(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
H01L21/304 651L
H01L21/304 651M
H01L21/304 643C
H01L21/304 647A
(21)【出願番号】P 2020034334
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸史
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-074126(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230404(WO,A1)
【文献】特開2019-040958(JP,A)
【文献】特開2016-107272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持する基板保持工程と、
水平に保持された前記基板を、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線の周りに回転させる基板回転工程と、
回転状態の前記基板の周縁部に選択的に処理液を供給する処理液供給工程と、
前記基板の周縁部に供給された前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の周縁部に存在する除去対象物を保持する処理膜を形成する処理膜形成工程と、
回転状態の前記基板の周縁部に選択的に処理膜除去液を供給して、前記基板の周縁部から前記除去対象物を保持した状態の前記処理膜を除去する処理膜除去工程とを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記基板の周縁部において前記処理膜除去液と接する処理膜除去液接触領域の回転径方向内方端が、前記基板の周縁部において前記処理液と接する処理液接触領域よりも前記基板の中央部側に位置する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
回転状態の前記基板の周縁部に選択的にリンス液を供給することによって、前記基板の周縁部に付着している前記処理膜除去液を洗い流すリンス工程をさらに含み、
前記基板の周縁部において前記リンス液と接するリンス液接触領域の回転径方向内方端が、前記処理膜除去液接触領域よりも前記基板の中央部側に位置する、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記リンス液よりも表面張力が低い低表面張力液体を回転状態の前記基板の周縁部に選択的に供給することによって、前記基板の周縁部に存在する前記リンス液を前記低表面張力液体で置換する置換工程をさらに含み、
前記基板の周縁部において前記低表面張力液体と接する低表面張力液体接触領域の回転径方向内方端が、前記リンス液接触領域よりも前記基板の中央部側に位置する、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記低表面張力液体が、前記基板の周縁部に存在する前記処理膜の残渣を除去する残渣除去液として機能する、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記処理液供給工程が、前記基板の周縁部の上側面部に処理液を着液させる工程を含み、
前記置換工程が、前記基板の周縁部の上側面部に低表面張力液体を着液させる工程を含み、
前記処理膜形成工程が、前記基板の周縁部への前記処理液の供給を停止させた状態で前記基板を回転させることによって前記処理膜を形成する工程を含み、
前記置換工程における前記基板の回転速度が、前記処理膜形成工程における前記基板の回転速度よりも低い、請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記処理液供給工程における前記基板の回転速度が、前記処理膜除去工程における前記基板の回転速度よりも低い、請求項2~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記処理液供給工程は、水平方向に移動可能な処理液ノズルを平面視で前記基板よりも外側に配置した状態で前記処理液ノズルからの処理液の吐出を開始し、前記処理液ノズルからの処理液の吐出を継続したまま前記処理液ノズルを前記基板の中央部側に移動させることによって、前記基板の周縁部への処理液の供給を開始する、処理液供給開始工程を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記処理液供給工程は、前記処理液ノズルからの処理液の吐出を継続したまま平面視における前記基板よりも外側に前記処理液ノズルを移動させることによって、前記基板の周縁部への処理液の供給を終了する処理液供給終了工程を含む、請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記処理液供給工程が、処理液ノズルから前記処理液を吐出させて、前記基板の回転方向における前記基板の周縁部の一部に前記処理液を供給する工程を含み、
前記処理膜除去工程が、前記処理液ノズルよりも前記回転方向の下流側に位置する処理膜除去液ノズルから前記処理膜除去液を吐出させて、前記回転方向における前記基板の周縁部の一部に前記処理膜除去液を供給する工程を含み、
前記処理膜形成工程は、前記基板の周縁部において前記処理液が接触する処理液接触領域が、前記回転方向において前記処理膜除去液が供給される位置に到達する前に、当該処理液を固化または硬化させて前記処理膜を形成する工程を含む、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項11】
回転状態の前記基板の周縁部に選択的にリンス液を供給することによって、前記基板の周縁部に存在する前記処理膜除去液を洗い流すリンス工程をさらに含み、
前記リンス工程が、前記処理膜除去液ノズルよりも前記回転方向の下流側に位置するリンス液ノズルから前記リンス液を吐出させて、前記回転方向における前記基板の周縁部の一部に前記リンス液を供給する工程を含む、請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記リンス液よりも表面張力が低い低表面張力液体を前記基板の周縁部に選択的に供給することによって、前記基板の周縁部に存在する前記リンス液を前記低表面張力液体で置換する置換工程をさらに含み、
前記置換工程が、前記処理膜除去液ノズルよりも前記回転方向の下流側に位置する低表面張力液体ノズルから前記低表面張力液体を吐出させて、前記回転方向における前記基板の周縁部の一部に前記低表面張力液体を供給する工程を含む、請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記処理液ノズルからの前記処理液の吐出は、前記処理液ノズルからの前記処理液の吐出が開始されてから前記基板が一回転したときに停止される、請求項10~12のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記処理膜形成工程が、前記処理液の少なくとも一部を蒸発させることによって前記処理膜を形成する工程を含み、
前記基板の周縁部の加熱、および、前記基板の周縁部への気体の吹き付けの少なくともいずれかによって、前記基板の周縁部に供給された処理液の蒸発を促進する蒸発促進工程をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記処理液供給工程が、前記基板の周縁部の上側面部および下側面部の両方に処理液を着液させる工程を含み、
前記基板の周縁部の下側面部への前記処理液の着液は、前記基板の周縁部の上側面部への前記処理液の着液よりも先に開始される、請求項1~14のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記基板の周縁部の上側面部への前記処理液の着液を開始する際に、前記基板の回転を減速する回転減速工程をさらに含む、請求項15に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記処理膜除去液が、前記基板の周縁部から前記処理膜を剥離することによって、前記基板の周縁部から前記処理膜を除去する性質を有し、
前記処理膜除去工程が、前記処理膜除去液に前記処理膜を部分的に溶解させて前記処理膜に貫通孔を形成する貫通孔形成工程を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記処理膜除去工程が、前記貫通孔を介して、前記処理膜と前記基板の周縁部との間に前記処理膜除去液を進入させる除去液進入工程を含む、請求項17に記載の基板処理方法。
【請求項19】
前記処理液が、溶質および溶媒を有し、
前記溶質が、高溶解性成分と前記高溶解性成分よりも前記処理膜除去液に対する溶解性が低い低溶解性成分とを有し、
前記処理膜形成工程が、前記高溶解性成分によって形成される高溶解性固体と前記低溶解性成分によって形成される低溶解性固体とを有する前記処理膜を形成する工程を含み、
前記貫通孔形成工程が、前記処理膜除去液に前記高溶解性固体を溶解させて前記処理膜に前記貫通孔を形成する工程を含む、請求項17または18に記載の基板処理方法。
【請求項20】
基板を水平に保持する基板保持ユニットと、
水平に保持された前記基板を、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線の周りに回転させる基板回転ユニットと、
処理液を回転状態の前記基板の周縁部に選択的に供給する処理液ノズルと、
前記基板の周縁部に供給された前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の周縁部に存在する除去対象物を保持する処理膜を前記基板の周縁部に形成する処理膜形成ユニットと、
前記除去対象物を保持した状態の前記処理膜を除去する処理膜除去液を、回転状態の前記基板の周縁部に選択的に供給する処理膜除去液ノズルとを含む、基板処理装置。
【請求項21】
前記基板の周縁部に存在する前記処理膜除去液を洗い流すリンス液を、回転状態の前記基板の周縁部に選択的に供給するリンス液ノズルと、
前記リンス液よりも表面張力が低い低表面張力液体を、回転状態の前記基板の周縁部に選択的に供給する低表面張力液体ノズルとをさらに含む、請求項20に記載の基板処理装置。
【請求項22】
前記処理液ノズル、前記処理膜除去液ノズル、前記リンス液ノズルおよび前記低表面張力液体ノズルを共通に支持する支持部材と、
前記処理液ノズル、前記処理膜除去液ノズル、前記リンス液ノズルおよび前記低表面張力液体ノズルが前記基板の周縁部に対向する処理位置に前記支持部材を移動させる移動ユニットとをさらに含み、
前記支持部材が前記処理位置に位置するとき、前記低表面張力液体ノズルが最も前記基板の中央部側に位置するように、前記処理液ノズル、前記処理膜除去液ノズル、前記リンス液ノズルおよび前記低表面張力液体ノズルがこの順番で前記基板の中央部側に向かって並ぶ、請求項21に記載の基板処理装置。
【請求項23】
前記支持部材は、前記支持部材が前記処理位置に位置するときに前記基板の回転方向における前記基板の周縁部の一部を覆うカバー部材を含み、
前記処理液ノズル、前記処理膜除去液ノズル、前記リンス液ノズルおよび前記低表面張力液体ノズルは、それぞれ、前記カバー部材から露出し、前記支持部材が前記処理位置に位置するときに前記基板の周縁部に対向する複数の吐出口を有し、
前記支持部材が前記処理位置に位置するときに、前記カバー部材と前記基板の周縁部との間に間隙が形成されている、請求項22に記載の基板処理装置。
【請求項24】
前記処理液ノズル、前記処理膜除去液ノズル、前記リンス液ノズルおよび前記低表面張力液体ノズルが処理配置に配置されるように、これらのノズルを移動させる移動ユニットをさらに含み、
前記処理配置は、前記処理液ノズル、前記処理膜除去液ノズル、前記リンス液ノズルおよび前記低表面張力液体ノズルが、前記基板の回転方向における上流側から下流側に向かってこの順番で並ぶ配置であり、
前記処理膜形成ユニットが、前記回転方向において前記処理液ノズルと前記処理膜除去液ノズルとの間で処理液を固化または硬化させる、請求項21に記載の基板処理装置。
【請求項25】
前記処理液ノズルとともに移動し、前記処理液ノズルが前記処理配置に配置されるときに前記回転方向における前記基板の周縁部の一部を覆うカバー部材をさらに含み、
前記処理液ノズルが前記処理配置に配置されるときに、前記基板の周縁部と前記カバー部材の間に間隙が形成され、
前記処理液ノズルは、前記カバー部材から露出し、前記処理配置において前記基板の周縁部に対向する吐出口を有する、請求項24に記載の基板処理装置。
【請求項26】
前記処理液ノズルが、前記基板の周縁部の上側面部に向けて前記処理液を吐出する上側処理液ノズルと、前記基板の周縁部の下側面部に向けて前記処理液を吐出する下側処理液ノズルとを含む、請求項20~25のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象になる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板および有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等の基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
基板のベベル部(周縁部)には、半導体製造において行われる処理によって発生する残渣や、基板を保持するための保持部材との接触によって発生するパーティクル等が付着することがある。
このような残渣やパーティクル等を除去対象物として基板の周縁部から除去するために、下記特許文献1には、基板の周縁部をブラシで洗浄する基板処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の基板処理装置では、ブラシを基板の周縁部に押し付けることで、基板の周縁部に付着している異物を除去することができる。しかしながら、ブラシの押し付けによって基板の周縁部に作用する物理力によって、基板の周縁部が損傷するおそれがある。
また、近年、半導体製造において、1枚の基板に形成されるデバイスの数を増大させることによって、製造効率を向上させている。基板の表面において周縁部に近接する領域にまでデバイスを形成することによって、1枚の基板に形成されるデバイスの数を増大させている。デバイスを保護するためには、デバイスが形成されている領域を避けて除去対象物を除去する処理を行うことが好ましい。そのため、基板の表面の周縁部において除去対象物を除去する領域を精度良く管理する必要がある。
【0005】
特許文献1のようにブラシを基板の周縁部に押し付ける構成であれば、押し付けによるブラシの広がり方は予測が困難である。したがって、基板の周縁部においてブラシと接触する領域を精度良く管理することは難しい。
そこで、この発明の1つの目的は、基板の周縁部に作用する物理力を抑制しつつ、基板の周縁部において除去対象物が除去される領域を精度良く管理し、かつ、基板の周縁部から除去対象物を効率良く除去できる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一実施形態は、基板を水平に保持する基板保持工程と、水平に保持された前記基板を、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線の周りに回転させる基板回転工程と、回転状態の前記基板の周縁部に選択的に処理液を供給する処理液供給工程と、前記基板の周縁部に供給された前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の周縁部に存在する除去対象物を保持する処理膜を形成する処理膜形成工程と、回転状態の前記基板の周縁部に選択的に処理膜除去液を供給して、前記基板の周縁部から前記除去対象物を保持した状態の前記処理膜を除去する処理膜除去工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0007】
この方法によれば、基板の周縁部に供給された処理液が固化または硬化されることによって、基板の周縁部に存在する除去対象物を保持する処理膜が基板の周縁部に選択的に形成される。その後、基板の周縁部に処理膜除去液を供給することによって、除去対象物を保持している状態の処理膜を基板の周縁部から基板外に除去することができる。
そのため、処理膜を形成することなく処理膜除去液等の液体を用いて除去対象物を基板外に押し流す場合と比較して、処理膜除去液の流れを受ける除去対象物の見かけのサイズを大きくすることができる。そのため、基板の周縁部を流れる処理膜除去液から除去対象物が受けるエネルギーを増大させることができる。したがって、除去対象物を基板から効率良く除去できる。
【0008】
また、この方法によれば、基板の周縁部にブラシ等の固体を押し付けることなく、基板の周縁部および処理膜と液体との接触によって基板の周縁部から除去対象物を除去することができる。したがって、ブラシ等の部材を基板の周縁部に押し付ける構成と比較して、基板の周縁部に作用する物理力を抑制することができる。
また、基板の周縁部への処理液の供給時および基板の周縁部への処理膜除去液の供給時において、基板が回転されている。そのため、基板の周縁部に供給された処理液や処理膜除去液には遠心力が作用する。基板の周縁部に供給された処理液や処理膜除去液に作用する遠心力は、基板の回転速度に依存する。そのため、処理液や処理膜除去液が基板の周縁部において回転径方向の内方に達する位置を基板の回転速度によって精度良く管理することができる。
【0009】
以上のように、基板の周縁部に作用する物理力を抑制しつつ基板の周縁部において除去対象物が除去される領域を精度良く管理することができる。さらに、基板の周縁部から除去対象物を効率良く除去できる。
この発明の一実施形態では、前記基板の周縁部において前記処理膜除去液と接する処理膜除去液接触領域の回転径方向内方端が、前記基板の周縁部において前記処理液と接する処理液接触領域よりも前記基板の中央部側に位置する。
【0010】
処理液が固化または硬化されることによって処理液接触領域に処理膜が形成される。基板の周縁部に接する液体は、回転の遠心力に起因して、基板の先端側に移動する。そのため、処理膜除去液接触領域の回転径方向内方端が処理液接触領域よりも基板の中央部側に位置する方法であれば、基板の周縁部に形成された処理膜を確実に除去することができる。
【0011】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、回転状態の前記基板の周縁部に選択的にリンス液を供給することによって、前記基板の周縁部に付着している前記処理膜除去液を洗い流すリンス工程をさらに含む。そして、前記基板の周縁部において前記リンス液と接するリンス液接触領域の回転径方向内方端が、前記処理膜除去液接触領域よりも前記基板の中央部側に位置する。
【0012】
この方法によれば、リンス液接触領域の回転径方向内方端が処理膜除去液接触領域よりも基板の中央部側に位置する。そのため、基板の周縁部に付着している処理膜除去液をリンス液で確実に洗い流すことができる。
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記リンス液よりも表面張力が低い低表面張力液体を回転状態の前記基板の周縁部に選択的に供給することによって、前記基板の周縁部に存在する前記リンス液を前記低表面張力液体で置換する置換工程をさらに含む。そして、前記基板の周縁部において前記低表面張力液体と接する低表面張力液体接触領域の回転径方向内方端が、前記リンス液接触領域よりも前記基板の中央部側に位置する。
【0013】
この方法によれば、低表面張力液体接触領域の回転径方向内方端がリンス液接触領域よりも基板の中央部側に位置する。そのため、基板の周縁部に付着しているリンス液を低表面張力液体で確実に置換することができる。そのため、基板の周縁部に作用する表面張力を低減することができる。
この発明の一実施形態では、前記低表面張力液体が、前記基板の周縁部に存在する前記処理膜の残渣を除去する残渣除去液として機能する。そのため、置換工程において低表面張力液体を基板の周縁部に選択的に供給することによって、基板の周縁部に存在する処理膜の残渣を低表面張力液体に溶解させて基板の周縁部から処理膜の残渣を良好に除去することができる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記処理液供給工程が、前記基板の周縁部の上側面部に処理液を着液させる工程を含む。前記置換工程が、前記基板の周縁部の上側面部に低表面張力液体を着液させる工程を含む。前記処理膜形成工程が、前記基板の周縁部への前記処理液の供給を停止させた状態で前記基板を回転させることによって前記処理膜を形成する工程を含む。そして、前記置換工程における前記基板の回転速度が、前記処理膜形成工程における前記基板の回転速度よりも低い。
【0015】
基板の周縁部の上側面部に着液した液体は、回転の遠心力に起因して、基板の先端側に移動する。基板の先端側に移動した液体は、基板の先端を介して、周縁部の下側面部に回り込む。液体が回り込むとは、基板の周縁部の上側面部に付着している液体が基板の周縁部の表面を伝って基板の周縁部の下側面部にまで移動することをいう。液体の回り込みやすさは、基板の回転速度によって異なる。詳しくは、基板の回転速度が低いほど、下側面部への回り込む液体の量が多く、下側面部において基板の中央部側に液体が到達する距離が大きい。
【0016】
そのため、置換工程における基板の回転速度が処理膜形成工程における基板の回転速度よりも低い方法であれば、低表面張力液体を、下側面部において処理膜よりも基板の中央部側に到達させることができる。したがって、下側面部において周縁部に存在する処理膜の残渣を低表面張力液体に溶解させて基板の周縁部から処理膜の残渣を良好に除去することができる。
【0017】
この発明の一実施形態では、前記処理液供給工程における前記基板の回転速度が、前記処理膜除去工程における前記基板の回転速度よりも低い。処理膜除去液として、基板の周縁部において処理膜よりも基板中央部側への付着を避けたい液体(たとえば、アンモニア水)が用いられる場合がある。このような場合であっても、処理膜除去工程における基板の回転速度を処理液供給工程における基板の回転速度よりも高くして基板上の処理膜除去液に作用する遠心力を増大させることによって、処理液接触領域が基板の中央部側に広がることを抑制できる。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記処理液供給工程は、水平方向に移動可能な処理液ノズルを平面視で前記基板よりも外側に配置した状態で前記処理液ノズルからの処理液の吐出を開始し、前記処理液ノズルからの処理液の吐出を継続したまま前記処理液ノズルを前記基板の中央部側に移動させることによって、前記基板の周縁部への処理液の供給を開始する、処理液供給開始工程を含む。
【0019】
処理液ノズルから吐出が開始された直後の処理液は、基板への着液を開始する際の衝撃によって、放射状に広がりやすい。そのため、処理液ノズルを基板の周縁部に対向させた状態で処理液ノズルからの処理液の吐出を開始すると、基板の周縁部に着液する際の衝撃によって、基板上の意図しない位置にまで処理液が広がるおそれがある。
