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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】複合蓋
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20240409BHJP
   B65D 47/32 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B65D47/20 111
B65D47/32 200
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020073961
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021169329
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩光
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216124(JP,A)
【文献】特開2019-208536(JP,A)
【文献】特開平10-236514(JP,A)
【文献】特開平11-020867(JP,A)
【文献】特開2020-055562(JP,A)
【文献】特開2017-052517(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0251274(US,A1)
【文献】特開2011-230840(JP,A)
【文献】特開平11-278524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 47/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する内側層と該内側層を囲繞する外側層とを備えた積層構造容器のための複合蓋であって、
円形の閉塞壁と該閉塞壁の外周縁から垂下する円筒形状の装着壁とを含み、該閉塞壁には排出開口が形成されている蓋本体と、
該蓋本体の該閉塞壁の下面に装着され且つ連通開口を有する中栓部材と、
該中栓部材に組み合わされ、常態においては該連通開口を閉じるが容器内圧が上昇すると該連通開口を開く逆止弁部材と、
を具備する複合蓋において、
該蓋本体の該閉塞壁の外周縁部には吸引孔が形成され、該閉塞壁の上面には該吸引孔の外周縁から上方に延出する延出円筒が形成されており、該延出円筒の内周面には半径方向に突出した円環状の弁座が形成されており、
該延出円筒内には上下方向に移動自在に弁部材が組み込まれており、該弁部材は上下方向に延在し且つ該弁座の内径より小さい外径を有する円柱部と該円柱部の下部において半径方向外方に突出する弁部と該円柱部の上部において半径方向外方に突出する環状突出部とを有し
容器の口頸部に複合蓋を装着する前の状態においては、該弁部材の重量によって該弁部材が下方に偏倚され、該環状突出部の下面が該弁座の上面に当接され、
容器の口頸部に複合蓋を装着すると、容器の上端が該吸引孔の下方に位置し、該弁部材が容器の上端に当接することによって該弁部材が上方に移動され、該弁部の上面は該弁座の下面よりも下方に位置するが該環状突出部の該下面が該弁座の上面から上方に離間され、
器の内側層と外側との間の層間空間が加圧されると、該弁部材が上方に偏倚されて該弁部の上面が該弁座の下面に密接される、
ことを特徴とする複合蓋。
【請求項2】
該延出円筒の内周面における該弁座よりも上方の部位には周方向に間隔をおいて半径方向内方に突出する複数個の案内リブが形成されており、該案内リブの半径方向内側縁で規定される内径は該弁部材の該環状突出部の外径に対応している、請求項記載の複合蓋。
【請求項3】
該弁座の該上面及び該下面は水平であり内周面は逆円錐台形状部を含み、該弁部材の該弁部の外周面逆円錐台形状部を含む、請求項1又は2に記載の複合蓋。
【請求項4】
内容物を収容する内側層と該内側層を囲繞する外側層とを備えた積層構造容器のための複合蓋であって、
円形の閉塞壁と該閉塞壁の外周縁から垂下する円筒形状の装着壁とを含み、該閉塞壁には排出開口が形成されている蓋本体と、
該蓋本体の該閉塞壁の下面に装着され且つ連通開口を有する中栓部材と、
該中栓部材に組み合わされ、常態においては該連通開口を閉じるが容器内圧が上昇すると該連通開口を開く逆止弁部材と、
を具備する複合蓋において、
