するのを規制できるので、ロックピンが係合面から車両前後方向に外れるのをさらに抑制することができる。また、前記両側に配置された規制面はいずれも車両上下方向に延びているので、前記一方の係合部を車両前後方向にさらにコンパクトに構成することができる。
【0011】
(3)車両前後方向の両側に配置された前記規制面の少なくとも一方は、車幅方向外側から車幅方向内側へ向かうにつれて、車両前後方向の両側に配置された前記規制面同士の間隔が徐々に広くなるように傾斜しているのが好ましい。
この場合、前記一方の係合部における車幅方向内側の規制面同士の間隔は広くなるので、当該係合部の車幅方向内側から車幅方向外側に移動するロックピンを係合面に容易に係合させることができる。また、前記一方の係合部における車幅方向外側の規制面同士の間隔は狭くなるので、係合面に係合したロックピンの車両前後方向への移動範囲が狭くなる。これにより、カバー部材の車両前後方向の揺れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、投入口を開閉するカバー部材が、ロック装置により上下いずれか一方向への移動が規制された状態から車両前後方向に揺れても、前記一方向への移動規制が解除されるのを抑制することができ、かつロック装置が他部材と干渉するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る塵芥収集車の後部を示す側断面図である。
【
図2】塵芥投入箱を車両後方から見た正面図である。
【
図4】下位置にあるカバー部材を前面側から見た正面図である。
【
図5】下係合部を車幅方向内側から見た正面図である。
【
図8】上係合部を車幅方向内側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[塵芥収集車の全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る塵芥収集車の後部を示す側断面図である。以下、本明細書では、塵芥収集車の前後方向を「車両前後方向」といい、塵芥収集車の上下方向を「車両上下方向」といい、塵芥収集車を前方または後方から見た左右方向を「車幅方向」という。また、前記「車幅方向」のうち、塵芥収集車の前記左右方向の中央部から右側又は左側へ向かう方向を「車幅方向外側」といい、前記左右方向の右側又は左側から中央部へ向かう方向を「車幅方向内側」という。
【0015】
本実施形態の塵芥収集車1は、車体1a上に搭載された塵芥収容箱2と、塵芥収容箱2の後方に配置して連設された塵芥投入箱3と、を備えている。塵芥収容箱2の後面には、塵芥を塵芥収容箱2内に積み込むための開口部2aが形成されている。塵芥投入箱3は、その後部に塵芥が投入される投入口3aを有する。投入口3aは、塵芥投入箱3の左右の側壁3cの間に形成された開口領域である。
【0016】
塵芥投入箱3は、上部に設けられた支点Pを中心に車両上下方向に回動可能であり、これによって塵芥収容箱2に対しての開閉動作が可能である。すなわち、塵芥投入箱3は、
図1に示す位置で塵芥収容箱2の開口部2aを閉鎖し、図示しない上方へ回動した位置で前記開口部2aを開放して塵芥収容箱2内の塵芥を排出することができる状態となる。
【0017】
塵芥投入箱3内には、投入口3aから塵芥投入箱3内に投入された塵芥を塵芥収容箱2に積み込み可能な積込装置Tが設けられている。本実施形態の積込装置Tは、塵芥の積込動作に圧縮行程を有するプレス式である。積込装置Tは、スライダ5と、このスライダ5の下端部にピン6を介して回動自在に取り付けられている押込板7と、を有している。スライダ5は、塵芥投入箱3の左右の側壁3cに設けられたガイドレール4に沿って移動することができる。塵芥投入箱3内の左右両側において、スライダ5の側面部材5aと塵芥投入箱3の側壁3cとの間にはプッシュシリンダ8が取り付けられている。また、押込板7の側面部材7aとスライダ5の側面部材5aとの間にはプレスシリンダ9が取り付けられている。
【0018】
積込装置Tは、以下のように動作する。まず、
図1の実線で示す状態から、プレスシリンダ9の収縮動作により押込板7を反時計回り方向に回動させ、押込板7を反転させる(反転工程)。次に、プッシュシリンダ8の収縮動作によりスライダ5と押込板7とを共に斜め後方に降下させ、投入口3aから投入された塵芥を押込板7で圧縮する(一次圧縮工程)。そして、プレスシリンダ9の伸長動作により押込板7を時計回り方向に回動させて塵芥の二次圧縮を行う(二次圧縮工程)。
【0019】
次に、
図1の二点鎖線で示した状態から、プッシュシリンダ8の伸長動作によりスライダ5と押込板7とを斜め前方に上昇させて
