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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】液晶ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/664 20060101AFI20240409BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240409BHJP
   C08L 67/03 20060101ALI20240409BHJP
   C09K 19/06 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08G63/664
C08K3/013
C08L67/03
C09K19/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020089693
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183678
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】齋尾 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 久成
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 尚矢
(72)【発明者】
【氏名】米谷 起一
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/068291(WO,A1)
【文献】Edith MATHIOWITZ et al.,“Morphological characterization of bioerodible polymers. 1. Crystallinity of polyanhydride copolymers”,Macromolecules,1990年06月,Vol. 23, No. 13,p.3212-3218,DOI: 10.1021/ma00215a003
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-63/91
C08K 3/013
C08L 67/00ー67/08
C09K 19/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
[式中、Arは2価の芳香族基であり、nは2~18の整数である]
で表される化合物ならびにそれらの反応性誘導体からなる群から選択される1種以上の重合性化合物(A)に由来する構成単位と、重合性単量体(B)に由来する構成単位とから構成される液晶ポリマーであって、重合性化合物(A)に由来する構成単位の合計量が、液晶ポリマーを構成する全構成単位100モル%に対して0.01~7モル%であり、かつ、
重合性単量体(B)は4-ヒドロキシ安息香酸および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸である、液晶ポリマー。
【請求項2】
式(1)
【化2】
[式中、Arは2価の芳香族基であり、nは2~18の整数である]
で表される化合物ならびにそれらの反応性誘導体からなる群から選択される1種以上の重合性化合物(A)に由来する構成単位と、重合性単量体(B)に由来する構成単位とから構成される液晶ポリマーであって、重合性化合物(A)に由来する構成単位の合計量が、液晶ポリマーを構成する全構成単位100モル%に対して0.01~7モル%であり、かつ、
重合性単量体(B)は芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジオールであり、ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸は4-ヒドロキシ安息香酸および/または6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸であり、芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸および/または2,6-ナフタレンジカルボン酸であり、芳香族ジオールはハイドロキノンおよび/または4,4’-ジヒドロキシビフェニルである、液晶ポリマー。
【請求項3】
Arは式(2)または式(3)
【化3】
で表される芳香族基である、請求項1または2に記載の液晶ポリマー。
【請求項4】
Arは式(2)で表される芳香族基であり、nは6である、請求項に記載の液晶ポリマー。
【請求項5】
液晶ポリマーを構成する全構成単位100モル%に対して、重合性化合物(A)に由来する構成単位が0.01~7モル%、4-ヒドロキシ安息香酸に由来する構成単位が15~36モル%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位が60~82モル%である、請求項に記載の液晶ポリマー。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の液晶ポリマーと無機または有機充填材とを含む液晶ポリマー組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の液晶ポリマーまたは請求項に記載の液晶ポリマー組成物を加工してなる、成形品、フィルムまたは繊維からなる物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械強度に優れた液晶ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリマーは、耐熱性、剛性等の機械物性、耐薬品性、寸法精度等に優れているため、成形品用途のみならず、繊維やフィルムといった各種用途にその使用が拡大しつつある。特に電気・電子部品の高集積度化、小型化、薄肉化、低背化等が急速に進んでおり0.5mm以下の非常に薄い肉厚部が形成されるケースが多く、液晶ポリマーの優れた成形性、すなわち、流動性が良好であり、かつバリが出ないという他のポリマーにない特徴を活かして、その使用量が大幅に増大している。
【0003】