該蓋本体の該閉塞壁には吸引孔が形成され、該閉塞壁の上面には該吸引孔の外周縁から上方に延出する延出円筒が形成され、該延出円筒の上端は開放されており、該延出円筒の内周面には半径方向に突出した円環状の弁座が形成されており、該弁座の上面側の内径は下面側の内径よりも大きく、
該延出円筒内には上下方向に移動自在に弁部材が組み込まれており、該弁部材は上下方向に延在し且つ該弁座の内径より小さい外径を有する円柱部と該円柱部の下部において半径方向外方に突出する弁部とを有し、該弁部が該弁座を弾性的に下方に乗り越えることで該弁部材は該延出円筒内に組み込まれ、
器の内側層と外側との間の層間空間が加圧されると、該弁部材が上方に偏倚されて該弁部の上面が該弁座の下面に密接される、
ことを特徴とする複合蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収容する内側層とこの内側層を囲繞する外側層とを備えた積層構造容器のための複合蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
近時においては、調味料、特に醤油のための容器として、内容物を収容する内側層とこの内側層を囲繞する外側層とを備えた積層構造容器が広く実用に供されている。そして、かような容器のための容器蓋として、下記特許文献1には、円形の閉塞壁とこの閉塞壁の外周縁から垂下する円筒形状の装着壁とを含む蓋本体と、蓋本体の閉塞壁の下面に装着される中栓部材と、中栓部材に組み合わされる逆止弁部材と、を具備する複合蓋が開示されている。蓋本体の閉塞壁には排出開口が形成されている。閉塞壁には更に、吸引孔が形成され、閉塞壁の下面には吸引孔の外周縁から下方に延出する連通筒が形成されている。連通筒の内周面の下端部には半径方向に突出した円環状の弁座が、内周面の上端部には半径方向に突出した円環状のシール部が夫々形成されている。そして、連通筒内には上下方向に移動自在な球状の弁部材が組み込まれている。弁部材の外径は弁座及びシール部の内径よりも大きい。中栓部材は連通開口を有し、逆止弁部材は、常態においては連通開口を閉じるが容器内圧が上昇すると連通開口を開く。
【0003】
上記のとおりの複合蓋を容器の口頸部に装着して容器内の内容物を排出するには、容器を圧搾する。容器が圧搾されると容器の内側層と外側層との間の層間空間が加圧され、弁部材が閉塞壁に形成された連通筒内を上方に移動して連通筒の内周面の上端部に形成されたシール部と密接し、吸引孔を閉じる。容器が更に圧搾されると、容器内圧が上昇し、逆止弁部材が連通開口を開放する。連通開口が開放されることで内容物は連通開口及び排出開口を順次通過して外部に排出される。容器の圧搾を解除すると、容器が弾性的に復元されることで層間空間は負圧となる。これにより、弁部材は連通筒内を下方に移動して弁部材とシール部との上記密接は解除され、外気が上記吸引孔を通過して層間空間に取り込まれる。層間空間に充分な外気が取り込まれて容器内圧が大気圧に戻ると、連通開口は逆止弁部材によって閉じられ、内容物の排出が停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5620143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、上記特許文献1で開示された複合蓋には以下のとおりの問題がある。即ち、(1)容器を圧搾して弁部材が連通筒の内周面の上端部に形成されたシール部と密接する際には、弁部材が球状であることに起因して弁部材とシール部との接触が所謂線接触となり、シール部を充分確実に閉じることができなくなる虞がある。シール部のシール性が不充分であると、容器の層間空間内の空気が吸引孔を通って容器の外部に流出し、層間空間及び容器内圧が充分に加圧されず、内容物を排出することができない。さらに、(2)弁部材は連通筒内に強制的に圧入されることでこれに組み込まれるものと推測されるが、弁部材が連通筒内に圧入される際に弁部材の外周面が弁座によって損傷せしめられ、やはりシール部材のシール性が不充分となる虞がある。これは、容器を圧搾して内容物を排出する際に、弁部材の損傷部が連通筒の肩部と密接した場合には、容器の層間空間内の空気が上記損傷部を通過して容器の外部に流出してしまうためである。さらにまた、(3)連通筒が閉塞壁の下面から下方に延出していることに起因して、閉塞壁の上面に残留した内容物が吸引孔から閉塞壁の下面側に進入してしまう虞があり、衛生上好ましくない。