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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】端子
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20240409BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20240409BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H02K3/50 Z
H02K5/22
H02K3/52 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020061047
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021164181
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 友久
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-021824(JP,A)
【文献】特開2013-175398(JP,A)
【文献】特開昭63-190265(JP,A)
【文献】特開2004-312831(JP,A)
【文献】特開平09-121496(JP,A)
【文献】実開昭62-088372(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00- 3/52
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延在する端子であって、
前記一方向に交差する方向に分岐した第1導電部および第2導電部と、
前記一方向に交差する方向において、前記第1導電部と前記第2導電部との間に形成された間隙と、
を備え、
前記間隙は、前記一方向に延在しており、
前記一方向に交差する方向において、前記間隙の一部分における長さは、当該間隙の他の部分における長さと同じか又は大きく、
前記第2導電部の一部は、前記一方向に突出した突出部を備え、
前記第1導電部の曲げ剛性は、前記第2導電部の曲げ剛性より小さく、
前記第1導電部及び前記第2導電部の一方には、第1凹部があり、
前記第1導電部及び前記第2導電部の他方には、第2凹部があり、
前記第1凹部と前記第2凹部とは対向しており、
前記一方向において、前記第1凹部の高さと前記第2凹部の高さとが異なる、
端子。
【請求項2】
一方向に延在する端子であって、
前記一方向に交差する方向に分岐した第1導電部および第2導電部と、
前記一方向に交差する方向において、前記第1導電部と前記第2導電部との間に形成された間隙と、
を備え、
前記間隙は、前記一方向に延在しており、
前記一方向に交差する方向において、前記間隙の一部分における長さは、当該間隙の他の部分における長さと同じか又は大きく、
前記第2導電部の一部は、前記一方向に突出した突出部を備え、
前記第1導電部の曲げ剛性は、前記第2導電部の曲げ剛性より小さく、
前記第1導電部及び前記第2導電部の一方には、第1凹部があり、
前記第1導電部及び前記第2導電部の他方には、第2凹部があり、
前記第1凹部と前記第2凹部とは対向しており、
前記第1凹部と前記第2凹部とは、形状及び寸法のうち、少なくともいずれかが異なる、
端子。
【請求項3】
前記第1凹部と前記第2凹部との組が複数設けられている、請求項1又は2に記載の端子。
【請求項4】
前記第1導電部は、外側面と、当該外側面から突出した突起部とを有する、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の端子。
【請求項5】
前記第1導電部のうち、前記一方向に突出した突出部側の部分が、前記一方向に対して傾斜して前記第2導電部から離れて延在している、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の端子。
【請求項6】
前記第1導電部の前記第2導電部に対向する面のうち前記一方向に突出する突出部側の部分、及び前記第2導電部の前記第1導電部に対向する面のうち前記一方向に突出する突出部側の部分のうち、少なくともいずれかに、複数の凹部及び複数の凸部のうち少なくともいずれかが設けられる、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の端子。
