(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】複合部品内の繊維の歪みを調整する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/44 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
B29C70/44
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019224633
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-11-16
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】ガガンディープ・サイニ
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504564(JP,A)
【文献】特表2016-521221(JP,A)
【文献】国際公開第2016/043156(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0095983(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/10 - 43/12
65/02 - 65/46
70/06 - 70/24
70/68 - 70/86
B29L 31/30
G06F 113/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未硬化の複合材料(48)に適用する当て板(46)であって、
前記当て板(46)によって画定された第1のスリット(50)であって、前記当て板(46)を通り且つ前記当て板(46)に沿って延伸する、第1のスリット(50)
と、
前記当て板(46)によって画定された第2のスリット(76)であって、前記当て板(46)を通り且つ前記当て板(46)に沿って延伸し、前記第1のスリット(50)から離間して配置された、第2のスリット(76)と、
を含
み、
前記第1のスリット(50)及び前記第2のスリット(76)が、互いに離間されて前記当て板(46)に沿って延伸し、且つ同じ方向に延伸しており、
前記当て板(46)は、第1の部分(70)及び第2の部分(72)を備えており、湾曲部(74)は前記第1の部分(70)と前記第2の部分(72)との間に配置されており、前記第1の部分(70)は前記湾曲部(74)によって前記第2の部分(72)と連結されており、前記第2の部分(72)は前記第1の部分(70)に対して略垂直に配置されており、
前記当て板(46)が、前記第1の部分(70)の端部(78)及び前記第2の部分(72)の第2の対向する端部(80)を有しており、
前記第1のスリット(50)は、前記当て板(46)の前記端部(78)を通り且つ前記当て板(46)の前記第2の対向する端部(80)に向かって延伸し、
前記第1のスリット(50)の端部(82)は、前記当て板(46)の前記第2の部分(72)によって画定されて、前記当て板(46)の前記第2の対向する端部(80)から離間して配置され、
前記第2のスリット(76)は、前記当て板(46)の前記第2の対向する端部(80)を通り且つ前記当て板(46)の前記端部(78)に向かって延伸し、
前記第2のスリット(76)の端部(84)は、前記当て板(46)の前記第1の部分(70)によって画定されて、前記当て板(46)の前記端部(78)から離間して配置される、当て板(46)。
【請求項2】
前記第1のスリット(50)は、前記未硬化の複合材料(48)の表面(54)に
前記第1のスリット(50)を配置するために、前記当て板(46)の表面(52)から前記当て板(46)を通って延伸し、
前記当て板(46)の前記表面(52)が前記未硬化の複合材料(48)に配置されている状態で、前記未硬化の複合材料(48)の前記表面(54)から離れて面する関係で配置するために、前記第1のスリット(50)は前記当て板(46)を通って前記当て板(46)の対向面(56)まで延伸する、請求項1に記載の当て板(46)。
【請求項3】
