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特許7469141ブレーキ装置及びブレーキ装置用の隙間調整機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ブレーキ装置及びブレーキ装置用の隙間調整機構
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/56 20060101AFI20240409BHJP
   F16D 55/22 20060101ALI20240409BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20240409BHJP
   B61H 5/00 20060101ALI20240409BHJP
   F16D 41/06 20060101ALI20240409BHJP
   F16D 125/22 20120101ALN20240409BHJP
【FI】
F16D65/56 D
F16D55/22 Z
F16D65/18
B61H5/00
F16D41/06 F
F16D125:22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020091658
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021188633
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大野 智也
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-519049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/56
F16D 55/22
F16D 65/18
B61H 5/00
F16D 41/06
F16D 125/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に摩擦材が取り付けられ、少なくとも一方が回転することで前記摩擦材がブレーキディスクを挟む一対の回転アームと、
前記一対の回転アームの回転中心を挟んで前記一対の回転アームの先端側とは反対側の基端側の部分に接続され、前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離を調整する隙間調整機構とを備えているブレーキ装置であって、
前記隙間調整機構は、
雄ねじ部と、
前記雄ねじ部が嵌め込まれる雌ねじ部と、
シリンダの内部に配置されたピストンから入力される力によって前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の一方のねじ部材を前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の他方のねじ部材に対して一方の方向に相対回転させる入力部材と
前記一方のねじ部材を保持するとともに前記回転アームに固定された保持部材とを備え、
前記一方のねじ部材が前記他方のねじ部材に対して前記一方の方向に相対回転したときに前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離は長くなり、
前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の前記一方の方向への相対回転を許容しつつ、且つ、前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の他方の方向への相対回転を規制するワンウェイクラッチをさらに備え
前記ワンウェイクラッチは、前記一方のねじ部材及び前記保持部材の間に介在されており、
前記一方のねじ部材は径方向外側に突出する突出部を備え、
前記突出部には、前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の軸線方向において、前記保持部材の被当接面と対向して当接する当接面が設けられており、
前記保持部材は、前記ワンウェイクラッチが収容される第1収容空間と、前記第1収容空間に接続されて前記突出部を収容する第2収容空間とを含み、
前記第2収容空間の内径は、前記第1収容空間の内径よりも長くなっており、
前記被当接面は、前記第1収容空間と前記第2収容空間との境界の段差面である
ブレーキ装置。
【請求項2】
先端側に摩擦材が取り付けられ、少なくとも一方が回転することで前記摩擦材がブレーキディスクを挟む一対の回転アームと、
前記一対の回転アームの回転中心を挟んで前記一対の回転アームの先端側とは反対側の基端側の部分に接続され、前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離を調整する隙間調整機構とを備えているブレーキ装置であって、
前記隙間調整機構は、
雄ねじ部と、
前記雄ねじ部が嵌め込まれる雌ねじ部と、
シリンダの内部に配置されたピストンから入力される力によって前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の一方のねじ部材を前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の他方のねじ部材に対して一方の方向に相対回転させる入力部材と
前記一方のねじ部材を保持するとともに前記回転アームに固定された保持部材とを備え、
前記一方のねじ部材が前記他方のねじ部材に対して前記一方の方向に相対回転したときに前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離は長くなり、
前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の前記一方の方向への相対回転を許容しつつ、且つ、前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の他方の方向への相対回転を規制するワンウェイクラッチをさらに備え
前記ワンウェイクラッチは、前記一方のねじ部材及び前記保持部材の間に介在されており、
前記一方のねじ部材は径方向外側に突出する突出部を備え、
前記突出部には、前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の軸線方向において、前記保持部材の被当接面と対向して当接する当接面が設けられており、
前記隙間調整機構は、前記当接面が前記被当接面に当接するように前記突出部を付勢する弾性部材をさらに備えている
ブレーキ装置。
【請求項3】
先端側に摩擦材が取り付けられ、少なくとも一方が回転することで前記摩擦材がブレーキディスクを挟む一対の回転アームと、
前記一対の回転アームの回転中心を挟んで前記一対の回転アームの先端側とは反対側の基端側の部分に接続され、前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離を調整する隙間調整機構とを備えているブレーキ装置であって、
前記隙間調整機構は、
雄ねじ部と、
前記雄ねじ部が嵌め込まれる雌ねじ部と、
シリンダの内部に配置されたピストンから入力される力によって前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の一方のねじ部材を前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の他方のねじ部材に対して一方の方向に相対回転させる入力部材とを備え、
前記一方のねじ部材が前記他方のねじ部材に対して前記一方の方向に相対回転したときに前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離は長くなり、
前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の前記一方の方向への相対回転を許容しつつ、且つ、前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の他方の方向への相対回転を規制するワンウェイクラッチをさらに備え
前記他方のねじ部材における端部には、前記一方のねじ部材に対して前記他方のねじ部材を相対回転させることが可能な調整部が設けられている
ブレーキ装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記他方のねじ部材における両端部にそれぞれ設けられている
請求項3に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記調整部は、第1調整部と第2調整部とを含み、