【請求項7】
前記第1導電部及び前記第2導電部は、単一の導電部材で形成されている、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の端子。
【請求項8】
前記一方向に対して交差する方向において、前記第1導電部の長さが、前記第2導電部の長さよりも小さい、請求項1乃至のいずれか1つに記載の端子。
【請求項9】
前記一方向において、前記間隙は、前記第1導電部に向かって傾斜して延在している、請求項1乃至のいずれか1つに記載の端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子に関する。
【背景技術】
【0002】
モータのステータコアにコイルを巻き回させてステータを組む場合、端子に導線を絡げ、ステータ突極に巻回してコイルを形成する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-195068号公報
【文献】特開平07-59288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載用モータ等において、コイルの導線を覆う絶縁用被覆にポリイミド等の耐熱性樹脂が使われる場合がある。耐熱性樹脂で被覆された導線を端子に結線する際、一般的なはんだ付けでは処理温度が不足して被覆を溶かすことができない。そこで、端子材料である金属に電流を流して発熱させることにより、導線を露出させて端子との電気伝導を可能にさせるヒュージング処理(熱カシメ)が用いられる。
【0005】
ヒュージング処理によって導線が細くなることにより、車載用モータ等の振動が大きいモータにおいては、固着させた導線が断線したり、端子から外れたりしやすくなる。
【0006】
一つの側面では、導線の断線や外れを抑制できる端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る端子は、一方向に延在する端子であって、前記一方向に交差する方向に分岐した第1導電部および第2導電部と、前記一方向に交差する方向において、前記第1導電部と前記第2導電部との間に形成された間隙と、を備え、前記間隙は、前記一方向に延在しており、前記一方向に交差する方向において、前記間隙の一部分における長さは、当該間隙の他の部分における長さと同じか又は大きく、前記第2導電部の一部は、前記一方向に突出した突出部を備え、前記第1導電部の曲げ剛性は、前記第2導電部の曲げ剛性より小さく、前記第1導電部及び前記第2導電部の一方には、第1凹部があり、前記第1導電部及び前記第2導電部の他方には、第2凹部があり、前記第1凹部と前記第2凹部とは対向しており、前記一方向において、前記第1凹部の高さと前記第2凹部の高さとが異なる
また、本発明の他の一態様に係る端子は、一方向に延在する端子であって、前記一方向に交差する方向に分岐した第1導電部および第2導電部と、前記一方向に交差する方向において、前記第1導電部と前記第2導電部との間に形成された間隙と、を備え、
前記間隙は、前記一方向に延在しており、前記一方向に交差する方向において、前記間隙の一部分における長さは、当該間隙の他の部分における長さと同じか又は大きく、前記第2導電部の一部は、前記一方向に突出した突出部を備え、前記第1導電部の曲げ剛性は、前記第2導電部の曲げ剛性より小さく、前記第1導電部及び前記第2導電部の一方には、第1凹部があり、前記第1導電部及び前記第2導電部の他方には、第2凹部があり、前記第1凹部と前記第2凹部とは対向しており、前記第1凹部と前記第2凹部とは、形状及び寸法のうち、少なくともいずれかが異なる。
【0008】
一つの態様によれば、導線の断線や外れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態における端子の一例を示す正面図である。
図2図2は、第1の実施形態における熱カシメ処理前の端子の一例を示す正面図である。
図3図3は、第1の実施形態における熱カシメ処理後の端子の一例を示す正面図である。
図4図4は、第1の実施形態の実施形態における端子が装着されたモータの一例を示す斜視図である。
図5図5は、第2の実施形態における熱カシメ処理前の端子の一例を示す正面図である。
図6図6は、第2の実施形態における熱カシメ処理後の端子の一例を示す正面図である。
図7図7は、第3の実施形態における端子の一例を示す斜視図である。
図8図8は、第3の実施形態における端子が装着された上部インシュレータの一例を示す斜視図である。
