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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/56 20060101AFI20240409BHJP
   F16D 55/2255 20060101ALI20240409BHJP
   F16D 41/06 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F16D65/56 C
F16D55/2255 103F
F16D41/06 F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020091657
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021188632
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大野 智也
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-315422(JP,A)
【文献】特開2010-060122(JP,A)
【文献】特開2011-000953(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00732247(EP,A2)
【文献】特開昭61-175330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/56
F16D 55/2255
F16D 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線運動する出力軸と、
先端側に摩擦材が固定され、前記出力軸の直線運動を受けて回転する一対の回転アームと、
前記回転アームの回転中心を挟んで前記回転アームの先端側とは反対側である基端側にそれぞれ連結され、前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離を調整する隙間調整機構と、
前記出力軸の直線運動を受けて前記隙間調整機構に対して前記回転アームの回転軸線方向に移動する移動体を含み、前記出力軸の直線運動を前記移動体についての前記回転軸線方向の運動に変換する変換部とを備え、
前記隙間調整機構は、前記回転軸線方向の運動に応じて前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離が長くなるように調整する
ブレーキ装置。
【請求項2】
前記変換部は
記移動体と前記隙間調整機構とを連結する連結部を備え、
前記連結部は、前記移動体に対して前記回転軸線方向に直交する方向に相対移動するようになっている
請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記連結部は、前記移動体と前記隙間調整機構とを連結する棒体を備え、
前記移動体は、前記回転軸線方向に直交する方向に窪んでおり当該方向に前記棒体を移動可能に支持する挿入溝を備えている
請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記回転軸線方向に直交する方向のうち前記隙間調整機構が連結されている前記一対の回転アームの基端側の部分同士を結ぶ直線方向を第1直交方向とし、前記第1直交方向及び前記回転軸線方向に直交する方向を第2直交方向としたとき、
前記挿入溝は、前記第2直交方向に窪んでおり、
前記第1直交方向における前記挿入溝の寸法と前記棒体の寸法との差は、前記回転軸線方向における前記挿入溝の寸法と前記棒体の寸法との差よりも大きい
請求項3に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記変換部は、前記出力軸の直線運動を受けて前記移動体が移動する方向とは反対方向に前記移動体を付勢する第1弾性部材を備えている
請求項2~請求項4の何れか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記変換部は、
前記出力軸の直線運動を受けて当該直線運動を前記回転軸線方向の運動に変換して前記移動体に伝達する伝達部と、
前記伝達部と前記移動体との間に介在される第2弾性部材とを備えている
請求項2~請求項5の何れか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項7】
前記回転軸線方向における前記第2弾性部材の最大弾性変形量は、前記回転軸線方向における前記移動体の最大移動量よりも大きい
請求項6に記載のブレーキ装置。
【請求項8】
前記変換部は、前記出力軸の直線運動を受けて前記移動体が移動する方向とは反対方向に前記移動体を付勢する第1弾性部材を備え、
前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材は、前記移動体を介して並列配置されるように連結されるとともに前記回転軸線方向において少なくとも一部が重なっている
請求項6又は請求項7に記載のブレーキ装置。
【請求項9】
前記伝達部は、前記出力軸の直線運動を前記回転軸線方向の運動に変換するように傾斜する傾斜面を備えている
請求項6~請求項8の何れか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項10】
前記傾斜面は、平面であり、
前記出力軸の直線運動方向及び前記回転軸線方向のいずれに対しても直交する方向から視たとき、前記出力軸の直線運動方向と前記傾斜面とがなす角のうち鋭角側の角度は、45度よりも大きくなっている
請求項9に記載のブレーキ装置。
【請求項11】
前記隙間調整機構は、
前記一対の回転アームの基端側の部分の間に設けられる雄ねじ部と、
前記雄ねじ部に嵌め込まれて、前記雄ねじ部に対して周方向一方側に回転したときに一対の前記回転アームの基端側の部分における間の距離を長くする雌ねじ部とを備え、
前記雌ねじ部は、前記回転軸線方向の運動を受けて前記雄ねじ部に対して周方向に相対回転する
請求項1~請求項10の何れか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項12】
前記隙間調整機構は、
前記一対の回転アームの基端側の部分の間に設けられる雄ねじ部と、
前記雄ねじ部に嵌め込まれて、前記雄ねじ部に対して周方向一方側に回転したときに一対の前記回転アームの基端側の部分における間の距離を長くする雌ねじ部とを備え、
前記雌ねじ部は、前記回転軸線方向の運動を受けて前記雄ねじ部に対して周方向に相対回転し、
前記移動体が前記回転軸線方向の一方側に移動したときに前記雄ねじ部に対して前記雌ねじ部が周方向一方側へ相対回転する力を伝達しつつ、且つ、前記移動体が前記回転軸線方向の他方側に移動したときに前記雄ねじ部に対して前記雌ねじ部が周方向他方側へ相対回転する力を伝達しないワンウェイクラッチをさらに備える
請求項5に記載のブレーキ装置。
【請求項13】
直線運動する出力軸と、
先端側に摩擦材が固定され、前記出力軸の直線運動を受けて回転する一対の回転アームと、
前記回転アームの回転中心を挟んで前記回転アームの先端側とは反対側である基端側にそれぞれ連結され、前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離を調整する隙間調整機構と、
前記出力軸の直線運動を前記回転アームの回転軸線方向の運動に変換する変換部とを備え、
前記隙間調整機構は、前記回転軸線方向の運動に応じて前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離が長くなるように調整し、
前記変換部は、
前記出力軸の直線運動を受けて前記隙間調整機構に対して前記回転アームの前記回転軸線方向に移動する移動体と、
前記移動体と前記隙間調整機構とを連結するとともに、前記移動体に対して前記回転軸線方向に直交する方向に相対移動するようになっている連結部と、
前記出力軸の直線運動を受けて前記移動体が移動する方向とは反対方向に前記移動体を付勢する第1弾性部材と、
前記出力軸の直線運動を受けて当該直線運動を前記回転軸線方向の運動に変換して前記移動体に伝達する伝達部と、
前記伝達部と前記移動体との間に介在される第2弾性部材とを備え、
前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材は、前記移動体を介して並列配置されるように連結されるとともに前記回転軸線方向において少なくとも一部が重なっており、
前記連結部は、前記移動体と前記隙間調整機構とを連結する棒体を備え、
前記移動体は、前記回転軸線方向に直交する方向に窪んでおり当該方向に前記棒体を移動可能に支持する挿入溝を備えており、
前記隙間調整機構は、
前記一対の回転アームの基端側の部分の間に設けられる雄ねじ部と、
前記雄ねじ部に嵌め込まれて、前記雄ねじ部に対して周方向一方側に回転したときに一対の前記回転アームの基端側の部分における間の距離を長くする雌ねじ部とを備え、
前記雌ねじ部は、前記回転軸線方向の運動を受けて前記雄ねじ部に対して周方向に相対回転し、
