(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】トンネル掘削装置
(51)【国際特許分類】
E21D 9/10 20060101AFI20240409BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
E21D9/10 G
E21D9/06 302E
(21)【出願番号】P 2020058002
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】関山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】浅野 浩
(72)【発明者】
【氏名】荒川 拓
(72)【発明者】
【氏名】寺田 紳一
(72)【発明者】
【氏名】森岡 栄一
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-220181(JP,A)
【文献】特開2001-20673(JP,A)
【文献】特開2014-129667(JP,A)
【文献】特開2003-336488(JP,A)
【文献】特開平11-336484(JP,A)
【文献】特開平10-311198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/10
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタヘッドを支持する前胴部と、
前記前胴部の後方に配置される後胴本体と、掘削を行う際の反力を得るために前記後胴本体に設けられ且つ前記後胴本体に向けて凹状に形成される溝部と前記溝部に配置される車輪部とを含むグリッパ部とを、有する後胴部と、
を備えるトンネル掘削装置。
【請求項2】
前記グリッパ部は、グリッパ本体を、さらに含み、
前記溝部は、前記グリッパ本体の外周面から凹んで形成され、
前記車輪部は、前記溝部に配置された状態で、前記グリッパ本体の外周面よりも内側に配置される、
請求項1に記載のトンネル掘削装置。
【請求項3】
前記溝部は、前記グリッパ本体の前部から後方に向けて延びる第1溝部を、有し、
前記車輪部は、前記グリッパ本体の前方から前記第1溝部に着脱可能に装着される第1車輪部を、有する、
請求項2に記載のトンネル掘削装置。
【請求項4】
前記溝部は、前記グリッパ本体の後部から前方に向けて延びる第2溝部を、有し、
前記車輪部は、前記グリッパ本体の後方から前記第2溝部に着脱可能に装着される第2車輪部を、有する、
請求項2又は3に記載のトンネル掘削装置。
【請求項5】
前記車輪部は、車輪と、前記車輪を回転可能に保持するキャリアと、前記キャリアから突出する1対の突出部とを、有し、
1対の前記突出部は、前記溝部の1対の側壁に設けられる係合溝に、係合する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のトンネル掘削装置。
【請求項6】
前記グリッパ部は、前記後胴本体の下方に配置される第1グリッパと、前記後胴本体の上方に配置される第2グリッパとを、有し、
前記溝部は、前記第1グリッパに設けられる、
請求項1から5のいずれか1項に記載のトンネル掘削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土木作業において岩盤を掘削するためにトンネル掘削装置が用いられている。トンネル掘削装置は、機械前面にカッタを含むカッタヘッドと、機械後部の左右側面に設けられたグリッパ装置とを、備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このようなトンネル掘削装置では、左右のグリッパ装置が、トンネル左右側壁に対して押し付けられる。この状態で、カッタヘッドを回転させながらスラストシリンダを伸ばすことによって、カッタヘッドが岩盤に押し付けられる。これにより、岩盤が掘削される。
【0004】
