(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ロボット手術支援システム、ロボット手術支援システムの作動方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20240409BHJP
A61B 34/35 20160101ALI20240409BHJP
B25J 9/16 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B34/35
B25J9/16
(21)【出願番号】P 2020070567
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(73)【特許権者】
【識別番号】500109320
【氏名又は名称】ザイオソフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】井田 城太
(72)【発明者】
【氏名】茅野 秀介
(72)【発明者】
【氏名】長田 剛
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 隆
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 信一郎
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/139931(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/092372(WO,A1)
【文献】特表2015-504689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00-34/37
B25J 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット本体を有する手術支援ロボットによるロボット手術を支援するロボット手術支援システムであって、
処理部を備え、
前記処理部は、
前記ロボット手術の対象である被検体の体表に穿孔されるポートの位置を計画し、
前記ロボット手術の術式の情報に基づいて、前記被検体に対する前記ロボット本体の位置を計画し、
前記ロボット本体が計画位置に配置された状態で、前記ロボット本体が備える俯瞰カメラにより前記被検体の少なくとも一部を含む被写体が撮像された撮像画像を取得し、
前記撮像画像と前記ポートの計画位置とに基づいて、前記撮像画像におけるポートの計画位置を認識し、
前記撮像画像と、前記撮像画像に表れた前記被検体における前記ポートの計画位置を示すポート位置情報と、を表示部に表示させる、機能を有する、
ロボット手術支援システム。
【請求項2】
前記処理部は、
前記被検体のランドマークの情報と、前記被検体のランドマークと前記ポートの計画位置との位置関係を示す位置関係情報と、を取得し、
前記撮像画像における前記ランドマークの画像位置を認識し、
前記ランドマークの画像位置と前記位置関係情報とに基づいて、前記撮像画像における前記ポートの計画位置を認識する、
請求項1に記載のロボット手術支援システム。
【請求項3】
前記処理部は、
前記撮像画像における前記ポートを穿孔するための穿孔器具の位置を認識し、
前記穿孔器具の位置と前記ポートの計画位置とに基づいて、前記穿孔器具を前記ポートの計画位置に誘導するための案内情報を表示させる、
請求項1又は2に記載のロボット手術支援システム。
【請求項4】
前記処理部は、
前記被検体の3Dデータを取得し、
前記被検体の3Dデータに基づいて前記ポートの位置を計画する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のロボット手術支援システム。
【請求項5】
前記処理部は、
前記ロボット本体のキネマティクスの情報を取得し、
前記キネマティクスの情報と前記被検体の3Dデータに基づいて、前記ロボット本体の位置を計画
する、
請求項
4に記載のロボット手術支援システム。
【請求項6】
前記処理部は、
前記被検体の前記ポートの穿孔位置にポートが穿孔される際に、前記ロボット本体がポート穿孔姿勢となるよう前記ロボット本体を作動させ、
前記ポート穿孔姿勢は、前記ロボット本体が備えるアームと前記被検体との間の空間の大きさを第1の閾値以上とする姿勢である、
請求項1~5のいずれか1項に記載のロボット手術支援システム。
【請求項7】
前記処理部は、
前記被検体に穿孔された前記ポートを介して前記ロボット本体が備える手術器具が前記被検体に挿入される際、前記ロボット本体が装備姿勢となるよう前記ロボット本体を作動させ、
前記装備姿勢は、前記手術器具の被検体内の可動範囲の大きさを第2の閾値以上とする姿勢、又は、前記ロボット本体が備えるアーム同士の干渉量を第3の閾値以下とする姿勢である、
請求項1~6のいずれか1項に記載のロボット手術支援システム。
【請求項8】
前記処理部は、
前記被検体の3Dデータを取得し、
前記被検体の3Dデータに基づいて、前記装備姿勢を計画する、
請求項7に記載のロボット手術支援システム。
【請求項9】
前記処理部は、
前記ロボット本体の姿勢をポート穿孔姿勢から装備姿勢に変更するよう前記ロボット本体を作動させる、
請求項1~8のいずれか1項に記載のロボット手術支援システム。
【請求項10】
前記処理部は、
前記ロボット手術の手術前に前記ロボット手術の支援に関する処理を行うロボット手術支援装置が備える第1の処理部と、
前記ロボット手術の際に前記ロボット手術の支援に関する処理を行う前記手術支援ロボットが備える第2の処理部と、を含み、
前記第1の処理部は、前記ポートの位置を計画し、
前記第2の処理部は、前記ポートの計画位置を認識し、前記撮像画像と前記ポート位置情報とを表示させる、
請求項1~
9のいずれか1項にロボット手術支援システム。
【請求項11】
ロボット本体を有する手術支援ロボットによるロボット手術を支援するロボット手術支援
システムの作動方法であって、
前記ロボット手術支援システムは、処理部を備えており、
前記処理部は、
ロボット手術の対象である被検体の体表に穿孔されるポートの位置を計画し、
前記ロボット手術の術式の情報に基づいて、前記被検体に対する前記ロボット本体の位置を計画し、
前記ロボット本体が計画位置に配置された状態で、前記ロボット本体が備える俯瞰カメラにより前記被検体の少なくとも一部を含む被写体が撮像された撮像画像を取得し、
前記撮像画像と前記ポートの計画位置とに基づいて、前記撮像画像におけるポートの計画位置を認識し、
前記撮像画像と、前記撮像画像に表れた前記被検体における前記ポートの計画位置を示すポート位置情報と、を表示部に表示させる、
ロボット手術支援
システムの作動方法。
【請求項12】
請求項
11に記載のロボット手術支援
システムの作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手術支援ロボットによるロボット手術を支援するロボット手術支援システム、ロボット手術支援方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボット手術を行う手術支援ロボット(ロボット手術システム)が知られている。例えば、手術支援ロボットは、取り付けベース、複数の手術器具、および関節支持体アセンブリを備える。各手術器具は、関連する最小侵襲的アパーチャを通って患者中に、所望の内部手術部位まで挿入可能である。関節支持体アセンブリは、取り付けベースに対して複数の手術器具を移動可能に支持する。関節支持体アセンブリは、一般に、配向プラットホーム、この配向プラットホームを取り付けベースに移動可能に支持するプラットホームリンケージ、および配向プラットホームに取り付けられる複数のマニピュレータを備える。各マニピュレータは、付随する器具を移動可能に支持する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手術支援ロボットでは、配向プラットホーム36の下部にプラットホームリンケージ42が存在し、プラットホームリンケージの下部にマニピュレータが取り付けられる。そのため、配向プラットホームの下部では、手術ロボットの各部材が込み合って配置されるので、作業スペースがあまり確保できない。そのため、手術支援ロボットが手術ベッドの近傍に配置されてから、手術器具を患者の体内に挿入するためのポートを穿孔することが困難である。これにより、狭い手術室であってはポートを穿孔した後に手術支援ロボットが手術室に入室させて手術ベッドの近傍に配置されるということもあった。
【0005】
本開示は、上記事情を鑑みてなされたものであって、手術支援ロボットの配置後に実施されるポートの穿孔を補助できるロボット手術支援システム、ロボット手術支援方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ロボット本体を有する手術支援ロボットによるロボット手術を支援するロボット手術支援システムであって、処理部を備え、前記処理部は、前記ロボット手術の対象である被検体の体表に穿孔されるポートの位置を計画し、前記ロボット手術の術式の情報に基づいて、前記被検体に対する前記ロボット本体の位置を計画し、前記ロボット本体が計画位置に配置された状態で、前記ロボット本体が備える俯瞰カメラにより前記被検体の少なくとも一部を含む被写体が撮像された撮像画像を取得し、前記撮像画像と前記ポートの計画位置とに基づいて、前記撮像画像におけるポートの計画位置を認識し、前記撮像画像と、前記撮像画像に表れた前記被検体における前記ポートの計画位置を示すポート位置情報と、を表示部に表示させる、機能を有する、ロボット手術支援システムである。
【0007】
本開示の一態様は、ロボット本体を有する手術支援ロボットによるロボット手術を支援するロボット手術支援システムの作動方法であって、前記ロボット手術支援システムは、処理部を備えており、前記処理部は、ロボット手術の対象である被検体の体表に穿孔されるポートの位置を計画し、前記ロボット手術の術式の情報に基づいて、前記被検体に対する前記ロボット本体の位置を計画し、前記ロボット本体が計画位置に配置された状態で、前記ロボット本体が備える俯瞰カメラにより前記被検体の少なくとも一部を含む被写体が撮像された撮像画像を取得し、前記撮像画像と前記ポートの計画位置とに基づいて、前記撮像画像におけるポートの計画位置を認識し、前記撮像画像と、前記撮像画像に表れた前記被検体における前記ポートの計画位置を示すポート位置情報と、を表示部に表示させる、ロボット手術支援システムの作動方法である。
【0008】
本開示の一態様は、上記ロボット手術支援システムの作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、上記事情を鑑みてなされたものであって、手術ロボットの配置後に実施されるポートの穿孔を補助できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態におけるロボット手術支援システムの構成例を示すブロック図
【
図2】ロボット手術支援装置のハードウェア構成例を示すブロック図
【
図3】ロボット手術支援装置の機能構成例を示すブロック図
【
図4】手術支援ロボットの電気的な構成例を示すブロック図
【
図6】ロボット本体の配置姿勢の第1例を示す模式図
【
図7】ロボット本体の配置姿勢の第2例を示す模式図
【
図8】ロボット本体のポート穿孔姿勢の第1例を示す模式図
【
図9】ロボット本体のポート穿孔姿勢の第2例を示す模式図
【
図10】ロボット本体の装備姿勢の第1例を示す模式図
【
図11】ロボット本体の装備姿勢の第2例を示す模式図
【
図12】ロボット手術時のトロッカー、手術器具、及び被検体の内部の様子の一例を示す図
【
図13】ロボット手術支援装置による手術計画の生成例を示すフローチャート
【
図14】被検体の内部のワーキングエリアの一例を示す図
【
図15】手術支援ロボットによるロボット手術の際の動作例を示すフローチャート
【
図16】ロボット本体の手術ベッドへの接近例を示す模式図
【
図17】手術ベッド近傍の計画位置へのロボット本体の配置例を示す模式図
【
図18】ロボット本体の計画位置においてポート穿孔姿勢をとるロボット本体の一例を示す模式図
【
図20】被検体の体表画像に被検体のランドマーク及びポートの計画位置を重畳した表示例を示す模式図
【
図21】被検体の3次元画像に被検体のランドマーク及びポートの計画位置を重畳した表示例を示す模式図
【
図22】俯瞰画像に含まれる被検体のランドマークとポートの計画位置との一例を示す模式図
【
図23】俯瞰画像に含まれる被検体のランドマークとポートの計画位置とポート許容誤差情報との一例を示す模式図
【
図24】ロボット手術支援システムによるポート位置決めに係る動作例を示すフローチャート
【
図25】ロボット手術支援システムによるポート位置決めに係る動作例を示すフローチャート(
図24の続き)
【
図26】穿孔器具が映り込んだ俯瞰画像とポート位置情報との重畳表示例を示す図
【
図27】穿孔器具をポートの計画位置に誘導するための案内情報の表示例を示す図
【
図28】ロボット手術支援装置によるポート位置スコアを算出する場合の動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるロボット手術支援システム1の構成例を示すブロック図である。ロボット手術支援システム1は、ロボット手術支援装置100と、CT装置200と、手術支援ロボット300と、表示装置400と、を備える。
図1では、ロボット手術支援装置100と、CT装置200と、手術支援ロボット300と、表示装置400とは、ネットワークNTを介して接続されている。また、ロボット手術支援装置100と、CT装置200と、手術支援ロボット300と、表示装置400とは、ネットワークNTを介さずに、それぞれの装置が1対1で接続されてもよいし、1対多で接続されてもよい。また、ロボット手術支援装置100と、CT装置200と、手術支援ロボット300と、表示装置400とは、一時的にネットワークNTの接続から離れてもよい。また、ロボット手術支援装置100は手術支援ロボット300に内蔵されていてもよい。
【0013】
ロボット手術支援装置100は、CT装置200及び手術支援ロボット300から各種データを取得する。ロボット手術支援装置100は、取得されたデータに基づいて画像処理し、手術支援ロボット300によるロボット手術を支援する。ロボット手術支援装置100は、PCとPCに搭載されたソフトウェアにより構成されてもよい。ロボット手術支援装置100は、手術ナビゲーションを行う。手術ナビゲーションは、例えば、手術前の計画(術前計画)を行うための術前シミュレーションや手術中のサポートを行うための術中ナビゲーションを含む。なお、術中ナビゲーションは、手術支援ロボット300により行われてもよい。
【0014】
CT装置200は、被検体へX線を照射し、体内の組織によるX線の吸収の違いを利用して、画像(CT画像)を撮像する。被検体は、生体、人体、動物、等を含んでよい。CT装置200は、被検体内部の任意の箇所の情報を含むボリュームデータを生成する。CT装置200は、CT画像としてのボリュームデータをロボット手術支援装置100へ、有線回線又は無線回線を介して送信する。CT画像の撮像には、CT撮像に関する撮像条件や造影剤の投与に関する造影条件が考慮されてよい。
【0015】
手術支援ロボット300は、ロボット操作端末310、ロボット本体320、及び画像表示端末330を備える。
【0016】
ロボット操作端末310は、術者により操作されるハンドコントローラやフットスイッチを備える。ロボット操作端末310は、術者によるハンドコントローラやフットスイッチの操作に応じて、ロボット本体320に設けられた複数のロボットアームARを動作させる。また、ロボット操作端末310は、ビューワを備える。なお、ロボット操作端末310が複数存在し、複数のロボット操作端末310を複数の術者が操作するによりロボット手術が行われてもよい。
【0017】
ロボット本体320は、ロボット手術を行うための複数のロボットアームAR、ロボットアームARに装着されるエンドエフェクタEF(鉗子類)、及びロボットアームARに装着される内視鏡ESを備える。エンドエフェクタEF及び内視鏡ESは、鏡視下手術に用いられるものであるので、本実施形態では手術器具30とも称する。手術器具30は、1つ以上のエンドエフェクタEF及び内視鏡ESのうち少なくとも1つを含む。