近年、高度情報化社会の発展とともに、パーソナル・コンピューターや携帯電話等の情報・通信分野において、情報通信機器の伝送情報量および伝達速度の爆発的な増加に伴い、マイクロ波およびミリ波の高周波領域において適応できる高性能な高周波用電子部品のニーズがより強くなってきている。
【0004】
一方、情報処理等に伴う高周波・大容量の電気信号の送受信等により、電子回路基板は発熱する傾向にあるが、発熱に伴う消費電力量は無視できないものとなりつつある。
【0005】
一般に電子回路基板の成形材料の誘電正接が小さいほど発熱量が減少し、発熱に伴う消費電力量を抑えることができる。この点に着目した例として、低誘電正接の成形材料として液晶性芳香族ポリエステルを用いることが知られている。例えば、特許文献1には、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位とからなり、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位の含有割合がおよそ20~35モル%の組成を有する液晶性芳香族ポリエステルが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4363057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の液晶性芳香族ポリエステルは、機械強度、特にIzod衝撃強度に劣るものであり、機械的強度については更なる改善が求められている。
【0008】
本発明の目的は、Izod衝撃強度などの機械強度が改善された液晶ポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構造を有するジカルボン酸成分を他の重合性単量体と共重合させることによって、機械強度が向上した成形品等を形成し得る液晶ポリマーが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕式(1)
【化1】
[式中、Arは2価の芳香族基であり、nは2~18の整数である]
で表される化合物ならびにそれらの反応性誘導体からなる群から選択される1種以上の重合性化合物(A)に由来する構成単位と、重合性単量体(B)に由来する構成単位とを含む液晶ポリマーであって、重合性化合物(A)に由来する構成単位の合計量が、液晶ポリマーを構成する全構成単位100モル%に対して0.01~7モル%である、液晶ポリマー。
〔2〕Arは式(2)または式(3)
【化2】
で表される芳香族基である、〔1〕に記載の液晶ポリマー。
〔3〕Arは式(2)で表される芳香族基であり、nは6である、〔1〕または〔2〕に記載の液晶ポリマー。
〔4〕重合性単量体(B)は、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸からなる群から選択される1種以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の液晶ポリマー。
〔5〕重合性単量体(B)は芳香族ヒドロキシカルボン酸を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の液晶ポリマー。
〔6〕重合性単量体(B)は、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジオールを含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の液晶ポリマー。
〔7〕芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸および/または6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸である、〔4〕~〔6〕のいずれかに記載の液晶ポリマー。
〔8〕芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される1種以上である、〔4〕~〔7〕のいずれかに記載の液晶ポリマー。
〔9〕芳香族ジオールは、ハイドロキノン、4,4'-ジヒドロキシビフェニルおよび2,6-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される1種以上である、〔4〕~〔8〕のいずれかに記載の液晶ポリマー。
〔10〕重合性単量体(B)は、4-ヒドロキシ安息香酸および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の液晶ポリマー。
〔11〕液晶ポリマーを構成する全構成単位100モル%に対して、重合性化合物(A)に由来する構成単位が0.01~7モル%、4-ヒドロキシ安息香酸に由来する構成単位が15~40モル%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位が60~85モル%である、〔10〕に記載の液晶ポリマー。
〔12〕〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の液晶ポリマーと無機または有機充填材とを含む液晶ポリマー組成物。
〔13〕〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の液晶ポリマーまたは〔12〕に記載の液晶ポリマー組成物を加工してなる、成形品、フィルムまたは繊維からなる物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶ポリマーによると、Izod衝撃強度などの機械強度が改善された成形品等の物品を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液晶ポリマーは、好適には、異方性溶融相を形成するポリエステルまたはポリエステルアミドである。これらは、通常、当該技術分野においてサーモトロピック液晶ポリエステル又はサーモトロピック液晶ポリエステルアミドと呼ばれるものであるが、特に限定されない。
【0013】
本発明の液晶ポリマーは、式(1)で表される化合物ならびにそれらの反応性誘導体からなる群から選択される1種以上の重合性化合物(A)に由来する構成単位の合計量を、液晶ポリマーを構成する全構成単位100モル%に対して0.01~7モル%有する。
【0014】
Arは、式(2)または式(3)
【化3】
