(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】伸縮自在ブーム及び可動式クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 23/82 20060101AFI20240409BHJP
B66C 23/693 20060101ALI20240409BHJP
B66C 23/42 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B66C23/82 B
B66C23/693 A
B66C23/42 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020055804
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10 2019 108 286.2
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2019 110 505.6
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597120075
【氏名又は名称】リープヘル-ヴェルク エーインゲン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Liebherr-Werk EhingenGmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルゾスカ セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルビッヒ マリオ
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193247(JP,A)
【文献】特開2010-126287(JP,A)
【文献】特開2009-167002(JP,A)
【文献】特開2009-184818(JP,A)
【文献】米国特許第04993911(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの引込みシリンダ取付け具(33)、特にボルト取付け具の側面に、引込みシリンダを伸縮自在ブームに固定するように設けられた結合部(1)を備え、前記引込みシリンダ取付け具の軸受板は、前記引込みシリンダ取付け具から前記伸縮自在ブームの構造に負荷を伝達するための金属板箱構造であり、
前記金属板箱構造は、3つの部分引き込みシリンダ箱(40、50、60)により構成され、2つの前記部分引込みシリンダ箱(40、50)は、前記結合部(1)と平行で、外殻の下部の横方向の領域に互いに対向し、一方、3つ目の前記部分引込みシリンダ箱(60)は、前記結合部(1)を横断するように延びることを特徴とする伸縮自在ブーム。
【請求項2】
請求項1に記載の伸縮自在ブームにおいて、
3つの前記部分引き込みシリンダ箱(40、50、60)は、それぞれ、2つの側壁、1つのカバー板、及び1つの端板を含むことを特徴とする伸縮自在ブーム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の伸縮自在ブームにおいて、
3つ目の前記部分引き込みシリンダ箱(60)は、前記引込みシリンダ取付け具(33)を有する端部と対向する前記部分引込みシリンダ箱(40、50)のそれぞれの端部と隣接することを特徴とする伸縮自在ブーム。
【請求項4】
請求項3に記載の伸縮自在ブームにおいて、
3つ目の前記部分引き込みシリンダ箱(60)は、前記部分引込みシリンダ箱(40、50)と溶接されていることを特徴とする伸縮自在ブーム。
【請求項5】
請求項4に記載の伸縮自在ブームにおいて、
実質的に平行な前記部分引込みシリンダ箱(40、50)の金属板は、3つ目の前記部分引込みシリンダ箱(60)の金属板を少なくとも部分的に貫いていることを特徴とする伸縮自在ブーム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の伸縮自在ブームにおいて、
前記結合部(1)における前記外殻の下部に形成される少なくとも1つの座屈支柱(12、13)は、前記結合部(1)を横断して延びる前記部分引込みシリンダ箱(60)にまで延びていることを特徴とする伸縮自在ブーム。
【請求項7】
請求項6に記載の伸縮自在ブームにおいて、
前記結合部(1)における前記外殻の下部に形成される、少なくとも1つの前記座屈支柱(12、13)は、前記部分引込みシリンダ箱(60)と溶接されていることを特徴とする伸縮自在ブーム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の伸縮自在ブームにおいて、
付加的な金属板箱構造(70)は、前記結合部(1)における前記外殻の下部の下方において、互いに平行に配置された前記部分引込みシリンダ箱(40、50)と互いに連結していることを特徴とする伸縮自在ブーム。
【請求項9】
請求項8に記載の伸縮自在ブームにおいて、
