(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】メルカプタン、ジスルフィド及びC5炭化水素の存在下でC4炭化水素流から多不飽和炭化水素を除去する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 7/163 20060101AFI20240409BHJP
C07C 11/08 20060101ALI20240409BHJP
C07C 11/09 20060101ALI20240409BHJP
C07C 11/16 20060101ALI20240409BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20240409BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
C07C7/163
C07C11/08
C07C11/09
C07C11/16
B01J23/44 M
C07B61/00 300
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020000159
(22)【出願日】2020-01-06
【審査請求日】2022-12-20
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523448406
【氏名又は名称】エボニック オクセノ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン パイツ
(72)【発明者】
【氏名】グイド シュトヒニオル
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ヴィンターベルク
(72)【発明者】
【氏名】ヨェルク シャレンベルク
(72)【発明者】
【氏名】アルミン マティアス リックス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヴォルフ
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-525750(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0010071(US,A1)
【文献】特開平09-220472(JP,A)
【文献】特開平05-194280(JP,A)
【文献】特開昭63-284137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C4炭化水素に加えて、0.01~5質量%の範囲のC5炭化水素、並びに、0.01~200質量ppmの範囲のメルカプタン及び/又はジスルフィドを含むオレフィン含有C4炭化水素流から、多
価不飽和炭化水素を除去する方法であって、以下の工程:
1)並列及び/又は直列に連結された1又はそれ以上の反応器からなる第1反応ゾーンにおいて、前記オレフィン含有C4炭化水素流の前記多価不飽和炭化水素の少なくとも一部が、水素化されるか、及び/又は、前記オレフィン含有C4炭化水素流の前記メルカプタン及び/又はジスルフィドと反応する、第1工程であって、前記第1工程は、水素の存在下、及び一酸化炭素の非存在下で第1触媒を用いて行われ、並びに、前記
オレフィン含有C4炭化水素流で得られる前記多価不飽和炭化水素の80モル%以下が
前記第1工程で水素化されるか、及び/又は反応する、工程、
2)前記第1工程では反応しなかった前記オレフィン含有C4炭化水素流の前記多価不飽和炭化水素を、並列及び/又は直列に連結された1又はそれ以上の反応器からなる第2反応ゾーンで、水素及び一酸化炭素の存在下で第2触媒を用いて、選択的に水素化する第2工程、
ここで、前記第1工程と前記第2工程の間に、少なくとも1つの高ボイラーが除去され、かつ、
前記第1触媒と前記第2触媒は互いに異なる、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1工程における、水素の
前記多価不飽和炭化水素に対するモル比が、0.01~0.8、
又は0.1~0.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記並列に及び/又は直列に連結された1又はそれ以上の反応器からなる第1反応ゾーンの流入口におけるC4炭化水素流の流入温度が、0~180℃、
又は60~150℃、
又は80~130℃である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1工程は、液相でのみ行われ、存在する前記水素は前記液相に完全に溶解されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2工程において、前記並列に及び/又は直列に連結された1又はそれ以上の反応器からなる第2反応ゾーンに流入する前記