図1の実線で示す状態とし、二次圧縮した塵芥を塵芥収容箱2側へ押し込む(押込工程)。このように、積込装置Tは、順に反転工程、一次圧縮工程、二次圧縮工程、及び押込工程を1サイクルとして行い、塵芥投入箱3に投入された塵芥を前記開口部2aから塵芥収容箱2に積み込む動作を行うことができる。
【0020】
図2は、塵芥投入箱3を車両後方から見た正面図である。
図1及び
図2において、塵芥投入箱3には、投入口3aの下部に載置台10が設けられている。載置台10は、塵芥投入箱3に対して水平軸回りに回動可能に取り付けられており、起立姿勢(
図1の実線位置)と展開姿勢(
図1の一点鎖線位置)とに姿勢変化することができる。つまり、
図1の実線位置にある載置台10は、その基端部を中心として下方(後方)へ回動可能とされており、下方へ90°回動して展開された状態(
図1の一点鎖線位置)となる。
【0021】
載置台10が展開された展開姿勢となると、作業者が塵芥を投入口3aから投入する際に、載置台10上に塵芥を一旦載置することができ、塵芥投入の作業性を高めることができる。載置台10は、投入口3aの車幅方向の全長にわたって形成されている。これにより、載置台10は、起立姿勢となると、投入口3aの下部を閉鎖する。
【0022】
[カバー部材]
図1及び
図2において、塵芥収集車1は、塵芥投入箱3の投入口3aを開閉するためのカバー部材20と、このカバー部材20を車両上下方向にスライド可能に案内するレール部材21と、をさらに備えている。
【0023】
カバー部材20は、投入口3aの車幅方向の全長にわたって形成されており、投入口3aの下部を除く他部、つまり、投入口3aにおいて起立姿勢時の載置台10よりも上側部分を開閉するものである。カバー部材20の後面下側の中央部には、カバー部材20を車両上下方向にスライド操作するためのハンドル11が設けられている。ハンドル11の車幅方向の両端部は、カバー部材20の後面に固定された左右一対の台座12に連結されている。ハンドル11は、台座12に対して、中立位置(
図1及び
図2に示す位置)から上下回動可能とされている(図示省略)。
【0024】
レール部材21は、塵芥投入箱3の側壁3cにおいて、投入口3aの車幅方向の側端部に沿って車両上下方向に延びて設けられている。なお、レール部材21は、図示を省略するが、塵芥投入箱3の左右の側壁3cにおいて、投入口3aの車幅方向の両側端部に沿って設けられている。
【0025】
カバー部材20の車幅方向の両端部には、それぞれガイドローラ(図示省略)が回転自在に設けられており、これらのガイドローラが各レール部材21に沿って車両上下方向に移動するようになっている。これにより、カバー部材20は、塵芥投入箱3に対して、車両上下方向にスライド可能とされている。
【0026】
図3は、塵芥投入箱3の側面図である。
図3に示すように、載置台10が起立姿勢のとき、カバー部材20は、上位置(
図3の二点鎖線位置)と、下位置(
図3の実線位置)との間でスライド可能とされている。したがって、
図3の実線で示すように、下位置にスライドさせたカバー部材20と、起立姿勢とした載置台10とが上下に連続して配置されることで、投入口3a全体が閉鎖される。そして、この閉鎖状態から、
図3の二点鎖線で示すように、カバー部材20を上位置までスライドさせるとともに、載置台10を展開姿勢(
図1参照)とすることで、投入口3a全体が開放される。
【0027】
側壁3cの外側面の前端部には、その車両上下方向の略中央部に固定されたブラケット23を介して、アーム部材24の下端部が上下スライド可能かつ上下回動可能に連結されている。アーム部材24の上端部は、カバー部材20の上端部に連結されている。これにより、カバー部材20が車両上下方向にスライドすると、アーム部材24の上端部は、アーム部材24の下端部が上下に移動しながら、当該下端部を中心として上下回動するようになっている。
【0028】
アーム部材24の下端部側には、例えばスプリング等の補助部材25の一端が連結されており、補助部材25の他端は、側壁3cの外側面の上端部に連結されている。これにより、補助部材25は、アーム部材24を常に上方へ回動させるように付勢している。したがって、カバー部材20は、補助部材25の付勢力によって、上位置と下位置との間で常に上側に向かってスライドするように付勢されている。
【0029】
補助部材25の両端は、カバー部材20が下位置にあるときに付勢力が最も大きくなるとともに、カバー部材20が上位置にあるときに付勢力が最も小さくなるように、アーム部材24及び側壁3cにそれぞれ連結されている。なお、図示を省略するが、ブラケット23、アーム部材24及びレール部材21は、塵芥投入箱3の左右の側壁3cそれぞれに設けられている。
