(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ボールペン
(51)【国際特許分類】
B43K 1/08 20060101AFI20240409BHJP
B43K 7/12 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B43K1/08
B43K7/12
B43K1/08 110
(21)【出願番号】P 2020090105
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】梶原 巧
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-252655(JP,A)
【文献】特開2015-074128(JP,A)
【文献】特開昭52-009523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00-1/12
5/00-8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、
前記軸筒の内部に収容されたチップホルダーと、前記チップホルダーの前方に配置され当該チップホルダーに対して前後動自在に装着されたチップと、前記チップの前方端において保持されたボールと、前記チップの後方に配置されインキを収容するインキ収容部筒と、
少なくとも筆記時においては前記チップの外側に配置され前記チップホルダーに対して軸方向に相対移動可能、且つ、前記チップの軸方向に対して傾動可能な外筒体と、
前記外筒体の後方に配置され、筆記時において前記チップホルダーに対して当該外筒体が後退した際に当該外筒体を前方に弾発する第1弾発部材と、
前記チップの後方に配置され当該チップを前方に弾発する第2弾発部材と、を備え、
前記ボールが第1筆記部を構成すると共に、前記外筒体の前端に第2筆記部が形成され、
筆記時において、
筆記圧が前記第2弾発部材の弾発力を超えない場合には前記第1筆記部のみが筆記面に当接し、筆記圧が前記第2弾発部材の弾発力を超えた場合は前記第2弾発部材が収縮して前記チップが後退
し、前記第1筆記部と前記第2筆記部とが同時に筆記面に当接する
と共に前記第1弾発部材が作用することで前記第2筆記部が傾動する
ことを特徴としたボールペン。
【請求項2】
前記外筒体の第2筆記部は、筆記時において
、前記第1弾発部材が撓むことで後退および筆記面に沿うように傾動して当該筆記面に対して面接触することを特徴とする請求項1に記載のボールペン。
【請求項3】
前記第1弾発部材がコイルバネであることを特徴とする請求項1または2に記載のボールペン。
【請求項4】
前記外筒体は、前記第1弾発部材の前方部に一体的に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペンに関し、特には、2つの筆記部で筆記することが可能なボールペンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、希望に応じて線幅を変化させることが可能なボールペンが開示されている。
【0003】
具体的には、
図7及び
図8に示すように、特許文献1に開示されたボールペンでは、ボール130を保持するホルダー121の外側に、当該ホルダー121に対して軸方向に摺動移動するアウター150(筒体)が設けられている。そして、
図8に示すように、筆圧が強い時には、ホルダー121がアウター150に対して没入するようになっており、ボール130とアウター150の先端部151とが同時に筆記面に接触する時、ボール130の表面に付着しているインクが毛細管現象により筆記面Pに拡散してアウター150の先端部151にも付着し、ボール130と筆記面とアウター150の先端部151とホルダー121の先端部123(カシメ部)とにより囲まれた空間部にインクが滞留するようになっている。
【0004】
このような状態で筆記する場合には、ボール130の回転に伴って前記空間部にインクが継続的に供給され、ボール130と筆記面との接触部からアウター150の先端部151と筆記面との接触部に至るまでの線幅w2の線が描かれる。この線幅w2は、筆圧が弱い時の線幅w1(