前記表面(52)の少なくとも一部(58)が直線方向(Ld)に延伸する、請求項2に記載の当て板(46)。
【請求項4】
前記対向面(56)の少なくとも一部(62)が直線方向(Ld)に延伸する、請求項3に記載の当て板(46)。
【請求項5】
前記表面(52)の少なくとも一部(66)が曲線方向(C)に延伸する、請求項2から4のいずれか一項に記載の当て板(46)。
【請求項6】
前記対向面(56)の少なくとも一部(68)が曲線方向(C)に延伸する、請求項5に記載の当て板(46)。
【請求項7】
前記第1のスリット(50)が、前記当て板(46)に沿って直線方向(LD)に延伸する、請求項1から6のいずれか一項に記載の当て板(46)。
【請求項8】
前記第1のスリット(50)の幅寸法(W)が、1インチの100分の1(0.01インチ)から1インチの100分の5(0.05インチ)の幅寸法を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の当て板(46)。
【請求項9】
前記当て板(46)が、長さ(Lc)を有し、
前記第1のスリット(50)が、前記当て板(46)の前記長さ(Lc)に対して横方向の直線方向に延伸する、請求項1から8のいずれか一項に記載の当て板(46)。
【請求項10】
第3のスリット(86)及び第4のスリット(90)をさらに含み、
前記第3のスリット(86)は、前記当て板(46)によって画定され、前記当て板(46)を通り且つ前記当て板(46)に沿って延伸し、前記第2のスリット(76)が前記第1のスリット(50)と前記第3のスリット(86)との間に配置された状態で前記第2のスリット(76)に隣接して配置され、
前記第3のスリット(86)が、前記当て板(46)の前記第2の対向する端部(80)に向かって前記当て板(46)の前記端部(78)を通って延伸し、
前記第3のスリット(86)の端部(88)が、前記当て板(46)によって画定されて、前記当て板(46)の前記第2の対向する端部(80)から離間されて配置され、
前記第4のスリット(90)は、前記当て板(46)によって画定され、前記当て板(46)を通り且つ前記当て板(46)に沿って延伸し、前記第1のスリット(50)が前記第2のスリット(76)と前記第4のスリット(90)との間に配置された状態で前記第1のスリット(50)に隣接して配置され、
前記第4のスリット(90)が、前記当て板(46)の前記端部(78)に向かって前記当て板(46)の前記第2の対向する端部(80)を通って延伸し、
前記第4のスリット(90)の端部(92)が、前記当て板(46)によって画定されて、前記当て板(46)の前記端部(78)から離間されて配置される、請求項
1に記載の当て板(46)。
【請求項11】
未硬化の複合材料(48)内に幾何学的変化を有する状態で、前記未硬化の複合材料(48)で構成された部品を製造する方法(98)であって、前記方法が、
前記未硬化の複合材料(48)内に幾何学的変化を有する状態で、前記未硬化の複合材料(48)と重なり合う関係で
請求項1に記載の当て板(46)を配置するステップを含
む、方法(98)。
【請求項12】
前記未硬化の複合材料(48)及び前記当て板(46)を真空バッグの中に配置するステップをさらに含む、請求項
11に記載の方法(98)。
【請求項13】
前記真空バッグ内に減圧を配置するステップであって、前記未硬化の複合材料(48)の一部(94)を前記第1のスリット(50)の中に引き込む、配置するステップをさらに含む、請求項
12に記載の方法(98)。
【請求項14】
前記未硬化の複合材料(48)を加熱するステップと、
前記未硬化の複合材料(48)を硬化させるステップであって、前記第1のスリット(50)内に配置された前記未硬化の複合材料(48)の前記一部(94)が、硬化された複合材料(48’)のしわ(A)を形成する、硬化させるステップと、
をさらに含む、請求項
13に記載の方法(98)。
【請求項15】
前記当て板(46)の前記第1のスリット(50)は、前記未硬化の複合材料(48)の表面(54)に面する関係で配置するために、前記当て板(46)の表面(52)から延伸し、且つ前記未硬化の複合材料(48)の前記表面(54)から離れて面する関係で配置するために、前記当て板(46)の厚さ寸法を通って前記当て板(46)の対向面(56)まで延伸する、請求項