【0018】
ロボット本体320は、例えば4つのロボットアームARを備えており、内視鏡ESが装着されるカメラアームと、ロボット操作端末310の右手用ハンドコントローラで操作されるエンドエフェクタEFが装着される第1エンドエフェクタアームと、ロボット操作端末310の左手用ハンドコントローラで操作されるエンドエフェクタEFが装着される第2エンドエフェクタアームと、交換用のエンドエフェクタEFが装着される第3エンドエフェクタアームと、を含む。ロボットアームARを含むロボット本体320は、複数の関節(ジョイント)を有しており、各関節に対応してモータ(アクチュエータの一例)とエンコーダ(センサの一例)を備えていてよい。エンコーダは、角度検出器の一例としてのロータリエンコーダを含んでよい。各ロボットアームARは、少なくとも6自由度、好ましくは7又は8自由度を有しており、3次元空間内において動作し、3次元空間内の各方向に可動自在でよい。エンドエフェクタEFには、ロボット手術において被検体PS内の処置対象に実際に接する器具であり、様々な処置(例えば、把持、切除、剥離、縫合)を可能とする。
【0019】
エンドエフェクタEFは、例えば、把持鉗子、剥離鉗子、電気メス、等を含んでよい。エンドエフェクタEFは、役割毎に異なる別個のエンドエフェクタEFが複数用意されてよい。例えば、ロボット手術では、2つのエンドエフェクタEFによって組織を抑えたり引っ張ったりして、1つのエンドエフェクタEFで組織を切る処置が行われてよい。ロボットアームAR及び手術器具30は、ロボット操作端末310からの指示を基に、動作してよい。ロボット手術において、エンドエフェクタEFは少なくとも2つ使用される。
【0020】
なお、ロボット本体320の具体的な構造例については後述する。
【0021】
画像表示端末330は、モニタ、内視鏡ESによって撮像された画像を処理し、ビューワやモニタに表示させるためのコントローラ、等を有する。モニタは、例えばロボット手術の助手、看護師、放射線技師、学生、等(助手等とも称する)により確認される。
【0022】
手術支援ロボット300は、術者によるロボット操作端末310のハンドコントローラやフットスイッチの操作を受け、ロボット本体320のロボットアームARやエンドエフェクタEFや内視鏡ESの動作を制御し、被検体PSに対して各種処置を行うロボット手術を行う。ロボット手術は、低侵襲手術でよく、鏡視下手術でよい。
【0023】
ロボット手術では、被検体PSの体表にポートPTが穿孔され、ポートPTを介して気腹されてよい。ポートPTは、被検体PSに穿孔される孔部である。気腹(preumoperitoneum)では、二酸化炭素が送り込まれて被検体PSの腹腔を膨らませられてよい。ポートPTには、トロッカー(trocar)TCが設置されてよい。トロッカーTCは弁を有し、被検体PS内を気密に維持する。また、気密状態を維持するために、被検体PS内に空気(例えば二酸化炭素)が継続的に導入される。
【0024】
トロッカーTCにはエンドエフェクタEF(エンドエフェクタEFのシャフト)が挿通される。エンドエフェクタEFの挿通時にトロッカーTCの弁が開き、エンドエフェクタEFの脱離時にはトロッカーTCの弁が閉じる。トロッカーTCを経由してポートPTからエンドエフェクタEFが挿入され、術式に応じて様々な処置が行われる。術式は、被検体PSに対する外科手術の方式を示す。ロボット手術は、腹部を手術対象とした腹腔鏡手術以外に、手術対象に腹部以外を含めた鏡視下手術に適用されてもよい。
【0025】
表示装置400は、例えばLCDや有機ELを含んで構成されてよい。表示装置400は、手術室内に設置され、例えば壁に設置されてもよいし、天井から吊るされて配置されてもよいし、移動装置に搭載されて任意の位置に配置されてもよい。表示装置400は、表示装置400は、例えばロボット手術支援装置100や手術支援ロボットから各種情報や画像を受信し、各種情報や画像を表示する。表示装置400は、画像表示端末330であってもよい。
【0026】
なお、ロボット本体320は、ロボット手術前には手術室外に配置されており、ロボット手術の際に手術室外から手術室内に移動し、配置される。また、ロボット本体320以外の手術支援ロボット300の各装置(例えばロボット操作端末310、画像表示端末330)は、ロボット手術前に手術室内に設置されていても、ロボット手術の際に手術室外から手術室内に移動し、配置されてもよい。
【0027】
図2は、ロボット手術支援装置100の構成例を示すブロック図である。ロボット手術支援装置100は、送受部110、UI120、ディスプレイ130、プロセッサ140、及びメモリ150を備える。
【0028】
送受部110は、通信ポート、外部装置接続ポート、組み込みデバイスへの接続ポート、等を含む。送受部110は、CT装置200、及び手術支援ロボット300からの各種データを取得する。取得された各種データは、直ぐにプロセッサ140(処理部160)に送られて各種処理されてもよいし、メモリ150において保管された後、必要時にプロセッサ140へ送られて各種処理されてもよい。また、各種データは、記録媒体や記録メディアを介して取得されてもよい。
【0029】
送受部110は、CT装置200、及び手術支援ロボット300へ各種データを送信する。送信される各種データは、プロセッサ140(処理部160)から直接送信されてもよいし、メモリ150において保管された後、必要時に各装置へ送信されてもよい。また、各種データは、記録媒体や記録メディアを介して送られてもよい。
【0030】
送受部110は、CT装置200からのボリュームデータを取得してよい。また、ボリュームデータは、中間データ、圧縮データやシノグラムの形で取得されてもよい。また、ボリュームデータは、ロボット手術支援装置100に取り付けられたセンサデバイスからの情報から取得されてもよい。また、CT装置200により撮像されたボリュームデータは、CT装置200から画像データサーバ(PACS:Picture Archiving and Communication Systems)に送られ、保存されてよい。送受部110は、CT装置200から取得する代わりに、この画像データサーバからボリュームデータを取得してもよい。
【0031】
送受部110は、手術支援ロボット300からの情報を取得する。手術支援ロボット300からの情報は、手術支援ロボット300(特にロボット本体320)のキネマティクスの情報を含んでよい。キネマティクスの情報は、例えば、ロボット本体320が備えるロボット手術を行うための器具(例えばロボットアームAR、エンドエフェクタEF、内視鏡ES)の形状に関する形状情報や動作に関する動作情報を含んでよい。キネマティクスの情報は、外部サーバから受信されてもよい。
【0032】
この形状情報は、ロボットアームARやエンドエフェクタEFや内視鏡ESの各部位の長さ、重さ、基準方向(例えば水平面)に対するロボットアームARの角度、ロボットアームARに対するエンドエフェクタEFの取付角度、等の少なくとも一部の情報を含んでよい。
【0033】
この動作情報は、ロボットアームARやエンドエフェクタEFや内視鏡ESの3次元空間における可動範囲を含んでよい。この動作情報は、ロボットアームARが動作する際のロボットアームARの位置、速度、加速度、向き、等の情報を含んでよい。この動作情報は、エンドエフェクタEFが動作する際のロボットアームARに対するエンドエフェクタEFの位置、速度、加速度、向き、等の情報を含んでよい。この動作情報は、内視鏡ESが動作する際のロボットアームARに対する内視鏡ESの位置、速度、加速度、向き、等の情報を含んでよい。
【0034】
なお、キネマティクスでは、自ロボットアームによる可動範囲とともに他ロボットアームの可動範囲が規定される。したがって、手術支援ロボット300は、ロボット本体320の各ロボットアームARがキネマティクスに基づいて動作することで、術中に複数のロボットアームARが干渉することを回避できる。
【0035】
ロボットアームARやエンドエフェクタEFや内視鏡ESには、角度センサが取り付けられてよい。この角度センサは、ロボットアームARやエンドエフェクタEFや内視鏡ESの3次元空間での向きに相当する角度を検出するロータリエンコーダを含んでよい。送受部110は、手術支援ロボット300に取り付けられた各種センサが検出した検出情報を取得してよい。
【0036】
送受部110は、ロボット操作端末310に対する操作に関する操作情報を取得してよい。この操作情報は、操作の対象(例えばロボットアームAR、エンドエフェクタEF、内視鏡ES)、操作の種類(例えば移動、回転)、操作位置、操作速度、等の情報を含んでよい。
【0037】
また、手術支援ロボット300からの情報には、内視鏡ESによる撮像に関連する情報(内視鏡情報)が含まれてよい。内視鏡情報は、内視鏡ESにより撮像された画像(実内視鏡画像)、実内視鏡画像に関する付加情報(撮像位置、撮像向き、撮像画角、撮像範囲、撮像時刻、等)が含まれてよい。
【0038】
UI120は、例えば、タッチパネル、ポインティングデバイス、キーボード、又はマイクロホンを含んでよい。UI120は、ロボット手術支援装置100のユーザから、任意の入力操作を受け付ける。ユーザは、術者、医師、助手、看護師、放射線技師、学生、等を含んでよい。
【0039】
UI120は、各種操作を受け付ける。例えば、ボリュームデータやボリュームデータに基づく画像(例えば後述する3次元画像、2次元画像)における、関心領域(ROI)の指定や輝度条件(例えばWW(Window Width)やWL(Window Level))の設定等の操作を受け付ける。関心領域は、各種組織(例えば、血管、臓器、器官、骨、脳)の領域を含んでよい。組織は、病変組織、正常組織、腫瘍組織、等を含んでよい。また、臓器は、心臓、肺、肝臓、脳、等を含んでよい。
【0040】
ディスプレイ130は、例えばLCDを含んでよく、各種情報を表示する。各種情報は、ボリュームデータから得られる3次元画像や2次元画像を含んでよい。3次元画像は、ボリュームレンダリング画像、サーフェスレンダリング画像、仮想内視鏡画像、仮想超音波画像、CPR画像、等を含んでもよい。ボリュームレンダリング画像は、レイサム(RaySum)画像、MIP画像、MinIP画像、平均値画像、レイキャスト画像、等を含んでもよい。2次元画像は、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像、MPR画像、等を含んでよい。
【0041】
メモリ150は、各種ROMやRAMの一次記憶装置を含む。メモリ150は、HDDやSSDの二次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、USBメモリやSDカードや光ディスクの三次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、各種情報やプログラムを記憶する。各種情報は、送受部110により取得されたボリュームデータ、プロセッサ140により生成された画像、プロセッサ140により設定された設定情報、各種プログラムを含んでもよい。メモリ150は、プログラムが記録される非一過性の記録媒体の一例である。
【0042】
プロセッサ140は、例えばCPU、DSP、又はGPUを含んでよい。プロセッサ140は、メモリ150に記憶されたプログラムを実行することにより、各種処理や制御を行う処理部160として機能する。
【0043】
図3は、処理部160の機能構成例を示すブロック図である。
【0044】
処理部160は、領域処理部161、変形処理部162、モデル設定部163、手術計画部164、画像生成部165、及び表示制御部166を備える。処理部160は、ロボット手術支援装置100の各部を統括する。なお、処理部160に含まれる各部は、1つのハードウェアにより異なる機能として実現されてもよいし、複数のハードウェアにより異なる機能として実現されてもよい。また、処理部160に含まれる各部は、専用のハードウェア部品により実現されてもよい。
【0045】
領域処理部161は、例えば送受部110を介して、被検体PSのボリュームデータを取得する。領域処理部161は、ボリュームデータに含まれる任意の領域を抽出する。領域処理部161は、例えばボリュームデータの画素値に基づいて、自動で関心領域を指定し、関心領域を抽出してよい。領域処理部161は、例えばUI120を介して、手動で関心領域を指定し、関心領域を抽出してよい。関心領域は、単一の組織だけでなく、その組織の周囲の組織を含んでセグメンテーション(区分)されて抽出されてもよい。また、組織とその周辺の組織とは、別々の組織としてセグメンテーションされて得られてもよい。
【0046】
モデル設定部163は、組織のモデルを設定する。モデルは関心領域とボリュームデータに基づいて設定されてよい。モデルは、ボリュームデータが表現する組織を、ボリュームデータよりも簡素化して表現するものである。したがって、モデルのデータ量は、モデルに対応するボリュームデータのデータ量よりも小さい。モデルは、例えば手術における各種処置を模した変形処理や変形操作の対象となる。モデルは、例えば簡易なボーン変形モデルでよい。この場合、モデルは簡易な有限要素において骨組みを仮定して、有限要素の頂点を移動させることで、ボーンが変形する。組織の変形は、ボーンの変形を追従することによって表現できる。モデルは、臓器(例えば直腸)を模した臓器モデルを含んでよい。モデルは、単純な形状の多角形(例えば三角形)に類似する形状を有してもよいし、その他の形状を有してもよい。モデルは、例えば、臓器を示すボリュームデータの輪郭線であってもよい。モデルは、3次元モデルであっても2次元モデルであってもよい。なお、骨についてはモデルの変形ではなく、ボリュームデータの変形で表現されてもよい。骨は変形の自由度が小さいため、ボリュームデータのアフィン変換で表現できるためである。
【0047】
モデル設定部163は、ボリュームデータに基づいて、モデルを生成することで、モデルを取得してよい。また、モデルのテンプレートが複数予め決まっており、メモリ150や外部サーバに保持されていてもよい。モデル設定部163は、ボリュームデータに合わせて、予め用意された複数のモデルのテンプレートから1つのモデルのテンプレートをメモリ150や外部サーバから取得することで、モデルを取得してもよい。
【0048】
ボリュームデータ及びモデルは、被検体の内部の様子を3次元的に示す3Dデータ(3次元データ)の一例である。本実施形態では、3Dデータの例示として、ボリュームデータ及びモデルのいずれか一方を用いて説明することがあるが、ボリュームデータ及びモデルのいずれか他方に対しても適用可能である。なお、3Dデータは、気腹された状態のデータでも気腹されていない状態のデータでもよい。
【0049】
変形処理部162は、手術対象の被検体PSにおける変形に関する処理を行う。例えば、被検体PS内の臓器等の組織は、手術における術者の各種処置を模してユーザによって各種の変形操作がされ得る。変形操作は、臓器を持ち上げる操作、ひっくり返す操作、切る操作、等を含んでよい。これに対応して、変形処理部162は、被検体PS内の臓器等の組織に対応するモデルを変形させる。例えば、臓器がエンドエフェクタEFにより引っ張られたり押されたり、切断されたりし得るが、この様子をモデルの変形によりシミュレートしてよい。モデルが変形すると、モデルにおけるターゲットも変形し得る。モデルの変形は、モデルの移動や回転を含んでよい。
【0050】
変形操作による変形は、モデルに対して行われよく、有限要素法を用いた大変形シミュレーションでよい。例えば、体位変換による臓器の移動をシミュレートしてよい。この場合、臓器や病変の接点に加わる弾性力や臓器や病変の剛性、その他の物理的な特性が加味されてよい。モデルに対する変形処理は、ボリュームデータに対する変形処理と比較すると、演算量が低減される。変形シミュレーションにおける要素数が低減されるためである。なお、モデルに対しての変形処理が行われず、ボリュームデータに対して直接、変形処理が行われてもよい。この場合、ロボット手術支援装置100は、モデル設定部163を備えなくてもよい。
【0051】