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、容器の内側層と外側層との間の層間空間が加圧された際に弁部材が充分確実に吸引孔を閉塞することができると共に、閉塞壁の上面に残留した内容物が吸引孔から閉塞壁の下面側に進入してしまうことが回避される、新規且つ改良された複合蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討の結果、閉塞壁の上面に吸引孔の外周縁から上方に延出する延出円筒を形成し、延出円筒の内周面には半径方向に突出する円環状の弁座を設け、延出円筒内に組み込まれる弁部材は、上下方向に延在し且つ弁座の内径より小さい外径を有する円柱部と円柱部の下部において半径方向外方に突出する弁部とを有するようにし、容器の内側層と外側との間の層間空間が加圧されると、弁部材が上方に偏倚して弁部の上面が弁座の下面に密接することで、上記主たる技術的課題が解決されることを見出した。
【0008】
即ち、本発明の第一の局面によれば、上記主たる技術的課題を解決する複合蓋として、内容物を収容する内側層と該内側層を囲繞する外側層とを備えた積層構造容器のための複合蓋であって、
円形の閉塞壁と該閉塞壁の外周縁から垂下する円筒形状の装着壁とを含み、該閉塞壁には排出開口が形成されている蓋本体と、
該蓋本体の該閉塞壁の下面に装着され且つ連通開口を有する中栓部材と、
該中栓部材に組み合わされ、常態においては該連通開口を閉じるが容器内圧が上昇すると該連通開口を開く逆止弁部材と、
を具備する複合蓋において、
該蓋本体の該閉塞壁の外周縁部には吸引孔が形成され、該閉塞壁の上面には該吸引孔の外周縁から上方に延出する延出円筒が形成されており、該延出円筒の内周面には半径方向に突出した円環状の弁座が形成されており、
該延出円筒内には上下方向に移動自在に弁部材が組み込まれており、該弁部材は上下方向に延在し且つ該弁座の内径より小さい外径を有する円柱部と該円柱部の下部において半径方向外方に突出する弁部と該円柱部の上部において半径方向外方に突出する環状突出部とを有し
容器の口頸部に複合蓋を装着する前の状態においては、該弁部材の重量によって該弁部材が下方に偏倚され、該環状突出部の下面が該弁座の上面に当接され、
容器の口頸部に複合蓋を装着すると、容器の上端が該吸引孔の下方に位置し、該弁部材が容器の上端に当接することによって該弁部材が上方に移動され、該弁部の上面は該弁座の下面よりも下方に位置するが該環状突出部の該下面が該弁座の上面から上方に離間され、
器の内側層と外側との間の層間空間が加圧されると、該弁部材が上方に偏倚されて該弁部の上面が該弁座の下面に密接される、
ことを特徴とする複合蓋が提供される。
本発明の第二の局面によっても、上記主たる技術的課題を解決する複合蓋として、内容物を収容する内側層と該内側層を囲繞する外側層とを備えた積層構造容器のための複合蓋であって、
円形の閉塞壁と該閉塞壁の外周縁から垂下する円筒形状の装着壁とを含み、該閉塞壁には排出開口が形成されている蓋本体と、
該蓋本体の該閉塞壁の下面に装着され且つ連通開口を有する中栓部材と、
該中栓部材に組み合わされ、常態においては該連通開口を閉じるが容器内圧が上昇すると該連通開口を開く逆止弁部材と、
を具備する複合蓋において、
該蓋本体の該閉塞壁には吸引孔が形成され、該閉塞壁の上面には該吸引孔の外周縁から上方に延出する延出円筒が形成され、該延出円筒の上端は開放されており、該延出円筒の内周面には半径方向に突出した円環状の弁座が形成されており、該弁座の上面側の内径は下面側の内径よりも大きく、
該延出円筒内には上下方向に移動自在に弁部材が組み込まれており、該弁部材は上下方向に延在し且つ該弁座の内径より小さい外径を有する円柱部と該円柱部の下部において半径方向外方に突出する弁部とを有し、該弁部が該弁座を弾性的に下方に乗り越えることで該弁部材は該延出円筒内に組み込まれ、
容器の内側層と外側層との間の層間空間が加圧されると、該弁部材が上方に偏倚されて該弁部の上面が該弁座の下面に密接される、
ことを特徴とする複合蓋が提供される。
【0009】
好ましくは、該延出円筒の内周面における該弁座よりも上方の部位には周方向に間隔をおいて半径方向内方に突出する複数個の案内リブが形成されており、該案内リブの半径方向内側縁で規定される内径は該弁部材の該環状突出部の外径に対応している。好適には、該弁座の該上面及び該下面は水平であり内周面は逆円錐台形状部を含み、該弁部材の該弁部の外周面逆円錐台形状部を含む