付加的な前記金属板箱構造(70)は、互いに隣接する2つの前記部分引込みシリンダ箱(40、50)の間の中心(M)において、前記結合部(1)における前記外殻の下部と接続されていることを特徴とする伸縮自在ブーム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の前記伸縮自在ブームを備えるクレーン、特に可動式クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの引込みシリンダ取付け具の側面に、引込みシリンダを伸縮自在ブームに固定するように設けられたクレーン、特に可動式クレーンのための結合部を含む伸縮自在ブームに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、引用文献1は、中央に配置された引込みシリンダがボルト取付け具を介して伸縮自在ブームの結合部にボルト結合される可動式クレーンを開示している。負荷は、ブームの外形の、ここでは特別な金属板構造に形成された外殻の下部に、ボルト取付け具を介して伝達される。多くのクレーンにおいては、中央に配置された1つの引込みシリンダを設けることで十分であるのに対し、大きいクレーンにおいては、2つの引込みシリンダを用いることが現今の標準である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102017110412号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1及び
図2aは、従来例に係る大きいクレーンの引込みシリンダを取り付けるための、対応する従来の解を示している。2つの引込みシリンダ(ここでは、より詳細には示されない。)は、2つの力導入点33において、金属板構造からなる自己格納式引込みシリンダ箱3を介して結合部1を上げ下げする。従って、完全な伸縮自在ブーム(一部のみ図示)を上げ下げする。力導入点33は軸受板に配置されており、該力導入点33は、引込みシリンダ取付け具から伸縮自在ブームにおける結合部1の構造に負荷を伝達するための金属板箱構造となる。動作中において、力のかなりの量は、結合部1における外殻の柔らかい下部に伝えられる。引込みシリンダ箱3の相対的に先細りの角部は、カバー板31と結合部1の外殻の下部と側板32との間の接続部に形成される。許容される最大の力の伝達が、引込みシリンダ箱3によって限定されるため、
図1のAで示される角部は、関係するモーメント角において、種々の問題を起こすことがある。このモーメント角は、風のような又はクレーン全体の傾斜位置のような、許容負荷に起因する。仮に金属板箱構造が伸縮自在ブームの引込み面内においてのみ、負荷の伝達を担わされるなら、モーメント角は0°に設定されるべきである。風のような破壊的な力が、伸縮自在ブームを引込み面の中から外へ押す場合には、モーメント角は増大すると共に、伸縮自在ブームの全体に負荷が付加的に掛かる。また、モーメント角が、このように増大した場合は、領域Aの上述した先細りの角部が問題を含むことが分かる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が扱う問題は、金属板箱構造に対してより高い耐荷重性を達成し、且つ、重量も抑制しながら、ブーム全体のより高い負荷能力に帰着する結合部を達成することにある。同時に、達成された許容負荷は、風又はクレーン全体の傾斜位置のような外乱に対する抵抗も意図される。
【0006】
本発明によると、この問題は、請求項1における特徴の組み合わせによって解決される。従って、2つの引込みシリンダ取付け具、特にボルト取付け具は、引込みシリンダを伸縮自在ブームに固定するための結合部を含む伸縮自在ブームの側面に設けられる。引込みシリンダ取付け具の軸受板は、引込みシリンダ取付け具から伸縮自在ブームの構造に負荷を伝達するための金属板箱構造となる。本発明によると、金属板箱構造は、3つの部分引込みシリンダ箱から構成され、これらのうち2つの部分引込みシリンダ箱は、結合部と平行で且つ外殻の下部の横方向の領域に互いに対向するように、実質的に側壁の下方に配置される。一方、3つ目の部分引込みシリンダ箱は、結合部を横断するように延びる。
【0007】
平行な部分引込みシリンダ箱、すなわち、結合部に対して平行に配置される部分引込みシリンダ箱は、それらが結合部の輪郭が剛性を持つクランク腕状の壁に力の大部分を伝えるように配置される。これは、部分引込みシリンダ箱における2つの横方向のクランク腕状板を越えて起こる。その剛性さはさらに改善され、従って、部分引込みシリンダ箱が結合部を横断するように延びることによって、耐荷重性が増大する。
【0008】
本発明に係る好ましい実施形態は、主請求項に従属する従属請求項に見いだせる。
【0009】
特に有利には、3つの部分引込みシリンダ箱は、それぞれ、2つの側壁と、1つのカバー板と、対応する1つの端板とを含む閉じた箱構造として設計される。平行に延びる部分引込みシリンダ箱における、より高い側板は、また、複数の部分プレートからなってもよい。
【0010】
好ましくは、結合部を横断するように延びる3つ目の部分引込みシリンダ箱は、引込みシリンダ取付け具を有する端部と対向する部分引込みシリンダ箱のそれぞれの端部と隣接する。安定性を高めるために、この3つ目の部分引込みシリンダ箱は、平行に延びる部分引込みシリンダ箱と溶接されている。
【0011】
本発明に係る他の好ましい実施形態によると、実質的に平行な部分引込みシリンダ箱の金属板は、3つ目の部分引込みシリンダ箱における金属板を少なくとも部分的に貫いてもよい。従って、関係する平行な部分引込みシリンダ箱における側板又はクランク腕状板は、隣接する側板又はクランク腕状板として、部分引込みシリンダ箱を横断して延びるように続く。この板構造を相互に貫通する溶接によって、特に高い安定性が達成される。
【0012】
好ましくは、結合部の外殻の下部に形成される座屈支柱は、該結合部を横断して延びる部分引込みシリンダ箱にまで、適宜に延びてもよい。強度を高めるために、座屈支柱の端部は、部分引込みシリンダ箱と溶接されてもよい。
【0013】
最後に、他の有利な実施形態によると、付加的な金属板箱構造は、結合部における外殻の下部の下方において、互いに平行に配置された部分引込みシリンダ箱と互いに連結してもよい。従って、この場合、付加的な金属板箱構造は、3つ目の金属板箱構造と実質的に平行に配置される。この場合、高められる強度は、互いに平行に延びる2つの部分引込みシリンダ箱と溶接されることによっても達成される。