また、変形処理部162は、例えば、変形に関する処理として、仮想的に被検体PSに対して気腹する気腹シミュレーションを行ってよい。気腹シミュレーションの具体的な方法は、公知の方法であってよく、例えば参考非特許文献1に記載された方法でよい。つまり、変形処理部162は、非気腹状態のボリュームデータを基に、気腹シミュレーションを行い、仮想気腹状態のボリュームデータを生成してよい。また、実際に気腹を行った上でCT装置200により撮影されて得られたボリュームデータを用いてもよい。また、実際に気腹を行った上でCT装置200により撮影されて得られたボリュームデータを基に気腹量を変化させた気腹シミュレーションを行ってもよい。気腹シミュレーションにより、ユーザは、被検体PSに対して実際に気腹しなくても、被検体PSが気腹された状態を仮定し、仮想的に気腹された状態を観察できる。なお、気腹状態のうち、気腹シミュレーションにより推定される気腹の状態を仮想気腹状態と称し、実際に気腹された状態を実気腹状態と称してよい。また、気腹シミュレーションにより気腹されていない状態を非気腹状態と称してよい。
【0052】
(参考非特許文献1)Takayuki Kitasaka, Kensaku Mori, Yuichiro Hayashi, Yasuhito Suenaga, Makoto Hashizume, and Jun-ichiro Toriwaki, “Virtual Pneumoperitoneum for Generating Virtual Laparoscopic Views Based on Volumetric Deformation”, MICCAI (Medical Image Computing and Computer-Assisted Intervention), 2004, P559-P567
【0053】
気腹シミュレーションは、有限要素法を用いた大変形シミュレーションでよい。この場合、変形処理部162は、被検体PSの皮下脂肪を含む体表と、被検体PSの腹部内臓と、をセグメンテーションしてよい。そして、変形処理部162は、体表を皮膚と体脂肪との2層の有限要素にモデル化し、腹部内臓を有限要素にモデル化してよい。変形処理部162は、任意に、例えば肺と骨とをセグメンテーションし、モデルに追加してよい。また、体表と腹部内臓との間にガス領域を設け、仮想的なガス注入に応じてガス領域(気腹空間)が拡張(膨張)してよい。なお、気腹シミュレーションは実施されなくてもよい。
【0054】
手術計画部164は、手術計画を生成する。手術計画は、ロボット本体320の配置位置の計画、ロボット本体320の計画された位置(計画位置)への配置に関する許容誤差の導出、ロボット本体320をロボット本体320の計画位置に移動させるための移動経路の計画、等を含んでよい。手術計画は、ロボット本体320の姿勢の計画、ロボット本体320のアームベースABの姿勢の計画、等を含んでよい。手術計画は、被検体PSの体表上に穿孔されるポート位置の計画、ポートの計画位置への配置に関する許容誤差情報の生成、等を含んでよい。手術計画は、被検体PS上の任意のランドマークの情報、このランドマークと各ポートの計画位置との相対的な位置関係の情報、等を含んでよい。
【0055】
手術計画部164は、例えば術式に基づいて、ロボット本体320の計画位置を決定してよい。例えば、術式が経肛門的低侵襲手術(TAMIS:Transanal Minimally Inbasive Surgery)の場合、ロボット本体320の計画位置が、被検体PSの体軸方向の足側周辺におけるいずれかの位置とされてよい。また、術式が肺の手術である場合、被検体PSが手術ベッドBDに対して側臥位の体勢となり、ロボット本体320の計画位置が、被検体PSの体軸方向に垂直な左右方向(つまり手術ベッドBDの横)とされてよい。また、手術計画部164は、被検体PSの3Dデータやロボット本体320のキネマティクスに基づいて、ロボット本体320の計画位置を決定してよい。
【0056】
ロボット本体320の計画姿勢は、ロボット本体320の姿勢の種別(例えば配置姿勢、ポート穿孔姿勢、装備姿勢)毎に計画される姿勢でよい。ロボット本体320の計画姿勢例えば、ロボット本体320が所定の姿勢(例えば装備姿勢)を取る場合のロボット本体320の各部材の姿勢(位置や向き)の組み合わせによって定義される姿勢でよい。
【0057】
手術計画部164は、被検体PSの体表上に設けられる複数のポートPTの情報を取得する。ポートPTの情報は、ポートPTの識別情報、ポートPTが穿孔される被検体PSの体表上の位置(ポート位置)の情報、ポートPTのサイズの情報、等を含んでよい。複数のポートPTの情報は、テンプレートとしてメモリ150や外部サーバに保持されていてよい。複数のポートPTの情報は、術式によって定められていてよい。
【0058】
手術計画部164は、メモリ150から複数のポート位置の情報を取得してよい。手術計画部164は、送受部110を介して、外部サーバから複数のポート位置の情報を取得してよい。手術計画部164は、UI120を介して、複数のポートPTのポート位置の指定を受け付けて、複数のポート位置の情報を取得してよい。複数のポート位置の情報は、複数のポート位置の組み合わせの情報でよい。上記のポート位置は、そのままポートPTの計画位置とされてもよいし、このポート位置に基づいてポートPTの計画位置が導出されてもよい。
【0059】
手術計画部164は、ボリュームデータに含まれる被検体PSの組織(例えば肝臓)におけるターゲットTGの位置を設定してよい。ターゲットTGは、任意の組織内に設定される。ターゲットTGは、ロボット手術による処置が行われる対象となる。手術計画部164は、UI120を介してターゲットTGの位置を指定してよい。また、過去に被検体PSに対して処置されたターゲットTG(例えば患部)の位置がメモリ150に保持されていてもよい。手術計画部164は、メモリ150からターゲットTGの位置を取得して設定してもよい。手術計画部164は、術式に応じてターゲットTGの位置を設定してもよい。ターゲット位置は、ある程度の広さを有するターゲットTGの領域(ターゲット領域)の位置であってもよい。
【0060】
術式は、UI120を介して指定されてよい。術式により、ロボット手術における各処置が定まってよい。処置に応じて、処置に必要なエンドエフェクタEFが定まってよい。よって、術式に応じて、ロボットアームARに装着されるエンドエフェクタEFが定まってよく、どのロボットアームARにどの種類のエンドエフェクタEFが装着されるかが定まってよい。
【0061】
手術計画部164は、手術シミュレーションを実行してよい。手術シミュレーションは、ユーザがUI120を操作することで、被検体PSにおける所望のロボット手術が可能か否かを判定するためのシミュレーションでよい。手術シミュレーションでは、ユーザが手術を想定しながら、仮想空間において、各ポート位置から挿入されたエンドエフェクタEFを動作させ、手術対象となるターゲットTGの領域へアクセス可能か否かを判定してよい。つまり、手術シミュレーションでは、ユーザによるUI120に対する手動の操作を受けながら、ロボット本体320のロボット手術に係る可動部(例えばロボットアームARや手術器具30)が、手術対象となるターゲットTGの領域へ問題なくアクセス可能か否かが判定されてよい。
【0062】
手術シミュレーションでは、被検体PSのボリュームデータ、取得された複数のポート位置の組み合わせ、ロボット本体320のキネマティクス、術式、仮想気腹状態のボリュームデータ、等に基づいて、上記のアクセスが可能か否かが判定されてよい。手術計画部164は、被検体PSの体表における複数のポート位置を変えながら、各ポート位置においてターゲット領域にアクセス可能か否かを判定してよく、順次手術シミュレーションを行ってよい。手術計画部164は、手術シミュレーションにより、最終的に好ましい(例えば最適な)ポート位置の組み合わせの情報を得て、各ポートPTの計画位置としてよい。このように、ロボット手術支援装置100は、ユーザ手動でポートPTの計画位置を調整し、ポート位置を計画できる。
【0063】
また、手術計画部164は、手術計画に従ってロボット手術する場合の適切度を示す手術計画スコアを導出(例えば算出)してよい。手術計画スコアは、ロボット本体320の計画位置、ロボット本体320の計画姿勢、及びポートPTの計画位置の少なくとも1つに基づいて導出されてよい。例えば、ロボット本体320の計画位置に配置され、ロボット本体320が計画姿勢をとり、計画位置に穿孔されたポートPTから挿入された手術器具30を用いて実施されるロボット手術についての適切度が、手術計画スコアで示されてよい。また、手術計画スコアは、上記の他に、ロボット本体320のアームベースABの計画姿勢に基づいて算出されてもよい。
【0064】
手術計画スコアは、ロボット本体320の計画位置、ロボット本体320の計画姿勢、ポートPTの計画位置、等の手術計画における各要素の組み合わせの価値を示している。手術計画部164は、ロボット本体320の計画位置、ロボット本体320の計画姿勢、ポートPTの計画位置、等について、各要素の組み合わせについての複数の候補を生成してよい。手術計画スコアは、ロボット本体320の計画位置の候補毎に導出されてよい。手術計画スコアは、ロボット本体320の計画姿勢の候補毎に導出されてよい。手術計画スコアは、ポートPTの計画位置の候補毎に導出されてよい。手術計画スコアは、アームベースABの計画姿勢の候補毎に導出されてよい。手術計画スコアの導出については後に補足する。
【0065】
手術計画スコアは、ポートPTの計画位置を介したロボット手術のし易さを示すポート位置スコアを含んでよい。ポート位置スコアは、複数のポート位置の組み合わせの他に、ロボット本体320のキネマティクス、術式、仮想気腹状態のボリュームデータ、等に基づいて算出されてよい。ポート位置スコアは、ワーキングエリアWAの大きさ、ワーキングエリアWA内のそれぞれの位置で実施可能な処置の種類、術中のロボットアームARの可動範囲、の少なくとも1つに基づいて導出されてもよい。ワーキングエリアWAは、複数の手術器具30でアプローチできる被検体PS内の範囲である。手術計画部164は、ポート位置スコアを、ワーキングエリアWA内におけるターゲットTGに近い箇所に重み付けして、算出してもよい。
【0066】
また、手術計画スコアは、ロボット本体320が備える複数のロボットアームAR同士の干渉のし易さを示すアーム干渉スコアを含んでよい。例えば、アーム干渉スコアが大きい程、ロボットアームAR同士が干渉し易く、アーム干渉スコアが小さい程、ロボットアームAR同士が干渉し難い。ロボットアームARは、任意の位置にアプローチするとき、ロボットアームARが有する6を超えた自由度を用いて、異なる複数の姿勢を取ることができる。そして、異なる複数の姿勢を切り替えることによって、ロボットアームAR同士の干渉を避けることができる。
【0067】
アーム干渉スコアは、ワーキングエリアWA内のそれぞれの位置で実施可能な処置におけるロボットアームARの可動範囲に基づいて導出されてもよい。アーム干渉スコアは、さらにロボット本体320の計画位置、ロボット本体320の計画姿勢に基づいて導出されてもよい。
【0068】
また、手術計画スコアは、ロボット本体320の転倒のし難さを示すロボット安定スコアを含んでよい。ロボット安定スコアは、ロボット本体320のキネマティクス、ロボット本体320が計画姿勢をとった場合のロボット本体320の重心の位置、ロボット本体320と被検体PSとの間の空間(穿孔作業スペースに相当)の大きさ、等に基づいて算出されてよい。
【0069】
手術計画部164は、ポート位置スコア、アーム干渉スコア、及びロボット安定スコアの少なくとも1つを基に、手術計画スコアを算出してよい。例えば、ロボット本体320の計画位置や計画姿勢を加味しないポート位置スコアの値が最大であっても、ロボットアームAR同士の干渉が大きかったり、ロボット本体320のロボット手術時の安定性が不十分だったりする場合には、そのポート位置スコアに対応する複数のポートPTの計画位置が手術計画に採用されなくてもよい。
【0070】
手術計画部164は、手術計画スコアに基づいて、手術計画の内容を調整(手術計画調整とも称する)してよい。例えば、ロボット本体320の計画位置、ロボット本体320やアームベースABの姿勢、ポートPTの計画位置、アームベースABの姿勢の少なくとも1つを調整してよい。この場合、手術計画部164は、手術計画の変更に伴う手術計画スコアの変動量に基づいて、手術計画を調整してよい。手術計画の変更とは、ロボット本体320の計画位置の移動、ロボット本体320やアームベースABの計画姿勢の変更、ポートPTの計画位置の移動、等である。手術計画調整については後に補足する。
【0071】
このように、手術計画部164は、手術シミュレーションに従って、穿孔対象の複数のポート位置を導出してよい。また、手術計画部164は、手術計画スコアに基づいて手術計画を策定してよい。
【0072】
また、手術計画部164は、ポートPTの計画位置の許容誤差を算出し、この許容誤差を示す許容誤差情報を生成する。この許容誤差は、ポートPTの計画位置に対する穿孔に許容される誤差を示す。許容誤差を示す範囲は、ポートPTの計画位置を囲む範囲となる。手術計画部164は、手術計画スコアに基づいて、許容誤差を算出してよい。この場合、ポートPTの計画位置の移動に伴う手術計画スコアの変動量(低下量)に基づいて、許容誤差を算出してよい。例えば、ポートPTの計画位置での手術計画スコア(例えば手術計画スコアの最大値)からの手術計画スコアの低下量が閾値th1以下である範囲を、ロボット本体320の計画位置の許容誤差範囲に決定してよい。
【0073】
手術計画部164は、被検体PSのボリュームデータに基づいて、被検体PSのランドマークを認識し、ランドマークの情報を生成してよい。被検体PSのランドマークは、被検体PSの外部から視覚的に特定可能な部位である。ランドマークは1つ存在しても複数存在してもよい。手術計画部164は、UI120を介して特定のランドマークを指定する指定情報を取得し、指定されたランドマークの情報を生成してよい。ランドマークの情報は、ランドマークの種類(例えば臍)、ボリュームデータにおけるランドマークの位置、等を含んでよい。
【0074】
画像生成部165は、送受部110により取得されたボリュームデータに基づいて、3次元画像や2次元画像を生成してよい。画像生成部165は、領域処理部161により抽出されたボリュームデータの一部の領域に基づいて、3次元画像や2次元画像を生成してよい。3次元画像は、被検体PSの体表を示す体表画像を含んでよい。
【0075】
表示制御部166は、各種データ、情報、画像をディスプレイ130に表示させる。表示制御部166は、画像生成部165により生成された3次元画像又は2次元画像を表示させてよい。また、表示制御部166は、レンダリング画像の輝度調整を行ってよい。輝度調整は、例えばウインドウ幅(WW:Window Width)及びウインドウレベル(WL:Window Level)の少なくとも一方の調整を含んでよい。
【0076】
次に、手術支援ロボット300のロボット本体320の構成例について説明する。
【0077】
図4は、ロボット本体320の電気的な構成例を示すブロック図である。ロボット本体320は、プロセッサPR、送受部321、俯瞰カメラCA、センサSR、アクチュエータAC、コントロールパネルCP、メモリMRを含む構成である。
【0078】
送受部321は、通信ポート、外部装置接続ポート、組み込みデバイスへの接続ポート、等を含む。送受部110は、ロボット手術支援装置100及びCT装置200からの各種データを取得する。取得された各種データは、直ぐにプロセッサPR(処理部360)に送られて各種処理されてもよいし、メモリMRにおいて保管された後、必要時にプロセッサPRへ送られて各種処理されてもよい。また、各種データは、記録媒体や記録メディアを介して取得されてもよい。
【0079】
送受部110は、ロボット手術支援装置100及びCT装置200へ各種データを送信する。送信される各種データは、プロセッサPRから直接送信されてもよいし、メモリMRにおいて保管された後、必要時に各装置へ送信されてもよい。また、各種データは、記録媒体や記録メディアを介して送られてもよい。
【0080】
プロセッサPRは、例えばMPU、CPU、DSP、を含んでよい。プロセッサPRは、メモリMRに記憶されたプログラムを実行することにより、各種処理や制御を行う処理部360として機能する。
【0081】
俯瞰カメラCAは、撮像範囲内にある被写体を撮像し、俯瞰画像を得る。俯瞰画像には、例えばロボット本体320が手術室内に入室したり計画位置に配置されたりした際には、被検体PSの一部又は全体が映り込む。また、俯瞰画像には、手術室内の様子が映り込んでよい。