11から
14のいずれか一項に記載の方法(98)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は複合部品の製造に関し、より詳細には、硬化前に繊維の歪みが生じていた、完成複合部品のしわの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
複合部品の製造において、完成複合部品の圧縮強度は、完成した硬化済み複合部品内の繊維の直線度に左右されることが知られている。複合部品内に繊維のうねりが存在すると、複合部品の強度が大幅に低下する可能性がある。
【0003】
繊維直線度の変化又は歪みは、硬化前の複合部品に対し、さまざまな経緯で発生する可能性がある。硬化前の繊維の歪みの例は、曲率半径の周囲で延伸するように配置される未硬化の複合部品など、幾何学形状が変化した複合部品、或いはプライドロップを有する未硬化の複合部品で発生する可能性がある。製造される複合部品内の繊維の方向が変えられる原因は何であれ、複合部品の方向が変化すると、硬化前の複合部品の一部の繊維が引っ張られる可能性があり、且つ複合部品の別の部分が圧縮される可能性がある。未硬化の複合部品内で繊維が圧縮されて配置されると、繊維が直線配列から歪められ、且つ繊維が束になる(bunching)可能性がある。繊維が歪んだ状態で複合部品を硬化させると、硬化済みの複合部品に非制御のしわが発生する可能性がある。
【0004】
硬化させた複合部品に生じるしわは複合部品内で位置を特定でき、そこでは繊維が歪められ、複合部品の強度が低下している。その結果、製造者は、複合部品にさらなる強度を与えるために、そのようなしわの場所で複合部品を強化するように、複合部品に別の複合材料を追加することになる。複合材料を追加するこの手順によって、複合部品の製造に追加の時間、労力、及び材料コストがかかる。また、複合材料を追加するこの手順によって、完成複合部品に重量が追加される。完成複合部品に重量が追加されることにより、例えば航空機の製造に使用されると、航空機の運用に追加のコストがかかることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
硬化された複合部品に非制御のしわが発生しているいくつかの事例では、完成複合部品における許容されるしわの長さ及び深さを制限する技術仕様及び/又は他の製造規制を超える可能性があり、完成複合部品が使用不可となり、複合部品が廃棄されることになる。結果として、繊維が圧縮した状態で配置されたり、直線配列から歪められたりした結果生じたしわを制御する必要があり、これは例えば、未硬化の複合材料が幾何学的に変化することから生じる。複合部品の強度を強化するために複合材料を追加すると、複合部品で製造される航空機などの構造に重量が追加される可能性があり、運用コストが増える結果になるが、完成複合部品のしわを制御することによって複合材料を追加する必要性を回避でき、且つ/又は複合部品内の非制御のしわが技術仕様及び/又は規制基準を超えることを回避して、部品が廃棄されないようにすることが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一例は、未硬化の複合材料に適用する当て板を含み、当て板は、当て板によって画定され、当て板を通り且つ当て板に沿って延伸する第1のスリットを含む。
【0007】
一例は、未硬化の複合材料内に幾何学的変化を有する状態で、未硬化の複合材料で構成された部品を製造する方法であって、本方法は、未硬化の複合材料内に幾何学的変化を有する状態で、未硬化の複合材料と重なり合う関係で当て板を配置するステップを含み、当て板は、当て板によって画定され、当て板を通り且つ当て板に沿って延伸する第1のスリットを有する、方法を含む。
【0008】
これまで述べてきた特徴、機能、及び利点は、種々の実施形態において別個独立に達成することができ、或いは以下の説明及び図面を参照してさらなる詳細を見ることができる、さらに別の実施形態で組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1の2-2の線に沿って見た、複合材外皮及び複合材ブレードストリンガーで構成された翼の概略断面図である。
