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特許7469089マスフローコントローラおよび流量制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】マスフローコントローラおよび流量制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020048718
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021149502
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】柳川 雄成
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 亘
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-543229(JP,A)
【文献】特開2014-013461(JP,A)
【文献】特開2002-041149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流れる流体の流量を計測するように構成されたフローセンサと、
前記流体の流量を制御するためのバルブと、
操作量に応じた駆動電流を前記バルブに出力するように構成されたバルブ駆動回路と、
流量設定値と前記フローセンサによって得られた流量計測値とを入力として第1の操作量を制御周期毎に算出するように構成されたPID制御部と、
前記流量設定値が0から変更された場合に変更時点からの経過時間に比例して増加する第2の操作量を制御周期毎に算出するように構成された操作量生成部と、
1制御周期あたりの前記流量計測値の変化量が所定の変化量閾値以下のときに前記操作量生成部によって算出された第2の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、前記流量計測値の変化量が前記変化量閾値を超えた時点以降において前記PID制御部によって算出された第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力するように構成された操作量出力部とを備えることを特徴とするマスフローコントローラ。
【請求項2】
流路を流れる流体の流量を計測するように構成されたフローセンサと、
前記流体の流量を制御するためのバルブと、
操作量に応じた駆動電流を前記バルブに出力するように構成されたバルブ駆動回路と、
流量設定値と前記フローセンサによって得られた流量計測値とを入力として第1の操作量を制御周期毎に算出するように構成されたPID制御部と、
前記流量設定値が0から変更された場合に変更時点からの経過時間に比例して増加する第2の操作量を制御周期毎に算出するように構成された操作量生成部と、
前記PID制御部によって算出された第1の操作量および前記操作量生成部によって算出された第2の操作量のうちいずれかを選択的に前記バルブ駆動回路に出力するように構成された操作量出力部とを備え、
前記操作量出力部は、予め設定された第1のモードの場合は、前記流量計測値が所定の流量閾値以下のときに前記第2の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、前記流量計測値が前記流量閾値を超えた時点以降において前記第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、予め設定された第2のモードの場合は、1制御周期あたりの前記流量計測値の変化量が所定の変化量閾値以下のときに前記第2の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、前記流量計測値の変化量が前記変化量閾値を超えた時点以降において前記第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、予め設定された通常モードの場合は、前記第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力することを特徴とするマスフローコントローラ。
【請求項3】
流量設定値と制御対象の流体の流量計測値とを入力として第1の操作量を制御周期毎に算出する第1のステップと、
前記流量設定値が0から変更された場合に変更時点からの経過時間に比例して増加する第2の操作量を制御周期毎に算出する第2のステップと、
1制御周期あたりの前記流量計測値の変化量が所定の変化量閾値以下のときに、前記流体の流量を制御するためのバルブを駆動するバルブ駆動回路に前記第2の操作量を出力する第3のステップと、
前記流量計測値の変化量が前記変化量閾値を超えた時点以降において前記第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力する第4のステップとを含むことを特徴とする流量制御方法。
【請求項4】
流量設定値と制御対象の流体の流量計測値とを入力として第1の操作量を制御周期毎に算出する第1のステップと、
前記流量設定値が0から変更された場合に変更時点からの経過時間に比例して増加する第2の操作量を制御周期毎に算出する第2のステップと、