【0082】
メモリMRは、例えば各種データ、情報、又はプログラムを保持する。メモリMRは、各種ROMやRAMの一次記憶装置を含む。メモリMRは、HDDやSSDの二次記憶装置を含んでもよい。メモリMRは、USBメモリやSDカードや光ディスクの三次記憶装置を含んでもよい。
【0083】
メモリMRに保持される各種情報は、俯瞰カメラCAにより撮像された撮像画像(俯瞰画像とも称する)、プロセッサPRにより処理される情報や処理された情報、等を含んでよい。プロセッサPRにより処理される情報や処理された情報は、例えば、ロボット本体320による手術の手術計画の情報を含んでよい。メモリMRは、プログラムが記録される非一過性の記録媒体の一例である。
【0084】
アクチュエータACは、プロセッサPRの制御により、ロボット本体320の姿勢を変更するための各姿勢調整機構に駆動力を提供する。この姿勢調整機構は、例えば、回転機構、スライド機構、伸縮機構、等を含んでよい。姿勢調整機構は、例えばロボット本体320の各部材に含まれてもよいし、各部材同士を接続するジョイントJTに含まれてもよい。ロボット本体320は、アクチュエータACが所望のタイミングで各姿勢調整機構に駆動力を提供することで、術中に人手を介さずにロボット本体320の姿勢を変更できる。
【0085】
センサSRは、位置検出器(例えばリニアエンコーダ)、角度検出器(例えばロータリエンコーダ)、等を含む。センサSRは、逐次、ロボット本体320における各部材の位置や角度の検出を行い、ロボット本体320における各部材の動きを検出してよい。センサSRによる検出結果は、プロセッサPRに送られる。
【0086】
コントロールパネルCPは、例えばタッチパネルにより構成され、操作部及び表示部としての機能を有する。コントロールパネルCPは、各種操作を受け付け、操作情報をプロセッサPRに送る。各種操作は、ロボット本体320の全体又は一部の姿勢を指定する操作、ロボット本体320の移動に関する操作、等を含んでよい。ロボット本体320の姿勢の指定は、ロボット本体320の姿勢の種別の指定を含んでよい。コントロールパネルCPは、各種情報を表示する。例えば、操作に関する情報を表示し、操作のためのガイド情報や操作の選択肢を表示したり、操作の結果を表示したりしてよい。コントロールパネルCPは、ユーザに操作され、ユーザに表示を確認される。なお、操作部と表示部とが別体で構成されてもよい。
【0087】
次に、処理部360の詳細について説明する。
【0088】
処理部360は、ロボット本体320の各部を制御する。処理部360は、ロボット本体320の姿勢を制御する。処理部360は、コントロールパネルCPからロボット本体320の姿勢の指定情報に基づいて、ロボット本体320の全体又は一部の姿勢を制御してよい。処理部360は、メモリMR等からロボット本体320の計画姿勢を取得し、計画姿勢に基づいてロボット本体320の姿勢を制御してよい。この場合、アクチュエータACから各姿勢調整機構への駆動力の提供を制御することで、ロボット本体320の姿勢を制御してよい。また、センサSRによる検出情報に基づいて、ロボット本体320の姿勢を制御してよい。
【0089】
処理部360は、送受部321を介してロボット操作端末310からの操作情報を取得し、この操作情報に基づいてロボットアームAR及び手術器具30の動作を制御する。
【0090】
処理部360は、俯瞰カメラCAにより撮像された俯瞰画像を取得してよい。処理部360は、ロボット手術支援装置100からの手術計画の情報を取得してよい。処理部360は、俯瞰画像及び手術計画に基づいて、ポート位置決めを行ってよい。ポート位置決めは、仮想空間上(3Dデータ上)で計画されたポート位置と、実空間上のポート位置と、の位置合わせである。具体的には、処理部360が、ロボット手術の際に得られる俯瞰画像におけるポートPTの計画位置(画像位置)を認識することであってよい。
【0091】
処理部360は、被検体PSのランドマークを基に、ポート位置決めを行ってよい。この場合、処理部360は、俯瞰画像を画像解析してランドマークを認識する。また、処理部360は、認識されたランドマークと、手術計画に含まれるランドマークに対するポートPTの計画位置に基づいて、俯瞰画像G1におけるポートPTの計画位置を認識する。俯瞰画像G1におけるポートPTの計画位置は、1つでも複数でもよい。また、処理部360は、認識されたランドマークと、ランドマークに対するポートPTの計画位置と、手術計画に含まれる許容誤差情報に基づいて、俯瞰画像におけるポートPTの計画位置に対する許容誤差範囲(画像範囲)を認識してよい。
【0092】
処理部360は、俯瞰画像において認識されたポートPTの計画位置に対応して、ポートPTの計画位置を示すポート位置情報を表示させてよい。また、処理部360は、俯瞰画像において認識されたポートPTの許容誤差範囲に対応して、ポートPTの許容誤差を示す許容誤差情報を表示させてよい。
【0093】
許容誤差情報は、図形情報や文字情報として表示されてよい。図形情報は、ポートPTの計画位置を含む許容誤差を含む範囲で示されてよい。この範囲は、被検体PSの体表における二次元範囲でよい。二次元範囲は、円(楕円、真円、その他の円)、多角形(例えば長方形、正方形、三角形、その他の多角形)、その他の形状で示される範囲でよい。円や多角形は、プリミティブ形状とも称する。許容誤差情報は、その他の情報(例えば表示態様(表示色、表示サイズ、表示パターン、点滅パターン)の情報)として表示されてよい。例えばポートPTの計画位置の許容誤差が大きい場合には第1の色でポートPTの計画位置が表示され、許容誤差が小さい場合には第2の色でポートPTの計画位置が表示されてよい。
【0094】
ロボット手術支援システム1が許容誤差情報を表示することで、助手等は、許容誤差情報を視認でき、ポートPTの計画位置に対する実際の穿孔位置のずれがどのくらいの範囲で許容されるかを迅速に把握できる。
【0095】
例えば許容誤差情報が示す範囲が大きい場合、助手等は、ポートPTに大雑把に穿孔可能であることを認識できる。また、助手等の心理的負担を軽減できる。また、ロボット手術支援システム1は、ポートPTの計画位置の精度が多少低くてもよく、ポートPTの計画位置の導出を行うことに要する演算や工数を削減でき、手術計画に要する時間を短縮できる。
【0096】
例えば許容誤差情報が示す範囲が小さい場合、助手等は、ポートPTを計画位置に正確に穿孔する必要があることを認識できる。また、ロボット手術支援システム1は、ポートPTの計画位置での穿孔に際し高い精度が求められている旨を、ユーザへ注意喚起できる。
【0097】
次に、表示装置400について説明する。
【0098】
手術室には、ロボット手術支援装置100のディスプレイ130やロボット本体320のコントロールパネルCPとは別体の表示装置400が設けられてよい。表示装置400は1つ設けられても複数設けられてもよい。表示装置400は、ロボット手術支援装置100により生成された被検体PSの3次元画像や2次元画像を表示してよい。表示装置400は、術中に被検体PSの内部が撮像された実内視鏡画像を表示してよい。表示装置400は、俯瞰カメラCAにより撮像された俯瞰画像を表示してよい。表示装置400は、術中ナビゲーションに関する情報(例えばポート位置情報、許容誤差情報、各種の案内情)を表示してよい。複数の表示装置は、同じ画像を表示してもよいし、異なる画像を表示してもよい。
【0099】
図5は、ロボット本体320の構造例を示す図である。ここでは、先に説明した
図4の電気的な構成と同様の構成については、説明を省略又は簡略化することもある。
【0100】
なお、
図5~
図11では、手術室の座標系が、XYZを用いて示されている。X方向は、手術室の床面に沿う一方向である。また、Y方向は、手術室の床面に沿いX方向に垂直な方向である。また、Z方向は、X方向及びY方向に垂直な方向であり、つまり鉛直方向に沿う方向である。X方向、Y方向、Z方向は、これ以外の方向でもよく、手術室を基準にしない方向でもよい。
【0101】
また、
図5では、被検体PSの座標系が、xyzを用いて示されている。x方向は、被検体PSを基準とした左右方向に沿ってよい。y方向は、被検体PSを基準とした前後方向(被検体PSの厚み方向)でよい。z方向は、被検体PSを基準とした上下方向(被検体PSの体軸方向)でよい。x方向、y方向、z方向は、DICOM(Digital Imaging and COmmunications in Medicine)で規定された3方向でよい。x方向、y方向、z方向は、これ以外の方向でもよく、被検体PSを基準にしない方向でもよい。
【0102】
図5では、X方向はz方向と一致し、Y方向はx方向と一致し、Z方向はy方向と一致している。なお、ロボット本体320に対する手術ベッドBD及び被検体PSの向きはこれに限られない。したがって、手術室の座標系と被検体PSの座標系との関係性は、上記の対応関係に限られない。
【0103】
ロボット本体320は、ベースBA、コントロールパネルCP、回転台RO、親アームPA、天井部材TP、アームベースAB、俯瞰カメラCA、ロボットアームAR、及び手術器具30を備える。また、ロボット本体320は、支持部材SP1,SP2,SP3、ジョイントJT(JT1,JT2,JT3,JT4,JT5,JT6,JT7,JT8)を含む構成である。
【0104】
ジョイントJTは、ロボット本体320に含まれる各部材のうちの少なくとも1つに接続される。ジョイントJTは、ロボット本体320の姿勢を調整するための姿勢調整機構、姿勢調整機構の状態を計測するセンサSR、姿勢調整機構に駆動力を提供するアクチュエータAC、等を有する。姿勢調整機構は、ジョイントJTに接続された2つの部材のうちの一の部材に対して他の部材が回転する回転機構を含んでよい。姿勢調整機構は、ジョイントJTに接続された1つの部材が平行移動するスライド機構を含んでよい。姿勢調整機構は、ジョイントJTに接続された1つの部材が伸縮する伸縮機構を含んでよい。よって、姿勢調整機構は、ジョイントJTに接続された各部材の状態を変更したり、ジョイントJTに接続される複数の部材の位置関係を変更したりできる。
【0105】
ベースBAは、ロボット手術の際には手術室内の床上に配置される。ベースBAの配置位置が、ロボット本体320の配置位置であってよい。ベースBAは、ベースBAの下部に、タイヤ等のロボット本体320が移動するための部材、ロボット本体320の移動を規制するロック部材、等を有する。なお、ロボット本体320の配置位置は、ロボット本体320全体が床上に投影された位置であってもよい。
【0106】
回転台ROは、ジョイントJT1を介してベースBAに接続される。回転台ROは、ベースBAに対して、例えば、XY平面におけるジョイントJT1の中心を通るZ方向を回転中心として、XY平面に沿って回転可能である。
【0107】
支持部材SP1は、ジョイントJT2を介して回転台ROに接続される。支持部材SP1は、回転台ROに対して、例えば、XZ平面におけるジョイントJT2の中心を通るY方向を回転中心として、XZ平面に沿って回転可能である。
【0108】
親アームPAは、ジョイントJT3を介して支持部材SP1に接続される。親アームPAは、支持部材SP1に対して、例えば、XZ平面におけるジョイントJT3の中心を通るY方向を回転中心としてXZ平面に沿って回転可能である。
【0109】
支持部材SP2は、ジョイントJT4を介して親アームPAに接続される。支持部材SP2は、親アームPAに対して、例えば、XZ平面におけるジョイントJT4の中心を通るY方向を回転中心としてXZ平面に沿って回転可能である。
【0110】
天井部材TPは、ジョイントJT5を介して支持部材SP2に接続される。天井部材TPは、支持部材SP2に対して、例えば、XZ平面におけるジョイントJT5の中心を通るY方向を回転中心として、XZ平面に沿って回転可能である。
【0111】
アームベースABは、ジョイントJT6を介して天井部材TPに接続される。アームベースABは、天井部材TPに対して、例えば、天井部材TPとアームベースABとの対向面におけるジョイントJT6の中心を通りこの対向面に垂直な方向d1(天井部材TPとアームベースABとの配列方向)を回転中心として、この対向面に沿って回転可能である。
【0112】
支持部材SP3は、ジョイントJT7を介してアームベースABに接続される。支持部材SP3は、アームベースABに対して、例えば、XZ平面におけるジョイントJT7の中心を通るY方向を回転中心として、XZ平面に沿って回転可能である。
【0113】
ロボットアームARは、ジョイントJT8を介して支持部材SP3に接続される。ロボットアームARは、支持部材SP3に対して、例えば、ロボットアームARと支持部材SP3との接続面におけるジョイントJT8の中心を通りこの接続面に垂直な方向d2を回転中心として、この接続面に沿って回転可能である。
【0114】
また、ロボットアームARは、2つの方向に沿う第1部分及び第2部分を有する。2つの方向は、相互に垂直な方向でよい。
図5では、ロボットアームARは、Z方向に沿う第1部分と、X方向に沿う第2部分と、を有する。なお、例えばジョイントJT7又はジョイントJT8が回転すると、ロボットアームARの2つの部分が延びる方向は、
図5の状態から変化する。なお、図示していないが、ロボットアームARは、多数のジョイントに接続され、又は多数のジョイントを有し、多数のジョイントの動きに従ってロボットアームARの動きに関して8自由度を有する。
【0115】
手術器具30は、ロボットアームARの第2部分に接続される。ロボットアームARの第2部分には、この第2部分に沿って手術器具30がスライド可能なスライド機構を有する。手術器具30は、手術器具30の動作に関して4自由度を有する。4自由度は、ロボットアームARの第2部分に沿う方向に移動可能であり、手術器具30の延在方向を回転中心として回転可能であり、手術器具30の先端部がお辞儀するように曲がることが可能であり、手術器具30の先端部が開閉可能であること、等を含んでよい。
【0116】
ロボットアームARには、直接にはトロッカーTCは装着されない(接続されない)。これにより、ロボット本体320は、トロッカーTCとロボットアームARとの間に空間を確保でき、ポートPTの穿孔や術中の手術器具30の動作の際に作業スペースを確保し易くなる。また、ロボットアームARとトロッカーTCとが接続されないことで、ロボットアームARとトロッカーTCが位置する手術器具30の回転中心との相対位置が可変である。そのため、ロボット本体320は、自由度が一層高いロボットアームARの動きを実現できる。
【0117】
このように、ロボット本体320は、ジョイントJTに接続された部材の姿勢(位置や向き)を変更させたり、ジョイントJTに接続された複数の部材の相対的な位置関係や向きを変更させたりすることで、ロボット本体320全体又は一部の姿勢を柔軟に調整できる。特に、ロボットアームARが8自由度を有することで、手術器具30を動かさずにロボットアームARを動かすことができ、ロボットアームAR同士の干渉を抑制したり易くなる。なお、ジョイントJTの位置やジョイントJTの作用による各部材の動きは、上記に説明した内容に限られない。例えば、ジョイントJTの少なくとも1つがスライド機構や伸縮機構を有して、各部材がスライドや伸縮してもよいし、ロボット本体320の各部材が
図5に示した方向とは異なる方向に回転してもよい。
【0118】
また、ロボット本体320は、天井部材TPの先端部にアームベースABが設置されている。また、ロボット本体320に設けられた各ジョイントJTの作用によりアームベースABを、水平方向に対して傾斜可能である。また、ロボット本体320は、アームベースABが傾斜することで、ロボット手術の対象である被検体PSとの間に空間を確保し易くなり、術中の作業性を向上できる。例えば、ロボット本体320は、助手等によりポート穿孔姿勢を取りやすくなる。
【0119】
次に、ロボット本体320の姿勢の具体例について説明する。
【0120】
ロボット本体320は、手術に際して様々な姿勢をとることができる。ロボット本体320の姿勢は、例えば、配置姿勢、ポート穿孔姿勢、及び装備姿勢を含む。ロボット本体320は、ロボット本体320の姿勢を、例えば、配置姿勢、ポート穿孔姿勢、装備姿勢の順に変更する。装備姿勢の後には、ロボット本体320は、例えばロボット操作端末310を介した術者の操作に基づいて、実際の手術の処置に対応する姿勢となる。