【
図3】
図2の翼の複合材外皮に沿って延伸する、未硬化の複合材ブレードストリンガーの斜視図である。
【
図4】
図3のブレードストリンガーの製造時に使用される、当て板の一部の部分斜視図である。
【
図5】
図3の翼の複合材外皮に沿って延伸する、未硬化のブレードストリンガーに配置された
図4の当て板の斜視図である。
【
図6】
図5の未硬化のブレードストリンガーに配置された、
図4の当て板の部分側面図である。
【
図7】当て板の外面に減圧が印加されている、
図6の当て板の部分拡大側面図である。
【
図8】複合材料の硬化後にブレードストリンガーから当て板が除去され、ブレードストリンガーに制御されたしわが配置されている、
図7のブレードストリンガーの部分斜視図である。
【
図9】幾何学的変化を有する状態で、複合部品を硬化させる方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
構造の組み立てに使用されるさまざまな部品が複合材料で構成されており、これには繊維及び樹脂が含まれている。さまざまな部品の製造において、部品は、硬化される前に幾何学的形状が変更されることが多い。未硬化の部品の幾何学的形状が変化することにより、部品の製造に使用される複合材料内で、強化繊維の直線配列が歪められる結果となる。繊維の直線配列の歪みは、例えば、複合部品構成時の1つ以上のプライドロップによって、又は別の部品の形状に適合させるために、複合材料が平坦な平面に配置されなくなるように、複合部品の形状を変更することによって生じる可能性がある。プライドロップ、及び/又は複合材料の平坦な構成からの形状の変更などによって、部品の構成に使用される未硬化の複合材料の形状が変化すると、未硬化の複合材料内で、繊維の直線配列が直線配向から変更される、又は歪められる。
【0011】
例えば、硬化させる前に、隣接する部品の湾曲に沿うように形成される、複合材料を含む複合部品を製造するときは、湾曲に沿う複合材料の一部の繊維が直線配列から歪められる可能性がある。複合材料が湾曲に沿うと、複合材料内の繊維の一部が引っ張られた状態で配置され、複合材料内の繊維の別の部分は、圧縮された状態で配置される可能性がある。圧縮された繊維は、歪められて束になりやすくなる場合がある。繊維が束になった状態で複合材料を硬化させると、硬化させた複合部品に望ましくない非制御のしわが発生する可能性がある。完成複合部品の強度が低下したことを示す非制御のしわが、しわの技術仕様及び/又は規制基準を超えた場合、製造される部品に追加の複合材料を加えることが必要な場合があり、或いは部品を廃棄しなければならない場合がある。
【0012】
図1から
図3を参照すると、航空機10は、複合材料で構成された部品で組み立てた構造部を有する構造の例であり、複合部品が硬化される前に、複合部品は幾何学的な形状変化を受ける。硬化される前に幾何学的な形状変化を受ける複合部品を有する航空機10の部分の例には、例えば、翼12、機体14、垂直尾翼16、水平尾翼18、及び航空機10の他の構造部、並びに複合部品を使用して組み立てられる他の構造の他の部分が含まれる。
【0013】
複合部品が硬化される前に、幾何学的な形状変化を受ける複合部品の例は、航空機10の翼12内などで使用される、ストリンガー又は補剛材である。翼12は、
図3に示すように、内面22を有する複合材外皮20を備え、その外形は、複合材外皮20の内面22に適合するように、複合材料48で構成されたブレードストリンガー24の幾何学的形状又は形状を変化させる必要がある。ブレードストリンガー24が複合材外皮20に最適に固定されるように、且つブレードストリンガー24が複合材外皮20を最適に補強支持するように、ブレードストリンガー24は複合材外皮20の内面22に適合する。ブレードストリンガー24は、本明細書では製造される複合部品の例として説明され、複合部品の幾何学的形状又は形状は、硬化される前に変化する。本開示の教示を説明するために、ストリンガーその他の複合部品の、他の多くの構成を使用することができる。
【0014】