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合蓋においては、閉塞壁の上面には吸引孔の外周縁から上方に延出する延出円筒が形成されており、延出円筒の内周面には半径方向に突出する円環形状の弁座が設けられ、延出円筒内には上下方向に移動可能な弁部材が組み合わされ、弁部材は上下方向に延在し且つ弁座の内径より小さい外径を有する円柱部と円柱部の下部において半径方向外方に突出する弁部とを有している。そして、容器の内側層と外側層との間の層間空間が加圧されて弁部材が上方に偏倚すると、弁部の上面が弁座の下面に密接される。これにより、本発明の複合蓋においては、容器の層間空間が加圧された際には、弁部の上面と弁座の下面とが面接触して吸引孔は閉塞されるため弁部の上面と弁座の下面との間のシール性は良好であり、容器内圧を充分確実に上昇させることが可能となる。また、閉塞壁の上面には吸引孔の外周縁から上方に延出する延出円筒が形成されていることに起因して、閉塞壁の上面に残留した内容物が吸引孔に進入してしまうことが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1-1】本発明に従って構成された複合蓋の好適実施形態において、外蓋が閉位置にあるときの断面図。
図1-2】本発明に従って構成された複合蓋の好適実施形態において、外蓋が開位置にあるときの断面図。
図2図1に示す複合蓋における蓋本体の断面図。
図3図1に示す複合蓋における蓋本体の平面図。
図4図1に示す複合蓋における蓋本体の底面図。
図5】蓋本体に組み込まれる弁部材の平面図。
図6】蓋本体に組み込まれる弁部材の正面図。
図7】蓋本体に組み込まれる弁部材の底面図。
図8】弁部材が蓋本体に組み込まれた状態の断面図。
図9】弁部材が蓋本体に組み込まれた状態における、延出円筒内を上方から見たときの図。
図10図1に示す複合蓋における中栓部材の平面図。
図11図1に示す複合蓋における中栓部材の正面図。
図12図1に示す複合蓋における中栓部材の底面図。
図13図1に示す複合蓋における逆止弁部材の平面図。
図14図1に示す複合蓋における逆止弁部材の正面図。
図15図1に示す複合蓋における逆止弁部材の底面図。
図16図1に示す複合蓋における、弁部材の作動を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された複合蓋の好適実施形態について、更に詳述する。本明細書及び特許請求の範囲で使用する語句「上」及び「下」は、特に指定しない限り図1-1に示す状態(即ち容器が正立して且つ後述する外蓋が閉位置にある状態)での上及び下を意味する。
【0013】
主に図1-1を参照して説明すると、全体を番号2で示す複合蓋は、蓋本体4と、中栓部材6と、逆止弁部材8とを具備している。蓋本体4はポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形することで形成され、平面視において円形の閉塞壁10とこの閉塞壁10の外周縁から垂下する円筒形状の装着壁12とを含んでいる。図1-1と共に図2乃至図4を参照して説明を続けると、閉塞壁10は上下方向に見て上方に位置する円形の内側部10aと、下方に位置する円環形状の外側部10bと、内側部10aと外側部10bとを接続する円錐台形状の中間部10cとを備えている。内側部10aの中央には円形の排出開口13が形成されており、内側部10aの上面には排出開口13の外周縁を囲繞して上方に延びる排出筒14が形成されている。排出筒14の主部は略円筒形状であり、排出筒14の基端からの延出長さは、後述するヒンジ部が形成されている側が形成されていない側よりも(つまり図1-1乃至図4においては図中の右側が左側よりも)低い。そして、上述したヒンジ部が形成されていない側の排出筒14の上端部には縦断面が略半円形状であるリップが設けられている。排出筒14の上下方向中間部の内周面には径方向内側に突出する円環状の突部16が形成されている。突部16の上面は径方向内側に向かって下方に傾斜する逆円錐台形状であり、内周面は上下方向に実質上垂直な円筒形状であり、下面は実質上水平な円環形状である。閉塞壁10の外周縁部の上面には略円筒形状の係止壁18が形成されている。係止壁18の外周面上端には半径方向外方に突出した環状係止突条20が形成されている。閉塞壁10には上下方向に貫通する吸引孔22が形成され、閉塞壁10の上面には吸引孔22の外周縁から上方に延出する延出円筒24が形成されている(従って吸引孔22の断面も円形である)。図示の実施形態においては、吸引孔22及び延出円筒24は、排出開口13と後述するヒンジ部との間の外側部10bに形成されている。