ここで、スラストシリンダの伸張量が所定量に到達した場合、岩盤の掘削作業が中断され、トンネル掘削装置は前進させられる。その後、上記の岩盤の掘削作業が再開される。このように、岩盤を繰り返し掘削することによって、トンネルが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のトンネル掘削装置では、スラストシリンダの伸張量が所定量に到達すると、トンネル掘削装置を前進させる必要がある。このため、一般的には、トンネル掘削装置には、走行用の車輪が設けられる。しかしながら、走行用の車輪を、トンネル掘削装置の外周面に装着した場合、トンネル掘削装置が径方向に大型化するおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、径方向に小型化を図ることができるトンネル掘削装置を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるトンネル掘削装置は、前胴部と、後胴部とを、備える。前胴部は、カッタヘッドを支持する。後胴部は、後胴本体と、グリッパ部とを、有する。後胴本体は、前胴部の後方に配置される。グリッパ部は、掘削を行う際の反力を得るために後胴本体に設けられる。グリッパ部は、溝部と、車輪部とを、含む。溝部は、後胴本体に向けて凹状に形成される。車輪部は、溝部に配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トンネル掘削装置を径方向に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るトンネル掘削装置の構成を示す斜視図。
【
図2】
図1のトンネル掘削装置の前胴部及び後胴部を示す斜視図。
【
図7】
図5のボトムグリッパに車輪部を配置した図。
【
図8】
図6のボトムグリッパに車輪部を配置した図。
【
図10】ボトムグリッパに配置される車輪部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明に係るトンネル掘削装置1が、図面を参照して説明される。本実施形態のトンネル掘削装置1は、TBM(Tunnel Boring Machine)と呼ばれる。TBMは、例えば、グリッパTBM及びハードロックTBMを含む。本実施形態のトンネル掘削装置1は、土木用の掘削だけでなく、鉱山の掘削にも用いられる。
【0012】
(トンネル掘削装置の全体構成)
図1は、本実施形態のトンネル掘削装置1を示す斜視図である。本実施形態のトンネル掘削装置1は、グリッパ部71によってトンネル内壁に支持された状態でカッタヘッド21を回転させて掘削を行う。
【0013】
図1に示すように、トンネル掘削装置1は、前胴部11と、後胴部12と、接続部13と、メインビーム14と、架台15と、作業台16と、ベルトコンベア17と、リアサポート18とを、備える。
【0014】
前胴部11は、前端にカッタヘッド21を有する。カッタヘッド21は、岩盤の掘削を行う。後胴部12は、前胴部11の後側に配置される。後胴部12は、グリッパ部71を有する。グリッパ部71は、トンネルの内壁を押圧し、掘削を行う際の反力を得る。
【0015】
接続部13は、前胴部11及び後胴部12を接続する。詳細には、接続部13は、後胴部12に対して前胴部11が屈曲するように接続する。接続部13は、複数のスラストシリンダ13aを有する。各スラストシリンダ13aの一端は、前胴部11に回動可能に接続される。各スラストシリンダ13aの他端は、後胴部12に回動可能に接続される。
【0016】
メインビーム14は、後胴部12から後方に向かって延びる。架台15は、メインビーム14の後端に回動可能に取り付けられる。作業台16は、掘削後のトンネル内壁に網を張る作業を行うために設けられる。作業台16は、架台15の上側に配置される。
【0017】
ベルトコンベア17は、前胴部11から後胴部12を通過して架台15の下側にまで延びる。ベルトコンベア17は、カッタヘッド21によって掘削された岩石及び土砂等を、後方に搬送する。
【0018】
リアサポート18は、メインビーム14に設けられる。リアサポート18は、後胴部12を前進させる際にメインビーム14を支持する。
【0019】
なお、車両には、制御装置、電源装置、及び油圧システム等を有する車両(図示せず)が、含まれる。制御装置、電源装置、及び油圧システム等は、カッタヘッド21、ベルトコンベア17、複数のスラストシリンダ13a、及びグリッパ部71等を作動させるために用いられる。
【0020】
(前胴部)
図1に示すように、前胴部11は、カッタヘッド21を支持する。例えば、前胴部11は、カッタヘッド21と、カッタヘッドサポート22と、バーチカルサポート23と、1対のサイドサポート24と、ルーフサポート26とを、有する。
【0021】
