(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】回路接続ユニット
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240409BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20240409BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240409BHJP
H01L 23/40 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H02G3/16
H05K7/20 B
H01L23/40 Z
(21)【出願番号】P 2020071042
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮太
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-046503(JP,A)
【文献】特開2014-013873(JP,A)
【文献】特開平11-026967(JP,A)
【文献】特開2012-230938(JP,A)
【文献】特開2009-105389(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146402(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/049898(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34-23/473
H01L 25/00-25/18
H01L 23/02-23/10
H02G 3/16
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体パターンを有する基板と、前記導体パターンに電気的に接続されるスイッチング素子と、前記スイッチング素子で発生した熱を前記導体パターンを通じて受け取って放出するように前記基板に設けられる放熱部と、を備えた回路接続ユニットであって、
前記放熱部は、
前記導体パターンと接触するように前記基板の表面に載置される伝熱用端子と、
前記基板との間に空間が画成されるように前記伝熱用端子に固定される放熱板と、
前記放熱板との間に絶縁体を挟み且つ前記基板を覆うように積層されるカバーと、を有
し、
前記伝熱用端子と前記放熱板とが固定部材によって連結され、
前記固定部材の一部は、前記放熱板と、前記カバー及び前記絶縁体と、の間に位置し、
前記カバー及び前記絶縁体は、前記固定部材に対応する凹凸形状を有する、
回路接続ユニット。
【請求項2】
請求項
1に記載の回路接続ユニットにおいて、
前記固定部材は、ボルトである、
回路接続ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の電源システム等に接続される回路接続ユニットとして、例えば、基板と、基板に設けられる複数のバスバと、複数のバスバ間の電気回路を開閉するスイッチング素子(MOSFET等)と、を備えたスイッチボックスが知られている。例えば、従来のスイッチボックスの一つでは、バスバが有する複数の端子が、基板に形成されたスルーホールに挿入されて基板が有する導体パターンとハンダ付けにより導通接続されるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のスイッチボックスが車両の電源システムに接続される場合、例えば、メインバッテリ及びサブバッテリの各々を各々のバスバに接続し、各種負荷への電力供給の状況に応じてスイッチング素子を作動させることで、メインバッテリ及びサブバッテリから負荷に適正に電力を供給するように、電気回路を開閉する切り替えが行われ得る。このような切り替えに伴ってスイッチング素子が発熱するため、この熱を効率良く放出することが望ましい。
【0005】
スイッチング素子で生じた熱は、従来のスイッチボックスでは、基板の導体パターンを介してバスバへと放出されるように伝達する。そこで、例えば、放熱性向上のため、導体パターンに接続されるバスバの端子の数を増やし、導体パターンとバスバとの接触面積を増やすことが考えられる。しかし、バスバ自体の本来の寸法や加工精度を考慮すれば、端子の数を増やすことには限度があり、放熱性を更に向上させることが困難である。
【0006】
本発明の目的の一つは、スイッチング素子で発生した熱を効率良く放出可能な回路接続ユニット、の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る回路接続ユニットは、下記[1]~[2]を特徴としている。
[1]
導体パターンを有する基板と、前記導体パターンに電気的に接続されるスイッチング素子と、前記スイッチング素子で発生した熱を前記導体パターンを通じて受け取って放出するように前記基板に設けられる放熱部と、を備えた回路接続ユニットであって、