吸引孔22及び延出円筒24については後に更に言及する。閉塞壁10の中間部10cの下面には下方に向かって延びる円筒形状の係合壁26が形成されている。係合壁26の下端には半径方向内方に突出した環状係合突条28が形成されている。閉塞壁10の外側部10bにおける内周縁部の下面には下方に向かって延びる略円筒形状のシール壁30が形成されている。シール壁30の外周面は後述する容器の内側層の内周面に密接する。閉塞壁10の外周縁部の下面には下方に突出する円環形状の肩部32が形成されている。肩部32の外周面は装着壁12の内周面にも接続されている。肩部32の下面は後述する容器の外側層の上面に当接する。
【0014】
延出円筒24の内周面には半径方向に突出した円環状の弁座34が形成されている。弁座34は、上下方向に見て閉塞壁10の外側部10bよりも幾分上方に位置しており、上面及び下面は水平であり内周面は逆円錐台形状部を含んでいる。図示の実施形態においては、延出円筒24の内周面における弁座34よりも上方の部位には周方向に間隔をおいて半径方向内方に突出する複数個(図示の実施形態においては4個)の案内リブ36が形成されている。案内リブ36は弁座34の上面から延出円筒24の上端部まで上方に向かって直線状に延びており、その上端面は半径方向内側に向かって下方に傾斜している。かような延出円筒24内には上下方向に移動自在に弁部材38が組み込まれる。
【0015】
図5乃至図7も参照して説明を続けると、弁部材38はポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形することで形成され、上下方向に延在し且つ延出円筒壁24の内周面に形成された弁座34の内径より小さい外径を有する円柱部40と、円柱部40の下部において半径方向外方に突出する弁部42とを有している。弁部42の外周面は逆円錐台形状部を含んでおり上面(及び下面)は実質上水平である。弁部42の上面の外径は弁座34の内周面の下端における内径よりも大きい。弁部42の下面には、下方に突出する円柱形状の付加部44が設けられている。付加部44の外径は弁部42の下面の外径と同一であって、弁座34の内周面の下端における内径よりも小さい。円柱部40の上部には半径方向外方に突出する環状突出部46が設けられている。環状突出部46は円柱形状であって、上面の中央には凹所47が形成されている(図16(a)を参照されたい)。環状突出部46の外径は案内リブ36の半径方向内側縁で規定される内径に対応し、これは弁座34の内周面の上端における内径よりも大きい。
【0016】
上述した弁部材38は以下のようにして延出円筒24内に組み込まれる。即ち、最初に付加部44を下方にして延出円筒24内に挿入して弁部42の外周面を弁座34の内周面に当接させ、次いで全体を閉塞壁10に対し下方に強制して弁部42に弁座34を弾性的に乗り越えさせる。このとき、弁部42の上面が弁座34の内周面と当接することはなく、従って、弁部42が弁座34を弾性的に乗り越える際に弁部42の上面が損傷することはない。弁部材38が延出円筒24内に組み込まれた状態であって、容器の口頸部に複合蓋2を装着する前の状態においては、図8及び図16(a)に示すとおり、弁部材38の重量によって弁部材38は下方に偏倚され、環状突出部46の下面は弁座34の上面に当接し、シールされる。このとき、図9に示すとおり、環状突出部46は案内リブ36によって支持されるため、後述するとおり弁部材38が延出円筒24内で上下方向に移動する際に、弁部材38の姿勢が傾斜することが防止される。
【0017】
図1-1と共に図2乃至図4を参照して説明を続けると、装着壁12の内周面下端部には、径方向内側に向かって突出して周方向に弧状に延びる被嵌合突条48が周方向に間隔をおいて2つ形成されている。装着壁12には上端が開放された円筒形状の分離溝50が形成されている。分離溝50等の存在に起因して、複合蓋2は内容物の排出が完了した後に後述する容器の口頸部から離脱せしめることが可能となり、容器と複合蓋2とを分別廃棄をすることができる。かような分離溝50を含む装着壁12の分別機構の詳細については、本願の出願人によって本願に先立って出願されて既に公開された特開2007-22567号公報を参照されたい。
【0018】