オレフィン含有C4炭化水素流中の一酸化炭素の含有量が、前記炭化水素流の総量に基づき、0.05~20ppmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1触媒が、周期表の第10族の金属のうち少なくとも2つの金属、
又はパラジウム及び白金を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2触媒が、周期表の第10族の金属のうち単一の金属、
又はパラジウムを含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記並列に及び/又は直列に連結された1又はそれ以上の反応器からなる第2反応ゾーンに流入する前記
オレフィン含有C4炭化水素流の流入温度が、0~100℃、
又は20~80℃、
又は30~60℃の間である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記並列に及び/又は直列に接続された1又はそれ以上の反応器からなる第2反応ゾーンの圧力は、2~50バール、
又は6~30バール、
又は10~25バールの範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2工程が、液相でのみ行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1反応ゾーンが単一の反応器からなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第2反応ゾーンが、
前記並列又は直列に接続された少なくとも2つの反応器からなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C4炭化水素に加えて、C5炭化水素、並びに、メルカプタン及び/又はジスルフィドを含有するC4炭化水素流から、ポリ不飽和炭化水素を除去する、2段階プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学工業で用いられるオレフィン含有C4炭化水素流は、通常、触媒クラッカー(FCC C4)又は蒸気クラッカー(クラックC4)由来のC4炭化水素混合物である。由来が異なるC4炭化水素混合物(C4カット)の混合もまた、石油化学プロセスで用いられうる。n-ブテン、1-ブテン、シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン、イソブテン、同族のアルカンであるブタン及びイソブタン、並びに上記混合物等の工業用C4炭化水素混合物は、通常、特に1,3-ブタジエン、but-3-en-1-yne及び1,2-ブタジエン等の多不飽和化合物を含有する。C4炭化水素混合物をオリゴマー化等のプロセスに利用する前に、又は個々の化合物がC4混合物から単離される前に、多価不飽和炭化水素を除去することがしばしば必要となる。
【0003】
水蒸気クラッカー又は触媒クラッカーからのC4炭化水素混合物は、多価不飽和化合物の割合が高く、特に1,3-ブタジエンの割合が高い(40重量%以上)。そこで、処理はまず、例えば抽出蒸留により、ポリ不飽和化合物の含有量を、C4炭化水素混合物の総組成に基づいて、1質量%以下に減らすことから始まる。ブタジエン含量が少量である混合物はラフィネートIともいい、そこからイソブテンを除去してラフィネートIIを生成することができる。
【0004】
その後、さらなる処理は、通常、ポリ不飽和炭化水素を(ほぼ)完全に除去するさらなる工程を含む。この点について、特許文献1は、水素の存在下で、依然として存在する多不飽和炭化水素の選択的な水素化を開示する。望ましくない副反応及び装置状態を避けるために、必要な水素は、C4供給混合物に溶解された均一な溶液として存在しなければならない。しかしながら、C4炭化水素混合物の水素の溶解度には上限があるため、選択的水素化のために流入される多価不飽和炭化水素の最大含有量が制限されるか、又は、より正確には、溶解されうる水素の最大量により(選択的に)水素化されうる多価不飽和炭化水素の量が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリ不飽和炭化水素の(ほぼ)完全な変換を達成するためには、用いられるC4炭化水素混合物は、溶解されうる最大量の水素が、ポリ不飽和炭化水素を最大量で水素化するように、含有されなければならない。