図7参照)よりも大きい(太い)ため、当該ボールペンの使用者は、2種類の線幅を筆圧に応じて使い分けることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構造では、筆圧により筆記時の線幅を変更することができるが、筆記中にボールペンの筆記面に対する筆記角度が変わると、筆記面と当接するアウター150の位置が変化する。このため、ボールペンの筆記角度が筆記面に対して垂直に近づくほどアウター150の筆記面との接触位置が中心により線幅w2は小さくなり、ボールペンが傾き筆記面に対して近づくほどアウター150の筆記面と接触位置が中心から離れるため線幅w2は大きくなる。すなわち、筆記角度の変化で線幅w2がばらつく虞があった。
【0007】
本件発明者は、鋭意の検討に基づく様々な試作と評価を繰り返す中で、外筒体をホルダーに対して傾動可能に構成することが筆記時の線幅を安定させることに効果的であることを知見した。
【0008】
本発明は、以上の背景をもとになされたものであり、その目的とするところは、細い線幅と太い線幅での筆記を使い分けることができるとともに筆記角度によらず安定した線幅での筆記が可能なボールペンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記軸筒の内部に収容されたチップホルダーと、前記チップホルダーの前方に配置され当該チップホルダーに対して前後動自在に装着されたチップと、前記チップの前方端において保持されたボールと、前記チップの後方に配置されインキを収容するインキ収容部筒と、少なくとも筆記時においては前記チップの外側に配置され前記チップホルダーに対して軸方向に相対移動可能、且つ、前記チップの軸方向に対して傾動可能な外筒体と、前記外筒体の後方に配置され、筆記時において前記チップホルダーに対して当該外筒体が後退した際に当該外筒体を前方に弾発する第1弾発部材と、前記チップの後方に配置され当該チップを前方に弾発する第2弾発部材と、を備え、前記ボールが第1筆記部を構成すると共に、前記外筒体の前端に第2筆記部が形成され、筆記時において、筆記圧が前記第2弾発部材の弾発力を超えない場合には前記第1筆記部のみが筆記面に当接し、筆記圧が前記第2弾発部材の弾発力を超えた場合は前記第2弾発部材が収縮して前記チップが後退し、前記第1筆記部と前記第2筆記部とが同時に筆記面に当接すると共に前記第1弾発部材が作用することで前記第2筆記部が傾動するボールペンである。
【0010】
本発明によれば、チップがチップホルダーに対して前後動自在に装着されると共にチップが第2弾発部材によりチップが前方に付勢されているため、第2弾発部材の弾発力より弱い筆圧で筆記することで第1筆記部のみで描写された細い線幅での筆記が可能である。また、チップの外側に配置された外筒体が、チップの軸方向に対して相対移動可能である一方、先端部に筆記面と当接する第2筆記部を有している。これにより、筆記時において、筆圧が第2弾発部材の弾発力を超えるとチップが後退して外筒体の第2筆記部が筆記面に当接する。この際、第1筆記部であるチップの前方端で保持されたボールにより筆記面に供給されたインキを、外筒体の第2筆記部で引き延ばすことができるため太い線幅での筆記が可能である。また、本発明によれば、第1弾発部材により外筒体が後方に移動した際は前方に弾発されるとともに当該外筒体はチップの軸方向に対して傾動可能でもあるため、筆記時に外筒体が筆記面に当接した際に筆記面に沿って傾動することができることから、筆記部でインキを安定して引き延ばすことができる。このため、線幅にばらつきが出難く、一定の太さでの筆記を継続できる。
【0011】
前記外筒体の第2筆記部は、筆記時において、前記第1弾発部材が撓むことで後退および筆記面に沿うように傾動して当該筆記面に対して面接触することが好ましく、この場合、筆記面に第2筆記部全面が接触することから、より安定した線幅での筆記が可能となる。
【0012】
前記第1弾発部材はコイルバネで形成することが好ましく、この場合、外筒体がチップに対して筆記面や筆記角度に応じてスムーズに摺動することから筆記感が向上する。
【0013】
前記外筒体は、前記第1弾発部材の前方部に一体的に形成されていてもよく、この場合、組み立て工程が不要となることから製造コストを下げることができる。また、第1弾発部材にコイルバネを用いる場合には、コイルバネの前部に密着部を形成して外筒体としてもよく、この場合、第1弾発部材とが外筒体とを接続する必要がないことから外筒体を細径で形成でき筆記する際にレフィルの先端部を視認し易くなることから筆記性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外筒体をチップに対して傾動可能に構成することで、筆記角度によらず安定した線幅での筆記が可能なボールペンを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態におけるボールペンの縦断面図である。