蓋本体4の装着壁12の上端にはヒンジ手段52を介して外蓋54が接続されている。外蓋54は蓋本体4と一体に形成され(従って外蓋54も合成樹脂製である)、蓋本体4の閉塞壁10を覆う閉位置(図1-1で示す状態)と閉塞壁10を露呈せしめる開位置(図1-2で示す状態)との間で旋回自在である。外蓋54は天面壁56とこの天面壁56の外周縁部から垂下するスカート壁58とを有する。天面壁56の下面の中央には下方に延出する中実棒状の閉塞栓60が形成されている。閉塞栓60の断面は円形であって、閉塞栓60の基端側部60aは先端側部60bに比べて外径が大きく、基端側部60aと先端側部60bとの間には逆円錐台形状の中間部60cが形成されている。そして、外蓋54が閉位置にあるときには、図1-1に示すとおり、閉塞栓60は閉塞壁10に形成された排出筒14の内側に挿通され、閉塞栓60の基端側部60aの外周面が排出筒14の突部16の内周面と密着する。閉塞栓60の基端部の外周には、天面壁56の下面から下方に垂下する略円筒形状の垂下壁62が形成されている。垂下壁62は外蓋54が閉位置にあるときに、排出筒14の上端部の外周縁を囲繞してこれよりも幾分外側に位置する。垂下壁62の内周縁部には、外蓋54を閉位置から開位置に旋回せしめる際に天面壁56の下面に付着した内容液の飛散を防止するための二重円環溝64も形成されている。天面壁56の下面の径方向中間部には、下方に垂下する支持壁66が形成されている。図1-1及び図2と共に図3を参照して説明すると、支持壁66は全体的円筒形状であるが、その下端部には直径方向に対向して2つの切り欠き68a及び68bが形成されている。切り欠き68aは周方向及び上下方向共に比較的大きく、外蓋54が閉位置にあるときに、支持壁66が閉塞壁10に形成された延出円筒24と干渉することを回避している。一方、切り欠き68bは周方向及び上下方向共に比較的小さい。支持壁66は、外蓋54が閉位置にあるときに、上記切り欠き68a及び68bが形成された部分を除いて閉塞壁10の上面に当接し、天面壁56の上面に付加された外力によって天面壁56が下方に変形することを防止している。スカート壁58の内周面の下端部には、環状被係止突条68が形成されている。ヒンジ手段52の直径方向反対側における、スカート壁58の外周面下端部には、外蓋54を旋回動せしめる際に指を掛けることができる鍔部69が形成されている。
【0019】
続いて、図1-1と共に図10乃至図12を参照して、中栓部材6について説明する。中栓部材6は蓋本体4の閉塞壁10の下面に装着されており、ポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形することで形成される。中栓部材6は平面視及び底面視において円形である連通壁70を備えている。連通壁70は、下面が実質上水平な外周縁部72と、外周縁部72の内周面から径方向内側に向かって上方に緩やかに傾斜した後に下方に急激に屈曲せしめられ、次いで実質上水平に延びる内側壁部74とを備え、内側壁部74の中央には円形の連通開口76が形成されている。連通壁70の上面の外周縁部には、上方に向かって直線状に起立する支持片78が周方向に等角度間隔をおいて複数個(図示の実施形態においては6個)形成されている。
【0020】
図1-1に示すとおり、中栓部材6は、連通壁70の外周縁部72の下面が蓋本体4の閉塞壁10の下面に形成された係合突条28によって支持されることで、蓋本体4の閉塞壁10の下面に装着される。中栓部材6が蓋補単4の閉塞壁10の下面に装着された際には、複数個の支持片78の全ての上端が閉塞壁10の下面に当接することで、中栓部材6が閉塞壁10に対して傾斜することが規制される。
【0021】
次に、図1-1と共に図13乃至図15を参照して逆止弁部材8について説明する。逆止弁部材8は中栓部材6に組み合わされて蓋本体4の閉塞壁10の下面に配置される。逆止弁部材8はポリエチレン、ゴム、エラストマー、シリコン等の如き比較的軟質である合成樹脂を射出成形することで形成され、支持リング82を備えている。支持リング82には下方に向かって垂下する円弧状の垂下片84が周方向に等角度間隔をおいて3つ形成されている。夫々の垂下片84の内周面の下端部には、図15において時計方向に向かって(図13においては反時計方向に向かって)下方に傾斜して延びる帯状の接続片86が形成されている。また、平面視及び底面視において支持リング82の内側であって上下方向に見てこれよりも下方の位置には弁体88が設けられている。接続片86の先端は弁体88の外周面に接続されており、弁体88は接続片86によって上下方向に移動可能な状態でこれによって支持されている。弁体88は平面視及び底面視において円形であり、下端部には逆円錐台形状のシール部90が設けられている。弁体88の上面は実質上水平であるが、下面にはドーム状の空洞部92が形成されている。