図9図9は、変形例における端子の一例を示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示するモータ及び端子について図面を参照して説明する。なお、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。各図面において、説明を分かりやすくするために、後に説明するモータ1における軸方向(モータ1の回転軸方向)、径方向及び周方向のうち、少なくともいずれかを含む座標系を図示する場合がある。また、以下において、モータ1の回転軸方向を、単に「軸方向」と表記する場合がある。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態における端子の一例を示す正面図である。図2は、第1の実施形態における熱カシメ処理前の端子の一例を示す正面図である。図3は、第1の実施形態における熱カシメ処理後の端子の一例を示す正面図である。図4は、第1の実施形態の実施形態における端子が装着されたモータの一例を示す斜視図である。
【0012】
図4に示すモータ1は、例えば、ステータ20と、フレーム51と、ロータ52と、回転軸(シャフト)53とを含む。フレーム51は、例えば、ステータ20と、ロータ52と、シャフト53とを内部に収容する。ロータ52は、例えば、マグネットを構成部品として持つ。ロータ52は、ステータ20の内周側に配置される。シャフト53は、ロータ52に結合している。なお、本実施形態で説明するモータ1は、例えば、インナーロータ型のブラシレスモータである。また、モータ1は、例えば、車載用モータとして用いられる。
【0013】
ステータ20は、ステータコア30と、上部インシュレータ21と、下部インシュレータ22とを備える。ステータコア30は、例えば、ケイ素鋼板等の軟磁性材料からなる鋼板のコアが、所定枚数、軸方向に積み重ねられて構成されている。ステータコア30は、径方向において環状部からロータ52に向かって延在する複数のティース31を有する。本実施形態では、ステータコア30は、例えば、12個のティース31を有しているが、その数は特に限定されない。各ティース31は、環状部の周方向において等角度間隔で配置されており、各ティース31それぞれの先端は、周方向に広がる磁極部を有している。なお、ステータコア30は、磁性体の一例である。
【0014】
インシュレータ21及び22は、軸方向において、ステータコア30における両側面を覆っている。インシュレータ21及び22は、例えば、絶縁性樹脂を用いた射出成形によって形成される。上部インシュレータ21には、凹部21aが設けられる。凹部21aには、例えば、後に説明する端子10が埋め込まれる。なお、上部インシュレータ21及び下部インシュレータ22は、インシュレータの一例である。また、上部インシュレータ21及び下部インシュレータ22を区別せずに表現する場合に、インシュレータ21及び22と表記する場合がある。
【0015】
図4に示すように、各ティース31には、インシュレータ21及び22を介して、コイル40が巻き回される。コイル40から引き出された導線41は、端子10に接続される。なお、導線41は、コイルから引き出された導線の一例である。また、図4においては、導線41が端子10に溶着される前の状態を示す。
【0016】
端子10は、例えば、外部の装置や配線に電気的に接続される。各端子10は、例えば、いずれか1つの上部インシュレータ21の凹部21aに1つ埋め込まれることにより、軸方向に延在する。図4においては、12個の凹部21aにそれぞれ端子10が埋め込まれたモータ1が開示されているが、モータ1に含まれる端子10の数は特に限定されない。
【0017】
上述したように、端子10には、コイル40から引き出された導線41が接続される。端子10には、コイル40から引き出された導線41が、例えば後に説明する熱カシメ処理により溶着される。本実施形態においては、導線41には、例えばポリイミド等の耐熱性樹脂が被覆として用いられた、直径0.5mm程度の金属線が用いられる。導線41の被覆が、例えばヒュージング又は熱カシメ等により剥がされることで、導線41は端子10と電気的に接続される。
【0018】
図1に示すように、本実施形態における端子10は、一方向(図示の例では軸方向)に延在しており、2つの導電部である第1導電部11及び第2導電部12と、一方向(軸方向)に突出した突出部としての外部接続端子13と、連結部14とを含む。端子10は、例えば単一の導電部材である板材を打ち抜くことにより形成される。導電部材には、例えば、銅や真鍮等の電気伝導度の高い金属が用いられる。なお、軸方向とは、後述するモータ1の回転軸の方向をいう。