で表される化合物であるのが好ましく、式(2)で表される化合物であるのがより好ましい。
【0015】
nは2~18の整数であり、好ましくは2~10であり、より好ましくは2~6であり、特に好ましくは6である。
【0016】
式(1)で表される化合物としては、1,2-ビス(4-カルボキシフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-カルボキシフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ペンタン、1,6-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ヘキサン、1,7-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ヘプタン、1,8-ビス(4-カルボキシフェノキシ)オクタン、1,9-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ノナン、1,10-ビス(4-カルボキシフェノキシ)デカン、6,6’-(エチレンジオキシ)ビス-2-ナフトエ酸、6,6’-(プロピレンジオキシ)ビス-2-ナフトエ酸、6,6’-(ブテンジオキシ)ビス-2-ナフトエ酸、6,6’-(ペンテンジオキシ)ビス-2-ナフトエ酸、6,6’-(ヘキセンジオキシ)ビス-2-ナフトエ酸、6,6’-(ヘプテンジオキシ)ビス-2-ナフトエ酸、6,6’-(オクテンジオキシ)ビス-2-ナフトエ酸、6,6’-(ノネンジオキシ)ビス-2-ナフトエ酸、6,6’-(デセンジオキシ)ビス-2-ナフトエ酸などが挙げられる。
【0017】
これらの中でも、より機械強度の改善効果が高いことから、式(4)で表される1,6-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ヘキサン、式(5)で表される1,2-(4-カルボキシフェノキシ)エタンおよび式(6)で表される6,6’-(エチレンジオキシ)ビス-2-ナフトエ酸が好ましく、特に1,6-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ヘキサンがより好ましい。
【化4】
【化5】
【化6】
【0018】
本発明の液晶ポリマーを得るために用いる、式(1)で表される化合物およびそれらの反応性誘導体からなる群から選択される1種以上の重合性化合物(A)の合計量は、液晶ポリマーに含まれる重合性化合物(A)に由来する構成単位の合計量に相当する。用いる重合性化合物(A)の合計量、すなわち液晶ポリマーに含まれる重合性化合物(A)に由来する構成単位の合計量は、用いる重合性化合物および重合性単量体の合計量、すなわち液晶ポリマーを構成する全構成単位100モル%に対して、0.01~7モル%であり、好ましくは0.05~5モル%であり、より好ましくは0.07~4モル%であり、さらに好ましくは0.1~3モル%である。重合性化合物(A)に由来する構成単位の合計量が液晶ポリマーを構成する全構成単位100モル%に対して7モル%を超えると、耐熱性及び機械物性が低下する。重合性化合物(A)に由来する構成単位の合計量が液晶ポリマーを構成する全構成単位100モル%に対して0.01モル%未満であると、Izod衝撃強度をはじめとする機械的性質の改善効果が得られない。
【0019】
本発明の液晶ポリマーを得るために用いる重合性単量体(B)としては、従来の液晶ポリマーに用いられる単量体、例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。これらの化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、ヒドロキシ基またはアミノ基を有する単量体を少なくとも1種用いることが望ましい。
【0020】
本発明の液晶ポリマーを得るために用いる重合性単量体(B)は、前記化合物の1種または2種以上の複数個が互いに結合してなるオリゴマーであってもよい。なお、本明細書および特許請求の範囲における、重合性単量体(B)の量については、重合性単量体がオリゴマーである場合であっても、当該オリゴマーを構成する単量体ユニットに基づいて算出するものとする。
【0021】
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、7-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、7-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、4'-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3'-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4'-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、4-ヒドロキシ安息香酸もしくは6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸またはその組み合わせが、得られる液晶ポリマーの耐熱性および機械強度ならびに融点を調節し易いという点でより好ましい。
【0022】
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ジカルボキシビフェニル、3,4'-ジカルボキシビフェニルおよび4,4'-ジカルボキシターフェニル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにそれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される1種以上が好適に用いられる。
【0024】
芳香族ジオールの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、3,3'-ジヒドロキシビフェニル、3,4'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジヒドロキシビフェノールエーテル、および2,2'-ジヒドロキシビナフチル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、ハイドロキノン、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、2,6-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される1種以上が好適に用いられ、特に重合時の反応性に優れる点において、ハイドロキノン、4,4'-ジヒドロキシビフェニルが好ましい。