【0030】
[ロック装置]
図4は、下位置にあるカバー部材20を前面側(裏面側)から見た正面図である。塵芥収集車1は、カバー部材20が下位置から上側にスライドするのを規制及び規制解除するとともに、カバー部材20が上位置から下側にスライドするのを規制及び規制解除するロック装置30を備えている。ロック装置30は、カバー部材20に設けられたロックピン31及びスプリング(付勢部材)32と、塵芥投入箱3の側壁3cに対して別体で取り付けられた下係合部33及び上係合部34と、を備えている。
【0031】
ロックピン31は、カバー部材20の前面における車幅方向の端部に固定された取付部材35に対して車幅方向に移動可能に取り付けられている。ロックピン31の車幅方向の内側には、スプリング32が挿入されており、このスプリング32の付勢力により、ロックピン31は常に車幅方向外側に向けて付勢されている。なお、図示を省略するが、ロックピン31、スプリング32及び取付部材35は、カバー部材20の車幅方向の両端部にそれぞれ設けられている。
【0032】
下係合部33は、カバー部材20が下位置にあるときに、スプリング32により車幅方向外側に付勢されたロックピン31と係合して当該ロックピン31が上側に移動するのを規制するものである。本実施形態の下係合部33は、側壁3cの内側面(投入口3aの車幅方向の側端部)の下部において、車幅方向内側に突出して取り付けられている。下係合部33の詳細については後述する。
【0033】
上係合部34は、カバー部材20が上位置にあるときに、スプリング32により車幅方向外側に付勢されたロックピン31と係合して当該ロックピン31が下側に移動するのを規制するものである。本実施形態の上係合部34は、側壁3cの内側面の上部において、車幅方向内側に突出して取り付けられている。上係合部34の詳細については後述する。
【0034】
ロックピン31の車幅方向内端部は、ワイヤ36を介してロック解除機構(図示省略)に接続されている。ロック解除機構は、ハンドル11を中立位置から上方回動又は下方回動させると、その回動操作と連動して、スプリング32により車幅方向外側に付勢されているロックピン31を、ワイヤ36を介して車幅方向内側へ引き込むように構成されている。ロック解除機構によりロックピン31を車幅方向内側へ引き込むことで、ロックピン31は、下係合部33との係合又は上係合部34との係合が解除される。
【0035】
また、ロック解除機構は、ハンドル11を上方回動させた状態又は下方回動させた状態から中立位置に戻すと、その操作と連動して、車幅方向内側に引き込まれたロックピン31が、スプリング32により車幅方向外側へ付勢されるように構成されている。ロック解除機構によりロックピン31を車幅方向外側へ付勢させることで、ロックピン31は下係合部33又は上係合部34と係合する。なお、ロック解除機構は、単一のハンドル11の上記操作と連動して、車幅方向両側に配置されたロックピン31を、同時に車幅方向内側に引き込ませたり、同時に車幅方向外側へ付勢させたりするように構成されている。
【0036】
ロック装置30の下係合部33及び上係合部34は、塵芥投入箱3の側壁3cに対して別体に取り付けられているので、側壁3cにロックピン31が係合する係合孔を形成する場合に比べて、下係合部33及び上係合部34の位置調整を容易に行うことができる。具体的には、係合孔の場合は、側壁3cを削って係合孔を大きくしないと位置調整を行うことができない。これに対して、本実施形態では、例えば下係合部33及び上係合部34を側壁3cに対して溶接で仮止めしておけば、その仮止めした下係合部33及び上係合部34を側壁3cから取り外して任意の位置へ移動させた後に再度溶接で固定すればよいので、位置調整を容易に行うことができる。
【0037】
下係合部33及び上係合部34は、側壁3cの内面から車幅方向内側に突出している。ロックピン31は、スプリング32の付勢力で下係合部33及び上係合部34にそれぞれ係合した状態(ロック状態)で取付部材35に当接する鍔部31aを有している。この鍔部31aが取付部材35に当接することで、ロックピン31の先端と側壁3cの内側面との間に隙間が形成される。これにより、カバー部材20を車両上下方向にスライドさせるときにロックピン31がロック状態になっても、側壁3cの内面とロックピン31の先端とが擦れるのを抑制することができる。また、ロックピン31がロック状態のときにカバー部材20が車幅方向にガタついても、側壁3cの内面とロックピン31の先端とが擦れるのを抑制することができる。
【0038】
