(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】手首装置及びロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 17/00 20060101AFI20240409BHJP
B25J 17/02 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B25J17/00 F
B25J17/02 E
B25J17/02 A
(21)【出願番号】P 2020083805
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】芝田 武士
(72)【発明者】
【氏名】工藤 仁
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-112707(JP,A)
【文献】特開平06-312394(JP,A)
【文献】実開昭61-009295(JP,U)
【文献】特開平11-129183(JP,A)
【文献】特開昭60-186393(JP,A)
【文献】特開昭59-073284(JP,A)
【文献】特開平05-116084(JP,A)
【文献】特開昭60-044291(JP,A)
【文献】特開平09-076187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0259137(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の第1回転軸回りに回転可能にアームに連結された第1要素と、
所定の第2回転軸回りに回転可能に前記第1要素に連結された第2要素と、
前記アームに設けられ、前記第1要素を回転駆動する第1駆動部と、
前記アームに設けられ、前記第2要素を回転駆動する第2駆動部と、
前記アームに設けられ、前記第1駆動部の駆動力を前記第1要素に伝達する第1伝達部と、
前記アームから前記第1要素に亘って設けられ、前記第2駆動部の駆動力を前記第2要素に伝達する第2伝達部とを備え、
前記第2伝達部は、前記アームに
前記第1回転軸回りに回転可能に支持された第1駆動歯車と、前記第1要素に回転可能に支持され且つ前記第1駆動歯車と噛合する第1被動歯車と
、前記第1要素に回転可能に支持され且つ前記第1被動歯車の回転によって回転させられる第2駆動歯車と、前記第2要素に設けられ且つ前記第2駆動歯車と噛合する第2被動歯車とを有し、駆動力の伝達方向における前記第1駆動歯車以降において駆動力の回転数を減速させ
、
前記第1駆動歯車及び前記第1被動歯車は、前記第1要素内に配置され、
前記第1駆動歯車及び前記第1被動歯車、並びに、前記第2駆動歯車及び前記第2被動歯車は、駆動力の回転数を減速させる手首装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の手首装置において、
前記第2被動歯車は、前記第2回転軸と同軸の軸心を有し、前記第2要素に回転不能に設けられている手首装置。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の手首装置において、
前記第1被動歯車と前記第2駆動歯車とは、互いに同軸に且つ回転不能に連結されている手首装置。
【請求項4】
請求項
1乃至
3の何れか1つに記載の手首装置において、
前記第1駆動歯車及び前記第1被動歯車は、互いに平行な回転軸を有し、
前記第2駆動歯車及び前記第2被動歯車は、互いに交差する又はねじれの位置にある回転軸を有する手首装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の手首装置において、
前記第1駆動歯車及び前記第1被動歯車は、平歯車であり、
前記第2駆動歯車及び前記第2被動歯車は、ベベルギヤ又はハイポイドギヤである手首装置。
【請求項6】
請求項
4又は
5に記載の手首装置において、
前記第1駆動歯車及び前記第1被動歯車の減速比は、前記第2駆動歯車及び前記第2被動歯車の減速比よりも大きい手首装置。
【請求項7】
請求項1乃至
6の何れか1つに記載の手首装置において、
前記第2駆動部は、前記アームの長手方向に対して直交する方向に延びる出力軸を有している手首装置。
【請求項8】