そこで、処理液を吐出している状態の処理液ノズルを基板の中央部側に移動させることによって、基板の周縁部への処理液の供給を開始すれば、吐出開始直後でない処理液を基板の周縁部に供給できる。上側面部において意図しない位置にまで処理液が広がることを抑制できる。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記処理液供給工程は、前記処理液ノズルからの処理液の吐出を継続したまま平面視における前記基板の周縁部の外側に向けて前記処理液ノズルを移動させることによって、前記基板の周縁部への処理液の供給を終了する処理液供給終了工程を含む。
処理液ノズルから処理液の吐出を終了した直後では、液滴状態の処理液が、処理液ノズルから吐出される場合がある。そのため、処理液ノズルを基板に対向させた状態で処理液ノズルからの処理液の吐出を停止すると、基板の周縁部に存在する処理液に処理液の液滴が衝突し、基板の周縁部における処理液の均一な広がりが阻害されるおそれがある。さらに、処理液の液滴が基板に着液した場合、液滴が基板の周縁部に着液する際の衝撃によって、基板の上面の意図しない位置にまで処理液が広がるおそれがある。
【0021】
そこで、処理液を吐出している状態の処理液ノズルを、平面視において基板よりも外側に向けて移動させることによって、基板の周縁部への処理液の供給を終了すれば、液滴状態の処理液が基板の周縁部に付着することを抑制できる。
この発明の一実施形態では、前記処理液供給工程が、処理液ノズルから前記処理液を吐出させて、前記回転方向における前記基板の周縁部の一部に前記処理液を供給する工程を含む。前記処理膜除去工程が、前記処理液ノズルよりも前記回転方向の下流側に位置する処理膜除去液ノズルから前記処理膜除去液を吐出させて、前記回転方向における前記基板の周縁部の一部に前記処理膜除去液を供給する工程を含む。そして、前記処理膜形成工程は、前記基板の周縁部において前記処理液が接触する処理液接触領域が、前記回転方向において前記処理膜除去液ノズルから吐出される前記処理膜除去液が供給される位置に到達する前に、当該処理液を固化または硬化させて前記処理膜を形成する工程を含む。
【0022】
この方法によれば、処理液接触領域が回転方向において前記処理膜除去液が供給される位置に到達する前に、基板の周縁部に存在する処理液が固化または硬化して処理膜になる。そのため、処理液接触領域が回転方向に一回転するまでに、当該処理液は処理膜を形成し、形成された処理膜は除去対象物とともに基板の周縁部から除去される。したがって、除去対象物を基板から効率良く除去できる。
【0023】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、回転状態の前記基板の周縁部に選択的にリンス液を供給することによって、前記基板の周縁部に存在する前記処理膜除去液を洗い流すリンス工程をさらに含む。そして、前記リンス工程が、前記処理膜除去液ノズルよりも前記回転方向の下流側に位置するリンス液ノズルから前記リンス液を吐出させて、前記回転方向における前記基板の周縁部の一部に前記リンス液を供給する工程を含む。
【0024】
この方法によれば、処理膜除去液ノズルよりも回転方向の下流側に位置するリンス液ノズルから吐出されたリンス液が、回転方向における基板の周縁部の一部に供給される。そのため、基板の周縁部に供給された処理膜除去液は、基板の周縁部に供給されてから回転方向に一回転するまでに、リンス液によって速やかに洗い流される。したがって、処理膜除去液を基板から速やかに除去できる。
【0025】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記リンス液よりも表面張力が低い低表面張力液体を前記基板の周縁部に選択的に供給することによって、前記基板の周縁部に存在する前記リンス液を前記低表面張力液体で置換する置換工程をさらに含む。そして、前記置換工程が、前記処理膜除去液ノズルよりも前記回転方向の下流側に位置する低表面張力液体ノズルから前記低表面張力液体を吐出させて、前記回転方向における前記基板の周縁部の一部に前記低表面張力液体を供給する工程を含む。
【0026】
この方法によれば、リンス液ノズルよりも回転方向の下流側に位置する低表面張力液体ノズルから吐出された低表面張力液体が、回転方向における基板の周縁部の一部に供給される。そのため、基板の周縁部に供給されたリンス液は、基板の周縁部に供給されてから回転方向に一回転するまでに、低表面張力液体で速やかに置換される。したがって、基板の周縁部に作用する表面張力を速やかに低減できる。
【0027】
この発明の一実施形態では、前記処理液ノズルからの前記処理液の吐出は、前記処理液ノズルからの前記処理液の吐出が開始されてから前記基板が一回転したときに停止される。
基板が一回転することによって、基板の全周の周縁部が処理液によって処理される。そのため、処理液の着液が開始されてから基板が一回転したときに、処理液ノズルからの処理液の吐出を停止する方法であれば、処理液の使用量を抑制しつつ、基板の全周において周縁部から除去対象物を効率良く除去することができる。
【0028】
この発明の一実施形態では、前記処理膜形成工程が、前記処理液の少なくとも一部を蒸発させることによって前記処理膜を形成する工程を含む。そして、前記基板処理方法が、前記基板の周縁部の加熱、および、前記基板の周縁部への気体の吹き付けの少なくともいずれかによって、前記基板の周縁部に供給された処理液の蒸発を促進する蒸発促進工程をさらに含む。
【0029】
この方法によれば、基板の周縁部の加熱や基板の周縁部への気体の吹き付けによって、処理液の蒸発が促進される。これにより、処理膜を効率良く形成することができる。
この発明の一実施形態では、前記処理液供給工程が、前記基板の周縁部の上側面部および下側面部の両方に処理液を着液させる工程を含む。前記下側面部への前記処理液の着液は、前記上側面部への前記処理液の着液よりも先に開始される。
【0030】
この方法によれば、基板の周縁部の上側面部および下側面部の両方に処理液を着液させるので、基板の周縁部の全体に処理液を行き渡らせやすい。
上側面部および下側面部の両方に処理液を着液させる場合、上側面部および下側面部のそれぞれに着液した処理液は、周縁部の表面に沿って互いに押し戻し合うため、着液位置よりも基板の中央部側に移動するおそれがある。
【0031】
上側面部および下側面部の一方側への処理液の着液の開始を、上側面部および下側面部の他方側への処理液の着液の開始よりも遅らせた場合には、当該一方側に着液した処理液は、当該他方側に着液した処理液による押し戻しの影響を受けにくい。
そこで、下側面部への処理液の着液が上側面部への処理液の着液よりも先に開始される方法であれば、上側面部に着液した処理液は、下側面部に着液した処理液による押し戻しの影響を受けにくい。そのため、基板の周縁部の上側面部において処理液が着液位置よりも基板の中央部側に広がることを抑制できる。
【0032】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記基板の周縁部の上側面部への前記処理液の着液を開始する際に、前記基板の回転を減速する回転減速工程をさらに含む。
基板の回転速度が低いほど遠心力が低減される。そのため、基板の回転速度が低いほど、上側面部および下側面部のうちの一方から上側面部および下側面部のうちの他方へ回り込む処理液の量(回り込み量)が多くなる。その結果、上側面部および下側面部のうちの他方において基板の中央部側に処理液が到達する距離が大きくなる。
【0033】
そこで、上側面部への処理液の着液を開始する際に基板の回転を減速することによって、下側面部から上側面部への回り込み量を減少させることができる。そのため、基板の周縁部の上側面部において処理液が着液位置よりも基板の中央部側に移動する距離が大きくなることを抑制できる。
この発明の一実施形態では、前記処理膜除去液が、前記基板の周縁部から前記処理膜を剥離することによって、前記基板の周縁部から前記処理膜を除去する性質を有する。前記処理膜除去工程が、前記処理膜除去液に前記処理膜を部分的に溶解させて前記処理膜に貫通孔を形成する貫通孔形成工程を含む。
【0034】
そのため、処理膜除去液が、貫通孔を介して処理膜を通過し、処理膜と基板の周縁部との界面付近に速やかに到達することができる。したがって、処理膜と基板の周縁部との界面に処理膜除去液を作用させて処理膜を基板の周縁部から効率良く剥離することができる。その結果、基板の周縁部から除去対象物を効率良く除去することができる。
この発明の一実施形態では、前記処理膜除去工程が、前記貫通孔を介して、前記処理膜と前記基板の周縁部との間に前記処理膜除去液を進入させる除去液進入工程を含む。
【0035】
そのため、処理膜と基板の周縁部との界面に処理膜除去液を作用させて処理膜を基板の周縁部から一層効率良く剥離することができる。
この発明の一実施形態によれば、前記処理液が、溶質および溶媒を有する。前記溶質が、高溶解性成分と前記高溶解性成分よりも前記処理膜除去液に対する溶解性が低い低溶解性成分とを有する。前記処理膜形成工程が、前記高溶解性成分によって形成される高溶解性固体と前記低溶解性成分によって形成される低溶解性固体とを有する前記処理膜を形成する工程を含む。そして、前記貫通孔形成工程が、前記処理膜除去液に前記高溶解性固体を溶解させて前記処理膜に前記貫通孔を形成する工程を含む。
【0036】
この方法によれば、処理膜除去液に対する高溶解性成分の溶解性は、処理膜除去液に対する低溶解性成分の溶解性よりも高い。そのため、高溶解性成分によって形成される高溶解性固体は、低溶解性成分によって形成される低溶解性固体よりも処理膜除去液に溶解しやすい。
そのため、処理膜除去液によって高溶解性固体を溶解して貫通孔を確実に形成しつつ、処理膜除去液に低溶解性固体を溶解させずに低溶解性固体を固体状態に維持することができる。したがって、低溶解性固体で除去対象物を保持しながら、低溶解性固体と基板の周縁部との界面に処理膜除去液を作用させることができる。その結果、処理膜を基板の周縁部から速やかに剥離しつつ、処理膜とともに除去対象物を基板の周縁部から効率良く除去することができる。
【0037】
この発明の他の実施形態は、前記基板処理装置は、基板を水平に保持する基板保持ユニットと、水平に保持された前記基板を、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線の周りに回転させる基板回転ユニットと、処理液を回転状態の前記基板の周縁部に選択的に供給する処理液ノズルと、前記基板の周縁部に供給された前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の周縁部に存在する除去対象物を保持する処理膜を前記基板の周縁部に形成する処理膜形成ユニットと、回転状態の前記基板の周縁部に選択的に処理膜除去液を供給して、前記除去対象物を保持した状態の前記処理膜を除去する処理膜除去液を、回転状態の前記基板の周縁部に選択的に処理膜除去液を供給する処理膜除去液ノズルとを含む基板処理装置を提供する。
【0038】
この装置によれば、基板の周縁部に供給された処理液が固化または硬化されることによって、基板の周縁部に存在する除去対象物を保持する処理膜が基板の周縁部に選択的に形成される。その後、基板の周縁部に処理膜除去液を供給することによって、除去対象物を保持している状態の処理膜を基板の周縁部から基板外に除去することができる。
そのため、処理膜を形成することなく処理膜除去液等の液体を用いて除去対象物を基板外に押し流す場合と比較して、処理膜除去液の流れを受ける除去対象物の見かけのサイズを大きくすることができる。そのため、基板の表面を流れる処理膜除去液から除去対象物が受けるエネルギーを増大させることができる。したがって、除去対象物を基板から効率良く除去できる。
【0039】
また、この装置によれば、基板の周縁部にブラシ等の固体を押し付けることなく、基板の周縁部および処理膜と液体との接触によって基板の周縁部から除去対象物を除去することができる。したがって、ブラシ等の部材を基板の周縁部に押し付ける構成と比較して、基板の周縁部に作用する物理力を抑制することができる。
また、基板の周縁部への処理液の供給時および基板の周縁部への処理膜除去液の供給時において、基板が回転されている。そのため、基板の周縁部に供給された処理液や処理膜除去液には遠心力が作用する。基板の周縁部に供給された処理液や処理膜除去液に作用する遠心力は、基板の回転速度に依存する。そのため、処理液や処理膜除去液が基板の周縁部において回転径方向の内方に達する位置を基板の回転速度によって精度良く管理することができる。
【0040】
以上のように、基板の周縁部に作用する物理力を抑制しつつ基板の周縁部において除去対象物が除去される領域を精度良く管理することができる。さらに、基板の周縁部から除去対象物を効率良く除去できる。
この発明の他の実施形態では、前記基板処理装置は、前記基板の周縁部に存在する前記処理膜除去液を洗い流すリンス液を、回転状態の前記基板の周縁部に選択的に供給するリンス液ノズルと、前記リンス液よりも表面張力が低い低表面張力液体を、回転状態の前記基板の周縁部に選択的に供給する低表面張力液体ノズルとをさらに含む。
【0041】
この装置によれば、基板の周縁部に付着する処理膜除去液をリンス液で洗い流し、その後、基板の周縁部に付着するリンス液を低表面張力液体で置換することができる。そのため、基板の周縁部を乾燥させる際に基板の周縁部に作用する表面張力を低減することができる。したがって、基板の周縁部を効率良く乾燥させることができる。
この発明の他の実施形態では、前記基板処理装置は、前記処理液ノズル、前記処理膜除去液ノズル、前記リンス液ノズルおよび前記低表面張力液体ノズルを共通に支持する支持部材と、前記処理液ノズル、前記処理膜除去液ノズル、前記リンス液ノズルおよび前記低表面張力液体ノズルが前記基板の周縁部に対向する処理位置に前記支持部材を移動させる移動ユニットとをさらに含む。そして、前記支持部材が前記処理位置に位置するとき、前記低表面張力液体ノズルが最も前記基板の中央部側に位置するように、前記処理液ノズル、前記処理膜除去液ノズル、前記リンス液ノズルおよび前記低表面張力液体ノズルがこの順番で前記基板の中央部側に向かって並ぶ。
【0042】
この装置によれば、支持部材が処理位置に位置するとき、処理液ノズル、処理膜除去液ノズル、リンス液ノズルおよび低表面張力液体ノズルがこの順番で基板の先端側から中央部側に向かって並ぶ。そのため、処理膜除去液は、基板の周縁部において処理液よりも基板の中央部側に着液するので、基板の周縁部に形成された処理膜を確実に除去することができる。また、リンス液は、処理膜除去液よりも基板の中央部側に着液するので、基板の周縁部に付着している処理膜除去液を確実に洗い流すことができる。さらに、低表面張力液体は、リンス液よりも基板の中央部側に着液するので、基板の周縁部に付着しているリンス液を低表面張力液体で確実に置換することができる。
【0043】
この発明の他の実施形態では前記支持部材は、前記支持部材が前記処理位置に位置するときに前記回転方向における前記基板の周縁部の一部を覆うカバー部材を含む。前記処理液ノズル、前記処理膜除去液ノズル、前記リンス液ノズルおよび前記低表面張力液体ノズルは、それぞれ、前記カバー部材から露出し、前記支持部材が前記処理位置に位置するときに前記基板の周縁部に対向する複数の吐出口を有する。そして、前記支持部材が前記処理位置に位置するときに、前記カバー部材と前記基板の周縁部との間に間隙が形成されている。
【0044】
この装置によれば、処理液ノズル、処理膜除去液ノズル、リンス液ノズルおよび低表面張力液体ノズルの吐出口は、カバー部材から露出している。吐出口から吐出される液体は、カバー部材と基板の周縁部との間隙に供給される。そのため、当該間隙を、吐出口から吐出される液体によって液密にすることができる。そのため、吐出口から吐出される液体を基板の周縁部に充分に供給することができる。これにより、基板の周縁部から除去対象物を効果的に除去できる。
【0045】
この発明の他の実施形態では、前記基板処理装置が、前記処理液ノズル、前記処理膜除去液ノズル、前記リンス液ノズルおよび前記低表面張力液体ノズルが処理配置に配置されるように、これらのノズルを移動させる移動ユニットをさらに含む。前記処理配置は、前記処理液ノズル、前記処理膜除去液ノズル、前記リンス液ノズルおよび前記低表面張力液体ノズルが、前記基板の回転方向における上流側から下流側に向かってこの順番で並ぶ配置である。前記処理膜形成ユニットが、前記回転方向において前記処理液ノズルと前記処理膜除去液ノズルとの間で処理液を固化または硬化させる。
【0046】
この装置によれば、処理液ノズル、処理膜除去液ノズル、リンス液ノズルおよび低表面張力液体ノズルを処理配置に配置することによって、回転方向における上流側から下流側に向かって処理液ノズル、処理膜除去液ノズル、リンス液ノズルおよび低表面張力液体ノズルがこの順番で並ぶ。
処理液ノズルから基板の周縁部に供給された処理液は、回転方向において処理液ノズルおよび処理膜除去液ノズルの間で処理膜形成ユニットによって固化または硬化されて処理膜を形成する。回転方向において処理液ノズルおよび処理膜除去液ノズルの間で形成された処理膜は、処理液ノズルよりも回転方向の下流側に配置されている処理膜除去液ノズルから吐出される処理膜除去液によって除去される。処理膜除去液ノズルから吐出されて基板の周縁部に供給された処理膜除去液は、処理膜除去液ノズルよりも回転方向の下流側に配置されているリンス液ノズルから吐出されるリンス液によって洗い流される。そして、リンス液ノズルから吐出されて基板の周縁部に供給されたリンス液は、リンス液ノズルよりも回転方向の下流側に配置されている低表面張力液体ノズルから吐出される低表面張力液体で置換される。これにより、基板の周縁部の乾燥時に基板の周縁部に作用する表面張力が低減される。
【0047】
基板の周縁部に着液した処理液は、基板の周縁部に着液してから基板が一回転する前に処理膜となって除去対象物とともに基板の周縁部から除去される。したがって、除去対象物を基板から効率良く除去できる。
この発明の他の実施形態では、前記基板処理装置が、前記処理液ノズルとともに移動し、前記処理液ノズルが前記処理配置に配置されるときに前記回転方向における前記基板の周縁部の一部を覆うカバー部材をさらに含む。前記処理液ノズルが前記処理配置に配置されるときに、前記基板の周縁部と前記カバー部材の間に間隙が形成される。そして、前記処理液ノズルは、前記カバー部材から露出し、前記処理配置において前記基板の周縁部に対向する吐出口を有する。
【0048】
この装置によれば、処理液ノズルの吐出口はカバー部材から露出している。吐出口から吐出される処理液は、カバー部材と基板の周縁部との間隙に供給される。そのため、当該間隙を、吐出口から吐出される処理液によって液密にすることができる。そのため、吐出口から吐出される処理液を基板の周縁部に充分に供給することができる。これにより、基板の周縁部に処理液を充分に行き渡らせることができる。
【0049】
この発明の他の実施形態では、前記処理液ノズルが、前記基板の周縁部の上側面部に向けて前記処理液を吐出する上側処理液ノズルと、前記基板の周縁部の下側面部に向けて前記処理液を吐出する下側処理液ノズルとを含む。
この装置によれば、基板の周縁部の上側面部および下側面部の両方に処理液を着液させるので、基板の周縁部の全体に処理液を行き渡らせやすい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、前記基板処理装置で処理される基板の周縁部について説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、前記基板処理装置に備えられる処理ユニットの概略構成を示す模式的な部分断面図である。
【
図5】
図5は、前記処理ユニットに備えられる複数の上側周縁ノズルおよび複数の下側周縁ノズルの周辺の模式図である。
【
図6】
図6は、前記処理ユニットに備えられる第2支持アームが処理位置に位置するときに各ノズルから吐出される液体が着液する着液位置を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、前記基板処理装置に備えられたコントローラのハードウェアを示すブロック図である。
【
図8】
図8は、前記基板処理装置による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
【
図9A】
図9Aは、前記基板処理の処理液供給工程における基板の周縁部の様子を説明するための模式図である。
【
図9B】
図9Bは、前記基板処理の処理膜形成工程における基板の周縁部の様子を説明するための模式図である。
【
図9C】
図9Cは、前記基板処理の処理膜形成工程における基板の周縁部の様子を説明するための模式図である。
【
図9D】
図9Dは、前記基板処理の処理膜除去工程における基板の周縁部の様子を説明するための模式図である。
【
図9E】
図9Eは、前記処理膜除去工程における基板の周縁部の様子を説明するための模式図である。
【
図9F】
図9Fは、前記基板処理のリンス工程における基板の周縁部の様子を説明するための模式図である。
【
図9G】
図9Gは、前記基板処理の残渣除去工程における基板の周縁部の様子を説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、前記基板処理において基板の周縁部に液体に接触している領域について説明するための模式図である。
【
図11A】
図11Aは、処理膜が基板の周縁部から除去される様子を説明するための模式図である。
【
図11B】
図11Bは、処理膜が基板の周縁部から除去される様子を説明するための模式図である。
【
図11C】
図11Cは、処理膜が基板の周縁部から除去される様子を説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、前記基板処理の第1変形例を説明するための模式図である。
【
図15】
図15は、この発明の第2実施形態に係る基板処理装置に備えられる処理ユニットの概略構成を示す模式的な部分断面図である。
【
図16B】
図16Bは、第2実施形態に係るカバー部材およびその周辺の平面図である。
【
図17A】
図17Aは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理の処理液供給工程の様子を説明するための模式図である。
【
図17B】
図17Bは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理の処理膜形成工程の様子を説明するための模式図である。
【
図17C】
図17Cは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理の処理膜除去工程の様子を説明するための模式図である。
【
図17D】
図17Dは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理の処理膜除去工程の様子を説明するための模式図である。
【
図17E】
図17Eは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理のリンス工程の様子を説明するための模式図である。
【
図17F】
図17Fは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理の残渣除去工程の様子を説明するための模式図である。
【
図18】
図18は、この発明の第3実施形態に係る基板処理装置に備えられる処理ユニットの概略構成を示す模式的な部分断面図である。
【
図19】
図19は、第3実施形態に係る処理ユニットの模式的な平面図である。
【
図20】
図20は、第3実施形態に係る処理ユニットに備えられる複数の下側周縁液体ノズルの配置を説明するための模式図である。
【
