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  • 特許-ロボットの関節構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ロボットの関節構造
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/00 20060101AFI20240409BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20240409BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B25J17/00 E
B25J19/00 C
H02K7/116
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019224657
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021091068
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】米田 敬詞
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/069493(WO,A1)
【文献】特開2019-63934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の第1部材と、第2部材と、
前記第1部材に対して前記第2部材を第1の軸線回りに回転させるアクチュエータと、前記第1部材に対する前記第2部材の回転を制動可能なブレーキ機構とを備え、
前記アクチュエータが、前記第1部材の内部の空間に収容されるブレーキを有しないモータと、該モータのモータシャフトの回転を減速して前記第2部材に伝達する減速機と、前記モータシャフトに設けられた第1ギヤと、前記減速機に設けられ、前記第1ギヤに噛み合う第2ギヤとを備え、
前記ブレーキ機構が、前記空間に収容されるブレーキ本体と、該ブレーキ本体によって制動可能なブレーキシャフトと、該ブレーキシャフトに設けられ、前記第2ギヤに噛み合う第3ギヤとを備え
前記空間が、前記第1の軸線方向から該第1の軸線に交差する第2の軸線方向に湾曲して延び、
前記ブレーキシャフトの軸線が、前記第1の軸線および前記第2の軸線を含む平面に直交し前記第1の軸線を含む平面に対し、前記湾曲の外側に配置されているロボットの関節構造。
【請求項2】
前記減速機が、前記第1の軸線を含み該第1の軸線方向に貫通する中空部を備え、
前記第2ギヤが、前記第1の軸線回りに回転可能に支持され、中央孔を有するリング状に形成され、
前記第1ギヤおよび前記第3ギヤが、それぞれ前記第1の軸線に平行かつ周方向に間隔をあけた軸線回りに回転可能に支持されている請求項1に記載のロボットの関節構造。
【請求項3】
前記第1部材が、前記第1の軸線方向に延びる第1部分と、該第1部分に対して一方向に湾曲して前記第1の軸線に交差する方向に延びる第2部分とを備え、
前記モータが、前記第1部分の前記第2部材側の端面の前記湾曲の内側の周縁含み前記第1の軸線方向に沿って延びる円筒面の径方向両側に跨る位置に配置されている請求項1または請求項2に記載のロボットの関節構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットの関節構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第1アームと第1アームに対して回転軸線回りに回転可能な第2アームを備え、第1アーム内に収容状態で固定されたモータの駆動力が、複数のギヤおよび減速機を介して、第2アームに伝達されるロボットの関節構造が知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
ロボットの関節構造においては、一般に、ロボットの電源遮断時等に、重力によってアームが回転することを防止するために、ブレーキ付きモータが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-144559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブレーキ付きモータは、ブレーキを有しないモータと比較して軸方向の長さが長くなる。このため、ロボットを構成する部材内部にブレーキ付きモータを収容する場合には、十分な収容スペースを確保するために部材の大きさを大きくしなければならない。
したがって、電源遮断時にロボットを静止状態に維持することを可能にしつつ、ロボットを構成する部材の大型化を防止することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、中空の第1部材と、第2部材と、前記第1部材に対して前記第2部材を第1の軸線回りに回転させるアクチュエータと、前記第1部材に対する前記第2部材の回転を制動可能なブレーキ機構とを備え、前記アクチュエータが、前記第1部材の内部の空間に収容されるブレーキを有しないモータと、該モータのモータシャフトの回転を減速して前記第2部材に伝達する減速機と、前記モータシャフトに設けられた第1ギヤと、前記減速機に設けられ、前記第1ギヤに噛み合う第2ギヤとを備え、前記ブレーキ機構が、前記空間に収容されるブレーキ本体と、該ブレーキ本体によって制動可能なブレーキシャフトと、該ブレーキシャフトに設けられ、前記第2ギヤに噛み合う第3ギヤとを備え、前記空間が、前記第1の軸線方向から該第1の軸線に交差する第2の軸線方向に湾曲して延び、前記ブレーキシャフトの軸線が、前記第1の軸線および前記第2の軸線を含む平面に直交し前記第1の軸線を含む平面に対し、前記湾曲の外側に配置されているロボットの関節構造である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の一実施形態に係る関節構造を備えるロボットの一例を示す模式図である。
図2図1の関節構造を示す部分的な拡大図である。
図3図1の関節構造において、部材の配置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の一実施形態に係るロボットの関節構造1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る関節構造1を搭載するロボット100は、例えば、図1に示されるように、垂直6軸多関節型ロボットである。ロボット100は、床面Fに設置されるベース110と、鉛直な第1軸線A回りにベース110に対して回転可能に支持された旋回胴120とを備えている。
【0008】
また、ロボット100は、水平な第2軸線B回りに旋回胴120に対して回転可能に支持された第1アーム130と、水平な第3軸線(第2の軸線)C回りに第1アーム130に対して回転可能に支持された中空の第2アーム(第1部材)140とを備えている。さらに、ロボット100は、第3軸線Cに対してねじれの位置関係にある第4軸線(第1の軸線)D回りに第2アーム140に対して回転可能に支持された中空の手首ユニット(第2部材)150を備えている。