請求項1に記載の手首装置において、
前記アームは、前記第1回転軸の方向に間隔を空けて配列された第1支持部及び第2支持部を有し、
前記第1要素は、前記第1支持部と前記第2支持部との間に配置され、
前記第2駆動歯車及び前記第2被動歯車は、前記第1要素内に配置されている手首装置。
【請求項9】
互いに回転可能に連結された複数のリンクを有するアームと、
前記アームに連結された、請求項1乃至
8の何れか1つに記載の手首装置とを備えたロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、手首装置及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロボットのアームに連結される手首装置が知られている。例えば、特許文献1には、第1要素と第2要素とに分割された手首装置が開示されている。第1要素は、アームに回転可能に連結されている。第2要素は、第1要素に回転可能に連結されている。第1要素の駆動源及び第2要素の駆動源は共に、アームに設けられている。そのため、第1要素への駆動力の伝達部は、アームに設けられている。一方、第2要素への駆動力の伝達部は、アームから第1要素に亘って設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述のような手首装置においては、第2要素への伝達部がアームから第1要素に亘って設けられているため、第1要素が回転する際に、第2要素への伝達部がその影響を受ける。つまり、第2要素への伝達部のうち第1要素に設けられた部分が、第1要素と共に回転してしまう。その結果、第1要素の回転によって、第2要素の回転が誘起されてしまう場合がある。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、第1要素の回転によって誘起される第2要素の回転を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された手首装置は、所定の第1回転軸回りに回転可能にアームに連結された第1要素と、所定の第2回転軸回りに回転可能に前記第1要素に連結された第2要素と、前記アームに設けられ、前記第1要素を回転駆動する第1駆動部と、前記アームに設けられ、前記第2要素を回転駆動する第2駆動部と、前記アームに設けられ、前記第1駆動部の駆動力を前記第1要素に伝達する第1伝達部と、前記アームから前記第1要素に亘って設けられ、前記第2駆動部の駆動力を前記第2要素に伝達する第2伝達部とを備え、前記第2伝達部は、前記アームに回転可能に支持された第1駆動歯車を有し、前記駆動力の伝達方向における前記第1駆動歯車以降において駆動力を減速させる。
【0007】
ここに開示されたロボットは、互いに回転可能に連結された複数のリンクを有するアームと、前記アームに連結された前記手首装置とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
前記手首装置によれば、第1要素の回転によって誘起される第2要素の回転を低減することができる。
【0009】
前記ロボットによれば、第1要素の回転によって誘起される第2要素の回転を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、垂直多関節ロボットの側面図である。
【
図2】
図2は、垂直多関節ロボットの平面図である。
【
図3】
図3は、第5軸及び第6軸を含む平面における、第3リンクの第2端部及び手首装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、垂直多関節ロボット100の側面図である。
図2は、垂直多関節ロボット100の平面図である。垂直多関節ロボット(以下、単に「ロボット」ともいう)100は、基台1と、水平方向に回転可能に基台1に連結されたアーム2と、アーム2の先端に設けられた手首装置4とを備えている。尚、
図2では、基台1の図示を省略している。垂直多関節ロボット100は、ロボットの一例である。
【0013】
アーム2は、水平方向に延びる軸回りに互いに回転可能に連結された複数のリンクを有している。具体的には、アーム2は、第1リンク21と、第2リンク22と、第3リンク23とを有している。アーム2は、ベース20をさらに有している。ベース20は、基台1に取り付けられている。各リンクにおいて、長手方向の一端部を第1端部と称し、長手方向の他端部を第2端部と称する。