カッタヘッド21は、前胴部11の前部に設けられる。詳細には、カッタヘッド21は、カッタヘッドサポート22に対して、回転可能に設けられる。カッタヘッド21は、ヘッド本体21aと、複数のローラカッタ21bと、複数のスクレーパ21cとを、有する。
【0022】
複数のローラカッタ21bは、ヘッド本体21aにおける掘削側の表面に、設けられる。複数のスクレーパ21cは、掘削された岩石をカッタヘッド21の内側に取り込む。複数のスクレーパ21cは、ヘッド本体21aの外周部に互いに間隔を隔てて配置される。
【0023】
カッタヘッドサポート22は、カッタヘッド21の後側に配置される。カッタヘッドサポート22は、カッタヘッド21を回転可能に支持する。カッタヘッドサポート22には、複数のスラストシリンダ13aの前端部が接続される。
【0024】
バーチカルサポート23、一対のサイドサポート24及びルーフサポート26は、カッタヘッドサポート22をトンネルの内壁に対して支持し、掘削中にトンネルの内壁を摺動する。バーチカルサポート23、一対のサイドサポート24、及びルーフサポート26は、カッタヘッドサポート22の周囲を囲むように、カッタヘッドサポート22に取り付けられる。
【0025】
バーチカルサポート23、一対のサイドサポート24、及びルーフサポート26は、カッタヘッドサポート22の下方、カッタヘッドサポート22の幅方向の両側、及びカッタヘッドサポート22の上方に、各別に配置される。
【0026】
バーチカルサポート23、一対のサイドサポート24、及びルーフサポート26は、図示しないリンク機構及び油圧シリンダによって、径方向においてカッタヘッドサポート22から離れる方向、及び径方向においてカッタヘッドサポート22に近づく方向に移動する。
【0027】
(後胴部)
図2に示すように、後胴部12は、グリッパキャリア70(後胴本体の一例)と、グリッパ部71と、走行用の車輪部80とを、有する。後胴部12は、第1から第3油圧シリンダ90,91,92をさらに有する。
【0028】
・グリッパキャリア
図2に示すように、グリッパキャリア70は、前胴部11の後方に配置される。例えば、グリッパキャリア70は、接続部13及びリアサポート18(
図1を参照)の間に配置される。グリッパキャリア70は、接続部13の複数のスラストシリンダ13aの後端に接続される。グリッパキャリア70は、メインビーム14に支持される。グリッパキャリア70には、グリッパ部71が設けられる。例えば、グリッパキャリア70は、第1から第3油圧シリンダ90,91,92を介して、グリッパ部71を支持する。
【0029】
・グリッパ部
図2に示すように、グリッパ部71は、掘削を行う際の反力を得るために、グリッパキャリア70に設けられる。例えば、グリッパ部71は、掘削の際にトンネルの内壁を押圧し、後胴部12をトンネルの内壁に対して支持する。グリッパ部71は、グリッパキャリア70から外側に突出した状態で、グリッパキャリア70に配置される。
【0030】
図2及び
図3に示すように、グリッパ部71は、ボトムグリッパ72(第1グリッパの一例)と、アッパグリッパ73(第2グリッパの一例)とを、有する。グリッパ部71は、1対のサイドグリッパ74を、さらに有する。
【0031】
図3に示すように、ボトムグリッパ72は、グリッパキャリア70の下側に配置される。ボトムグリッパ72は、1対の第1油圧シリンダ90を介して、グリッパキャリア70に支持される。1対の第1油圧シリンダ90は、互いに平行に配置される。1対の第1油圧シリンダ90は、上下方向D1に沿うように配置される。
【0032】
アッパグリッパ73は、グリッパキャリア70の上側に配置される。アッパグリッパ73は、1対の第2油圧シリンダ91を介して、グリッパキャリア70に支持される。1対の第2油圧シリンダ91は、互いに平行に配置される。1対の第2油圧シリンダ91は、1対の第1油圧シリンダ90の上方において、上下方向D1に沿って配置される。
【0033】
図4に示すように、1対のサイドグリッパ74は、グリッパキャリア70の幅方向D2の両側に配置される。各サイドグリッパ74は、1対の第3油圧シリンダ92を介して、グリッパキャリア70に支持される。1対の第3油圧シリンダ92は、互いに平行に配置される。1対の第3油圧シリンダ92は、幅方向D2に沿って配置される。
【0034】
図3及び
図4に示すように、各第1油圧シリンダ90、各第2油圧シリンダ91、及び各第3油圧シリンダ92は、シリンダ90a,91a,92aと、シリンダ90a,91a,92a内に配置されたピストンに接続されたロッド90b,91b,92bとを、有する。シリンダ90a,91a,92aの端部は、グリッパキャリア70に取り付けられる。