前記雄ねじ部は、前記雌ねじ部が嵌め込まれるねじ本体と、前記ねじ本体と同軸になるように固定されるとともに前記ねじ本体における軸線方向の一端から突出するロッドとを備え、
前記ねじ本体における前記ロッドとは反対側の軸線方向の端部に前記第1調整部が設けられているとともに、前記ロッドにおける前記ねじ本体とは反対側の軸線方向の端部に前記第2調整部が設けられている
請求項4に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記一方のねじ部材は前記雌ねじ部であり、前記他方のねじ部材は前記雄ねじ部である
請求項1~請求項5の何れか一項に記載のブレーキ装置。
【請求項7】
先端側に摩擦材が取り付けられ、少なくとも一方が回転することで前記摩擦材がブレーキディスクを挟む一対の回転アームを備えるブレーキ装置に適用され、
前記一対の回転アームの回転中心を挟んで前記一対の回転アームの先端側とは反対側の基端側の部分に接続され、前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離を調整する隙間調整機構であって、
雄ねじ部と、
前記雄ねじ部が嵌め込まれる雌ねじ部と、
シリンダの内部に配置されたピストンから入力される力によって前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の一方のねじ部材を前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の他方のねじ部材に対して一方の方向に相対回転させる入力部材と
前記一方のねじ部材を保持するとともに前記回転アームに固定された保持部材とを備え、
前記一方のねじ部材が前記他方のねじ部材に対して前記一方の方向に相対回転したときに前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離は長くなり、
前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の前記一方の方向への相対回転を許容しつつ、且つ、前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の他方の方向への相対回転を規制するワンウェイクラッチをさらに備え
前記ワンウェイクラッチは、前記一方のねじ部材及び前記保持部材の間に介在されており、
前記一方のねじ部材は径方向外側に突出する突出部を備え、
前記突出部には、前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の軸線方向において、前記保持部材の被当接面と対向して当接する当接面が設けられており、
前記保持部材は、前記ワンウェイクラッチが収容される第1収容空間と、前記第1収容空間に接続されて前記突出部を収容する第2収容空間とを含み、
前記第2収容空間の内径は、前記第1収容空間の内径よりも長くなっており、
前記被当接面は、前記第1収容空間と前記第2収容空間との境界の段差面である
ブレーキ装置用の隙間調整機構。
【請求項8】
先端側に摩擦材が取り付けられ、少なくとも一方が回転することで前記摩擦材がブレーキディスクを挟む一対の回転アームを備えるブレーキ装置に適用され、
前記一対の回転アームの回転中心を挟んで前記一対の回転アームの先端側とは反対側の基端側の部分に接続され、前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離を調整する隙間調整機構であって、
雄ねじ部と、
前記雄ねじ部が嵌め込まれる雌ねじ部と、
シリンダの内部に配置されたピストンから入力される力によって前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の一方のねじ部材を前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の他方のねじ部材に対して一方の方向に相対回転させる入力部材と
前記一方のねじ部材を保持するとともに前記回転アームに固定された保持部材とを備え、
前記一方のねじ部材が前記他方のねじ部材に対して前記一方の方向に相対回転したときに前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離は長くなり、
前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の前記一方の方向への相対回転を許容しつつ、且つ、前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の他方の方向への相対回転を規制するワンウェイクラッチをさらに備え
前記ワンウェイクラッチは、前記一方のねじ部材及び前記保持部材の間に介在されており、
前記一方のねじ部材は径方向外側に突出する突出部を備え、
前記突出部には、前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の軸線方向において、前記保持部材の被当接面と対向して当接する当接面が設けられており、
前記隙間調整機構は、前記当接面が前記被当接面に当接するように前記突出部を付勢する弾性部材をさらに備えている
ブレーキ装置用の隙間調整機構。
【請求項9】
先端側に摩擦材が取り付けられ、少なくとも一方が回転することで前記摩擦材がブレーキディスクを挟む一対の回転アームを備えるブレーキ装置に適用され、
前記一対の回転アームの回転中心を挟んで前記一対の回転アームの先端側とは反対側の基端側の部分に接続され、前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離を調整する隙間調整機構であって、
雄ねじ部と、
前記雄ねじ部が嵌め込まれる雌ねじ部と、
シリンダの内部に配置されたピストンから入力される力によって前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の一方のねじ部材を前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の他方のねじ部材に対して一方の方向に相対回転させる入力部材とを備え、
前記一方のねじ部材が前記他方のねじ部材に対して前記一方の方向に相対回転したときに前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離は長くなり、
前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の前記一方の方向への相対回転を許容しつつ、且つ、前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の他方の方向への相対回転を規制するワンウェイクラッチをさらに備え
前記他方のねじ部材における端部には、前記一方のねじ部材に対して前記他方のねじ部材を相対回転させることが可能な調整部が設けられている
ブレーキ装置用の隙間調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置及びブレーキ装置用の隙間調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両に用いられるディスクブレーキ式のブレーキ装置が記載されている。このブレーキ装置は、車軸に固定されたディスクを挟む一対の回転アームを備えている。これらの回転アームの先端部には、ブレーキパッドが固定される取付部が取り付けられている。そして、1対の回転アームの先端部に支持されたブレーキパッドの間には、車輪とともに回転するディスクが配置されている。また、一対の回転アームの基端部の間には、ディスクとブレーキパッドとの間の距離を調整する隙間調整機構が配置されている。隙間調整機構は、一対の回転アームの基端部にそれぞれ連結されている。一対の回転アームの一方にはシリンダの内部に配置されたピストンに連結されており、一対の回転アームは空気圧によって駆動するピストンからの駆動力によって回転する。特許文献1のブレーキ装置では、回転アームが回転すると、回転アームの先端部に支持されたブレーキパッドがディスクに当接する。なお、ブレーキパッドがディスクに当接すると、ブレーキパッドが徐々に摩耗し、ブレーキパッドとディスクとの間の距離が長くなる。
【0003】