【0014】
第1リンク21の第1端部21aは、第1関節J1を介して、鉛直方向に延びる第1軸L1回りに回転可能にベース20に連結されている。第2リンク22の第1端部22aは、第2関節J2を介して、水平方向に延びる第2軸L2回りに回転可能に第1リンク21の第2端部21bに連結されている。第3リンク23の第1端部23aは、第3関節J3を介して、水平方向に延びる第3軸L3回りに回転可能に第2リンク22の第2端部22bに連結されている。第3リンク23は、第1端部23aを含む後部23cと、第2端部23bを含む前部23dとに分割されている。前部23dは、第4関節J4を介して、第3リンク23の長手方向に延びる第4軸L4回りに回転可能に後部23cに連結されている。
【0015】
アーム2は、複数のモータによって駆動される。複数のモータには、図示を省略するが、第1リンク21を回転駆動する第1モータと、第2リンク22を回転駆動する第2モータと、第3リンク23の後部23cを回転駆動する第3モータと、第3リンク23の前部23dを回転駆動する第4モータとが含まれている。さらに、アーム2は、各モータの駆動力を伝達する伝達機構を有している。
【0016】
手首装置4は、第5軸L5回りに回転可能にアーム2に連結された第1要素5と、第6軸L6回りに回転可能に第1要素5に連結された第2要素6とを備えている。第2要素6には、ハンド又はガン等のエンドエフェクタが取り付けられる。第5軸L5は、第1回転軸の一例であり、第6軸L6は、第2回転軸の一例である。
【0017】
詳しくは、第1要素5は、第5関節J5を介して、第4軸L4と直交する第5軸L5回りに回転可能に第3リンク23の第2端部23bに連結されている。第2要素6は、第6関節J6を介して、第5軸L5と直交する第6軸L6回りに回転可能に第1要素5に連結されている。第6軸L6は、第4軸L4と一直線上に並んでいる。
【0018】
手首装置4は、アーム2に設けられ、第1要素4を回転駆動する第5モータM5と、アーム2に設けられ、第2要素6を回転駆動する第6モータM6と、アーム2に設けられ、第5モータM5の駆動力を第1要素5に伝達する第5伝達機構T5と、アーム2から第1要素5に亘って設けられ、第6モータM6の駆動力を第2要素6に伝達する第6伝達機構T6とをさらに備えている。第5モータM5及び第6モータM6は、例えば、サーボモータである。第5モータM5は第1駆動部の一例であり、第6モータM6は第2駆動部の一例である。第5伝達機構T5は第1伝達部の一例であり、第6伝達機構T6は第2伝達部の一例である。
【0019】
第3リンク23の前部23dは、中空状に形成され、内部空間を有している。第1要素5は、中空状に形成され、内部空間を有している。第5モータM5、第6モータM6及び第5伝達機構T5は、第3リンク23の前部23dの内部空間に収容されている。第6伝達機構T6は、第3リンク23の前部23dの内部空間及び第1要素5の内部空間に収容されている。第5モータM5の出力軸m5及び第6モータM6の出力軸m6は、アーム2の長手方向(詳しくは、第3リンク23の長手方向)に対して直交する方向に延びている。さらに、第5モータM5の出力軸m5及び第6モータM6の出力軸m6は、第5軸L5と平行に延びている。
【0020】
続いて、手首装置4の構成について詳細に説明する。
図3は、第5軸L5及び第6軸L6を含む平面における、第3リンク23の第2端部23b及び手首装置4の断面図である。
【0021】
第3リンク23の第2端部23bは、二股状に形成されている。詳しくは、第2端部23bには、第1支持部3Aと第2支持部3Bとが設けられている。第1支持部3Aと第2支持部3Bとは、第5軸L5の方向に間隔を空けて配列されている。第1支持部3A及び第2支持部3Bは、第1要素5を第5軸L5回りに回転可能に支持している。
【0022】
第1要素5は、第1支持部3Aを貫通して、第1支持部3Aの内部まで延びる第1シャフト51を有している。第1シャフト51には、歯車52が設けられている。歯車52は、平歯車である。第1シャフト51の軸心及び歯車52の軸心は、第5軸L5と一致している。第1シャフト51は、第1支持部3Aに設けられた第1ベアリング31によって、第5軸L5回りに回転可能に支持されている。歯車52は、第1支持部3Aの内部に配置されている。