【0026】
芳香族アミノカルボン酸の具体例としては、4-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、6-アミノ-2-ナフトエ酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0027】
芳香族ヒドロキシアミンの具体例としては、4-アミノフェノール、N-メチル-4-アミノフェノール、3-アミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、4-アミノ-1-ナフトール、4-アミノ-4'-ヒドロキシビフェニル、4-アミノ-4'-ヒドロキシビフェニルエーテル、4-アミノ-4'-ヒドロキシビフェニルメタン、4-アミノ-4'-ヒドロキシビフェニルスルフィドおよび2,2'-ジアミノビナフチル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、4-アミノフェノールが、得られる液晶ポリマーの耐熱性および機械強度のバランスをとりやすいことから好ましく用いられる。
【0028】
芳香族ジアミンの具体例としては、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのアミド形成性誘導体が挙げられる。
【0029】
脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ならびにそれらのアシル化物が挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどの脂肪族ジオール単位を含有するポリマーを、前記の芳香族オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などと反応させてもよい。
【0030】
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸が挙げられる。
【0031】
重合性単量体(B)として、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンおよび脂肪族ジオールからなる群から選択される2種以上の化合物を併用することは、本発明の好ましい態様の一つである。
【0032】
これら重合性単量体のうち、芳香族ヒドロキシカルボン酸を含む組合せ、ならびに芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジオールを含む組合せが好適に用いられる。
【0033】
これらの中でも、重合性単量体(B)が4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸である組合せ、ならびに4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジオールの組合せが特に好適に用いられる。
【0034】
本発明の液晶ポリマーに用いる重合性単量体(B)の具体例としては、例えば下記の組み合わせからなるものが挙げられる:
1)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸共重合体
2)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4,4'-ジヒドロキシビフェニル共重合体
3)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'-ジヒドロキシビフェニル共重合体
4)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'-ジヒドロキシビフェニル/ハイドロキノン共重合体
5)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/ハイドロキノン共重合体
6)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4,4'-ジヒドロキシビフェニル/ハイドロキノン共重合体
7)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン共重合体
8)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4'-ジヒドロキシビフェニル共重合体
9)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4'-ジヒドロキシビフェニル共重合体
10)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン共重合体
11)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン/4,4'-ジヒドロキシビフェニル共重合体
12)4-ヒドロキシ安息香酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/4,4'-ジヒドロキシビフェニル共重合体
13)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン共重合体
14)4-ヒドロキシ安息香酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン共重合体
15)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン共重合体
16)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン/4,4'-ジヒドロキシビフェニル共重合体
17)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4-アミノフェノール共重合体