これは、用いられるC4炭化水素混合物の組成が、多価不飽和炭化水素の最大量が制限されると、吸収することが困難な自然変動に依存する点で、工業プロセスにおいて問題となる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、多価不飽和炭化水素量の変動に、より柔軟に対応することができ、C4炭化水素流から多量の多価不飽和炭化水素を除去できる方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基本的な目的は、請求項1に記載の方法により達成される。好ましい実施形態は、従属クレームで特定される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の方法は、C4炭化水素に加えて、0.01~5質量%の範囲のC5炭化水素、並びに、0.01~200質量ppmの範囲のメルカプタン及び/又はジスルフィドを含む、オレフィン含有C4炭化水素流からポリ不飽和炭化水素を除去する2段階の方法である。第1工程では、並列及び/又は直列に連結された1又はそれ以上の反応器からなる第1反応ゾーンにおいて、前記オレフィン含有C4炭化水素流の前記多価不飽和炭化水素の少なくとも一部が、水素化されるか、及び/又は、前記オレフィン含有C4炭化水素流の前記メルカプタン及び/又はジスルフィドと反応し、ここで、前記第1工程は、水素の存在下、及び一酸化炭素の非存在下で第1触媒を用いて行われ、並びに、前記C4炭化水素流で得られる前記多価不飽和炭化水素の80モル%以下が第1工程で水素化されるか、及び/又は反応する。好ましい実施形態では、多価不飽和炭化水素の一部は水素化され、他の一部はオレフィン含有C4炭化水素流中のメルカプタン及び/又はジスルフィドと反応する。ここでも、反応に用いられる多価不飽和炭化水素の80モル%の最大量を超えない。当該メルカプタンは、好ましくは、オレフィン含有C4炭化水素流から検出限界未満のレベルまで除去される。
【0010】
第1工程後、第2工程前に、少なくとも1つの高ボイラーが除去され、特に、ポリ不飽和炭化水素とメルカプタン及び/又はジスルフィドとの反応で形成された反応生成物、及び場合によってはC5炭化水素の少なくとも一部がC4炭化水素流から除去される。
【0011】
本発明の方法の第2工程では、第1工程で反応しなかったオレフィン含有C4炭化水素流の多価不飽和炭化水素が、並列及び/又は直列に連結された1又はそれ以上の反応器からなる第2反応ゾーンにおいて、水素及び一酸化炭素の存在下で第2触媒を用いて選択的に水素化される。第1工程で用いる触媒と第2工程で用いる触媒は、互いに異なる。
【0012】
本発明の方法は、第1工程で、少なくとも多価不飽和炭化水素の一部、特に1,3-ブタジエン及び/又は1,2-ブタジエン及び/又はbut-3-en-1-yneが水素化されうること、並びに、工業用C4炭化水素混合物中に極めて微量存在し、その後の工程において触媒を損なう可能性があるために、除去されるべき、メルカプタン及び/又はジスルフィドと反応して、除去しうる、という利点がある。そのため、精製中のオレフィン含有C4炭化水素流中のポリ不飽和炭化水素の最大許容量は、選択的水素化と比較してほぼ2倍多い。工業用C4炭化水素流中の多価不飽和炭化水素の濃度は、プロセスに関連する変動に依存する。つまり、工業用C4炭化水素流の多価不飽和炭化水素の濃度の当該変動は、本発明の方法により容易に吸収されうる。
【0013】
第1工程、すなわち、多価不飽和炭化水素の水素化及び/又は多価不飽和炭化水素とC4炭化水素流のメルカプタン及び/又はジスルフィドとの反応は、水素の存在下でおこる。アルカンへの完全な水素化や、1-オレフィンの内部オレフィンへの二重結合の異性化等の副反応を防ぐため、最初の段階で用いる水素の量はあまり多くすべきではない。第1工程における水素と多価不飽和炭化水素のモル比は、好ましくは0.01~0.8であり、より好ましくは0.1~0.5である。水素は、流入するC4炭化水素流とは別に反応ゾーンに計量するか、又は流入するC4炭化水素流に事前に添加することができるが、C4炭化水素流と水素の均一な混合物が反応器中に存在しなければならない。
【0014】
さらに、本発明の方法の第1工程は、一酸化炭素の非存在下で行われる。これは、C4炭素流に一酸化炭素が添加されないことを意味する。しかし、工業用炭化水素流中に不純物として存在する可能性のある非常に少量の一酸化炭素は除去するのにかなりの労力がかかるため、存在する可能性がある。
【0015】