【0019】
2つの導電部である第1導電部11及び第2導電部12は、直接又は間接につながっている。例えば、2つの導電部である第1導電部11及び第2導電部12は、連結部14につながっており、この連結部14から分岐して形成される。第1導電部11及び第2導電部12は、軸方向と交差する方向(例えば、軸方向に直交する方向であり、図面では第1導電部11及び第2導電部の一方から他方に向かう左右方向)において分岐し、間隙15を隔てて相互に対向する。間隙15は、導線41が挿入されるフック部となる。間隙15は、例えば一方向(軸方向)に延在する。本実施形態において、間隙15の幅は、例えば、導線41の外形よりもやや小さく設定される。
【0020】
図1に示すように、本実施形態において、外部接続端子13が延在する方向(図面の上下方向)と直交する方向(図面の左右方向)における、端子10の第1導電部11の幅W1は、第2導電部12の幅W2よりも小さくなるように形成される。なお、幅W1は、第1導電部の幅方向における長さの一例であり、幅W2は、第2導電部の幅方向における長さの一例である。
【0021】
また、本実施形態において、第1導電部11には、軸方向における外部接続端子13側(図面の上側)の部分に傾斜面11bが形成される。傾斜面11bは、第1導電部11と対向する第2導電部12が延在する方向に対して傾斜し、第2導電部12から離れて延在する。傾斜面11bと第2導電部12との距離は、例えば、連結部14から外部接続端子13に向かうにつれて大きくなっている。傾斜面11bは、導線41が間隙15に挿入される際に、導線41を誘い込むガイド部分となる。
【0022】
本実施形態において、第1導電部11及び第2導電部12の一方には第1凹部11aがあり、第1導電部11及び第2導電部12の他方には第2凹部12aがある。第2凹部12aの外形は、第1凹部11aの外形と同じか、又は小さい。第1凹部11aと第2凹部12aとは対向している。具体的には、図1に示すように、第1導電部11の第2導電部12と対向する面には、第1凹部11aが形成される。同様に、第2導電部12の第1導電部11と対向する面には、第2凹部12aが形成される。本実施形態においては、第1凹部11a及び第2凹部12aは、正面視においてそれぞれ略半円弧状に形成され、また相互に対向して形成される。これにより、第1凹部11a及び第2凹部12aは、熱カシメ処理により、合わさって略楕円形状を形成する。また、本実施形態においては、第1凹部11aの大きさと、第2凹部12aの大きさとは略均衡であるが、これに限られない。
【0023】
また、本実施形態においては、図1に示すように、第1凹部11aと第2凹部12aとは、軸方向において、高さが相互に異なる。具体的には、軸方向において、第1凹部11aは、第2凹部12aよりも上方向に位置する。なお、実施形態はこれに限られず、例えば、軸方向において、第2凹部12aが、第1凹部11aよりも上方向に位置するような構成であってもよい。
【0024】
外部接続端子13は、第2導電部12から、軸方向に延在する。外部接続端子13には、例えば電源等の外部の装置や、他の端子10に接続するための配線が電気的に接続される。
【0025】
連結部14は、軸方向において、外部接続端子13とは反対の方向に延在する。連結部14は、上部インシュレータ21の凹部21aに挿入される。連結部14には、複数の凹凸部14aが形成される。なお、凹凸部14aは、連結部の外側面に形成された凹凸の一例である。
【0026】
次に、端子10に導線41が溶着される熱カシメ処理について説明する。図2に示すように、間隙15に挿入される導線41は、第1導電部11の第2導電部12との間に挿入されて、導線41の被覆がはがされる。挿入された導線41は、第1凹部11aと第2凹部12aとに挟まれた領域に固定される。具体的には、導線41の外周の一部は、前記間隙内、例えば、第1凹部11aと間隙15とが接する辺11a1と、第2凹部12aと間隙15とが接する辺12a1とに挟まれる。
【0027】
次に、電極61及び62が端子10に押し付けられ、端子10に電流が流される。具体的には、端子10の第2導電部12の間隙15とは反対側の面が、固定された電極62に接するように固定される。また、端子10の第1導電部11の間隙15とは反対側の面には、矢印の方向に移動する電極61により押圧される。
【0028】
そして、電極61及び62から端子10に電流が流されることにより、端子10が発熱する。これにより、第1凹部11aと第2凹部12aとに挟まれた領域に固定された導線41の被覆が剥がされ、導線41と端子10とが溶着して電気的に接続される。また、端子10も、電極61から圧力を受けて変形し、又は移動する。