【0121】
図6~
図11を用いて、ロボット本体320,320Aの各姿勢を示す。ロボット本体320Aは、ロボット本体320の親アームPA及び支持部材SP1,SP2の代わりに、支持部材SP4を有している。また、支持部材SP4がジョイントJTの伸縮機構により伸縮可能となっている。ロボット本体320Aのその他の構成は、ロボット本体320と同様であるので、その説明を省略する。よって、ロボット本体320Aは、ロボット本体320の変形例である。
【0122】
配置姿勢は、ロボット本体320を手術室に移動し、被検体PSが載置される手術ベッドBDの近傍に配置する際の姿勢である。配置姿勢は、ロボット本体320の各部材で囲まれる空間上の大きさ(体積)が閾値th2以下(例えば最小)となる姿勢である。ロボット本体320は、配置姿勢となることで、例えば手術室の扉、手術室に設置された各種装置、手術室に所在する人に接触しないようにしたり、手術室に所在する人の動き(動線)を妨げないようにしたりできる。
【0123】
ロボット手術支援装置100の手術計画部164は、例えばロボット本体320のキネマティクスに基づいて、配置姿勢に係る計画姿勢を算出する。なお、所定の配置姿勢が予めテンプレートとして用意され、この配置姿勢が計画姿勢とされてもよい。ロボット本体320の処理部360は、手術計画に含まれる配置姿勢に係る計画姿勢を取得し、計画姿勢に従って姿勢を制御し、配置姿勢に係る計画姿勢をとる。
【0124】
図6は、ロボット本体320の配置姿勢の一例を示す模式図である。
図7は、ロボット本体320Aの配置姿勢の一例を示す模式図である。
【0125】
図6では、回転台ROにロボットアームARが極力接近した状態となっており、ロボット本体320の全体がコンパクトになっている。
図7では、支持部材SP4が収縮した状態となっており、ロボット本体320Aの全体がコンパクトになっている。
【0126】
ポート穿孔姿勢は、被検体PSへのポートPTの穿孔時の姿勢である。ポート穿孔姿勢は、被検体PSの周囲になるべく広い空間を確保する姿勢である。ポート穿孔姿勢は、例えば、ロボットアームARと被検体PSとの間の空間(穿孔作業スペースとも称する)の大きさが閾値th3以上(例えば最大)となる姿勢でよい。ロボット本体320は、ポート穿孔姿勢となることで、例えば、ロボットアームARが、助手等によるポートPTの穿孔作業の邪魔となることを抑制できる。ポート穿孔姿勢となるために、親アームPAや回転台ROを動かすジョイントJTが駆動され、ロボットアームARが被検体PSからなるべく遠くなるよう制御されてよい。処理部360は、ロボット本体320がポート穿孔姿勢をとる場合、ロボットアームARが被検体PSから離れるように、ロボットアームARを作動させてもよいし、アームベースABを作動させてもよいし、ロボットアームAR及びアームベースABの両方を作動させてもよい。結果的に、ロボットアームARが被検体PSから十分に離れればよい。
【0127】
ロボット手術支援装置100の手術計画部164が、例えばロボット本体320のキネマティクスに基づいて、ポート穿孔姿勢に係る計画姿勢を算出する。なお、所定のポート穿孔姿勢が予めテンプレートとして用意され、このポート穿孔姿勢が計画姿勢とされてもよい。ロボット本体320の処理部360は、手術計画に含まれるポート穿孔姿勢に係る計画姿勢を取得し、計画姿勢に従って姿勢を制御し、ポート穿孔姿勢に係る計画姿勢をとる。
【0128】
図8は、ロボット本体320のポート穿孔姿勢の一例を示す模式図である。
図9は、ロボット本体320Aのポート穿孔姿勢の一例を示す模式図である。
【0129】
図8では、回転台ROとアームベースABとが極力離間した状態となっており、穿孔作業スペースが広く確保されている。
図9では、支持部材SP4が伸長した状態となっており、穿孔作業スペースが広く確保されている。
【0130】
装備姿勢は、ロボットアームARにエンドエフェクタEFとして手術器具30等を装備し、穿孔されたポートPTを通じて手術器具30を被検体PSの内部に挿入する際の姿勢である。つまり、手術器具30は、装備姿勢の際に取り付けられ、配置姿勢及びポート穿孔姿勢の際には取り付けられていない。装備姿勢は、被検体PSの内部の状態(例えば被検体PS内の各臓器の位置、ターゲットTGの位置)、術式、等に基づいて定まる。装備姿勢は、例えば、術中の手術器具30の可動範囲、つまりワーキングエリアWAが閾値th4以上(例えば最大)となる姿勢となってよい。また、装備姿勢は、術中のロボットアームARの可動範囲が閾値th42以上(例えば最大)となってよく、つまりロボットアーム同士の干渉量を示すアーム干渉スコアが閾値th42に対応する閾値th43以下(例えば最小)となる姿勢となってよい。
【0131】
ロボット手術支援装置100の手術計画部164は、ロボット本体320のキネマティクス、被検体PSのボリュームデータ、術式、等に基づいて、装備姿勢に係る計画姿勢を算出してよい。なお、所定の装備姿勢が予めテンプレートとして用意され、この装備姿勢が計画姿勢とされてもよい。ロボット本体320の処理部360は、手術計画に含まれる装備姿勢に係る計画姿勢を取得し、計画姿勢に従って姿勢を制御し、装備姿勢に係る計画姿勢をとる。
【0132】
図10は、ロボット本体320の装備姿勢の一例を示す模式図である。
図11は、ロボット本体320Aの装備姿勢の一例を示す模式図である。
【0133】
ロボット本体320は、装備姿勢とされた後、術中の処置のための動作を行う。この際、ロボット本体320は、ロボット本体320の配置位置、親アームPAの姿勢、及び回転台ROの姿勢を変更しない(態様を変化させない)。
【0134】
このように、ロボット本体320は、なるべくコンパクトな姿勢で手術室へ入室し、手術ベッドBDの近傍に配置できる。そして、入室後に、穿孔作業スペースを広く確保してポートPTを穿孔できる。よって、ポートPTを穿孔してからロボット本体320を、手術ベッドBDの近傍に配置する場合と比較すると、ポートPTの穿孔から手術終了までの時間を短縮でき、被検体PSにかかる負担を低減できる。また、手術器具30をロボットアームARに装備し、ポートPTを介して手術器具30を被検体PSに挿入した後には、スムーズに必要な処置を行うことができる。
【0135】
図12は、ロボット手術時のトロッカーTC、手術器具30、及び被検体PSの内部の様子の一例を示す図である。
【0136】
ロボット本体320のロボットアームARに取り付けられたエンドエフェクタEFは、トロッカーTCを挿通して被検体PSの内部に挿入される。
図12では、トロッカーTCが、気腹された被検体PSの体表70に設置される。また、肝臓50の一部に病変が存在し、処置が行われるターゲットTGとなっている。ターゲットTG付近の様子は、ロボットアームARに取り付けられた内視鏡ESにより撮像される。術中には、内視鏡ESの視野(撮像範囲CR1)内に、ターゲットTG付近が含まれるよう調整される。内視鏡ESもエンドエフェクタEFと同様に、トロッカーTCを挿通して被検体PSの内部に挿入される。エンドエフェクタEF及び内視鏡ES(手術器具30)は、ポートPTの位置、トロッカーTCの位置が回転中心となる。なお、この手術器具30の回転中心の位置は、手術計画時と実際のポート穿孔結果とで異なる場合があり得る。この場合、例えば俯瞰画像に映り込んでいるトロッカーTCを基に、手術計画とは異なる実際の回転中心が認識されてよい。
【0137】
手術計画部164は、肝臓50のターゲットTGに対してエンドエフェクタEFにより適切に処置するために、ワーキングエリアWAを計画する。ワーキングエリアWAは、ロボット本体320の各部材の位置や向きによって形成されるが、ロボット本体320のロボットアームARやエンドエフェクタEFの自由度が高いことで、ワーキングエリアWAが柔軟に設定可能である。例えば、ロボット本体320は、アームベースABの位置を可変にすることで、ロボットアームARの余剰(6より大きい自由度)の自由度による利益を最大限に享受できるアームベースABの配置ができる。これにより、ロボットアームAR同士の干渉を一層抑制できる。
【0138】
なお、ポートPTには、内視鏡ESが挿入されるカメラポート、エンドエフェクタEFが挿入されるエンドエフェクタポート、助手が把持する鉗子類が挿入される補助ポート、等が含まれてよい。各ポートPTは上記の種類毎に複数存在してよく、各ポートPTの大きさは種類毎に同じでも異なってもよい。例えば、臓器を抑えるためのエンドエフェクタEFや被検体PS内での動きが複雑なエンドエフェクタEFが挿入されるエンドエフェクタポートは、電気メスとしてのエンドエフェクタEFが挿入されるエンドエフェクタポートよりも大きくてよい。補助ポートは、比較的自由に配置位置が計画されてよい。
【0139】
次に、ロボット手術支援装置100による手術計画の生成例について説明する。
【0140】
図13は、ロボット手術支援装置100による手術計画の生成例を示すフローチャートである。
図13に示す処理は、主に処理部160によって実行される。
図14は、被検体PSの内部のワーキングエリアの一例を示す図である。
【0141】
まず、ポート位置とワーキングエリアWAを算出(計画)する(S1)。ワーキングエリアWAは、例えば
図14の個別ワーキングエリアWA1又は全体ワーキングエリアWA2に相当する。ポート位置とワーキングエリアWAの算出例については、補足情報として後述する。なお、ポート位置とワーキングエリアWAの算出手法は、補足情報で示される手法に限られない。例えば、参考特許文献1又は参考特許文献2に示されたポート位置とワーキングエリアWAの算出手法が用いられてもよい。
(参考特許文献1:米国特許出願公開2012/0253515明細書)
参考特許文献2:米国特許出願公開2014/0148816明細書)
【0142】
ワーキングエリアWA内での作業(処置)に応じた、複数のロボットアームARのそれぞれの可動範囲を算出する(S2)。複数のロボットアームARのそれぞれの可動範囲に基づいて、アーム干渉スコアが算出され得る。例えば、ロボットアームARの可動範囲が小さい程、アーム干渉スコアが大きく、つまり他のロボットアームARとの干渉が大きいことを意味してよい。一方、ロボットアームARの可動範囲が大きい程、アーム干渉スコアが小さく、つまり他のロボットアームARとの干渉が小さいことを意味してよい。
【0143】
ロボット本体320のアームベースABの姿勢を算出(計画)する(S3)。例えば、アーム干渉スコアを加味した手術計画スコアが閾値th5以下(例えば最小)となる場合のアームベースABの姿勢を、アームベースABの計画姿勢として決定する。これにより、ロボット手術支援装置100は、ロボット本体320の複数のロボットアームAR同士の干渉を低減(例えば最小化)したアームベースABの姿勢を計画できる。
【0144】
S3で算出されたアームベースABの姿勢に基づいて、ロボット本体320の配置位置を算出(計画)する(S4)。つまり、S3で算出されたアームベースABの計画姿勢がとられた場合のロボット本体320の配置位置を算出する。例えば、ロボット安定スコアを加味した手術計画スコアが閾値th6以上(例えば最大)となる場合のロボット本体320の位置を、ロボット本体320の計画位置として決定する。これにより、ロボット手術支援装置100は、ロボット本体320の安定した配置を計画でき、ポートPTの穿孔作業、手術器具30の装備、各種処置、等がし易い計画位置を導出できる。
【0145】
また、ロボット本体320の装備姿勢を算出(計画)してもよい。つまり、S3で算出されたアームベースABの計画姿勢がとられた場合のロボット本体320の装備姿勢を算出する。例えば、手術計画スコアが閾値th7以上(例えば最大)となる場合のロボット本体320の装備姿勢を、ロボット本体320の装備姿勢に係る計画姿勢として決定する。これにより、ロボット手術支援装置100は、ロボット本体320における手術器具30の装着時やロボット手術の各種処置時の操作性を最適化できる。
【0146】
次に、ロボット手術支援システム1のロボット手術の際の動作について説明する。
【0147】
図15は、手術支援ロボット300によるロボット手術の際の動作例を示すフローチャートである。なお、ここでは、ロボット手術の際の助手等の操作についても説明する。
【0148】
まず、処理部360は、ロボット本体320の計画位置への配置前に、コントロールパネルCPを介して、術式及び配置開始方向を指定する(S11)。配置開始方向は、被検体PSから所定距離以上に離れた位置から、被検体PSに対するどの角度(方向)からロボット本体320の計画位置に向かうかを示す情報である。
【0149】
処理部360は、コントロールパネルCPを介してロボット本体320の姿勢として配置姿勢を指定し、ロボット本体320が配置姿勢に係る計画姿勢とする(S12)。助手等は、ロボット本体320を、配置姿勢の状態で、例えば被検体PSの近傍の計画位置に移動させる。
【0150】
処理部360は、ロボット本体320が被検体PSに近づいたか否かを判定する。この場合、処理部360は、俯瞰カメラCAにより撮像された俯瞰画像を画像解析して、俯瞰カメラCAと被検体PSとの距離を認識してよい。そして、この距離が閾値th8以下である場合、ロボット本体320が被検体PSに近づいたと判定してよい。助手等は、俯瞰画像に表れた被検体PSの体表を表示装置400等の表示により確認し、被検体PSに対するロボット本体320の配置を位置調整する。助手等は、この位置調整を、例えば、ロボット本体320の配置開始前に目印をつけたカメラポートの穿孔予定位置を基準に行ってよい。
【0151】
ロボット本体320が計画位置に配置されると、処理部360は、コントロールパネルCPを介してロボット本体320の姿勢としてポート穿孔姿勢を指定し、ロボット本体320がポート穿孔姿勢に係る計画姿勢とする(S13)。助手等は、ロボット本体320をポート穿孔姿勢の状態で、ポートの計画位置にポートPTを穿孔する。
【0152】
ポートPTが穿孔されると、処理部360は、コントロールパネルCPを介してロボット本体320の姿勢として装備姿勢を指定し、ロボット本体320の姿勢を装備姿勢に係る計画姿勢とする(S14)。これにより、ロボット本体320(特にアームベースAB、各ロボットアームAR)の姿勢が、手術器具30を装備し易い姿勢になる。
【0153】
助手等は、カメラアームに内視鏡ESを設置し、カメラポートに設置されたトロッカーTCを介して内視鏡ESを被検体PSの内部に挿入する。カメラポートの位置(3次元位置)は、トロッカーTCの位置となり、内視鏡ESの回転中心となる。ロボット本体320は、この回転中心を、例えば、手術計画(例えばロボット本体320のキネマティクス)と俯瞰画像とを基に決定してよい。なお、助手等が、ロボット操作端末310を介して内視鏡ESを動かし、カメラアームに取り付けられた他の手術器具30の回転中心を探索してもよい。この場合、ロボット本体320の処理部360は、コントロールパネルCPを介して他の手術器具30の回転中心を入力し、決定してもよい。回転中心を決定するための手術器具30は、回転中心を決定するための専用の手術器具であってよい。これにより、ロボット本体320は、例えばポートPTの計画位置と実際に穿孔されたポートPTの位置がずれ、回転中心が計画位置とずれていても、回転中心の位置を調整でき、ロボット手術の精度の低下を抑制できる。
【0154】
助手等は、内視鏡ESと同様に、エンドエフェクタアームにエンドエフェクタEFを設置し、エンドエフェクタポートに設置されたトロッカーTCを介してエンドエフェクタEFを被検体PSの内部に挿入する。また、ロボット本体320は、内視鏡ESの場合と同様の手法で、エンドエフェクタEFの回転中心を決定してもよい。
【0155】
このように、ロボット手術の際には、ロボット本体320の配置前にポートPTが穿孔されるのではなく、ロボット本体320の配置後にポートPT(特にエンドエフェクタポート)が穿孔される。
【0156】
また、従来の手術支援ロボットのロボット本体では、ロボットアームARに沿ってスライド可能な範囲において手術器具30をスライド可能であるが、ロボットアームARはトロッカーTCが接続されているために移動が制約される。一方、ロボット本体320では、ロボットアームARに取り付けられた手術器具30が挿入されるトロッカーTCと、このロボットアームARとが接続されずに、ロボットアームARと手術器具30とが接続される。よって、手術器具30は、スライド機構によるスライドとともに、ロボットアームARの動きによっても手術器具30を手術器具30の軸方向に前後させることができる。よって、ロボットアームARの位置の自由度が増す。これによって、ロボット本体320は、ロボットアームARの干渉を軽減できる。