図21A】
図21Aは、第3実施形態に係る基板処理装置による基板処理を説明するための模式図である。
【
図21B】
図21Bは、第3実施形態に係る基板処理装置による基板処理を説明するための模式図である。
【
図21C】
図21Cは、第3実施形態に係る基板処理装置による基板処理を説明するための模式図である。
【
図21D】
図21Dは、第3実施形態に係る基板処理装置による基板処理を説明するための模式図である。
【
図21E】
図21Eは、第3実施形態に係る基板処理装置による基板処理を説明するための模式図である。
【
図22】
図22は、第3実施形態に係る処理ユニットの変形例の模式図である。
【
図23】
図23は、第3実施形態に係る処理ユニットの変形例に備えられるカバー部材の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は、この発明の一実施形態にかかる基板処理装置1のレイアウトを示す模式的な平面図である。
基板処理装置1は、シリコンウエハ等の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。
【0052】
基板処理装置1は、基板Wを流体で処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御するコントローラ3とを含む。
搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。処理ユニット2内で基板Wに供給される処理流体には、処理液、処理膜除去液、リンス液、残渣除去液、不活性ガス(気体)等が含まれる。これらの処理流体の詳細については後述する。
【0053】
各処理ユニット2は、チャンバ4と、チャンバ4内に配置された処理カップ7とを備えている。各処理ユニット2では、処理カップ7内で基板Wに対する処理が実行される。チャンバ4には、搬送ロボットCRによって、基板Wを搬入したり基板Wを搬出したりするための出入口(図示せず)が形成されている。チャンバ4には、この出入口を開閉するシャッタユニット(図示せず)が備えられている。
【0054】
図2は、基板処理装置1で処理される基板Wの周縁部150(いわゆる、ベベル部)の構成について説明する。基板Wの周縁部150の表面は、基板Wの上面の一部である上側面部151と、基板の下面の一部である下側面部152と、上側面部151および下側面部152を連結する先端153とを含む。
上側面部151は、水平で平坦な円形の上面平坦部151aと、上面平坦部151aの外端から斜め下に外方に延びる環状の上面傾斜部151bとを含む。下側面部152は、水平で平坦な円形の下面平坦部152aと、下面平坦部152aの外端から斜め上に外方に延びる環状の下面傾斜部152bとを含む。
【0055】
上面傾斜部151bおよび下面傾斜部152bは、それぞれ、上面平坦部151aおよび下面平坦部152aに対して傾いている。
基板Wの上面において基板Wの周縁部150の上側面部151よりも基板Wの中央部側の内側領域154には、デバイスが形成されている場合がある。デバイスは、ポリシリコン等によって形成されている。内側領域154にデバイスが形成されており周縁部150にはデバイスが形成されていない場合、内側領域154はデバイス領域ともいい、基板Wの周縁部150の上側面部151は非デバイス領域ともいう。
【0056】
図2は、基板Wの周縁部150の表面が断面放物線状である例を示している。基板Wの周縁部150の表面は、断面放物線状に限らず、断面台形状であってもよい。つまり、上面傾斜部151b、先端153、および下面傾斜部152bのそれぞれは、断面円弧状に限らず、断面直線状であってもよい。
また、基板Wの周縁部150には、上面平坦部151aおよび下面平坦部152aが設けられていなくてもよい。すなわち、基板Wの周縁部150は、上面傾斜部151b、先端153、および下面傾斜部152bによって構成されていてもよい。この場合、上面傾斜部151bよりも基板Wの中央部側の内側領域154にデバイスが形成されている場合がある。
【0057】
図3は、処理ユニット2の構成例を説明するための模式図である。
図4は、処理ユニット2の平面図である。
図3を参照して、処理ユニット2は、スピンチャック5と、ヒータユニット6と、処理カップ7と、中央気体ノズル8と、上側処理液ノズル9と、上側処理膜除去液ノズル10と、上側リンス液ノズル11と、上側残渣除去液ノズル12と、上側周縁気体ノズル13と、下側処理液ノズル14と、下側処理膜除去液ノズル15と、下側リンス液ノズル16と、下側残渣除去液ノズル17と、下側周縁気体ノズル18とを含む。
【0058】
スピンチャック5は、基板Wを水平に保持しながら、基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1(鉛直軸線)まわりに基板Wを回転させる。スピンチャック5は、基板Wを水平に保持しながら回転軸線A1まわりに基板Wを回転させる基板保持回転ユニットの一例である。スピンチャック5は、スピンベース21と、回転軸22と、スピンモータ23とを含む。
【0059】
回転軸22は、中空軸である。回転軸22は回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びている。回転軸線A1は、基板Wの中央部を通る鉛直軸線である。回転軸22の上端には、スピンベース21が結合されている。スピンベース21は、回転軸22の上端に外嵌されている。スピンベース21の上面は、平面視で円形状である。スピンベース21の上面の直径は基板Wの直径よりも小さい。
【0060】
スピンチャック5は、基板Wをスピンベース21に保持させるために、スピンベース21の上面に配置された基板Wを吸引する吸引ユニット27をさらに含む。
スピンベース21および回転軸22には、吸引経路25が挿通されている。吸引経路25は、スピンベース21の上面の中心から露出する吸引口24を有する。吸引経路25は、吸引管26に連結されている。吸引管26は、真空ポンプなどの吸引ユニット27に連結されている。吸引管26には、その経路を開閉するための吸引バルブ28が介装されている。吸引バルブ28を開くことによって、基板Wがスピンベース21に保持される。スピンベース21は、基板Wを水平に保持するための基板保持ユニットの一例である。
【0061】
スピンモータ23によって回転軸22が回転されることにより、スピンベース21が回転される。これにより、スピンベース21と共に、基板Wが回転軸線A1まわりに回転される。スピンモータ23は、基板Wを回転軸線A1まわりに回転させる基板回転ユニットの一例である。
以下では、回転軸線A1を中心とする回転径方向の内方を「回転径方向内方」といい、回転軸線A1を中心とする回転径方向の外方を「回転径方向外方」という。
【0062】
処理カップ7は、スピンチャック5に保持された基板Wから外方に飛散する液体を受け止める複数のガード71と、複数のガード71によって下方に案内された液体を受け止める複数のカップ72とを含む。
この実施形態では、2つのガード71(第1ガード71Aおよび第2ガード71B)と、2つのカップ72(第1カップ72Aおよび第2カップ72B)とが設けられている例を示している。
【0063】
第1カップ72Aおよび第2カップ72Bのそれぞれは、上向きに開放された環状溝の形態を有している。
第1ガード71Aは、スピンベース21を取り囲むように配置されている(
図4も参照)。第2ガード71Bは、第1ガード71Aよりも基板Wのスピンベース21に近い位置でスピンベース21を取り囲むように配置されている。
【0064】
第1ガード71Aおよび第2ガード71Bは、それぞれ、ほぼ円筒形状を有している。各ガード71の上端部は、スピンベース21に向かうように内方に傾斜している。
詳しくは、第1ガード71Aは、平面視でスピンベース21を取り囲む第1円筒部75Aと、第1円筒部75Aの上端から第1円筒部75Aの内側に延びる第1円環部76Aとを有する。第1円環部76Aは、第1円筒部75Aの内側に向かうにしたがって上方に向かうように水平方向に対して傾斜している。第1円筒部75Aの内側は、基板Wの中央部側でもあり、回転径方向内方でもある。
【0065】
第2ガード71Bは、第1円筒部75Aよりも内方に配置され平面視でスピンベース21を取り囲む第2円筒部75Bと、第2円筒部75Bの上端から第2円筒部75Bの内側に延びる第2円環部76Bとを含む。第2円環部76Bは、第1円環部76Aに下方から対向する。第2円環部76Bは、第2円筒部75Bの内側に向かうにしたがって上方に向かうように水平方向に対して傾斜している。第2円環部76Bの内側は、基板Wの中央部側でもあり、回転径方向内方でもある。
【0066】
第1カップ72Aは、第1ガード71Aによって下方に案内された液体を受け止める。第2カップ72Bは、第2ガード71Bによって下方に案内された液体を受け止める。
処理ユニット2は、第1ガード71Aおよび第2ガード71Bを別々に鉛直方向に昇降させるガード昇降ユニット74を含む。ガード昇降ユニット74は、下位置と上位置との間で第1ガード71Aを昇降させる。ガード昇降ユニット74は、下位置と上位置との間で第2ガード71Bを昇降させる。
【0067】
第1ガード71Aおよび第2ガード71Bがともに上位置に位置するとき、基板Wから飛散する液体は、第2ガード71Bによって受けられる。第2ガード71Bが下位置に位置し、第1ガード71Aが上位置に位置するとき、基板Wから飛散する液体は、第1ガード71Aによって受けられる。第1ガード71Aおよび第2ガード71Bがともに下位置に位置するときに、基板Wの搬入および搬出のために搬送ロボットCRがスピンチャック5にアクセスすることが可能である。
【0068】
ガード昇降ユニット74は、たとえば、第1ガード71Aに結合された第1ボールねじ機構(図示せず)と、第1ボールねじ機構に駆動力を与える第1モータ(図示せず)と、第2ガード71Bに結合された第2ボールねじ機構(図示せず)と、第2ボールねじ機構に駆動力を与える第2モータ(図示せず)とを含む。ガード昇降ユニット74は、ガードリフタともいう。
【0069】
中央気体ノズル8は、第1支持アーム35Aによって支持されている。第1支持アーム35Aは、第1アーム移動ユニット35Bによって、水平方向および鉛直方向に移動される。中央気体ノズル8は、水平方向において、中央位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動する。
中央気体ノズル8は、中央位置に位置するとき、基板Wの上面の中央部に対向する。中央部は基板Wの回転中心を含む領域である。基板Wの上面の回転中心とは、基板Wの上面と回転軸線A1との交差位置である。
【0070】
中央気体ノズル8は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。中央気体ノズル8は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
第1アーム移動ユニット35Bは、たとえば、第1支持アーム35Aに結合され鉛直方向に沿って伸びる回動軸(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含む。
【0071】
回動軸駆動ユニットは、鉛直な回動軸線まわりに回動軸を回動させることによって第1支持アーム35Aを揺動させる。さらに、回動軸駆動ユニットは、回動軸を鉛直方向に沿って昇降することにより、第1支持アーム35Aを上下動させる。第1支持アーム35Aの揺動および昇降に応じて、中央気体ノズル8が水平方向および鉛直方向に移動する。
中央気体ノズル8は、気体を案内する第1中央気体配管40Aおよび第2中央気体配管41Aに接続されている。
【0072】
第1中央気体配管40Aには、第1中央気体バルブ40Bが介装されている。中央気体ノズル8が中央位置に位置する状態で第1中央気体バルブ40Bが開かれると、気体が、中央気体ノズル8の鉛直吐出口8aから下方に吐出される。中央気体ノズル8が中央位置に位置する状態で第1中央気体バルブ40Bが開かれると、中央気体ノズル8の鉛直吐出口8aから吐出される気体が基板Wの中央部に吹き付けられ、基板Wの上面に沿って放射状に広がる気流を形成する。
【0073】
第2中央気体配管41Aには、第2中央気体バルブ41Bが介装されている。第2中央気体バルブ41Bが開かれると、気体が、中央気体ノズル8の水平吐出口8bから水平方向に吐出される。中央気体ノズル8が中央位置に位置する状態で第2中央気体バルブ41Bが開かれると、中央気体ノズル8の水平吐出口8bから吐出される気体は、鉛直吐出口8aから吐出された気体によって形成される気流よりも上方で、基板Wの中央部を中心として放射状に広がる気流を形成する。
【0074】
中央気体ノズル8から吐出される気体は、たとえば、窒素ガス(N2ガス)等の不活性ガスである。中央気体ノズル8から吐出される気体は、空気であってもよい。不活性ガスとは、窒素ガスに限られず、基板Wの上面や、基板Wの上面に形成されたデバイスに対して不活性なガスのことである。不活性ガスの例としては、窒素ガスの他に、アルゴン等の希ガス類が挙げられる。
【0075】
上側処理液ノズル9と、上側処理膜除去液ノズル10と、上側リンス液ノズル11と、上側残渣除去液ノズル12と、上側周縁気体ノズル13とは、第2支持アーム36A(支持部材)によって共通に支持されている。
上側処理液ノズル9と、上側処理膜除去液ノズル10と、上側リンス液ノズル11と、上側残渣除去液ノズル12と、上側周縁気体ノズル13とをまとめて、複数の上側周縁ノズルということがある。
【0076】
上側処理液ノズル9と、上側処理膜除去液ノズル10と、上側リンス液ノズル11と、上側残渣除去液ノズル12とをまとめて、複数の上側周縁液体ノズルということがある。
第2支持アーム36Aは、第2アーム移動ユニット36Bによって、水平方向および鉛直方向に移動される。第2アーム移動ユニット36Bは、第2支持アーム36Aに結合され鉛直方向に沿って伸びる回動軸(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含む。
【0077】
回動軸駆動ユニットは、鉛直な回動軸線まわりに回動軸を回動させることによって第2支持アーム36Aを揺動させる。さらに、回動軸駆動ユニットは、回動軸を鉛直方向に沿って昇降することにより、第2支持アーム36Aを上下動させる。第2支持アーム36Aの揺動および昇降に応じて、複数の上側周縁ノズルが一体的に水平方向および鉛直方向に移動する。
【0078】
第2支持アーム36Aは、水平方向において、処理位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動する。第2支持アーム36Aの処理位置は、
図4に実線で示す位置である。第2支持アーム36Aが処理位置に位置するとき、複数の上側周縁ノズルは、基板Wの周縁部150の上側面部151に対向する。
第2支持アーム36Aが処理位置に位置するとき、上側周縁気体ノズル13は、上側残渣除去液ノズル12よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置する。第2支持アーム36Aが処理位置に位置するとき、上側残渣除去液ノズル12は、上側リンス液ノズル11よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置する。第2支持アーム36Aが処理位置に位置するとき、上側リンス液ノズル11は、上側処理膜除去液ノズル10よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置する。第2支持アーム36Aが処理位置に位置するとき、上側処理膜除去液ノズル10は、上側処理液ノズル9よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置する。
【0079】
第2支持アーム36Aのホーム位置は、
図4に二点鎖線で示す位置である。第2支持アーム36Aがホーム位置に位置するとき、複数の上側周縁ノズルは、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。
複数の上側周縁ノズルは、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
【0080】
上側処理液ノズル9は、処理液を案内する上側処理液配管42Aに接続されている。上側処理液配管42Aには、上側処理液バルブ42Bが介装されている。
第2支持アーム36Aが処理位置に位置する状態で上側処理液バルブ42Bが開かれると、処理液が、上側処理液ノズル9から下方に連続流で吐出されて基板Wの周縁部150の上側面部151に着液する。上側処理液ノズル9から処理液が吐出される方向は、下方に向かうほど基板Wの先端側(基板Wの中央部側とは反対側)に向かうように、鉛直方向に対して傾斜していることが好ましい(後述する
図9Aを参照)。
【0081】
処理液は、溶質および溶媒を含んでいる。処理液は、溶媒の少なくとも一部が揮発(蒸発)することによって固化または硬化する。処理液は、基板W上で固化または硬化することによって、基板W上に存在する除去対象物を保持する固形の処理膜を形成する。
ここで、「固化」とは、たとえば、溶媒の揮発に伴い、分子間や原子間に作用する力等によって溶質が固まることを指す。「硬化」とは、たとえば、重合や架橋等の化学的な変化によって、溶質が固まることを指す。したがって、「固化または硬化」とは、様々な要因によって溶質が「固まる」ことを表している。
【0082】
処理液に含まれる溶質は、低溶解性成分と、高溶解性成分とを含む。上側処理液ノズル9から吐出される処理液に含まれる溶質には、さらに、腐食防止成分が含まれていることが好ましい。詳しくは後述するが、腐食防止成分は、たとえば、BTA(ベンゾトリアゾール)である。
処理液に含まれる低溶解性成分および高溶解性成分としては、処理膜除去液に対する溶解性が互いに異なる物質を用いることができる。処理液に含まれる低溶解性成分は、たとえば、ノボラックである。処理液に含まれる高溶解性成分は、たとえば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。処理液は、ポリマー含有液ともいい、処理膜は、ポリマー膜ともいう。
【0083】
処理液に含まれる溶媒は、低溶解性成分および高溶解性成分を溶解させる液体であればよい。処理液に含まれる溶媒は、後述する処理膜除去液と相溶性を有する(処理膜除去液と混和可能である)液体であることが好ましい。処理液に含まれる溶媒は、たとえば、IPAである。
処理液に含まれる溶媒、低溶解性成分、高溶解性成分および腐食防止成分の詳細については後述する。
【0084】
上側処理膜除去液ノズル10は、上側処理膜除去液ノズル10に処理膜除去液を案内する上側処理膜除去液配管43Aに接続されている。上側処理膜除去液配管43Aには、上側処理膜除去液バルブ43Bが介装されている。
第2支持アーム36Aが処理位置に位置する状態で上側処理膜除去液バルブ43Bが開かれると、処理膜除去液が、上側処理膜除去液ノズル10から下方に連続流で吐出されて基板Wの周縁部150の上側面部151に着液する。上側処理膜除去液ノズル10から処理膜除去液が吐出される方向は、下方に向かうほど基板Wの先端側に向かうように、鉛直方向に対して傾斜していることが好ましい(後述する
図9Dおよび
図9Eを参照)。
【0085】
処理膜除去液は、除去対象物を保持している状態の処理膜を、基板Wの上面から剥離して除去する液体である。処理膜除去液は、処理液の溶質に含まれる低溶解性成分よりも処理液の溶質に含まれる高溶解性成分を溶解させやすい液体が用いられる。上側処理膜除去液ノズル10から吐出される処理膜除去液は、たとえば、アンモニア水である。
処理膜除去液は、たとえば、アンモニア水以外のアルカリ性水溶液(アルカリ性液体)であってもよい。アンモニア水以外のアルカリ性水溶液の具体例としては、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)水溶液、および、コリン水溶液、ならびにこれらのいずれかの組合せが挙げられる。処理膜除去液は、純水(好ましくはDIW)であってもよいし、中性または酸性の水溶液(非アルカリ性水溶液)であってもよい。
【0086】
上側リンス液ノズル11は、上側リンス液ノズル11にリンス液を案内する上側リンス液配管44Aに接続されている。上側リンス液配管44Aには、上側リンス液バルブ44Bが介装されている。
第2支持アーム36Aが処理位置に位置する状態で上側リンス液バルブ44Bが開かれると、リンス液が、上側リンス液ノズル11から下方に連続流で吐出されて基板Wの周縁部150の上側面部151に着液する。上側リンス液ノズル11からリンス液が吐出される方向は、下方に向かうほど基板Wの先端側に向かうように、鉛直方向に対して傾斜していることが好ましい(後述する
図9Fを参照)。
【0087】
リンス液は、基板Wの表面から処理膜除去液を洗い流す液体である。リンス液としては、DIW、炭酸水、電解イオン水、希釈濃度(たとえば、1ppm~100ppm程度)の塩酸水、希釈濃度(たとえば、1ppm~100ppm程度)のアンモニア水、還元水(水素水)等が挙げられる。
上側残渣除去液ノズル12は、上側残渣除去液ノズル12に残渣除去液を案内する上側残渣除去液配管45Aに接続されている。上側残渣除去液配管45Aには、上側残渣除去液バルブ45Bが介装されている。
【0088】
第2支持アーム36Aが処理位置に位置する状態で上側残渣除去液バルブ45Bが開かれると、残渣除去液が、上側残渣除去液ノズル12から下方に連続流で吐出されて基板Wの周縁部150の上側面部151に着液する。上側残渣除去液ノズル12から残渣除去液が吐出される方向は、下方に向かうほど基板Wの先端側に向かうように、鉛直方向に対して傾斜していることが好ましい(後述する
図9Gを参照)。
【0089】
残渣除去液は、処理膜除去液によって処理膜が除去された後に(リンス液によって処理膜除去液を洗い流した後)基板Wの周縁部150に残る残渣を除去するための液体である。残渣除去液は、リンス液と相溶性を有することが好ましい。
残渣除去液は、たとえば、有機溶剤である。残渣除去液として用いられる有機溶剤としては、IPA、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、メタノール、エタノール、アセトン、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)およびTrans-1,2-ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つを含む液等が挙げられる。
【0090】
残渣除去液として用いられる有機溶剤は、単体成分のみからなる必要はなく、他の成分と混合した液体であってもよい。たとえば、IPAとDIWとの混合液であってもよいし、IPAとHFEとの混合液であってもよい。
これらの有機溶剤は、リンス液よりも表面張力が低い低表面張力液体としても機能する。上側残渣除去液ノズル12は、上側低表面張力液体ノズルとしても機能する。
【0091】
上側周縁気体ノズル13は、上側周縁気体ノズル13に気体を案内する上側周縁気体配管46Aに接続されている。上側周縁気体配管46Aには、上側周縁気体バルブ46Bが介装されている。
第2支持アーム36Aが処理位置に位置する状態で上側周縁気体バルブ46Bが開かれると、気体が、上側周縁気体ノズル13から下方に吐出されて基板Wの周縁部150の上側面部151に吹き付けられる。
【0092】
上側周縁気体ノズル13から気体が吐出される方向は、下方に向かうほど基板Wの先端側に向かうように、鉛直方向に対して傾斜していることが好ましい(後述する