複合材外皮20の内面22は、例えば第1の湾曲28及び第2の湾曲29を有するランプ26によって、複合材外皮20の内面22の高さ又は外形が変化する。第1の湾曲28及び第2の湾曲29は、複合材外皮20内のランプ26の対向する端部に配置される。複合材外皮20の内面22の外形又は高さの変化は、例えば、翼12が機体14から離れて延伸する際に、翼12の負荷需要に対応するため、且つ/又は翼12のサイズに対応するための、複合材外皮20内のプライドロップによって生じる可能性がある。複合材外皮20の内面22にブレードストリンガー24を適合させるために、ブレードストリンガー24の形状はブレードストリンガー24の硬化前に変更され、その結果、ブレードストリンガー24がランプ26に沿って延伸するにつれて、ブレードストリンガー24のフランジ30及びウェブ32が、複合材外皮20の内面22の外形又は湾曲に沿う。
【0015】
図6を参照すると、複合材外皮20のランプ26が示されており、上述したように、複合材外皮20の第1の湾曲28及び第2の湾曲29が、ランプ26の対向する端部に配置されている。
図3に示すブレードストリンガー24のフランジ30が
図6の当て板46の土台になっており、
図3及び
図6に示すように、ブレードストリンガー24の長さLに沿って延伸する繊維34を有する、未硬化の複合材料48を含む。ブレードストリンガー24のウェブ32は、これもブレードストリンガー24の長さLに沿って延伸する繊維36を有する、未硬化の複合材料48を含む。複合材外皮20のランプ26の、第1の湾曲28に対し、フランジ30内の繊維34の上部38は、第1の湾曲28に沿って延伸しながら引っ張った状態で配置され、フランジ30内の繊維34の下部40は、第1の湾曲28に沿って延伸しながら圧縮した状態で配置される。第1の湾曲28で、ブレードストリンガー24の長さLに沿って延伸するウェブ32内の繊維36もまた、複合材外皮20の第1の湾曲28に沿って延伸し、ウェブ32内の繊維36の上部42は引っ張った状態で配置され、ウェブ32内の繊維36の下部44は圧縮した状態で配置される。
【0016】
複合材外皮20内に配置されたランプ26の第2の湾曲29では、ブレードストリンガー24のフランジ30の、未硬化の複合材料48の繊維34が、第2の湾曲29に沿って延伸する、フランジ30内に圧縮した状態で配置された繊維34の上部38と、第2の湾曲29に沿って延伸する、フランジ30内に圧縮した状態で配置された繊維34の下部40とを有する。第2の湾曲29に沿って延伸するウェブ32内の繊維36は、圧縮した状態で配置された、ウェブ32内の繊維36の上部42と、圧縮した状態で配置された、ウェブ32内の繊維36の下部44とを有する。
【0017】
結果として、複合材外皮20の第1の湾曲28に対し、フランジ30の繊維34の下部40、及びウェブ32の繊維36の下部44が圧縮した状態で配置され、フランジ30の下部40の繊維34、及びウェブ32の下部44内の繊維36が、直線配列から歪められる。同様に、複合材外皮20の第2の湾曲29に対し、フランジ30の繊維34の上部38、及びウェブ32の繊維36の上部42が圧縮した状態で配置され、フランジ30の上部38内の繊維34、及び上部42の繊維36が、直線配列から歪められている。何らかの緩和策をとらなければ、ブレードストリンガー24を硬化させる際に、繊維の歪みによって、硬化したブレードストリンガー24内に非制御のしわが生じる。しかしながら、
図4から
図6に示すように、未硬化のブレードストリンガー24に当て板46を適用し、それと同時に減圧を印加して、硬化プロセス中に真空バッグ(図示せず)内で未硬化の複合材料48及び当て板46を配置することによって、本明細書でより詳細に説明するように、完成した硬化ブレードストリンガー24のしわを制御する能力を製造者に提供する。完成したブレードストリンガー24内の制御されたしわは、完成複合部品で許容されている、許容されるしわの量及びサイズに関する技術仕様及び規制基準に適合して、ブレードストリンガー24における完成複合部品の使用を最適化し、その結果生じたブレードストリンガー24の強度をさらに最適化する。
【0018】
当て板46は、
図4から
図6に示すように未硬化の複合材料48に配置され、
図3から