[下係合部]
図5は、下係合部33を車幅方向内側から見た正面図である。
図4及び
図5において、下係合部33は、側面視において台形状に形成されたブロック体からなる。下係合部33の車幅方向外側の外側面331は、塵芥投入箱3の側壁3cの内面に取り付けられている。すなわち、下係合部33は、左右の側壁3cの間に形成された開口領域である投入口3aの車幅方向の側端部に設けられている。下係合部33の車幅方向内側の内側面の上側には、傾斜面332が形成されている。傾斜面332は、上側から下側へ向かうにつれて下係合部33の車幅方向内側への突出高さが徐々に高くなるように傾斜している。
【0039】
傾斜面332には、カバー部材20を上位置から下位置までスライドさせるときに、スプリング32により車幅方向外側に付勢されているロックピン31の車幅方向外端が当接するようになっている。これにより、ロックピン31は、スプリング32の付勢力に抗して傾斜面332に沿いながら車幅方向内側へ移動することで、傾斜面332を乗り越える。ロックピン31は、傾斜面332を乗り越えると、スプリング32により車幅方向外側に付勢されることで、下係合部33の下端部に形成された凹溝333に挿入される。
【0040】
凹溝333は、下係合部33の下端部の車両前後方向の中央部において、下向き且つ車幅方向内向き(
図5の紙面手前側)に開口している。凹溝333の底面(上面)334は、円弧状に形成されており、カバー部材20が下位置までスライドしたときに、スプリング32により車幅方向外側に付勢されたロックピン31が係合する係合面とされている。この係合面334によりロックピン31の上側への移動が規制されるので、上記補助部材25(
図3参照)の付勢力又は積込装置Tの駆動よる上下振動によってカバー部材20が下位置から上側にスライドするのを規制することができる。
【0041】
図6は、
図5のI-I矢視断面図である。
図5及び
図6において、係合面334は、車幅方向外側から車幅方向内側に向かうにつれて凹溝333の深さH1が徐々に深くなるように傾斜している。これにより、凹溝333の車幅方向内側の開口が広くなるので、ロックピン31を凹溝333の車幅方向内側から係合面334に容易に係合させることができる。
【0042】
図5に示すように、凹溝333の車両前後方向の両側面335は、係合面334の車両前後方向の両側から下方に真っすぐ延びて形成されている。両側面335の車両上下方向の長さは、係合面334に係合しているロックピン31が車両前後方向に移動しようとすると、そのロックピン31が当接する長さに形成されている。したがって、凹溝333の両側面335は、ロックピン31が係合面334に係合した状態から車両前後方向に移動するのを規制する規制面とされている。
【0043】
以上より、カバー部材20に設けられたロックピン31が、下係合部33の係合面334に係合した状態から車両前後方向の両側に移動するのを、下係合部33の規制面335により規制することができる。これにより、下位置にあるカバー部材20の上側へのスライドが下係合部33により規制された状態から、積込装置Tの駆動等によってカバー部材20が車両前後方向に揺れても、ロックピン31が下係合部33の係合面334から車両前後方向に外れるのを抑制することができる。その結果、下係合部33によるカバー部材20の上側へのスライド規制が解除されるのを抑制することができる。
【0044】
また、下係合部33の規制面335は、係合面334に対して車両前後方向の両側に配置されて下方に延びているので、下係合部33を車両前後方向にコンパクトに構成することができる。これにより、下係合部33が積込装置T等の他部材と干渉するのを抑制することができる。
【0045】
図7は、
図5のII-II矢視断面図である。
図5及び
図7において、各規制面335は、車幅方向外側から車幅方向内側へ向かうにつれて規制面335同士の間隔D1が徐々に広くなるように傾斜している。これにより、車幅方向内側の規制面335同士の間隔D1、つまり凹溝333の車幅方向内側の開口が広くなるので、下係合部33の車幅方向内側から車幅方向外側へ付勢されるロックピン31を凹溝333の係合面334に容易に係合させることができる。また、車幅方向外側の規制面335同士の間隔D1は狭くなるので、係合面334に係合したロックピン31の車両前後方向への移動範囲が狭くなる。これにより、下位置にあるカバー部材20が車両前後方向の揺れるのを抑制することができる。
【0046】
[上係合部]
図8は、上係合部34を車幅方向内側から見た正面図である。
図4及び