前記放熱部は、
前記導体パターンと接触するように前記基板の表面に載置される伝熱用端子と、
前記基板との間に空間が画成されるように前記伝熱用端子に固定される放熱板と、
前記放熱板との間に絶縁体を挟み且つ前記基板を覆うように積層されるカバーと、を有し、
前記伝熱用端子と前記放熱板とが固定部材によって連結され、
前記固定部材の一部は、前記放熱板と、前記カバー及び前記絶縁体と、の間に位置し、
前記カバー及び前記絶縁体は、前記固定部材に対応する凹凸形状を有する、
回路接続ユニットであること。
[2]
上記[1]に記載の回路接続ユニットにおいて、
前記固定部材は、ボルトである、
回路接続ユニットであること。
【0008】
上記[1]の構成の回路接続ユニットによれば、基板には、スイッチング素子で発生した熱を導体パターンを通じて受け取って放出する放熱部が、設けられる。放熱部では、伝熱用端子が、導体パターンと接触するように基板の表面に載置され、放熱板が、基板の表面との間に空間が画成されるように伝熱用端子に固定され、絶縁体及びカバーが、放熱板の上に、基板の表面を覆うようにこの順で積層される。伝熱用端子は、基板の表面に載置されるため、基板のスルーホールに挿入されるバスバの端子よりも設計の自由度が高い。このため、放熱のために伝熱用端子と導体パターンとの接触面積を増やすことが容易となる。更に、スイッチング素子で発生した熱は、基板の導体パターンを通じて、伝熱用端子、放熱板、絶縁体及びカバーの順に伝達され、放熱部を構成する伝熱用端子からカバーまでの経路(放熱経路)における何れかの場所で放出される。放熱部を構成する部材のうちで、特にカバーは、放熱するための表面積を大きく確保し易いので、効率的な放熱が容易である。このように、本構成の回路接続ユニットは、スイッチング素子で発生した熱を効率良く放出可能な構造を有する。
【0009】
更に、放熱板が、基板の表面との間に空間を画成するように配置される。このため、スイッチング素子及び放熱板は、この空間に向けて熱を放出することも可能となる。
【0010】
更に、放熱部の一部である伝熱用端子が導体パターンと接触するように基板の表面に載置されるため、放熱のためにバスバの端子を増やす場合に比べ、基板に設けるスルーホールの数を減らすことができる。スルーホールの数が減る分、電子部品を実装可能な基板上の領域(例えば、基板の裏面)の面積を増やすことができる。この結果、基板上の領域を有効活用できるため、回路接続ユニットの小型化を図り得る。
【0011】
更に、上記[1]の構成の回路接続ユニットによれば、固定部材の一部が放熱板とカバー及び絶縁体との間に位置することで、カバー及び絶縁体の一部には、固定部材の一部の形状に対応する凹凸形状が形成される。これにより、カバーの表面積が増え、更に、放熱板とカバーとの間の接触面積(即ち、放熱経路)も増えるため、スイッチング素子で発生した熱が、より一層効率良く放出され得る。
【0012】
上記[2]の構成の回路接続ユニットによれば、固定部材がボルトであることで、伝熱用端子と放熱板とを容易かつ強固に密着させることが可能となる。これにより、両者間の伝熱性が上昇するので、スイッチング素子で発生した熱が、より一層効率良く放出され得る。加えて、伝熱用端子と放熱板とをボルトによって簡単に締結することができるため、両者を連結する際の作業性が高い。これにより、回路接続ユニットの生産性がより一層向上する。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明によれば、スイッチング素子で発生した熱を効率良く放出可能な構造を有する回路接続ユニット、を提供できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る回路接続ユニットの斜視図である。
【
図2】
図2は、カバーを分離した状態にある
図1に示す回路接続ユニットの斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す回路接続ユニットの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す伝熱用端子の周囲を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る回路接続ユニット1について説明する。回路接続ユニット1は、典型的には、メインバッテリ及びサブバッテリを備える車両の電源システムに接続されて使用される。この場合、回路接続ユニット1は、車両に搭載された各種負荷への電力供給の状況に応じて、メインバッテリ及びサブバッテリ間の電気回路を開閉する機能を果たす。
【0017】
以下、説明の便宜上、
図1~
図6に示すように、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。
【0018】
図1~
図3(特に、