前記第1の操作量および前記第2の操作量のうちいずれかを、前記流体の流量を制御するためのバルブを駆動するバルブ駆動回路に出力する第3のステップとを含み、
前記第3のステップは、予め設定された第1のモードの場合は、前記流量計測値が所定の流量閾値以下のときに前記第2の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、前記流量計測値が前記流量閾値を超えた時点以降において前記第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、予め設定された第2のモードの場合は、1制御周期あたりの前記流量計測値の変化量が所定の変化量閾値以下のときに前記第2の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、前記流量計測値の変化量が前記変化量閾値を超えた時点以降において前記第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、予め設定された通常モードの場合は、前記第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力するステップを含むことを特徴とする流量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスフローコントローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体の流量を制御するマスフローコントローラが製品化されている(例えば特許文献1参照)。マスフローコントローラは、フローセンサによって検出した流体の流量と設定流量とを比較演算して、その結果に基づいてバルブに駆動電流を出力することにより、流量制御を行う。このようなマスフローコントローラでは、バルブを制御して流量を制御する場合に、低流量を目標値とした場合の立ち上がり時間がバルブの特性の個体差により大きくばらつくことがある(バルブの駆動電流Iと流量Qとの関係を示すI-Q特性のばらつき)。
【0003】
低流量域での応答性を改善する方法として、以下の(I)、(II)の2とおりの方法が知られている。
【0004】
(I)一般に低流量域ではI-Q特性の比例幅が大きく、中流量域および高流量域ではI-Q特性の比例幅が小さくなる。そこで、一部のマスフローコントローラでは、低流量域でPID制御を行う場合に3つのPID定数(比例係数Kp、積分時間Ti、微分時間Td)のうち比例係数Kpを大きくし積分時間Tiを小さくして流量Qの立ち上がり時間を短くし、流量Qが一定値に達すると、通常のPID定数での制御を行うようにしていた。
【0005】
(II)特許文献1に開示されたマスフローコントローラでは、制御モデルを用いて動的に制御パラメータを調節するようにしていた。
【0006】
上記の(I)の方法では、低流量域で用いるPID定数をあらかじめ与えておく必要があり、バルブの個体差により低流量域での応答性を改善できない可能性があった。
上記の(II)の方法では、モデルを用いて最適な制御パラメータを求めているため、処理が複雑で、処理時間やプログラムサイズが増大するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2018-528550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡単な実装でバルブの個体差による低流量域での応答性を改善することができるマスフローコントローラおよび流量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
また、本発明のマスフローコントローラは、流路を流れる流体の流量を計測するように構成されたフローセンサと、前記流体の流量を制御するためのバルブと、操作量に応じた駆動電流を前記バルブに出力するように構成されたバルブ駆動回路と、流量設定値と前記フローセンサによって得られた流量計測値とを入力として第1の操作量を制御周期毎に算出するように構成されたPID制御部と、前記流量設定値が0から変更された場合に変更時点からの経過時間に比例して増加する第2の操作量を制御周期毎に算出するように構成された操作量生成部と、1制御周期あたりの前記流量計測値の変化量が所定の変化量閾値以下のときに前記操作量生成部によって算出された第2の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、前記流量計測値の変化量が前記変化量閾値を超えた時点以降において前記PID制御部によって算出された第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力するように構成された操作量出力部とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のマスフローコントローラは、流路を流れる流体の流量を計測するように構成されたフローセンサと、前記流体の流量を制御するためのバルブと、操作量に応じた駆動電流を前記バルブに出力するように構成されたバルブ駆動回路と、流量設定値と前記フローセンサによって得られた流量計測値とを入力