前記移動体が前記回転軸線方向の一方側に移動したときに前記雄ねじ部に対して前記雌ねじ部が周方向一方側へ相対回転する力を伝達しつつ、且つ、前記移動体が前記回転軸線方向の他方側に移動したときに前記雄ねじ部に対して前記雌ねじ部が周方向他方側へ相対回転する力を伝達しないワンウェイクラッチをさらに備える
ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両に用いられるディスクブレーキ式のブレーキ装置が記載されている。このブレーキ装置は、車軸に固定されたディスクを挟む一対の回転アームを備えている。これらの回転アームの先端部には、ブレーキパッドが固定される取付部が取り付けられている。そして、1対のブレーキパッドの間には、車輪とともに回転するディスクが配置されている。また、一対の回転アームの基端部の間には、ディスクとブレーキパッドとの隙間を調整する隙間調整機構が配置されている。隙間調整機構は、一対の回転アームの基端部にそれぞれ連結されている。一対の回転アームの一方は、シリンダの内部に配置されたピストンに固定された出力軸に連結されており、出力軸からの力によって回転する。特許文献1のブレーキ装置では、出力軸が突出すると、回転アームの先端部に支持されたブレーキパッドがディスクに当接する。
【0003】
さらに、特許文献1のブレーキ装置は、出力軸の力を隙間調整機構に伝達する伝達棒を備えている。この伝達棒は、概ね回転アームの先端部側から基端部側に向かって延びている。特許文献1のブレーキ装置では、出力軸が突出すると、伝達棒が当該伝達棒の軸線方向に移動して隙間調整機構に近づく。そして、伝達棒の力が隙間調整機構に伝達されると、隙間調整機構において、雄ねじが切られた雄ねじ部に対して、雌ねじが切られた雌ねじ部が回転する。このように雌ねじ部が回転すると、一対の回転アームの基端部間の距離が長くなる。すると、一対の回転アームは、一対の回転アームの先端部間の距離が短くなるように回転する。その結果、ディスクとブレーキパッドとの隙間が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第0732247号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のブレーキ装置においては、隙間調整機構によって隙間が調整された後に回転アームが回転すると、当該回転アームと隙間調整機構との相対的な位置関係が変化する結果、隙間調整機構と伝達棒との間の距離も変化する。そして、例えば、隙間調整機構と伝達棒との間の変化後の距離が、変化前の距離に比べて長くなると、隙間調整機構による隙間の調整量が小さくなるため、調整量を十分に確保できないという課題がある。なお、雄ねじ部及び雌ねじ部を備える隙間調整機構に限らず、出力軸の力が伝達される隙間調整機構を備えるブレーキ装置では上記と同様の課題がある。
【0006】
本発明は、こうした実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、隙間調整機構を備えたブレーキ装置において隙間調整機構による隙間の調整量を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのブレーキ装置は、直線運動する出力軸と、先端側に摩擦材が固定され、前記出力軸の直線運動を受けて回転する一対の回転アームと、前記回転アームの回転中心を挟んで前記回転アームの先端側とは反対側である基端側にそれぞれ連結され、前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離を調整する隙間調整機構と、前記出力軸の直線運動を受けて前記隙間調整機構に対して前記回転アームの回転軸線方向に移動する移動体を含み、前記出力軸の直線運動を前記移動体についての前記回転軸線方向の運動に変換する変換部とを備え、前記隙間調整機構は、前記回転軸線方向の運動に応じて前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離が長くなるように調整する。
【0008】
上記構成において、回転アームが回転して当該回転アームと隙間調整機構との相対的な位置関係が変化しても、回転アームの回転軸線方向における隙間調整機構と変換部との位置関係は変化しない。上記構成によれば、隙間調整機構の位置が変化しない回転軸線方向の運動に応じて、一対の回転アームの基端側の部分の間の距離が長くなる。これにより、回転アームの回転によって当該回転アームと隙間調整機構との相対的な位置関係が変化したとしても、隙間調整機構による隙間の調整量を確保できる。
【0009】
上記ブレーキ装置において、前記変換部は、前記移動体と前記隙間調整機構とを連結する連結部を備え、前記連結部は、前記移動体に対して前記回転軸線方向に直交する方向に相対移動するようになっていてもよい。
【0010】
上記ブレーキ装置において、前記連結部は、前記移動体と前記隙間調整機構とを連結する棒体を備え、前記移動体は、前記回転軸線方向に直交する方向に窪んでおり当該方向に前記棒体を移動可能に支持する挿入溝を備えていてもよい。
【0011】
上記ブレーキ装置において、前記回転軸線方向に直交する方向のうち前記隙間調整機構が連結されている前記一対の回転アームの基端側の部分同士を結ぶ直線方向を第1直交方向とし、前記第1直交方向及び前記回転軸線方向に直交する方向を第2直交方向としたとき、前記挿入溝は、前記第2直交方向に窪んでおり、前記第1直交方向における前記挿入溝の寸法と前記棒体の寸法との差は、前記回転軸線方向における前記挿入溝の寸法と前記棒体の寸法との差よりも大きくなっていてもよい。
【0012】
上記ブレーキ装置において、前記変換部は、前記出力軸の直線運動を受けて前記移動体が移動する方向とは反対方向に前記移動体を付勢する第1弾性部材を備えていてもよい。
上記ブレーキ装置において、前記変換部は、前記出力軸の直線運動を受けて当該直線運動を前記回転軸線方向の運動に変換して前記移動体に伝達する伝達部と、前記伝達部と前記移動体との間に介在される第2弾性部材とを備えていてもよい。
【0013】
上記ブレーキ装置において、前記回転軸線方向における前記第2弾性部材の最大弾性変形量は、前記回転軸線方向における前記移動体の最大移動量よりも大きくなっていてもよい。
【0014】
上記ブレーキ装置において、前記変換部は、前記出力軸の直線運動を受けて前記移動体が移動する方向とは反対方向に前記移動体を付勢する第1弾性部材を備え、前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材は、前記移動体を介して並列配置されるように連結されるとともに前記回転軸線方向において少なくとも一部が重なっていてもよい。
【0015】
上記ブレーキ装置において、前記伝達部は、前記出力軸の直線運動を前記回転軸線方向の運動に変換するように傾斜する傾斜面を備えていてもよい。
上記ブレーキ装置において、前記傾斜面は、平面であり、前記出力軸の直線運動方向及び前記回転軸線方向のいずれに対しても直交する方向から視たとき、前記出力軸の直線運動方向と前記傾斜面とがなす角のうち鋭角側の角度は、45度よりも大きくなっていてもよい。
【0016】
上記ブレーキ装置において、前記隙間調整機構は、前記一対の回転アームの基端側の部分の間に設けられる雄ねじ部と、前記雄ねじ部に嵌め込まれて、前記雄ねじ部に対して周方向一方側に回転したときに一対の前記回転アームの基端側の部分における間の距離を長くする雌ねじ部とを備え、前記雌ねじ部は、前記回転軸線方向の運動を受けて前記雄ねじ部に対して周方向に相対回転してもよい。
【0017】
上記ブレーキ装置において、前記隙間調整機構は、前記一対の回転アームの基端側の部分の間に設けられる雄ねじ部と、前記雄ねじ部に嵌め込まれて、前記雄ねじ部に対して周方向一方側に回転したときに一対の前記回転アームの基端側の部分における間の距離を長くする雌ねじ部とを備え、前記雌ねじ部は、前記回転軸線方向の運動を受けて前記雄ねじ部に対して周方向に相対回転し、前記移動体が前記回転軸線方向の一方側に移動したときに前記雄ねじ部に対して前記雌ねじが周方向一方側へ相対回転する力を伝達しつつ、且つ、前記移動体が前記回転軸線方向の他方側に移動したときに前記雄ねじ部に対して前記雌ねじが周方向他方側へ相対回転する力を伝達しないワンウェイクラッチをさらに備えていてもよい。
【0018】