図3)に示すように、回路接続ユニット1は、本体10と、本体10に取り付けられる基板20と、基板20に設けられる放熱部30と、を備える。まず、本体10及び基板20について説明する。
【0019】
本体10は、樹脂成形体であり、
図3に示すように、左右方向に延びる略直方体状の形状を有する。本体10の上面には、
図5に示すように、上方に開口し下方に窪み且つ左右方向に延びる略直方体状の凹部11が形成されている。
【0020】
基板20は、凹部11の開口形状に対応して左右方向に延びる略矩形平板状の形状を有する回路基板である。基板20は、凹部11の開口を塞ぐように、複数の締結部材21を利用して本体10に取り付けられている(
図3及び
図5参照)。基板20を構成する樹脂母材の内部には、所定の形状を有する導体パターン(図示省略)が埋設されており、基板20の表面(上面)及び裏面(下面)の双方に複数の電子部品(図示省略)が実装されている。基板20の裏面に実装されている複数の電子部品は、本体10の凹部11の内部に位置している。
【0021】
凹部11の左側に隣接する本体10の左端部には、
図3に示すように、第1電気接続部12と、第1電気接続部12の前側に隣接する第2電気接続部13とが、前後方向に並ぶように設けられている。車両の電源システムが備えるメインバッテリ及びサブバッテリ(図示省略)は、それぞれ、第1電気接続部12及び第2電気接続部13に電気的に接続される。
【0022】
本体10の後端面の所定箇所には、基板20と電気的に接続されたコネクタ14が後方に突出するように設けられている。コネクタ14には、車両に搭載された制御部(図示省略)に一端が接続された信号線の他端に設けられたコネクタ(図示省略)が接続される。制御部は、信号線を介して基板20に、後述するスイッチング素子24,25(
図3等参照)を制御するための制御信号を送信する。
【0023】
本体10の上面には、基板20、及び、第1、第2電気接続部12,13を囲むように、略矩形枠状の環状溝15が形成されている。環状溝15には、後述するカバー80の環状凸部84(
図3参照)が嵌合される。
【0024】
本体10の前端面及び右端面の所定の複数箇所(本例では、4箇所)には、係止突起16がそれぞれ形成されている。各係止突起16には、カバー80の対応する係止片85(
図3参照)の開口の縁部がそれぞれ係止される。本体10の上面の後端部の左右方向両端部には、一対の係止突起17が形成されている。一対の係止突起17には、カバー80の一対の係止孔86(
図3参照)が係止される。
【0025】
基板20には、
図3に示すように、配線パターン22及び配線パターン23が、基板20の上面に露呈するように基板20に埋設されている。配線パターン22及び配線パターン23は、前後方向に所定距離を空けて左右方向に平行に延びている。配線パターン22及び配線パターン23の各々は、左右方向に延びる矩形平板状の形状を有している。配線パターン22及び配線パターン23はそれぞれ、第1電気接続部12及び第2電気接続部13に電気的に接続されている。なお、配線パターン22及び配線パターン23の各々は、金属板であってもよいし、金属製の薄いシート(例えば、銅箔)であってもよい。
【0026】
配線パターン22の左右方向の所定の複数箇所(本例では、5箇所)には、配線パターン22の上面及び配線パターン22の前側に隣接する基板20の上面を跨ぐように、配線パターン22の上面及び基板20の上面に、スイッチング素子24がそれぞれ載置されている。スイッチング素子24は、配線パターン22及び基板20に埋設された回路パターンと電気的に接続されている。
【0027】
配線パターン23の左右方向における複数のスイッチング素子24に対応する複数箇所(本例では、5箇所)には、配線パターン23の上面及び配線パターン23の後側に隣接する基板20の上面を跨ぐように、配線パターン23の上面及び基板20の上面に、スイッチング素子25がそれぞれ載置されている。スイッチング素子25は、配線パターン23及び基板20に埋設された回路パターンと電気的に接続されている。
【0028】
スイッチング素子24及びスイッチング素子25の各々は、典型的には、MOSFETである。スイッチング素子24,25は、上述した制御部から基板20に送信される制御信号に基づいて開閉制御されて、配線パターン22及び配線パターン23間(よって、第1、第2電気接続部12,13間)の電気回路を開閉する切り替え動作(所謂、スイッチング)を行う。これにより、車両に搭載された各種負荷への電力供給の状況に応じて、メインバッテリ及びサブバッテリ間の電気回路が開閉される。
【0029】
スイッチング素子24,25の各々は、スイッチングにより発熱する。スイッチング素子24,25が過度に高温になることを抑制するため、スイッチング素子24,25で発生した熱を効率良く放出する必要がある。このため、回路接続ユニット1では、放熱部30が基板20に設けられている。以下、放熱部30について説明する。
【0030】