【0035】
各第1油圧シリンダ90のシリンダ91aの端部、各第2油圧シリンダ91のシリンダ91aの端部、及び各第3油圧シリンダ92のシリンダ92aの端部は、グリッパキャリア70に取り付けられる。各第1油圧シリンダ90のロッド90bの端部は、ボトムグリッパ72に取り付けられる。各第2油圧シリンダ91のロッド91bの端部は、アッパグリッパ73に取り付けられる。各第3油圧シリンダ92のロッド92bの端部は、サイドグリッパ74に取り付けられる。
【0036】
1対の第1油圧シリンダ90の伸縮、例えばシリンダ90aに対するロッド90bの進退によって、ボトムグリッパ72は、グリッパキャリア70から離れる方向、又はグリッパキャリア70に近づく方向に、移動する。
【0037】
1対の第2油圧シリンダ91の伸縮、例えばシリンダ91aに対するロッド91bの進退によって、アッパグリッパ73は、グリッパキャリア70から離れる方向、又はグリッパキャリア70に近づく方向に、移動する。
【0038】
1対の第3油圧シリンダ92の伸縮、例えばシリンダ92aに対するロッド92bの進退によって、各サイドグリッパ74は、グリッパキャリア70から離れる方向、又はグリッパキャリア70に近づく方向に、移動する。
【0039】
上記の構成を有するグリッパ部71のボトムグリッパ72は、以下の構成をさらに有する。
図5に示すように、ボトムグリッパ72は、溝部76を有する。例えば、ボトムグリッパ72は、グリッパ本体75と、溝部76とを、含む。
【0040】
グリッパ本体75は、実質的に円弧状に形成される外周面75aを、有する。グリッパ本体75の外周面75aは、トンネルの内壁に接触する。詳細には、グリッパ本体75の外周面75aは、トンネルの下側の内壁に接触する。
【0041】
溝部76は、グリッパ本体75に設けられる。例えば、ボトムグリッパ72がグリッパキャリア70に支持された状態において、溝部76は、グリッパ本体75の下部に設けられる。溝部76は、グリッパキャリア70に向けて凹状に形成される。例えば、溝部76は、グリッパ本体75の外周面75aから凹んで形成される。
【0042】
図6に示すように、溝部76は、1対の第1溝部77と、1対の第2溝部78とを、有する。1対の第1溝部77は、グリッパ本体75の前部75bから後方に向けて延びる。1対の第1溝部77は、互いに平行になるように、グリッパ本体75に設けられる。1対の第2溝部78は、グリッパ本体75の後部75cから前方に向けて延びる。1対の第2溝部78は、互いに平行になるように、グリッパ本体75に設けられる。
【0043】
図5及び
図6に示すように、各第1溝部77及び各第2溝部78は、底面77aと、1対の側壁77bと、1対の係合溝77c(係合溝の一例)とを、有する。
【0044】
底面77aは、グリッパ本体75に設けられる。例えば、ボトムグリッパ72がグリッパキャリア70に支持された状態において、底面77aは、トンネルの下側の内壁と対向するように、グリッパ本体75に形成される。
【0045】
図5に示すように、1対の側壁77bは、互いに対向するように、グリッパ本体75に設けられる。例えば、1対の側壁77bは、底面77aからグリッパ本体75の外周面75aに向けて延びる。
【0046】
1対の係合溝77cは、1対の側壁77bに各別に設けられる。各係合溝77cは、各側壁77bから凹んで形成される。各係合溝77cには、車輪部80の各突出部85(後述する)が配置される。
【0047】
図6に示すように、各第1溝部77における1対の係合溝77cは、グリッパ本体75の前部75bから後方に向けて延びる。各第1溝部77における1対の係合溝77cは、互いに対向するように、各第1溝部77における1対の側壁77bに各別に設けられる。
【0048】
各第2溝部78における1対の係合溝77cは、グリッパ本体75の後部75cから前方に向けて延びる。各第2溝部78における1対の係合溝77cは、互いに対向するように、各第2溝部78における1対の側壁77bに各別に設けられる。
【0049】
・車輪部
図7及び
図8に示すように、車輪部80は、溝部76に配置される。車輪部80は、1対の第1車輪部81と、1対の第2車輪部82とを、有する(
図8を参照)。
【0050】
各第1車輪部81は、各第1溝部77に配置される。各第1車輪部81は、グリッパ本体75の外周面75aよりも内側に配置される(