上記課題を解決するためのブレーキ装置は、直線運動する出力軸と、先端側に摩擦材が固定され、前記出力軸の直線運動を受けて回転する一対の回転アームと、前記回転アームの回転中心を挟んで前記回転アームの先端側とは反対側である基端側にそれぞれ連結され、前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離を調整する隙間調整機構と、前記出力軸の直線運動を前記回転アームの回転軸線方向の運動に変換する変換部とを備え、前記隙間調整機構は、前記回転軸線方向の運動に応じて前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離が長くなるように調整し、前記変換部は、前記出力軸の直線運動を受けて前記隙間調整機構に対して前記回転アームの前記回転軸線方向に移動する移動体と、前記移動体と前記隙間調整機構とを連結するとともに、前記移動体に対して前記回転軸線方向に直交する方向に相対移動するようになっている連結部と、前記出力軸の直線運動を受けて前記移動体が移動する方向とは反対方向に前記移動体を付勢する第1弾性部材と、前記出力軸の直線運動を受けて当該直線運動を前記回転軸線方向の運動に変換して前記移動体に伝達する伝達部と、前記伝達部と前記移動体との間に介在される第2弾性部材とを備え、前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材は、前記移動体を介して並列配置されるように連結されるとともに前記回転軸線方向において少なくとも一部が重なっており、前記連結部は、前記移動体と前記隙間調整機構とを連結する棒体を備え、前記移動体は、前記回転軸線方向に直交する方向に窪んでおり当該方向に前記棒体を移動可能に支持する挿入溝を備えており、前記隙間調整機構は、前記一対の回転アームの基端側の部分の間に設けられる雄ねじ部と、前記雄ねじ部に嵌め込まれて、前記雄ねじ部に対して周方向一方側に回転したときに一対の前記回転アームの基端側の部分における間の距離を長くする雌ねじ部とを備え、前記雌ねじ部は、前記回転軸線方向の運動を受けて前記雄ねじ部に対して周方向に相対回転し、前記移動体が前記回転軸線方向の一方側に移動したときに前記雄ねじ部に対して前記雌ねじ部が周方向一方側へ相対回転する力を伝達しつつ、且つ、前記移動体が前記回転軸線方向の他方側に移動したときに前記雄ねじ部に対して前記雌ねじ部が周方向他方側へ相対回転する力を伝達しないワンウェイクラッチをさらに備える。
【0019】
上記構成において、回転アームが回転して当該回転アームと隙間調整機構との相対的な位置関係が変化しても、回転アームの回転軸線方向における隙間調整機構と変換部との位置関係は変化しない。上記構成によれば、隙間調整機構の位置が変化しない回転軸線方向の運動に応じて、一対の回転アームの基端側の部分の間の距離が長くなる。これにより、回転アームの回転によって当該回転アームと隙間調整機構との相対的な位置関係が変化したとしても、隙間調整機構による隙間の調整量を確保できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、隙間調整機構による隙間の調整量を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ブレーキ装置の斜視図。
図2】ブレーキ装置の平面図における部分断面図。
図3図2における3-3線での断面図。
図4図3における4-4線での断面図。
図5図3における5-5線での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、鉄道車両に取り付けられたブレーキ装置の一実施形態を図1図5にしたがって説明する。
図1に示すように、ブレーキ装置10は、鉄道車両の車輪と一体的に回転するディスク95を一対のブレーキパッド90によって挟み込むことでディスク95の回転を制動するキャリパーブレーキ装置である。ブレーキ装置10は、ディスク95とともにディスクブレーキ装置を構成する。
【0023】
図2に示すように、ブレーキ装置10は、柱形状の第1シリンダ11を備えている。第1シリンダ11の中心軸線は、車幅方向に沿っている。第1シリンダ11の内部には円柱状の内部空間が区画されている。第1シリンダ11における車幅方向H側(図2における下側)の端壁11Cは、当該端壁11Cを厚み方向に貫通した貫通孔11Aを備えている。貫通孔11Aは、第1シリンダ11における車幅方向H側の端壁11Cの中央に位置している。また、第1シリンダ11における車幅方向I側(図2における上側)の端壁11Dは、当該端壁11Dを厚み方向に貫通した貫通孔11Bを備えている。貫通孔11Bは、第1シリンダ11における車幅方向I側の端壁11Dの中央に位置している。第1シリンダ11は、キャリパーボディ86Aに固定されている。図1に示すように、このキャリパーボディ86Aは、ブレーキ装置10を鉄道車両の台車に取り付けるためのブラケット86Bに支持されている。ブラケット86Bには、複数のボルト孔87が設けられていて、このボルト孔87に挿通されるボルトによって、鉄道車両の台車に固定されている。
【0024】
図2に示すように、第1シリンダ11の内部には、当該第1シリンダ11の軸線方向に沿って直線運動する第1ピストン12が配置されている。第1ピストン12は、略円板形状になっている。第1ピストン12の外径は、第1シリンダ11の内径と略同じになっている。第1ピストン12は、第1シリンダ11の軸線方向において当該第1シリンダ11の内部空間を2つに仕切っている。
【0025】
第1ピストン12の中央からは、車幅方向H側に向かって柱状の出力軸13が延びている。第1ピストン12及び出力軸13は一体的に成形されている。出力軸13は、第1ピストン12とともに第1シリンダ11の軸線方向に沿って直線運動する。出力軸13の先端部は、第1シリンダ11の貫通孔11Aを介して第1シリンダ11の外部にまで至っている。出力軸13の先端部においては、当該出力軸13の中心軸線に直交する方向に挿入孔13Aが貫通している。
【0026】
図4に示すように、出力軸13において挿入孔13Aよりも先端側には、略円柱形状の回転体13Bが回転可能に支持されている。回転体13Bの中心軸線は、車両前後方向(図4における紙面直交方向)に延びている。そして、回転体13Bの径方向外側の一部は、出力軸13の先端面よりも車幅方向H側に突出している。また、回転体13Bは、出力軸13の先端部のうち、車両上下方向下側(図4における下側)に寄せて配置されている。
【0027】
図2に示すように、第1シリンダ11の内部には、当該第1シリンダ11における車幅方向H側から車幅方向I側に第1ピストン12を付勢する第1バネ14が配置されている。第1バネ14は、第1シリンダ11における車幅方向H側の端壁11Cと第1ピストン12との間に位置している。また、第1シリンダ11の内部空間における第1ピストン12よりも車幅方向I側の空間11Eには、図示しない空気供給源からの圧縮空気が導入される。
【0028】
第1シリンダ11における車幅方向I側の端壁11Dには、柱形状の第2シリンダ21が固定されている。第2シリンダ21の中心軸線は、第1シリンダ11の中心軸線と同軸になっている。第2シリンダ21の内部には、円柱状の内部空間が区画されている。第2シリンダ21における車幅方向H側の端壁21Cは、当該端壁21Cを厚み方向に貫通した貫通孔21Aを備えている。貫通孔21Aは、第2シリンダ21における車幅方向H側の端壁21Cの中央に位置しており、第1シリンダ11の貫通孔11Bと連通している。
【0029】
第2シリンダ21の内部には、当該第2シリンダ21の軸線方向に沿って直線運動する第2ピストン22が配置されている。第2ピストン22は、略円板形状になっている。第2ピストン22の外径は、第2シリンダ21の内径と略同じになっている。第2ピストン22は、第2シリンダ21の軸線方向において当該第2シリンダ21の内部空間を2つに仕切っている。
【0030】
第2ピストン22の中央からは、車幅方向H側に向かって円柱状の駆動軸23が延びている。第2ピストン22及び駆動軸23は一体的に成形されている。駆動軸23は、第2シリンダ21の貫通孔21A及び第1シリンダ11の貫通孔11Bに挿通されている。また、駆動軸23は、車幅方向I側において出力軸13と同軸に配置されている。この駆動軸23は、第2ピストン22とともに第2シリンダ21の軸線方向に沿って直線運動可能になっている。
【0031】
第2シリンダ21の内部には、当該第2シリンダ21における車幅方向I側から車幅方向H側へと第2ピストン22を付勢する第2バネ24が配置されている。第2バネ24は、第2シリンダ21における車幅方向I側の端壁21Dと第2ピストン22との間に位置している。この第2バネ24の付勢力は、第1バネ14の付勢力よりも大きくなっている。また、第2シリンダ21の内部空間における第2ピストン22よりも車幅方向H側の空間21Eには、図示しない空気供給源からの圧縮空気が導入される。
【0032】
なお、鉄道車両が停止している場合には、第2シリンダ21の内部空間における第2ピストン22よりも車幅方向H側の空間21Eに圧縮空気が導入されない。そのため、第2ピストン22及び駆動軸23が第2バネ24の付勢力によって車幅方向H側に移動し、駆動軸23が第1ピストン12を車幅方向H側へ押す。その結果、第1シリンダ11内に圧縮空気が導入されているか否かに拘らず、第1ピストン12及び出力軸13が、車幅方向H側へ移動する。
【0033】