18)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4-アミノフェノール共重合体
19)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4-アミノフェノール共重合体
20)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4,4'-ジヒドロキシビフェニル /4-アミノフェノール共重合体
21)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/エチレングリコール共重合体
22)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4,4'-ジヒドロキシビフェニル/エチレングリコール共重合体
23)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/エチレングリコール共重合体
24)4-ヒドロキシ安息香酸/6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4'-ジヒドロキシビフェニル/エチレングリコール共重合体
25)4-ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6-ナフタレンジカルボン酸/4,4'-ジヒドロキシビフェニル共重合体。
【0035】
上記の液晶ポリマーは単独で用いてもよく、2種以上をブレンドして用いて本発明の液晶ポリマーを形成してもよい。
【0036】
本発明の好適な液晶ポリマーにおいて、重合性単量体(B)が4-ヒドロキシ安息香酸および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸である場合、以下の2つの態様がより好適である。
【0037】
(I)液晶ポリマーを構成する全構成単位100モル%に対して、重合性化合物(A)に由来する構成単位が0.01~7モル%、4-ヒドロキシ安息香酸に由来する構成単位が15~40モル%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸重合性単量体に由来する構成単位が60~85モル%である液晶ポリマー。
【0038】
4-ヒドロキシ安息香酸に由来する構成単位は、好ましくは18~36モル%、より好ましくは20~34モル%、さらに好ましくは21~32モル%、特に好ましくは22~30モル%である。
【0039】
また、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位は、好ましくは64~82モル%、より好ましくは66~80モル%、さらに好ましくは68~79モル%、特に好ましくは70~78モル%である。
【0040】
(II)液晶ポリマーを構成する全構成単位100モル%に対して、重合性化合物(A)に由来する構成単位が0.01~7モル%、4-ヒドロキシ安息香酸に由来する構成単位が50~90モル%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸重合性単量体に由来する構成単位が10~50モル%である液晶ポリマー。
【0041】
4-ヒドロキシ安息香酸に由来する構成単位は、好ましくは60~88モル%、より好ましくは65~85モル%、さらに好ましくは70~80モル%である。
【0042】
また、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位は、好ましくは12~40モル%、より好ましくは15~35モル%、さらに好ましくは20~30モル%である。
【0043】
以下、本発明の液晶ポリマーの製造方法について説明する。
【0044】
本発明の液晶ポリマーは、式(1)で表される化合物およびそれらの反応性誘導体からなる群から選択される1種以上の重合性化合物(A)と、重合性単量体(B)とを重合させて成る液晶ポリマーである。本発明の液晶ポリマーを製造する方法に特に制限はなく、ジオール化合物およびそれらの反応性誘導体からなる群から選択される重合性化合物(A)ならびに重合性単量体(B)を、エステル結合またはアミド結合を形成させる公知の重縮合方法、たとえば溶融アシドリシス法、スラリー重合法などに供することにより本発明の液晶ポリマーを得ることができる。
【0045】
溶融アシドリシス法は、本発明の液晶ポリマーを製造するのに好ましい方法である。この方法は、最初に重合性化合物および/または重合性単量体を加熱して反応物質の溶融溶液を形成し、次いで重縮合反応を続けて溶融ポリマーを得るものである。なお、縮合の最終段階で副生する揮発物(たとえば酢酸、水など)の除去を容易にするために真空を適用してもよい。
【0046】
スラリー重合法とは、熱交換流体の存在下で重合性化合物および/または重合性単量体を反応させる方法であって、固体生成物は熱交換媒質中に懸濁した状態で得られる。
【0047】
溶融アシドリシス法およびスラリー重合法のいずれの場合においても、液晶ポリマーを製造する際に使用される重合性化合物(A)ならびに重合性単量体(B)は、いずれも、常温において、ヒドロキシル基および/またはアミノ基をアシル化した変性形態、すなわち低級アシル化物として反応に供することもできる。
【0048】
低級アシル基は炭素原子数2~5のものが好ましく、炭素原子数2または3のものがより好ましい。特に好ましくは前記重合性化合物および/または重合性単量体のアセチル化物を反応に用いる方法が挙げられる。
【0049】
重合性化合物および/または重合性単量体の低級アシル化物は、別途アシル化して予め合成したものを用いてもよいし、液晶ポリマーの製造時に重合性化合物および/または重合性単量体に無水酢酸等のアシル化剤を加えて反応系内で生成せしめることもできる。
【0050】
溶融アシドリシス法またはスラリー重合法のいずれの場合においても、重合反応は、温度150~400℃、好ましくは250~370℃で、常圧および/または減圧下で行うのがよく、必要に応じて触媒を用いてもよい。
【0051】
触媒の具体例としては、ジアルキルスズオキシド(たとえばジブチルスズオキシド)、ジアリールスズオキシドなどの有機スズ化合物;二酸化チタン;三酸化アンチモン;アルコキシチタンシリケート、チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物;カルボン酸のアルカリおよびアルカリ土類金属塩(たとえば酢酸カリウム);ルイス酸(たとえば三フッ化硼素)、ハロゲン化水素(たとえば塩化水素)などの気体状酸触媒などが挙げられる。