図7を参照)。すなわち、各第1車輪部81は、各第1溝部77に配置された状態で、グリッパ本体75の外周面75aよりも内側に配置される。各第1車輪部81は、ボトムグリッパ72のグリッパ本体75の前部75bから各第1溝部77に着脱可能に装着される(
図8を参照)。
【0051】
各第2車輪部82は、各第2溝部78に配置される。各第2車輪部82は、グリッパ本体75の外周面75aよりも内側に配置される(
図7を参照)。すなわち、各第2車輪部82は、各第2溝部78に配置された状態で、グリッパ本体75の外周面75aよりも内側に配置される。各第2車輪部82は、ボトムグリッパ72のグリッパ本体75の後部75cから第2溝部78に着脱可能に装着される(
図8を参照)。
【0052】
図9及び
図10に示すように、各第1車輪部81及び各第2車輪部82は、1対の車輪83と、キャリア84と、1対の突出部85とを、有する。1対の車輪83は、レールRL上に配置される(
図7を参照)。1対の車輪83は、キャリア84に回転可能に装着される。
【0053】
キャリア84は、1対の車輪83を回転可能に保持する。キャリア84は、1対の保持プレート84aと、連結部84bとを、有する。1対の保持プレート84aは、互いに間隔を隔てて配置される。連結部84bは、1対の保持プレート84aを連結する。例えば、連結部84bは、1対の保持プレート84aと一体に形成される。
【0054】
1対の保持プレート84aの間には、1対の車輪83が配置される。例えば、各車輪83は、1対の保持プレート84aに固定される各軸部のまわりに、回転可能に配置される。
【0055】
1対の突出部85は、1対の保持プレート84aに各別に設けられる。1対の突出部85それぞれは、キャリア84から突出する。例えば、各突出部85は、各車輪83の回転軸C1が延びる方向と平行な方向において、各保持プレート84aから外方に突出する。
【0056】
各第1車輪部81における1対の突出部85は、各第1溝部77における1対の係合溝77cに、係合する。例えば、各第1車輪部81における1対の突出部85は、グリッパ本体75の前部75bから1対の係合溝77cに挿入される(
図10を参照)。この状態において、抜け止め部材87がグリッパ本体75の前部75bに取り付けられる。これにより、グリッパ本体75からの各第1車輪部81の抜け出しを、規制することができる。また、抜け止め部材87をグリッパ本体75から取り外すことによって、各第1車輪部81をグリッパ本体75から取り外すことができる。
【0057】
各第2車輪部82における1対の突出部85は、各第2溝部78における1対の係合溝77cに、係合する。例えば、各第2車輪部82における1対の突出部85は、グリッパ本体75の後部75cから1対の係合溝77cに挿入される(
図10を参照)。この状態において、抜け止め部材87がグリッパ本体75の後面に取り付けられる。これにより、グリッパ本体75からの各第2車輪部82の抜け出しを、規制することができる。また、抜け止め部材87をグリッパ本体75から取り外すことによって、各第2車輪部82をグリッパ本体75から取り外すことができる。
【0058】
このように、1対の第1車輪部81及び1対の第2車輪部82をグリッパ本体75に装着することによって、各第1車輪部81の車輪及び各第2車輪部82の車輪を、レールRL上に配置することができる。
【0059】
<トンネル掘削装置の動作>
本実施形態のトンネル掘削装置1は、まず、ボトムグリッパ72、アッパグリッパ73、及び1対のサイドグリッパ74をグリッパキャリア70から突出させることによって、ボトムグリッパ72、アッパグリッパ73、及び1対のサイドグリッパ74がトンネルの内壁を押圧する。これにより、後胴部12がトンネルの内壁に支持される。
【0060】
この状態において、スラストシリンダ13aを伸長させることによって、前胴部11を後胴部12に対して前進させる。これにより、カッタヘッド21を岩盤に接触させ、岩盤の掘削がカッタヘッド21によって行われる。
【0061】
この際には、バーチカルサポート23、一対のサイドサポート24、及びルーフサポート26を、トンネル内壁に摺動させることによって、岩盤の掘削が安定的に行われる。
【0062】
次に、リアサポート18によってメインビーム14を上方に支持した状態で、スラストシリンダ13aを縮めることによって、後胴部12が前進する。このような動作を繰り返すことによって、トンネル掘削装置1は掘削を行いながら前進する。
【0063】