【0029】
その際、第2導電部12は変形せず、又は第2導電部12の変形量は第1導電部11の変形量よりも小さくなる。これは、上で述べたように、端子10の第1導電部11の幅W1は、第2導電部12の幅W2よりも小さくなるように形成されていることにより、第1導電部11の曲げ剛性が、第2導電部12の曲げ剛性よりも小さいためである。言い換えると、第1導電部11の連結部14側の端部の幅Wが第2導電部の幅より小さいので、第1導電部11の曲げ剛性が小さくなっており、電極61、62が押し付けられた際に第1導電部11は変形しやすい形状になっている。
【0030】
電極61により第2導電部12側に傾斜するように変形した第1導電部11の傾斜面11bは、第2導電部12の側面に接触する。この傾斜面11bが第1導電部11の側面に形成されていることで、第1導電部11を第2導電部12に傾斜するように変形させることが可能になる。軸方向に対する傾斜面11bの傾斜角度を調整することで、第2導電部12に対して第1導電部11を傾斜させた際の変形量を調整でき、作業性を改善することができる。例えば、軸方向に対する傾斜面11bの傾斜角度が大きければ、第2導電部12に対して第1導電部11を傾斜させた際の変形量が大きくなる一方で、太い導線を端子10に挿入可能になる。軸方向に対する傾斜面11bの傾斜角度が小さければ、それだけ第2導電部12に対して第1導電部11を傾斜させた際の変形量が小さくなる一方で、細い導線を端子10に挿入可能になる。
【0031】
上述した熱カシメ処理の結果、端子10及び導線41は、図3に示すように変形する。具体的には、第1導電部11が変形し、又は移動した結果、部分16において、第2導電部12とつながる。なお、部分16は、分岐した部分とは反対側の部分の一例である。
【0032】
また、導線41は、圧力と熱が加えられることにより潰されて細くなる。潰された導線41aは、第1導電部11及び第2導電部12のうち、少なくともいずれかに溶着する。その際、熱カシメ処理により第1凹部11a及び第2凹部12aが形成する略楕円形状によって、導線41aが必要以上に潰れることが抑制されるとともに、導線41aがより強固に端子10に固定される。例えば、導線41aは、モータの振動等により上にずれる際は辺12a1に引っかかり、下にずれる際は辺11a1に引っかかる。すなわち、導線41aの外周が辺11a1及び12a1に引っかかることにより、導線41aがモータ1の振動等により端子10から外れることを抑制できる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態における端子10は、モータ1の回転軸方向に延在する端子であって、分岐した第1導電部11および第2導電部12と、第1導電部11と第2導電部12との間に形成され、モータ1のコイル40から引き出された導線41が挿入される間隙15とを備える。間隙15の少なくとも一部分は、導線41の外形と同じか又は大きい。また、間隙15は、前記一方向に延在している。前記一方向(軸方向)に交差する方向(第1導電部および第2導電部の一方から他方に向かう方向)において、間隙15の当該一部分における長さは、間隙15の他の部分における長さと同じか又は大きい。
【0034】
第2導電部12は、モータ1の回転軸方向に延在する外部接続端子13を備える。第1導電部11の曲げ剛性は、第2導電部12の曲げ剛性より小さい。また、本実施形態におけるモータ1は、コイル40と、コイル40から引き出された導線41と、端子10とを備える。端子10は、分岐した第1導電部11および第2導電部12と、第1導電部11と第2導電部12との間に形成される間隙15とを備える。導線41は、間隙15内、例えば間隙15の当該一部分に挿入される。第1導電部11と第2導電部12とは、モータ1の回転軸方向において分岐した部分とは反対側の部分においてつながっている。導線41は、第1導電部11と第2導電部12とのうち、少なくともいずれかに溶着されている。これにより、導線41の断線や外れを抑制できる。
【0035】
また、本実施形態におけるモータ1は、コイル40が巻かれた磁性体20と、コイル40と磁性体20との間に配置されたインシュレータ21及び22とを備えてもよい。端子10にはインシュレータ21及び22と連結する連結部を備えてもよい。また、連結部14の外側面には凹凸が形成されていてもよい。これにより、差し込まれた端子10の連結部14と上部インシュレータ21の凹部21aとの摩擦力が大きくなるので、端子10が上部インシュレータ21から抜け去ることを抑制できる。