図8において、上係合部34は、下係合部33と同様に、側面視において台形状に形成されたブロック体からなる。上係合部34の車幅方向外側の外側面341は、塵芥投入箱3の側壁3cの内面に取り付けられている。すなわち、上係合部34は、左右の側壁3cの間に形成された開口領域である投入口3aの車幅方向の側端部に設けられている。上係合部34の車幅方向内側の内側面の上側には、傾斜面342が形成されている。傾斜面342は、下側から上側へ向かうにつれて上係合部34の車幅方向内側への突出高さが徐々に高くなるように傾斜している。
【0047】
傾斜面342には、カバー部材20を下位置から上位置までスライドさせるときに、スプリング32により車幅方向外側に付勢されているロックピン31の車幅方向外端が当接するようになっている。これにより、ロックピン31は、スプリング32の付勢力に抗して傾斜面342に沿いながら車幅方向内側へ移動することで、傾斜面342を乗り越える。ロックピン31は、傾斜面342を乗り越えると、スプリング32により車幅方向外側に付勢されることで、上係合部34の上端部に形成された凹溝343に挿入される。
【0048】
凹溝343は、上係合部34の上端部の車両前後方向の中央部において、上向き且つ車幅方向内向き(
図8の紙面手前側)に開口している。凹溝343の底面(下面)344は、円弧状に形成されており、カバー部材20が上位置までスライドしたときに、スプリング32により車幅方向外側に付勢されたロックピン31が係合する係合面とされている。この係合面344によりロックピン31の下側への移動が規制されるので、カバー部材20が自重によって上位置から下側にスライドするのを規制することができる。
【0049】
図9は、
図8のIII-III矢視断面図である。
図8及び
図9において、係合面344は、車幅方向外側から車幅方向内側に向かうにつれて凹溝343の深さH2が徐々に深くなるように傾斜している。これにより、凹溝343の車幅方向内側の開口が広くなるので、ロックピン31を凹溝343の車幅方向内側から係合面344に容易に係合させることができる。
【0050】
図8に示すように、凹溝343の車両前後方向の両側面345は、係合面344の車両前後方向の両側から上方に真っすぐ延びて形成されている。両側面345の車両上下方向の長さは、係合面344に係合しているロックピン31が車両前後方向に移動しようとすると、そのロックピン31が当接する長さに形成されている。したがって、凹溝343の両側面345は、ロックピン31が係合面344に係合した状態から車両前後方向に移動するのを規制する規制面とされている。
【0051】
以上より、カバー部材20に設けられたロックピン31が、上係合部34の係合面344に係合した状態から車両前後方向の両側に移動するのを、上係合部34の規制面345により規制することができる。これにより、上位置にあるカバー部材20の下側へのスライドが上係合部34により規制された状態から、積込装置Tの駆動等によってカバー部材20が車両前後方向に揺れても、ロックピン31が上係合部34の係合面344から車両前後方向に外れるのを抑制することができる。その結果、上係合部34によるカバー部材20の下側へのスライド規制が解除されるのを抑制することができる。
【0052】
また、上係合部34の規制面345は、係合面344に対して車両前後方向の両側に配置されて上方に延びているので、上係合部34を車両前後方向にコンパクトに構成することができる。これにより、上係合部34が積込装置T等の他部材と干渉するのを抑制することができる。
【0053】
図10は、
図8のIV-IV矢視断面図である。
図8及び
図10において、各規制面345は、車幅方向外側から車幅方向内側へ向かうにつれて規制面345同士の間隔D2が徐々に広くなるように傾斜している。これにより、車幅方向内側の規制面345同士の間隔D2、つまり凹溝343の車幅方向内側の開口が広くなるので、上係合部34の車幅方向内側から車幅方向外側へ付勢されるロックピン31を凹溝343の係合面344に容易に係合させることができる。また、車幅方向外側の規制面345同士の間隔D2は狭くなるので、係合面344に係合したロックピン31の車両前後方向への移動範囲が狭くなる。これにより、上位置にあるカバー部材20が車両前後方向に揺れるのを抑制することができる。
【0054】
[その他]
上記実施形態では、下係合部33及び上係合部34の係合面334,344は、車幅方向外側から車幅方向内側に向かうにつれて凹溝333,343の深さH1,H2が徐々に深くなるように傾斜しているが、傾斜していなくてよい。また、係合面334,344は、円弧状に形成されているが、ロックピン31の車両上下方向の一方側への移動を規制できれば、他の形状に形成されていてもよい。例えば、係合面334,344は、車両前後方向に平坦に形成されていてもよいし、車両前後方向に対して傾斜して形成されていてもよい。また、下係合部33及び上係合部34には傾斜面332,342が形成されているが、この傾斜面332,342は形成されていなくてもよい。