図3に示すように、放熱部30は、複数の伝熱用端子40と、複数の放熱板50と、複数の固定部材60と、複数の絶縁シート70と、カバー80と、で構成される。以下、放熱部30を構成する部材について順に説明する。
【0031】
まず、伝熱用端子40について説明する。各伝熱用端子40は、対応するスイッチング素子24又はスイッチング素子25に隣接するように、配線パターン22又は配線パターン23の上面(よって、基板20の表面)に載置されている。本例では、配線パターン22及び配線パターン23のそれぞれの上面において、左右方向の同じ3箇所に、伝熱用端子40がそれぞれ載置されている。伝熱用端子40は、スイッチング素子24,25で発生した熱を放熱するために用いられる。よって、伝熱用端子40には電流は流れない。
【0032】
伝熱用端子40は、
図4及び
図6に示すように、前後方向に延びる矩形平板状の下壁部41と、下壁部41の上方に所定距離を空けて対向配置され且つ前後方向に延びる矩形平板状の上壁部43と、下壁部41及び上壁部43の前後方向の一側の端縁部同士を連結し且つ上下方向に延びる矩形平板状の側壁部42と、からなり、左右方向から見て略U字状の形状を有している。上壁部43の中央部には、上下方向に貫通する雌ネジ部44(
図6参照)が形成されている。伝熱用端子40は、一枚の金属板にプレス加工及び曲げ加工等を施すことで形成される。伝熱用端子40として、汎用の電源端子が使用され得る。
【0033】
図3に示すように、配線パターン22の上面に載置されている伝熱用端子40では、側壁部42が下壁部41及び上壁部43の前側の端縁部同士を連結する向きに、下壁部41が配線パターン22の上面に固定され、配線パターン23の上面に載置されている伝熱用端子40では、側壁部42が下壁部41及び上壁部43の後側の端縁部同士を連結する向きに、下壁部41が配線パターン23の上面に固定されている。
【0034】
複数の伝熱用端子40それぞれの下壁部41は、複数のスイッチング素子24及びスイッチング素子25と共に、配線パターン22及び配線パターン23の上面に、例えばリフロー方式等を採用して、同時にハンダ付けされて固定され得る。
【0035】
次いで、放熱板50について説明する。放熱板50は、金属板(バスバ)であり、配線パターン22及び配線パターン23の形状に対応して左右方向に延びる矩形平板状の形状を有する。放熱板50は、スイッチング素子24,25で発生した熱を放熱するために用いられる。よって、放熱板50には電流は流れない。
【0036】
放熱板50の左右方向における複数の伝熱用端子40に対応する複数箇所(本例では、3箇所)には、上下方向に貫通するボルト挿通孔51が形成されている。本例では、一対の放熱板50が、配線パターン22及び配線パターン23の上方位置にて、前後方向に所定距離を空けて左右方向に平行に延びるように、複数のボルト60を使用して複数の伝熱用端子40に固定されている(
図2参照)。
【0037】
具体的には、後側の放熱板50は、複数のボルト挿通孔51に上側からそれぞれ挿通させた複数のボルト60の雄ネジ部61(
図4及び
図6参照)を、配線パターン22に載置された複数の伝熱用端子40の雌ネジ部44にそれぞれ締め付けることで、配線パターン22に載置された複数の伝熱用端子40の上壁部43に固定される。これにより、後側の放熱板50は、配線パターン22の上面(よって、基板20の表面)との間に空間S(
図4参照)が画成されるように、左右方向に沿って配置される。後側の放熱板50の上面には、複数のボルト挿通孔51に対応して複数のボルト60の頭部62が上方に突出している(
図4及び
図6参照)。
【0038】
前側の放熱板50は、複数のボルト挿通孔51に上側からそれぞれ挿通させた複数のボルト60の雄ネジ部61を、配線パターン23に載置された複数の伝熱用端子40の雌ネジ部44にそれぞれ締め付けることで、配線パターン23に載置された複数の伝熱用端子40の上壁部43に固定される。これにより、前側の放熱板50は、配線パターン23の上面(よって、基板20の表面)との間に空間S(
図4参照)が画成されるように、左右方向に沿って配置される。前側の放熱板50の上面には、複数のボルト挿通孔51に対応して複数のボルト60の頭部62が上方に突出している(
図4及び
図6参照)。
【0039】
次いで、カバー80について説明する。カバー80は、金属製であり、例えば、一枚の金属板にプレス加工及び曲げ加工等を施すことで形成される。カバー80は、スイッチング素子24,25で発生した熱を放熱するために用いられる。カバー80と、放熱板50及びボルト60と、の間は、絶縁シート70によって電気的に分離(絶縁)されている。よって、カバー80には電流は流れない。
【0040】
カバー80は、基板20の上面を含む本体10の上面を覆う部材である。よって、カバー80は、
図3に示すように、本体10の形状に対応して、左右方向に延びる略矩形平板状の形状を有する。カバー80における配線パターン22及び配線パターン23の上方に対応する領域は、左右方向に延びる矩形状の平板部81となっている。平板部81におけるボルト60の頭部62の上方に対応する領域には、上面が上方に突出し且つ下面が上方に窪む凸部82が形成されている。