特許文献1のブレーキ装置における隙間調整機構は、雄ねじが切られて一対の回転アームの基端部の間に設けられる雄ねじ部と、当該雄ねじ部に嵌め込まれる雌ねじが切られた筒状の雌ねじ部とを備えている。この隙間調整機構では、ピストンが一定量以上移動すると、ピストンの駆動力が雌ねじ部に伝達される。そして、ピストンの駆動力によって、雌ねじ部が雄ねじ部に対して一方の方向に相対回転することで、一対の回転アームの基端部間の距離が長くなる。一方、一対の回転アームの先端部間の距離は短くなるため、ディスクとブレーキパッドとの間の距離が短くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/095423号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のブレーキ装置の隙間調整機構においては、ブレーキ装置のブレーキによる反力や鉄道車両の振動等によって、雌ねじ部を雄ねじ部に対して他方の方向に回転させるような力が雌ねじ部に作用することがある。このように雄ねじ部に対して雌ねじ部が他方の方向に回転すると、一対の回転アームの基端部間の距離が短くなるおそれがある。その結果、ディスクとブレーキパッドとの間の距離が変わることがある。
【0006】
本発明は、こうした実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、一対の回転アームの基端部間の距離が短くなることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのブレーキ装置は、先端側に摩擦材が取り付けられ、少なくとも一方が回転することで前記摩擦材がブレーキディスクを挟む一対の回転アームと、前記一対の回転アームの回転中心を挟んで前記一対の回転アームの先端側とは反対側の基端側の部分に接続され、前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離を調整する隙間調整機構とを備えているブレーキ装置であって、前記隙間調整機構は、雄ねじ部と、前記雄ねじ部が嵌め込まれる雌ねじ部と、シリンダの内部に配置されたピストンから入力される力によって前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の一方のねじ部材を前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の他方のねじ部材に対して一方の方向に相対回転させる入力部材とを備え、前記一方のねじ部材が前記他方のねじ部材に対して前記一方の方向に相対回転したときに前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離は長くなり、前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の前記一方の方向への相対回転を許容しつつ、且つ、前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の他方の方向への相対回転を規制するワンウェイクラッチをさらに備える。
【0008】
上記構成によれば、振動等によって、雄ねじ部及び雌ねじ部の一方のねじ部材を、雄ねじ部及び雌ねじ部の他方のねじ部材に対して他方の方向に回転させるような力が作用しても、一対の回転アームの基端部同士の距離が短くなることを抑制できる。
【0009】
上記ブレーキ装置において、前記一方のねじ部材を保持するとともに前記回転アームに固定された保持部材とを備え、前記ワンウェイクラッチは、前記一方のねじ部材及び前記保持部材の間に介在されていてもよい。
【0010】
上記ブレーキ装置において、前記一方のねじ部材は径方向外側に突出する突出部を備え、前記突出部には、前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の軸線方向において、前記保持部材の被当接面と対向して当接する当接面が設けられていてもよい。
【0011】
上記ブレーキ装置において、前記保持部材は、ワンウェイクラッチが収容される第1収容空間と、前記第1収容空間に接続されて前記突出部を収容する第2収容空間とを含み、前記第2収容空間の内径は、前記第1収容空間の内径よりも長くなっており、前記被当接面は、前記第1収容空間と前記第2収容空間との境界の段差面であってもよい。
【0012】
上記ブレーキ装置において、前記隙間調整機構は、前記当接面が前記被当接面に当接するように前記突出部を付勢する弾性部材を備えていてもよい。
上記ブレーキ装置において、前記他方のねじ部材における端部には、前記一方のねじ部材に対して前記他方のねじ部材を相対回転させることが可能な調整部が設けられていてもよい。
【0013】
上記ブレーキ装置において、前記調整部は、前記他方のねじ部材における両端部にそれぞれ設けられていてもよい。
上記ブレーキ装置において、前記調整部は、第1調整部と第2調整部とを含み、前記雄ねじ部は、前記雌ねじ部が嵌め込まれるねじ本体と、前記ねじ本体と同軸になるように固定されるとともに前記ねじ本体における軸線方向の一端から突出するロッドとを備え、前記ねじ本体における前記ロッドとは反対側の軸線方向の端部に前記第1調整部が設けられているとともに、前記ロッドにおける前記ねじ本体とは反対側の軸線方向の端部に前記第2調整部が設けられていてもよい。
【0014】
上記ブレーキ装置において、前記一方のねじ部材は前記雌ねじ部であり、前記他方のねじ部材は前記雄ねじ部であってもよい。
上記課題を解決するためのブレーキ装置用の隙間調整機構は、先端側に摩擦材が取り付けられ、少なくとも一方が回転することで前記摩擦材がブレーキディスクを挟む一対の回転アームを備えるブレーキ装置に適用され、前記一対の回転アームの回転中心を挟んで前記一対の回転アームの先端側とは反対側の基端側の部分に接続され、前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離を調整する隙間調整機構であって、雄ねじ部と、前記雄ねじ部が嵌め込まれる雌ねじ部と、シリンダの内部に配置されたピストンから入力される力によって前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の一方のねじ部材を前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の他方のねじ部材に対して一方の方向に相対回転させる入力部材とを備え、前記一方のねじ部材が前記他方のねじ部材に対して前記一方の方向に相対回転したときに前記一対の回転アームの基端側の部分の間の距離は長くなり、前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の前記一方の方向への相対回転を許容しつつ、且つ、前記他方のねじ部材に対する前記一方のねじ部材の他方の方向への相対回転を規制するワンウェイクラッチをさらに備える。
【0015】
上記構成によれば、振動等によって、雄ねじ部及び雌ねじ部の一方のねじ部材を、雄ねじ部及び雌ねじ部の他方のねじ部材に対して他方の方向に回転させるような力が作用しても、一対の回転アームの基端部同士の距離が短くなることを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一対の回転アームの基端部間の距離が意図せず短くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ブレーキ装置の斜視図。
図2】ブレーキ装置の平面図における部分断面図。
図3図2における3-3線での断面図。
図4図3における4-4線での断面図。
図5図3における5-5線での断面図。
図6図2における拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、鉄道車両に取り付けられたブレーキ装置及びブレーキ装置用の隙間調整機構の一実施形態を図1図6にしたがって説明する。
図1に示すように、ブレーキ装置10は、鉄道車両の車輪と一体的に回転するディスク95を一対のブレーキパッド90によって挟み込むことでディスク95の回転を制動するキャリパーブレーキ装置である。ブレーキ装置10は、ディスク95とともにディスクブレーキ装置を構成する。
【0019】
図2に示すように、ブレーキ装置10は、柱形状の第1シリンダ11を備えている。第1シリンダ11の中心軸線は、車幅方向に沿っている。第1シリンダ11の内部には円柱状の内部空間が区画されている。第1シリンダ11における車幅方向H側(図2における下側)の端壁11Cは、当該端壁11Cを厚み方向に貫通した貫通孔11Aを備えている。貫通孔11Aは、第1シリンダ11における車幅方向H側の端壁11Cの中央に位置している。また、第1シリンダ11における車幅方向I側(図2における上側)の端壁11Dは、当該端壁11Dを厚み方向に貫通した貫通孔11Bを備えている。貫通孔11Bは、第1シリンダ11における車幅方向I側の端壁11Dの中央に位置している。第1シリンダ11は、キャリパーボディ86Aに固定されている。図1に示すように、キャリパーボディ86Aは、ブレーキ装置10を鉄道車両の台車に取り付けるためのブラケット86Bに支持されている。ブラケット86Bには、複数のボルト孔87が設けられていて、このボルト孔87に挿通されるボルトによって、鉄道車両の台車に固定されている。