【0055】
上記実施形態では、下係合部33及び上係合部34の規制面335,345は、車両上下方向に真っすぐ延びているが、ロックピン31の車両前後方向への移動を規制できる程度に車両上下方向に延びていればよく、例えば、車両上下方向に対して傾斜していてもよいし、円弧状に湾曲していてもよい。
【0056】
上記実施形態では、下係合部33における車両前後方向の両側の規制面335は、これらの規制面335同士の間隔D1が変化するように傾斜しているが、一方側の規制面335のみが傾斜していてもよい。また、両側の規制面335は、これらの規制面335同士の間隔D1が一定となるように傾斜していなくてもよい。
【0057】
上記実施形態では、上係合部34における車両前後方向の両側の規制面345は、これらの規制面345同士の間隔D2が変化するように傾斜しているが、一方側の規制面345のみが傾斜していてもよい。また、両側の規制面345は、これらの規制面345同士の間隔D2が一定となるように傾斜していなくてもよい。
【0058】
上記実施形態では、下係合部33及び上係合部34の規制面335,345は、係合面334,344の車両前後方向の両側に形成されているが、車両前後方向のいずれか一方のみに形成されていてもよい。また、下係合部33及び上係合部34のそれぞれが規制面335,345を有しているが、下係合部33のみ又は上係合部34のみが規制面を有していてもよい。
【0059】
上記実施形態では、下係合部33及び上係合部34に形成された凹溝333,343の側面を、規制面335,345としているが、これに限定されるものではなく、係合面334の車両前後方向の少なくとも一方側に、ロックピン31の当該一方側への移動を規制する壁面が車両上下方向に延びて配置されていればよい。例えば、下係合部33及び上係合部34にロックピン31が挿入される孔を形成し、その孔の内周面における車両前後方向に位置する部分を規制面としてもよい。
【0060】
上記実施形態では、ハンドル11の回動操作と連動してロックピン31を車幅方向に移動させているが、これに限定されるものではない。例えば、カバー部材20にハンドル11を固定し、そのハンドル11の近傍に設けた操作部材(例えばレバー又はスイッチ等)を操作することでロックピンを車幅方向に移動させてもよい。また、上記実施形態では、車幅方向両側に設けたロックピン31を同時に車幅方向に移動させているが、各ロックピン31を個別に車幅方向に移動させるようにしてもよい。
【0061】
上記実施形態の塵芥収集車1は、プレス式の積込装置Tを備えているが、回転板と押込板とにより塵芥を積み込む回転板式の積込装置を備えたものであってもよい。
上記実施形態では、投入口3aの下部に載置台10を設けているが、この載置台10は必ずしも設ける必要はない。また、上記実施形態のカバー部材20は、車両上下方向にスライドするようになっているが、スライド以外の方法で上下移動させるようにしてもよい。
【0062】
上記実施形態では、カバー部材20を常に上側に向かって付勢する補助部材25は、アーム部材24を介してカバー20を付勢しているが、アーム部材24を介さずにカバー部材20を直接付勢してもよい。また、補助部材25として、スプリング以外に、巻取装置又はガスシリンダ等を用いてもよい。巻取装置を用いる場合には、カバー部材20を例えば可撓性のシートによって構成し、塵芥投入箱3の投入口3aの上側に設けた巻取装置によってカバー部材20を常に巻き取るようにすればよい。
【0063】
上記実施形態のロック装置30は、補助部材25の付勢力によってカバー部材20が下位置から上側に移動するのを規制する下係合部33を備えているが、補助部材25を備えていない塵芥収集車であっても、積込装置の駆動中や車両走行中に生じる振動等によってカバー部材が下位置から上側に移動する場合があるので、下係合部33は必要となる。このため、補助部材25を備えていない塵芥収集車にも本発明を適用することができる。
【0064】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 塵芥収集車
2 塵芥収容箱
3 塵芥投入箱
3a 投入口
20 カバー部材
30 ロック装置
31 ロックピン
33 下係合部
34 上係合部
334 係合面
335 規制面
344 係合面
345 規制面
D1,D2 間隔
T 積込装置