として第1の操作量を制御周期毎に算出するように構成されたPID制御部と、前記流量設定値が0から変更された場合に変更時点からの経過時間に比例して増加する第2の操作量を制御周期毎に算出するように構成された操作量生成部と、前記PID制御部によって算出された第1の操作量および前記操作量生成部によって算出された第2の操作量のうちいずれかを選択的に前記バルブ駆動回路に出力するように構成された操作量出力部とを備え、前記操作量出力部は、予め設定された第1のモードの場合は、前記流量計測値が所定の流量閾値以下のときに前記第2の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、前記流量計測値が前記流量閾値を超えた時点以降において前記第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、予め設定された第2のモードの場合は、1制御周期あたりの前記流量計測値の変化量が所定の変化量閾値以下のときに前記第2の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、前記流量計測値の変化量が前記変化量閾値を超えた時点以降において前記第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、予め設定された通常モードの場合は、前記第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の流量制御方法は、流量設定値と制御対象の流体の流量計測値とを入力として第1の操作量を制御周期毎に算出する第1のステップと、前記流量設定値が0から変更された場合に変更時点からの経過時間に比例して増加する第2の操作量を制御周期毎に算出する第2のステップと、1制御周期あたりの前記流量計測値の変化量が所定の変化量閾値以下のときに、前記流体の流量を制御するためのバルブを駆動するバルブ駆動回路に前記第2の操作量を出力する第3のステップと、前記流量計測値の変化量が前記変化量閾値を超えた時点以降において前記第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力する第4のステップとを含むことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の流量制御方法は、流量設定値と制御対象の流体の流量計測値とを入力として第1の操作量を制御周期毎に算出する第1のステップと、前記流量設定値が0から変更された場合に変更時点からの経過時間に比例して増加する第2の操作量を制御周期毎に算出する第2のステップと、前記第1の操作量および前記第2の操作量のうちいずれかを、前記流体の流量を制御するためのバルブを駆動するバルブ駆動回路に出力する第3のステップとを含み、前記第3のステップは、予め設定された第1のモードの場合は、前記流量計測値が所定の流量閾値以下のときに前記第2の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、前記流量計測値が前記流量閾値を超えた時点以降において前記第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、予め設定された第2のモードの場合は、1制御周期あたりの前記流量計測値の変化量が所定の変化量閾値以下のときに前記第2の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、前記流量計測値の変化量が前記変化量閾値を超えた時点以降において前記第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力し、予め設定された通常モードの場合は、前記第1の操作量を前記バルブ駆動回路に出力するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、操作量生成部と操作量出力部とを設けることにより、バルブの全閉状態からの流量計測値の立ち上がり時間を短くすることができ、簡単な実装でバルブの個体差による低流量域での応答性を改善することができる。
【0016】
また、本発明では、動作モードと流量計測値に応じて第1の操作量および第2の操作量のうちいずれかを選択的にバルブ駆動回路に出力することにより、バルブの特性に適した動作モードを選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、マスフローコントローラのI-Q特性の1例を示す図である。
図2図2は、流量の時間変化のシミュレーション結果の1例を示す図である。
図3図3は、本発明の実施例に係るマスフローコントローラの構成を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の実施例に係るマスフローコントローラのPID制御部と操作量生成部と操作量出力部の動作を説明するフローチャートである。
図5図5は、本発明の実施例の第1の迅速モードにおける流量計測値の時間変化の1例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施例の第2の迅速モードにおける流量計測値の時間変化の1例を示す図である。