【0157】
次に、ロボット本体320の計画位置への配置時の動きについて説明する。
【0158】
図16は、ロボット本体320の被検体PSへの接近例を示す模式図である。
図17は、被検体PS近傍の計画位置へのロボット本体320の配置例を示す模式図である。
図18は、ロボット本体320の計画位置においてポート穿孔姿勢をとるロボット本体320の一例を示す模式図である。
図16~
図18は、いずれも、手術室内の手術ベッドBDに載置された被検体PSの近傍を、手術室の天井側から見た様子を示している。
【0159】
ロボット本体320は、手術室に入り、矢印αの方向に進行して、手術ベッドBDに載置された被検体PSに近づく(
図16参照)。被検体PSへの接近中、俯瞰カメラCAは、俯瞰カメラCAの撮像範囲CRに含まれる被写体を撮像する。撮像範囲CRには、被検体PSの少なくとも一部が含まれる。ロボット本体320は、被検体PSへの接近中には、配置姿勢をとっている。また、撮像範囲CRには、被検体PS周囲の様子も映り込む。そのため、例えば俯瞰画像がコントロールパネルCP又は表示装置400に表示されることで、助手等は、ロボット本体320の周囲に気を配りながらロボット本体320を計画位置へ移動させることができる。
【0160】
ロボット本体320は、例えば被検体PSの近傍にある計画位置に配置される(
図17参照)。ロボット本体320は、計画位置への配置後、ポート穿孔姿勢をとる(
図18参照)。なお、ロボット本体320の計画位置への配置前から被検体PSにポートPTが穿孔されており、ロボット本体320の姿勢が、配置姿勢からポート穿孔姿勢に移行せずに、配置姿勢から装備姿勢に移行してもよい。
【0161】
次に、ロボット手術支援システム1によるポート位置決めの支援について説明する。
【0162】
図19は、被検体PSのランドマークの一例を示す模式図である。例えば、ロボット本体320の処理部360は、俯瞰画像が被検体PSのランドマークを含む場合、俯瞰画像の画像解析の結果を基に、被検体PSにおける位置合わせのための基準位置としてランドマークを使用可能である。
【0163】
図19では、被検体PSの腹部周辺が手術対象であることを例示する。手術対象である腹部周辺は、ドレープDPで覆われておらず、手術対象外である腹部周辺以外は、ドレープDPで覆われている。被検体PSにおけるドレープDPで覆われた部分には、ランドマークは存在しない。被検体PSにおけるドレープDPで覆われていない部分では、被検体PSの体表が視認可能である。なお、ドレープDPが不在であってもよい。
【0164】
被検体PSのランドマークは、臍HS、骨盤の輪郭RK1、胴の輪郭RK2、その他の被検体PSに描かれたマーキングMK、等を含んでよい。また、ランドマークは、腋窩線、剣状突起、肋骨の輪郭、等を含んでもよい。
【0165】
図20は、被検体PSの体表の3次元画像に被検体PSのランドマーク及びポートPTの計画位置を重畳した表示例を示す模式図である。
図20は、例えば述前の手術シミュレーション時の被検体PSの体表70の様子の一例を示している。
図20では、被検体PSの体表70上の対応する位置に、ランドマークとしての剣状突起KT(例えば剣状突起KTの先端)及び臍HSと、ポートPTの計画位置と、が示されている。被検体PSの体表画像にランドマーク及びポートPTの計画位置を示す情報が重畳された画像(
図20の画像)は、コントロールパネルCPや表示装置400に表示されてよい。なお、ランドマークを示す情報は重畳表示されなくてもよい。
【0166】
図21は、被検体PSの体内の3次元画像(例えばレイキャスト画像)に被検体PSのランドマーク及びポートPTの計画位置を重畳した表示例を示す模式図である。
図21は、例えば述前の手術シミュレーション時の被検体PSの内部の様子の一例を示している。
図21では、被検体PSの3次元画像上の対応する位置に、ランドマークとしての剣状突起KT(例えば剣状突起KTの先端)及び臍HSと、ポートPTの計画位置と、が示されている。被検体PSの3次元画像にランドマーク及びポートPTの計画位置を示す情報が重畳された画像(
図21の画像)は、コントロールパネルCPや表示装置400に表示されてよい。なお、ランドマークを示す情報は重畳表示されなくてもよい。
【0167】
図22は、俯瞰画像G1に含まれる被検体PSのランドマークとポートPTの計画位置との一例を示す模式図である。
図22は、例えば術中に俯瞰カメラCAにより撮像された俯瞰画像G1に映り込んだ体表70の様子の一例を示している。
図22では、体表70の一部がドレープDPにより覆われている。
図22では、俯瞰画像G1上の対応する位置に、ランドマークとしての剣状突起KT(例えば剣状突起KTの先端)及び臍HSと、ポートPTの計画位置と、が示されている。俯瞰画像G1にランドマーク及びポートPTの計画位置を示す情報が重畳された画像(
図22の画像)は、コントロールパネルCPや表示装置400に表示されてよい。なお、ランドマークを示す情報は重畳表示されなくてもよい。俯瞰画像G1は、例えばポート穿孔作業中のリアルタイム画像として用いられ、ポートの計画位置とともに重畳表示されてよい。
【0168】
図23は、俯瞰画像に含まれる被検体PSのランドマークとポートPTの計画位置とポートPTの許容誤差情報KGとの一例を示す模式図である。
図23は、例えば術中に俯瞰カメラCAにより撮像された俯瞰画像G2に映り込んだ体表70の様子の一例を示している。
図23では、体表70がドレープDPで覆われていない。
図23では、俯瞰画像G2上の対応する位置に、ランドマークとしての剣状突起KT(例えば剣状突起KTの先端)及び臍HSと、ポートPTの計画位置と、ポートPTの許容誤差情報KGが示されている。俯瞰画像G2にランドマーク、ポートPTの計画位置、ポートPTの許容誤差を示す情報が重畳された画像(
図23の画像)は、コントロールパネルCPや表示装置400に表示されてよい。なお、ランドマークを示す情報は重畳表示されなくてもよい。
【0169】
図23では、複数のポートPTが示されている。複数のポートPTは、補助ポートPTA、カメラポート、エンドエフェクタポート、等を含む。各ポートPT(PTA、A~E)の計画位置の周囲には、ポートPTの許容誤差情報KGに対応する許容誤差範囲が示されている。
図23では、許容誤差範囲の外周の形状は一例として円形となっているが、他の形状となってもよい。
【0170】
図24及び
図25は、ロボット手術支援システム1によるポート位置決めに係る動作例を示すフローチャートである。なお、
図24のS21~S25は、例えば術前に実施される。これらの各処理は、例えばロボット手術支援装置100の処理部160の各部によって実施される。
図25のS31~S35は、例えば手術の際(例えば実際の処置の前)に実施される。これらの各処理は、例えばロボット本体320の処理部360により実施される。
【0171】
術前には、処理部160は、被検体PS(例えば患者)のボリュームデータを取得する(S21)。例えばUI120を介して、術式を指定(例えば選択)する(S22)。気腹シミュレーション及び手術シミュレーションを行う(S23)。そして、例えばポート位置スコア、アーム干渉スコア、及びロボット安定スコアの少なくとも1つを加味した手術計画スコアに基づいて、ポート位置及びロボット本体320の配置位置を計画する(S24)。また、例えば前述した手法に基づいて、ロボットの各姿勢(例えば配置姿勢、ポート穿孔姿勢、装備姿勢)を計画する(S24)。例えばアーム干渉スコアを加味することで、手術時に最大の自由度が得られるポート位置とロボット本体320の計画位置と計画姿勢が得られる。
【0172】
被検体PSのランドマークを設定する(S25)。例えばUI120を介して、被検体PSのボリュームデータに対してランドマークの位置を指定して設定してよい。設定されるランドマークの数は、1つでも複数でもよい。ポートPTの計画位置、ロボット本体320の計画位置、ロボット本体320の計画姿勢、ランドマークの設定情報、等を手術計画に含め、手術計画をメモリ150に保持させ、送受部110を介して手術計画をロボット本体320へ送信する(S25)。ロボット本体320では、送受部321を介して手術計画を受信し、この手術計画をメモリMRに保持させる。
【0173】
手術の際には、処理部360は、メモリMRから手術計画を取得する。手術計画から、配置姿勢に係る計画姿勢と、ロボット本体320の計画位置と、を取得する。そして、ロボット本体320がこの計画姿勢に基づく配置姿勢となるよう制御する(S31)。この配置姿勢の状態で、助手等が、ロボット本体320を計画位置に移動させる。この場合、処理部360が計画位置に移動させるための所定の案内情報をコントロールパネルCP又は表示装置400に表示させ、助手等が案内情報の表示を確認してロボット本体320を移動させてもよい。
【0174】
手術計画から、ポート穿孔姿勢に係る計画姿勢を取得する。そして、ロボット本体320がこの計画姿勢に基づくポート穿孔姿勢となるよう制御する(S32)。
【0175】
俯瞰カメラCAが被検体PSを撮像する(S33)。処理部360は、俯瞰カメラCAにより撮像された被検体の少なくとも一部を含む俯瞰画像を取得する。なお、俯瞰画像の撮像は、ロボット本体320が手術室に入る前から行われてもよいし、ロボット本体320が手術室に入ってから行われてもよい。また、俯瞰画像の撮像は、ロボット本体320と被検体PSとの距離が閾値th9以下である場合、つまりロボット本体320が被検体PSに接近してから行われてもよい。また、俯瞰画像の撮像は、ロボット本体320が計画位置に配置されてから行われてもよい。俯瞰画像の撮像は、ロボット手術中には継続して行われてよい。
【0176】
俯瞰画像と被検体PSのランドマークとに基づいて、俯瞰画像における各ポートPTの計画位置を認識する(S34)。
【0177】
S34の具体例としては、手術計画から、ランドマークの設定情報と、被検体PSのランドマークに対する各ポートPTの計画位置の情報と、を取得する。俯瞰画像を解析し、被検体PSのランドマークの位置(画像位置)を認識する。そして、俯瞰画像における設定されたランドマークの画像位置と、ランドマークに対する各ポートPTの計画位置と、に基づいて、俯瞰画像における各ポートPTの計画位置(画像位置)を認識する。
【0178】
俯瞰画像において認識された各ポートPTの計画位置を示すポート位置情報を、俯瞰画像に重畳して、コントロールパネルCP又は表示装置400に表示させる(S35)。この場合、ポート位置情報とともに、ポートPTの許容誤差情報を併せて表示させてもよい。
【0179】
助手等は、コントロールパネルCP又は表示装置400に表示されたポート位置情報や許容誤差情報を確認することで、実空間での被検体PSの体表70におけるポートPTの計画位置とその許容誤差とを認識できる。そして、助手等が実際にポートPTを穿孔する際には、ポートPTを穿孔するための穿孔器具80が俯瞰画像G11内に映り込む(
図26参照)。そのため、助手等は、俯瞰画像G11内のポートPTの計画位置と穿孔器具80との位置関係を視覚的に確認でき、高精度にポートPTを穿孔できる。
【0180】
このように、ロボット手術支援システム1は、ポート位置決めに係る動作を行うことで、俯瞰画像を用いてポート位置情報や許容誤差情報を表示できる。よって、この表示を確認した助手等が穿孔しようとするポートの位置を、ポート位置情報が示すポートPTの計画位置に誘導でき、ポートPTの穿孔を補助できる。
【0181】
また、ロボット手術支援システム1は、ランドマークを設定することで、ランドマークを基準に、ボリュームデータやモデル等の3Dデータの座標系(被検体の座標系)と、ロボット本体320に配置された俯瞰カメラCAにより撮像された手術の際の座標系(ロボットの座標系)と、を位置合わせできる。よって、ロボット手術支援システム1は、ポートの計画位置を俯瞰画像上に重畳表示できる。なお、この位置合わせは、何度行われてもよく、ロボット本体320が計画位置に配置されてから行われても、手術室への入室後においてロボット本体320が計画位置に配置される前から行われてもよい。
【0182】
次に、本実施形態のバリエーションについて説明する。
【0183】
本実施形態では、術中のナビゲーションに関する情報(例えばポート位置情報、許容誤差情報)がコントロールパネルCP又は表示装置400に表示されることを示したが、これに限らない。例えば、アームベースABがプロジェクタを備え、被検体PSの体表に術中のナビゲーションに関する情報が投影されることによって表示されてもよい。また、例えば、ロボット本体320がスピーカを備えたり、手術室内にスピーカが設置されたりしてもよい。そして、スピーカが被検体PSにおけるポートPTの計画位置や許容誤差範囲を示す音声情報を音声出力してもよい。その他の提示方法により、術中のナビゲーションに関する情報が提示されてもよい。
【0184】
また、ポート位置決めの時点を含む所定の期間、俯瞰カメラCAにより俯瞰画像の撮像が継続される場合、助手等により穿孔されたポートPTが、俯瞰画像に映り込んでよい。処理部360は、俯瞰画像に対して画像解析し、穿孔されたポートPTを認識してよい。認識されたポートPTの情報は、ロボット手術における各種処置に利用されてよい。例えば、ロボット手術支援装置100の処理部160は、送受部110を介して被検体PSにおけるポートPTの穿孔位置(実際に穿孔された位置)の情報を取得してよい。処理部160は、ロボット手術支援装置100が認識する3Dデータにおけるポート位置を、ポートの計画位置からポート穿孔位置に更新してよい。これにより、ロボット手術支援装置100は、仮想空間における3Dデータのポート位置と実空間での実際のポート位置とを位置合わせでき、3Dデータによるナビゲーションを一層高精度に実施できる。
【0185】
また、処理部360は、俯瞰画像に映り込んだ穿孔器具80の位置とポートPTの計画位置とに基づいて、穿孔器具80をポートPTの計画位置に誘導するための案内情報を生成してよい。処理部360は、この案内情報を、コントロールパネルCP又は表示装置400に表示させてよい。
【0186】
図27は、穿孔器具80をポートPTの計画位置に誘導するための案内情報GIの表示例を示す図である。
【0187】
図27の俯瞰画像G3には、3つのポート位置情報が示されている。助手等は、3つのポートPTの計画位置のうちのポートPT1を穿孔器具80によって穿孔するとする。俯瞰画像G3には、助手等の手HDと手HDに把持された穿孔器具80の一部が映り込んでいる。
【0188】
処理部360は、俯瞰画像G3を画像解析して、俯瞰画像G3における穿孔器具80の位置を認識する。また、処理部360は、俯瞰画像G3におけるポートPT1の計画位置を認識する。処理部360は、認識された穿孔器具80の位置とポートPTの計画位置との差分を算出し、この差分に基づいて案内情報GIを生成してよい。この場合、穿孔器具の位置からポートPT1の計画位置に向かう移動方向や、穿孔器具80の位置とポートPTの計画位置との間の距離(移動距離)を算出してよい。よって、上記の移動方向や移動距離を含む案内情報を表示させてよい。
【0189】
図27では、案内情報GIが、穿孔器具80から図中下方向(被検体PSの体軸方向に沿う足に向かう方向)に60mm移動し、その位置から図中右方向に35mm移動すると、ポートPT1に到達可能であることを示している。
【0190】
助手等は、俯瞰画像G3とともに表示されたこの案内情報GIを確認することで、どの方向にどの程度、穿孔器具80を移動させればよいかを直感的に判断できる。なお、案内情報GIは、
図27に示す態様以外の態様で表示されてもよい。例えば、案内情報GIが矢印で表示されてもよい。この場合、矢印の向きが移動方向を示し、矢印の大きさや長さが移動距離を示してよい。
【0191】
更に、処理部360は、助手等によるポートPTの穿孔を支援する情報として、以下のような情報を、コントロールパネルCPや表示装置400へ表示させてもよい。
【0192】