図5に示すように、ブレードストリンガー24の硬化プロセスにおけるこの使用例では、ブレードストリンガー24のフランジ30及びウェブ32の未硬化の複合材料48を含む。ブレードストリンガー24などの、硬化させる部品の未硬化の複合材料48に当て板46を配置すると、当て板46及び未硬化の複合材料48は、前述したように真空バッグ(図示せず)内に配置されて真空バッグ内に減圧が印加され、後述するように、繊維及び樹脂を未硬化の複合材料48から当て板46のスリットの中に引き込む。未硬化の複合材料48を硬化させる硬化プロセスでは熱も印加され、(複数の)スリットに引き込まれた未硬化の複合材料48の繊維及び樹脂材料で形成された、(複数の)制御されたしわがブレードストリンガー24内に配置される結果となる。この例では、ブレードストリンガー24の構成に2枚の当て板46が使用され、各当て板46は、
図5に示すように、L字形の構成を有し、ブレードストリンガー24の未硬化の複合材料48の対向する側面に配置される。他の形状のストリンガーに適合させるため、或いは、硬化前の複合部品の形成において、繊維を直線配列から歪ませることによる幾何学的な形状変化を有する、製造される他の複合部品用に、他の形状の(複数の)当て板46を使用することができる。
【0019】
図4から
図6を参照すると、当て板46は、未硬化の複合材料48の硬化プロセス中に使用するために、未硬化の複合材料48に配置する際に使用され、ブレードストリンガー24などの複合部品を、しわを制御して製造する。当て板46は、当て板46によって画定され、当て板46を通り且つ当て板46に沿って延伸する第1のスリット50を含む。第1のスリット50は、未硬化の複合材料48の表面54に配置するために、当て板46の表面52から当て板46を通って延伸する。第1のスリット50は、
図5の例で示すように、未硬化の複合材料48の表面54から離れて面する関係で配置するために、当て板46の対向面56まで当て板46を通って延伸し、当て板46の表面52は、未硬化の複合材料48に配置されている。
【0020】
図4及び
図5を参照すると、当て板46の表面52の少なくとも一部58は、フランジ30の未硬化の複合材料48上に配置されており、
図5に示すように、直線方向Lに延伸する。同様に、当て板46の表面52の少なくとも一部60は、ウェブ32の未硬化の複合材料48上に配置されており、
図5に示すように、直線方向L’に延伸する。フランジ30の複合材料48を背にして配置された、当て板46の対向面56の少なくとも一部62は、
図5に示すように、直線方向Lに延伸し、当て板46の対向面56の少なくとも一部64は、ウェブ32の未硬化の複合材料48を背にして配置され、これも
図5に示すように、直線方向L’に延伸する。表面52の少なくとも一部66は曲線方向Cに延伸し、且つ対向面56の一部68は曲線方向Cに延伸する。
【0021】
図4及び
図5を参照すると、第1のスリット50は、この例ではブレードストリンガー24のフランジ30に沿って延伸する当て板46の部分70に沿って直線方向LDに延伸し、且つこの例ではブレードストリンガー24のウェブ32に沿って延伸する当て板46の部分72に沿って直線方向LD’に延伸する。この例では、ブレードストリンガー24の形成に使用される当て板46に関し、
図4に示すように、当て板46の部分70及び72は、当て板46の湾曲部74に沿って互いに結合する。これも
図4に示すように、第1のスリット50は当て板46を通って延伸し、当て板46の部分70及び72内に、且つ当て板46の湾曲部74内に配置される。
【0022】
第1のスリット50は、製造される複合部品内に制御されたしわを形成するために、必要に応じてさまざまな幅寸法及び長さ寸法で作成することができる。この例では、幅寸法Wは、1インチの100分の5(0.05インチ)を含むそれ以下の、例えば1インチの100分の1(0.01インチ)を含む。当て板46は長さLを有し、第1のスリット50は、ブレードストリンガー24のフランジ30用の未硬化の複合材料48に配置するために、当て板46の部分70に沿って直線方向LDに延伸し、
図4に示すように、当て板46の長さLに対して横方向に延伸している。同様に、第1のスリット50は、ブレードストリンガー24のウェブ32用の未硬化の複合材料48に配置するために、当て板46の部分72に沿って直線方向LD’に延伸し、これも