【0014】
特に有利には、付加的な金属板箱構造は、結合部における外殻の下部の少なくとも一部と接続されてもよく、同様に有利には、溶接された2つの隣接する部分引込みシリンダ箱同士の間の領域を再度溶接してもよい。この接合は、外殻の下部に無視できる程度の大きさでのみなされる。本質的に、この付加的な金属板箱構造によって、実際に力導入点を構成する2つの引込みシリンダ取付け具は、互いに補強し合う。さらに、安定化を図る力が結合部の縦軸方向に対して垂直に、外殻の下部によって同時に吸収されてもよい。該外殻の下部は、この方向において極めて高い耐荷重を有する。
【0015】
最後に、本発明は、クレーンにも関し、特に、上述した特徴を有する少なくとも1つの伸縮自在ブームを含む可動式クレーンに関する。
【0016】
本発明に係る、3つの部分引込みシリンダ箱によって形成された金属板箱構造は、その結合部に顕著な力を伝達する。従って、該結合部の外側部分は、結合点の回りを金属板箱構造側に曲がる。この場合、それぞれが板状座屈の危険がある領域を構成する、最初に議論した外殻の下部の領域にいかなる先細りの角部も存在しない従来例に係る解と比べて極めて有利である。従って、このような先細りの角部の変化を防止することは、安定性を増大し、且つ、同時に全体構造の比較的に低重量化によって、耐荷重性を改善できる。
【0017】
本発明に係る、さらなる特徴、詳細及び有利さは、好ましい実施形態における以下の詳細な記述から明らかとなる。この好ましい実施形態は、添付の図面に関して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は従来例に係る伸縮自在ブームの詳細を示す部分斜視図である。
【
図2b】
図2bは本発明に係る結合部の実施形態を示す側面図である。
【
図5b】
図5bは部分引込みシリンダのカバー板を部分的に削除した、
図5aと対応する下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図2bは、本発明の一実施形態に係る伸縮自在ブームにおける結合部1を示している。ここで、ボルト取付け具の形をした横方向引込みシリンダ取付け具33は、力導入点として設けられている。引込みシリンダ(ここでは、より詳細には示していない。)は、公知のように、伸縮自在ブームを上下に動かすのに役立ち、上記引込みシリンダ取付け具33と連結されている。
【0020】
この場合に、対応する引込みシリンダ取付け具33は、クレーンが大きいために、両側に設けられている。引込みシリンダ取付け具33の軸受板は、金属板箱構造3である。この金属板箱構造3は、引込みシリンダ取付け具33から伸縮自在ブーム構造体に負荷を伝達するのに役立つ。
【0021】
金属板箱構造3のより詳細な構造は、
図3、4、5a、5b及び6に説明されている。従って、金属板箱構造3は、3つの部分引込みシリンダ箱40、50、60により構成されており、そのうちの2つの部分引込みシリンダ箱40、50は、結合部1と平行で該結合部1における外殻の下部の横方向の領域に互いに対向するように、側壁11の実質的に下方に配置されている(特に
図6を参照。)。
【0022】
さらに、3つ目の部分引込みシリンダ箱60は、例えば、
図3に示すように、結合部1を横断するように配置されている。部分引込みシリンダ箱40、50は、結合部1の輪郭が剛性を持つクランク腕状の側壁11に力の大部分を伝達する。これは、2つのクランク腕状板41,42に関して生じる(
図3を参照。)。この場合、ここに示すように、外壁に沿って延びる、より高いプレートは、複数の部分プレート41、41’からなっていてもよい(
図4を参照。)。2つの部分引込みシリンダ箱40、50は、閉じた箱を構成し、且つ、カバー板43、44を含む。それには、対応する端板も設けられてもよい。
【0023】
部分引込みシリンダ箱60は、結合部1を横断するように延びる。また、クランク腕状板61、62を含む。カバー板63は、ここでも、閉じた箱構造を形成するためにも設けられる。
【0024】
図5bにおいて、ほとんどのカバー板は、部分引込みシリンダ箱40、60が部分引込みシリンダ箱50、60を部分的に貫いていることから分かるように覆われている。従って、2つの部分引込みシリンダ箱40、60を溶接した後に、クランク腕状板42は、クランク腕状板42’によって部分引込みシリンダ箱60に続く。
【0025】
図3は、平行に延び、且つ結合部1における部分引込みシリンダ箱60の端部に設けられ、且つその端部に溶接された座屈支柱12、13を詳細に示している。引込みシリンダ箱の領域内において、連続的な座屈支柱12、13は、該シリンダ箱自体が座屈に対して十分な安定性を与えるため、必ずしも必要ではない。
【0026】
図3に加えて
図6も、特に、他の金属板箱構造70が、安定化付加箱として付加的に設けられていることを示している。それは、また、完全に閉じられた箱型状の金属板箱構造である。側板及びカバー板も設けられている。この金属板箱構造70は、金属板箱構造3の全体を堅牢にし、且つ、2つの部分引込みシリンダ箱40、50と連結する。該金属板箱構造70は、
図6から分かるように、中心Mにおいて、結合部1における比較的に柔らかい外殻の下部と接続されている。この接続は、外殻の下部に無視できる程度の大きさでのみなされる。本質的に、2つの引込みシリンダ取付け具33、すなわち力導入点は、互いに支えられる。その上、安定化を図る力が、結合部1の縦軸方向に対して垂直な外殻の下部によっても吸収され得る。外殻の下部は、この方向において、極めて高い耐荷重を有する。