【
図2】
図1のボールペンのレフィルが前進した状態を示す縦断面図である。
【
図3】
図2のボールペンの前方部を示す縦断面図である。
【
図4】
図2の状態において、ボール(第1筆記部)が筆記面に当接した状態での、
図2の前方部を示す縦断面図である。
【
図5】
図4の状態から筆記圧を上げ、外筒体の前端(第2筆記部)の端部が筆記面に当接した状態を示す縦断面図である。
【
図6】
図5の状態からさらに筆記圧を上げ、外筒体の前端(第2筆記部)の全面が筆記面に当接した状態を示す縦断面図である。
【
図7】比較的弱い筆圧で筆記する場合の、特許文献1のボールペンの前端部を示す縦断面図である(特許文献1の
図5に相当する図)。
【
図8】比較的強い筆圧で筆記する場合の、特許文献1のボールペンの前端部を示す縦断面図である(特許文献1の
図6に相当する図)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態におけるボールペン1の縦断面図であり、
図2は、
図1のボールペン1のレフィル3が前進した状態を示す縦断面図であり、
図3は、
図2のボールペン1の前方部を示す縦断面図である。
【0018】
図1に示す本実施形態のボールペン1は、出没式のボールペンであり、前端に前部開口を有する軸筒2を備えている。軸筒2の内部には、軸筒2の軸方向に移動可能なレフィル3が収容されている。レフィル3は、
図1に示すように、後方側にインキ収容筒4を有しており、当該インキ収容筒4の前方端にチップホルダー10が固定されている。チップホルダー10には、チップ30が前後動自在に挿着されており、レフィル3の移動に伴って、軸筒2の前部開口から出没可能となっている。チップホルダー10には、第1コイルバネ60が装着されている。
【0019】
本実施形態の出没機構(不図示)は、回転カム機構を用いた後端ノック式出没機構である。当該出没機構は、軸筒2の後部内面に形成されたカム部と、該カム部に係合し且つレフィル3の後端に当接する回転部材と、該回転部材に係合し且つ軸筒2の後部開口から突出する操作部5と、軸筒2内に収容され且つレフィル3を後方に付勢するコイルバネ8(例えば圧縮コイルスプリング)と、からなる。
【0020】
また、本実施形態の出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもが操作部5を前方に押圧操作するダブルノック式である。具体的には、レフィル3が軸筒2内に没入している
図1の状態で操作体5が前方に押圧されると、レフィル3が前方側に移動され、チップホルダー10の前方部に接続されたチップ30が軸筒2の前部開口から突出する
図2の状態となる。そして、当該突出状態が、不図示のカム部と回転部材との係止作用によって維持される。チップ30が突出している状態(
図2の状態)で操作体5が前方に押圧されると、カム部と回転部材との係止状態が解除される。これにより、コイルバネ8の作用により、レフィル3が後方側に戻され、チップ30が軸筒2の前部開口から退没する。
【0021】
続いて、
図3に示すように、チップ30は筒状のチップ本体31と中間筒32とOリング33により構成されている。そして、中間筒32はチップ本体31の後部に着脱不能に圧入装着されており、Oリング33は中間筒32の外周部に形成した溝部に装着され、中間筒32とチップホルダー10との間を気密するシール部材となっている。尚、Oリングは、例えばシリコンゴム製である。
【0022】
また、チップ30は、チップ本体31の前端部において、ボール40の前方側の一部に対して環状に当接可能な内筒縮径部を有している。これにより、チップ30は、ボール40を保持するホルダーとして機能するようになっている。内筒縮径部のサイズ及び形状は、ボール40のサイズに合わせて選択され、本実施形態では、ボール40の直径が1.00mmであるため、内筒縮径部の先端内径(最狭径)は0.940mmとなっている。そして、筆記時にインキ収容筒4内のインキがボール40を介して筆記面に吐出される第1筆記部50が形成される。
【0023】