図2に示すように、出力軸13には、回転レバー30が連結されている。回転レバー30は、出力軸13が直線運動することで当該出力軸13の直線運動を回転運動に変換して回転する。回転レバー30は、円状部31、レバー本体32、及びローラ33を備えている。回転レバー30の円状部31は、平面視で円形状になっており、その円の中心軸線が図1の車両上下方向(図2における紙面直交方向)に沿っている。円状部31は、キャリパーボディ86Aにおける車幅方向H側の端部に回転可能に支持されている。そして、この円状部31の中心軸線が、回転レバー30の回転中心P1になっている。円状部31の外周面からは、略棒形状のレバー本体32が延びている。レバー本体32の先端部には、略円柱形状のローラ33が回転可能に支持されている。また、ローラ33の回転軸線は、第1シリンダ11の軸線方向に対して直交しており、円状部31の中心軸線と平行になっている。レバー本体32の先端部及びローラ33は、出力軸13の挿入孔13Aに挿入されている。
【0034】
図2に示すように、レバー本体32の先端部及びローラ33が出力軸13の挿入孔13Aに挿入された状態においては、出力軸13が車幅方向H側に直線運動すると、挿入孔13Aの内周面のうち車幅方向I側がローラ33に接触する。また、レバー本体32の先端部及びローラ33が出力軸13の挿入孔13Aに挿入された状態においては、出力軸13が車幅方向I側に直線運動すると、挿入孔13Aの内周面のうち車幅方向H側がローラ33に接触する。
【0035】
回転レバー30における円状部31には、出力軸13の直線運動を受けて回転することでブレーキパッド90とディスク95との相対位置を変化させる回転アーム40が連結されている。回転アーム40と回転レバー30との連結部分の中心であって回転アーム40の回転中心である回転中心P2の中心軸線は、車両上下方向に沿っている。また、回転アーム40の回転中心P2は、回転レバー30の回転中心P1に対して偏心している。具体的には、回転中心P2は、回転中心P1を挟んでレバー本体32とは反対方向に位置している。なお、上述したように、回転レバー30の円状部31は、キャリパーボディ86Aにおける車幅方向H側の端部に回転可能に支持されている。したがって、回転アーム40は、回転レバー30を介してキャリパーボディ86Aにおける車幅方向H側の端部に連結されている。なお、車両上下方向が回転軸線方向である。
【0036】
回転アーム40は、回転中心P2を挟んで、概ね車両前後方向(図2において左右方向)両側に延びている。回転アーム40の基端は、第1シリンダ11よりも車両前後方向J側にまで至っている。また、回転アーム40の先端は、キャリパーボディ86Aよりも車両前後方向K側にまで至っている。
【0037】
回転アーム40の先端部には、連結ピン89を介して取付部45が連結されている。取付部45は、回転アーム40に対して第1シリンダ11の車幅方向I側に配置されている。取付部45は、連結ピン89を中心として揺動する。取付部45は、当該取付部45の揺動軸線方向から平面視すると、第1シリンダ11の車幅方向I側に向かうほど寸法が大きくなる略三角形状になっている。取付部45における車幅方向I側の面には、ブレーキパッド90が固定されている。ブレーキパッド90は、ディスク95の端面に倣うような略平板形状になっている。ブレーキパッド90は、ディスク95に押し当てられて摩擦力による制動力を発生する摩擦材である。
【0038】
キャリパーボディ86Aにおける車幅方向I側の端部にも、回転アーム40が回転可能に連結されている。また、車幅方向I側に配置された回転アーム40にも取付部45が連結されているとともに、当該取付部45にもブレーキパッド90が固定されている。なお、車幅方向I側に配置された回転アーム40、取付部45、ブレーキパッド90は、車幅方向H側に配置された回転アーム40に対して、線対称に配置されている他は同一構成である。したがって、車幅方向I側に配置された回転アーム40、取付部45、ブレーキパッド90については、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。ただし、2つの回転アーム40を区別して説明する際には、車幅方向H側に位置する回転アーム40を回転アーム40A、車幅方向I側に位置する回転アーム40を回転アーム40Bと、符号を変えて説明する。
【0039】
一対の回転アーム40の基端部同士は、全体として車幅方向に延びる隙間調整機構70によって連結されている。一対の回転アーム40のうち車幅方向I側に位置する回転アーム40Bには、隙間調整機構70の第1ハウジング76が連結されている。第1ハウジング76は、有底筒状になっており、第1ハウジング76の内部には、円柱形状の空間が区画されている。第1ハウジング76の底壁の中央においては、貫通孔76Aが設けられている。第1ハウジング76は、その中心軸線と直交する方向を軸として回転アーム40Bに対して相対回転可能に連結されている。
【0040】
第1ハウジング76の内周面には、略筒状の第1回転規制機構81を介して雄ねじ部71が取り付けられている。雄ねじ部71は、全体としては棒状になっている。雄ねじ部71においては、軸線方向の両端部を除いて外周面に雄ねじが切られている。そして、雄ねじ部71の一端部は、第1回転規制機構81に挿入されている。また、雄ねじ部71の一端部は第1回転規制機構81を貫通しており、雄ねじ部71の一端部は第1ハウジング76の貫通孔76Aにも挿入されている。雄ねじ部71の他端部は、第1ハウジング76の外部に突出している。
【0041】
第1回転規制機構81は、詳しい機構の図示は省略するが、第1ハウジング76に対する雄ねじ部71のトルクが一定値未満である場合には、第1ハウジング76に対する雄ねじ部71の相対回転を規制する。一方、第1ハウジング76に対する雄ねじ部71のトルクが一定値以上である場合には、第1ハウジング76に対する雄ねじ部71の相対回転を許容する。
【0042】
一対の回転アーム40のうち車幅方向H側に位置する回転アーム40Aには、隙間調整機構70の第2ハウジング77が連結されている。第2ハウジング77は、有底筒状になっており、第2ハウジング77の内部には、円柱形状の空間が区画されている。第2ハウジング77の底壁の中央においては、貫通孔77Aが設けられている。第2ハウジング77は、その中心軸線と直交する方向を軸として回転アーム40Aに対して相対回転可能に連結されている。
【0043】
第2ハウジング77の内周面には、略筒状の第2回転規制機構82を介して雌ねじ部72が取り付けられている。雌ねじ部72は、全体としては円筒状になっている。雌ねじ部72においては、軸線方向の一部分の内周面に雌ねじが切られている。そして、雌ねじ部72は、第2回転規制機構82の内側に取り付けられている。また、雌ねじ部72の一端は、第2ハウジング77の底壁に当接している。そして、雌ねじ部72の他端部は、第2ハウジング77の外部に突出している。
【0044】
第2回転規制機構82は、詳しい機構の図示は省略するが、第2ハウジング77に対する雌ねじ部72のトルクが一定値未満である場合には、第2ハウジング77に対する雌ねじ部72の相対回転を規制する。一方、第2ハウジング77に対する雌ねじ部72のトルクが一定値以上である場合には、第2ハウジング77に対する雌ねじ部72の相対回転を許容する。また、第2回転規制機構82は、第1回転規制機構81が雄ねじ部71の相対回転を許容するトルクよりも小さなトルクで、雌ねじ部72の相対回転を許容する。
【0045】
雌ねじ部72の内側には上述した雄ねじ部71が挿入されている。雌ねじ部72の雌ねじには雄ねじ部71の雄ねじが嵌め込まれている。また、雄ねじ部71は、雌ねじ部72を貫通している。雄ねじ部71の車幅方向H側の端部は、第2ハウジング77の貫通孔77Aにも挿入されている。すなわち、隙間調整機構70の第1ハウジング76及び第2ハウジング77は、雄ねじ部71及び雌ねじ部72によって連結されている。
【0046】
第2ハウジング77の外周面には、円筒状のカバー78が固定されている。カバー78は、第1ハウジング76側へと延びていて第1ハウジング76の外周面にも固定されている。つまり、カバー78は、第2ハウジング77と第1ハウジング76との間の隙間を、径方向外側から覆うように取り付けられている。また、カバー78は、軸線方向において蛇腹状になっていて、軸線方向に伸縮可能になっている。
【0047】
上記のように構成された隙間調整機構70においては、第1ハウジング76の貫通孔76Aや第2ハウジング77の貫通孔77Aを介して、手指や工具で雄ねじ部71に一定値以上のトルクを与えた場合、雄ねじ部71が、第1ハウジング76、第2ハウジング77、及び雌ねじ部72に対して相対回転する。すると、雄ねじ部71が、その回転方向に応じて、雌ねじ部72に対して軸線方向に相対移動する。その結果、隙間調整機構70の軸線方向の長さが変化して、一対の回転アーム40の基端部同士の距離が変化する。このように、隙間調整機構70は、手動での調整が可能になっている。
【0048】
隙間調整機構70において、雌ねじ部72の外周面には、略筒状のワンウェイクラッチ74を介して入力部材73が取り付けられている。入力部材73は、円筒状であり、その内周面がワンウェイクラッチ74の外周面に取り付けられている。入力部材73及びワンウェイクラッチ74は、雌ねじ部72の外周面における車幅方向H側の端に配置されている。
【0049】