【0052】
触媒を使用する場合、該触媒の量は重合性単量体(B)全量に対し、好ましくは1~1000ppm、より好ましくは2~100ppmである。
【0053】
このようにして重縮合反応させて得られた本発明の液晶ポリマーは、通常、溶融状態で重合反応槽より抜き出された後に、ペレット状、フレーク状、または粉末状に加工される。
【0054】
ペレット状、フレーク状、または粉末状の液晶ポリマーは、分子量を高め耐熱性を向上させる目的などで、減圧下、真空下、または窒素、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下において、実質的に固相状態で熱処理を行ってもよい。
【0055】
上記のようにして得られた、本発明の液晶ポリマーには、無機または有機充填材、以下に説明する他の添加剤、および他の樹脂成分から選択される一種以上を配合して、液晶ポリマー組成物としてもよい。
【0056】
本発明の液晶ポリマーに配合してもよい無機または有機充填材は、繊維状、板状または粒状のものであってよく、たとえばガラス繊維、ミルドガラス、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウイスカ、ホウ酸アルミニウムウイスカ、ウォラストナイト、タルク、マイカ、グラファイト、炭酸カルシウム、ドロマイト、クレイ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、硫酸バリウム、および酸化チタンが挙げられる。これらの中では、ガラス繊維が物性とコストのバランスが優れている点で好ましい。これらの充填材は、2種以上を併用してもよい。
【0057】
本発明の液晶ポリマー組成物における、無機または有機充填材の合計量は、液晶ポリマー100質量部に対して、好ましくは1~200質量部、より好ましくは5~100質量部である。前記の無機または有機充填材の合計量が液晶ポリマー100質量部に対して200質量部を超える場合には、液晶ポリマー組成物の成形加工性が低下する傾向や、成形機のシリンダーや金型の磨耗が大きくなる傾向がある。
【0058】
本発明の液晶ポリマーには、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤、例えば高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩(ここで高級脂肪酸とは、通常、炭素原子数10~25のものをいう)、ポリシロキサン、フッ素樹脂などの離型改良剤;染料、顔料などの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤などを配合してもよい。これらの添加剤は1種のみを配合してもよく、または2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0059】
本発明の液晶ポリマー組成物における他の添加剤の合計量は、液晶ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部である。他の添加剤の合計量が液晶ポリマー100質量部に対して10質量部を超える場合には、液晶ポリマー組成物の成形加工性が低下する傾向や、熱安定性が悪くなる傾向がある。
【0060】
また、本発明の液晶ポリマーもしくは液晶ポリマー組成物を成形するに際し、上記他の添加剤のうち高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有する添加剤を、予め、液晶ポリマーのペレット表面に付着せしめてもよい。
【0061】
本発明の液晶ポリマーは、他の樹脂成分を含有してもよい。他の樹脂成分としては、たとえばポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、およびその変性物、ならびにポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。他の樹脂成分は、単独で、または2種以上を組み合わせて配合することができる。他の樹脂成分の配合量は特に限定的ではなく、液晶ポリマーの用途や目的に応じて適宜定めればよい。一つの典型的な例において、他の樹脂成分の合計量は、液晶ポリマー100質量部に対して、通常0.1~100質量部、特に0.5~80質量部である。
【0062】
本発明の液晶ポリマーの溶融粘度は、キャピラリーレオメーターを用いて、せん断速度1000s-1の条件で測定した場合、好ましくは1~300Pa・s、より好ましくは5~100Pa・s、さらに好ましくは10~50Pa・sである。尚、溶融粘度が低いほど成形時の流動性に優れることを意味する。
【0063】
本発明の液晶ポリマー組成物は、無機または有機充填材、他の添加剤および他の樹脂成分等を液晶ポリマー中に添加し、これをバンバリーミキサー、ニーダー、一軸もしくは二軸押出機などを用いて、液晶ポリマーの結晶融解温度近傍から結晶融解温度プラス100℃までの温度範囲で溶融混練して得ることができる。
【0064】
このようにして得られた本発明の液晶ポリマーまたは液晶ポリマー組成物は、射出成形、圧縮成形、押出成形、ブロー成形など公知の加工方法によって成形品、フィルムまたは繊維などの物品に加工される。
【0065】
本発明の液晶ポリマーまたは液晶ポリマー組成物は、Izod衝撃強度等の機械強度が改善され、好適には機械物性に優れるため、電気・電子部品、機械機構部品、自動車部品等として特に有用である。
【実施例
【0066】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
実施例中の溶融粘度、引張強度、曲げ強度およびIzod衝撃強度は、以下に記載の方法で測定した。
【0068】
(1)溶融粘度
溶融粘度測定装置(東洋精機(株)製キャピログラフ1D)により、0.7mmφ×10mmのキャピラリーを用いて、剪断速度1000sec-1の条件下、350℃で測定した。
【0069】
(2)引張強度