【0020】
図2に示すように、第1シリンダ11の内部には、当該第1シリンダ11の軸線方向に沿って直線運動する第1ピストン12が配置されている。第1ピストン12は、略円板形状になっている。第1ピストン12の外径は、第1シリンダ11の内径と略同じになっている。第1ピストン12は、第1シリンダ11の軸線方向において当該第1シリンダ11の内部空間を2つに仕切っている。
【0021】
第1ピストン12の中央からは、車幅方向H側に向かって柱状の出力軸13が延びている。第1ピストン12及び出力軸13は一体的に成形されている。出力軸13は、第1ピストン12とともに第1シリンダ11の軸線方向に沿って直線運動する。出力軸13の先端部は、第1シリンダ11の貫通孔11Aを介して第1シリンダ11の外部にまで至っている。出力軸13は、当該出力軸13の中心軸線に直交する方向に出力軸13の先端部を貫通する挿入孔13Aを備えている。
【0022】
図4に示すように、出力軸13において挿入孔13Aよりも先端側には、略円柱形状の回転体13Bが回転可能に支持されている。回転体13Bの中心軸線は、車両前後方向(図4における紙面直交方向)に延びている。そして、回転体13Bの径方向外側の一部は、出力軸13の先端面よりも車幅方向H側に突出している。また、回転体13Bは、出力軸13の先端部のうち、車両上下方向下側(図4における下側)に寄せて配置されている。
【0023】
図2に示すように、第1シリンダ11の内部には、当該第1シリンダ11における車幅方向H側から車幅方向I側に第1ピストン12を付勢する第1バネ14が配置されている。第1バネ14は、第1シリンダ11における車幅方向H側の端壁11Cと第1ピストン12との間に位置している。また、第1シリンダ11の内部空間における第1ピストン12よりも車幅方向I側の空間11Eには、図示しない空気供給源からの圧縮空気が導入される。
【0024】
第1シリンダ11における車幅方向I側の端壁11Dには、柱形状の第2シリンダ21が固定されている。第2シリンダ21の中心軸線は、第1シリンダ11の中心軸線と同軸になっている。第2シリンダ21の内部には、円柱状の内部空間が区画されている。第2シリンダ21における車幅方向H側の端壁21Cは、当該端壁21Cを厚み方向に貫通した貫通孔21Aを備えている。貫通孔21Aは、第2シリンダ21における車幅方向H側の端壁21Cの中央に位置しており、第1シリンダ11の貫通孔11Bと連通している。
【0025】
第2シリンダ21の内部には、当該第2シリンダ21の軸線方向に沿って直線運動する第2ピストン22が配置されている。第2ピストン22は、略円板形状になっている。第2ピストン22の外径は、第2シリンダ21の内径と略同じになっている。第2ピストン22は、第2シリンダ21の軸線方向において当該第2シリンダ21の内部空間を2つに仕切っている。
【0026】
第2ピストン22の中央からは、車幅方向H側に向かって円柱状の駆動軸23が延びている。第2ピストン22及び駆動軸23は一体的に成形されている。駆動軸23は、第2シリンダ21の貫通孔21A及び第1シリンダ11の貫通孔11Bに挿通されている。また、駆動軸23は、車幅方向I側において出力軸13と同軸に配置されている。この駆動軸23は、第2ピストン22とともに第2シリンダ21の軸線方向に沿って直線運動可能になっている。
【0027】
第2シリンダ21の内部には、当該第2シリンダ21における車幅方向I側から車幅方向H側へと第2ピストン22を付勢する第2バネ24が配置されている。第2バネ24は、第2シリンダ21における車幅方向I側の端壁21Dと第2ピストン22との間に位置している。この第2バネ24の付勢力は、第1バネ14の付勢力よりも大きくなっている。また、第2シリンダ21の内部空間における第2ピストン22よりも車幅方向H側の空間21Eには、図示しない空気供給源からの圧縮空気が導入される。
【0028】
なお、鉄道車両が停止している場合には、第2シリンダ21の内部空間における第2ピストン22よりも車幅方向H側の空間21Eに圧縮空気が導入されない。そのため、第2ピストン22及び駆動軸23が第2バネ24の付勢力によって車幅方向H側に移動し、駆動軸23が第1ピストン12を車幅方向H側へ押す。その結果、第1シリンダ11内に圧縮空気が導入されているか否かに拘らず、第1ピストン12及び出力軸13が、車幅方向H側へ移動する。
【0029】
図2に示すように、出力軸13には、回転レバー30が連結されている。回転レバー30は、出力軸13が直線運動することで当該出力軸13の直線運動を回転運動に変換して回転する。回転レバー30は、円状部31、レバー本体32、及びローラ33を備えている。回転レバー30の円状部31は、平面視で円形状になっており、その円の中心軸線が図1の車両上下方向(図2における紙面直交方向)に沿っている。円状部31は、キャリパーボディ86Aにおける車幅方向H側の端部に回転可能に支持されている。そして、この円状部31の中心軸線が、回転レバー30の回転中心P1になっている。円状部31の外周面からは、略棒形状のレバー本体32が延びている。レバー本体32の先端部には、略円柱形状のローラ33が回転可能に支持されている。また、ローラ33の回転軸線は、第1シリンダ11の軸線方向に対して直交しており、円状部31の中心軸線と平行になっている。レバー本体32の先端部及びローラ33は、出力軸13の挿入孔13Aに挿入されている。
【0030】
図2に示すように、出力軸13が車幅方向H側に直線運動すると、挿入孔13Aの内周面のうち車幅方向I側がローラ33に接触する。また、出力軸13が車幅方向I側に直線運動すると、挿入孔13Aの内周面のうち車幅方向H側がローラ33に接触する。
【0031】
回転レバー30における円状部31には、出力軸13の直線運動を受けて回転することでブレーキパッド90とディスク95との相対位置を変化させる回転アーム40が連結されている。回転アーム40と回転レバー30との連結部分の中心であって回転アーム40の回転中心である回転中心P2の中心軸線は、車両上下方向に沿っている。また、回転アーム40の回転中心P2は、回転レバー30の回転中心P1に対して偏心している。具体的には、回転中心P2は、回転中心P1を挟んでレバー本体32とは反対方向に位置している。なお、上述したように、回転レバー30の円状部31は、キャリパーボディ86Aにおける車幅方向H側の端部に回転可能に支持されている。したがって、回転アーム40は、回転レバー30を介してキャリパーボディ86Aにおける車幅方向H側の端部に連結されている。
【0032】
回転アーム40は、回転中心P2を挟んで、概ね車両前後方向(図2において左右方向)両側に延びている。回転アーム40の基端は、第1シリンダ11よりも車両前後方向J側にまで至っている。また、回転アーム40の先端は、キャリパーボディ86Aよりも車両前後方向K側にまで至っている。
【0033】
回転アーム40の先端部には、連結ピン89を介して取付部45が連結されている。取付部45は、回転アーム40に対して第1シリンダ11の車幅方向I側に配置されている。取付部45は、連結ピン89を中心として揺動する。取付部45は、当該取付部45の揺動軸線方向から平面視すると、第1シリンダ11の車幅方向I側に向かうほど寸法が長くなる略三角形状になっている。取付部45における車幅方向I側の面には、ブレーキパッド90が固定されている。ブレーキパッド90は、ディスク95の端面に倣うような略平板形状になっている。ブレーキパッド90は、ディスク95に押し当てられて摩擦力による制動力を発生する摩擦材である。
【0034】
キャリパーボディ86Aにおける車幅方向I側の端部にも、回転アーム40が回転可能に連結されている。また、車幅方向I側に配置された回転アーム40にも取付部45が連結されているとともに、当該取付部45にもブレーキパッド90が固定されている。なお、車幅方向I側に配置された回転アーム40、取付部45、ブレーキパッド90は、車幅方向H側に配置された回転アーム40に対して、線対称に配置されている他は同一構成である。したがって、車幅方向I側に配置された回転アーム40、取付部45、ブレーキパッド90については、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。ただし、2つの回転アーム40を区別して説明する際には、車幅方向H側に位置する回転アーム40を回転アーム40A、車幅方向I側に位置する回転アーム40を回転アーム40Bと、符号を変えて説明する。