なお、ボトムグリッパ72(グリッパ本体75)の前部75bには、1対の後退用の油圧シリンダ(図示しない)が取付可能になっている。1対の後退用の油圧シリンダは、ボトムグリッパ72及び1対のレールRLに間に配置され、ボトムグリッパ72及び1対のレールRLを連結する。1対の後退用の油圧シリンダを伸縮することによって、トンネル掘削装置1を後退させることができる。
【0064】
以下では、トンネル掘削装置1を用いて、トンネルを掘削する工程を説明する。
【0065】
まず、
図11Aに示すように、ステップS1では、既設の2本トンネルT0から、互いに略平行な3本の第1トンネルT11,T12,T13(
図11Fを参照)を掘削するために、第1掘削線L11,L12,L13が設定される。また、3本の第1トンネルT11,T12,T13に交差する第2トンネルT2(
図11Hを参照)を掘削するために、第2掘削線L2が設定される。
【0066】
続いて、
図11Bに示すように、ステップS2では、既設のトンネルT0を第1掘削線L11に向けて分岐させるために、トンネル掘削装置1は、トンネルT0及び第1掘削線L11の交差位置の近傍に移動する。例えば、トンネル掘削装置1は、牽引車によって牽引され、交差位置の近傍に配置される。
【0067】
このとき、交差位置には、コーナー用反力受け部30が設置されている。これにより、既設のトンネルT0から第1トンネルT11に分岐する屈曲部分において、トンネル掘削装置1は、グリッパ部71(サイドグリッパ74)をコーナー用反力受け部30に当接させながら、第1トンネルT11の掘削を開始することができる。
【0068】
続いて、
図11Cに示すように、ステップS3では、トンネル掘削装置1が、第1掘削線L11に沿って岩盤を掘削する。これにより、第1トンネルT11が、第1掘削線L11の位置に形成される。
【0069】
なお、第1トンネルT11の終端が既設のトンネルT0に接続する交差位置には、上述したコーナー用反力受け部30が配置される(
図11B及び
図11Cを参照)。
【0070】
続いて、
図11Dに示すように、ステップS4では、トンネル掘削装置1は、第1トンネルT11の掘削開始位置(
図11Bに示す位置)にまで、後退する。
【0071】
続いて、
図11Eに示すように、ステップS5では、既設のトンネルT0を第1掘削線L12に向けて分岐させるために、トンネル掘削装置1は、トンネルT0及び第1掘削線L12の交差位置の近傍に移動する。例えば、トンネル掘削装置1は、牽引車によって牽引され、交差位置の近傍に配置される。
【0072】
続いて、
図11Fに示すように、ステップS6では、ステップS3と同様の工程によって、トンネル掘削装置1が、第1掘削線L12に沿って岩盤を掘削する。これにより、第1トンネルT12が、第1掘削線L12の位置に形成される。第1トンネルT12の掘削後には、トンネル掘削装置1は、第1トンネルT12の掘削開始位置(
図11Eに示す位置)にまで、後退する。
【0073】
ここで、第1掘削線L12及び第2掘削線L2の交差位置を含む第1トンネルT12の内壁には、第1トンネルT12の内壁を補強するための補強剤が塗布される。ここでは、第1トンネルT12における上下の内壁の所定の補強範囲Rが、補強剤によって補強されることが好ましい。
【0074】
この場合、第1トンネルT12の上側の内壁の補強範囲Rは、アッパグリッパ73が第1トンネルT12の上側の内壁に接触する範囲以上であることが好ましい。第1トンネルT12の下側の内壁の補強範囲Rは、ボトムグリッパ72が第1トンネルT12の内壁に接触する範囲以上であることが好ましい。また、第1トンネルT12の上側の内壁の補強範囲R及び第1トンネルT12の下側の内壁の補強範囲Rは、第2トンネルT2の直径以上であることがより好ましい。
【0075】
その後、上記の第1トンネルT12と同様の工程で、トンネル掘削装置1は、第1掘削線L13に沿って岩盤を掘削する。これにより、第1トンネルT13が、第1掘削線L13の位置に形成される。第1トンネルT13の掘削後には、トンネル掘削装置1は、第1トンネルT13の掘削開始位置にまで、後退する。
【0076】
次に、
図11Gに示すように、ステップS7では、既設の第1トンネルT13を第2掘削線L2に向けて分岐させるために、トンネル掘削装置1は、第1トンネルT13及び第2掘削線L2の交差位置の近傍に移動する。例えば、トンネル掘削装置1は、牽引車によって牽引され、交差位置の近傍に配置される。