【0022】
図1-1に示すとおり、逆止弁部材8は、中栓部材6の内側壁部74の上面に載置された状態で、中栓部材6と共に蓋本体4と組み合される。中栓部材6及び逆止弁部材8が蓋本体4と組み合された状態にあっては、逆止弁部材8における、弁体88のシール部90が中栓部材6の内側壁部74の内周縁部の上面と当接すると共に、支持リング82の上面が閉塞壁10の下面と当接する。このとき、弁体88は図14に示す状態から支持リング82に対して幾分上昇し、弁体88のシール部90及び中栓部材6の内側壁部74の内周縁部は弾性的に相互に密着する(支持リング82の上面及び閉塞壁10の下面も相互に密着する)。これにより、逆止弁部材8は中栓部材6の連通開口76を閉じる。外蓋54が閉位置にあるときには更に、図1-1に示すとおり、閉塞栓60の先端が弁体88の上面と当接してこれを下方に押圧する。
【0023】
図1-1には、複合蓋2が装着される容器100の口頸部も二点鎖線で示されている。容器100は内容物を収容する内側層102とこれを囲繞する外側層104とを備えた積層構造容器であり、内側層102と外側層104との間には層間空間106が規定されている。容器100は、外側層104を形成するための基材(外側プリフォーム)の内側に内側層102を形成するための基材(内側プリフォーム)を予め挿入保持させた状態で、外側プリフォームと内側プリフォームとを同時に延伸ブローすることで形成される。かような容器100の成形方法は周知であり、詳細については例えば特開2018-62146号公報を参照されたい。内側層102及び外側層104の材料は、ブロー成形可能な熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどが好適である。
【0024】
容器100の口頸部は円筒形状である。換言すれば、内側層102及び外側層104の上端部は円筒形状である。外側層104の上端部の外周面には半径方向外方に突出する環状嵌合突条108が形成されており、嵌合突条108と蓋本体4の装着壁12の内周面に形成された被嵌合突条48との嵌合によって、複合蓋2は容器100の口頸部に装着される。嵌合突条108の下方には、容器を運搬する際に使用される公知のサポートリング110も形成されている。外側層104の上端部の内周面には上方を向いた円環形状の肩面112が形成されている。内側層102の上端部には、共に円環形状である上方フランジ114及び下方フランジ116が上下方向に間隔をおいて形成されている。下方フランジ116の下面の外周縁部が外側層104の内周面に形成された肩面112と当接することで、外側層104は内側層102によって上下方向に支持されている。更に、上方フランジ114及び下方フランジ116の外周面は共に外側層104の内周面と対向することで、外側層104に対して内側層102が傾動することは規制されている。そして、上方フランジ114及び下方フランジ116には周方向に間隔をおいて複数個の切欠118が形成されており、この切欠118を介して層間空間106は容器100の外部に連通する。
【0025】
醤油の如き液体内容物が内側層6内に充填された容器100に複合蓋2を装着する際には、容器100の口頸部に複合蓋2の装着壁12を被嵌し、複合蓋2を容器100に対して下方に強制せしめる。複合蓋2は、その装着壁12の内周面に形成された被嵌合突条48が容器100の口頸部の外周面に形成された嵌合突条108を弾性的に乗り越えてこれに嵌合されることで、容器100の口頸部に装着される。複合蓋2が容器100の口頸部に装着されると、蓋本体4の係合壁26及びシール壁30が容器100の内側層102の内部、さらに詳しくは内側層102の内部に進入し、シール壁30の外周面が内側層102の内周面を半径方向外方に弾性的に押圧する(換言すれば、シール壁30は内側層102の内側に圧入される)。これにより、シール壁30の外周面が内側層102の内周面の上端部と密着し、内容物がシール壁30の外側を通過して内側層102(即ち容器100)の外部に流出することが阻止される。
【0026】
複合蓋2が容器100の口頸部に装着されると更に、図1-1及び図16(b)に示されるとおり、容器100の上端(更に詳しくは内側層102の上端)が吸引孔22の下方に位置し、弁部材38が容器100の上端に当接することによって弁部材38が上方に移動され(図16(a)と同(b)とを比較参照されたい)、弁部42の上面は弁座34の下面よりも下方に位置するが環状突出部46の下面が弁座34の上面から上方に離間され、シールが解除される。これにより、例えば複合蓋2が装着された容器100を冷蔵庫から取り出したときなど、環境温度が急上昇して内側層102が膨張した場合には、層間空間106内の空気は吸引孔22を通して外部に放出され、層間空間106が加圧されることが回避され、後述するとおりに外蓋54を開位置に旋回動せしめる際に、内容物が予期せず排出開口13から吹き出してしまうことが防止される。