【0035】
図2に示すように、一対の回転アーム40の基端部同士は、全体として車幅方向に延びる隙間調整機構70によって連結されている。図6に示すように、隙間調整機構70は、一対の回転アーム40のうち車幅方向I側に位置する回転アーム40Bに連結する第1ハウジング76を備えている。第1ハウジング76は、車幅方向H側が開口した有底筒状になっている。第1ハウジング76の内部には、円柱形状の空間が区画されている。第1ハウジング76は、当該第1ハウジング76の底壁を貫通する貫通孔76Aを備えている。第1ハウジング76は、その中心軸線と直交する方向を軸として回転アーム40Bに対して相対回転可能に連結されている。
【0036】
図6に示すように、第1ハウジング76の内周面には、略筒状の第1回転規制機構81を介して雄ねじ部71が取り付けられている。雄ねじ部71は、全体としては棒状になっている。雄ねじ部71は、ねじ本体71Aと、ロッド71Fとを備えている。ねじ本体71Aは、ロッド71Fに対して車幅方向I側に位置している。ねじ本体71Aは、本体部71Bと、軸部71Dとを備えている。本体部71Bは、軸部71Dに対して車幅方向H側に位置している。本体部71Bの外周面の全域には、雄ねじが切られている。本体部71Bは、当該本体部71Bにおける車幅方向H側の端面に開口した固定孔71Cを備えている。固定孔71Cは、本体部71Bにおける車幅方向H側の端面から車幅方向I側に向かって延びている。固定孔71Cは、本体部71Bにおける車幅方向H側の端面の中央に位置している。固定孔71Cにおける車幅方向に直交する断面形状は、多角形になっている。軸部71Dは、本体部71Bにおける車幅方向I側の端面から車幅方向I側に向かって延びている。軸部71Dは、第1回転規制機構81に挿入されている。また、軸部71Dは第1回転規制機構81を貫通しており、軸部71Dは第1ハウジング76の貫通孔76Aにも挿入されている。軸部71Dにおける車幅方向I側の端部は、略六角柱形状の第1調整部71Eになっている。
【0037】
ねじ本体71Aの固定孔71Cの内部には、車幅方向に延びる柱形状のロッド71Fが配置されている。ロッド71Fにおける車幅方向に直交する断面形状は、固定孔71Cにおける車幅方向に直交する断面形状と略同じ多角形になっている。ロッド71Fの外周面は、ねじ本体71Aの固定孔71Cの内周面に固定されている。ロッド71Fの中心軸線は、ねじ本体71Aの中心軸線と同軸になっている。ロッド71Fにおける車幅方向H側の部分は、ねじ本体71Aの固定孔71Cから突出している。ロッド71Fにおける車幅方向H側の端部は、略六角柱形状の第2調整部71Gになっている。すなわち、第2調整部71Gは、ロッド71Fにおけるねじ本体71Aとは反対側の車幅方向H側の端部に位置している。なお、上記の第1調整部71Eは、ねじ本体71Aにおけるロッド71Fとは反対側の車幅方向I側の端部に位置している。すなわち、雄ねじ部71における両端部には、それぞれ調整部が設けられている。
【0038】
第1回転規制機構81は、詳しい機構の図示は省略するが、雄ねじ部71へのトルクが一定値未満である場合には、第1ハウジング76に対する雄ねじ部71の相対回転を規制する。一方、雄ねじ部71へのトルクが一定値以上である場合には、第1ハウジング76に対する雄ねじ部71の相対回転を許容する。
【0039】
隙間調整機構70は、一対の回転アーム40のうち車幅方向H側に位置する回転アーム40Aに連結する第2ハウジング77を備えている。第2ハウジング77は、車幅方向I側が開口した有底筒状になっている。第2ハウジング77は、第2ハウジング77の底壁を貫通する貫通孔77Aを備えている。第2ハウジング77は、その中心軸線と直交する方向を軸として回転アーム40Aに対して相対回転可能に連結されている。
【0040】
第2ハウジング77の内部には、全体として円柱形状の空間77Cが区画されている。具体的には、第2ハウジング77の空間77Cは、車幅方向H側から順に、底部空間77D、中央空間77E、及び端部空間77Fに大別できる。底部空間77Dは、略円柱形状の空間になっている。底部空間77Dを区画する第2ハウジング77の周壁においては、径方向に窓部77Bが貫通している。窓部77Bは、車両前後方向K側に配置されている。
【0041】
底部空間77Dにおける車幅方向I側の端には、中央空間77Eが接続されている。空間77Cの径方向における中央空間77Eの寸法は、空間77Cの径方向における底部空間77Dの寸法よりも短い。すなわち、中央空間77Eの内径は、底部空間77Dの内径よりも短い。中央空間77Eにおける車幅方向I側の端には、端部空間77Fが接続されている。空間77Cの径方向における端部空間77Fの寸法は、空間77Cの径方向における中央空間77Eの寸法よりも長い。すなわち、端部空間77Fの内径は、中央空間77Eの内径よりも長い。したがって、端部空間77Fと中央空間77Eとの境界部分には円環状の段差面が形成されており、この段差面が被当接面77Gである。なお、中央空間77Eが第1収容空間に相当する。また、端部空間77Fが第2収容空間に相当する。さらに、第2ハウジング77が保持部材に相当する。
【0042】
第2ハウジング77の中央空間77Eの内周面には、略円筒状のワンウェイクラッチ75を介して雌ねじ部72が取り付けられている。雌ねじ部72は、車幅方向に延びており、全体としては円筒状になっている。雌ねじ部72は、雌ねじ本体72Aと、突出部72Bと、接続筒72Dとを備えている。接続筒72Dは、雌ねじ本体72Aに対して車幅方向H側に位置している。接続筒72Dの外径は、ワンウェイクラッチ75の内径と略同じになっている。接続筒72Dは、ワンウェイクラッチ75に挿入されており、接続筒72Dの外周面には、ワンウェイクラッチ75が取り付けられている。また、接続筒72Dは、ワンウェイクラッチ75から車幅方向H側に突出しており、接続筒72Dにおける車幅方向H側の端面は、第2ハウジング77における底部空間77Dの底壁に当接している。
【0043】
雌ねじ本体72Aは、接続筒72Dにおける車幅方向I側の端面から車幅方向I側に向かって延びている。雌ねじ本体72Aは、略円筒状になっている。雌ねじ本体72Aにおいては、車幅方向I側の一部分の内周面に雌ねじが切られている。雌ねじ本体72Aは、第2ハウジング77の端部空間77Fに配置されている。雌ねじ本体72Aにおける車幅方向I側の一部分は、第2ハウジング77よりも車幅方向I側にまで至っている。
【0044】
突出部72Bは、雌ねじ本体72Aにおける車幅方向H側の端部の外周面から径方向外側に向かって突出している。突出部72Bは、雌ねじ本体72Aの周方向全域に亘って設けられており、全体として円環形状になっている。突出部72Bの径方向の寸法は、中央空間77Eの径方向の寸法よりも長く、端部空間77Fの径方向の寸法と略同じになっている。雌ねじ部72の突出部72Bにおける車幅方向H側の端面は、車幅方向において第2ハウジング77の被当接面77Gと対向して当接する。したがって、雌ねじ部72の突出部72Bにおける車幅方向H側の端面が当接面72Cである。
【0045】
雌ねじ部72における雌ねじ本体72Aの外周面と第2ハウジング77における端部空間77Fの内周面との間には、第2回転規制機構82が配置されている。第2回転規制機構82は、固定部82Aと、バネ82Bとを備えている。固定部82Aは、端部空間77Fにおける車幅方向I側の端部に位置している。固定部82Aは、全体として円環形状になっている。固定部82Aの外周面は、端部空間77Fの内周面に固定されている。
【0046】
バネ82Bは、固定部82Aと雌ねじ部72の突出部72Bとの間に位置している。バネ82Bは、固定部82Aから車幅方向H側に向かって雌ねじ部72の突出部72Bを付勢する。したがって、バネ82Bは、雌ねじ部72における突出部72Bの当接面72Cが第2ハウジング77の被当接面77Gに当接するように雌ねじ部72における突出部72Bを付勢する。なお、バネ82Bは、弾性部材の一例である。
【0047】
第2回転規制機構82は、バネ82Bによって雌ねじ部72の突出部72Bを付勢することで、雌ねじ部72の当接面72Cと第2ハウジング77の被当接面77Gとを所定値以上の力で密着させ、両者の間で摩擦力を発生させる。この摩擦力によって、雌ねじ部72へのトルクが小さい場合には、第2ハウジング77に対して雌ねじ部72が相対回転しない。具体的には、第2回転規制機構82は、雌ねじ部72へのトルクが一定値未満である場合、第2ハウジング77に対する雌ねじ部72の相対回転を規制する。一方、第2回転規制機構82は、雌ねじ部72へのトルクが一定値以上である場合、第2ハウジング77に対する雌ねじ部72の相対回転を許容する。また、第2回転規制機構82は、第1回転規制機構81が雄ねじ部71の相対回転を許容するトルクよりも小さなトルクで、雌ねじ部72の相対回転を許容する。