ワンウェイクラッチ74は、詳しい機構の図示は省略するが、雌ねじ部72に対する入力部材73の周方向一方側への回転は規制しつつ、雌ねじ部72に対する入力部材73の周方向他方側への回転を許容する。したがって、入力部材73が周方向一方側へと回転した場合には、雌ねじ部72も、入力部材73とともに周方向一方側へと回転する。その結果、雄ねじ部71に対して雌ねじ部72が周方向一方側に回転することで、隙間調整機構70は一対の回転アーム40の基端部同士の距離が長くなるように調整する。すなわち、ワンウェイクラッチ74は、雄ねじ部71に対して雌ねじ部72が周方向一方側へ回転する力を伝達する。一方、入力部材73が周方向他方側へと回転した場合には、雌ねじ部72は、入力部材73とともに周方向他方側に回転しない。その結果、雄ねじ部71に対して雌ねじ部72は周方向他方側に回転しないため、隙間調整機構70は一対の回転アーム40の基端部同士の距離を調整しない。すなわち、ワンウェイクラッチ74は、雄ねじ部71に対して雌ねじ部72が周方向他方側へ回転する力を伝達しない。
【0050】
また、第2ハウジング77の周壁においては、周方向に窓部77Bが貫通している。窓部77Bは、車両前後方向K側に配置されている。また、窓部77Bは、入力部材73及びワンウェイクラッチ74の位置に対応して、第2ハウジング77における車幅方向H側の端部に配置されている。したがって、入力部材73の外面の一部は、窓部77Bを介して車両前後方向K側に露出している。
【0051】
第1シリンダ11よりも車幅方向H側には、出力軸13の直線運動を受けて車両上下方向の運動に変換する変換部50が配置されている。変換部50は、隙間調整機構70に対して車両上下方向の運動を伝達する。変換部50は、出力軸13の先端部を覆うケース65を備えている。ケース65は、車幅方向I側が開口しており、全体として四角箱形状になっている。ケース65の内部空間には、出力軸13の先端部が至っている。また、ケース65における車両前後方向J側の壁部には、車両前後方向において開口65Aが貫通している。
【0052】
図3に示すように、ケース65の内部には、車両上下方向に延びる円棒形状の第1軸部66が固定されている。車幅方向から視たときに、第1軸部66は、出力軸13と重なる位置に配置されている。図2に示すように、第1軸部66は、ケース65における車幅方向H側の壁部の近傍に配置されている。なお、図3に示すように、第1軸部66における上側の端部には、位置決め部材として機能する第1ストッパ66Aが固定されている。
【0053】
図3に示すように、ケース65の内部には、車両上下方向に延びる円棒形状の第2軸部67が固定されている。図2に示すように、第2軸部67は、ケース65における車幅方向H側の壁部の近傍に配置されている。また、第2軸部67は、第1軸部66よりも車両前後方向J側に配置されており、ケース65における車両前後方向J側の壁部の近傍に配置されている。図3に示すように、第2軸部67における上側の端部には、位置決め部材として機能する第2上側ストッパ67Aが固定されている。また、第2軸部67における下側の端部には、位置決め部材として機能する第2下側ストッパ67Bが固定されている。
【0054】
図5に示すように、ケース65の内部には、車両上下方向に延びる円棒形状の第3軸部68が固定されている。図2に示すように、第3軸部68は、ケース65における車両前後方向J側の壁部の近傍に配置されている。また、第3軸部68は、第2軸部67よりも車幅方向I側に配置されており、第1シリンダ11における車幅方向H側の端壁11Cの近傍に配置されている。図5に示すように、第3軸部68における上側の端部には、位置決め部材として機能する第3ストッパ68Aが固定されている。
【0055】
図3に示すように、第1軸部66、第2軸部67、及び第3軸部68には、隙間調整機構70に対して車両上下方向に移動する移動体52が支持されている。具体的には、移動体52における第1移動体53は、第1軸部66及び第2軸部67に対して車両上下方向に移動可能に支持されている。第1移動体53における本体部53Aは、第1軸部66及び第2軸部67の間に配置されている。本体部53Aは、長方形板状になっており、車両上下方向に延びている。本体部53Aにおける下端部からは、車両前後方向K側に向かって入力部53Bが延びている。入力部53Bには、図示しない貫通孔が設けられており、当該貫通孔に第1軸部66が挿通されている。本体部53Aにおける上端部からは、車両前後方向J側に向かって出力部53Cが延びている。出力部53Cには、図示しない貫通孔が設けられており、当該貫通孔に第2軸部67が挿通されている。
【0056】
図3に示すように、第1移動体53における出力部53Cの下側には、第2移動体54が固定されている。図5に示すように、第2移動体54は、車幅方向I側へと延びており、略長方板形状になっている。第2移動体54における車幅方向H側の端部には、図示しない貫通孔が設けられており、当該貫通孔に上記の第2軸部67が挿通されている。また、第2移動体54における車幅方向I側の端部には、図示しない貫通孔が設けられており、当該貫通孔に上記の第3軸部68が挿通されている。したがって、第2移動体54は、第2軸部67及び第3軸部68に対して支持されており、第1移動体53とともに車両上下方向に移動可能になっている。
【0057】
図5に示すように、第2移動体54は、当該第2移動体54を車両前後方向に貫通する溝部54Aを備えている。溝部54Aは、第2移動体54における車幅方向H側の端から第2移動体54における車幅方向I側の端の近傍まで延びている。したがって、溝部54Aは、車両上下方向の寸法よりも車幅方向の寸法が長い長溝になっている。
【0058】
図4に示すように、第1軸部66には、車両上下方向に移動可能に保持部63が支持されている。保持部63は、車幅方向H側が開口したような略U字形状になっており、保持部63におけるU字の両端は、第1軸部66に支持されている。図3に示すように、保持部63におけるU字の一端部は、第1移動体53における入力部53Bよりも上側であって第1ストッパ66Aよりも下側の部分で第1軸部66に支持されている。保持部63におけるU字の他端部は、第1移動体53における入力部53Bよりも下側で第1軸部66に支持されている。保持部63におけるU字の一端部と第1移動体53における入力部53Bとの間には、車両上下方向に付勢する吸収バネ62が配置されている。吸収バネ62は、保持部63におけるU字の一端部と第1移動体53における入力部53Bとの間で弾性圧縮された状態で第1軸部66に支持されており、保持部63の一端部から車両上下方向下側に向かって第1移動体53における入力部53Bを付勢する。この吸収バネ62の車両上下方向における最大弾性変形量は、車両上下方向における移動体52の最大移動量よりも大きくなっている。ここで、移動体52の最大移動量とは、第1軸部66、第2軸部67及び第3軸部68によって支持された移動体52が移動することができる車両上下方向の移動可能な範囲である。なお、吸収バネ62は、伝達部51と移動体52との間に介在される第2弾性部材に相当する。
【0059】
図4に示すように、保持部63の車幅方向I側には、出力軸13の直線運動を受けて当該直線運動を車両上下方向の運動に変換する伝達部51が固定されている。伝達部51は、車両上下方向の上側ほど先細りした略三角柱形状になっている。具体的には、図4に示すように、車両前後方向から視たときに、伝達部51は、当該伝達部51の斜面51Aが出力軸13と対向する直角三角形であり、出力軸13の中心軸線と伝達部51の斜面51Aとがなす角のうち鋭角側の角度Xは、約70度になっている。すなわち、出力軸13の直線運動方向と伝達部51の斜面51Aとがなす角のうち鋭角側の角度は、45度よりも大きくなっている。なお、伝達部51の斜面51Aは、平面である。また、伝達部51の斜面51Aは、出力軸13の直線運動を車両上下方向の運動に変換するように傾斜する傾斜面である。
【0060】
図3に示すように、第2軸部67には、車両上下方向に付勢する戻しバネ61が支持されている。戻しバネ61は、第2移動体54の下端と第2下側ストッパ67Bとの間で弾性圧縮された状態になっており、第2下側ストッパ67Bから上側に向かって第2移動体54を付勢する。なお、戻しバネ61は、出力軸13の直線運動を受けて移動体52が移動する方向とは反対方向に移動体52を付勢する第1弾性部材に相当する。
【0061】
車両上下方向において、吸収バネ62の下側部分と戻しバネ61の上側部分とが重なっている。そして、吸収バネ62及び戻しバネ61は、それぞれ移動体52に接触しており、移動体52を介して連結している。したがって、吸収バネ62及び戻しバネ61は、移動体52を介して並列配置されるように連結されるとともに車両上下方向において一部が重なっている。
【0062】