図9A等を参照)。そうであれば、上側面部151に吹き付けられた気体が、上側面部151に沿って基板Wの先端側に向かう気流を形成しやすい。
上側周縁気体ノズル13から吐出される気体は、中央気体ノズル8から吐出される気体と同様である。具体的には、上側周縁気体ノズル13から吐出される気体は、窒素ガス等の不活性ガスや空気である。
【0093】
下側処理液ノズル14と、下側処理膜除去液ノズル15と、下側リンス液ノズル16と、下側残渣除去液ノズル17と、下側周縁気体ノズル18とは、固定部材37によって共通に固定されている。
下側処理液ノズル14と、下側処理膜除去液ノズル15と、下側リンス液ノズル16と、下側残渣除去液ノズル17と、下側周縁気体ノズル18とをまとめて、複数の下側周縁ノズルということがある。
【0094】
下側処理液ノズル14と、下側処理膜除去液ノズル15と、下側リンス液ノズル16と、下側残渣除去液ノズル17とをまとめて、複数の下側周縁液体ノズルということがある。
下側処理液ノズル14は、処理液を案内する下側処理液配管47Aに接続されている。下側処理液配管47Aには、下側処理液バルブ47Bが介装されている。下側処理液バルブ47Bが開かれると、処理液が、下側処理液ノズル14から上方に連続流で吐出されて基板Wの周縁部150の下側面部152に着液する。下側処理液ノズル14から処理液が吐出される方向は、上方に向かうほど基板Wの先端側に向かうように、鉛直方向に対して傾斜していることが好ましい(後述する
図9Aを参照)。
【0095】
下側処理液ノズル14からは、上側処理液ノズル9から吐出される処理液と同じ処理液が吐出される。同じ処理液とは、溶媒が同じ物質であり、溶質が同じ物質であり、かつ、溶媒中の溶質の濃度が同じであることをいう。
下側処理膜除去液ノズル15は、下側処理膜除去液ノズル15に処理膜除去液を案内する下側処理膜除去液配管48Aに接続されている。下側処理膜除去液配管48Aには、下側処理膜除去液バルブ48Bが介装されている。下側処理膜除去液バルブ48Bが開かれると、処理膜除去液が、下側処理膜除去液ノズル15から上方に連続流で吐出されて基板Wの周縁部150の下側面部152に着液する。下側処理膜除去液ノズル15から処理膜除去液が吐出される方向は、上方に向かうほど基板Wの先端側に向かうように、鉛直方向に対して傾斜していることが好ましい(後述する
図9Dおよび
図9Eを参照)。
【0096】
下側処理膜除去液ノズル15からは、上側処理膜除去液ノズル10から吐出される処理膜除去液と同じ処理膜除去液が吐出される。同じ処理膜除去液とは、処理膜除去液が融液である場合、同じ物質の融液であることをいう。また、処理膜除去液が溶媒および溶質を含む場合、同じ処理膜除去液とは、両者の溶媒が同じ物質であり、両者の溶質が同じ物質であり、かつ、溶媒中の溶質の濃度が同じであることをいう。
【0097】
下側リンス液ノズル16は、下側リンス液ノズル16にリンス液を案内する下側リンス液配管49Aに接続されている。下側リンス液配管49Aには、下側リンス液バルブ49Bが介装されている。下側リンス液バルブ49Bが開かれると、リンス液が、下側リンス液ノズル16から上方に連続流で吐出されて基板Wの周縁部150の下側面部152に着液する。下側リンス液ノズル16からリンス液が吐出される方向は、上方に向かうほど基板Wの先端側に向かうように、鉛直方向に対して傾斜していることが好ましい(後述する
図9Fを参照)。
【0098】
下側リンス液ノズル16からは、上側リンス液ノズル11から吐出されるリンス液と同じリンス液が吐出される。同じリンス液とは、リンス液が融液である場合、同じ物質の融液であることをいう。また、リンス液が溶媒および溶質を含む場合、同じリンス液とは、両者の溶媒が同じ物質であり、両者の溶質が同じ物質であり、かつ、溶媒中の溶質の濃度が同じであることをいう。
【0099】
下側残渣除去液ノズル17は、下側残渣除去液ノズル17に残渣除去液を案内する下側残渣除去液配管50Aに接続されている。下側残渣除去液配管50Aには、下側残渣除去液バルブ50Bが介装されている。下側残渣除去液バルブ50Bが開かれると、残渣除去液が、下側残渣除去液ノズル17から上方に連続流で吐出されて基板Wの周縁部150の下側面部152に着液する。下側残渣除去液ノズル17から残渣除去液が吐出される方向は、上方に向かうほど基板Wの先端側に向かうように、鉛直方向に対して傾斜していることが好ましい(後述する
図9Gを参照)。
【0100】
下側残渣除去液ノズル17からは、上側残渣除去液ノズル12から吐出される残渣除去液と同じ残渣除去液が吐出される。同じ残渣除去液とは、残渣除去液が融液である場合、同じ物質の融液であることをいう。また、残渣除去液が溶媒および溶質を含む場合、同じ残渣除去液とは、両者の溶媒が同じ物質であり、両者の溶質が同じ物質であり、かつ、溶媒中の溶質の濃度が同じであることをいう。
【0101】
下側周縁気体ノズル18は、下側周縁気体ノズル18に気体を案内する下側周縁気体配管51Aに接続されている。下側周縁気体配管51Aには、下側周縁気体バルブ51Bが介装されている。下側周縁気体バルブ51Bが開かれると、気体が、下側周縁気体ノズル18から上方に吐出されて基板Wの周縁部150の下側面部152に吹き付けられる。
下側周縁気体ノズル18から気体が吐出される方向は、上方に向かうほど基板Wの先端側に向かうように、鉛直方向に対して傾斜していることが好ましい(後述する
図9A等を参照)。そうであれば、上側面部151に吹き付けられた気体は、下側面部152に沿って基板Wの先端側に向かう気流を形成しやすい。
【0102】
下側周縁気体ノズル18から吐出される気体は、中央気体ノズル8から吐出される気体と同様である。すなわち、下側周縁気体ノズル18から吐出される気体は、窒素ガス等の不活性ガスや空気である。
ヒータユニット6は、基板Wの周縁部150を加熱するホットプレートである。ヒータユニット6は、基板Wの周縁部150に下方から対向する環状のプレート本体60と、プレート本体60に内蔵されているヒータ61とを含む。ヒータ61は、プレート本体60に内蔵されている抵抗体であってもよい。ヒータ61には、給電線62を介して、ヒータ通電ユニット63から電力が供給される。
【0103】
処理ユニット2は、ヒータユニット6を鉛直方向に昇降させるヒータ昇降ユニット64を含む。ヒータ昇降ユニット64は、基板Wに非接触で近接する近接位置と基板Wから離間する離間位置との間でヒータユニット6を昇降させる。
ヒータ昇降ユニット64は、たとえば、プレート本体60に結合されたボールねじ機構(図示せず)と、ボールねじ機構に駆動力を与えるモータ(図示せず)とを含む。ヒータ昇降ユニット64は、ヒータリフタともいう。
【0104】
図4に示すように、プレート本体60には、周方向における一部を切り欠く切り欠き60aが設けられている。切り欠き60a内に複数の下側周縁ノズルおよび固定部材37が配置されている(
図3を参照)。
図5は、複数の上側周縁ノズルおよび複数の下側周縁ノズルの周辺の模式図である。
図5に示す第2支持アーム36Aは処理位置に位置する。
【0105】
複数の下側周縁ノズルは、それぞれ、第2支持アーム36Aが処理位置に位置するときの複数の上側周縁ノズルと平面視で重なる位置に配置されている。詳しくは、第2支持アーム36Aが処理位置に位置するときに、下側処理液ノズル14の吐出口14aは、上側処理液ノズル9の吐出口9aと平面視で重なる。第2支持アーム36Aが処理位置に位置するときに、下側処理膜除去液ノズル15の吐出口15aは、上側処理膜除去液ノズル10の吐出口10aと平面視で重なる。
【0106】
第2支持アーム36Aが処理位置に位置するときに、下側リンス液ノズル16の吐出口16aは、上側リンス液ノズル11の吐出口11aと平面視で重なる。第2支持アーム36Aが処理位置に位置するときに、下側残渣除去液ノズル17の吐出口17aは、上側残渣除去液ノズル12の吐出口12aと平面視で重なる。第2支持アーム36Aが処理位置に位置するときに、下側周縁気体ノズル18の吐出口18aは、上側周縁気体ノズル13の吐出口13aと平面視で重なる。
【0107】
そのため、各上側周縁ノズルから吐出される液体が基板Wの周縁部150の上側面部151に着液する着液位置は、対応する下側周縁ノズルから吐出される液体が基板Wの周縁部150の下側面部152に着液する着液位置と平面視で重なる。着液位置とは、ノズルから吐出された液体が衝突する基板Wの表面上の位置(領域)のことである。
図6は、第2支持アーム36Aが処理位置に位置するときに各上側周縁液体ノズル(上側処理液ノズル9、上側処理膜除去液ノズル10、上側リンス液ノズル11、および上側残渣除去液ノズル12)から吐出される液体が着液する着液位置を説明するための模式図である。前述したように、各上側周縁ノズルから吐出される液体の着液位置は、対応する下側周縁ノズルから吐出される液体の着液位置と平面視で重なるため、
図6には、各上側周縁ノズルから吐出される液体の着液位置の符号と、対応する下側周縁ノズルから吐出される液体の着液位置の符号とを併記する。
【0108】
上側処理液ノズル9から吐出される処理液の着液位置を上側処理液着液位置UP1という。下側処理液ノズル14から吐出される処理液の着液位置を下側処理液着液位置DP1という。
上側処理膜除去液ノズル10から吐出される処理膜除去液の着液位置を上側処理膜除去液着液位置UP2という。下側処理膜除去液ノズル15から吐出される処理膜除去液の着液位置を下側処理膜除去液着液位置DP2という。
【0109】
上側リンス液ノズル11から吐出されるリンス液の着液位置を上側リンス液着液位置UP3という。下側リンス液ノズル16から吐出されるリンス液の着液位置を下側リンス液着液位置DP3という。
上側残渣除去液ノズル12から吐出される残渣除去液の着液位置を上側残渣除去液着液位置UP4という。下側残渣除去液ノズル17から吐出されるリンス液の着液位置を下側残渣除去液着液位置DP4という。
【0110】
上側残渣除去液着液位置UP4は、上側リンス液着液位置UP3よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置する。上側リンス液着液位置UP3は、上側処理膜除去液着液位置UP2よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置する。上側処理膜除去液着液位置UP2は、上側処理液着液位置UP1よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置する。
【0111】
ある着液位置が別の着液位置よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置するとは、当該ある着液位置の少なくとも一部が、当該別の着液位置の全体よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置することを意味し、当該ある着液位置の全体が当該別の着液位置の全体よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置することを意味するものではない。
【0112】
図7は、コントローラ3のハードウェアを示すブロック図である。コントローラ3は、コンピュータ本体3aと、コンピュータ本体3aに接続された周辺装置3dとを含む、コンピュータである。コンピュータ本体3aは、各種の命令を実行するCPU3b(Central Processing Unit:中央処理装置)と、情報を記憶する主記憶装置3cとを含む。
周辺装置3dは、プログラムP等の情報を記憶する補助記憶装置3eと、リムーバブルメディアRMから情報を読み取る読取装置3fと、ホストコンピュータ等の他の装置と通信する通信装置3gとを含む。
【0113】
コントローラ3は、入力装置3A、表示装置3B、および警報装置3Cに接続されている。入力装置3Aは、ユーザーやメンテナンス担当者等の操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置3Bの画面に表示される。入力装置3Aは、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置3Aおよび表示装置3Bを兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられていてもよい。警報装置3Cは、光、音、文字、および図形のうちの1つ以上を用いて警報を発する。入力装置3Aがタッチパネルディスプレイの場合、入力装置3Aが、警報装置3Cを兼ねていてもよい。
【0114】
CPU3bは、補助記憶装置3eに記憶されたプログラムPを実行する。補助記憶装置3e内のプログラムPは、コントローラ3に予めインストールされたものであってもよい。補助記憶装置3e内のプログラムPは、読取装置3fを通じてリムーバブルメディアRMから補助記憶装置3eに送られたものであってもよい。補助記憶装置3e内のプログラムPは、ホストコンピュータ等の外部装置から通信装置3gを通じて補助記憶装置3eに送られたものであってもよい。
【0115】
補助記憶装置3eおよびリムーバブルメディアRMは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリである。補助記憶装置3eは、たとえば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。リムーバブルメディアRMは、たとえば、コンパクトディスク等の光ディスクまたはメモリーカード等の半導体メモリである。リムーバブルメディアRMは、プログラムPが記録された、コンピュータ読取可能な記録媒体の一例である。リムーバブルメディアRMは、一時的ではない有形の記録媒体である。
【0116】
補助記憶装置3eは、複数のレシピを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。複数のレシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順の少なくとも一つにおいて互いに異なる。コントローラ3は、ホストコンピュータによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理されるように基板処理装置1に備えられる各部材を制御する。以下の各工程は、コントローラ3が基板処理装置1を制御することにより実行される。言い換えると、コントローラ3は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
【0117】
図8は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
図8には、主として、コントローラ3がプログラムをP実行することによって実現される処理が示されている。
図9A~
図9Gは、基板処理の各工程の様子を説明するための模式図である。
図9A~
図9Gでは、説明の便宜上、基板Wの大きさを誇張して図示している。
基板処理装置1による基板処理では、
図8に示すように、基板搬入工程(ステップS1)、処理液供給工程(ステップS2)、処理膜形成工程(ステップS3)、処理膜除去工程(ステップS4)、リンス工程(ステップS5)、残渣除去工程(ステップS6)、スピンドライ工程(ステップS7)、および基板搬出工程(ステップS8)がこの順番で実行される。
【0118】
以下では、主に
図3~
図8を参照する。
図9A~
図9Gについては適宜参照する。
まず、基板Wが、搬送ロボットIR,CR(
図1参照)によってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(ステップS1)。吸引バルブ28が開かれることによって、基板Wは、スピンチャック5によって水平に保持される(基板保持工程)。
【0119】
スピンチャック5による基板Wの保持は、スピンドライ工程(ステップS7)が終了するまで継続される。ガード昇降ユニット74は、基板保持工程が開始されてからスピンドライ工程(ステップS7)が終了するまでの間、少なくとも一つのガード71が上位置に位置するように、第1ガード71Aおよび第2ガード71Bの高さ位置を調整する。
さらに、水平方向における中央気体ノズル8の位置は、基板保持工程が開始されてからスピンドライ工程(ステップS7)が終了するまでの間、中央位置に維持される。第1中央気体バルブ40Bおよび第2中央気体バルブ41Bは、基板保持工程が開始されてからスピンドライ工程(ステップS7)が終了するまでの間、開かれた状態で維持される。基板処理開始時において、ヒータユニット6は、離間位置に配置される。
【0120】
次に、搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、処理液供給工程(ステップS2)が開始される。処理液供給工程では、まず、スピンモータ23が、スピンベース21を回転させる。これにより、水平に保持された基板Wが回転される(基板回転工程)。
そして、第2アーム移動ユニット36Bが、第2支持アーム36Aを処理位置に移動させる。第2支持アーム36Aが処理位置に位置する状態で、上側周縁気体バルブ46Bおよび下側周縁気体バルブ51Bが開かれる。これにより、基板Wの先端側に向かう気流が形成される。
【0121】
そして、第2支持アーム36Aが処理位置に位置する状態で、上側処理液バルブ42Bおよび下側処理液バルブ47Bが開かれる。これにより、
図9Aに示すように、回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151に向けて、上側処理液ノズル9から処理液が供給(吐出)される(上側処理液供給工程、上側処理液吐出工程)。そして、上側処理液ノズル9からの処理液の吐出と同時に、回転状態の基板Wの周縁部150の下側面部152に向けて、下側処理液ノズル14から処理液が供給(吐出)される(下側処理液供給工程、下側処理液吐出工程)。
【0122】
回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151および下側面部152に着液した処理液には遠心力が作用する。これにより、周縁部150において、上側処理液着液位置UP1および下側処理液着液位置DP1よりも基板Wの先端側にも処理液が行き渡る。つまり、周縁部150に選択的に処理液が供給される。周縁部150において処理液と接触する略円環状の領域を処理液接触領域R1という。
【0123】
上側処理液ノズル9および下側処理液ノズル14からの処理液の供給は、所定時間、たとえば、1秒以上6秒以下の間の時間継続される。処理液供給工程において、基板Wは、所定の処理液回転速度、たとえば、10rpm以上100rpm以下の回転速度で回転される。
基板Wの回転速度が10rpmであるとき、基板Wは6秒間で回転軸線A1の周りを一周する。したがって、基板Wの回転速度が10rpmであるときに基板Wの周縁部150に向けて処理液を6秒間供給すれば、基板Wの周縁部150の全周に満遍なく処理液を供給することができる。
【0124】
次に、処理液の供給を停止させた状態で基板Wを回転させることによって、除去対象物を保持する処理膜を、基板Wの周縁部150に選択的に形成する処理膜形成工程(ステップS3)が実行される。処理膜形成工程では、まず、上側処理液バルブ42Bおよび下側処理液バルブ47Bが閉じられる。これにより、
図9Bに示すように、基板Wに対する処理液の供給が停止される。
【0125】
基板Wの周縁部150への処理液の供給が停止された状態で基板Wを回転させることによって、周縁部150から処理液の一部が排除されて、周縁部150に存在する処理液の量が低減される。また、基板Wの回転によって処理液中の少なくとも一部の溶媒が蒸発(揮発)されて、処理液接触領域R1に存在する処理液が固まる。つまり、
図9Bに示すように、周縁部150に選択的に処理膜100が形成される(処理膜形成工程)。このように、スピンモータ23(基板回転ユニット)が、処理膜形成ユニットとして機能する。
【0126】
処理膜形成工程においても、中央気体ノズル8、上側周縁気体ノズル13および下側周縁気体ノズル18からの気体の吐出が継続されている。そのため、これらのノズルから吐出される気体によって形成される気流によって、基板Wの周縁部150に付着している処理液の付近に存在する気体状態の溶媒が基板Wの先端153よりも外側に押し出される(周縁吹付工程)。そのため、基板Wの周縁部150に付着している処理液からの溶媒の蒸発が促進される(蒸発促進工程)。このように、中央気体ノズル8、上側周縁気体ノズル13および下側周縁気体ノズル18も、処理膜形成ユニットとして機能する。
【0127】
図9Cは、処理膜形成工程において、上側周縁ノズルおよび下側周縁ノズルから回転方向Rにずれた位置の周縁部150の様子を示している。
図9Cに示すように、処理膜形成工程において、ヒータユニット6は、近接位置に配置される。これにより、基板Wの周縁部150は、ヒータユニット6によって加熱される(周縁加熱工程)。そのため、周縁部150に付着している処理液中の溶媒の蒸発が促進される(蒸発促進工程)。このように、ヒータユニット6も、処理膜形成ユニットとして機能する。
【0128】
処理膜形成工程では、基板W所定の処理膜形成回転速度で回転される。処理膜形成回転速度は、たとえば、10rpm以上100rpm以下の回転速度である。処理膜形成工程は、所定時間、たとえば、1~6秒間実行される。 次に、基板Wの周縁部150から処理膜100を除去する処理膜除去工程(ステップS4)が実行される。具体的には、ヒータユニット6を離間位置に移動させた後、第2支持アーム36Aが処理位置に位置する状態で、上側処理膜除去液バルブ43Bおよび下側処理膜除去液バルブ48Bが開かれる。これにより、
図9Dに示すように、回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151に向けて、上側処理膜除去液ノズル10から処理膜除去液が供給(吐出)される(上側処理膜除去液供給工程、上側処理膜除去液吐出工程)。
【0129】
上側処理膜除去液ノズル10からの処理膜除去液の吐出と同時に、回転状態の基板Wの周縁部150の下側面部152に向けて、下側処理膜除去液ノズル15から処理液が供給(吐出)される(下側処理膜除去液供給工程、下側処理膜除去液吐出工程)。
回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151および下側面部152に着液した処理膜除去液には遠心力が作用する。これにより、周縁部150において、上側処理膜除去液着液位置UP2(下側処理膜除去液着液位置DP2)よりも基板Wの先端側にも処理膜除去液が行き渡る。つまり、周縁部150に選択的に処理膜除去液が供給される。周縁部150において処理膜除去液と接触する略円環状の領域を処理膜除去液接触領域R2という。
【0130】
周縁部150に選択的に処理膜除去液が供給されることにより、
図9Eに示すように、基板Wの周縁部150から処理膜100が剥離されて除去される(処理膜除去工程)。剥離された処理膜100は、処理膜除去液とともに基板Wの周囲に飛散して基板Wの周縁部150から排除される。
上側処理膜除去液ノズル10および下側処理膜除去液ノズル15からの処理膜除去液の供給は、所定時間、たとえば、30秒の間継続される。処理膜除去工程において、基板Wは、所定の処理膜除去回転速度、たとえば、600rpmで回転される。
【0131】
ただし、処理膜除去回転速度は、処理液回転速度よりも高いことが好ましい。たとえば、処理膜除去回転速度が600rpmであり、処理液回転速度が100rpmであることが好ましい。