【0009】
本実施形態に係る関節構造1は、図2に示されるように、例えば、第2アーム140と手首ユニット150との間の構造である。関節構造1は、第2アーム140と、手首ユニット150と、手首ユニット150を第2アーム140に対して第4軸線D回りに回転駆動するアクチュエータ10と、手首ユニット150を第2アーム140に対して制動するブレーキ機構50とを備えている。
【0010】
アクチュエータ10は、減速機30と、モータ40とを備えている。減速機30は、第2アーム140に固定される入力軸31と、入力軸31に対して第4軸線D回りに回転可能に支持され手首ユニット150に固定される出力軸34とを備えている。
【0011】
また、減速機30は、第4軸線Dを含む位置に、第4軸線Dに沿って延びる中空部33を備えている。減速機30は、入力軸31の第2アーム140側に、入力軸31に対して第4軸線D回りに回転可能に支持された第2ギヤ32を備えている。
【0012】
第2ギヤ32は、中空部33に連通する中央孔35を有するリング状に形成されている。これにより、第2アーム140の内部空間は中空部33および中央孔35を経由して手首ユニット150の内部空間に連通している。
【0013】
モータ40は、第2アーム140の内部に収容された状態で、第2アーム140に固定されている。モータ40は、軸方向に延びるモータシャフト41を備え、モータシャフト41には、第1ギヤ42が固定されている。
【0014】
モータ40は、図3に示されるように、中空部33および中央孔35との重複を回避して、第4軸線Dに対して径方向外方にオフセットした位置において第2アーム140に固定されている。そして、モータシャフト41に固定された第1ギヤ42を減速機30の第2ギヤ32に噛み合わせている。
【0015】
これにより、モータ40のモータシャフト41の回転が、第1ギヤ42と第2ギヤ32との噛み合いを経由して減速機30に伝達され、減速機30内において減速されて、減速機30の出力軸34の回転として出力される。
【0016】
ブレーキ機構50は、第2アーム140の内部に収容された状態で、第2アーム140に固定されるブレーキ本体53と、ブレーキ本体53に対して回転可能に支持されたブレーキシャフト51とを備えている。ブレーキシャフト51には第2ギヤ32に噛み合う第3ギヤ52が固定されている。
【0017】
ブレーキ機構50も、図3に示されるように、中空部33および中央孔35との重複を回避して、第4軸線Dに対して径方向外方にオフセットした位置において第2アーム140に固定されている。モータ40とブレーキ機構50とは、第4軸線D回りの周方向に間隔をあけて異なる位置に配置されている。
【0018】
このように構成された本実施形態に係る関節構造1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る関節構造1によれば、モータ40のモータシャフト41を回転させると、モータシャフト41の回転が第1ギヤ42と第2ギヤ32との噛み合いによって減速機30に伝達され、第2アーム140に対して手首ユニット150が第4軸線D回りに回転させられる。
【0019】
一方、第2ギヤ32には第3ギヤ52も同時に噛み合っているので、第2ギヤ32が回転すると第3ギヤ52を経由してブレーキシャフト51が回転させられる。したがって、ブレーキ本体53を作動させると、ブレーキシャフト51の回転が制動され、制動力が第2ギヤ32と第3ギヤ52との噛み合いにより減速機30に伝達される。これにより、第2アーム140に対して手首ユニット150を静止した状態に維持することができる。
【0020】
この場合において、本実施形態に係る関節構造1によれば、モータ40とブレーキ機構50とを分離し、第4軸線D回りの周方向に異なる位置に配置することにより、モータ40の軸方向の高さ寸法をブレーキ付きモータよりも短縮して分散させることができる。これにより、第2アーム140の内部空間を小さく抑えることができ、第2アーム140の外形寸法もコンパクトに構成することができるという利点がある。
【0021】
また、本実施形態に係る関節構造1によれば、減速機30の中空部33および第2ギヤ32の中央孔35に重複しない位置にオフセットしてモータ40およびブレーキ機構50を配置している。これにより、中空部33および中央孔35を通過して、図示しない線条体を第2アーム140から手首ユニット150に配線することができる。
【0022】
また、本実施形態に係る関節構造1においては、図2および図3に示されるように、第4軸線D方向に延びる第1部分141と、第1部分141に対して一方向に湾曲して第4軸線Dに交差する方向に延びる第2部分142とを備えている。これにより、第2アーム140は、円筒状の第1部分141と、円筒状の第2部分142とを湾曲部で接続したL字状の形状を有している。
【0023】
このような構造の第2アーム140内部の空間は、第1部分141内部の空間が湾曲部において一方向に広がる形状を有している。本実施形態においては、この湾曲部内部の広がった形状を利用して、第1部分141の外面を第4軸線Dに沿う方向に延長した面の両側に跨る位置にモータ40を配置している。
【0024】
これにより、中空部33および中央孔35に重複しない位置まで大きくオフセットさせてモータ40を配置しても、第2アーム140の外形を拡大せずに済み、さらにコンパクトに構成することができるという利点がある。
すなわち、第2アーム140の湾曲部の内部空間を有効に利用することにより、第2アーム140の第1部分141の第4軸線D回りの外径を小さくすることができる。
【0025】
また、第2アーム140に対し、第4軸線D回りに回転可能に支持される手首ユニット150の第4軸線D回りの外径も小さくすることができ、ロボット100全体としてのコンパクト化および軽量化を図ることができるという利点がある。
【0026】
なお、本実施形態においては、モータ40とブレーキ機構50とを分離することにより、第2アーム140の大型化を防止することを前提とした。これに代えて、第2アーム140の湾曲部の内部空間の形状を利用してモータを配置することにより、第2アーム140の第1部分141の外形を小さくする効果は、モータとしてブレーキ付きモータを採用しても達成することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 関節構造
10 アクチュエータ
30 減速機
31 入力軸
32 第2ギヤ
33 中空部
34 出力軸
40 モータ
41 モータシャフト
42 第1ギヤ
50 ブレーキ機構
51 ブレーキシャフト
52 第3ギヤ
53 ブレーキ本体
130 第1アーム
140 第2アーム(第1部材)
141 第1部分
142 第2部分
150 手首ユニット(第2部材)
C 第3軸線(第2の軸線)
D 第4軸線(第1の軸線)
図1
図2
図3