【0041】
本例では、左右方向の3箇所にて、前後方向に並ぶ一対のボルト60の頭部62に対応して、平板部81における左右方向の3箇所にて、前後方向に延びる凸部82が形成されている。凸部82の下面側の窪み83(
図6参照)には、
図6に示すように、ボルト60の頭部62が収容される。このように、カバー80の平板部81は、複数のボルト60の頭部62に対応する凹凸形状を有している。
【0042】
カバー80の平板部81の下面には、一対の放熱板50の上方に対応する位置にて、絶縁性の樹脂製の一対の絶縁シート70が設けられている。絶縁シート70は、放熱板50の形状に対応して、左右方向に延びる矩形平板状の形状を有する。各絶縁シート70の上面全域は、平板部81における窪み83を含む上記凹凸形状に倣うように平板部81の下面に密着している(
図5及び
図6参照)。本例では、一対の絶縁シート70は、カバー80と一体に成形されている。
【0043】
カバー80の外周縁には、
図3に示すように、本体10の環状溝15に対応して、下面が下方に突出し且つ上面が下方に窪む略矩形枠状の環状凸部84が形成されている。カバー80の前端縁及び右端縁の所定の複数箇所(本例では、4箇所)には、本体10の複数の係止突起16に対応して、下方に延びる係止片85がそれぞれ形成されている。カバー80の後端部の左右方向両端部には、本体10の一対の係止突起17に対応して、一対の係止孔86が形成されている。
【0044】
カバー80の本体10への取り付けは、カバー80の環状凸部84が本体10の環状溝15に係合するように、カバー80の複数の係止片85の開口の縁部が本体10の複数の係止突起16に係止されるように、且つ、カバー80の一対の係止孔86が本体10の一対の係止突起17に係止されるように、実行される。これにより、カバー80は、基板20の上面を含む本体10の上面を覆うように、本体10の上面に固定される(
図1及び
図5参照)。
【0045】
カバー80が本体10に取り付けられた状態では、
図6に示すように、各ボルト60の頭部62がカバー80の窪み83内に位置する絶縁シート70を下方から押し付けた状態で、各ボルト60の頭部62の近傍領域を除く絶縁シート70の下面全域が、放熱板50の上面に密着している。このように、絶縁シート70は、放熱板50とカバー80との間に挟まれており、ボルト60の頭部62は、放熱板50とカバー80との間に位置している。以上、放熱部30を構成する部材について説明した。
【0046】
放熱部30では、スイッチング素子24,25で発生した熱は、基板20の配線パターン22,23を通じて、伝熱用端子40、放熱板50、絶縁シート70及びカバー80の順に伝達されて、放熱部30を構成する伝熱用端子40からカバー80までの経路(放熱経路)における何れかの場所で放出される。本例では、放熱部30を構成する部材のうちで、特に、金属製のカバー80が、放熱するための大きな表面積を有しているため、効率的な放熱が容易となっている。
【0047】
更に、放熱板50が、基板20の上面との間に空間S(
図4参照)を画成するように配置されている。このため、スイッチング素子24,25及び放熱板50は、この空間Sに向けて熱を放出することが可能となる。これによっても、スイッチング素子24,25で発生した熱が効率良く放出され得る。
【0048】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係る回路接続ユニット1によれば、基板20には、スイッチング素子24,25で発生した熱を配線パターン22,23を通じて受け取って放出する放熱部30が、設けられる。放熱部30では、伝熱用端子40が、配線パターン22,23と接触するように基板20の表面に載置され、放熱板50が、基板20の表面との間に空間Sが画成されるように伝熱用端子40に固定され、絶縁シート70及びカバー80が、放熱板50の上に、基板20の表面を覆うようにこの順で積層される。伝熱用端子40は、基板20の表面に載置されるため、基板20のスルーホールに挿入されるバスバの端子よりも設計の自由度が高い。このため、放熱のために伝熱用端子40と配線パターン22,23との接触面積を増やすことが容易となる。更に、スイッチング素子24,25で発生した熱は、基板20の配線パターン22,23を通じて、伝熱用端子40、放熱板50、絶縁シート70及びカバー80の順に伝達され、放熱部30を構成する伝熱用端子40からカバー80までの経路(放熱経路)における何れかの場所で放出される。放熱部30を構成する部材のうちで、特にカバー80は、放熱するための表面積を大きく確保し易いので、効率的な放熱が容易である。このように、本構成の回路接続ユニット1は、スイッチング素子24,25で発生した熱を効率良く放出可能な構造を有する。
【0049】