【0023】
このようにして、第1要素5は、第5軸L5回りに回転可能に第1支持部3Aによって支持されている。
【0024】
第1支持部3Aの内部には、第5伝達機構T5が設けられている。第5伝達機構T5は、例えば、歯車列である。歯車52は、第5伝達機構T5の歯車列の1つの歯車である。第5モータM5の駆動力は、第5伝達機構T5を介して歯車52へ伝達する。これにより、第1要素5は、第1支持部3Aに対して第5軸L5回りに回転する。
【0025】
第1要素5は、第2要素6が取り付けられる連結部53を有している。連結部53は、第6軸L6を軸心とする略円筒状に形成されている。
【0026】
第2要素6は、第6軸L6を軸心として延びる略円筒状に形成されている。第2要素6は、連結部53において第1要素5を貫通して、第1要素5の内部まで延びている。第2要素6のうち、第1要素5の外部に露出する端部には、フランジ61が設けられている。第2要素6は、第1要素5に設けられた第1ベアリング54によって、第6軸L6回りに回転可能に支持されている。
【0027】
第6伝達機構T6は、第3リンク23から第1要素5に亘って設けられている。第6伝達機構T6は、アーム2に回転可能に支持された第1歯車84と、第1要素5に回転可能に支持され且つ第1歯車84と噛合する第2歯車85とを有し、駆動力の伝達方向における第1歯車84以降において駆動力の回転数を複数回減速させる。第1歯車84は第1駆動歯車の一例であり、第2歯車85は第1被動歯車の一例である。
【0028】
第6伝達機構T6は、第1要素5に回転可能に支持され且つ第2歯車85の回転によって回転させられる第3歯車86と、第2要素6に設けられ且つ第3歯車86と噛合する歯車62とをさらに有している。第1歯車84及び第2歯車85、並びに、第3歯車86及び歯車62は、駆動力の回転数を減速させる。
【0029】
第6伝達機構T6は、第1プーリ(図示省略)、第2プーリ82及びタイミングベルト83をさらに有している。
【0030】
第1プーリは、第6モータM6の出力軸m6に設けられている。タイミングベルト83は、第1プーリ及び第2プーリ82に券回されている。第1プーリ、第2プーリ82及びタイミングベルト83は、第3リンク23の内部に配置されている。第2プーリ82は、第2支持部3Bの内部に配置されている。
【0031】
第2プーリ82には、シャフト87を介して第1歯車84が同軸に連結されている。第1歯車84は、平歯車である。第2プーリ82の軸心、第1歯車84の軸心及びシャフト87の軸心は、第5軸L5と一致している。第2プーリ82及び第1歯車84とは、第2支持部3Bに設けられた第2ベアリング32及び第3ベアリング33を介して、第5軸L5回りに回転可能に支持されている。第1歯車84は、第1要素5の内部に配置されている。
【0032】
第2歯車85は、第1歯車84と噛合する。第2歯車85は、平歯車である。第2歯車85と第3歯車86とは、互いに同軸に且つ回転不能に連結されている。第3歯車86は、ピニオンギヤである。第2歯車85及び第3歯車86は、第1要素5に設けられた第2ベアリング55及び第3ベアリング56を介して、第5軸L5と平行な軸L7回りに回転可能に支持されている。つまり、第1歯車84及び第2歯車85は、互いに平行な回転軸を有している。
【0033】
歯車62は、第6軸L6と同軸の軸心を有し、第2要素6に回転不能に設けられている。詳しくは、歯車62は、第2要素6のうち、第1要素5の内部における端部に設けられている。歯車62は、リングギヤである。
【0034】
第3歯車86は、第2要素6の歯車62と噛合している。第3歯車86及び歯車62は、ハイポイドギヤである。つまり、第3歯車86及び歯車62は、互いにねじれの位置にある回転軸を有している。
【0035】
このように構成された第6伝達機構T6において、第6モータM6の駆動力は、第1プーリ、タイミングベルト83、第2プーリ82、第1歯車84、第2歯車85、第3歯車86、歯車62の順に伝達される。これにより、第2要素6は、第1要素5に対して第6軸L6回りに回転する。このとき、第6モータM6の駆動力の回転数は、タイミングベルト83を介して第1プーリ81から第2プーリ82へ伝わるときに減速され、第1歯車84から第2歯車85へ伝わるときに減速され、第3歯車86から歯車62へ伝わるときに減速される。第1歯車84及び第2歯車85の減速比は、第3歯車86及び歯車62の減速比よりも大きい。第3歯車86及び歯車62の減速比は、第1プーリ81及び第2プーリ82の減速比よりも大きい。