次に、基板Wの周縁部150に付着している処理膜除去液をリンス液で洗い流すリンス工程(ステップS5)が実行される。具体的には、上側処理膜除去液バルブ43Bおよび下側処理膜除去液バルブ48Bが閉じられる。これにより、上側処理膜除去液ノズル10および下側処理膜除去液ノズル15からの処理膜除去液の吐出が停止される。
【0132】
そして、第2支持アーム36Aを処理位置に維持した状態で、上側リンス液バルブ44Bおよび下側リンス液バルブ49Bが開かれる。これにより、
図9Fに示すように、回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151に向けて、上側リンス液ノズル11からリンス液が供給(吐出)される(上側リンス液供給工程、上側リンス液吐出工程)。
上側リンス液ノズル11からのリンス液の吐出と同時に、回転状態の基板Wの周縁部150の下側面部152に向けて、下側リンス液ノズル16からリンス液が供給(吐出)される(下側リンス液供給工程、下側リンス液吐出工程)。
【0133】
回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151および下側面部152に着液したリンス液には遠心力が作用する。これにより、周縁部150において、上側リンス液着液位置UP3(下側リンス液着液位置DP3)よりも基板Wの先端側にもリンス液が行き渡る。つまり、周縁部150に選択的にリンス液が供給される。周縁部150においてリンス液と接触する略円環状の領域をリンス液接触領域R3という。
【0134】
周縁部150にリンス液が供給されることにより、基板Wの周縁部150に付着している処理膜除去液がリンス液で置換されて基板Wの周縁部150から除去される。処理膜除去液は、リンス液とともに基板Wの周囲に飛散して基板Wの周縁部150から排除される。
上側リンス液ノズル11および下側リンス液ノズル16からのリンス液の供給は、所定時間、たとえば、1秒以上6秒以下の間の時間継続される。リンス工程において、基板Wは、所定のリンス回転速度、たとえば、10rpm以上100rpm以下の回転速度で回転される。
【0135】
前述したように基板Wの回転速度が10rpmであるとき、基板Wは6秒間で回転軸線A1の周りを一周する。したがって、基板Wの回転速度が10rpmであるときに基板Wの周縁部150に向けてリンス液を6秒間供給すれば、基板Wの周縁部150の全周に満遍なくリンス液を供給することができる。
次に、基板Wの周縁部150に残渣除去液を供給することによって、基板Wの周縁部150に付着している処理膜100の残渣を除去する残渣除去工程(ステップS6)が実行される。具体的には、第2支持アーム36Aを処理位置に維持した状態で、上側リンス液バルブ44Bおよび下側リンス液バルブ49Bが閉じられる。これにより、上側リンス液ノズル11および下側リンス液ノズル16からのリンス液の吐出が停止される。
【0136】
その代わりに、第2支持アーム36Aを処理位置に維持した状態で、上側残渣除去液バルブ45Bおよび下側残渣除去液バルブ50Bが開かれる。これにより、
図9Gに示すように、回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151に向けて、上側残渣除去液ノズル12から残渣除去液が供給(吐出)される(上側残渣除去液供給工程、上側残渣除去液吐出工程)。
【0137】
上側残渣除去液ノズル12からの残渣除去液の吐出と同時に、回転状態の基板Wの周縁部150の下側面部152に向けて、下側残渣除去液ノズル17から残渣除去液が供給(吐出)される(下側残渣除去液供給工程、下側残渣除去液吐出工程)。
回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151および下側面部152に着液した残渣除去液には遠心力が作用する。これにより、周縁部150において、上側残渣除去液着液位置UP4および下側残渣除去液着液位置DP4よりも基板Wの先端側にも残渣除去液が行き渡る。つまり、周縁部150に選択的に残渣除去液が供給される。周縁部150において残渣除去液と接触する略円環状の領域を残渣除去液接触領域R4(低表面張力液体接触領域)という。
【0138】
これにより、基板Wの周縁部150に付着しているリンス液が残渣除去液で置換されて基板Wの周縁部150から除去される(置換工程)。リンス液が残渣除去液に置換される際、基板Wの周縁部150に付着している処理膜100の残渣が残渣除去液に溶解される。残渣除去液に溶解された処理膜100の残渣は、残渣除去液とともに基板Wの周囲に飛散して基板Wの周縁部150から排除される。
【0139】
上側残渣除去液ノズル12および下側残渣除去液ノズル17からの残渣除去液の供給は、所定時間、たとえば、1秒以上6秒以下の間の時間継続される。残渣除去工程において、基板Wは、所定の残渣除去回転速度、たとえば、10rpm以上100rpm以下の回転速度で回転される。
基板Wの回転速度が10rpmであるとき、基板Wは6秒間で回転軸線A1の周りを一周する。したがって、基板Wの回転速度が10rpmであるときに基板Wの周縁部150に向けて残渣除去液を6秒間供給すれば、基板Wの周縁部の全周に満遍なく残渣除去液を供給することができる。これにより、基板Wの周縁部150の全周から処理膜100の残渣を除去することができる。
【0140】
残渣除去工程の後、スピンドライ工程(ステップS7)が実行される。スピンドライ工程では、上側残渣除去液バルブ45Bおよび下側残渣除去液バルブ50Bが閉じられて、基板Wの回転が加速される。スピンドライ工程では、基板Wは、所定の乾燥回転速度、たとえば、1500rpmで回転される。それによって、大きな遠心力が基板W上の残渣除去液に作用し、基板Wの周縁部150に付着している残渣除去液が基板Wの周囲に振り切られる。スピンドライ工程では、中央気体ノズル8、上側周縁気体ノズル13および下側周縁気体ノズル18から吐出される気体が形成する気流によって、基板Wの周縁部150の乾燥が促進される。
【0141】
そして、スピンモータ23が基板Wの回転を停止させる。ガード昇降ユニット74が第1ガード71Aおよび第2ガード71Bを下位置に移動させる。そして、第1中央気体バルブ40B、上側周縁気体バルブ46Bおよび下側周縁気体バルブ51Bが閉じられる。そして、第2アーム移動ユニット36Bが第2支持アーム36Aとともに複数の上側周縁ノズルをホーム位置に移動させる。そして、第1アーム移動ユニット35Bが第1支持アーム35Aとともに中央気体ノズル8をホーム位置に移動させる。
【0142】
その後、吸引バルブ28が閉じられる。その後、搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する(ステップS8)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
図10は、基板処理において基板Wの周縁部150に液体に接触している領域について説明するための模式図である。基板Wの周縁部150において各液体が接触する領域の位置は、上述した基板処理の工程毎に異なる。
【0143】
詳しくは、処理膜除去液接触領域R2の回転径方向内方端は、処理液接触領域R1よりも基板Wの中央部側に位置している。リンス液接触領域R3の回転径方向内方端は、処理膜除去液接触領域R2よりも基板Wの中央部側に位置している。残渣除去液接触領域R4(低表面張力液体接触領域)の回転径方向内方端は、リンス液接触領域R3よりも基板Wの中央部側に位置している。
【0144】
図11A~
図11Cを用いて、処理膜100の除去の様子を詳細に説明する。
図11A~
図11Cは、処理膜100が基板Wの周縁部150から除去される様子を説明するための模式図である。
処理膜100は、
図11Aに示すように、除去対象物103を保持している。詳しくは、処理膜100は、高溶解性固体110(固体状態の高溶解性成分)と、低溶解性固体111(固体状態の低溶解性成分)とを有する。高溶解性固体110および低溶解性固体111は、処理液に含有される溶媒の少なくとも一部が蒸発することによって形成される。
【0145】
処理膜100中には、高溶解性固体110と低溶解性固体111とが混在している。厳密には、処理膜100は、高溶解性固体110と低溶解性固体111とが処理膜100の全体に均一に分布しているわけではない。処理膜100には、高溶解性固体110が偏在している部分と、低溶解性固体111が偏在している部分とが存在している。
図11Bを参照して、処理膜除去液によって、高溶解性固体110が溶解される。すなわち、処理膜100が部分的に溶解される。高溶解性固体110が溶解されることによって、処理膜100において高溶解性固体110が偏在している部分に貫通孔102が形成される(貫通孔形成工程)。
【0146】
貫通孔102は、特に、基板Wの上面の法線方向T(処理膜100の厚さ方向でもある)に高溶解性固体110が延びている部分に形成されやすい。貫通孔102は、平面視で、たとえば、直径数nmの大きさである。
処理膜除去液に対する低溶解性成分の溶解性は低く、低溶解性固体111は処理膜除去液によって殆ど溶解されない。そのため、低溶解性固体111は、処理膜除去液によってその表面付近が僅かに溶解されるだけである。そのため、貫通孔102を介して基板Wの上面付近まで到達した処理膜除去液は、低溶解性固体111において基板Wの上面付近の部分を僅かに溶解させる。これにより、
図11Bの拡大図に示すように、処理膜除去液が、基板Wの上面付近の低溶解性固体111を徐々に溶解させながら、処理膜100と基板Wの上面との間の隙間G1に進入していく(除去液進入工程)。
【0147】
そして、たとえば、貫通孔102の周縁を起点として処理膜100が分裂して膜片105となり、
図11Cに示すように、処理膜100の膜片105が除去対象物103を保持している状態で基板Wから剥離される(処理膜分裂工程、処理膜剥離工程)。そして、処理膜除去液の供給を継続することによって、膜片105となった処理膜100が、除去対象物103を保持している状態で、処理膜除去液によって洗い流されて(基板W外に押し出されて)、基板Wの上面から除去される(除去対象物除去工程)。
【0148】
第1実施形態によれば、基板Wの周縁部150に供給された処理液が固化または硬化されることによって、基板Wの周縁部150に存在する除去対象物103を保持する処理膜100が基板Wの周縁部150に選択的に形成される。その後、基板Wの周縁部150に処理膜除去液を供給することによって、除去対象物103を保持している状態の処理膜100を基板Wの周縁部150から基板W外に除去することができる。
【0149】
そのため、処理膜100を形成することなく処理膜除去液等の液体を用いて除去対象物103を基板W外に押し流す場合と比較して、処理膜除去液の流れを受ける除去対象物103の見かけのサイズを大きくすることができる。そのため、基板Wの周縁部150を流れる残渣除去液から除去対象物103が受けるエネルギーを増大させることができる。したがって、除去対象物103を基板Wから効率良く除去できる。
【0150】
また、基板Wの周縁部150にブラシ等の固体を押し付けることなく、基板Wの周縁部150および処理膜100と液体(処理膜除去液)との接触によって基板Wの周縁部150から除去対象物103を除去することができる。したがって、ブラシ等の部材を基板Wの周縁部150に押し付ける構成と比較して、基板Wの周縁部150に作用する物理力を抑制することができる。
【0151】
また、基板Wの周縁部150への処理液の供給時および基板Wの周縁部150への処理膜除去液の供給時において、基板Wが回転されている。そのため、基板Wの周縁部150に供給された処理液や処理膜除去液には遠心力が作用する。基板Wの周縁部150に供給された処理液や処理膜除去液に作用する遠心力は、基板Wの回転速度に依存する。そのため、基板Wの回転速度を調整することによって、処理液や処理膜除去液が基板Wの周縁部150において回転径方向内方に達する位置を、精度良く管理することができる。
【0152】
以上のように、基板Wの周縁部150に作用する物理力を抑制しつつ、基板Wの周縁部150において除去対象物103が除去される領域(処理液接触領域R1、処理膜除去液接触領域R2、リンス液接触領域R3および残渣除去液接触領域R4)を精度よく管理することができる。さらに、基板Wの周縁部150から除去対象物103を効率良く除去できる。
【0153】
第1実施形態によれば、処理液が固化または硬化されることによって処理液接触領域R1に処理膜100が形成される。基板Wの周縁部150に接する液体は、回転の遠心力に起因して、基板Wの先端側に移動する。そのため、処理膜除去液接触領域R2の回転径方向内方端位置が、処理液接触領域R1よりも基板Wの中央部側であれば、基板Wの周縁部150に形成された処理膜100を確実に除去することができる。
【0154】
第1実施形態によれば、リンス液接触領域R3の回転径方向内方端が処理膜除去液接触領域R2よりも基板Wの中央部側に位置する。そのため、基板Wの周縁部150に付着している処理膜除去液をリンス液で確実に洗い流すことができる。
周縁部150において上側処理膜除去液着液位置UP2や下側処理膜除去液着液位置DP2に衝突した処理膜除去液が跳ね返って上側処理膜除去液着液位置UP2や下側処理膜除去液着液位置DP2よりも基板の中央部側に付着する場合がある。このような場合であっても、処理膜除去液接触領域R2よりも基板Wの中央部側にリンス液接触領域R3の回転径方向内方端が位置するようにリンス液を供給すれば、当該付着した処理膜除去液をリンス液で洗い流すことができる。
【0155】
第1実施形態によれば、残渣除去液接触領域R4の回転径方向内方端がリンス液接触領域R3よりも基板Wの中央部側に位置する。そのため、周縁部150に付着しているリンス液を残渣除去液で確実に置換することができる。
この基板処理のスピンドライ工程では、基板W上のリンス液が振り切られることによって、基板Wの上面が乾燥されるのではなく、基板W上のリンス液が残渣除去液によって置換された後に、基板W上の残渣除去液が振り切られることによって基板Wの上面が乾燥される。前述したように、残渣除去液は、リンス液よりも表面張力が低い低表面張力液体でもある。つまり、リンス液よりも表面張力が低い残渣除去液で置換された後にスピンドライ工程が実行される。そのため、基板Wの上面が乾燥される際に基板Wの周縁部150に作用する表面張力を低減することができる。
【0156】
なお、残渣除去液接触領域R4の回転径方向内方端は、処理膜除去液接触領域R2よりも基板Wの中央部側に位置する。そのため、処理膜除去液によって処理膜100を除去する際に発生した処理膜100の残渣を残渣除去液に溶解させて周縁部150から除去することができる。
周縁部150において上側リンス液着液位置UP3や下側リンス液着液位置DP3に衝突したリンス液が跳ね返って上側リンス液着液位置UP3や下側リンス液着液位置DP3よりも基板Wの中央部側に付着する場合がある。このような場合であっても、リンス液接触領域R3よりも基板Wの中央部側に残渣除去液接触領域R4の回転径方向内方端が位置するように残渣除去液を供給すれば、当該付着したリンス液を残渣除去液で置換することができる。
【0157】
また、処理膜除去液として、内側領域154に付着するとデバイスを損傷させるおそれがある液体(たとえば、アンモニア水)が用いられる場合がある。このような場合であっても、処理膜除去工程における基板Wの回転速度を処理液供給工程における基板Wの回転速度よりも高くして基板W上の処理膜除去液に作用する遠心力を増大させることによって、処理液接触領域R1が基板Wの中央部側に広がることを抑制できる。
【0158】
第1実施形態によれば、基板Wの周縁部150の加熱や基板Wの周縁部150への気体の吹き付けによって、処理液中の溶媒の蒸発が促進される。これにより、処理膜100を効率良く形成することができる。
第1実施形態によれば、基板Wの周縁部150の上側面部151および下側面部152の両方に処理液を着液させるので、周縁部150の全体に処理液を行き渡らせやすい。
【0159】
第1実施形態によれば、上側処理液ノズル9から処理液が吐出される方向は、下方に向かうほど基板Wの先端側に向かうように、鉛直方向に対して傾斜している。そのため、基板Wの周縁部150の上側面部151に着液する処理液が上側処理液着液位置UP1よりも基板Wの中央部側に飛散することを抑制できる。
また、処理液供給工程~残渣除去工程では、上側周縁気体バルブ46Bおよび下側周縁気体バルブ51Bが開かれている。そのため、仮に、着液時の衝撃によって液体が着液位置から基板Wの中央部側に向けて飛散した場合であっても、液体の飛沫は、上側周縁気体ノズル13および下側周縁気体ノズル18から吐出される気体によって形成される水平方向の気流によって基板Wの外側に向けて押し戻される。
【0160】
さらに、中央気体ノズル8から吐出される気体によって形成される流れによっても、液体の飛沫を基板Wの外側に向けて押し戻すことができる。
第1実施形態によれば、処理膜除去液が処理膜100を部分的に溶解させることによって貫通孔102が形成される。そのため、処理膜除去液は、貫通孔102を介して処理膜100を通過し、処理膜100と基板Wの周縁部150との界面付近に速やかに到達することができる。したがって、処理膜100と基板Wの周縁部150との界面に処理膜除去液を作用させて処理膜100を基板Wの周縁部150から効率良く剥離することができる。その結果、基板Wの周縁部150から除去対象物103を効率良く除去することができる。
【0161】
第1実施形態によれば、処理膜除去液が、貫通孔102を介して、処理膜100と基板Wの周縁部150との間に進入する(除去液進入工程)。そのため、処理膜100と基板Wの周縁部150との界面に処理膜除去液を作用させて処理膜100を基板Wの周縁部150から一層効率良く剥離することができる。
第1実施形態によれば、処理膜除去液に対する高溶解性成分の溶解性は、処理膜除去液に対する低溶解性成分の溶解性よりも高い。そのため、高溶解性成分によって形成される高溶解性固体110は、低溶解性成分によって形成される低溶解性固体111よりも処理膜除去液に溶解しやすい。
【0162】
そのため、処理膜除去液によって高溶解性固体110を溶解して貫通孔102を確実に形成しつつ、処理膜除去液に低溶解性固体111を溶解させずに低溶解性固体111を固体状態に維持することができる。したがって、低溶解性固体111で除去対象物103を保持しながら、低溶解性固体111と基板Wの周縁部150との界面に処理膜除去液を作用させることができる。その結果、処理膜100を基板Wの周縁部150から速やかに剥離しつつ、処理膜100とともに除去対象物103を基板Wの周縁部150から効率良く除去することができる。
【0163】
図12は、第1実施形態に係る基板処理装置1による基板処理の第1変形例を説明するための模式図である。基板処理の第1変形例では、第1実施形態の基板処理装置1による基板処理とは異なり、下側周縁ノズルからの液体や気体の吐出が行われない。
基板Wの周縁部150の上側面部151に着液した液体は、回転の遠心力に起因して、基板Wの先端側に移動する。そのため、基板処理の第1変形例では、基板Wの先端側に移動した液体は、基板Wの先端153を介して、周縁部150の下側面部152に移動する(回り込む)。液体の回り込みやすさは、基板Wの回転速度によって異なる。詳しくは、基板Wの回転速度が低いほど、下側面部152への回り込む量が多く、下側面部152において基板Wの中央部側に到達する距離が大きい。
【0164】
そのため、残渣除去工程における基板Wの回転速度を処理膜形成工程における基板Wの回転速度よりも低くすることによって、残渣除去液を、下側面部152において処理膜100(
図12の二点鎖線を参照)よりも基板Wの中央部側に到達させることができる。たとえば、処理膜形成回転速度が1500rpmであり、残渣除去回転速度が600rpmであれば、残渣除去液を処理膜100よりも基板Wの中央部側に到達させることができる。
【0165】
したがって、下側面部152において周縁部150に存在する処理膜100の残渣を残渣除去液に溶解させて基板の周縁部150から処理膜100の残渣を良好に除去することができる。
また、何かしらの原因で、下側面部152において処理膜除去液の到達位置よりも基板Wの中央部側にまで処理膜100が及んでおり、処理膜除去液によって処理膜100を除去しきれていないことも想定し得る。
【0166】
このような場合であっても、残渣除去工程における基板Wの回転速度を処理膜形成工程における基板Wの回転速度よりも低くすることによって、処理膜除去液によって除去されずに下側面部152に残っている処理膜100を溶解させて除去することができる。
上述した第1実施形態では、上側面部151および下側面部152の両方に向けて、処理液、リンス液、処理膜除去液および残渣除去液が供給される。また、
図12に示す第1変形例では、上側面部151のみに向けて液体および気体の供給が行われる。
【0167】
これらの基板処理とは異なり、処理液およびリンス液が上側面部151に供給され、処理膜除去液が下側面部152のみに向けて供給されてもよい。同様に、処理液およびリンス液が上側面部151に供給され、残渣除去液が下側面部152のみに向けて供給されてもよい。
また、処理液およびリンス液が上側面部151に供給され、処理膜除去液が上側面部151および下側面部152の両方に向けて供給されてもよい。また、処理液およびリンス液が上側面部151に供給され、残渣除去液が上側面部151および下側面部152の両方に向けて供給されてもよい。
【0168】
上側面部151に向けて処理液を供給して処理膜100を形成した後、上側面部151および下側面部152の両方に向けて処理膜除去液を供給する構成であれば、基板Wの先端153を介して上側面部151から下側面部152に移動した処理液によって形成された処理膜100を除去することができる。
図13Aおよび
図13Bは、第1実施形態に係る基板処理装置1による基板処理の第2変形例を説明するための模式図である。第1実施形態に係る基板処理装置1による基板処理の第2変形例では、
図13Aに示すように、処理液供給工程において、まず、下側処理液ノズル14からの処理液の吐出が開始される。下側処理液ノズル14からの処理液の吐出が開始されるとき、基板Wの回転速度は、たとえば、100rpmである。
【0169】
図13Bに示すように、基板Wの周縁部150の下側面部152に処理液が着液した後、上側処理液ノズル9からの処理液の吐出が開始される。基板Wの周縁部150の上側面部151への処理液の着液(供給)を開始する際に、基板Wの回転が減速される(回転減速工程)。上側処理液ノズル9からの処理液の吐出が開始されるとき、基板Wの回転速度は、たとえば、50rpmである。
【0170】
このように、処理液供給工程において、下側処理液ノズル14からの処理液の吐出が、上側処理液ノズル9からの処理液の吐出よりも先に開始される。言い換えると、基板Wの周縁部150の下側面部152への処理液の着液が、基板Wの周縁部150の上側面部151への処理液の着液よりも先に開始される。
上側面部151および下側面部152の両方に処理液を着液させる場合、上側面部151および下側面部152のそれぞれに着液した処理液は、周縁部150の表面に沿って互いに押し戻し合うため、着液位置よりも基板Wの中央部側に移動するおそれがある。
【0171】
上側面部151および下側面部152の一方側への処理液の着液の開始を、上側面部151および下側面部152の他方側への処理液の着液の開始よりも遅らせた場合には、当該一方側に着液した処理液は、当該他方側に着液した処理液による押し戻しの影響を受けにくい。