【0048】
雌ねじ部72の内側には上述した雄ねじ部71が挿入されている。雌ねじ部72における雌ねじ本体72Aの雌ねじには、雄ねじ部71における本体部71Bの雄ねじが嵌め込まれている。また、雄ねじ部71は、雌ねじ部72を貫通している。雄ねじ部71におけるロッド71Fは、第2ハウジング77の貫通孔77Aにも挿入されている。すなわち、隙間調整機構70の第1ハウジング76及び第2ハウジング77は、雄ねじ部71及び雌ねじ部72によって連結されている。
【0049】
第2ハウジング77の外周面には、円筒状のカバー78が固定されている。カバー78は、第1ハウジング76側へと延びていて第1ハウジング76の外周面に固定されている。すなわち、カバー78は、第2ハウジング77と第1ハウジング76との間の隙間を、径方向外側から覆うように取り付けられている。また、カバー78は、軸線方向において蛇腹状になっていて、軸線方向に伸縮可能になっている。
【0050】
なお、雄ねじ部71の第1調整部71Eは、第1ハウジング76の貫通孔76Aを介して車幅方向I側に露出している。また、雄ねじ部71の第2調整部71Gが第2ハウジング77の貫通孔77Aを介して車幅方向H側に露出している。そして、隙間調整機構70においては、雄ねじ部71における第1調整部71Eや第2調整部71Gに対して、例えば手指や工具で雄ねじ部71に一定値以上のトルクを与えた場合、雄ねじ部71が、第1ハウジング76、第2ハウジング77、及び雌ねじ部72に対して相対回転する。すると、雄ねじ部71が、その回転方向に応じて、雌ねじ部72に対して軸線方向に相対移動する。その結果、隙間調整機構70の軸線方向の長さが変化して、一対の回転アーム40の基端部同士の距離が変化する。このように、隙間調整機構70は、手動での調整が可能になっている。
【0051】
隙間調整機構70において、雌ねじ部72における接続筒72Dの外周面には、略円筒状のワンウェイクラッチ74を介して入力部材73が取り付けられている。入力部材73は、円筒状であり、その内周面がワンウェイクラッチ74の外周面に取り付けられている。入力部材73及びワンウェイクラッチ74は、上記のワンウェイクラッチ75よりも車幅方向H側に配置されており、雌ねじ部72の接続筒72Dにおける車幅方向H側の端部に配置されている。入力部材73の外面の一部は、窓部77Bを介して車両前後方向K側に露出している。
【0052】
ワンウェイクラッチ74は、詳しい機構の図示は省略するが、雌ねじ部72に対する入力部材73の一方の方向への相対回転は規制しつつ、雌ねじ部72に対する入力部材73の他方の方向への相対回転を許容する。したがって、入力部材73が一方の方向へと回転した場合には、雌ねじ部72も、入力部材73とともに一方の方向へと回転する。
【0053】
また、ワンウェイクラッチ75は、詳しい機構の図示は省略するが、第2ハウジング77に対する雌ねじ部72の一方の方向への相対回転は許容しつつ、第2ハウジング77に対する雌ねじ部72の他方の方向への相対回転を規制する。したがって、入力部材73とともに雌ねじ部72が一方の方向へと回転する場合には、雌ねじ部72が第2ハウジング77に対して一方の方向へと相対回転する。なお、ワンウェイクラッチ75が、他方のねじ部材に対する一方のねじ部材の一方の方向への相対回転を許容しつつ、且つ、他方のねじ部材に対する一方のねじ部材の他方の方向への相対回転を規制するワンウェイクラッチに相当する。また、雌ねじ部72は一方のねじ部材に相当し、雄ねじ部71は他方のねじ部材に相当する。
【0054】
図2に示すように、第1シリンダ11よりも車幅方向H側には、出力軸13の直線運動を受けて車両上下方向の運動に変換する変換部50が配置されている。変換部50は、隙間調整機構70に対して車両上下方向の運動を伝達する。変換部50は、出力軸13の先端部を覆うケース65を備えている。ケース65は、車幅方向I側が開口しており、全体として四角箱形状になっている。ケース65の内部空間には、出力軸13の先端部が至っている。また、ケース65における車両前後方向J側の壁部には、車両前後方向において開口65Aが貫通している。
【0055】
図3に示すように、ケース65の内部には、車両上下方向に延びる棒形状の第1軸部66が固定されている。車幅方向から視たときに、第1軸部66は、出力軸13と重なる位置に配置されている。図2に示すように、第1軸部66は、ケース65における車幅方向H側の壁部の近傍に配置されている。なお、図3に示すように、第1軸部66における上側の端部には、位置決め部材として機能する第1ストッパ66Aが固定されている。
【0056】
図3に示すように、ケース65の内部には、車両上下方向に延びる棒形状の第2軸部67が固定されている。図2に示すように、第2軸部67は、ケース65における車幅方向H側の壁部の近傍に配置されている。また、第2軸部67は、第1軸部66よりも車両前後方向J側に配置されており、ケース65における車両前後方向J側の壁部の近傍に配置されている。図3に示すように、第2軸部67における上側の端部には、位置決め部材として機能する第2上側ストッパ67Aが固定されている。また、第2軸部67における下側の端部には、位置決め部材として機能する第2下側ストッパ67Bが固定されている。
【0057】
図5に示すように、ケース65の内部には、車両上下方向に延びる棒形状の第3軸部68が固定されている。図2に示すように、第3軸部68は、ケース65における車両前後方向J側の壁部の近傍に配置されている。また、第3軸部68は、第2軸部67よりも車幅方向I側に配置されており、第1シリンダ11における車幅方向H側の端壁11Cの近傍に配置されている。図5に示すように、第3軸部68における上側の端部には、位置決め部材として機能する第3ストッパ68Aが固定されている。
【0058】
図3に示すように、第1軸部66、第2軸部67、及び第3軸部68には、隙間調整機構70に対して車両上下方向に移動する移動体52が支持されている。移動体52は、第1移動体53と、第2移動体54とを備えている。第1移動体53は、第1軸部66及び第2軸部67に支持されている。そして、第1移動体53は、第1軸部66及び第2軸部67に対して車両上下方向に移動可能になっている。第1移動体53における本体部53Aは、第1軸部66及び第2軸部67の間に配置されている。本体部53Aは、長方形板状になっており、車両上下方向に延びている。本体部53Aにおける下端部からは、車両前後方向K側に向かって入力部53Bが延びている。入力部53Bには、図示しない貫通孔が設けられており、当該貫通孔に第1軸部66が挿通されている。本体部53Aにおける上端部からは、車両前後方向J側に向かって出力部53Cが延びている。出力部53Cには、図示しない貫通孔が設けられており、当該貫通孔に第2軸部67が挿通されている。
【0059】
図3に示すように、第2移動体54は、第1移動体53における出力部53Cの下側に固定されている。図5に示すように、第2移動体54は、車幅方向I側へと延びており、略長方板形状になっている。第2移動体54における車幅方向H側の端部には、図示しない貫通孔が設けられており、当該貫通孔に上記の第2軸部67が挿通されている。また、第2移動体54における車幅方向I側の端部には、図示しない貫通孔が設けられており、当該貫通孔に上記の第3軸部68が挿通されている。したがって、第2移動体54は、第2軸部67及び第3軸部68に対して支持されており、第1移動体53とともに車両上下方向に移動可能になっている。
【0060】
図5に示すように、第2移動体54は、当該第2移動体54を車両前後方向に貫通する溝部54Aを備えている。溝部54Aは、第2移動体54における車幅方向H側の端から第2移動体54における車幅方向I側の端の近傍まで延びている。したがって、溝部54Aは、車両上下方向の寸法よりも車幅方向の寸法が長い長溝になっている。
【0061】
図4に示すように、第1軸部66には、車両上下方向に移動可能に保持部63が支持されている。保持部63は、車幅方向H側が開口したような略U字形状になっており、保持部63におけるU字の両端は、第1軸部66に支持されている。図3に示すように、保持部63におけるU字の一端部は、第1移動体53における入力部53Bよりも上側であって第1ストッパ66Aよりも下側の部分で第1軸部66に支持されている。保持部63におけるU字の他端部は、第1移動体53における入力部53Bよりも下側で第1軸部66に支持されている。保持部63におけるU字の一端部と第1移動体53における入力部53Bとの間には、車両上下方向に第1移動体53を付勢する吸収バネ62が配置されている。吸収バネ62は、保持部63におけるU字の一端部と第1移動体53の入力部53Bとの間で弾性圧縮された状態で第1軸部66に支持されており、保持部63の一端部から車両上下方向下側に向かって第1移動体53における入力部53Bを付勢する。この吸収バネ62の車両上下方向における最大弾性変形量は、車両上下方向における移動体52の最大移動量よりも長くなっている。ここで、移動体52の最大移動量とは、第1軸部66、第2軸部67及び第3軸部68によって支持された移動体52が移動することができる車両上下方向の移動可能な範囲である。