【0077】
続いて、
図11Hに示すように、ステップS8では、トンネル掘削装置1が、コーナー用反力受け部30を用いて、第1トンネルT13から第2掘削線L2に進路を変更する。これにより、トンネル掘削装置1が、第2掘削線L2に沿って岩盤を掘削する。
【0078】
ここで、トンネル掘削装置1の後胴部12が第1トンネルT12に到達すると、第1トンネルT12及び第2トンネルT2の交差部では、後胴部12の1対のサイドグリッパ74は、第1トンネルT12及び第2トンネルT2の内壁から反力を受けることができない。
【0079】
このため、第1トンネルT12及び第2トンネルT2の交差部では、トンネル掘削装置1は、ボトムグリッパ72及びアッパグリッパ73を用いて、第1トンネルT12及び第2トンネルT2の交差部の内壁から反力を受ける。これにより、トンネル掘削装置1は、第2掘削線L2に沿って岩盤の掘削を続行することができる。
【0080】
その後、トンネル掘削装置1の後胴部12が、第1トンネルT12及び第2トンネルT2の交差部を通過した後には、後胴部12の1対のサイドグリッパ74は、前胴部11のカッタヘッド21によって掘削された第2トンネルT2の内壁から反力を受けることができる。
【0081】
このため、後胴部12が、第1トンネルT12及び第2トンネルT2の交差部を通過した後には、トンネル掘削装置1は、ボトムグリッパ72、アッパグリッパ73、及び1対のサイドグリッパ74を用いて、第2掘削線L2に沿って岩盤を掘削する。続いて、トンネル掘削装置1が第1トンネルT11に到達することによって、第1トンネルT11,T12,T13に交差する第2トンネルT2が、形成される。
【0082】
<まとめ>
上記の構成を有するトンネル掘削装置1では、車輪部80(第1車輪部81及び第2車輪部82)が、ボトムグリッパ72の溝部76(第1溝部77及び第2溝部78)に配置される。これにより、トンネル掘削装置1に車輪部80(第1車輪部81及び第2車輪部82)を設けたとしても、トンネル掘削装置1を径方向に小型化することができる。
【0083】
また、トンネル掘削装置1では、車輪部80(第1車輪部81及び第2車輪部82)が、溝部76(第1溝部77及び第2溝部78)に配置された状態で、ボトムグリッパ72のグリッパ本体75の外周面75aよりも内側に配置される。これにより、グリッパ本体75の外周面75aがトンネルの内壁を押圧した状態において、トンネルの内壁に対する車輪部80(第1車輪部81及び第2車輪部82)の接触を抑えることができる。
【0084】
また、トンネル掘削装置1では、第1車輪部81が、ボトムグリッパ72のグリッパ本体75の前部75bから第1溝部77に着脱可能に装着される。この場合、第1車輪部81をグリッパ本体75の前部75bから第1溝部77に容易に装着することができる。また、第1車輪部81を第1溝部77から容易に取り外すことができる。これにより、第1車輪部81を容易にメンテナンスすることができる。
【0085】
また、トンネル掘削装置1では、第2車輪部82が、ボトムグリッパ72のグリッパ本体75の後部75cから第2溝部78に着脱可能に装着される。この場合、第2車輪部82をグリッパ本体75の後部75cから第2溝部78に容易に装着することができる。また、第2車輪部82を第2溝部78から容易に取り外すことができる。これにより、第2車輪部82を容易にメンテナンスすることができる。
【0086】
また、トンネル掘削装置1では、車輪部80(第1車輪部81及び第2車輪部82)の1対の突出部85が、ボトムグリッパ72の溝部76(第1溝部77及び第2溝部78)の1対の係合溝77cに係合する。これにより、車輪部80(第1車輪部81及び第2車輪部82)を、ボトムグリッパ72の溝部76(第1溝部77及び第2溝部78)に容易に配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のトンネル掘削装置は、トンネル掘削装置を径方向に小型化することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 トンネル掘削装置
11 前胴部
12 後胴部
21 カッタヘッド
70 グリッパキャリア
71 グリッパ部
72 ボトムグリッパ
73 アッパグリッパ
75 グリッパ本体
75a グリッパ本体の外周面
76 溝部
77 第1溝部
77c 係合溝
78 第2溝部
80 車輪部
81 第1車輪部
82 第2車輪部
84 キャリア
85 突出部