第2変形例の基板処理によれば、上側面部151への処理液の着液の開始が、下側面部152への処理液の着液の開始よりも遅い。そのため、上側面部151に着液した処理液は、下側面部152に着液した処理液による押し戻しの影響を受けにくい。そのため、上側面部151において処理液が上側処理液着液位置UP1よりも基板Wの中央部側に移動する距離が大きくなることを抑制できる。これにより、上側面部151において処理液接触領域R1を制御できる。その結果、内側領域154において上側面部151に近接する場合にデバイスの損傷を抑制できる。
【0172】
基板Wの回転速度が低いほど、遠心力の影響が低減されるので、処理液が着液する面から反対側の面へ回り込む処理液の量(回り込み量)が多くなる。そのため、基板Wの回転速度が低いほど、処理液が着液する面から反対側の面において基板Wの中央部側に処理液が到達する距離が大きくなる。
基板処理の第2変形例では、上側面部151への処理液の着液を開始する際に、基板Wの回転が減速される。これにより、上側面部151への回り込み量を減少させることができる。そのため、上側面部151において処理液が上側処理液着液位置UP1よりも基板Wの中央部側に広がることを抑制できる。
【0173】
図13Aおよび
図13Bでは、処理液供給工程について説明したが、処理膜除去工程、リンス工程および処理膜残渣除去工程においても同様に、基板Wの周縁部150の下側面部152への液体の着液が、基板Wの周縁部150の上側面部151への液体の着液よりも先に開始されてもよい。
図14A~
図14Dは、第1実施形態に係る基板処理装置1による基板処理の第3変形例を説明するための模式図である。第1実施形態に係る基板処理装置1による基板処理の第3変形例では、処理液供給工程において、
図14Aに示すように、上側処理液ノズル9を平面視で基板Wの周縁部150よりも外側に配置した状態で上側処理液ノズル9からの処理液の吐出を開始する。
【0174】
そして、上側処理液ノズル9からの処理液の吐出を継続したまま上側処理液ノズル9を基板Wの中央部側に移動させる。上側処理液ノズル9を基板Wの中央部側に移動させることによって、
図14Bに示すように、基板Wの周縁部150の上側面部151への処理液の着液が開始される。これにより、基板Wの周縁部150への処理液の供給が開始される(処理液供給開始工程)。
【0175】
その後、
図14Cに示すように、上側処理液ノズル9からの処理液の吐出を維持しながら、下側処理液ノズル14からの処理液の吐出が開始される。下側処理液ノズル14からの処理液の吐出が所定時間継続された後、下側処理液ノズル14からの処理液の吐出が停止される。その後、
図14Dに示すように、上側処理液ノズル9からの処理液の吐出を継続したまま平面視における基板Wの周縁部150よりも外側に上側処理液ノズル9を移動させることによって、基板Wの周縁部150の上側面部151への処理液の供給が終了される(処理液供給終了工程)。
【0176】
上側処理液ノズル9から吐出が開始された直後の処理液は、基板Wに着液する際の衝撃によって、放射状に広がりやすい。そのため、上側処理液ノズル9を基板Wの周縁部150の上側面部151に対向させた状態で上側処理液ノズル9からの処理液の吐出を開始すると、基板Wの周縁部150に着液する際の衝撃によって基板W上の意図しない位置にまで処理液が広がるおそれがある。
【0177】
第3変形例の基板処理によれば、処理液を吐出している状態の上側処理液ノズル9を基板Wの中央部側に移動させることによって、上側面部151への処理液の供給が開始される。吐出開始直後でない処理液を上側面部151に供給できる。基板Wの上側面部151において意図しない位置にまで処理液が広がることを抑制できる。
上側処理液ノズル9から処理液の吐出を終了する際には、上側処理液ノズル9から吐出される処理液が液滴状態となる場合がある。そのため、上側処理液ノズル9を上側面部151に対向させた状態で上側処理液ノズル9からの処理液の吐出を停止すると、上側面部151に存在する処理液に処理液の液滴が衝突し、上側面部151における処理液の均一な広がりが阻害されるおそれがある。さらに、処理液の液滴が基板Wに着液した場合、液滴が上側面部151に着液する際の衝撃によって、上側面部151の意図しない位置にまで処理液が広がるおそれがある。
【0178】
第3変形例の基板処理によれば、処理液を吐出している状態の上側処理液ノズル9を、平面視において基板Wの周縁部150よりも外側に向けて移動させることによって、基板Wの周縁部150への処理液の供給を終了する。そのため、液滴状態の処理液が落下して上側面部151に付着することを抑制できる。
<第2実施形態>
図15は、第2実施形態に係る基板処理装置1Pに備えられる処理ユニット2の概略構成を示す模式的な部分断面図である。
図15において、前述の
図1~
図14Dに示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。後述する
図16A~
図17Fにおいても同様に、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0179】
図15を参照して、第2実施形態に係る処理ユニット2が第1実施形態に係る処理ユニット2(
図3を参照)と主に異なる点は、第2支持アーム36Aがカバー部材90を含む点と、複数の下側周縁ノズルが設けられていない点である。
図16Aは、カバー部材90の断面図である。
図16Bは、カバー部材90およびその周辺の平面図である。カバー部材90には、水平方向の一方側からカバー部材90を切り欠く切り欠き溝91が形成されている。切り欠き溝91の底部は、基板Wの周縁部150に沿って湾曲している。カバー部材90は、水平方向に延びる上側対向部90Aと、上側対向部90Aの下方で水平方向に延びる下側対向部90Bと、上側対向部90Aおよび下側対向部90Bを連結する先端対向部90Cとを含む。
【0180】
第1実施形態と同様に、第2支持アーム36Aは、水平方向において、処理位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動する。第2実施形態における第2支持アーム36Aの処理位置は、
図16Aに示す位置であり、
図16Bに実線で示す位置である。
カバー部材90は、第2支持アーム36Aが処理位置に位置するときに、基板Wの回転方向Rにおける少なくとも一部において基板Wの周縁部150を覆う。第2支持アーム36Aが処理位置に位置するとき、複数の上側周縁ノズルは、基板Wの周縁部150の上側面部151に対向する。
【0181】
第2実施形態における第2支持アーム36Aのホーム位置は、
図16Bに二点鎖線で示す位置である。第2支持アーム36Aがホーム位置に位置するとき、複数の上側周縁ノズルは、基板Wの上面には対向せず、平面視において基板Wよりも外方に位置する。第1ガード71Aおよび第2ガード71Bには、ホーム位置に位置するカバー部材90と第1ガード71Aおよび第2ガード71Bとの干渉を回避するための窪み75が形成されている。第2支持アーム36Aがホーム位置に位置するとき、カバー部材90は、窪み75に収容される。
【0182】
第2支持アーム36Aが処理位置に位置するとき、上側対向部90Aは、基板Wの上側面部151に間隔を隔てて上方から対向する。第2支持アーム36Aが処理位置に位置するとき、下側対向部90Bは、基板Wの下側面部152に間隔を隔てて下方から対向する。第2支持アーム36Aが処理位置に位置するとき、先端対向部90Cは、基板Wの先端153に間隔を隔てて水平方向から対向する。
【0183】
上側処理液ノズル9、上側処理膜除去液ノズル10、上側リンス液ノズル11、上側残渣除去液ノズル12および上側周縁気体ノズル13は、それぞれ、カバー部材90から露出し、第2支持アーム36Aが処理位置に位置するときに基板Wの周縁部150に対向する複数の吐出口9a~13aを有する。
複数の上側周縁ノズルの吐出口9a~13aは、カバー部材90に設けられている。
図16Aに示すように、複数の上側周縁ノズルの吐出口9a~13aは、上側対向部90Aの下面から露出している。複数の上側周縁ノズルの吐出口9a~13aは、第2支持アーム36Aが処理位置に位置するときに基板Wの周縁部150に対向する。
【0184】
第2支持アーム36Aが処理位置に位置するとき、上側周縁気体ノズル13の吐出口13aは、上側残渣除去液ノズル12の吐出口12aよりも基板Wの中央部側でかつ上側残渣除去液ノズル12の吐出口12aよりも回転方向Rの上流側RUに位置する。
第2支持アーム36Aが処理位置に位置するとき、上側残渣除去液ノズル12の吐出口12aは、上側リンス液ノズル11の吐出口11aよりも基板Wの中央部側でかつ上側リンス液ノズル11の吐出口11aよりも回転方向Rの上流側RUに位置する。
【0185】
第2支持アーム36Aが処理位置に位置するとき、上側リンス液ノズル11の吐出口11aは、上側処理膜除去液ノズル10の吐出口10aよりも基板Wの中央部側でかつ上側処理膜除去液ノズル10の吐出口10aよりも回転方向Rの上流側RUに位置する。
第2支持アーム36Aが処理位置に位置するとき、上側処理膜除去液ノズル10の吐出口10aは、上側処理液ノズル9の吐出口9aよりも基板Wの中央部側で上側処理液ノズル9の吐出口9aよりも回転方向Rの上流側RUに位置する。
【0186】
図16Bに示すように、第2実施形態に係るプレート本体60の切り欠き60aは、処理位置に位置するカバー部材90を避けるようにプレート本体60を切り欠いている。
第2実施形態に係る基板処理装置1Pは、第1実施形態に係る基板処理装置1と同様の基板処理(
図8を参照)を実行することができる。しかしながら、処理液供給工程(ステップS2)~残渣除去工程(ステップS6)における第2支持アーム36Aおよび各上側周縁ノズルの動作が異なる。以下では、第2実施形態に係る基板処理装置1Pによる基板処理について、処理液供給工程(ステップS2)~残渣除去工程(ステップS6)を中心に説明する。
【0187】
図17A~
図17Fは、基板処理装置1Pによる基板処理の各工程の様子を説明するための模式図である。
図17A~
図17Fでは、説明の便宜上、基板Wの大きさを誇張して図示している。以下では、主に
図15~
図16Bを参照する。
図17A~
図17Fについては適宜参照する。
第2実施形態に係る基板処理における処理液供給工程(ステップS2)では、まず、スピンモータ23が、スピンベース21を回転させる。これにより、水平に保持された基板Wが回転される(基板回転工程)。
【0188】
そして、第2アーム移動ユニット36Bが、第2支持アーム36Aを処理位置に移動させる。第2支持アーム36Aが処理位置に位置する状態で、上側周縁気体バルブ46Bが開かれる。これにより、基板Wの先端側に向かう気流が形成される。
第2支持アーム36Aが処理位置に位置する状態で、上側処理液バルブ42Bが開かれる。これにより、回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151に向けて、上側処理液ノズル9から処理液が供給(吐出)される(上側処理液供給工程、上側処理液吐出工程)。
【0189】
回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151に着液した処理液には遠心力が作用する。これにより、周縁部150において、上側処理液ノズル9よりも基板Wの先端側にも処理液が行き渡り、下側面部152に回り込む。つまり、周縁部150に選択的に処理液が供給される。
上側処理液ノズル9からの処理液の供給を継続することによって、
図17Aに示すように、カバー部材90と基板Wの周縁部150との間の間隙92において上側処理液ノズル9よりも基板Wの先端側の部分が、処理液によって満たされて液密状態となる。
【0190】
上側処理液ノズル9からの処理液の供給は、所定時間、たとえば、1秒~6秒の間継続される。処理液供給工程において、基板Wは、所定の処理液回転速度、たとえば、10rpm~100rpmで回転される。
前述したように基板Wの回転速度が10rpmであるとき、基板Wは6秒間で回転軸線A1の周りを一周する。したがって、基板Wの回転速度が10rpmであるときに基板Wの周縁部150に向けて処理液を6秒間供給すれば、基板Wの周縁部150の全周に満遍なく処理液を供給することができる。
【0191】
なお、第1実施形態と同様に、第1中央気体バルブ40Bおよび第2中央気体バルブ41Bは、基板保持工程が開始されてからスピンドライ工程(ステップS7)が終了するまでの間、開かれた状態で維持される。そのため、基板保持工程が開始されてからスピンドライ工程(ステップS7)が終了するまでの間、中央気体ノズル8から気体が吐出され続ける。
【0192】
次に、処理膜形成工程(ステップS3)が実行される。処理膜形成工程では、まず、上側処理液バルブ42Bおよび上側周縁気体バルブ46Bが閉じられる。これにより、基板Wに対する処理液および気体の供給が停止される。上側処理液バルブ42Bおよび上側周縁気体バルブ46Bが閉じられた状態で、第2アーム移動ユニット36Bが、第2支持アーム36Aをホーム位置に移動させる。
【0193】
基板Wの周縁部150への処理液の供給が停止された状態で基板Wを回転させることによって、周縁部150から処理液の一部が排除され、周縁部150に存在する処理液の量が低減される。また、基板Wの回転によって処理液中の少なくとも一部の溶媒が蒸発(揮発)されて、処理液接触領域R1に存在する処理液が固まる。つまり、
図17Bに示すように、周縁部150に選択的に処理膜100が形成される(処理膜形成工程)。このように、スピンモータ23(基板回転ユニット)が、処理膜形成ユニットとして機能する。
【0194】
第2支持アーム36Aがホーム位置に退避した後に、ヒータ昇降ユニット64がヒータユニット6を近接位置に位置させる。これにより、基板Wの周縁部150は、ヒータユニット6によって加熱される(周縁加熱工程)。そのため、周縁部150に付着している処理液中の溶媒の蒸発が促進される(蒸発促進工程)。このように、ヒータユニット6も、処理膜形成ユニットとして機能する。
【0195】
処理膜形成工程においても、中央気体ノズル8からの気体の吐出が継続されている。そのため、これらのノズルから吐出される気体によって形成される気流によって、基板Wの周縁部150に付着している処理液の付近に存在する気体状態の溶媒が基板Wの先端153よりも外側に押し出される(周縁吹付工程)。そのため、基板Wの周縁部150に付着している処理液からの溶媒の蒸発が促進される(蒸発促進工程)。
【0196】
処理膜形成工程では、スピンモータ23が、基板Wの回転速度を所定の処理膜形成回転速度に変更する。処理膜形成回転速度は、たとえば、1500rpmである。処理膜形成工程は、所定時間、たとえば、30秒間実行される。
次に、処理膜除去工程(ステップS4)が実行される。具体的には、ヒータユニット6を離間位置に移動させた後、第2アーム移動ユニット36Bが、第2支持アーム36Aを処理位置に移動させる。
【0197】
第2支持アーム36Aが処理位置に位置する状態で、上側処理膜除去液バルブ43Bおよび上側周縁気体バルブ46Bが開かれる。これにより、回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151に向けて、上側処理膜除去液ノズル10から処理膜除去液が供給(吐出)される(上側処理膜除去液供給工程、上側処理膜除去液吐出工程)。
回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151に着液した処理膜除去液には、遠心力が作用する。これにより、周縁部150において、上側処理膜除去液ノズル10よりも基板Wの先端側にも処理膜除去液が行き渡り、下側面部152に回り込む。つまり、周縁部150に選択的に処理膜除去液が供給される。処理膜除去液接触領域R2の回転径方向内方端は、処理液接触領域R1よりも基板Wの中央部側に位置する(
図10を参照)。
【0198】
上側処理膜除去液ノズル10からの処理膜除去液の供給を継続することによって、
図17Cに示すように、間隙92において上側処理膜除去液ノズル10よりも先端側の部分が処理膜除去液によって満たされて液密状態となる。
周縁部150への処理膜除去液の供給を継続することで、
図17Dに示すように、基板Wの周縁部150から処理膜100が剥離されて除去される(処理膜除去工程)。剥離された処理膜100は、処理膜除去液とともに基板Wの周囲に飛散して基板Wの周縁部150から排除される。処理膜除去工程において処理膜100が剥離される様子は、第1実施形態と同様(
図11A~
図11Cを参照)である。
【0199】
上側処理膜除去液ノズル10からの処理膜除去液の供給は、所定時間、たとえば、30秒の間継続される。処理膜除去工程において、基板Wは、所定の処理膜除去回転速度、たとえば、600rpmで回転される。
ただし、処理膜除去回転速度は、処理液回転速度よりも高いことが好ましい。たとえば、処理膜除去回転速度が600rpmであり、処理液回転速度が100rpmであることが好ましい。
【0200】
次に、リンス工程(ステップS5)が実行される。具体的には、第2支持アーム36Aが処理位置に位置する状態で、上側処理膜除去液バルブ43Bが閉じられる。これにより、上側処理膜除去液ノズル10からの処理膜除去液の吐出が停止される。
その代わりに、上側リンス液バルブ44Bが開かれる。これにより、回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151に向けて、上側リンス液ノズル11からリンス液が供給(吐出)される(上側リンス液供給工程、上側リンス液吐出工程)。
【0201】
基板Wの周縁部150の上側面部151に供給されたリンス液によって、
図17Eに示すように、間隙92内の処理膜除去液が、リンス液によって置換される。これにより、処理膜除去液が間隙92から除去されて、間隙92において上側リンス液ノズル11よりも先端側の部分がリンス液によって満たされて液密状態となる。つまり、周縁部150に選択的にリンス液が供給される。処理膜除去液は、リンス液とともに基板Wの周囲に飛散して基板Wの周縁部150から排除される。リンス液接触領域R3の回転径方向内方端は、処理膜除去液接触領域R2よりも基板Wの中央部側に位置する(
図10を参照)。
【0202】
上側リンス液ノズル11からのリンス液の供給は、所定時間、たとえば、30秒の間継続される。リンス工程において、基板Wは、所定のリンス回転速度、たとえば、600rpmで回転される。
次に、残渣除去工程(ステップS6)が実行される。具体的には、第2支持アーム36Aが処理位置に位置する状態で、上側リンス液バルブ44Bが閉じられる。これにより、上側リンス液ノズル11からのリンス液の吐出が停止される。
【0203】
その代わりに、上側残渣除去液バルブ45Bが開かれる。これにより、回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151に向けて、上側残渣除去液ノズル12から残渣除去液が供給(吐出)される(上側残渣除去液供給工程、上側残渣除去液吐出工程)。
基板Wの周縁部150の上側面部151に供給されたリンス液によって、
図17Fに示すように、間隙92内のリンス液が、残渣除去液によって置換される(置換工程)。これにより、リンス液が間隙92から除去されて、間隙92において上側残渣除去液ノズル12よりも先端側の部分が残渣除去液によって満たされて液密状態となる。つまり、周縁部150に選択的に残渣除去液が供給される。残渣除去液接触領域R4の回転径方向内方端は、リンス液接触領域R3よりも基板Wの中央部側に位置する(
図10を参照)。
【0204】
リンス液が残渣除去液に置換される際、基板Wの周縁部150に付着している処理膜100の残渣が残渣除去液に溶解される。残渣除去液に溶解された処理膜100の残渣は、残渣除去液とともに基板Wの周囲に飛散して基板Wの周縁部150から排除される。
上側残渣除去液ノズル12からの残渣除去液の供給は、所定時間、たとえば、30秒の間継続される。残渣除去工程において、基板Wは、所定の残渣除去回転速度、たとえば、600rpmで回転される。
【0205】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、基板Wの周縁部150に作用する物理力を抑制しつつ、基板Wの周縁部150において除去対象物103が除去される領域(処理液接触領域R1、処理膜除去液接触領域R2、リンス液接触領域R3および残渣除去液接触領域R4)を精度よく管理することができる。さらに、基板Wの周縁部150から除去対象物103を効率良く除去できる。
【0206】
第2実施形態によれば、さらに、以下の効果を奏する。すなわち、各上側周縁液体ノズルに設けられた吐出口から吐出された液体によって、間隙92が液密にされる。そのため、吐出口から吐出される液体を基板Wの周縁部150に充分に供給することができる。これにより、基板Wの周縁部150から除去対象物103を効果的に除去できる。
第2実施形態とは異なり、基板処理装置1Pに複数の下側周縁ノズルが設けられていてもよい。この場合、複数の下側周縁ノズルの吐出口は、カバー部材90に設けられている。具体的には、複数の下側周縁ノズルの吐出口は、下側対向部90Bの上面から露出している。
【0207】
<第3実施形態>
図18は、第3実施形態に係る基板処理装置1Qに備えられる処理ユニット2の概略構成を示す模式的な部分断面図である。
図19は、第3実施形態に係る処理ユニットの模式的な平面図である。
図18および
図19において、前述の
図1~
図17Fに示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。後述する
図20~
図22Fにおいても同様に、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0208】
図18を参照して、第3実施形態に係る処理ユニット2は、主に以下の4点で、第1実施形態に係る処理ユニット2(
図3を参照)と主に異なる。
1つ目の点として、複数の上側周縁液体ノズルをそれぞれ支持する複数の上側周縁支持アームが設けられている点が挙げられる。2つ目の点として、複数の下側周縁液体ノズルをそれぞれ支持する複数の固定部材が設けられている点が挙げられる。3つめの点として、各上側周縁支持アームを個別に移動させる上側周縁アーム移動ユニットが設けられている点が挙げられる。4つ目の点として、上側周縁気体ノズルが各上側周縁支持アームに1つずつ設けられており、下側周縁気体ノズルが各下側周縁支持アームに1つずつ設けられている点が挙げられる。
【0209】
上側処理液ノズル9は、第1上側周縁気体ノズル130とともに第1上側周縁支持アーム140Aによって支持されている。第1上側周縁支持アーム140Aは、第1上側周縁アーム移動ユニット140Bによって、水平方向および鉛直方向に移動される。
上側処理膜除去液ノズル10は、第2上側周縁気体ノズル131とともに第2上側周縁支持アーム141Aによって支持されている。第2上側周縁支持アーム141Aは、第2上側周縁アーム移動ユニット141Bによって、水平方向および鉛直方向に移動される。
【0210】
上側リンス液ノズル11は、第3上側周縁気体ノズル132とともに第3上側周縁支持アーム142Aによって支持されている。第3上側周縁支持アーム142Aは、第3上側周縁アーム移動ユニット142Bによって、水平方向および鉛直方向に移動される。
上側残渣除去液ノズル12は、第4上側周縁気体ノズル133とともに第4上側周縁支持アーム143Aによって支持されている。第4上側周縁支持アーム143Aは、第4上側周縁アーム移動ユニット143Bによって、水平方向および鉛直方向に移動される。
【0211】
