IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ FDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-無停電電源装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20240409BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240409BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240409BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H02J9/06 110
H02J7/34 G
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020065991
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021164335
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】草茅 佑亮
【審査官】大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/125495(WO,A1)
【文献】特開2005-073339(JP,A)
【文献】特開2008-022641(JP,A)
【文献】特開2007-306662(JP,A)
【文献】特開2007-151272(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0288549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H02J 7/34
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停電時に、外部電源に接続された負荷装置に電力を供給する二次電池と、
非停電時に、前記外部電源から電力の供給を受けて前記二次電池を充電する充電回路と、
前記二次電池から電力を前記負荷装置に放電する放電ライン上に設けられ、非停電時には当該放電ラインを遮断する開位置と停電時には当該放電ラインを導通させる閉位置とを有するスイッチ要素と、
前記放電ラインにおいて前記スイッチ要素と前記二次電池の間に直列的に設けられ、前記二次電池から前記負荷装置への向きの電流を選択的に通過させる第一の整流要素と、
前記スイッチ要素が開位置にある非停電時において前記負荷装置に接続された前記外部電源の電圧が前記第一の整流要素の前記負荷装置側に印加できるようにする素子であって、前記スイッチ要素と並列に設けられ、前記負荷装置から前記二次電池への向きの電流を選択的に通過させる第二の整流要素と、
停電時であることを検出する停電検出手段と、
を備え、
前記停電検出手段は、
前記第一の整流要素の両側の電位差を検知する電圧検知部と、
前記電圧検知部で検出した電位差に基づいて停電の状態を判定する停電判定部と、を備え、
前記停電判定部は、前記第一の整流要素の前記二次電池側の電圧が前記負荷装置側の電圧より高い場合に、停電時であると判定するよう構成されている、無停電電源装置。
【請求項2】
前記停電検出手段は、前記二次電池からの放電電流を検出する電流検知部をさらに備え、前記停電判定部は、停電時であるとの判定下で前記電流検知部で検出された放電電流が所定の値を下回る場合には、前記負荷装置は停止していると判定するよう構成されている、請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項3】
前記二次電池の充放電を制御して少なくとも充電処理及び放電処理を行う充放電制御部を備え、前記停電判定部は、前記充放電制御部に設けられている、請求項1又は2に記載の無停電電源装置。
【請求項4】
前記充放電制御部はプロセッサを備え、前記停電判定部は、前記放電処理以外の処理中に前記電圧検知部から前記停電時に対応する信号を入力すると前記プロセッサの割り込み機能を用いて停電時であると判定し、前記放電処理を開始するよう構成されている請求項3に記載の無停電電源装置。
【請求項5】
前記電流検知部は、前記外部電源、前記負荷装置及び前記二次電池に接続される共通の接地ラインに設けられている請求項2に記載の無停電電源装置。
【請求項6】
前記スイッチ要素及び前記第二の整流要素を1つのMOSFETで構成した請求項1~4のいずれか1項に記載の無停電電源装置。
【請求項7】
前記外部電源は、外部電力で駆動される直流電源である請求項1~6のいずれか1項に記載の無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電電源装置に関し、特に、停電検出装置を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
外部電源に接続された負荷装置に、停電時にバックアップのため電力を供給する二次電池を備えた無停電電源装置は、例えば、特許文献1から知られている。このような無停電電源装置には、停電しても負荷装置への電力供給が止まらないよう、停電の発生を検知する停電検出手段が設けられ、停電状態を検出すると、すぐに二次電池からの放電を開始し、負荷装置に電力を供給するようになっている。
【0003】
従来の、停電検出手段としては、外部電源に接続され、外部電源から電力を供給して二次電池を充電するための充電ラインの電圧を監視し、この電圧が停電時に低下するのを検知して停電であることを判定するものが知られている。しかし、この停電検出手段においては、停電を検出したあと、二次電池から負荷装置に電力を供給するよう切り替えると、充電ラインが二次電池の出力側と接続されているため、充電ラインの電圧はまたすぐに正常電圧に復帰してしまう。そのため、停電状態であるにもかかわらず、非停電状態であると判定されてしまうことになり好ましくない。例えば、停電が解消して商用電力が復帰しても、そのことを検出することができない。