図7図7は、本発明の実施例に係るマスフローコントローラを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[マスフローコントローラの低流量域での応答性]
マスフローコントローラの低流量域での応答性の問題は、バルブの個体差により低流量域でのI-Q特性(Iはバルブの駆動電流、Qは流量)がバルブ個体により大きく異なることに由来する。この問題について更に詳細に説明する。
【0019】
図1はマスフローコントローラのI-Q特性の1例を示す図である。図1のA,Bはそれぞれ異なるバルブのI-Q特性を示している。図1に示すように、バルブの駆動電流Iに対して流量Qが緩い立ち上がりを示すが、この立ち上がり時間がバルブの個体差により大きくばらつく。例えば図1のBの特性で示すバルブを用いた場合、低流量域(10%FS以下)でのI-Qの感度が低い(I-Q特性の傾きが緩い)ため、図1のAの特性で示すバルブを用いた場合よりも流量Qの立ち上がり時間が長くなる。バルブの個体差は、バルブの機構部のばらつきによるものと推測される。
【0020】
低流量域での応答性が仕様を満たせない場合には、バルブの選別を行うか、低流量域での応答性の仕様を変更する必要があるが、本発明では、このようなバルブの選別や仕様の変更を行うことなく、低流量域での応答性を改善する。
【0021】
なお、低流量域での流量Qの立ち上がり特性が規定を満足するようなバルブ特性はPIDシミュレーションにより求めることができる。PIDシミュレーションにより求めた流量Qの変化は例えば図2のようになる。図2の横軸のTは時間である。低流量域での流量Qの立ち上がり特性が規定を満足すること、すなわち流量Qの立ち上がり時間がΔT以内となることの条件は、時刻0からΔT経過したときの流量Qの変化がΔQ以上であることである。
【0022】
[実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図3は本発明の実施例に係るマスフローコントローラの構成を示すブロック図である。マスフローコントローラは、例えば樹脂製の流路ボディ1と、流路ボディ1に装着されたセンサパッケージ2と、流体の流量を制御するための比例ソレノイドバルブ3と、流量設定値SPと流量計測値Qとを入力として操作量MV(第1の操作量)を制御周期毎に算出するPID制御部4と、流量設定値SPが0から変更された場合に変更時点からの経過時間に比例して増加する操作量MV(第2の操作量)を制御周期毎に算出する操作量生成部5と、PID制御部4によって算出された操作量MVおよび操作量生成部5によって算出された操作量MVのうちいずれかを選択的に出力する操作量出力部6と、比例ソレノイドバルブ3を駆動するバルブ駆動回路7とを備えている。
【0023】
図1において、10は流路ボディ1の内部に形成された流路、11は流路10の入口側の開口、12は流路10の出口側の開口、13はセンサパッケージ2に搭載されたフローセンサである。
【0024】
流体は、開口11から流路10に流入して比例ソレノイドバルブ3を通過し、開口12から排出される。このとき、フローセンサ13は流体の流量Qを計測する。フローセンサ13は、センサパッケージ2に搭載され、計測対象の流体に晒されるように流路ボディ1に装着される。
【0025】
以下、本実施例の特徴的な動作について説明する。図4はPID制御部4と操作量生成部5と操作量出力部6の動作を説明するフローチャートである。
【0026】
PID制御部4は、流量計測値Qをフローセンサ13から取得する(図4ステップS100)。そして、PID制御部4は、例えばオペレータによって設定された流量設定値SPとステップS100で取得した流量計測値Qとを入力として、流量計測値Qが流量設定値SPと一致するようにPID演算を行って操作量MVを算出する(図4ステップS101)。
【0027】
操作量出力部6は、後述する第1の迅速モード、第2の迅速モードのいずれでもなく、通常モードの場合(図4ステップS102,S103においてNO)、PID制御部4によって算出された操作量MVをバルブ駆動回路7に出力する(図4ステップS104)。
バルブ駆動回路7は、操作量出力部6から出力された操作量MVに応じて比例ソレノイドバルブ3にバルブ駆動電流(ソレノイド電流)Iを出力する。こうして、比例ソレノイドバルブ3は、操作量MVに応じた開度となるように制御される。
【0028】
マスフローコントローラは、例えばオペレータによって装置の動作終了が指示されるまで(図4ステップS105においてYES)、ステップS100~S104の処理を制御周期毎に実行する。
【0029】
以上の通常モードは一般的なPID制御を常時行う動作モードである。これに対して、本実施例では、流量Qの立ち上がり特性を改善するために、通常モードとは別に2つの動作モードを備えている。
【0030】
操作量生成部5は、例えばオペレータによって第1の迅速モードに設定され(図4ステップS102においてYES)、流量設定値SPが0(比例ソレノイドバルブ3が全閉)から変更された場合、流量設定値SPの変更時点からの経過時間に比例して増加する操作量MVを算出する(図4ステップS106)。このとき、操作量MVの増加率は、PID制御の場合よりも流量Qの立ち上がりが早くなるように設定されている。