各上側周縁アーム移動ユニットは、第1実施形態で説明した第2アーム移動ユニット36Bと同様の構成である。すなわち、各上側周縁アーム移動ユニットは、対応する上側周縁支持アームに結合され鉛直方向に沿って伸びる回動軸(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含む。
第1上側周縁気体ノズル130は、第1上側周縁気体ノズル130に気体を案内する第1上側周縁気体配管52Aに接続されている。第1上側周縁気体配管52Aには、第1上側周縁気体バルブ52Bが介装されている。
【0212】
第2上側周縁気体ノズル131は、第2上側周縁気体ノズル131に気体を案内する第2上側周縁気体配管53Aに接続されている。第2上側周縁気体配管53Aには、第2上側周縁気体バルブ53Bが介装されている。
第3上側周縁気体ノズル132は、第3上側周縁気体ノズル132に気体を案内する第3上側周縁気体配管54Aに接続されている。第3上側周縁気体配管54Aには、第3上側周縁気体バルブ54Bが介装されている。
【0213】
第4上側周縁気体ノズル133は、第4上側周縁気体ノズル133に気体を案内する第4上側周縁気体配管55Aに接続されている。第4上側周縁気体配管55Aには、第4上側周縁気体バルブ55Bが介装されている。
各上側周縁気体ノズルから吐出される気体は、中央気体ノズル8から吐出される気体と同様である。具体的には、各上側周縁気体ノズルから吐出される気体は、窒素ガス等の不活性ガスや空気である。
【0214】
各上側支持アームを水平方向に移動させることによって、
図19に示すように、複数の上側周縁液体ノズル(上側処理液ノズル9、上側処理膜除去液ノズル10、上側リンス液ノズル11および上側残渣除去液ノズル12)を処理配置に配置させることができる。処理配置とは、上側周縁液体ノズルが基板Wの回転方向に沿って等間隔で並ぶ配置のことである。
【0215】
複数の上側周縁液体ノズルが処理配置に配置されている状態で、上側処理液ノズル9、上側処理膜除去液ノズル10、上側リンス液ノズル11および上側残渣除去液ノズル12が、回転方向Rの上流側RUから下流側RDに向かってこの順番で並ぶ。
詳しくは、上側処理液ノズル9の位置が最も上流側RUであるとした場合、上側処理膜除去液ノズル10は、上側処理液ノズル9の下流側RDに位置する。そして、上側リンス液ノズル11は、上側処理膜除去液ノズル10の下流側RDに位置し、上側残渣除去液ノズル12は、上側リンス液ノズル11の下流側RDに位置する。
【0216】
複数の上側周縁液体ノズルが処理配置に配置されている状態で、上側処理液ノズル9、上側処理膜除去液ノズル10、上側リンス液ノズル11および上側残渣除去液ノズル12は、基板Wの先端153からの距離がこの順番で大きくなる。
詳しくは、基板Wの先端153から上側処理膜除去液ノズル10までの距離D2は、基板Wの先端153から上側処理液ノズル9までの距離D1よりも大きい。そして、基板Wの先端153から上側リンス液ノズル11までの距離D3は、距離D2よりも大きく、基板Wの先端153から上側残渣除去液ノズル12までの距離D4は、距離D3よりも大きい。
【0217】
複数の上側周縁液体ノズルが処理配置に配置されている状態で、第1上側周縁気体ノズル130は、上側処理液ノズル9よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置する。同様に、複数の上側周縁液体ノズルが処理配置に配置されている状態で、第2上側周縁気体ノズル131は、上側処理膜除去液ノズル10よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置し、第3上側周縁気体ノズル132は、上側リンス液ノズル11よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置し、第4上側周縁気体ノズル133は、上側残渣除去液ノズル12よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置する。
【0218】
図20は、第3実施形態に係る処理ユニット2に備えられる複数の下側液体周縁ノズルの配置を説明するための模式図である。
図20は、複数の下側液体周縁ノズルを下側から見た図である。
複数の下側周縁液体ノズルは、それぞれ、処理配置に配置されている複数の上側周縁液体ノズルと平面視で重なる位置に配置されている。
【0219】
すなわち、下側周縁液体ノズルが基板Wの回転方向に沿って等間隔で並ぶ。下側処理液ノズル14、下側処理膜除去液ノズル15、下側リンス液ノズル16および下側残渣除去液ノズル17が、回転方向Rの上流側RUから下流側RDに向かってこの順番で並ぶ。詳しくは、下側処理液ノズル14の位置が最も上流側RUであるとした場合、下側処理膜除去液ノズル15は、下側処理液ノズル14の下流側RDに位置する。そして、下側リンス液ノズル16は、下側処理膜除去液ノズル15の下流側RDに位置し、下側残渣除去液ノズル17は、下側リンス液ノズル16の下流側RDに位置する。
【0220】
下側処理液ノズル14は、第1下側周縁気体ノズル134とともに第1下側固定部材144によって支持されている。下側処理膜除去液ノズル15は、第2下側周縁気体ノズル135とともに第2下側固定部材145によって支持されている。下側リンス液ノズル16は、第3下側周縁気体ノズル136とともに第3下側固定部材146によって支持されている。下側残渣除去液ノズル17は、第4下側周縁気体ノズル137とともに第4下側固定部材147によって支持されている。
【0221】
第1下側周縁気体ノズル134は、下側処理液ノズル14よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置する。第2下側周縁気体ノズル135は、下側処理膜除去液ノズル15よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置し、第3下側周縁気体ノズル136は、下側リンス液ノズル16よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置し、第4下側周縁気体ノズル137は、下側残渣除去液ノズル17よりも回転方向Rの上流側RUでかつ基板Wの中央部側に位置する。
【0222】
第1下側周縁気体ノズル134は、第1下側周縁気体ノズル134に気体を案内する第1下側周縁気体配管56Aに接続されている。第1下側周縁気体配管56Aには、第1下側周縁気体バルブ56Bが介装されている。
第2下側周縁気体ノズル135は、第2下側周縁気体ノズル135に気体を案内する第2下側周縁気体配管57Aに接続されている。第2下側周縁気体配管57Aには、第2下側周縁気体バルブ57Bが介装されている。
【0223】
第3下側周縁気体ノズル136は、第3下側周縁気体ノズル136に気体を案内する第3下側周縁気体配管58Aに接続されている。第3下側周縁気体配管58Aには、第3下側周縁気体バルブ58Bが介装されている。
第4下側周縁気体ノズル137は、第4下側周縁気体ノズル137に気体を案内する第4下側周縁気体配管59Aに接続されている。第4下側周縁気体配管59Aには、第4下側周縁気体バルブ59Bが介装されている。
【0224】
図19および
図20に示すように、第3実施形態に係るプレート本体60には、切り欠き60aが複数設けられている。複数の切り欠き60aは、複数の下側周縁ノズルおよび複数の固定部材を避けるように、回転方向Rに等間隔で配置されている。
第3実施形態に係る基板処理装置1Qは、第1実施形態に係る基板処理装置1と同様の基板処理(
図8を参照)とは異なり、処理液供給工程(ステップS2)~残渣除去工程(ステップS6)が並行して行われる。以下では、第3実施形態に係る基板処理装置1Qによる基板処理について、処理液供給工程(ステップS2)~残渣除去工程(ステップS6)を中心に説明する。
図21A~
図21Eは、基板処理装置1Qによる基板処理を説明するための模式図である。
図21A~
図21Eでは、基板処理における基板Wの周縁部150の上側面部151の状態を図示しているが、基板Wの周縁部150の下側面部152においても上側面部151と同様の現象が起こっている。そのため、
図21A~
図21Eでは、下側面部152に関連する一部の符号(たとえば、下側処理液着液位置DP1、下側処理膜除去液着液位置DP2、下側リンス液着液位置DP3、下側残渣除去液着液位置DP4等)を併記している。以下では、主に
図18~
図20を参照する。
図21A~
図21Eについては適宜参照する。
【0225】
基板処理装置1Qによる基板処理では、まず、スピンチャック5によって基板Wが支持される。スピンモータ23が、スピンベース21を回転させる。基板Wは、処理液供給工程(ステップS2)~残渣除去工程(ステップS6)が実行されている間、所定の低回転速度(たとえば、10rpm)で回転される。
第1実施形態と同様に、第1中央気体バルブ40Bおよび第2中央気体バルブ41Bは、基板保持工程が開始されてからスピンドライ工程(ステップS7)が終了するまでの間、開かれた状態で維持される。そのため、基板保持工程が開始されてからスピンドライ工程(ステップS7)が終了するまでの間、中央気体ノズル8から気体が吐出され続ける。
【0226】
そして、第1実施形態に係る基板処理装置1による基板処理とは異なり、ヒータ昇降ユニット64が、ヒータユニット6が近接位置に配置される。そして、複数の上側周縁液体ノズルが処理配置に配置される。
複数の上側周縁液体ノズルが処理配置に配置された状態で、上側処理液バルブ42Bおよび下側処理液バルブ47Bが開かれる。これにより、回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151に向けて、上側処理液ノズル9から処理液が供給(吐出)される(上側処理液供給工程、上側処理液吐出工程)。そして、上側処理液ノズル9からの処理液の吐出と同時に、回転状態の基板Wの周縁部150の下側面部152に向けて、下側処理液ノズル14から処理液が供給(吐出)される(下側処理液供給工程、下側処理液吐出工程)。
【0227】
基板Wが低回転速度で回転しているため、上側処理液ノズル9および下側処理液ノズル14から吐出された処理液は、即座に基板Wの周縁部150の全体に広がることはなく、回転方向Rにおける基板Wの周縁部150の一部に供給される。
低回転速度ではあるものの基板Wは回転しているため、基板Wの周縁部150の上側面部151および下側面部152に着液した処理液には遠心力が作用する。これにより、周縁部150において、上側処理液着液位置UP1および下側処理液着液位置DP1から基板Wの先端側に向けて処理液が広がる。つまり、周縁部150に選択的に処理液が供給される。
【0228】
図21Aに示すように、基板Wの周縁部150において上側処理液ノズル9および下側処理液ノズル14から吐出された処理液が供給された領域(処理液接触領域R1)は、基板Wの回転とともに回転方向Rの下流側RDに移動する。処理液接触領域R1に存在する処理液が、下流側RDに移動しながら、ヒータユニット6によって加熱される(周縁加熱工程)。
【0229】
また、中央気体ノズル8から吐出される気体によって基板Wの先端側に向かう気流が形成される。さらに、上側処理液バルブ42Bおよび下側処理液バルブ47Bが開かれている間、第1上側周縁気体バルブ52Bおよび第1下側周縁気体バルブ56Bも開かれている。そのため、第1上側周縁気体ノズル130および第1下側周縁気体ノズル134から吐出される気体によって、基板Wの先端側に向かう気流が形成される。
【0230】
ヒータユニット6による加熱および、基板Wの先端側に向かう気流によって、処理液接触領域R1に存在する処理液中の少なくとも一部の溶媒が蒸発される(溶媒蒸発工程、溶媒蒸発促進工程)。そのため、処理液接触領域R1に存在する処理液は、上側処理膜除去液ノズル10および下側処理膜除去液ノズル15から吐出される処理膜除去液が供給される位置に到達する前に固まる。これにより、基板Wの周縁部150に選択的に処理膜100が形成される(処理膜形成工程)。このように、ヒータユニット6、中央気体ノズル8、第1上側周縁気体ノズル130および第1下側周縁気体ノズル134が、処理膜形成ユニットとして機能する。
【0231】
そして、上側処理膜除去液ノズル10の吐出口10aおよび下側処理膜除去液ノズル15の吐出口15aと対向する位置に処理膜100が到達する前に、上側処理膜除去液バルブ43Bおよび下側処理膜除去液バルブ48Bが開かれる。これにより、回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151に向けて、上側処理膜除去液ノズル10から処理膜除去液が供給(吐出)される(上側処理膜除去液供給工程、上側処理膜除去液吐出工程)。上側処理膜除去液ノズル10からの処理膜除去液の吐出と同時に、回転状態の基板Wの周縁部150の下側面部152に向けて、下側処理膜除去液ノズル15から処理液が供給(吐出)される(下側処理膜除去液供給工程、下側処理膜除去液吐出工程)。
【0232】
基板Wが低回転速度で回転しているため、上側処理膜除去液ノズル10および下側処理膜除去液ノズル15から吐出された処理膜除去液は、即座に基板Wの周縁部150の全体に広がることはなく、回転方向Rにおける基板Wの周縁部150の一部に供給される。
低回転速度ではあるものの基板Wは回転しているため、基板Wの周縁部150の上側面部151および下側面部152に着液した処理膜除去液には遠心力が作用する。これにより、周縁部150において、上側処理膜除去液着液位置UP2および下側処理膜除去液着液位置DP2から基板Wの先端側に向けて処理液が広がる。つまり、周縁部150に選択的に処理液が供給される。処理膜除去液接触領域R2の回転径方向内方端は、処理液接触領域R1よりも基板Wの中央部側に位置している(
図10を参照)。
【0233】
処理膜100は、基板Wの回転とともに回転方向Rの下流側RDに移動し、上側処理膜除去液ノズル10および下側処理膜除去液ノズル15から吐出される処理膜除去液が供給される位置にやがて到達する。そのため、
図21Bに示すように、処理膜100は、上側処理膜除去液ノズル10および下側処理膜除去液ノズル15から吐出される処理膜除去液によって基板Wの周縁部150から除去される(処理膜除去工程)。剥離された処理膜100は、処理膜除去液とともに基板Wの周囲に飛散して基板Wの周縁部150から排除される。処理膜除去工程において処理膜100が剥離される様子は、第1実施形態と同様(
図11A~
図11Cを参照)である。
【0234】
上側処理膜除去液バルブ43Bおよび下側処理膜除去液バルブ48Bが開かれている間、第2上側周縁気体バルブ53Bおよび第2下側周縁気体バルブ57Bも開かれている。そのため、第2上側周縁気体ノズル131および第2下側周縁気体ノズル135から吐出される気体によって、基板Wの先端側に向かう気流が形成される。
そして、上側リンス液ノズル11の吐出口11aおよび下側リンス液ノズル16の吐出口16aと対向する位置に処理膜除去液接触領域R2が到達する前に、上側リンス液バルブ44Bおよび下側リンス液バルブ49Bが開かれる。これにより、回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151に向けて、上側リンス液ノズル11からリンス液が供給(吐出)される(上側リンス液供給工程、上側リンス液吐出工程)。上側リンス液ノズル11からのリンス液の吐出と同時に、回転状態の基板Wの周縁部150の下側面部152に向けて、下側リンス液ノズル16からリンス液が供給(吐出)される(下側リンス液供給工程、下側リンス液吐出工程)。
【0235】
基板Wが低回転速度で回転しているため、上側リンス液ノズル11および下側リンス液ノズル16から吐出されたリンス液は、即座に基板Wの周縁部150の全体に広がることはなく、回転方向Rにおける基板Wの周縁部150の一部に供給される。
低回転速度ではあるものの基板Wは回転しているため、基板Wの周縁部150の上側面部151および下側面部152に着液したリンス液には遠心力が作用する。これにより、周縁部150において、上側リンス液着液位置UP3および下側リンス液着液位置DP3から基板Wの先端側に向けてリンス液が広がる。つまり、周縁部150に選択的に処理液が供給される。リンス液接触領域R3の回転径方向内方端は、処理膜除去液接触領域R2よりも基板Wの中央部側に位置している(
図10を参照)。
【0236】
処理膜除去液接触領域R2は、基板Wの回転とともに回転方向Rの下流側RDに移動し、上側リンス液ノズル11および下側リンス液ノズル16から吐出されるリンス液が供給される位置にやがて到達する。そのため、
図21Cに示すように、処理膜除去液は、リンス液によって洗い流される。
上側リンス液バルブ44Bおよび下側リンス液バルブ49Bが開かれている間、第3上側周縁気体バルブ54Bおよび第3下側周縁気体バルブ58Bも開かれている。そのため、第3上側周縁気体ノズル132および第3下側周縁気体ノズル136から吐出される気体によって、基板Wの先端側に向かう気流が形成される。
【0237】
そして、上側残渣除去液ノズル12の吐出口12aおよび下側残渣除去液ノズル17の吐出口17aと対向する位置にリンス液接触領域R3が到達する前に、上側残渣除去液バルブ45Bおよび下側残渣除去液バルブ50Bが開かれる。これにより、回転状態の基板Wの周縁部150の上側面部151に向けて、上側残渣除去液ノズル12から残渣除去液が供給(吐出)される(上側残渣除去液供給工程、上側残渣除去液吐出工程)。上側残渣除去液ノズル12からの残渣除去液の吐出と同時に、回転状態の基板Wの周縁部150の下側面部152に向けて、下側残渣除去液ノズル17から残渣除去液が供給(吐出)される(下側リンス液供給工程、下側リンス液吐出工程)。
【0238】
基板Wが低回転速度で回転しているため、上側残渣除去液ノズル12および下側残渣除去液ノズル17から吐出された残渣除去液は、即座に基板Wの周縁部150の全体に広がることはなく、回転方向Rにおける基板Wの周縁部150の一部に供給される。
低回転速度ではあるものの基板Wは回転しているため、基板Wの周縁部150の上側面部151および下側面部152に着液した残渣除去液には遠心力が作用する。これにより、周縁部150において、上側残渣除去液着液位置UP4および下側残渣除去液着液位置DP4から基板Wの先端側に向けて残渣除去液が広がる。つまり、周縁部150に選択的に残渣除去液が供給される。残渣除去液接触領域R4の回転径方向内方端は、リンス液接触領域R3よりも基板Wの中央部側に位置している(
図10を参照)。
【0239】
リンス液接触領域R3は、基板Wの回転とともに回転方向Rの下流側RDに移動し、上側残渣除去液ノズル12および下側残渣除去液ノズル17から吐出される残渣除去液が供給される位置にやがて到達する。そのため、
図21Dに示すように、リンス液は、残渣除去液によって置換される。
上側残渣除去液バルブ45Bおよび下側残渣除去液バルブ50Bが開かれている間、第4上側周縁気体バルブ55Bおよび第4下側周縁気体バルブ59Bも開かれている。そのため、第4上側周縁気体ノズル133および第4下側周縁気体ノズル137から吐出される気体によって、基板Wの先端側に向かう気流が形成される。
【0240】
上側処理液バルブ42Bおよび下側処理液バルブ47Bは、上側処理液ノズル9および下側処理液ノズル14からの処理液の吐出が開始されてから基板Wが一回転したときに閉じられる。これにより、
図21Eに示すように、基板Wの周縁部150への処理液の供給は、上側処理液ノズル9および下側処理液ノズル14からの処理液の吐出が開始されてから基板Wが一回転したとき停止される。
【0241】
同様に、上側処理膜除去液バルブ43Bおよび下側処理膜除去液バルブ48Bは、上側処理膜除去液ノズル10および下側処理膜除去液ノズル15からの処理膜除去液の吐出が開始されてから基板Wが一回転したときに閉じられる。上側リンス液バルブ44Bおよび下側リンス液バルブ49Bは、上側リンス液ノズル11および下側リンス液ノズル16からのリンス液の吐出が開始されてから基板Wが一回転したときに閉じられる。上側残渣除去液バルブ45Bおよび下側残渣除去液バルブ50Bは、上側残渣除去液ノズル12および下側残渣除去液ノズル17からの残渣除去液の吐出が開始されてから基板Wが一回転したときに閉じられる。
【0242】
そのため、基板Wの周縁部150への処理液の供給が開始されてから基板Wが約2回転したときに処理液供給工程(ステップS2)~残渣除去工程(ステップS6)が完了する。その後、スピンドライ工程(ステップS7)を実行し、基板Wを処理ユニット2外へ搬出することで(ステップS8)、基板処理が終了する。
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、基板Wの周縁部150に作用する物理力を抑制しつつ、基板Wの周縁部150において除去対象物103が除去される領域(処理液接触領域R1、処理膜除去液接触領域R2、リンス液接触領域R3および残渣除去液接触領域R4)を精度よく管理することができる。さらに、基板Wの周縁部150から除去対象物103を効率良く除去できる。
【0243】
さらに、第3実施形態によれば、以下の効果を奏する。
上側処理液ノズル9および下側処理液ノズル14から吐出されて基板Wの周縁部150に供給された処理液は、基板Wの回転によって回転方向Rの下流側RDに移動する。そして、当該処理液は、上側処理膜除去液ノズル10および下側処理膜除去液ノズル15から吐出される処理膜除去液が供給される前に、固化または硬化して処理膜100になる。そのため、処理液接触領域R1が回転方向Rに一回転するまでに、当該処理液は処理膜100を形成し、形成された処理膜100は除去対象物103とともに基板Wの周縁部150から除去される。したがって、除去対象物103を基板Wから効率良く除去できる。
【0244】
第3実施形態によれば、上側処理膜除去液ノズル10および下側処理膜除去液ノズル15よりも回転方向Rの下流側RDに位置する上側リンス液ノズル11および下側リンス液ノズル16からリンス液を吐出させて、回転方向Rにおける基板Wの周縁部150の一部にリンス液を供給する。そのため、処理膜除去液接触領域R2に存在する処理膜除去液は、基板Wの周縁部150に供給されてから回転方向Rに一回転するまでに、リンス液によって洗い流される。したがって、処理膜除去液を基板Wから速やかに除去できる。
【0245】
第3実施形態によれば、上側リンス液ノズル11および下側リンス液ノズル16よりも回転方向Rの下流側RDに位置する上側残渣除去液ノズル12および下側残渣除去液ノズル17から残渣除去液を吐出させて、回転方向Rにおける基板Wの周縁部150の一部に残渣除去液を供給する。そのため、リンス液接触領域R3に存在するリンス液は、基板Wの周縁部150に供給されてから回転方向Rに一回転するまでに、速やかに低表面張力液体で置換される。したがって、基板Wの周縁部150に作用する表面張力を速やかに低減できる。さらに、基板Wの周縁部150に付着する処理膜100の残渣を速やかに除去できる。
【0246】
基板Wが一回転することによって基板Wの全周の周縁部150が処理液によって処理される。そのため、処理液の着液が開始されてから基板が一回転したときに、上側処理液ノズル9および下側処理液ノズル14からの処理液の吐出を停止する方法であれば、処理液の使用量を抑制しつつ、基板Wの全周において周縁部150から除去対象物103を効率良く除去することができる。
【0247】
図22は、第3実施形態に係る処理ユニット2の変形例の模式図である。
図23は、第3実施形態に係る処理ユニット2の変形例に備えられるカバー部材190の構成を説明するための断面図である。