【0036】
第6伝達機構T6のうち第3リンク23の側から第1要素5の側へ駆動力を伝達する第1歯車84の軸心は、第1要素5の回転軸である第5軸L5と一致する。そのため、第1要素5が第5軸L5回りに回転する際に、第1歯車84と第1要素5に支持される第2歯車85との軸間距離が一定に維持される。つまり、第3リンク23に支持される第1歯車84が第1要素5の内部に配置されていても、第1要素5は、第1歯車84と第2歯車85との噛合を維持した状態で第5軸L5回りに回転することができる。
【0037】
ただし、第1要素5が回転すると、第2歯車85が第5軸L5回りに回転する。仮に、第1歯車84が回転しない場合には、第2歯車85は、第1歯車84に噛合した状態で第1歯車84回りに回転するので、第2歯車85は、軸L7回りに回転することになる。第2歯車85が軸L7回りに回転すると、第2要素6が第6軸L6回りに回転してしまう。以下、この第1要素5の回転によって誘起される第2要素6の回転を「誘起回転」と称する。
【0038】
このように構成されたアーム2においては、第1要素5の回転軸である第5軸L5と同軸に配置された第1歯車84よりも、第6モータM6の駆動力の伝達方向における後ろ側において、駆動力の回転数が2回減速される。具体的には、駆動力の回転数は、第1歯車84から第2歯車85へ伝わるときに1回減速され、第3歯車86から歯車62へ伝わるときにもう1回減速される。これにより、第1要素L5が回転する際に生じる第1歯車84と第2歯車85との相対的な回転は、大きく低減されて、第2要素6に伝わる。その結果、第2要素6の誘起回転を低減することができる。
【0039】
尚、第6モータM6は、第1要素5が回転する際に、第2要素6の誘起回転を打ち消すように第1歯車84を回転させる。つまり、第6モータM6は、第5軸L5回りの第2歯車85の回転に合わせて、第2歯車85が軸L7回りに回転しないように第1歯車84を回転させる。これにより、第6要素6の誘起回転が低減又は打ち消される。前述のように第1歯車84から歯車62までの間の減速比を大きくすることによって、第2要素6の誘起回転を打ち消す際の第2要素6の位置精度を向上させることができる。つまり、第6伝達機構T6においては、歯車のガタつき等によって誤差が生じ得る。第2要素6の誘起回転を打ち消すように第1歯車84を回転させる際にもこの誤差は生じ得る。しかし、第1歯車84と歯車62との間の減速比が大きいので、第2要素6へ伝わる誤差が低減される。その結果、第2要素6の位置精度が向上する。
【0040】
以上のように、手首装置4は、所定の第5軸L5(第1回転軸)回りに回転可能にアーム2に連結された第1要素5と、所定の第6軸L6(第2回転軸)回りに回転可能に第1要素5に連結された第2要素6と、アーム2に設けられ、第1要素4を回転駆動する第5モータM5(第1駆動部)と、アーム2に設けられ、第2要素6を回転駆動する第6モータM6(第2駆動部)と、アーム2に設けられ、第5モータM5の駆動力を第1要素5に伝達する第5伝達機構T5(第1伝達部)と、アーム2から第1要素5に亘って設けられ、第6モータM6の駆動力を第2要素6に伝達する第6伝達機構T6(第2伝達部)とを備え、第6伝達機構T6は、アーム2に回転可能に支持された第1歯車84(第1駆動歯車)と、第1要素5に回転可能に支持され且つ第1歯車84と噛合する第2歯車85(第1被動歯車)とを有し、駆動力の伝達方向における第1歯車84以降において駆動力の回転数を減速させる。
【0041】
また、ロボット100は、互いに回転可能に連結された複数のリンク、例えば、第1リンク21、第2リンク22及び第3リンク23を有するアーム2と、アーム2に連結された手首装置4とを備えている。
【0042】