図4に示すように、当て板46の長さLに対して横方向に延伸している。
【0023】
図4及び
図6に示すように、当て板46は、当て板46によって画定され、当て板46を通り且つ当て板46に沿って延伸し、第1のスリット50から離間されて配置された、第2のスリット76をさらに含む。第1のスリット50及び第2のスリット76は、互いに離間されて当て板46に沿って延伸し、且つ同じ方向に延伸し、
図4に示すように互いに平行である。当て板46は、端部78及び第2の対向する端部80を有する。第1のスリット50は、当て板46の端部78を通って延伸し、且つ当て板46の第2の対向する端部80に向かって延伸し、第1のスリット50の端部82は当て板46によって画定され、当て板46の第2の対向する端部80から離間されて配置される。第2のスリット76は、当て板46の第2の対向する端部80を通って延伸し、且つ当て板46の端部78に向かって延伸し、第2のスリット76の端部84は、当て板46によって画定され、当て板46の端部78から離間されて配置される。
【0024】
図4の当て板46をさらに参照すると、当て板46によって画定され、当て板46を通り且つ当て板46に沿って延伸する第3のスリット86が第2のスリット76に隣接して配置され、第2のスリット76は、第1のスリット50と第3のスリット86との間に配置されている。第3のスリット86は、当て板46の第2の対向する端部80に向かって、当て板46の端部78を通って延伸する。第3のスリット86の端部88は、当て板46によって画定され、当て板46の第2の対向する端部80から離間されて配置される。当て板46によって画定され、当て板46を通り且つ当て板46に沿って延伸する第4のスリット90が第1のスリット50に隣接して配置され、第1のスリット50は、第2のスリット76と第4のスリット90との間に配置されている。第4のスリット90は、当て板46の端部78に向かって、当て板46の第2の対向する端部80を通って延伸する。第4のスリット90の端部92は、当て板46によって画定され、当て板46の端部78から離間されて配置される。第1のスリット50の端部82、第2のスリット76の端部84、第3のスリット86の端部88、及び第4のスリット90の端部92の構成はそれぞれ、当て板46を個別の部分に分ける必要なく、ブレードストリンガー24の長さLに沿って延伸する連続性を当て板46に与える。
【0025】
第1のスリット50、第2のスリット76、第3のスリット86、及び第4のスリット90の構成はそれぞれ、複合材外皮20内に配置されたランプ26の第1の湾曲28がある場所に配置される。先に説明した通り、フランジ30内の繊維34、及びウェブ32内の繊維36の歪みは、ブレードストリンガー24を硬化させる前に、ブレードストリンガー24を複合材外皮20の内面22の外形に適合させた結果発生する。製造者は、ブレードストリンガー24などの複合部品に制御されたしわを提供するようにスリット及びスリットのサイズを配置でき、その結果、制御されたしわは、このような部品を製造するための技術基準及び規制基準に適合するようになる。製造者による第1のスリット50、第2のスリット76、第3のスリット86、及び第4のスリット90などのスリットの位置及び寸法によって、例えば、
図7に示すように、未硬化の複合材料48の部分94が第1のスリット50に入り、未硬化の複合材料48の部分96が第3のスリット86に入る結果になる。未硬化の複合材料48の引き込みは、未硬化の複合材料48と当て板46とを真空圧着し、且つ真空バッグ内に配置される減圧を印加すると生じる。ブレードストリンガー24の未硬化の複合材料48は、フランジ30に沿って第1のスリット50及び第3のスリット86の中に引き込まれ、且つ同時にブレードストリンガー24のウェブ32に沿って(図示せず)第1のスリット50及び第3のスリット86の中に引き込まれる。同様に、未硬化の複合材料48は、フランジ30及びウェブ32に沿って、第2のスリット76及び第4のスリット90の中にさらに引き込まれる(図示せず)。未硬化の複合材料48が、第1のスリット50、第2のスリット76、第3のスリット86、及び第4のスリット90内にそれぞれ引き込まれて硬化されると、製造者は、