【0036】
また、本実施形態における端子10において、第1導電部11の幅方向における長さが、第2導電部12の幅方向における長さよりも小さくしてもよい。これにより、第2導電部12から軸方向へ延在する外部接続端子13の位置精度が向上するので、端子10に導線41を溶着させる場合におけるモータ1の組み立て性をより向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態における端子10は、第1凹部11aと第2凹部12aとで、モータ1の回転軸方向における高さが異なるように形成されてもよい。これにより、熱カシメ処理の際、導線41が端子10に固定されるので、作業性を向上できる。
【0038】
また、本実施形態における端子10は、第1導電部11のうち、モータ1の回転軸方向における外部接続端子13側の部分が、幅方向において、第2導電部12から離れる方向に傾斜していてもよい。これにより、第1導電部11の第2導電部12との間の間隙15が大きくなり、導線41の端子10を第1導電部11の第2導電部12との間に挿入しやすくなる。
【0039】
また、本実施形態における端子10の第1導電部11及び第2導電部12は、単一の導電部材で形成されていてもよい。これにより、例えば、曲げ加工を省略し、板材を打ち抜くだけで端子10を作製できるので、加工コストを削減できる。
【0040】
次に、本発明に係るその他の実施形態及び変形例について説明する。なお、以下の各実施形態及び各変形例において、先に説明した図面に示す部位と同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の各実施形態及び各変形例における各端子も、第1の実施形態における端子10と同様に、例えば図4に示すモータ1に実装され、コイル40から引き出された導線41が接続されて、外部の装置や配線に電気的に接続される。また、各端子も、第1の実施形態における端子10と同様に、単一の導電部材である板材を打ち抜くことにより形成される。
【0041】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態における熱カシメ処理前の端子の一例を示す正面図である。図6は、第2の実施形態における熱カシメ処理後の端子の一例を示す正面図である。図5に示すように、本実施形態における端子70は、2つの導電部である第1導電部71及び第2導電部72と、外部接続端子73と、連結部14とを含む。
【0042】
本実施形態における第1導電部71は、図2に示す端子10の第1導電部11とは異なり、第1凹部11aを含んでいない。また、本実施形態における第1導電部71は、外側面71cと、当該外側面71cから突出した突起部71dとを含む。突起部71dは、例えば、第2導電部72側とは幅方向(図面の左右方向)において反対側に突出する。なお、本実施形態においても、図2に示す端子10と同様に、連結部14側における第1導電部71の端部の幅W1aは、突起部71dの幅を含んでも、第2導電部72の幅よりも小さい。すなわち、第1導電部71の曲げ剛性は第2導電部72の曲げ剛性よりも小さく、変形しやすい。また、本実施形態においても、第1導電部71には、軸方向における外部接続端子73側(図面の上側)の部分に傾斜面71bが形成される。
【0043】
本実施形態における第2導電部72は、第2凹部12aを含んでいない点において、図2に示す端子10の第2導電部12とは異なる。第1導電部71及び第2導電部72は、軸方向と交差する方向(図示の例では、軸方向に直交する方向であり、図2の左右方向)において、間隙75を隔てて相互に対向する。また、本実施形態において、間隙75の幅W3は、例えば、導線41の外形と同じか大きくなるように形成される。
【0044】
また、本実施形態における外部接続端子73は、図6に示すように、曲線形状の部分76を介して、第2導電部72から軸方向に延在する点が、図2に示す端子10の外部接続端子13とは異なる。
【0045】
次に、端子70に導線41が溶着される熱カシメ処理について説明する。本実施形態においても、電極61及び62が端子70に押し付けられ、端子70に電流が流される。本実施形態において、導線41は、傾斜面71bをガイド部分として間隙75に挿入され、間隙75の底部に固定される。
【0046】
熱カシメ処理の結果、図6に示すように、第1導電部71は第2導電部72の側に傾く。具体的には、第1導電部71は、部分76において、第2導電部72とつながるように変形する。その際、第1導電部71の突起部71dは、第1導電部71の外側面71cにおける突起部71d以外の部分と略直線状となるように変形する。