【0027】
容器の内容物を消費する際には、先ず、外蓋54の鍔部69に指を掛けて外蓋54を上方に強制せしめ、外蓋54の被係止突条68を、蓋本体4の係止突条20から弾性的に離脱させて、外蓋54を図1-2に示す開位置に向けて旋回動せしめる。かくして閉塞壁10が露呈する。その後に、容器100の側面を把持して適宜に傾斜せしめ、容器100を圧搾する。容器100が圧搾されることで層間空間106は加圧され、図16(c)に示すとおり、蓋本体4の延出円筒24内に組み込まれた弁部材38は上方に偏倚される(図16(b)と同(c)とを比較参照されたい)。そして、弁部42の上面が弁座34の下面に密接して、層間空間106内の空気が吸引孔22を通過して外部に流出することが規制され、容器100が更に圧搾されると内側層102は加圧される。
【0028】
このとき、本発明の複合蓋においては、弁部42の上面と弁座34の下面とが面接触して吸引孔22は閉塞されるため弁部42の上面と弁座34の下面との間のシール性は良好であり、容器内圧を充分確実に上昇させることが可能となる。また、上述したとおり、弁部材38が蓋本体4の延出円筒24内に組み込まれる際に、弁部42の上面が損傷することはないことから、弁部42の上面と弁座34の下面との間のシール性は良好となる。
【0029】
そして、内側層102内の圧力が容器100外の圧力よりも所定値以上大きくなると、逆止弁部材8の弁体88が上述した接続片86の弾性力に抗して上方に移動せしめられ、弁体88のシール部90が中栓部材6における連通壁70の内側壁部74の内周縁部の上面から離隔し、中栓部材6の連通開口76が開放される。この際には、弁体88の下面に空洞部92が形成されていることに起因して、内側層102内の圧力によって弁体88を上方へ移動させようとする力が弁体88の下面に効率的に作用し、弁体88は円滑に上方へ移動せしめられる。連通開口76が開放されると、内側層102内に充填された内容物は連通開口76及び排出開口13を順次通過した後に排出筒14から排出される。
【0030】
内容物の排出を停止する際には、容器100の側面の圧搾を解除する。容器100の側面の圧搾が解除されたことで、容器内圧の上昇は解除され、これにより逆止弁部材8の弁体88が接続片86の上述した復元力によって下方に移動せしめられ、シール部90が連通壁70の内側壁部74の内周縁部の上面乃至内周面と密着し、連通開口76が閉じられる。従って、内容物の排出が停止すると共に内側層102は密閉される。容器100の側面の圧搾が解除されると更に、外側層104は自身の有する弾性力により復元、即ち圧搾された状態から圧搾される前の状態に膨張し、これによって外側層104と内側層102との間の層間空間106は負圧となる(層間空間106が減圧される)。そうすると、弁部材38は、図16(c)に示す上方に偏倚された状態から図16(b)に示す状態に降下し、再び下端が容器100の上端に当接し、弁部42の上面は弁座34の下面よりも下方に位置するが環状突出部46の下面は弁座34の上面から上方に離間する。これにより、外気が吸引孔22を通過して層間空間106に流入することで層間空間106は大気圧と等しくなる。そして、層間空間106に充分な外気が取り込まれたことで、内側層102は容器100の側面が圧搾された状態で維持される。本発明の複合蓋2においては、閉塞壁10の上面には吸引孔22の外周縁から上方に延出する延出円筒24が形成されていることに起因して、排出筒14から排出された内用物の一部が閉塞壁10の上面に残留した場合であっても、残留した内容物が吸引孔22に進入することが防止される。
【符号の説明】
【0031】
2:複合蓋
4:蓋本体
6:中栓部材
8:逆止弁部材
10:閉塞壁
12:装着壁
13:排出開口
22:吸引孔
24:延出円筒
34:弁座
38:弁部材
40:円柱部
42:弁部
46:環状突出部
76:連通開口
100:容器
102:内側層
104:外側層
106:層間空間
図1-1】
図1-2】
図2
図3
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