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000-110)を用いて、シリンダー設定温度350℃、金型温度70℃で、ASTM4号ダンベル試験片を成形し、これを用いてASTM D638に準拠して測定した。
【0070】
(3)曲げ強度
型締め圧15tの射出成形機(住友重機械工業(株)製MINIMAT M26/15)を用いて、シリンダー設定温度350℃、金型温度70℃で射出成形し、短冊状試験片(長さ65mm×幅12.7mm×厚さ2.0mm)を作製した。曲げ試験は、3点曲げ試験をINSTRON5567(インストロンジャパンカンパニイリミティッド社製万能試験機)を用いて、ASTM D790に準拠し、スパン間距離40.0mm、圧縮速度1.3mm/分で行った。
【0071】
(4)Izod衝撃強度
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000-110)を用いて、シリンダー設定温度350℃、金型温度70℃で、長さ127.0mm、幅12.7mm、厚さ3.2mmの短冊状試験片を成形した。この試験片の中央を長さ方向と垂直に切断し、長さ63.5mm、幅12.7mm、厚さ3.2mmの短冊状試験片を得、ASTM D256に準拠して測定した。
【0072】
実施例において、下記の略号は以下の化合物を示す。
POB:4-ヒドロキシ安息香酸
BON6:6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸
HQ:ハイドロキノン
BP:4,4'-ジヒドロキシビフェニル
TPA:テレフタル酸
NDA:2,6-ナフタレンジカルボン酸
【0073】
また、重合性単量体(A)として、以下のものを用いた。
HDBA:1,6-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ヘキサン
BCH:1,2-(4-カルボキシフェノキシ)エタン
EDNA:6,6’-(エチレンジオキシ)ビス-2-ナフトエ酸
【0074】
[実施例1]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に下記化合物を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
HDBA:23.3g(1.0モル%)
POB:213.7g(23.8モル%)
BON6:919.8g(75.2モル%)
【0075】
窒素ガス雰囲気下に室温から150℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去しながら210℃まで速やかに昇温し、同温度にて30分間保持した。その後、350℃まで4時間かけて昇温した後、80分かけて10mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリマーのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットを用いて上記の方法により溶融粘度、引張強度、曲げ強度およびIzod衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
[実施例2~5、比較例1~2]
式(1)で表される化合物(重合性化合物)、POBおよびBON6を表1に示す割合(モル%)となるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、液晶ポリマーのペレットを得た。得られたペレットを用いて上記の方法により溶融粘度、引張強度、曲げ強度およびIzod衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
[実施例6]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に下記化合物を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
HDBA:23.3g(1.0モル%)
POB:390.5g(43.5モル%)
BON6:194.5g(15.9モル%)
HQ:141.7g(19.8モル%)
TPA:213.8g(19.8モル%)
【0078】
窒素ガス雰囲気下に室温から150℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去しながら210℃まで速やかに昇温し、同温度にて30分間保持した。その後、345℃まで5時間かけて昇温した後、90分かけて20mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリマーのペレットを得た。得られたペレットを用いて上記の方法により溶融粘度、引張強度、曲げ強度およびIzod衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
[比較例3]
仕込み化合物を以下のように変更した以外は、実施例6と同様にして液晶ポリマーのペレットを得た。得られたペレットを用いて上記の方法により溶融粘度、引張強度、曲げ強度およびIzod衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
POB:395.0g(44.0モル%)
BON6:195.7g(16.0モル%)
HQ:143.1g(20.0モル%)
TPA:216.0g(20.0モル%)
【0080】
[実施例7]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に下記化合物を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
HDBA:23.3g(1.0モル%)
POB:317.8g(35.4モル%)
BON6:48.9g(4.0モル%)
HQ:113.8g(15.9モル%)
BP:168.2g(13.9モル%)
TPA:321.8g(29.8モル%)
【0081】
窒素ガス雰囲気下に室温から145℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去しながら210℃まで速やかに昇温し、同温度にて30分間保持した。その後、350℃まで7時間かけて昇温した後、80分かけて5mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリマーのペレットを得た。得られたペレットを用いて上記の方法により溶融粘度、引張強度、曲げ強度およびIzod衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