また、ボール40の後方側の一部に当接する中芯71が、チップ30の軸心に沿って延びており、第3コイルバネ70の前方端に結合されている。第3コイルバネ70の後方端は、中間筒32に支持されており、第3コイルバネ70は、中芯71を介して、ボール40をチップホルダー10に対して前方側に付勢している。第3コイルバネ70は、例えば、線径φ0.14mm、コイル平均径1.0mm、コイル長さ9mmである。中芯71は、例えば、直径φ0.14mm、長さ3.5mmであり、第3コイルバネ70及び中芯71の材料は、例えばステンレス製である。
【0024】
そして、チップ30は、チップホルダー10の内孔部10bに装着されており、装着時に内孔部10bに形成した内突起10cを中間筒32の外周部が乗り越え嵌合している。このため、チップ30はチップホルダー10に対して着脱不能に装着され、且つ、前後に摺動する隙間を形成してあることから当該隙間の範囲内で前後動自在に装着されている。また、中間筒32(チップ30)の後端部とチップホルダー10の内段部10dとの間には第2コイルバネ80(第2弾発部材の一例)が張架されており、第2コイルバネ80の弾発力でチップ30を前方に付勢している。第2コイルバネ80は、直径φ0.15mm、長さ6.0mmであり、その材料は、例えばステンレス製である。
【0025】
一方、チップホルダー10の外周部10aには第1コイルバネ60(第1弾発部材の一例)が圧入固着してあり、第1コイルバネ60の前部には本発明における外筒体として機能する密着部61が一体的に形成してある。
【0026】
第1コイルバネ60は、例えば、線径0.16mmのステンレス線を用いて、中央部のコイル平均径2.8mm、コイル長さ14mmで形成してある。そして、第1コイルバネ60の後部は中央部に比べて拡径された後部拡径部60bが設けられ、前部にはステンレス線を密着させ前方に向かって縮径する密着部61(本発明における外筒体の一例)が形成されている。尚、チップ30の外周部と密着部61の内孔部には隙間が設けられており、この隙間により、密着部61(外筒体)は第1コイルバネ60のバネの伸縮によってチップ30の軸方向に沿って前後動可能であり、且つ、バネが撓むことでチップ30に対して傾動が可能になっている。そして、第1コイルバネ60の前端部には第2筆記部61bが形成されており、筆記時に第2筆記部61bが筆記面Pに当接した際に、第1コイルバネの一部が撓むことで密着部61がチップ30に対して傾動し、第2筆記部61bの全面がスムーズに筆記面Pに当接するよう構成されている。
尚、密着部61(外筒体)の第2筆記部61bは、非筆記時においてはチップ30の前端より後方に位置するよう構成することが好ましく、この場合、筆記圧が第2コイルバネ80の弾発力を超えない限り、第1筆記部50でのみの筆記が可能であり、筆記圧が第2ルバネ80の弾発力を超えるとチップ30がチップホルダー10に対して後退することで第2筆記部61bが筆記面に当接するため、第1筆記部50から吐出されたインキを第2筆記部61bで引き延ばし、第1筆記部50のみで描写した線幅より太い線幅での描写が可能となる。
【0027】
以上のような構成のボールペン1は、以下のように作用する。
【0028】
筆記するために、
図3の状態のボールペン1を把持して筆記面Pにレフィル3の先端部を近づけると、
図4に示すように、第1筆記部50であるボール40の一部が筆記面Pに当接する。この際、筆記圧が第2コイルバネ80の弾発力を超えない限りボールペン1は第1筆記部50のみで筆記でき、ボール40のみが筆記面Pと当接し線幅X1(
図4参照)での筆記が可能である
【0029】
次に、
図4の状態から筆圧を第2コイルバネ80の弾発力より強くすると、第2コイルバネが収縮し、チップ30が後退する。そして、第1コイルバネ60の密着部61の第2筆記部61bの端部が当接する
図5の状態となる。さらに筆圧を上げると第2筆記部61bの全面が筆記面Pに当接するように密着部61(外筒体)がチップ30の軸方向に対して後退しつつ傾動し、
図6の状態となる。
この
図6に示す状態で筆記をはじめると、まず、筆圧をボール40が受けることによって、第2コイルバネ70が付勢作用に抗って、中芯71を介して第2コイルバネ71が圧縮されて、ボール40が、内筒縮径部に対する当接状態から後方に向かって移動し、チップ30の内筒縮径部とボール40の前方側とが離隔した状態になっているため、その隙間に形成されたインキ供給路からのインキがボール40(第1筆記部50)と筆記面Pとの接触領域へ供給される。そして、筆記するためにボールペン1を操作することでボール40が回転しつつ筆記面Pを移動すると、筆記面Pに供給されたインキが筆記面Pに当接している第2筆記部61bにより引き延ばされ、筆記面Pには第2筆記部61bの外径(密着部61の先端部の外径)X2(