例えば、処理部360は、穿孔器具80を複数のポートPTのうちの特定のポートPTに移動させるための案内情報を表示させてよい。この場合、特定のポートPTは、コントロールパネルCPを介して指定してよい。特定のポートPTは、俯瞰画像において認識された穿孔器具80に最も近いポートPTでよい。特定のポートPTは、1つでも複数でもよい。処理部360は、複数のポートPTの全部のそれぞれに対して、上記の案内情報を表示させてもよい。
【0193】
また、処理部360は、助手等によりポートPTの穿孔が済んだか否かに応じて、ポート位置情報を表示させてもよい。処理部360は、各ポートPTの穿孔が済んだか否かを、例えば、俯瞰画像に対する画像解析に基づいて判定してもよい。また、処理部360は、コントロールパネルCPを介して、穿孔が済んだポートPTを指定する指定情報を取得し、指定されたポートPTの穿孔が済んだと判定してよい。処理部360は、穿孔が済んでいないポートPTのポート位置情報を表示させ、穿孔が済んだポートPTのポート位置情報の表示を終了させてよい。処理部360は、穿孔が済んだポートPTのポート位置情報の表示態様を変更して、穿孔が済んでいないポートPTのポート位置情報の表示態様と異なるようにしてもよい。また、処理部360は、穿孔が済んでいないポートPTの全部又は一部に誘導するための案内情報を表示させてもよい。
【0194】
また、ロボット本体320のアクチュエータACがロボット本体320のタイヤ等を駆動する機能を有してもよい。これにより、ロボット本体320は、計画位置に至るまで自動運転で移動できる。この場合、処理部360は、コントロールパネルCPの操作に基づいてロボット本体320の運転モードとして自動運転モードを設定してよい。運転モードは、例えば、助手等がロボット本体320を押して移動させる手動運転モードと、自動運転によりロボット本体320が移動する自動運転モードと、を含んでよい。
【0195】
処理部360は、俯瞰画像G3を画像解析して、助手等が被検体PSの体表にマーキングしたマークを認識してもよい。これにより、助手等が被検体PSの体表にランドマークを描き足すことができる。ランドマークを描き足すことは術前計画においてあらかじめ計画されたものであってよい。また、描き足したランドマークは、俯瞰画像において不明瞭なランドマークを明確化させる目的でマーキングしたものであってよい。このランドマークは、例えば、胸骨の間をなぞった線を含んでよい。なお、術前計画は、手術計画に含まれてよい。
【0196】
また、手術計画部164は、術前計画では、被検体PSの3Dデータの代わりに、あらかじめ用意された3Dモデルデータを用いて、ポート位置を計画してもよい。また、ポート位置の計画には、用意された3Dモデルデータに含まれていたポート位置が用いられてもよい。また、3Dモデルデータは、モデル設定部163により被検体PSの特徴によってカスタマイズしたものであってもよい。これによって、ロボット手術支援装置100は、典型的なもしくは簡単な症例において、術前計画にかかる労力を削減できる。
【0197】
また、手術計画部164は、術前計画では、被検体PSの3Dデータの代わりに、被検体PSの2Dデータもしくは、あらかじめ用意された2Dモデルデータを用いて、ポート位置を計画してもよい。これによって、ロボット手術支援装置100は、典型的なもしくは簡単な症例において、術前計画にかかる労力を削減できる。
【0198】
[手術シミュレーション及び手術計画の補足]
次に、ロボット手術支援装置100による手術計画について補足する。
まず、ポート位置スコアの算出例について説明する。
【0199】
複数のポート位置は、例えば術式に従って定められ、被検体PSの体表上の任意の位置にそれぞれ配置されることが仮定されてよい。よって、複数のポート位置の組み合わせも、様々なポート位置の組み合わせが仮定されてよい。1つのポートPTから、ロボットアームARに装着された1つのエンドエフェクタEFが被検体PS内に挿入する可能である。よって、複数のポートPTから、複数のロボットアームARに装着された複数のエンドエフェクタEFが被検体PS内に挿入可能である。
【0200】
1つのエンドエフェクタEFがポートPTを介して被検体PS内において到達可能な範囲が、1つのエンドエフェクタEFによって作業(ロボット手術における処置)が可能なワーキングエリア(個別ワーキングエリアWA1)(
図14参照)となる。よって、複数のエンドエフェクタEFによる個別ワーキングエリアWA1が重複するエリアが、複数のエンドエフェクタEFが複数のポートPTを介して被検体PS内において同時に到達可能なワーキングエリア(全体ワーキングエリアWA2)(
図14参照)となる。術式に従った処置では、所定数(例えば3つ)のエンドエフェクタEFが同時動作することが必要であるので、所定数のエンドエフェクタEFが同時に到達可能な全体ワーキングエリアWA2が考慮される。
【0201】
また、ロボット本体320のキネマティクスによってエンドエフェクタEFが到達可能な被検体PSにおける位置が異なるので、エンドエフェクタEFが被検体PS内に挿入される位置であるポート位置の導出に加味される。また、術式によって確保すべき全体ワーキングエリアWA2の被検体PS内における位置が異なるので、全体ワーキングエリアWA2の位置に対応するポート位置の導出に加味される。
【0202】
手術計画部164は、取得された(仮定された)複数のポート位置の組み合わせ毎に、ポート位置スコアを算出してよい。手術計画部164は、仮定された複数のポート位置の組み合わせのうち、所定条件を満たすポート位置スコア(例えば最大となるポートスコア)となるポート位置の組み合わせを計画してよい。つまり、ポート位置の組み合わせに含まれる複数のポート位置を、穿孔対象の複数のポートの計画位置としてよい。
【0203】
なお、ポート位置と手術支援ロボット300の可動部の動作との関係性は、例えば参考非特許文献2,3に記載された関係性を満たしてよい。
(参考非特許文献2):Mitsuhiro Hayashibe, Naoki Suzuki, Makoto Hashizume, Kozo Konishi, Asaki Hattori, “Robotic surgery setup simulation with the integration of inverse-kinematics computation and medical imaging”, computer methods and programs in biomedicine, 2006, P63-P72
(参考非特許文献3)Pal Johan From, “On the Kinematics of Robotic-assisted Minimally Invasive Surgery”, Modeling Identication and Control, Vol.34, No.2, 2013, P69-P82
【0204】
図28は、ロボット手術支援装置100によるポート位置スコアを算出する場合の動作例を示すフローチャートである。なお、ポート位置スコアの初期値は値0である。ポート位置スコアは、ポート位置の組み合わせの価値を示す評価関数(評価値)である。なお、変数iは、作業の識別情報の一例であり、変数jは、ポートの識別情報の一例である。
【0205】
手術計画部164は、術式に応じて、各エンドエフェクタEFを用いた作業work_iのリストである作業リストworksを生成する(S51)。作業work_iには、術式に従った手術手順で各エンドエフェクタEFが作業するための情報が含まれる。作業work_iには、例えば把持、切除、縫合等が含まれてよい。なお、作業には、単一のエンドエフェクタEFによる単独作業、複数のエンドエフェクタEFによる協調作業、が含まれてよい。
【0206】
手術計画部164は、術式及び仮想気腹状態のボリュームデータに基づいて、作業リストworksに含まれる作業work_iを行うために最低限必要な領域である最小領域least_region_iを決定する(S52)。最小領域は、被検体PSにおける3次元領域で定められてよい。手術計画部164は、最小領域least_region_iのリストである最小領域リストleast_regionsを生成する(S52)。
【0207】
手術計画部164は、術式、ロボット本体320のキネマティクス、及び仮想気腹状態のボリュームデータに基づいて、作業リストworksに含まれる作業work_iを行うために推奨される領域である推奨領域effective_region_iを決定する(S53)。手術計画部164は、推奨領域effective_region_iのリストである推奨領域リストeffective_regionsを生成する(S53)。推奨領域には、作業を行うための最低限の空間(最小領域)とともに、例えばエンドエフェクタEFが動作するために推奨される空間が含まれてよい。
【0208】
手術計画部164は、複数のポート位置port_jのリストであるポート位置リストportsの情報を取得する(S54)。ポート位置は、3次元座標(x,y,z)で定められてよい。手術計画部164は、例えば、UI120を介してユーザ入力を受け付け、ユーザにより指定された1つ以上のポート位置を含むポート位置リストportsを取得してよい。手術計画部164は、メモリ150にテンプレートとして保持されたポート位置リストportsを取得してもよい。
【0209】
手術計画部164は、術式、ロボット本体320のキネマティクス、仮想気腹状態のボリュームデータ、及び取得された複数のポート位置に基づいて、各作業work_iについて、各ポート位置port_jを介して各エンドエフェクタEFが作業可能な領域であるポート作業領域region_iを決定する(S55)。ポート作業領域は、3次元領域で定められてよい。手術計画部164は、ポート作業領域region_iのリストであるポート作業領域リストregionsを生成する(S55)。
【0210】
手術計画部164は、作業work_i毎に、最小領域least_region_iからポート作業領域region_iから引いて、減算領域(減算値)を算出する(S56)。手術計画部164は、減算領域が空領域(減算値が負の値)でないか否かを判定する(S56)減算領域が空領域でないか否かは、最小領域least_region_i内の少なくとも一部に、ポート作業領域region_iに覆われていない領域(ポートPTを介してエンドエフェクタEFが到達しない領域)が存在する否かを示している。
【0211】
減算領域が空領域である場合、手術計画部164は、推奨領域effective_region_iとポート作業領域region_iとの積である体積値volume_iを算出する(S57)。そして、手術計画部164は、作業work_i毎に算出された体積値volume_iを合計し、合計値volume_sumを算出する。手術計画部164は、合計値volume_sumをポート位置スコアに設定する(S57)。
【0212】
つまり、減算領域が空領域である場合、最小領域内にポート作業領域に覆われていない領域が存在せず、このポート位置リストports(ポート位置port_jの組み合わせ)が選択されることが好ましいので、このポート位置リストが選択され易くように、ポート位置スコアに作業work_i毎の値が加算される。また、体積volume_iを基準にポート位置スコアが決定されることで、最小領域やポート作業領域が大きい程、ポート位置スコアが大きくなり、このポート位置リストportsが選択され易くなる。よって、手術計画部164は、最小領域やポート作業領域が大きく、手術における各処置が容易になるポート位置の組み合わせを選択し易くできる。
【0213】
一方、減算領域が空領域でない場合、手術計画部164は、ポート位置リストportsについてのポート位置スコアを、値0に設定する(S58)。つまり、最小領域内の少なくとも一部にポート作業領域に覆われていない領域が存在し、対象の作業work_iの作業を完結できない可能性があるので、このポート位置リストPostsが選択されることが好ましくない。そのため、手術計画部164は、このポート位置リストPostsが選択されにくくなるように、ポート位置スコアを値0とし、選択候補から除外する。この場合、手術計画部164は、同じポート位置リストportsを用いて他の作業work_iを行う場合に空領域となっても、全体でのポート位置スコアを値0に設定する。
【0214】
なお、手術計画部164は、全ての作業work_iについて
図28の各ステップを繰り返し、全作業work_iを加味したポート位置スコアを算出してよい。
【0215】
このように、ロボット手術支援装置100は、ポート位置スコアを導出することで、被検体PSの体表上に設けられる複数のポート位置を用いてロボット手術する場合に、穿孔候補のポート位置の組み合わせが、どの程度適切であるかを把握できる。個別ワーキングエリアWA1や全体ワーキングエリアWA2は、穿孔対象となる複数のポートの配置位置によって左右される。この場合でも、手術支援ロボット300は、複数のポート位置の組み合わせ毎のスコア(ポート位置スコア)を加味することで、例えばポート位置スコアが閾値th10以上(例えば最大)となる複数のポート位置の組み合わせを導出でき、ロボット手術を実施し易いポートの計画位置として設定できる。
【0216】
また、ポート位置スコアに基づいてワーキングエリアWAが適切に確保されることで、ユーザは、ロボット手術において直接目視できない被検体PS内での視野を広く確保でき、ポート作業領域を広く確保でき、不測の事態に対処し易くなる。
【0217】
また、ロボット手術では、穿孔されたポート位置は不変であるが、ポート位置に挿入されるエンドエフェクタEFが装着されるロボットアームARは所定範囲で移動可能である。そのため、ロボット手術では、ポートの計画位置によっては、ロボットアームARが相互に干渉し得るので、ポート位置の計画は重要である。また、手術支援ロボット300と被検体PSとの位置関係を術中に変更することは原則的に行われないので、ポート位置の計画は重要である。
【0218】
次に、ポート位置調整の詳細について説明する。
【0219】
手術計画部164は、例えばメモリ150に保持されたテンプレートやUI120を介したユーザ指示を基に、複数のポート位置(候補位置)の情報を取得する。手術計画部164は、取得された複数のポート位置の組み合わせに基づいて、この複数のポート位置を用いた場合のポート位置スコアを算出する。
【0220】
手術計画部164は、ポート位置スコアに基づいて、ポートPTの位置を調整してよい。この場合、手術計画部164は、取得された複数のポート位置の場合のポート位置スコアと、この複数のポート位置のうちの少なくとも1つのポート位置を変更した場合のポート位置スコアと、に基づいて、ポートPTの位置を調整してよい。この場合、手術計画部164は、3次元空間での各方向(x方向、y方向、z方向)に沿ったポート位置の微小移動や微分を加味してよい。
【0221】
例えば、手術計画部164は、(式1)に従って、複数のポート位置に対して、ポート位置スコアF(ports)を算出し、Fの微分値F’を算出してよい。
【0222】
F(port_j(x+Δx, y, z)) - F(port_j(x, y, z))
F(port_j(x, y+Δy, z)) - F(port_j(x, y, z)) ・・・(式1)
F(port_j(x, y, z+Δz)) - F((port_j(x, y, z))
【0223】
つまり、手術計画部164は、ポート位置F(port_j(x+Δx, y, z))の場合のポート位置スコアFを算出し、ポート位置F(port_j(x, y, z))の場合のポート位置スコアFを算出し、その差分を算出する。この差分値は、ポート位置F(port_j(x, y, z))におけるx方向の微小変化に対するポート位置スコアFの変化を示し、つまり、x方向のFの微分値F’を示す。
【0224】
また、手術計画部164は、ポート位置F(port_j(x, y+Δy, z))の場合のポート位置スコアFを算出し、ポート位置F(port_j(x, y, z))の場合のポート位置スコアFを算出し、その差分を算出する。この差分値は、ポート位置F(port_j(x, y, z))におけるy方向の微小変化に対するポート位置スコアFの変化を示し、つまり、y方向のFの微分値F’を示す。
【0225】