更に、放熱板50が、基板20の表面との間に空間Sを画成するように配置される。このため、スイッチング素子24,25及び放熱板50は、この空間Sに向けて熱を放出することが可能となる。この結果、スイッチング素子24,25で発生した熱が効率良く放出され得る。
【0050】
更に、放熱部30の一部である伝熱用端子40が、配線パターン22,23と接触するように基板20の表面に載置されるため、放熱のためにバスバの端子が基板のスルーホールに挿入される場合と比べて、基板20に設けるスルーホールの数を減らすことができる。このため、基板20の裏面にて電子部品を実装可能な面積を増やすことができる。この結果、基板20の裏面に多くの電子部品を実装することができるので、回路接続ユニット1を小型化できる。
【0051】
更に、本実施形態に係る回路接続ユニット1によれば、ボルト60の頭部62が放熱板50とカバー80との間に位置することで、カバー80(及び絶縁シート70)の一部には、ボルト60の頭部62部の形状に対応する凹凸形状が形成される。これにより、カバー80の表面積が増え、更に、放熱板50とカバー80との間の放熱経路も増えるため、スイッチング素子24,25で発生した熱が、より一層効率良く放出され得る。
【0052】
更に、本実施形態に係る回路接続ユニット1によれば、固定部材がボルト60であることで、伝熱用端子40と放熱板50とを強固に密着させることが可能となる。これにより、両者間の伝熱性が上昇するので、スイッチング素子24,25で発生した熱が、より一層効率良く放出され得る。加えて、伝熱用端子40と放熱板50とをボルト60によって簡単に締結することができるため、両者を連結する際の作業性が高い。これにより、回路接続ユニット1の生産性がより一層向上する。
【0053】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0054】
上記実施形態では、絶縁シート70は、カバー80と一体に成形されている。これに対し、カバー80と別体の絶縁シート70を、カバー80の下面に貼り付けてもよい。
【0055】
更に、上記実施形態では、配線パターン22,23の各々に対して3つの伝熱用端子40が配置されている。これに対し、スイッチング素子24,25の発熱量に応じて、配線パターン22,23の各々に対して配置される伝熱用端子40の個数を適宜選択することができる。適宜選択された伝熱用端子40の個数に応じて、カバー80の平板部81に設けられる凸部82の個数も変更することが好ましい。
【0056】
更に、上記実施形態では、配線パターン22,23の各々は、左右方向の全域にわたって基板20の上面に露出している。これに対し、配線パターン22,23の各々は、スイッチング素子24,25及び伝熱用端子40が載置される箇所のみにおいて基板20の上面に露出していても、伝熱用端子40が載置される箇所のみにおいて基板20の上面に露出していてもよい。
【0057】
更に、上記実施形態では、放熱板50とカバー80との間には、絶縁シート70のみが挟まれている。これに対し、放熱部30(特にカバー80)の放熱性を大きく妨げない限りにおいて、放熱板50とカバー80との間に、絶縁シート70に加えて他の部材が挟まれるように構成してもよい。
【0058】
ここで、上述した本発明に係る回路接続ユニット1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
導体パターン(22,23)を有する基板(20)と、前記導体パターン(22,23)に電気的に接続されるスイッチング素子(24,25)と、前記スイッチング素子(24,25)で発生した熱を前記導体パターン(22,23)を通じて受け取って放出するように前記基板(20)に設けられる放熱部(30)と、を備えた回路接続ユニット(1)であって、
前記放熱部(30)は、
前記導体パターン(22,23)と接触するように前記基板(20)の表面に載置される伝熱用端子(40)と、
前記基板(20)との間に空間(S)が画成されるように、前記伝熱用端子(40)に固定される放熱板(50)と、
前記放熱板(50)との間に絶縁体(70)を挟み且つ前記基板(20)を覆うように積層されるカバー(80)と、を有する、
回路接続ユニット(1)。
[2]
上記[1]に記載の回路接続ユニット(1)において、
前記伝熱用端子(40)と前記放熱板(50)とが固定部材(60)によって連結され、
前記固定部材(60)の一部(62)は、前記放熱板(50)と前記カバー(80)との間に位置し、
前記カバー(80)は、前記固定部材(60)に対応する凹凸形状(82)を有する、
回路接続ユニット(1)。
[3]
上記[2]に記載の回路接続ユニット(1)において、
前記固定部材は、ボルト(60)である、
回路接続ユニット(1)。
【符号の説明】
【0059】
1 回路接続ユニット
20 基板
22,23 配線パターン(導体パターン)
24,25 スイッチング素子
30 放熱部
40 伝熱用端子
50 放熱板
60 ボルト(固定部材)
62 頭部(一部)
70 絶縁シート(絶縁体)
80 カバー
82 凸部(凹凸形状)