本発明の方法の第1工程では、周期表の第10族の少なくとも2つの金属、好ましくはパラジウム及び白金を含む不均一系触媒を第1触媒として用いてよい。当該金属は、焼成のために、部分的に酸化物の状態で存在しうる。当該金属は、支持体材料上に存在することが好ましい。当該支持体材料は、アルミナ、シリカゲル及び活性炭からなる群から選択されるが、支持体材料としては、好ましくはアルミナが用いられる。特に好ましい実施形態では、シェル触媒が第1触媒として用いられ、支持体材料としてアルミナ、金属としてパラジウム及び白金を含み、当該触媒の、パラジウム濃度は、2.0質量%以下、好ましくは最高1.0質量%、より好ましくは0.5質量%以下、及び白金濃度は1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。パラジウム濃度は、白金濃度より少なくとも2倍高くなければならない。
【0016】
第1触媒の比表面積は、好ましくは50~400m2/g、より好ましくは100~300m2/g、特に好ましくは200~300m2/gであり、DIN ISO 9277(最新版2014-01)により、ガス吸着により測定することができる。
【0017】
第1工程で第1反応ゾーンの反応器に流入するオレフィン含有C4炭化水素流の流入温度は、好ましくは0~180℃、より好ましくは60~150℃、特に好ましくは80~130℃の範囲である。第1工程の圧力は、好ましくは2~50バール、より好ましくは6~40バール、特に好ましくは10~30バールの範囲である。
【0018】
第1工程における水素化及び/又は反応は、好ましくは液相プロセスとして操作されるが、これは、第1反応ゾーン、すなわち少なくとも1つの反応器、の全成分が、液相中に存在するか、又は第1反応ゾーンに液体の状態で導入されることを意味する。第1工程で反応を行うのに適する反応器は、固定床反応器又はチューブバンドル反応器である。好ましくは、水素は液相に完全に溶解している。水素が完全に溶解したままで、反応ゾーン上流及び反応ゾーン中で気相が生じないように、温度及び圧力を選択しなければならないことは明らかである。つまり、水素は、反応ゾーン上流及び反応ゾーン中で液相が常に均一になるように、微細に分散した状態で、オレフィン含有C4炭化水素流に添加されるべきである。一酸化炭素は付加しない。さらに、第1工程における水素化及び/又は反応は、好ましくは、1つの反応器、すなわち、第1反応ゾーンは、好ましくは、唯一の反応器からなる。
【0019】
第1工程の多価不飽和炭化水素の水素化及び/又は多価不飽和炭化水素とメルカプタン及び/又はジスルフィドとの反応の後、第1工程と第2工程との間に生じる高ボイラーの一部を除去して、反応生成物を除去することができる。好ましくは、蒸留により除去される。C5炭化水素等のC4炭化水素流に存在する高ボイラーを少なくとも部分的に、反応生成物と共に除去しうる。高ボイラー、すなわち反応生成物及びC5炭化水素は、蒸留塔の底部を経由して除去され、精製されたC4炭化水素流は、蒸留塔の頂部で分離されて、第2工程に供給される。第2工程を行う前に、多価不飽和炭化水素からいかなる干渉も受けない工程、例えば、MTBE合成(イソブテンを除去しうる)又はTBA合成、を行ってもよい。
【0020】
高ボイラーの除去に好適に用いられる蒸留カラムの理論段数は、好ましくは40~150、より好ましくは40~100、特に好ましくは50~80である。還流比は、得られる利用可能なプレート数、供給物の組成、及び上下の生成物の必要な純度に応じて、0.5~5、特に好ましくは1~2.5の間であってよい。還流比は、還流質量を頂部生成物(留出物)の質量で割ったものと定義する。
【0021】
高ボイラーの除去のための蒸留塔は、好ましくは1~20バール、より好ましくは5~12バールの圧力(絶対圧)で運転される。得られる利用可能な作動圧力に応じて、凝縮は、冷却ブライン、冷却水又は空気に対して作用されてよい。底部生成物、すなわち高ボイラーは、例えば、合成ガスプラントにおいて、他のプロセスの出発物質として熱的に利用又は適用することができる。
【0022】
高ボイラーを除去した後、依然として多価不飽和炭化水素を含むC4炭化水素混合物を、本発明の方法の第2工程、すなわち選択的水素化工程に供給する。第2工程では、同様に水素が添加されるが、本工程では、第1工程のように化学量論的ではなく、少なくとも第2工程の流れの中に存在する多価不飽和炭化水素のモル量と等モルである。多価不飽和炭化水素に対する水素のモル比の範囲は、特に、2:1~1:1(水素:多価不飽和炭化水素)、好ましくは、1.5:1~1:1、より好ましくは、1.2:1~1:1である。水素は、流入するC4炭化水素流とは別に、第2反応ゾーンの反応器中に計量でき、又は流入するC4炭化水素流に事前に添加することもできる。
【0023】