[比較例4]
仕込み化合物を以下のように変更した以外は、実施例7と同様にして液晶ポリマーのペレットを得た。得られたペレットを用いて上記の方法により溶融粘度、引張強度、曲げ強度およびIzod衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
POB:323.2g(36.0モル%)
BON6:48.9g(4.0モル%)
HQ:114.5g(16.0モル%)
BP:169.5g(14.0モル%)
TPA:324.0g(30.0モル%)
【0083】
[実施例8]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に下記化合物を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
HDBA:23.3g(1.0モル%)
POB:634.7g(70.7モル%)
BON6:30.6g(2.5モル%)
HQ:92.3g(12.9モル%)
NDA:181.3g(12.9モル%)
【0084】
窒素ガス雰囲気下に室温から145℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去しながら210℃まで速やかに昇温し、同温度にて30分間保持した。その後、345℃まで7時間かけて昇温した後、80分かけて10mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリマーのペレットを得た。得られたペレットを用いて上記の方法により溶融粘度、引張強度、曲げ強度およびIzod衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
【0085】
[比較例5]
仕込み化合物を以下のように変更した以外は、実施例8と同様にして液晶ポリマーのペレットを得た。得られたペレットを用いて上記の方法により溶融粘度、引張強度、曲げ強度およびIzod衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
POB:641.9g(71.5モル%)
BON6:30.6g(2.5モル%)
HQ:93.0g(13.0モル%)
NDA:182.7g(13.0モル%)
【0086】
[実施例9]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に下記化合物を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
HDBA:23.3g(1.0モル%)
BON6:653.2g(53.4モル%)
HQ:14.3g(2.0モル%)
BP:251.8g(20.8モル%)
TPA:246.2g(22.8モル%)
【0087】
窒素ガス雰囲気下に室温から145℃まで1時間かけて昇温し、145℃で30分保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ350℃まで7時間かけて昇温した後、80分かけて5mmHgにまで減圧した。所定の攪拌トルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリマーのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットを用いて上記の方法により、溶融粘度、引張強度およびIzod衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
【0088】
[比較例6]
仕込み化合物を以下のように変更した以外は、実施例8と同様にして液晶ポリマーのペレットを得た。得られたペレットを用いて上記の方法により溶融粘度、引張強度、曲げ強度およびIzod衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
BON6:660.5g(54.0モル%)
HQ:14.3g(2.0モル%)
BP:254.2g(21.0モル%)
TPA:248.4g(23.0モル%)
【0089】
[実施例10]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に下記化合物を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
HDBA:23.3g(1.0モル%)
POB:650.9g(72.5モル%)
BON6:324.1g(26.5モル%)
【0090】
窒素ガス雰囲気下に室温から150℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去しながら210℃まで速やかに昇温し、同温度にて30分間保持した。その後、325℃まで5時間かけて昇温した後、90分かけて20mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリマーのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットを用いて上記の方法により溶融粘度、引張強度、曲げ強度およびIzod衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
【0091】
[比較例7]
仕込み化合物を以下のように変更した以外は、実施例10と同様にして液晶ポリマーのペレットを得た。得られたペレットを用いて上記の方法により溶融粘度、引張強度、曲げ強度およびIzod衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
POB:655.4g(73.0モル%)
BON6:330.3g(27.0モル%)
【0092】
【表1】
【0093】
表1に示すように、特定の脂肪族ジカルボン酸を含有する本発明の液晶ポリマー(実施例1~10)は、それらを含有しない液晶ポリマー(比較例1および比較例3~7)とそれぞれ比較して、いずれも引張強度、曲げ強度およびIzod衝撃強度等の機械特性が改善され、機械強度向上効果があることが理解される。