これらの構成によれば、第2要素6を回転駆動する第6モータM6がアーム2に設けられ、第6モータM6の駆動力を第2要素6に伝達する第6伝達機構T6がアーム2から第1要素5に亘って設けられているので、第1要素5が回転する際に、第6伝達機構T6のうち第1要素5に設けられた部分が第1要素5と共に回転する。具体的には、第6伝達機構T6において第1歯車84がアーム2に回転可能に支持され、第2歯車85が第1要素5に回転可能に支持されているので、第6伝達機構T6のうち第2歯車85以降の部分が第1要素5と共に回転し得る。ここで、第6伝達機構T6は、第1歯車84以降(即ち、第1歯車84と第2歯車85との噛合を含み得る)において駆動力の回転数を減速させる。そのため、第1要素5の回転に伴って、第6伝達機構T6のうち第2歯車85以降の部分が回転したとしても、その回転が第2要素6に与える影響は、第1歯車84以降の減速比に応じて低減される。その結果、第2要素6の誘起回転を低減することができる。
【0043】
第1歯車84及び第2歯車85は、駆動力の回転数を減速させる。
【0044】
この構成によれば、第1要素5の回転に伴って、第2歯車85が第1歯車84回りに回転しても、それに起因する第2歯車85のその回転軸、即ち、軸L7回りの回転が低減される。第1要素5の回転によって引き起こされる、軸L7回りの第2歯車85の回転が第2要素の誘起回転の原因である。この軸L7回りの第2歯車85の回転が低減されるので、第2要素6の誘起回転を効果的に低減することができる。
【0045】
第6伝達機構T6は、駆動力の伝達方向における第1歯車84以降において駆動力の回転数を複数回減速させる。
【0046】
この構成によれば、第6伝達機構T6は、第1歯車84以降の減速比が大きい。そのため、第1要素5の回転に伴って、第6伝達機構T6のうち第2歯車85以降の部分が回転したとしても、その回転が第2要素6に与える影響は、第1歯車84以降の減速比に応じて大きく低減される。その結果、第2要素6の誘起回転をより一層低減することができる。
【0047】
また、第6伝達機構T6は、第1要素5に回転可能に支持され且つ第2歯車85の回転によって回転させられる第3歯車86と、第2要素6に設けられ且つ第3歯車86と噛合する歯車62とをさらに有し、第1歯車84及び第2歯車85、並びに、第3歯車86及び歯車62は、駆動力の回転数を減速させる。
【0048】
この構成によれば、駆動力の回転数は、第1歯車84及び第2歯車85と、第3歯車86及び歯車62とで少なくとも2回減速される。
【0049】
さらに、第1歯車84は、第5軸L5回りに回転可能にアーム2に支持されている。
【0050】
この構成によれば、第1要素5が第5軸L5回りに回転する際に、第1歯車84と第2歯車85との軸間距離が一定に維持される。そのため、第1歯車84と第2歯車85とが適切に噛合した状態で、第1要素5が第5軸L5回りに回転することができる。
【0051】
歯車62は、第6軸L6と同軸の軸心を有し、第2要素6に回転不能に設けられている。
【0052】
この構成によれば、第6モータM6の駆動力は、最後に回転数が減速されて第2要素6に伝達される。そのため、駆動力が第6伝達機構T6を伝達する間に生じた誤差は、最終的に低減されて第2要素6に伝達される。その結果、第2要素6の位置精度を向上させることができる。
【0053】
第2歯車85と第3歯車86とは、互いに同軸に且つ回転不能に連結されている。
【0054】
この構成によれば、第1歯車84と歯車62との間には、第2歯車85及び第3歯車86以外の歯車が存在しない。そのため、第1歯車84以降において駆動力の回転数を複数回減速させる構成をできる限り少ない歯車で実現することができる。その結果、構成が簡略化されると共に、駆動力の伝達時に発生する誤差を低減することができる。
【0055】
具体的には、第1歯車84及び第2歯車85は、互いに平行な回転軸を有し、第3歯車86及び歯車62は、互いにねじれの位置にある回転軸を有している。
【0056】
この構成によれば、第6モータM6の駆動力を第2要素6へ伝える際に、駆動力の回転軸を柔軟に変更して伝えることができる。
【0057】
より具体的には、第1歯車84及び第2歯車85は、平歯車であり、第3歯車86及び歯車62は、ハイポイドギヤである。
【0058】
そして、第1歯車84及び第2歯車85の減速比は、第3歯車86及び歯車62の減速比よりも大きい。
【0059】
この構成によれば、ハイポイドギヤに比べて平歯車の構成は簡易なので、より大きな減速比の歯車対を容易に実現することができる。
【0060】
また、第6モータM6は、アーム2の長手方向に対して直交する方向に延びる出力軸m6を有している。