【0062】
図4に示すように、保持部63の車幅方向I側には、出力軸13の力を受けて当該力を車両上下方向に変換する伝達部51が固定されている。伝達部51は、車両上下方向の上側ほど先細りした略三角柱形状になっている。具体的には、車両前後方向から視たときに、伝達部51は、当該伝達部51の斜面51Aが出力軸13と対向する直角三角形であり、出力軸13の中心軸線と伝達部51の斜面51Aとがなす角のうち鋭角側の角度Xは、約70度になっている。すなわち、出力軸13の直線運動方向と伝達部51の斜面51Aとがなす角のうち鋭角側の角度は、45度よりも大きくなっている。なお、伝達部51の斜面51Aは、平面である。
【0063】
図3に示すように、第2軸部67には、車両上下方向に第2移動体54を付勢する戻しバネ61が支持されている。戻しバネ61は、第2移動体54の下端と第2下側ストッパ67Bとの間で弾性圧縮された状態になっており、第2下側ストッパ67Bから上側に向かって第2移動体54を付勢する。
【0064】
車両上下方向において、吸収バネ62の下側部分と戻しバネ61の上側部分とが重なっている。そして、吸収バネ62及び戻しバネ61は、それぞれ移動体52に接触しており、移動体52を介して連結している。したがって、吸収バネ62及び戻しバネ61は、移動体52を介して並列配置されるように連結されるとともに車両上下方向において一部が重なっている。
【0065】
移動体52における第2移動体54には、移動体52の移動に応じて隙間調整機構70に力を伝達する連結部55が連結されている。連結部55は、第2移動体54の溝部54Aに挿入された略四角柱形状の棒体56を備えている。棒体56の車両上下方向の寸法は、溝部54Aの車両上下方向の寸法と略同じになっている。すなわち、棒体56は、第2移動体54に対して車両上下方向に相対移動不能であり、第2移動体54の車両上下方向の移動に伴って当該第2移動体54とともに車両上下方向に移動する。また、棒体56の車幅方向の寸法は、溝部54Aの車幅方向の寸法よりも短くなっている。すなわち、棒体56は、第2移動体54に対して車幅方向に相対移動可能である。さらに、棒体56は、車両前後方向に延びる溝部54Aに挿通されているため、第2移動体54に対して車両前後方向に相対移動可能である。
【0066】
図5に示すように、棒体56における車両前後方向K側の端部には、車両上下方向に延びる規制ピン57が固定されている。規制ピン57の車両上下方向の寸法は、溝部54Aの車両上下方向の寸法よりも長くなっており、溝部54Aから棒体56が抜け落ちることを防止する。
【0067】
図3に示すように、棒体56における車両前後方向J側の端部には、隙間調整機構70の入力部材73に連結された支持部58が固定されている。支持部58は、隙間調整機構70の第2ハウジング77に固定されたガイド板59を介して隙間調整機構70の第2ハウジング77に支持されている。ガイド板59は、全体として四角板形状になっており、ガイド板59には、車両上下方向に延びる貫通孔である長孔59Aが設けられている。このガイド板59の長孔59Aには支持部58が挿通されており、ガイド板59は、車両上下方向に移動可能に支持部58を支持している。したがって、支持部58は、棒体56の車両上下方向の移動に伴って当該棒体56とともに車両上下方向に移動する。そして、支持部58の車両上下方向の移動に伴って、隙間調整機構70の入力部材73には、車両上下方向の力が伝達される。また、支持部58は、車両上下方向に延びる支持ピン58Aを介して棒体56を回転可能に支持している。したがって、棒体56は、当該棒体56における車両前後方向J側の端部と支持ピン58Aとの連結部分を回転中心として回転可能になっている。
【0068】
次に、ブレーキ装置10の作用について説明する。ここで、鉄道車両が走行している際には、第2シリンダ21の内部空間における第2ピストン22よりも車幅方向H側の空間21Eに圧縮空気が導入される。このように空間21Eに圧縮空気が導入されると、第2バネ24の付勢力に抗して第2ピストン22及び駆動軸23が車幅方向I側に移動し、第2バネ24の付勢力による駆動軸23からの駆動力は出力軸13に伝達されない。したがって、以下の説明では、駆動軸23からの駆動力は出力軸13に伝達されないものとしてブレーキ装置10の作用を説明する。
【0069】
第1シリンダ11の内部空間における第1ピストン12よりも車幅方向I側の空間11Eに圧縮空気が導入されると、図2に示すように、第1バネ14の付勢力に抗して第1ピストン12及び出力軸13が車幅方向H側に直線運動する。そして、出力軸13の挿入孔13Aの内周面のうち車幅方向I側の内周面が、回転レバー30のローラ33に接触する。すると、回転レバー30のローラ33が、出力軸13の挿入孔13Aの内周面のうち車幅方向I側の内周面との接触位置を徐々に変えつつ車幅方向H側に移動する。このようなローラ33の移動に伴って、回転中心P1を中心として回転レバー30が一方向、すなわち図2における時計回りに回転する。このとき、回転中心P1を中心として車幅方向H側に位置する回転アーム40Aと回転レバー30との連結部分も時計回りに回転する。そのため、回転アーム40Aは、回転アーム40Aと回転レバー30との連結部分において、車幅方向I側へ向かう力を受ける。その結果、回転アーム40Aは、車幅方向I側に移動する。すると、回転アーム40Aに連結された取付部45及びブレーキパッド90がディスク95に近づくように移動して、回転アーム40A側のブレーキパッド90がディスク95の端面に当接する。
【0070】
また、上述したように、回転アーム40Aが車幅方向I側に移動すると、隙間調整機構70も車幅方向I側に移動する。そして、回転アーム40Bの基端部と隙間調整機構70との連結部分が車幅方向I側に移動する。ここで、回転アーム40Bは、その延設方向の略中央部でキャリパーボディ86Aに回転可能に連結されている。そのため、回転アーム40Bは、当該回転アーム40Bとキャリパーボディ86Aとの連結部分を回転中心として反時計回りに回転する。すると、回転アーム40Bに連結された取付部45及びブレーキパッド90がディスク95に近づくように移動して、回転アーム40B側のブレーキパッド90がディスク95の端面に当接する。そして、ディスク95は、車幅方向において、回転アーム40A側のブレーキパッド90と回転アーム40B側のブレーキパッド90との間で挟み込まれることで回転が制動される。
【0071】
一方、第1シリンダ11の内部空間における第1ピストン12よりも車幅方向I側の空間11Eに圧縮空気が導入されず、圧力が低下すると、第1バネ14の付勢力によって第1ピストン12及び出力軸13が車幅方向I側に直線運動する。そして、出力軸13の挿入孔13Aの内周面のうち車幅方向H側の内周面が、回転レバー30のローラ33に接触する。すると、回転レバー30のローラ33が、出力軸13の挿入孔13Aの内周面のうち車幅方向H側の内周面との接触位置を徐々に変えつつ車幅方向I側に移動する。このようなローラ33の移動に伴って、回転中心P1を中心として回転レバー30が他方向、すなわち図2における反時計回りに回転する。このとき、回転中心P1を中心として回転アーム40Aと回転レバー30との連結部分も反時計回りに回転する。そのため、回転アーム40Aは、回転アーム40Aと回転レバー30との連結部分において、車幅方向H側へ向かう力を受ける。その結果、回転アーム40Aは、車幅方向H側に移動する。すると、回転アーム40Aに連結された取付部45及びブレーキパッド90がディスク95から離れるように移動して、回転アーム40A側のブレーキパッド90がディスク95の端面から離間する。
【0072】
また、上述したように、回転アーム40Aが車幅方向H側に移動すると、隙間調整機構70も車幅方向H側に移動する。そして、回転アーム40Bの基端部と隙間調整機構70との連結部分が車幅方向H側に移動する。すると、回転アーム40Bは、当該回転アーム40Bとキャリパーボディ86Aとの連結部分を回転中心として時計回りに回転する。そして、回転アーム40Bに連結された取付部45及びブレーキパッド90がディスク95から離れるように移動して、回転アーム40B側のブレーキパッド90がディスク95の端面から離間する。