【0047】
本実施形態においても、第2導電部72は変形せず、又は第2導電部72の変形量は第1導電部71の変形量よりも小さくなる。これは、上で述べたように、連結部14側における第1導電部17の端部の幅が、連結部14側における第2導電部72の端部の幅よりも小さくなるように形成されていることにより、第1導電部17の曲げ剛性が、第2導電部72の曲げ剛性よりも小さいためである。また、本実施形態においては、第1導電部71に突起部71dが設けられることにより、第1導電部71が、第2導電部72に比べて、より変形しやすく形成される。
【0048】
また、本実施形態においても、導線41は、圧力と熱が加えられることにより潰されて細くなる。潰された導線41bは、第1導電部71及び第2導電部72のうち、少なくともいずれかに溶着する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態における端子70において、第1導電部71は、外側面71cと、外側面71cから突出した突起部71dとが含まれる。これにより、第2導電部12から軸方向へ延在する外部接続端子13の傾きや変形をより抑制することができる。
【0050】
[第3の実施形態]
図7は、第3の実施形態における端子の一例を示す斜視図である。図8は、第3の実施形態における端子が装着された上部インシュレータの一例を示す斜視図である。図7に示すように、本実施形態における端子80は、2つの導電部である第1導電部81及び第2導電部82と、外部接続端子83と、連結部14とを含む。また、図8に示すように、本実施形態における端子80も、他の実施形態における端子と同様に、上部インシュレータ21の凹部21aに挿入される。
【0051】
本実施形態における第1導電部81は、図2に示す端子10の第1導電部11と同様に、第1凹部81a及び傾斜面81bを含む。また、本実施形態における第2導電部82は、図2に示す端子10の第2導電部12と同様に、第2凹部82aを含む。第1導電部81及び第2導電部82は、軸方向と交差する方向(図示の例では、軸方向に直交する方向(図7の左右方向))において、間隙85を隔てて相互に対向する。また、本実施形態において、導線41は、第1凹部81aと第2凹部82aとに挟まれた領域に固定される。なお、本実施形態においても、図7に示すように、第1凹部11aと第2凹部12aとは、一方向(軸方向)において、高さが相互に異なる。
【0052】
本実施形態における端子80の間隙85は、軸方向において、第1導電部81及び第2導電部82が分岐する部分に向かう方向(図面の下方向)に対して、第2導電部82から離れる方向に傾斜している部分87を含む。これにより、例えば第1導電部81の幅が、第2導電部82の幅と同一であるか、第2導電部82の幅よりも大きい場合においても、第1導電部81の曲げ剛性を、第2導電部82の曲げ剛性よりも小さくすることができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態における端子80において、間隙85は、モータ1の回転軸方向において、第1導電部81及び第2導電部82が分岐する部分に向かう方向に対して、第2導電部82から離れる方向に傾斜している部分87を有する。これにより、第1導電部81の曲げ剛性を、第2導電部82の曲げ剛性よりも小さくする場合における端子80の設計の自由度を向上できる。
【0054】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、図5に示すような突起部71dを備える端子70の第1導電部71及び第2導電部72に、図2に示す第1凹部11a及び第2凹部12aのような凹部が形成されるような構成であってもよい。この場合、熱カシメ処理において第1導電部71が傾くことにより、第1導電部71に形成された凹部と第2導電部72に形成された凹部とが、略円形状になるように形成される。これにより、熱カシメ処理における導線41の潰れを制御できる。なお、以下においては図1に示す第1の実施形態に係る端子10について説明するが、その他の実施形態に係る端子70及び80についても同様の変更が可能である。
【0055】
例えば、第1凹部11a及び第2凹部12aの形状、寸法、位置、組み合わせ等は一例であり、上に述べたものに限られない。例えば、第1凹部11a及び第2凹部12aの内周面の形状は、略半円弧状に限られず、直線や角を含んでもよい。例えば、第1凹部11a及び第2凹部12aの内周面の形状が、略多角形状であってもよい。