【0061】
この構成によれば、第6モータM6の出力軸m6を、第1要素5の回転軸である第5軸L5と平行に配置することができる。第5軸L5は、第1歯車84の回転軸でもある。つまり、第6モータM6の出力軸m6と第1歯車84の回転軸とを平行に配置することができる。その結果、第6モータM6の駆動力を回転軸の方向を変えることなく、歯車やプーリを介して簡単な構成で第1歯車84まで伝達することができる。
【0062】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0063】
例えば、第5伝達機構T5及び第6伝達機構T6は、前述の構成に限定されるものではない。第5伝達機構T5は、アームに設けられ、第1駆動部の駆動力を第1要素に伝達する限りは、任意の構成を採用することができる。第6伝達機構T6は、アームから第1要素に亘って設けられ、第2駆動部の駆動力を第2要素に伝達する限りは、任意の構成を採用することができる。例えば、第5伝達機構T5は、歯車列に限定されず、プーリ及びタイミングベルトによって駆動力をベルト伝達する構成であってもよく、プーリ及びタイミングベルトと歯車とを組み合わせた構成であってもよい。第6伝達機構T6は、プーリ及びタイミングベルトと歯車とを組み合わせた構成に限定されず、歯車列だけの構成であってもよい。
【0064】
また、第1歯車84と第2歯車85とは、第1要素5内で噛合しているが、これに限定されるものではない。第1歯車84と第2歯車85とは、アーム2の内部(例えば、第3リンク23の内部)で噛合していてもよい。その場合、第1要素5の回転によって第2歯車85が第5軸L5回りに回転できるように、アーム2には第2歯車85との干渉を防止できる大きさの開口が形成される。あるいは、第1歯車84と第2歯車85とは、アーム2と第1要素5との間の隙間(即ち、アーム2の外部であって且つ第1要素5の外部)において噛合していてもよい。
【0065】
第1歯車84及び第2歯車85は、平歯車に限定されない。第1歯車84及び第2歯車85は、ベベルギヤ又はハイポイドギヤ等であってもよい。
【0066】
第3歯車86及び歯車62は、ハイポイドギヤに限定されない。第3歯車86及び歯車62は、ベベルギヤであってもよい。すなわち、第3歯車86及び歯車62は、互いに交差する回転軸を有していてもよい。あるいは、第3歯車86及び歯車62は、平歯車であってもよい。
【0067】
第1歯車84と歯車62との間には、第2歯車85及び第3歯車86以外の歯車が設けられていてもよい。
【0068】
第6モータM6の駆動力の伝達方向における第1歯車84以降において、駆動力の回転数は、複数回減速されず、1回だけ減速されてもよい。例えば、第1歯車84及び第2歯車85によって駆動力が減速される場合には、第3歯車86及び歯車62は駆動力を等速で又は増速させて伝達してもよい。あるいは、第3歯車86及び歯車62によって駆動力が減速される場合には、第1歯車84及び第2歯車85は駆動力を等速で又は増速させて伝達してもよい。
【0069】
第5モータM5の出力軸m5及び第6モータM6の出力軸m6は、第5軸L5と平行でなくてもよい。例えば、第5モータM5の出力軸m5及び第6モータM6の出力軸m6は、第3リンク23の長手方向と平行であってもよい。
【0070】
アーム2の構成は、前述の構成に限定されない。例えば、アーム2のリンクの個数は、3個に限定されない。リンクは、1個でもよいし、2個でも、4個以上であってもよい。
【0071】
また、ロボット100は、垂直多関節ロボットに限定されない。例えば、ロット100は、水平多関節ロボットであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
100 垂直多関節ロボット(ロボット)
2 アーム
21 第1リンク(リンク)
22 第2リンク(リンク)
23 第3リンク(リンク)
4 手首装置
5 第1要素
6 第2要素
62 歯車(第2被動歯車)
84 第1歯車(第1駆動歯車)
85 第2歯車(第1被動歯車)
86 第3歯車(第2駆動歯車)
L5 第5軸(第1回転軸)
L6 第6軸(第2回転軸)
M5 第5モータ(第1駆動部)
M6 第6モータ(第2駆動部)
T5 第5伝達機構(第1伝達部)
T6 第6伝達機構(第2伝達部)