第3実施形態に係る処理ユニット2の変形例では、複数の下側周縁ノズルが設けられていない。その代わりに、
図22に示すように、各上側周縁支持アームがカバー部材190を含んでいる。
【0248】
図23に示すように、カバー部材190は、第2実施形態に係るカバー部材90と同様に、水平方向に延びる上側対向部90Aと、上側対向部90Aの下方で水平方向に延びる下側対向部90Bと、上側対向部90Aおよび下側対向部90Bを連結する先端対向部90Cとを含む。
詳しくは、第1上側周縁支持アーム140Aのカバー部材190は、上側処理液ノズル9および第1上側周縁気体ノズル130とともに、第1上側周縁アーム移動ユニット140Bによって水平方向に移動可能である。上側処理液ノズル9の吐出口9aは、カバー部材190の上側対向部90Aの下面から露出する。
【0249】
図示しないが、第2上側周縁支持アーム141A~第4上側周縁支持アーム143Aのカバー部材190についても、第1上側周縁支持アーム140Aのカバー部材190と同様の構成である。
各カバー部材190は、複数の上側周縁液体ノズル(上側処理液ノズル9、上側処理膜除去液ノズル10、上側リンス液ノズル11および、上側残渣除去液ノズル12)が処理配置に配置されるときに、回転方向Rにおける少なくとも一部において基板Wの周縁部150を覆う。複数の上側周縁液体ノズルが処理配置に配置されるとき、基板Wの周縁部150とカバー部材190の間には、間隙92が形成される。複数の上側周縁液体ノズルが処理配置に配置されるとき、複数の上側周縁液体ノズルの吐出口は、基板Wの周縁部150の上側面部151に対向する。
【0250】
第3実施形態の変形例においても、第3実施形態と同様の基板処理が実行可能である。すなわち、処理液供給工程(ステップS2)~残渣除去工程(ステップS6)を並行して実行することで、基板Wの周縁部150への処理液の供給が開始されてから基板Wが約二回転したときに処理液供給工程(ステップS2)~残渣除去工程(ステップS6)を完了できる。
【0251】
さらに、第3実施形態の変形例によれば、各上側周縁液体ノズルに設けられた吐出口9a~12aから吐出された液体によって、間隙92が液密にされる。そのため、吐出口9a~12aから吐出される液体を基板Wの周縁部150に充分に供給することができる。これにより、基板Wの周縁部150から除去対象物103を効果的に除去できる。
第3実施形態の変形例とは異なり、基板処理装置1Qに複数の下側周縁ノズルが設けられていてもよい。この場合、各下側周縁ノズルの吐出口は、対応するカバー部材190に設けられている。具体的には、各下側周縁ノズルの吐出口は、対応する下側対向部90Bの上面から露出している。
【0252】
<処理液の詳細>
以下では、上述の実施形態に用いられる処理液中の各成分について説明する。
以下では、「Cx~y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
【0253】
ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。特に限定されて言及されない限り、これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
<低溶解性成分>
(A)低溶解性成分は、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリマレイン酸誘導体、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含む。好ましくは、(A)低溶解性成分は、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含んでいてもよい。さらに好ましくは、(A)低溶解性成分は、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリカーボネート、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含んでいてもよい。ノボラックはフェノールノボラックであってもよい。
【0254】
処理液は(A)低溶解性成分として、上記の好適例を1または2以上組み合わせて含んでも良い。たとえば、(A)低溶解性成分はノボラックとポリヒドロキシスチレンの双方を含んでもよい。
(A)低溶解性成分は乾燥されることで膜化し、前記膜は除去液で大部分が溶解されることなく除去対象物を保持したまま剥がされることが、好適な一態様である。なお、除去液によって(A)低溶解性成分のごく一部が溶解される態様は許容される。
【0255】
好ましくは、(A)低溶解性成分はフッ素および/またはケイ素を含有せず、より好ましくは双方を含有しない。
前記共重合はランダム共重合、ブロック共重合が好ましい。
権利範囲を限定する意図はないが、(A)低溶解性成分の具体例として、下記化学式1~化学式7に示す各化合物が挙げられる。
【0256】
【0257】
【0258】
【化3】
(アスタリスク*は、隣接した構成単位への結合を示す。)
【0259】
【化4】
(RはC
1~4アルキル等の置換基を意味する。アスタリスク*は、隣接した構成単位への結合を示す。)
【0260】
【0261】
【0262】
【化7】
(Meは、メチル基を意味する。アスタリスク*は、隣接した構成単位への結合を示す。)
【0263】
(A)低溶解性成分の重量平均分子量(Mw)は好ましくは150~500,000であり、より好ましくは300~300,000であり、さらに好ましくは500~100,000であり、よりさらに好ましくは1,000~50,000である。
(A)低溶解性成分は合成することで入手可能である。また、購入することもできる。購入する場合、例として供給先は以下が挙げられる。供給先が(A)ポリマーを合成することも可能である。
ノボラック:昭和化成(株)、旭有機材(株)、群栄化学工業(株)、住友ベークライト(株)
ポリヒドロキシスチレン:日本曹達(株)、丸善石油化学(株)、東邦化学工業(株)
ポリアクリル酸誘導体:(株)日本触媒
ポリカーボネート:シグマアルドリッチ
ポリメタクリル酸誘導体:シグマアルドリッチ
処理液の全質量と比較して、(A)低溶解性成分が0.1~50質量%であり、好ましくは0.5~30質量%であり、より好ましくは1~20質量%であり、さらに好ましくは1~10質量%である。つまり、処理液の全質量を100質量%とし、これを基準として(A)低溶解性成分が0.1~50質量%である。すなわち、「と比較して」は「を基準として」と言い換えることが可能である。特に言及しない限り、以下においても同様である。
【0264】
溶解性は公知の方法で評価することができる。例えば、20℃~35℃(さらに好ましくは25±2℃)の条件において、フラスコに前記(A)または後述の(B)を5.0質量%アンモニア水に100ppm添加し、蓋をし、振とう器で3時間振とうすることで、(A)または(B)が溶解したかで求めることができる。振とうは攪拌であっても良い。溶解は目視で判断することもできる。溶解しなければ溶解性100ppm未満、溶解すれば溶解性100ppm以上とする。溶解性が100ppm未満は不溶または難溶、溶解性が100ppm以上は可溶とする。広義には、可溶は微溶を含む。不溶、難溶、可溶の順で溶解性が低い。狭義には、微溶は可溶よりも溶解性が低く、難溶よりも溶解性が高い。
【0265】
<高溶解性成分>
(B)高溶解性成分は(B’)クラック促進成分である。(B’)クラック促進成分は、炭化水素を含んでおり、さらにヒドロキシ基(-OH)および/またはカルボニル基(-C(=O)-)を含んでいる。(B’)クラック促進成分がポリマーである場合、構成単位の1種が1単位ごとに炭化水素を含んでおり、さらにヒドロキシ基および/またはカルボニル基を有する。カルボニル基とは、カルボン酸(-COOH)、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、エノンが挙げられ、カルボン酸が好ましい。
【0266】
権利範囲を限定する意図はなく、理論に拘束されないが、処理液が乾燥され基板上に処理膜を形成し、除去液が処理膜を剥離する際に(B)高溶解性成分が、処理膜が剥がれるきっかけとなる部分を生むと考えられる。このために、(B)高溶解性成分は除去液に対する溶解性が、(A)低溶解性成分よりも高いものであることが好ましい。(B’)クラック促進成分がカルボニル基としてケトンを含む態様として環形の炭化水素が挙げられる。具体例として、1,2-シクロヘキサンジオンや1,3-シクロヘキサンジオンが挙げられる。
【0267】
より具体的な態様として、(B)高溶解性成分は、下記(B-1)、(B-2)および(B-3)の少なくともいずれか1つで表される。
(B-1)は下記化学式8を構成単位として1~6つ含んでなり(好適には1~4つ)、各構成単位が連結基(リンカーL1)で結合される化合物である。ここで、リンカーL1は、単結合であってもよいし、C1~6アルキレンであってもよい。前記C1~6アルキレンはリンカーとして構成単位を連結し、2価の基に限定されない。好ましくは2~4価である。前記C1~6アルキレンは直鎖、分岐のいずれであっても良い。
【0268】
【0269】
Cy1はC5~30の炭化水素環であり、好ましくはフェニル、シクロヘキサンまたはナフチルであり、より好ましくはフェニルである。好適な態様として、リンカーL1は複数のCy1を連結する。
R1はそれぞれ独立にC1~5アルキルであり、好ましくはメチル、エチル、プロピル、またはブチルである。前記C1~5アルキルは直鎖、分岐のいずれであっても良い。
【0270】
nb1は1、2または3であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。nb1’は0、1、2、3または4であり、好ましくは0、1または2である。
下記化学式9は、化学式8に記載の構成単位を、リンカーL9を用いて表した化学式である。リンカーL9は単結合、メチレン、エチレン、またはプロピレンであることが好ましい。
【0271】
【0272】
権利範囲を限定する意図はないが、(B-1)の好適例として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’-メチレンビス(4-メチルフェノール)、2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、1,3-シクロヘキサンジオール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,6-ナフタレンジオール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、が挙げられる。これらは、重合や縮合によって得てもよい。
【0273】
一例として下記化学式10に示す2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノールを取り上げ説明する。同化合物は(B-1)において、化学式8の構成単位を3つ有し、構成単位はリンカーL1(メチレン)で結合される。nb1=nb1’=1であり、R1はメチルである。
【0274】
【化10】
(B-2)は下記化学式11で表される。
【0275】
【0276】
R21、R22、R23、およびR24は、それぞれ独立に水素またはC1~5のアルキルであり、好ましくは水素、メチル、エチル、t-ブチル、またはイソプロピルであり、より好ましくは水素、メチル、またはエチルであり、さらに好ましくはメチルまたはエチルである。
リンカーL21およびリンカーL22は、それぞれ独立に、C1~20のアルキレン、C1~20のシクロアルキレン、C2~4のアルケニレン、C2~4のアルキニレン、またはC6~20のアリーレンである。これらの基はC1~5のアルキルまたはヒドロキシで置換されていてもよい。ここで、アルケニレンとは、1以上の二重結合を有する二価の炭化水素を意味し、アルキニレンとは、1以上の三重結合を有する二価の炭化水素基を意味するものとする。リンカーL21およびリンカーL22は、好ましくはC2~4のアルキレン、アセチレン(C2のアルキニレン)またはフェニレンであり、より好ましくはC2~4のアルキレンまたはアセチレンであり、さらに好ましくはアセチレンである。
【0277】
nb2は0、1または2であり、好ましくは0または1、より好ましくは0である。
権利範囲を限定する意図はないが、(B-2)の好適例として、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、が挙げられる。別の一形態として、3-ヘキシン-2,5-ジオール、1,4-ブチンジオール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、1,4-ブタンジオール、シス-1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、1,4-ベンゼンジメタノールも(B-2)の好適例として挙げられる。
【0278】
(B-3)は下記化学式12で表される構成単位を含んでなり、重量平均分子量(Mw)が500~10,000のポリマーである。Mwは、好ましくは600~5,000であり、より好ましくは700~3,000である。
【0279】
【0280】
ここで、R25は-H、-CH3、または-COOHであり、好ましくは-H、または-COOHである。1つの(B-3)ポリマーが、それぞれ化学式12で表される2種以上の構成単位を含んでなることも許容される。
権利範囲を限定する意図はないが、(B-3)ポリマーの好適例として、アクリル酸、マレイン酸、またはこれらの組合せの重合体が挙げられる。ポリアクリル酸、マレイン酸アクリル酸コポリマーがさらに好適な例である。
【0281】
共重合の場合、好適にはランダム共重合またはブロック共重合であり、より好適にはランダム共重合である。
一例として、下記化学式13に示す、マレイン酸アクリル酸コポリマーを挙げて説明する。同コポリマーは(B-3)に含まれ、化学式12で表される2種の構成単位を有し、1の構成単位においてR25は-Hであり、別の構成単位においてR25は-COOHである。
【0282】
【0283】
言うまでもないが、処理液は(B)高溶解性成分として、上記の好適例を1または2以上組み合わせて含んでも良い。例えば、(B)高溶解性成分は2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオールの双方を含んでも良い。
(B)高溶解性成分は、分子量80~10,000であってもよい。高溶解性成分は、好ましくは分子量90~5000であり、より好ましくは100~3000である。(B)高溶解性成分が樹脂、重合体またはポリマーの場合、分子量は重量平均分子量(Mw)で表す。
【0284】
(B)高溶解性成分は合成しても購入しても入手することが可能である。供給先としては、シグマアルドリッチ、東京化成工業、日本触媒が挙げられる。
処理液中において、(B)高溶解性成分は、(A)低溶解性成分の質量と比較して、好ましくは1~100質量%であり、より好ましくは1~50質量%である。処理液中において、(B)高溶解性成分は、(A)低溶解性成分の質量と比較して、さらに好ましくは1~30質量%である。
【0285】
<溶媒>
(C)溶媒は有機溶媒を含むことが好ましい。(C)溶媒は揮発性を有していてもよい。揮発性を有するとは水と比較して揮発性が高いことを意味する。例えば、(C)1気圧における溶媒の沸点は、50~250℃であることが好ましい。1気圧における溶媒の沸点は、50~200℃であることがより好ましく、60~170℃であることがさらに好ましい。1気圧における溶媒の沸点は、70~150℃であることがよりさらに好ましい。(C)溶媒は、少量の純水を含むことも許容される。(C)溶媒に含まれる純水は、(C)溶媒全体と比較して、好ましくは30質量%以下である。溶媒に含まれる純水は、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。溶媒に含まれる純水は、よりさらに好ましくは5質量%以下である。溶媒が純水を含まない(0質量%)ことも、好適な一形態である。純水とは、好適にはDIWである。
【0286】
有機溶媒としては、イソプロパノール(IPA)等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)等の乳酸エステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0287】
好ましい一態様として、(C)溶媒が含む有機溶媒は、IPA、PGME、PGEE、EL、PGMEA、これらのいかなる組合せから選ばれる。有機溶媒が2種の組合せである場合、その体積比は、好ましくは20:80~80:20であり、より好ましくは30:70~70:30である。
処理液の全質量と比較して、(C)溶媒は、0.1~99.9質量%である。処理液の全質量と比較して、(C)溶媒は、好ましくは50~99.9質量%であり、より好ましくは75~99.5質量%である。処理液の全質量と比較して、(C)溶媒は、さらに好ましくは80~99質量%であり、よりさらに好ましくは85~99質量%である。
【0288】
<その他の添加物>
本発明の処理液は、(D)その他の添加物をさらに含んでいてもよい。本発明の一態様として、(D)その他の添加物は、界面活性剤、酸、塩基、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、または抗真菌剤を含んでなり(好ましくは、界面活性剤)、これらのいずれの組合せを含んでいてもよい。
【0289】
本発明の一態様として、処理液中の(A)低溶解性成分の質量と比較して、(D)その他の添加物(複数の場合、その和)は、0~100質量(好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~5質量%、さらに好ましくは0~3質量%、よりさらに好ましくは0~1質量%)である。処理液が(D)その他の添加剤を含まない(0質量%)ことも、本発明の態様の一つである。
【0290】
<腐食防止成分>
(F)腐食防止成分としては、BTA以外にも、尿酸、カフェイン、ブテリン、アデニン、グリオキシル酸、グルコース、フルクトース、マンノース等が挙げられる。
<その他の実施形態>
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
【0291】
たとえば、上述した各実施形態では、水平方向へのノズルの移動は、ノズルの旋回によって行われる例を用いて説明している。しかしながら、水平方向へのノズルの移動は、支持アームが直線方向に移動(直動)することで行われてもよい。
第1実施形態に係る基板処理装置1では、複数の下側周縁ノズルは、固定部材37に固定されている。しかしながら、複数の下側周縁ノズルは、複数の上側周縁ノズルと同様に水平方向および鉛直方向に移動可能となるように構成されていてもよい。
【0292】
第1実施形態の第1変形例(
図12を参照)の基板処理と上下が逆の基板処理を行うことも可能である。すなわち、上側周縁ノズルからの液体や気体の吐出が行われず、下側周縁ノズルからの液体や気体のみで基板を処理することも可能である。この場合、残渣除去工程における基板Wの回転速度が処理膜形成工程における基板Wの回転速度よりも低くすることによって、下側残渣除去液ノズル17から供給される残渣除去液を、上側面部151において処理膜100よりも基板Wの中央部側に到達させることができる。上側面部151において周縁部150に存在する処理膜100の残渣を残渣除去液に溶解させて基板の周縁部150から処理膜100の残渣を良好に除去することができる。
【0293】
第1実施形態の第2変形例(
図13Aおよび
図13Bを参照)とは異なり下側処理液ノズル14からの処理液の吐出が、上側処理液ノズル9からの処理液の吐出よりも後に開始されてもよい。
第2実施形態に係る基板処理装置1Pによる基板処理の各工程では、カバー部材90と基板Wの周縁部150との間の間隙92は、対応する液体によって液密にされる。しかしながら、第2実施形態に係る基板処理装置1Pによる基板処理では、間隙92には、必ずしも液密にされる必要はない。第3実施形態の変形例(
図22および
図23を参照)においても同様であり、間隙92には、必ずしも液密にされる必要はない。
【0294】
第3実施形態に係る基板処理装置1Qでは、基板Wの周縁部150の全体を加熱するヒータユニット6が設けられている。しかしながら、第3実施形態に係る基板処理装置1Qでは、基板Wの周縁部150において、上側処理液ノズル9と上側処理膜除去液ノズル10との間の領域のみを加熱できるヒータユニットが用いられてもよい。その場合、基板Wの周縁部150全体を加熱する場合と比較して、処理膜100を形成したい領域を効率良く加熱することができる。
【0295】
第3実施形態に係る基板処理装置1Qによる基板処理においても、第1実施形態に係る基板処理装置1による基板処理の第1変形例と同様に、下側周縁ノズルからの液体や気体の吐出が行われない基板処理を行うことも可能である。
第3実施形態に係る基板処理装置1Qによる基板処理においても、第1実施形態に係る基板処理装置1による基板処理の第3変形例と同様に、処理液供給工程において、処理液供給開始工程と処理液終了工程とが実行されてもよい。すなわち、上側処理液ノズル9からの処理液の吐出を継続したまま上側処理液ノズル9を基板Wの中央部側に移動させることで周縁部150への処理液の供給を開始し、上側処理液ノズル9からの処理液の吐出を継続したまま基板Wの周縁部150よりも外側に上側処理液ノズル9を移動させることによって、周縁部150への処理液の供給を終了してもよい。
【0296】
第3実施形態の変形例(
図22および
図23を参照)とは異なり、カバー部材190が、複数の上側周縁液体ノズルの全てに設けられておらず、少なくともいずれかの上側周縁液体ノズルに設けられている構成であってもよい。
上述した各実施形態では、基板Wの周縁部150への気体の吹き付けおよび基板Wの周縁部150の加熱によって、処理液中の溶媒の蒸発が促進される。しかしながら、基板Wの周縁部150への気体の吹き付けおよび基板Wの周縁部150の加熱のいずれか一方のみが行われてもよい。特に、第1実施形態および第2実施形態においては、基板Wの周縁部150への気体の吹き付けおよび基板Wの周縁部150の加熱のいずれもが実行されない場合も有り得る。
【0297】
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0298】
1 :基板処理装置
1P :基板処理装置
1Q :基板処理装置
6 :ヒータユニット
9 :上側処理液ノズル
9a :吐出口
10 :上側処理膜除去液ノズル
10a :吐出口
11 :上側リンス液ノズル
11a :吐出口
12 :上側残渣除去液ノズル
12a :吐出口
13 :上側周縁気体ノズル
14 :下側処理液ノズル
15 :下側処理膜除去液ノズル
16 :下側リンス液ノズル
17 :下側残渣除去液ノズル
18 :下側周縁気体ノズル
21 :スピンベース
23 :スピンモータ
36A :第2支持アーム
36B :第2アーム移動ユニット
90 :カバー部材
140B :第1上側周縁アーム移動ユニット
141B :第2上側周縁アーム移動ユニット
142B :第3上側周縁アーム移動ユニット
143B :第4上側周縁アーム移動ユニット
150 :周縁部
151 :上側面部
152 :下側面部
190 :カバー部材
R :回転方向
R1 :処理液接触領域
R2 :処理膜除去液接触領域
R3 :リンス液接触領域
R4 :残渣除去液接触領域
RD :下流側
W :基板