移動体52における第2移動体54には、移動体52と隙間調整機構70とを連結する連結部55が連結されている。連結部55は、移動体52の移動に応じて隙間調整機構70に力を伝達する。連結部55は、第2移動体54の溝部54Aに挿入された略四角柱形状の棒体56を備えている。棒体56の車両上下方向の寸法は、溝部54Aの車両上下方向の寸法と略同じになっている。すなわち、棒体56は、第2移動体54に対して車両上下方向に相対移動不能であり、第2移動体54の車両上下方向の移動に伴って当該第2移動体54とともに車両上下方向に移動する。また、棒体56の車幅方向の寸法は、溝部54Aの車幅方向の寸法よりも相応に小さくなっている。すなわち、車幅方向における棒体56の寸法と溝部54Aの寸法との差は、車両上下方向における棒体56の寸法と溝部54Aの寸法との差よりも大きい。したがって、車幅方向における棒体56の外面と溝部54Aの内面との間に生じた隙間により、棒体56は、第2移動体54に対して車幅方向に相対移動可能である。さらに、棒体56は、車両前後方向に延びる溝部54Aに挿通されているため、第2移動体54に対して車両前後方向に相対移動可能である。なお、溝部54Aは、車両上下方向に直交する車両前後方向に窪んでおり当該方向に棒体56を移動可能に支持する挿入溝である。
【0063】
図5に示すように、棒体56における車両前後方向K側の端部には、車両上下方向に延びる規制ピン57が固定されている。規制ピン57の車両上下方向の寸法は、溝部54Aの車両上下方向の寸法よりも大きくなっており、溝部54Aから棒体56が抜け落ちることを防止する。
【0064】
図3に示すように、棒体56における車両前後方向J側の端部には、隙間調整機構70の入力部材73に連結された支持部58が固定されている。支持部58は、隙間調整機構70の第2ハウジング77に固定されたガイド板59を介して隙間調整機構70の第2ハウジング77に支持されている。ガイド板59は、全体として四角板形状になっており、ガイド板59には、車両上下方向に延びる貫通孔である長孔59Aが設けられている。このガイド板59の長孔59Aには支持部58が挿通されており、ガイド板59は、車両上下方向に移動可能に支持部58を支持している。したがって、支持部58は、棒体56の車両上下方向の移動に伴って当該棒体56とともに車両上下方向に移動する。そして、支持部58の車両上下方向の移動に伴って、隙間調整機構70の入力部材73には、車両上下方向の力が伝達される。また、支持部58は、車両上下方向に延びる支持ピン58Aを介して棒体56を回転可能に支持している。したがって、棒体56は、当該棒体56における車両前後方向J側の端部と支持ピン58Aとの連結部分を回転中心として回転可能になっている。
【0065】
なお、上述したように、上記のブレーキ装置10では、車両上下方向が回転軸線方向である。また、回転軸線方向である車両上下方向に直交する方向のうち、一対の回転アーム40の基端部同士が車幅方向において隙間調整機構70によって連結されており、車幅方向が第1直交方向に相当する。さらに、車両前後方向は、回転軸線方向及び第1直交方向に直交しており、第2直交方向に相当する。
【0066】
次に、ブレーキ装置10の作用について説明する。ここで、鉄道車両が走行している際には、第2シリンダ21の内部空間における第2ピストン22よりも車幅方向H側の空間21Eに圧縮空気が導入される。このように空間21Eに圧縮空気が導入されると、第2バネ24の付勢力に抗して第2ピストン22及び駆動軸23が車幅方向I側に移動し、第2バネ24の付勢力による駆動軸23からの駆動力は出力軸13に伝達されない。したがって、以下の説明では、駆動軸23からの駆動力は出力軸13に伝達されないものとしてブレーキ装置10の作用を説明する。
【0067】
第1シリンダ11の内部空間における第1ピストン12よりも車幅方向I側の空間11Eに圧縮空気が導入されると、図2に示すように、第1バネ14の付勢力に抗して第1ピストン12及び出力軸13が車幅方向H側に直線運動する。そして、出力軸13の挿入孔13Aの内周面のうち車幅方向I側の内周面が、回転レバー30のローラ33に接触する。すると、回転レバー30のローラ33が、出力軸13の挿入孔13Aの内周面のうち車幅方向I側の内周面との接触位置を徐々に変えつつ車幅方向H側に移動する。このようなローラ33の移動に伴って、回転中心P1を中心として回転レバー30が一方向、すなわち図2における時計回りに回転する。このとき、回転中心P1を中心として車幅方向H側に位置する回転アーム40Aと回転レバー30との連結部分も時計回りに回転する。そのため、回転アーム40Aは、回転アーム40Aと回転レバー30との連結部分において、車幅方向I側へ向かう力を受ける。その結果、回転アーム40Aは、車幅方向I側に移動する。すると、回転アーム40Aに連結された取付部45及びブレーキパッド90がディスク95に近づくように移動して、回転アーム40A側のブレーキパッド90がディスク95の端面に当接する。
【0068】
また、上述したように、回転アーム40Aが車幅方向I側に移動すると、隙間調整機構70も車幅方向I側に移動する。そして、回転アーム40Bの基端部と隙間調整機構70との連結部分が車幅方向I側に移動する。ここで、回転アーム40Bは、その延設方向の略中央部でキャリパーボディ86Aに回転可能に連結されている。そのため、回転アーム40Bは、当該回転アーム40Bとキャリパーボディ86Aとの連結部分を回転中心として反時計回りに回転する。すると、回転アーム40Bに連結された取付部45及びブレーキパッド90がディスク95に近づくように移動して、回転アーム40B側のブレーキパッド90がディスク95の端面に当接する。そして、ディスク95は、車幅方向において、回転アーム40A側のブレーキパッド90と回転アーム40B側のブレーキパッド90との間で挟み込まれることで回転が制動される。
【0069】
一方、第1シリンダ11の内部空間における第1ピストン12よりも車幅方向I側の空間11Eに圧縮空気が導入されず、圧力が低下すると、第1バネ14の付勢力によって第1ピストン12及び出力軸13が車幅方向I側に直線運動する。そして、出力軸13の挿入孔13Aの内周面のうち車幅方向H側の内周面が、回転レバー30のローラ33に接触する。すると、回転レバー30のローラ33が、出力軸13の挿入孔13Aの内周面のうち車幅方向H側の内周面との接触位置を徐々に変えつつ車幅方向I側に移動する。このようなローラ33の移動に伴って、回転中心P1を中心として回転レバー30が他方向、すなわち図2における反時計回りに回転する。このとき、回転中心P1を中心として回転アーム40Aと回転レバー30との連結部分も反時計回りに回転する。そのため、回転アーム40Aは、回転アーム40Aと回転レバー30との連結部分において、車幅方向H側へ向かう力を受ける。その結果、回転アーム40Aは、車幅方向H側に移動する。すると、回転アーム40Aに連結された取付部45及びブレーキパッド90がディスク95から離れるように移動して、回転アーム40A側のブレーキパッド90がディスク95の端面から離間する。
【0070】
また、上述したように、回転アーム40Aが車幅方向H側に移動すると、隙間調整機構70も車幅方向H側に移動する。そして、回転アーム40Bの基端部と隙間調整機構70との連結部分が車幅方向H側に移動する。すると、回転アーム40Bは、当該回転アーム40Bとキャリパーボディ86Aとの連結部分を回転中心として時計回りに回転する。そして、回転アーム40Bに連結された取付部45及びブレーキパッド90がディスク95から離れるように移動して、回転アーム40B側のブレーキパッド90がディスク95の端面から離間する。
【0071】
ところで、ブレーキパッド90がディスク95に当接すると、回転するディスク95との摩擦によって徐々にブレーキパッド90が摩耗する。このようにブレーキパッド90が摩耗していくと、出力軸13が最も車幅方向I側に位置するときのブレーキパッド90からディスク95までの距離が長くなっていく。したがって、ブレーキパッド90がディスク95から離間した状態からブレーキパッド90がディスク95に当接するまでに直線運動する出力軸13の移動量も大きくなっていく。そして、出力軸13の移動量が一定値以上になると、図4に示すように、出力軸13の回転体13Bが伝達部51の斜面51Aに接触する。このように出力軸13の回転体13Bが伝達部51の斜面51Aに接触した状態で出力軸13が車幅方向H側に移動しようとすると、伝達部51は、出力軸13の回転体13Bとの接触位置を徐々に変えつつ車両上下方向の下側に移動する。すなわち、出力軸13の直線運動方向の力が回転アーム40の回転軸線方向の力に変換される。このような車両上下方向の下側への力が保持部63及び吸収バネ62を介して移動体52における第1移動体53に伝達されると、第1移動体53及び第2移動体54が車両上下方向の下側に移動する。そして、第2移動体54の溝部54Aに挿入された連結部55の棒体56は、第2移動体54とともに車両上下方向の下側に移動する。すると、棒体56とともに支持部58も車両上下方向の下側に移動する。このような支持部58の車両上下方向の下側の移動に伴って隙間調整機構70の入力部材73に車両上下方向の下側へと向かう力が伝達されると、入力部材73が周方向一方側、すなわち図3における反時計回りに回転する。すると、ワンウェイクラッチ74を介して入力部材73から雌ねじ部72に力が伝達されて、入力部材73とともに雌ねじ部72が反時計回りに回転する。そして、雌ねじ部72が雄ねじ部71に対して反時計回りに回転することにより、一対の回転アーム40の基端部同士の距離が長く調整される。すると、回転アーム40Aは、当該回転アーム40Aの回転中心P2を回転中心として周方向一方側、すなわち図2における時計回りに回転する。また、回転アーム40Bは、当該回転アーム40Bとキャリパーボディ86Aとの連結部分を回転中心として周方向他方側、すなわち図2における反時計回りに回転する。このような一対の回転アーム40の回転によって、当該一対の回転アーム40の先端部同士の距離が短く調整される。