【0004】
また、上記の停電検出手段に加えて、又はそれに代えて、二次電池の放電電流を監視して停電を検出することも行われているが、電流検知による停電の検出は、電圧検知による場合に比較して、停電発生から検出まで時間がかかり瞬停を検出できない場合があった。また、負荷装置の電力消費が小さい場合には、放電電流も小さく、停電検出を確実に行うことがむつかしいという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-10288
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためなされたものであり、確実にかつ瞬時に停電を検出することができ、しかも安価な停電検出手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
停電時に、外部電源に接続された負荷装置に電力を供給する二次電池と、
非停電時に、前記外部電源から電力の供給を受けて前記二次電池を充電する充電回路と、
前記二次電池から電力を前記負荷装置に放電する放電ライン上に設けられ、非停電時には当該放電ラインを遮断する開位置と停電時には当該放電ラインを導通させる閉位置とを有するスイッチ要素と、
前記放電ラインにおいて前記スイッチ要素と前記二次電池の間に直列的に設けられ、前記二次電池から前記負荷装置への向きの電流を選択的に通過させる第一の整流要素と、
前記スイッチ要素が開位置にある非停電時において前記負荷装置に接続された前記外部電源の電圧が前記第一の整流要素の前記負荷装置側に印加できるようにする素子であって、前記スイッチ要素と並列に設けられ、前記負荷装置から前記二次電池への向きの電流を選択的に通過させる第二の整流要素と、
停電時であることを検出する停電検出手段と、
を備え、
前記停電検出手段は、
前記第一の整流要素の両側の電位差を検知する電圧検知部と、
前記電圧検知部で検出した電位差に基づいて停電の状態を判定する停電判定部と、を備え、
前記停電判定部は、前記第一の整流要素の前記二次電池側の電圧が前記負荷装置側の電圧より高い場合に、停電時であると判定するよう構成されている、無停電電源装置である。
【0008】
本発明によれば、放電ライン上に設けられた第一の整流要素の両側の電位差は、非停電時には、この第一の整流要素の負荷装置側の電圧が二次電池側の電圧より高いものであるところ、停電時には、負荷装置側の電圧がゼロに低下するため、第一の整流要素の負荷装置側の電圧が二次電池側の電圧より低くなり、このため、前記電位差の正負を判定することにより、停電になった瞬間や非停電状態に戻った瞬間、さらには停電状態にあることなどを確実に検出することができる。
【0009】
この場合、前記停電検出手段は、前記二次電池からの放電電流を検出する電流検知部をさらに備え、前記停電判定部は、停電時であるとの判定下で前記電流検知部で検出された放電電流が所定の値を下回る場合には、前記負荷装置は停止していると判定するよう構成されているのが好ましい。
【0010】
従来、停電下において、負荷装置の稼働状態を把握するため、負荷装置から稼働状態を示す信号を無停電電源装置の制御装置に出力するように構成しているところ、上記のような構成により、負荷装置からの信号を用いることなく、負荷装置の稼働状態を管理することができる。特に、放電電流を検出する電流検知部を、従来から用いられている、充電電流や放電電流を管理するための充放電電流計を流用することにより、負荷装置からの上記信号のための配線を省くことができ極めて安価にこれを実現することができる。
【0011】
ここで、前記停電検出手段は、前記二次電池の充放電を制御して少なくとも充電処理及び放電処理を行う充放電制御部を備え、前記停電判定部は、前記充放電制御部に設けられているのが好ましい。
【0012】
また、前記充放電制御部はプロセッサを備え、前記停電判定部は、前記放電処理以外の処理中に前記電圧検知部から前記停電時に対応する信号を入力すると停電時であると判定し、前記プロセッサの割り込み機能を用いて前記放電処理を開始するよう構成されているのが、好ましい。
【0013】
本発明によれば、プロセッサの割り込み機能を用いるので、停電が発生すると、停電時に対応する信号をすぐにプロセッサに取り込み、同時に放電処理を開始できるので瞬停対策に好適である。
【0014】
前記電流検知部は、前記外部電源、前記負荷装置及び前記二次電池に接続される共通の接地ラインに設けられているのが好ましい。また、前記スイッチ要素及び前記第二の整流要素を1つのMOSFETで構成するのが好ましい。さらに、前記外部電源は、外部電力で駆動される直流電源であるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本開示に係る無停電電源装置の実施形態を示す概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、この実施形態の無停電電源装置10は、停電時、外部電源22に接続された負荷装置21に電力を供給する二次電池1を備えている。ここで、外部電源22は、商用の交流電源から電力の供給受け、負荷装置21(例えば、サーバ-)に直流の電力を供給する。
【0017】
二次電池1は、通常、複数の二次電池セルを多直列に、又は、多直列かつ多並列に接続して構成される。本実施形態の場合、二次電池1の正極側は、充電ライン4を介して外部電源22に接続されるとともに、充電ライン4と並列に配置された放電ライン3を介して負荷装置21に接続される。
【0018】
充電ライン4上には、非停電時、すなわち、停電ではない時、前記外部電源22から電力の供給を受けて二次電池1を充電するための充電回路8と、二次電池1に向かう向きの電流、すなわち充電電流だけを通過させる整流要素、例えばダイオード9が設けられる。
【0019】