【0031】
操作量出力部6は、第1の迅速モードに設定されている場合で、かつ流量計測値Qが所定の流量閾値Qth(例えば0.1FS)以下のとき(図4ステップS107においてYES)、操作量生成部5によって算出された操作量MVをバルブ駆動回路7に出力する(図4ステップS108)。
こうして、第1の迅速モードでは、流量計測値Qが流量閾値Qthを超えるまでステップS100~S102,S106~S108の処理が制御周期毎に実行される。
【0032】
操作量出力部6は、流量計測値Qが流量閾値Qthを超えると(ステップS107においてNO)、PID制御部4によって算出された操作量MVをバルブ駆動回路7に出力する(図4ステップS109)。
こうして、第1の迅速モードでは、流量計測値Qが流量閾値Qthを超えると通常のPID制御が開始される。
【0033】
比例ソレノイドバルブ3の全閉状態から流量設定値SPが変更され流量制御が開始された場合、比例ソレノイドバルブ3が開となるためには、ある値以上のバルブ駆動電流(このときの値をバルブ開電流と呼ぶ)が流れる必要がある。したがって、通常のPID制御を全閉状態から始めるとバルブ開電流に達するまでに時間がかかる。
【0034】
一方、本実施例の第1の迅速モードでは、PID制御による無駄時間を削減するためにバルブ駆動電流(操作量MV)を急速に立ち上げて、流量計測値Qが流量閾値Qthを超えた時点以降にPID制御を開始する。図5は第1の迅速モードにおける流量計測値Qの時間変化の1例を示す図である。図5の例では、時刻0において流量設定値SPが0より大きい値に変更され、時刻0からの経過時間に比例して増加する操作量MVの出力によって流量計測値Qが増加する。そして、流量計測値Qが流量閾値Qthを超えたT1の時点でPID制御が開始される。
【0035】
次に、操作量生成部5は、例えばオペレータによって第2の迅速モードに設定され(図4ステップS103においてYES)、流量設定値SPが0から変更された場合、流量設定値SPの変更時点からの経過時間に比例して増加する操作量MVを算出する(図4ステップS110)。このステップS110の処理は、ステップS106と同じである。
【0036】
操作量出力部6は、第2の迅速モードに設定されている場合で、かつ1制御周期あたりの流量計測値Qの変化量ΔQが所定の変化量閾値ΔQth(例えば0.2FS)以下のとき(図4ステップS111においてYES)、操作量生成部5によって算出された操作量MVをバルブ駆動回路7に出力する(図4ステップS112)。
こうして、第2の迅速モードでは、流量計測値Qの変化量ΔQが変化量閾値ΔQthを超えるまでステップS100~S103,S110~S112の処理が制御周期毎に実行される。
【0037】
操作量出力部6は、流量計測値Qの変化量ΔQが変化量閾値ΔQthを超えると(ステップS111においてNO)、PID制御部4によって算出された操作量MVをバルブ駆動回路7に出力する(ステップS109)。
こうして、第2の迅速モードでは、流量計測値Qの変化量ΔQが変化量閾値ΔQthを超えると通常のPID制御が開始される。
【0038】
図6は第2の迅速モードにおける流量計測値Qの時間変化の1例を示す図である。図6の例では、時刻0において流量設定値SPが0より大きい値に変更され、時刻0からの経過時間に比例して増加する操作量MVの出力によって流量計測値Qが増加する。そして、1制御周期あたりの流量計測値Qの変化量ΔQが変化量閾値ΔQthを超えたT2の時点でPID制御が開始される。
【0039】
以上のように、本実施例のマスフローコントローラは、第1の迅速モードと第2の迅速モードの2つを備えることにより、流量計測値Qの立ち上がり時間を短くすることができ、低流量域での応答性を改善することができる。
また、2つのモードを備えることにより、搭載されている比例ソレノイドバルブ3の特性に適した方のモードを選択することが可能である。
【0040】
本実施例のマスフローコントローラのうち少なくともPID制御部4と操作量生成部5と操作量出力部6とは、CPU(Central Processing Unit)と記憶装置とインタフェースとを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図7に示す。
【0041】
コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インタフェース装置(I/F)202とを備えている。I/F202には、フローセンサ13とバルブ駆動回路7などが接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の流量制御方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、流量制御系に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…流路ボディ、2…センサパッケージ、3…比例ソレノイドバルブ、4…PID制御部、5…操作量生成部、6…操作量出力部、7…バルブ駆動回路、10…流路、13…フローセンサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7