また、手術計画部164は、ポート位置F(port_j(x, y, z+Δz))の場合のポート位置スコアFを算出し、ポート位置F(port_j(x, y, z))の場合のポート位置スコアFを算出し、その差分を算出する。この差分値は、ポート位置F(port_j(x, y, z))におけるz方向の微小変化に対するポート位置スコアFの変化を示し、つまり、z方向のFの微分値F’を示す。
【0226】
手術計画部164は、各方向の微分値F’に基づいて、ポート位置スコアの最大値を算出する。この場合、手術計画部164は、微分値F’に基づいて、再急降下法に従ってポート位置スコアが最大となるポート位置を算出してよい。手術計画部164は、算出されたポート位置をポートの計画位置とするように、ポート位置を調整し、ポート位置を最適化してよい。なお、ポートの計画位置は、ポート位置スコアが最大となるポート位置でなくても、例えばポート位置スコアが閾値th11以上となる位置でもよく、ポート位置スコアが改善されれば(高くなれば)よい。
【0227】
手術計画部164は、このようなポート位置の調整を、複数のポート位置の組み合わせに含まれる他のポート位置の調整に適用したり、複数のポート位置の他の組み合わせにおけるポート位置の調整に適用したりしてよい。これにより、手術計画部164は、各ポート位置が調整された(例えば最適化された)複数のポートPTを、穿孔対象のポート位置に計画できる。
【0228】
なお、複数のポート位置(ポート位置の座標)は、穿孔予定位置と実際の穿孔位置とで所定長(例えば25mm)程度の誤差が生じ得、またポート位置の計画精度は精々3mmあれば十分であると考えられる。そのため、手術計画部164は、被検体PSの体表において所定長毎に、ポート位置の組み合わせに含まれる複数のポート位置を総当たりで穿孔予定位置とし、この複数のポート位置についてのポート位置スコアをそれぞれ算出してよい。つまり、被検体PSの体表における所定長(例えば3mm)の格子状(グリッド)に、穿孔予定位置が配置されてよい。また、体表上に仮定されるポート数(例えば格子状の交点の数)がn個であり、ポート位置の組み合わせに含まれるポート数がm個である場合、手術計画部164は、n個のポート位置からm個のポート位置を順番に選択して組み合わせ、それぞれの組み合わせでのポート位置スコアを算出してよい。このように、3mm間隔の格子状のようにグリッドが過度に細かくない場合には、手術計画部164の計算負荷が過大となることを抑制でき、全組み合わせのポート位置スコアを算出可能である。
【0229】
なお、手術計画部164は、公知の方法に従って、複数のポート位置の調整を行ってよい。手術計画部164は、ポート位置の計画位置を、調整後のポート位置の組み合わせに含まれる複数のポート位置としてよい。ポート位置調整の公知の方法は、以下の参考非特許文献4,5及び参考特許文献3に記載された技術を含んでよい。
【0230】
(参考非特許文献4)Shaun Selha、Pierre Dupont, Robert Howe, David Torchiana, “Dexterity optimization by port placement in robot-assisted minimally invasive surgery”, SPIE International Symposium on Intelligent Systems and Advanced Manufacturing, Newton, MA, 28-31, 2001
(参考非特許文献5)Zhi Li, Dejan Milutinovic, Jacob Rosen, “Design of a Multi-Arm Surgical Robotic System for Dexterous Manipulation”, Journal of Mechanisms and Robotics, 2016
(参考特許文献3)米国特許出願公開第2007/0249911明細書
【0231】
手術計画部164は、上記のポート位置調整と同様に、ロボット本体320の装備姿勢(術中の各処置時の姿勢を含む)の調整を行ってよい。例えば、手術計画スコアに基づいて、装備姿勢を調整してよい。この場合、手術計画部164は、装備姿勢の場合の手術計画スコアと、この装備姿勢を変更した場合の手術計画スコアと、に基づいて、装備姿勢を調整してよい。この場合、手術計画部164は、2次元平面での各方向(X方向、Y方向)に沿ったロボット本体320の計画位置の微小移動や微分を加味してよい。また、手術計画部164は、3次元空間内でのアームベースABの姿勢の微小移動や微分を加味してよい。
【0232】
例えば、手術計画部164は、(式1A)に従って、装備姿勢におけるアームベースABの姿勢βに対して、手術計画スコアFA(β)を算出し、FAの微分値FA’を算出してよい。
【0233】
手術計画部164は、微分値FA’に基づいて、手術計画スコアの最大値を算出する。この場合、手術計画部164は、微分値FA’に基づいて、再急降下法に従って手術計画スコアが最大となる装備姿勢を算出してよい。手術計画部164は、算出された装備姿勢を採用することで、ロボット本体320の計画位置を調整し、装備姿勢を最適化してよい。なお、手術計画スコアが最大となる装備姿勢でなくても、例えば手術計画スコアが閾値th12以上となる位置でもよく、手術計画スコアが改善されれば(高くなれば)よい。
【0234】
手術計画部164は、例えば、装備姿勢の算出に当たって、ポート位置スコアと、に基づいて、手術計画スコアを算出し、最適な装備姿勢を決定してよい。
【0235】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0236】
上記実施形態では術前シミュレーション(例えば手術計画の生成)に関する処理をロボット手術支援装置100の処理部160が実施し、術中ナビゲーション(例えばポート位置決め)に関する処理をロボット本体320の処理部360が実施することを例示した。この代わりに、術前シミュレーション及び術中ナビゲーションの双方の処理を、ロボット手術支援装置100の処理部160が実施してもよいし、ロボット本体320の処理部360が実施してもよい。
【0237】
また、各閾値は、固定値でも可変値でもよい。各閾値は、予め定められた値でも、操作部(例えばUI120、コントロールパネルCP)を介して入力された値でもよい。
【0238】
また、ロボット手術支援装置100は、少なくともプロセッサ140及びメモリ150を備えていればよい。送受部110、UI120、及びディスプレイ130は、ロボット手術支援装置100に対して外付けであってもよい。
【0239】
また、撮像されたCT画像としてのボリュームデータは、CT装置200からロボット手術支援装置100へ送信されることを例示した。この代わりに、ボリュームデータが一旦蓄積されるように、ネットワーク上のサーバ(例えば画像データサーバ(PACS)(不図示))等へ送信され、保管されてもよい。この場合、必要時にロボット手術支援装置100の送受部110が、ボリュームデータを、有線回線又は無線回線を介してサーバ等から取得してもよいし、任意の記憶媒体(不図示)を介して取得してもよい。
【0240】
また、撮像されたCT画像としてのボリュームデータは、CT装置200からロボット手術支援装置100へ送受部110を経由して送信されることを例示した。これは、実質的にCT装置200とロボット手術支援装置100とを併せて一製品として成立している場合も含まれるものとする。また、ロボット手術支援装置100がCT装置200のコンソールとして扱われている場合も含む。また、ロボット手術支援装置100が、手術支援ロボット300に設けられてもよい。
【0241】
また、CT装置200により画像を撮像し、被検体内部の情報を含むボリュームデータを生成することを例示したが、他の装置により画像を撮像し、ボリュームデータを生成してもよい。他の装置は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、血管造影装置(Angiography装置)、又はその他のモダリティ装置を含む。また、PET装置は、他のモダリティ装置と組み合わせて用いられてもよい。
【0242】
上記実施形態は、ロボット手術支援装置の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してロボット手術支援装置に供給し、ロボット手術支援装置内のコンピュータが読み出して実行するプログラムも適用範囲である。また、手術支援ロボットの機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は各種記憶媒体を介して手術支援ロボットに供給し、手術支援ロボット内のコンピュータが読み出して実行するプログラムも適用範囲である。
【0243】
以上のように、上記実施形態のロボット手術支援システム1は、ロボット本体320を有する手術支援ロボット300によるロボット手術を支援し、処理部160,360を備える。処理部160は、ロボット手術の対象である被検体PSの体表に穿孔されるポートPTの位置を計画してよい。処理部160は、ロボット本体320が備える俯瞰カメラCAにより被検体PSの少なくとも一部を含む被写体が撮像された撮像画像を取得してよい。処理部160は、撮像画像とポートPTの計画位置とに基づいて、撮像画像におけるポートの計画位置を認識してよい。処理部160は、撮像画像と、撮像画像に表れた被検体PSにおけるポートPTの計画位置を示すポート位置情報と、を表示部(例えばコントロールパネルCP、表示装置400)に表示させてよい。
【0244】
これにより、ロボット手術支援システム1は、俯瞰カメラCAに撮像された俯瞰画像を取得する。ロボット本体320が手術室に入室後には、俯瞰画像には、被検体PSの少なくとも一部が映り込み得る。よって、ロボット手術支援システム1は、俯瞰画像を用いて、被検体PSに対してポートPTの計画位置を可視化できる。よって、助手等は、手術のために被検体PSの位置を動かしても、ポートPTの計画位置の表示を確認して、ポートPTを穿孔できる。このように、ロボット手術支援システム1は、ロボット本体320の手術室への入室後に実施されるポートPTの穿孔を補助できる。また、俯瞰カメラCAの視点は、非ロボットの鏡視下手術における術者の視点に近いので、俯瞰画像は術者の直感に即したものとなり、計画通りの手術に資する。
【0245】
また、処理部360は、被検体PSのランドマークの情報と、被検体PSのランドマークとポートPTの計画位置との位置関係を示す位置関係情報と、を取得してよい。処理部360は、俯瞰画像におけるランドマークの画像位置を認識してよい。ランドマークの画像位置と上記の位置関係情報とに基づいて、俯瞰画像におけるポートPTの計画位置を認識してよい。
【0246】
これにより、ロボット手術支援システム1は、被検体PSにおいて視覚的に特徴のあるランドマークに用いることで、ランドマークとポートPTとの位置関係情報に基づいて俯瞰画像におけるポートPTの計画位置を容易に認識できる。そのため、ロボット手術支援システム1は、ポートPTの計画位置を容易に可視化できる。
【0247】
また、処理部360は、俯瞰画像におけるポートPTを穿孔するための穿孔器具80の位置を認識してよい。処理部360は、穿孔器具80の位置とポートPTの計画位置とに基づいて、穿孔器具80をポートPTの計画位置に誘導するための案内情報を表示させてよい。これにより、助手等や助手等以外の手術に関わる人は、穿孔器具80をポートPTの計画位置に向かうようにどのように移動させればよいかを容易に確認できる。よって、ロボット手術支援システム1は、ポートPTの穿孔に際しての安全性を向上できる。
【0248】
また、処理部160は、被検体PSの3Dデータを取得し、被検体PSの3Dデータに基づいてポートの位置を計画してよい。この3Dデータは、被検体PSの仮想気腹状態のボリュームデータ若しくはモデル又は非気腹状態のボリュームデータ若しくはモデルでよい。これにより、ロボット手術支援システム1は、被検体PSの内部の状態を加味してポートの計画位置を決定できる。
【0249】
また、処理部160は、被検体PSに対するロボット本体320の位置を計画してよい。処理部360は、ロボット本体320の計画位置に配置された状態で被検体PSが撮像された撮像画像とポート位置情報とを表示させてよい。これにより、ロボット手術支援システム1は、手術室内の計画位置にロボット本体320が配置された後に、ポートPTの計画位置を可視化できる。したがって、ロボット本体320の配置位置の固定後に、確定したポートPTの計画位置を可視化できる。
【0250】
また、処理部160は、被検体PSの3Dデータを取得し、被検体の3Dデータに基づいて、被検体PSに対するロボット本体320の位置を計画してよい。これにより、ロボット手術支援システム1は、3Dデータが示す被検体PSの内部の状態を加味して、被検体PS毎に最適なロボット本体320の位置を計画できる。
【0251】
また、処理部360は、被検体PSのポートPTの計画位置にポートPTが穿孔される際に、ロボット本体320がポート穿孔姿勢となるようロボット本体320を作動させてよい。ポート穿孔姿勢は、ロボット本体320が備えるロボットアームARと被検体PSとの間の空間の大きさを閾値th3(第1の閾値の一例)以上とする(例えば最大化する)姿勢でよい。これにより、ロボット手術支援システム1は、穿孔作業スペースを十分に確保した状態で、ポートPTの計画位置にポートPTを穿孔するよう補助できる。
【0252】
また、処理部360は、被検体PSに穿孔されたポートPTを介してロボット本体320が備える手術器具30が被検体PSに挿入される際、ロボット本体320が装備姿勢となるようロボット本体320を作動させてよい。装備姿勢は、手術器具30の被検体PS内の可動範囲を閾値th4(第2の閾値の一例)以上とする(例えば最大化する)姿勢、又は、アーム干渉スコア(ロボットアームAR同士の干渉量の一例)を閾値th43(第3の閾値の一例)以下とする姿勢でよい。これにより、ロボット手術支援システム1は、術中の手術器具30の動作に関する自由度をなるべく大きくでき、手術器具30を用いて各種処置を行う際のワーキングエリアをなるべく広く確保できる。
【0253】
また、処理部360は、被検体PSの3Dデータを取得し、被検体PSの3Dデータに基づいて、装備姿勢を計画してよい。これにより、ロボット手術支援システム1は、3Dデータが示す被検体PSの内部の状態を加味して、被検体PS毎に最適な装備姿勢を計画できる。
【0254】
また、ロボット手術支援システム1は、ロボット手術の手術前にロボット手術の支援に関する処理を行うロボット手術支援装置100が備える処理部160(第1の処理部の一例)と、ロボット手術の際にロボット手術の支援に関する処理を行う手術支援ロボット300が備える処理部(第2の処理部の一例)と、を含んでよい。処理部160は、ポートPTの位置を計画してよい。処理部360は、ポートPTの計画位置を認識し、撮像画像とポート位置情報とを表示させてよい。
【0255】
これにより、ロボット手術支援システム1は、術前では例えば手術室外で容易に計画等を生成でき、手術の際には手術室内で容易にポートPTの計画位置を認識し、撮像画像とポート位置情報とを表示でき、ポートPTの穿孔を補助できる。
【産業上の利用可能性】
【0256】
本開示は、手術支援ロボットの手術室への入室後に実施されるポートの穿孔を補助できるロボット手術支援システム、ロボット手術支援方法、及びプログラム等に有用である。
【符号の説明】
【0257】
1 ロボット手術支援システム
100 ロボット手術支援装置
110 送受部
120 ユーザインタフェース(UI)
130 ディスプレイ
140 プロセッサ
150 メモリ
160 処理部
161 領域処理部
162 変形処理部
163 モデル設定部
164 手術計画部
165 画像生成部
166 表示制御部
200 CT装置
300 手術支援ロボット
310 ロボット操作端末
320 ロボット本体
321 送受部
360 処理部
400 表示装置
500 手術室
AB アームベース
AC アクチュエータ
AR ロボットアーム
BA ベース
BD 手術ベッド
CA 俯瞰カメラ
CP コントロールパネル
ES 内視鏡
EF エンドエフェクタ
HS 臍
JT ジョイント
MR メモリ
PA 親アーム
PR プロセッサ
PS 被検体
PT ポート
RO 回転台
SP1,SP2,SP3 支持部材
SR センサ
TC トロッカー
TP 天井部材
WAワーキングエリア
WA1 個別ワーキングエリア
WA2 全体ワーキングエリア