【0056】
また、第1凹部11aの大きさと、第2凹部12aの大きさとは不均衡であってもよい。例えば、第1凹部11aは、導線41の外形よりも大きく、第2凹部12aは、導線41の外形と同じ又は小さいような構成であってもよい。また、逆に第1凹部11aが第2凹部12aよりも小さいような構成であってもよい。これにより、導線41を端子10により確実に固定できる。
【0057】
また、第1凹部11a及び第2凹部12aの内周面の形状は、略半円弧状に限られず、周方向で曲率が変化する非円形状であってもよい。例えば、導線41が丸線である場合、導線41の外径よりも内径が大きい第1凹部11aの内周面の曲率のうち、少なくとも一部における曲率が、導線41の外径の曲率と略同一であってもよい。かかる構成によれば、設計上の公差による円弧の中心位置のずれを考慮する場合においても、導線41と第1凹部11aとが接する部分における安定性を確保できる。
【0058】
また、第1凹部11a及び第2凹部12aの組は、端子10に複数設けられていてもよい。これにより、1つの端子10に、複数の導線41を電気的に接続させることができる。
【0059】
また、第1導電部11の傾斜面11bと第1凹部11aとの間に位置する面、及び第2導電部12において当該面と対向する面に、複数の凹部又は凸部が形成されていてもよい。図9は、変形例における端子の一例を示す拡大正面図である。図9に示す端子10の第1導電部11の傾斜面11bと第1凹部11aとの間には、複数の凹凸部11cが形成される。また、第2導電部12において、複数の凹凸部11cと対向する部分には、複数の凹凸部12cが形成される。図9において、傾斜面11bにガイドされて間隙15に挿入される導線41は、複数の凹凸部11cと複数の凹凸部12cとに挟まれる部分を通過する。その際、導線41の被覆の一部が、複数の凹凸部11c及び複数の凹凸部12cとの摩擦により剥がれる。これにより、熱カシメ処理における被覆の剥離における作業性が向上する。なお、複数の凹凸部11c及び複数の凹凸部12cは、複数の凹部及び複数の凸部の一例である。
【0060】
また、第1導電部11の曲げ剛性を、第2導電部12の曲げ剛性よりも小さくする構成は、上で述べた構成に限られない。例えば、第1導電部11と第2導電部12とで、板材の厚さ(図面の奥行方向の寸法)が異なるような構成であってもよく、また各導電部を形成する材質が異なっていてもよい。
【0061】
また、外部接続端子13の形状は一例であり、軸方向から傾いた方向に延在していてもよく、また外部接続端子13の幅が第2導電部12の幅W2と略同一であってもよい。
【0062】
なお、実施形態に係るステータコア30は、例えば、複数(たとえば4個)のピースが折り曲げ可能な連結部を介して連結された連結コアを備える。ステータコア30は、複数(たとえば3個)の連結コアにより環状に形成されている。各連結コアは、それぞれがセグメントとして、ステータ全体としてのコアを形成する。
【0063】
また、上述した実施形態では、モータ1が車載用に用いられるインナーロータ型のブラシレスモータである場合について説明したが、モータ1は、車載用以外に用いられるモータであってもよく、アウターロータ型のブラシレスモータであってもよく、またブラシ付きモータやステッピングモータなどの公知の他のモータであってもよい。
【0064】
なお、上記の各実施形態においては、コイル40から引き出された導線41は、例えば、当該コイル40が巻き回された上部インシュレータ21に挿入された端子10に装着される例について説明したが、実施の形態はこれに限られない。例えば、コイル40から引き出された導線41は、当該コイル40が巻き回された上部インシュレータ21と周方向に隣接する他の上部インシュレータ21に挿入された端子10に装着されてもよい。これにより、端子10と、他の端子10等を結ぶ配線の配置の自由度を向上させることができる。
【0065】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 モータ、10,70,80 端子、11,71,81 第1導電部、12,72,82 第2導電部、13,73,83 外部接続端子、14 連結部、20 ステータ、21,22 インシュレータ、30 ステータコア、31 ティース、40 コイル、41 導線、51 フレーム、52 ロータ、53 回転軸(シャフト)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9