【0072】
一方、出力軸13の回転体13Bが伝達部51の斜面51Aから離れるように出力軸13が車幅方向I側に移動しようとすると、戻しバネ61からの付勢力によって、移動体52における第1移動体53及び第2移動体54が車両上下方向の上側に移動する。そして、第2移動体54の溝部54Aに挿入された連結部55の棒体56は、第2移動体54とともに車両上下方向の上側に移動する。すると、棒体56とともに支持部58も車両上下方向の上側に移動する。このような支持部58の車両上下方向の上側への移動に伴って隙間調整機構70の入力部材73に車両上下方向の上側へと向かう力が伝達されると、入力部材73が周方向他方側、すなわち図3における時計回りに回転する。なお、入力部材73が時計回りに回転しようとするときにはワンウェイクラッチ74を介して入力部材73から雌ねじ部72に力が伝達されないため、雌ねじ部72は、時計回りに回転しない。すなわち、雌ねじ部72が雄ねじ部71に対して時計回りに回転する力はワンウェイクラッチ74を介して伝達されない。
【0073】
また、戻しバネ61からの付勢力によって移動体52における第1移動体53及び第2移動体54が車両上下方向の上側に移動すると、車両上下方向の上側への力が保持部63及び吸収バネ62を介して伝達部51に伝達され、伝達部51が上側に移動して元の位置に戻る。
【0074】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ブレーキ装置10では、隙間調整機構70によって一対の回転アーム40の基端部同士の距離が調整され、回転アーム40Aは、当該回転アーム40Aの回転中心P2を回転中心として周方向一方側、すなわち図2における時計回りに回転する。このように回転アーム40Aが回転すると、当該回転アーム40Aと、当該回転アーム40Aの基端部に連結された隙間調整機構70との相対的な位置関係が変化する。具体的には、隙間調整機構70の入力部材73の位置が、車幅方向に変化したり、車両前後方向に変化したりする。仮に、出力軸13からの力を隙間調整機構70に対して、車幅方向や車両前後方向の力として伝達する構成であると、出力軸13の移動量が一定値以上になって当該出力軸13の力が隙間調整機構70に伝達されたとしても、隙間調整機構70における雌ねじ部72の回転量が過度に小さくなることがある。このように隙間調整機構70における雌ねじ部72の回転量が小さくなると、隙間調整機構70による隙間の調整量を十分に確保できないこともあり得る。
【0075】
ここで、回転アーム40Aが回転して当該回転アーム40Aと隙間調整機構70との相対的な位置関係が変化したとしても、回転軸線方向における隙間調整機構70と変換部50との位置関係は変化しない。そこで、ブレーキ装置10において、変換部50は、出力軸13の直線運動方向の力、すなわち出力軸13の車幅方向の力を受けて隙間調整機構70に対して回転アーム40の回転軸線方向の力を伝達する。すなわち、隙間調整機構70には、回転軸線方向である車両上下方向の力が変換部50から伝達される。これにより、出力軸13の移動量が一定値以上になって当該出力軸13の力が隙間調整機構70に伝達されれば、隙間調整機構70における雌ねじ部72の回転量が過度に小さくなることがなく、雌ねじ部72は所定値以上回転する。その結果、回転アーム40Aの回転によって当該回転アーム40Aと隙間調整機構70との相対的な位置関係が変化したとしても、隙間調整機構70による隙間の調整量を確保できる。
【0076】
(2)ブレーキ装置10では、出力軸13の回転体13Bが伝達部51の斜面51Aに接触することで、出力軸13の車幅方向H側へと向かう力を車両上下方向の下側へと向かう力に変換する。したがって、ブレーキ装置10では、出力軸13の回転体13Bと伝達部51の斜面51Aとを接触させるという簡便な構成によって、出力軸13の直線運動を車両上下方向への力に変換できる。
【0077】
(3)図4に示すように、伝達部51は、出力軸13の直線運動方向と伝達部51の斜面51Aとがなす角のうち鋭角側の角度が45度よりも大きくなっている。そのため、出力軸13から変換部50に力を伝達する際においては、出力軸13の回転体13Bが伝達部51の斜面51Aに接触し始めてからの車幅方向H側への出力軸13の移動量に比べて、出力軸13の力によって車両上下方向の下側へ移動する伝達部51の移動量が大きくなる。これにより、出力軸13の移動可能な範囲が比較的に小さかったとしても、伝達部51からの力が伝達される移動体52及び連結部55の車両上下方向の移動量を大きくできる。すなわち、隙間調整機構70の入力部材73を回転させるための移動体52及び連結部55の移動量を確保しやすい。
【0078】
(4)ブレーキ装置10では、回転可能に支持された回転体13Bが伝達部51の斜面51Aと接触する。そのため、出力軸13の回転体13Bが伝達部51の斜面51Aに接触した状態で出力軸13が車幅方向H側に移動するときには、出力軸13の回転体13Bが回転しつつ伝達部51の斜面51Aとの接触位置が変わる。これにより、出力軸13の回転体13Bと伝達部51の斜面51Aとが接触位置を変える際の抵抗を低減できる。
【0079】
(5)ブレーキ装置10では、回転アーム40Aが回転すると、出力軸13に対する隙間調整機構70の位置だけでなく移動体52に対する隙間調整機構70の入力部材73の位置も、車幅方向に変化したり、車両前後方向に変化したりする。ここで、移動体52は、車両上下方向に移動可能になっているものの、車幅方向及び車両前後方向に移動できない。
【0080】
この点、ブレーキ装置10において、移動体52における第2移動体54には、移動体52の移動に応じて隙間調整機構70に力を伝達する連結部55が連結されている。そして、第2移動体54における車両前後方向に延びる溝部54Aには、連結部55の棒体56が挿入されている。そのため、連結部55の棒体56は、第2移動体54の溝部54Aの内部において棒体56の軸線方向、具体的には概ね車両前後方向に移動することで、連結部55は、移動体52に対して車両上下方向に直交する車両前後方向に相対移動可能になっている。これにより、回転アーム40Aの回転に伴って隙間調整機構70が車両上下方向に直交する車両前後方向に移動したとしても、その隙間調整機構70の移動を許容しつつ、出力軸13の力を隙間調整機構70に伝達できる。
【0081】
(6)第2移動体54における溝部54Aの車幅方向の寸法は、棒体56の車幅方向の寸法よりも相応に大きくなっている。そのため、連結部55の棒体56は、第2移動体54の溝部54Aの内部において車両前後方向だけでなく車幅方向にも移動可能である。したがって、連結部55は、車両上下方向に直交する平面内での隙間調整機構70の位置変化に追従できる。
【0082】
(7)ブレーキ装置10では、変換部50における戻しバネ61によって移動体52における第2移動体54が車両上下方向の上側に付勢されている。そのため、出力軸13が伝達部51の斜面51Aに接触した状態から離れるように車幅方向I側に移動しようとすると、変換部50における戻しバネ61からの付勢力によって、移動体52における第1移動体53及び第2移動体54が車両上下方向の上側に移動する。すなわち、第1移動体53及び第2移動体54は、出力軸13からの力が第1移動体53及び第2移動体54に伝達される前の位置に戻るように移動する。これにより、移動体52を、戻しバネ61の付勢力によって出力軸13からの力が伝達される前の位置に戻すことができる。
【0083】
(8)出力軸13が直線運動することにより、伝達部51及び移動体52が車両上下方向の下側に移動する。ここで、移動体52が車両上下方向の下側の限界位置まで移動してそれ以上移動できなくなった状況において出力軸13から伝達部51に力が作用することがある。具体的には、移動体52が車両上下方向の下側の限界位置まで移動してそれ以上移動できなくなった状況において、ブレーキパッド90がディスク95に当接していないと、さらに出力軸13が車幅方向H側に移動しようとする。出力軸13が車幅方向H側に移動すると、伝達部51が車両上下方向の下側に移動しようとする。仮に、吸収バネ62が設けられていないと、移動体52が車両上下方向の下側の限界位置まで移動してそれ以上移動できなくなった状況では、出力軸13の車幅方向H側への移動によって、出力軸13と移動体52との間に位置する伝達部51に大きな力が作用することがある。この点、ブレーキ装置10では、伝達部51と移動体52における第1移動体53との間に吸収バネ62が介在されている。そして、ブレーキ装置10では、車両上下方向における吸収バネ62の最大弾性変形量は、車両上下方向における移動体52の最大移動量よりも大きくなっている。そのため、移動体52が車両上下方向の下側の限界位置まで移動してそれ以上移動できなくなった状況であっても、吸収バネ62には未だ弾性変形の余地がある。これにより、移動体52が車両上下方向の下側に移動できなくなった状況での出力軸13の車幅方向H側への更なる移動に伴って、出力軸13からの力が当該出力軸13と移動体52との間の伝達部51に作用しようとしても、その力を伝達部51と第1移動体53との間に介在された吸収バネ62によって吸収できる。したがって、過度に大きな力が伝達部51に作用することがなく、そのような大きな力によって例えば伝達部51が塑性変形することもない。