図8に示すように、予め決められたサイズ及び位置のしわA、B、C、及びDを生成し、これらは
図6に示すように、当て板46の第1のスリット50、第2のスリット76、第3のスリット86、及び第4のスリット90の位置にそれぞれ対応する。しわのサイズ及び位置を制御することにより、製造された複合部品内で許容されるしわの数についての技術仕様及び規制基準に適合するように、ブレードストリンガー24などの複合部品の製造を最適化する機会を製造者に与える。
【0026】
図9を参照すると、未硬化の複合材料48で構成される、例えばブレードストリンガー24などの部品を製造する方法98が示され、未硬化の複合材料48は、未硬化の複合材料48を湾曲させる複合材外皮20の第1の湾曲28のように、幾何学的変化を有する。方法98は、当て板46を未硬化の複合材料48に重なり合う関係で配置するステップを含む。未硬化の複合材料48は幾何学的変化を有し、当て板46は、当て板46によって画定され、当て板46を通り且つ当て板46に沿って延伸する第1のスリット50を含む。方法98は、未硬化の複合材料48及び当て板46を真空バッグ(図示せず)の中に配置するステップをさらに含む。
【0027】
方法98は、真空バッグ(図示せず)内に減圧を配置して、未硬化の複合材料48の一部94を第1のスリット50の中に引き込むステップをさらに含む。また、方法98は、例えば、オートクレーブで未硬化の複合材料48を加熱して未硬化の複合材料48を硬化させ、
図7及び
図8に示すように、第1のスリット50内に配置された未硬化の複合材料48の部分94が、硬化された複合材料48’内に、予め決められ制御されたしわAを形成するステップをさらに含む。
【0028】
当て板46の第1のスリット50は、未硬化の複合材料48の表面54に面する関係で配置するために当て板46の表面52から延伸し、且つ未硬化の複合材料48の表面54から離れて面する関係で配置するために、当て板46の対向面56まで当て板46の厚さ寸法を通って延伸する。当て板46は、当て板46によって画定され、当て板46を通り且つ当て板46に沿って延伸し、第1のスリット50から離間されて配置された、第2のスリット76をさらに含む。第1のスリット50及び第2のスリット76は、同じ方向に延伸しながら、互いに離間されて当て板46に沿って延伸し、例えば
図4に示すように互いに平行である。第1のスリット50及び第2のスリット76は、
図8に示すような予め決められ制御されたしわA及びBの形成に使用することができる。複合部品内に、技術仕様及び規制基準に適合する、許容され制御されたしわを生成するために必要に応じて追加のスリットを設けることができる。
【0029】
さまざまな実施形態について述べてきたが、本開示は、それに限定されることを意図するものではない。開示した実施形態に対して変更を加えることができ、これも添付の特許請求の範囲内である。
【符号の説明】
【0030】
10 航空機
12 翼
14 機体
16 垂直尾翼
18 水平尾翼
20 複合材外皮
22 複合材外皮の内面
24 ブレードストリンガー
26 ランプ
28 第1の湾曲
29 第2の湾曲
30 フランジ
32 ウェブ
34 フランジ内の繊維
36 ウェブ内の繊維
38 フランジ内の繊維の上部
40 フランジ内の繊維の下部
42 ウェブ内の繊維の上部
44 ウェブ内の繊維の下部
46 当て板
48 未硬化の複合材料
48’ 硬化された複合材料
50 第1のスリット
52 当て板の表面
54 未硬化の複合材料の表面
56 当て板の対向面
58 当て板の表面の一部
60 当て板の表面の一部
62 当て板の対向面の一部
64 当て板の対向面の一部
66 当て板の表面の一部
68 当て板の対向面の一部
70 当て板の部分
72 当て板の部分
74 当て板の湾曲部
76 第2のスリット
78 当て板の端部
80 当て板の第2の対向する端部
82 第1のスリットの端部
84 第2のスリットの端部
86 第3のスリット
88 第3のスリットの端部
90 第4のスリット
92 第4のスリットの端部
94 未硬化の複合材料の一部、未硬化の複合材料の部分
96 未硬化の複合材料の部分
98 部品を製造する方法