第2工程では、C4炭化水素流に一酸化炭素が付加される。第2反応ゾーンに流入するC4炭化水素流の一酸化炭素の含有量は、好ましくは、各々C4炭化水素流の全量に基づき、0.05~20ppm、より好ましくは0.5~5ppmである。一酸化炭素は、流入するC4炭化水素流とは別に、第2反応ゾーンに計量することができ、又は、事前に流入するC4炭化水素流に添加することもできる。
【0024】
本発明の方法の第2工程では、周期表の第10族の単一金属、好ましくはパラジウムを含む不均一系触媒を、第2触媒として用いることができる。当該金属は、焼成のため、部分的に酸化物の状態で存在しうる。パラジウムは、支持材料上に存在することが好ましい。当該支持体材料は、アルミナ、シリカゲル及び活性炭からなる群から選択されるが、アルミナが支持体材料として好ましく用いられる。第2触媒中の当該金属の濃度は、各々触媒の全量に基づき、0.01~3質量%、好ましくは0.1~1質量%、より好ましくは0.3~0.5質量%であってよい。本発明では、第2触媒は、第1触媒とは異なる。
【0025】
第2触媒の比表面積は、好ましくは50~400m2/g、より好ましくは100~300m2/g、特に好ましくは200~300m2/gであり、DIN ISO 9277(最新版2014-01)により、ガス吸着により測定することができる。
【0026】
第2反応ゾーンに流入するC4炭化水素流の流入温度の範囲は、通常、0~100℃、好ましくは20~80℃、より好ましくは30~60℃である。圧力の範囲は、通常、2~50バール、好ましくは6~30バール、より好ましくは10~25バールである。
【0027】
第2工程の選択的水素化は、好ましくは、液相プロセスとして操作されるが、すなわち、第2反応ゾーン中の全成分は、液相中に存在するか、又は第2反応ゾーンに液体状態で導入される。選択的水素化を行うのに適する反応器は、固定床反応器又はチューブバンドル反応器である。好ましくは、水素及び一酸化炭素はともに液相に完全に溶解している。水素及び一酸化炭素が完全に溶解したままで、反応ゾーン上流及び反応ゾーン中に気相を生じないように、温度及び圧力を選択しなければならないことは明らかである。
【0028】
第2工程における選択的水素化は、単一段階、すなわち第2反応ゾーン中の単一の反応器を用いて操作することができる。選択的水素化は、好ましくは、2つ以上の段階、すなわち、第2反応ゾーンにおいて並列又は直列に接続された少なくとも2つの反応器を用いて操作され、これは、すなわち、第2反応ゾーンが、並列又は直列に接続された少なくとも2つの反応器からなることを意味する。当該反応器は、好ましくは、第2反応ゾーン内で直列に接続される。水素は、C4炭化水素流と共に、第2反応ゾーンで直列に接続された各反応器に供給されるが、一酸化炭素は、第2反応ゾーンで直列に接続された第1反応器のみに添加され、第2反応器以降の反応器には添加されない。
【0029】
本発明の方法の別の実施形態では、第2反応ゾーンは少なくとも3つの反応器からなる。最初の2つの反応器は並列に接続され、ともに第3反応器に直列に接続される。並列に接続された最初の2つの反応器には、好ましくは水素と一酸化炭素が計量され、第3反応器では水素のみが添加される。
【実施例1】
【0030】
600mlの水素化触媒(Al2O3上にPdが0.5質量%、のPtが0.2質量%)を充填し、90℃に加熱した第1反応器に、0.7質量%の1,3-ブタジエン、19.9質量%の1-ブテン、38.0質量%の2-ブテン、29.3質量%のイソブテン及び11.3質量%のブタン、並びに0.8質量%のC5炭化水素からなるC4混合物を22バーの圧力で液化し、4kg/時で通過させた。当該流にはジメチルジスルフィド約4ppm、エタンチオール約3ppm及びメタンチオール約0.5ppmが含まれる。
【0031】
このC4混合物に、9.3Nl/時のH2流を計量する。用いたC4混合物中に存在するブタジエンの約73%が反応する。第1反応器からの流出組成物は、ブタジエンが0.2質量%、1-ブテンが20.2質量%、2-ブテンが38.2質量%、イソブテンが29.3質量%、ブタンが11.3質量%、C5炭化水素が0.8質量%である。メルカプタン及びジスルフィドはもはや当該流では検出されなかった。
【0032】
高ボイラーを除去し、かつ、MTBE合成によりイソブテンの大部分を除去した後、流れの組成は以下の:ブタジエンが0.3質量%、1-ブテンが28.6質量%、2-ブテンが54.0質量%、イソブテンが1.1質量%、及びn-ブタンが16.0質量%であった。この流れを12バールの圧力で液化し、水素化触媒600ml(Al2O3上にPdが0.5質量%)を充填した第2反応器に4kg/時で通過させ、40℃で加熱した。このC4混合物に3.5Nl/時のH2流を計量し、さらに3Nml/時のCOを加える。ブタジエンは第2反応器を通過した後には、もはや流れ中では検出されない。