【0084】
(9)ブレーキ装置10においては、車両上下方向に延びる吸収バネ62と車両上下方向に延びる戻しバネ61とが移動体52を介して連結されている。ここで、仮に、吸収バネ62及び戻しバネ61が移動体52を介して直列配置されるように連結されている、例えば吸収バネ62及び戻しバネ61が同一の第1軸部66に取り付けられていると、変換部50における車両上下方向の寸法が大きくなりやすい。このように変換部50の車両上下方向の寸法が大きくなると、ブレーキ装置10全体の車両上下方向の寸法が大きくなることもあり得る。
【0085】
この点、ブレーキ装置10においては、吸収バネ62及び戻しバネ61は、移動体52を介して並列配置されるように連結されるとともに車両上下方向において一部が重なっている。そのため、吸収バネ62及び戻しバネ61という2つの弾性部材を採用しつつも、2つの弾性部材を車両上下方向にコンパクトに配置できる。これにより、2つの弾性部材を採用することに伴って変換部50の車両上下方向の寸法が大きくなったり、ブレーキ装置10の車両上下方向の寸法が大きくなったりすることを抑制できる。
【0086】
(10)ブレーキ装置10における隙間調整機構70では、雄ねじが切られた雄ねじ部71と、雌ねじが切られた雌ねじ部72とを備えている。そして、この隙間調整機構70では、変換部50からの車両上下方向の運動に応じて雄ねじ部71に対して第2ねじ部が回転することで一対の回転アーム40の基端部同士の距離を調整する。したがって、隙間調整機構70では、雄ねじ部71に対して第2ねじ部を回転させるといった簡素な構成によって一対の回転アーム40の基端部同士の距離を調整できる。
【0087】
(11)ブレーキ装置10では、出力軸13が伝達部51の斜面51Aに接触した状態から離れるように車幅方向I側に移動しようとすると、変換部50における戻しバネ61からの付勢力によって、移動体52が車両上下方向の上側に移動する。仮に、ワンウェイクラッチ74が設けられていないと、移動体52が車両上下方向の上側に移動することで入力部材73が周方向他方側、すなわち図3における時計回りに回転したときに、雌ねじ部72が雄ねじ部71に対して時計回りに回転する。その結果、隙間調整機構70は一対の回転アーム40の基端部同士の距離が短くなるように調整する。
【0088】
この点、本実施形態では、ワンウェイクラッチ74が設けられているため、移動体52が車両上下方向の上側に移動することで入力部材73が周方向他方側、すなわち図3における時計回りに回転しても、ワンウェイクラッチ74を介して入力部材73から雌ねじ部72に力が伝達されない。そのため、雌ねじ部72が雄ねじ部71に対して時計回りに回転することがない。これにより、移動体52の車両上下方向の上側への移動に伴って一対の回転アーム40の基端部同士の距離が短くなることを抑制できる。
【0089】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態において、隙間調整機構70と一対の回転アーム40との連結位置は変更できる。例えば、隙間調整機構70の第1ハウジング76は、回転アーム40Bにおけるキャリパーボディ86Aとの連結部分よりも基端側であって基端部よりも先端側の部分に連結されていてもよい。同様に、隙間調整機構70の第2ハウジング77と回転アーム40Aとの連結位置は変更できる。
【0090】
・上記実施形態において、変換部50における伝達部51の構成は変更できる。例えば、伝達部51の斜面51Aの角度は変更できる。具体例としては、車両前後方向から視たときに、出力軸13の中心軸線と伝達部51の斜面51Aとがなす角のうち鋭角側の角度Xは、45度になっていてもよいし、45度よりも小さくなっていてもよい。この構成においても、出力軸13の回転体13Bが伝達部51の斜面51Aに接触し始めてからの車幅方向H側への出力軸13の移動可能な範囲が十分に大きければ、隙間調整機構70の入力部材73を回転させるための移動体52及び連結部55の移動量を確保できる。
【0091】
・また、例えば、出力軸13の直線運動を変換する機構は伝達部51に限らない。伝達部としては、三角柱形状の伝達部51に代えて、カム機構やリンク機構を採用することで、出力軸13の直線運動方向の力を車両上下方向の力に変換してもよい。
【0092】
・上記実施形態において、変換部50における移動体52及び連結部55の構成は変更できる。例えば、移動体52における第2移動体54の溝部54Aは貫通している必要はない。具体例としては、第2移動体54における車両前後方向J側の端面から車両前後方向K側に向かって溝部が窪んでいてもよい。この構成においても、第2移動体54の溝部に連結部55の棒体56が挿入されていれば、第2移動体54の溝部の内部において連結部55の棒体56が当該棒体56の軸線方向に移動可能である。
【0093】
・また、例えば、第2移動体54の溝部54Aの車幅方向の寸法は、連結部55の棒体の車幅方向の寸法と略同じになっていてもよい。この構成においても、連結部55の棒体が車幅方向に弾性変形可能な構成になっていれば、連結部55は、移動体52に対して車幅方向に相対移動可能になっているといえる。この具体例としては、車幅方向の厚みが薄い長方形板状の棒体を採用できる。
【0094】
・さらに、例えば、第2移動体54の溝部54Aの貫通方向は車両前後方向に限らない。具体例としては、第2移動体54の溝部54Aは、車両前後方向に対して車幅方向に多少傾いた方向に貫通していてもよい。
・また、例えば、出力軸13の直線運動を受けて隙間調整機構70に対して回転軸線方向の力を伝達できるのであれば、変換部50において移動体52及び連結部55を省略してもよい。
【0095】
・上記実施形態において、戻しバネ61の配置は変更できる。例えば、戻しバネ61は、第1軸部66における第1移動体53の入力部53Bとケース65の下側の端壁との間に圧縮された状態で配置されていてもよい。この場合には、戻しバネ61は、ケース65の下側の端壁から上側に向かって移動体52における第1移動体53を付勢する。同様に、戻しバネ61は、第3軸部68に取り付けられていてもよい。なお、変換部50における車両上下方向のコンパクト化を図る上では、戻しバネ61は、吸収バネ62と並列配置できるように、第2軸部67や第3軸部68に取り付けることが好ましい。
【0096】
・上記実施形態において、移動体52を元の位置に戻すための構成は戻しバネ61に限らない。例えば、出力軸13の先端部と伝達部51をワイヤで連結し、力の向きを変換させるための滑車に上記のワイヤを巻き付けてもよい。この構成においては、出力軸13の回転体13Bが伝達部51の斜面51Aから離れるように出力軸13が車幅方向I側に移動するときに、ワイヤを介して出力軸13の力が伝達部51に伝達される。ここで、伝達部51に伝達される力が、滑車によって出力軸13の車幅方向I側への力から車両上下方向の上側への力へと変換されていれば、出力軸13の力によって伝達部51を車両上下方向の上側に移動させることができる。
【0097】
・上記実施形態において、車両上下方向における吸収バネ62の最大弾性変形量は、車両上下方向における移動体52の最大移動量以下になっていてもよい。この構成においても、吸収バネ62が伝達部51と移動体52との間に介在されていれば、出力軸13が伝達部51に接触したときに、吸収バネ62が弾性変形することで出力軸13から伝達部51に過度に大きな衝撃力が作用することを抑制できる。なお、このような衝撃力が作用することを抑制する上では、吸収バネ62に代えて、ゴム材等の弾性部材を第2弾性部材として採用してもよい。
【0098】
・上記実施形態において、吸収バネ62を省略して、伝達部51と移動体52とを連結してもよい。
・上記実施形態において、第1シリンダ11の配置は変更できる。例えば、第1シリンダ11の中心軸線は、車両前後方向、言い換えれば回転アーム40の延出方向に沿っていてもよい。この構成においては、第1シリンダ11の内部で出力軸13が車両前後方向に直線運動する。そのため、車両前後方向に直線運動する出力軸13に合わせて伝達部51の配置を変更すれば、出力軸13の直線運動方向の力を車両上下方向の力に変換できる。
【符号の説明】
【0099】
10…ブレーキ装置
11…第1シリンダ
12…第1ピストン
13…出力軸
30…回転レバー
40…回転アーム
40A…回転アーム
40B…回転アーム
45…取付部
50…変換部
51…伝達部
52…移動体
55…連結部
56…棒体
70…隙間調整機構
71…雄ねじ部
72…雌ねじ部
73…入力部材
74…ワンウェイクラッチ
76…第1ハウジング
77…第2ハウジング
78…カバー
90…ブレーキパッド
95…ディスク
図1
図2
図3
図4
図5