図6参照)と略同等の線幅の筆跡が形成される。この際、筆記面Pと当接する第2筆記部61bの外径X2の方がボール40のみで描写された線幅X1(
図4参照)より大きいため、筆圧を上げることで太い線幅での筆跡を形成することができる。
【0030】
そして、密着部61は第1コイルバネ60の作用によりチップ30に対して後退および傾動が可能であるため、筆記時に筆記面Pに対するボールペン1の軸方向の角度に変化が生じても密着部61(外筒体)の先端の第2筆記部61bは筆記面Pへの面接触がスムーズに継続されるため、安定した太さでの筆跡を継続して筆記できると共に筆記感も向上する。
尚、チップ30の軸方向に対して密着部61を傾斜できる最大角度を外筒体最大傾斜角度S1とし、レフィル3を筆記面Pに対して垂直に立ててボール40及び第2筆記部61bを筆記面Pに当接させた状態からレフィル3を傾けた際にチップ30の先端が筆記面Pに当接することでボール40(第1筆記部50)が筆記面Pから離間してしまう角度をレフィル最大傾斜角度S2とした場合、S1≧S2とすることが好ましく、この場合、第一筆記部50が常に筆記面Pに当接し当該筆記面Pにインキが供給される筆記傾斜角度であれば、密着部61もそれに合わせて傾動可能となるため、筆記面Pに対して第2筆記部61bを常に面接触させることができる。このため、筆跡の線幅を安定させることが可能となる。
【0031】
また、一般的なボールペンにおいて、筆記する際のレフィルの最大傾斜角度は筆記面Pに垂直にボールペンを立てた状態から30°以内にすることが好ましいとされている。しかしながら、筆記角度は使用者によってばらつきが生じる可能性があるため、密着部61がチップ30の軸方向に対して傾動できる角度は、筆記時にレフィル3が筆記面Pに対して傾斜される角度に応じて常に第2筆記部61bの筆記面Pへの当接が継続されるように、30°以上傾斜することが好ましく35°以上傾斜可能に構成することがより好ましい。尚、本実施形態では具体的にレフィル最大傾斜角度S2を35°に設定し、密着部61の最大傾斜角度S1を42°に設定しているため、使用者の筆記角度にばらつきが生じても常に密着部61の第2筆記部61bが筆記面Pに当接することで筆跡の線幅が安定するものとなった。
【0032】
さらに、本実施の形態においては、筆記中に筆圧を変化させることで、
図4の第1筆記部50であるボール40のみが筆記面Pに当接している状態の筆記時の線幅X1から、第2筆記部50の一部が筆記面Pに当接する
図5の状態を経て、
図6の第2筆記部61b全面が筆記面Pに当接する状態で筆記する線幅X2まで、徐々に筆跡の線幅を変えることができる。このため、筆圧をコントロールすることで筆記中に線幅を自由に変えながら筆記することも可能である。
【0033】
尚、本実施の形態においては、第1コイルバネ60(第1弾発部材)と密着部61(外筒体)とを一体的に形成しているため、嵌合部を設けて接続させる必要がなく、外筒体となる密着部61を細径で形成可能となる。このため、筆記時に筆記部61bを視認し易くなることから操作性が向上する。また、筆記時に第1コイルバネ60の一部が撓んで密着部61が傾動する際、密着部61自体が密着したコイルバネの一部であるため微小に撓むことが可能である。このため、筆記角度や筆記面Pの凹凸などに応じて外筒体61が機敏に反応して傾動し、第2筆記部61b全体の筆記面Pへの当接状態が維持されやすくなるため、筆跡の線幅がより安定する。また、図示しないが、第1コイルバネ60(第1弾発部材)と外筒体とを別体で形成して嵌合させてもよく、この場合、外筒体の先端部である第2筆記部に鍍金加工等を施すこと等により凹凸の小さい滑らかな第2筆記部を形成しやすいことから、筆記面Pとの摩擦を減らして筆記性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ボールペン
2 軸筒
3 レフィル
4 インキ収容筒
5 操作部
8 コイルバネ
10 チップホルダー
10a 外周部
10b 内孔部
10c 内突起
10d 内段部
30 チップ
31 チップ本体
32 中間筒
33 Oリング
40 ボール
50 第1筆記部
60 第1コイルバネ(第1弾発部材)
60b 後部拡径部
61 密着部(外筒体)
61b 第2筆記部
70 第3コイルバネ
71 中芯
80 第2コイルバネ(第2弾発部材)
P 筆記面
w1 線幅
w2 線幅
X1 線幅
X2 線幅。