一方、放電ライン3上には、非停電時にこの放電ライン3を遮断する開位置と停電時に当該放電ライン3を導通させる閉位置とを有するスイッチ要素5と、二次電池1から負荷装置21に向かう向きの電流、すなわち放電電流だけを選択的に通過させる第一の整流要素7とが設けられる。第一の整流要素7は、スイッチ要素5と直列に、スイッチ要素5の二次電池1側に接続される。
【0020】
また、放電ライン3上にはスイッチ要素5と並列に第二の整流要素6が設けられる。第二の整流要素6により、スイッチ要素5が開位置にあるときでも、第一の整流要素7には、負荷装置21の入力電圧(すなわち、負荷装置21に接続された外部電源22の供給電圧)が印加されるようになっている。
ここで、第一の整流要素7は、例えばダイオードで構成することができ、また、スイッチ要素5と第二の整流要素6との組み合わせを1つのMOSFETで構成することができる。
また、電圧検知器11が、第一の整流要素7の両側の電位差を検知するために設けられている。
【0021】
二次電池1の負極側は接地ライン13に接続される。接地ライン13上には、電流検知部12、例えば電流計が設けられ双方向の電流を測定できるようになっており、電流検知部12は、二次電池1の充電時には充電電流を、二次電池1の放電時には放電電流を測定することができる。
【0022】
無停電電源装置10には、二次電池1、充電回路8、ダイオード9、スイッチ要素5、第一の整流要素7、第二の整流要素6、及び電圧検知器11の他、二次電池1の充放電を制御する制御装置2も、備えられる。
【0023】
そして、電圧検知器11により検出された、第一の整流要素7の両側の電位差を表す信号Aは、制御装置2の入力ポート15に入力される。また、電流検知部12により検出された電流値を表す信号Bは制御装置2の入力ポート16に入力される。そして、制御装置2の出力ポート17からは、スイッチ要素5を開閉するための信号Cが出力される。
本実施形態では、制御装置2が二次電池1の充放電を制御するための充放電制御部23を備え、充放電制御部23にはプロセッサ24が設けられる。
【0024】
この実施形態の無停電電源装置10は、停電を検出するための停電検出手段を備え、この停電検出手段は、電圧検知器11と、電圧検知器11からの電位差の信号に基づいて停電の状態を判定する停電判定部とを備えて構成され、この停電判定部は、制御装置2内に配置された充放電制御部23に設けられている。
本実施形態において、停電検出手段は、電流検知部12をさらに備える。
【0025】
次に、非停電時から停電時に移行する際の停電検出手段の動作について説明する。
非停電時においては、放電のためのスイッチ要素5は開放しているが、スイッチ要素5をバイパスして、スイッチ要素5と並列に設けられた第二の整流要素6を介して、外部電源22の電圧が第一の整流要素7の負荷装置21側に印加され、一方、第一の整流要素7の二次電池1側には、外部電源22の電圧より低い二次電池1の電圧が印加されている。
本実施形態において、外部電源22の電圧は、二次電池1の電圧より常に高くなるよう設定されており、このため、非停電時は、第一の整流要素7の両側の電圧は、負荷装置21側が高く、二次電池1側が低い。このとき、電圧検知器11からの信号Aは、負荷装置21の側の電圧から二次電池1の側の電圧を差し引いた電圧に比例するように設定させており、したがって、非停電時には信号Aは正の値を表すものとなっている。
【0026】
一方、停電時には、外部電源22の電圧はゼロになるので、第一の整流要素7の両側の電圧は、負荷装置21側が低く、二次電池1側が高くなる。よって停電時の信号Aは負の値を表すことになる。
【0027】
電圧値を表す信号Aは、制御装置2の入力ポート15に送信されるが、制御装置2内の充放電制御部23のプロセッサ24の割り込みポートは常に信号Aの正負を表す信号(正負信号)を監視しており、この正負信号が正から負に転じたときは、プロセッサ24の割り込み機能により、プロセッサ24は、例えば充電処理を中断して、停電判定処理として、停電状態であると判定する処理を行い、プロセッサ24が停電状態であると判定すると、制御装置2の充放電制御部23は、制御装置2の出力ポート17からスイッチ要素5を閉止させる信号Cを出力する。また、このとき、充放電制御部23は、停電状態を表すランプを表示するなどの処理も行うことができる。
【0028】
逆に、停電が復帰し非停電状態になると、信号Aの値は負になるので、プロセッサ24は、非停電状態であると判定し、充放電制御部23は、スイッチ要素5に信号Cを出力しスイッチ要素5を開放する。
【0029】
上記のような動作をおこなう本実施形態の停電検出手段は、電圧検知器11と、電圧検知器11からの電位差の信号Aに基づいて停電の状態を判定する停電判定部とを備えて構成され、上記の説明の通り、停電判定部の停電判定処理は充放電制御部23に設けられたプロセッサ24によって行われる。
【0030】
ここで、停電検出手段は、停電時における負荷装置21の稼働状態を監視する負荷装置監視部を備えることもできる。この場合、停電検出手段の荷装置監視部は、接地ライン13に配置された電流検知部12をも含む。電流検知部12からの信号Bが出力され入力ポート16を介して充放電制御部23に入力される。信号Bは、停電時には、放電電流に比例する値を表すようになっている。そして、充放電制御部23では、信号Bが所定の値を下回る場合には、負荷装置21は停止していると判定するよう構成されている。これにより、負荷装置21の稼働状態を監視することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 二次電池
2 制御装置
3 放電ライン
4 充電ライン
5 スイッチ要素
6 第二の整流要素
7 第一の整流要素
8 充電回路
9 ダイオード
10 無停電電源装置
11 電圧検知
12 電流検知部
13 接地ライン
15、16 入力ポート
17 出力ポート
21 負荷装置
22 外部電源
23 充放電制御部
24 プロセッサ
図1