【0073】
ところで、ブレーキパッド90がディスク95に当接すると、回転するディスク95との摩擦によって徐々にブレーキパッド90が摩耗する。このようにブレーキパッド90が摩耗していくと、出力軸13が最も車幅方向I側に位置するときのブレーキパッド90からディスク95までの距離が長くなっていく。したがって、ブレーキパッド90がディスク95から離間した状態からブレーキパッド90がディスク95に当接するまでに直線運動する出力軸13の移動量も長くなっていく。そして、出力軸13の移動量が一定値以上になると、図4に示すように、出力軸13の回転体13Bが伝達部51の斜面51Aに接触する。このように出力軸13の回転体13Bが伝達部51の斜面51Aに接触した状態で出力軸13が車幅方向H側に移動しようとすると、伝達部51は、出力軸13の回転体13Bとの接触位置を徐々に変えつつ車両上下方向の下側に移動する。すなわち、出力軸13の直線運動方向の力が車両上下方向の力に変換される。このような車両上下方向の下側への力が保持部63及び吸収バネ62を介して移動体52における第1移動体53に伝達されると、第1移動体53及び第2移動体54が車両上下方向の下側に移動する。そして、第2移動体54の溝部54Aに挿入された連結部55の棒体56は、第2移動体54とともに車両上下方向の下側に移動する。すると、棒体56とともに支持部58も車両上下方向の下側に移動する。このような支持部58の車両上下方向の下側の移動に伴って隙間調整機構70の入力部材73に車両上下方向の下側へと向かう力が伝達されると、入力部材73が一方の方向、すなわち図3における反時計回りに回転する。すると、ワンウェイクラッチ74を介して入力部材73から雌ねじ部72に力が伝達されて、入力部材73とともに雌ねじ部72が反時計回りに回転する。そして、雌ねじ部72が雄ねじ部71に対して反時計回りに回転することにより、一対の回転アーム40の基端部同士の距離が長く調整される。すると、回転アーム40Aは、当該回転アーム40Aの回転中心P2を回転中心として周方向一方側、すなわち図2における時計回りに回転する。また、回転アーム40Bは、当該回転アーム40Bとキャリパーボディ86Aとの連結部分を回転中心として周方向他方側、すなわち図2における反時計回りに回転する。このような一対の回転アーム40の回転によって、当該一対の回転アーム40の先端部同士の距離が短く調整される。
【0074】
一方、出力軸13の回転体13Bが伝達部51の斜面51Aから離れるように出力軸13が車幅方向I側に移動しようとすると、戻しバネ61からの付勢力によって、移動体52における第1移動体53及び第2移動体54が車両上下方向の上側に移動する。そして、第2移動体54の溝部54Aに挿入された連結部55の棒体56は、第2移動体54とともに車両上下方向の上側に移動する。すると、棒体56とともに支持部58も車両上下方向の上側に移動する。このような支持部58の車両上下方向の上側への移動に伴って隙間調整機構70の入力部材73に車両上下方向の上側へと向かう力が伝達されると、入力部材73が他方の方向、すなわち図3における時計回りに回転する。なお、入力部材73が時計回りに回転しようとするときにはワンウェイクラッチ74を介して入力部材73から雌ねじ部72に力が伝達されないため、雌ねじ部72は、時計回りに回転しない。
【0075】
また、戻しバネ61からの付勢力によって移動体52における第1移動体53及び第2移動体54が車両上下方向の上側に移動すると、車両上下方向の上側への力が保持部63及び吸収バネ62を介して伝達部51に伝達され、伝達部51が上側に移動して元の位置に戻る。
【0076】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ブレーキ装置10では、雌ねじ部72における接続筒72Dの外周面と第2ハウジング77における中央空間77Eの内周面との間にワンウェイクラッチ75が介在されている。そして、第2ハウジング77に保持されたワンウェイクラッチ75は、第2ハウジング77に対する雌ねじ部72の他方の方向への回転を規制する。そのため、ブレーキ装置10の駆動や鉄道車両の走行に伴う振動等によって、雌ねじ部72を雄ねじ部71に対して他方の方向に回転させるような力が雌ねじ部72に作用しても、雄ねじ部71に対して雌ねじ部72が他方の方向に回転しない。その結果、一対の回転アーム40Aの基端部間の距離が意図せず短くなることを抑制できる。
【0077】
(2)仮に、ワンウェイクラッチ75を、雄ねじ部71及び第2ハウジング77の間に介在させる場合には、雌ねじ部72の内部に挿通された雄ねじ部71のうち、雌ねじ部72から突出した部分にワンウェイクラッチ75を取り付ける必要がある。この構成においては、ワンウェイクラッチ75を取り付けるために、雄ねじ部71の軸線方向の寸法が長くなりやすい。
【0078】
この点、ブレーキ装置10では、ワンウェイクラッチ75が、雄ねじ部71の径方向外側に位置する第2ねじ部と第2ハウジング77との間に介在されている。そのため、ワンウェイクラッチ75を取り付けるために雄ねじ部71の軸線方向の寸法を長くする必要がない。これにより、雄ねじ部71の軸線方向の寸法が長くなることに伴って隙間調整機構70の軸線方向の寸法、すなわち隙間調整機構70の車幅方向の寸法が長くなることがない。その結果、隙間調整機構70の小型化が期待できる。
【0079】
(3)ブレーキ装置10では、雌ねじ部72における突出部72Bの当接面72Cが第2ハウジング77の被当接面77Gに当接することで両者の間に摩擦力が発生する。そのため、振動等によって、雌ねじ部72を、雄ねじ部71に対して他方の方向に回転させるような力が作用する場合でも、上記の摩擦力の分だけ、雄ねじ部71に対して雌ねじ部72を他方の方向に回転させるような力が小さくなる。これにより、ワンウェイクラッチ75に作用する他方の方向への力も小さくなる。その結果、ワンウェイクラッチ75の小型化が期待できる。
【0080】
(4)ブレーキ装置10では、第2ハウジング77における端部空間77F及び中央空間77Eの境界部分の段差面が被当接面77Gとして機能する。そのため、第2ハウジング77では、内径が異なる2つの空間を形成するという比較的に簡単な構成で、雌ねじ部72における突出部72Bの当接面72Cに対する被当接面77Gを形成できる。
【0081】
(5)ブレーキ装置10は、固定部82Aから車幅方向H側に向かって雌ねじ部72の突出部72Bを付勢するバネ82Bを備えている。そのため、バネ82Bの付勢力によって、雌ねじ部72の当接面72Cと第2ハウジング77の被当接面77Gとが所定値以上の力で密着する。これにより、雌ねじ部72の当接面72Cと第2ハウジング77の被当接面77Gとの間で発生する摩擦力を大きくできる。
【0082】
(6)ブレーキ装置10において、例えば、雌ねじ部72における突出部72Bの当接面72Cと第2ハウジング77の被当接面77Gとの間の摩擦によって両者が摩耗することがある。すると、雌ねじ部72の当接面72Cと第2ハウジング77の被当接面77Gとの間に隙間が生じて両者が当接しないこともあり得る。同様に、雌ねじ部72や第2ハウジング77の製造上の誤差によっては、雌ねじ部72の当接面72Cと第2ハウジング77の被当接面77Gとの間に隙間が生じて両者が当接しないこともあり得る。
【0083】
この点、ブレーキ装置10は、固定部82Aから車幅方向H側に向かって雌ねじ部72の突出部72Bを付勢するバネ82Bを備えている。そのため、上記のような雌ねじ部72及び第2ハウジング77の摩耗や製造上の誤差に起因して雌ねじ部72の当接面72Cと第2ハウジング77の被当接面77Gとの間に隙間が生じても、雌ねじ部72の当接面72Cと第2ハウジング77の被当接面77Gとをより確実に当接させることができる。
【0084】
(7)ブレーキ装置10では、雄ねじ部71において第1調整部71Eや第2調整部71Gが車幅方向に露出している。そして、隙間調整機構70においては、雄ねじ部71における第1調整部71E及び第2調整部71Gに対して、例えば手指や工具で雄ねじ部71に一定値以上のトルクを与えた場合、雄ねじ部71が、第1ハウジング76、第2ハウジング77、及び雌ねじ部72に対して相対回転する。すると、雄ねじ部71が、その回転方向に応じて、雌ねじ部72に対して軸線方向に相対移動する。こうして隙間調整機構70の軸線方向の長さが変化すると、一対の回転アーム40の基端部同士の距離が変化する。そして、一対の回転アーム40の先端部同士の距離が変化することでブレーキパッド90の位置が変化する。したがって、ブレーキ装置10では、例えば、摩耗したブレーキパッド90を新たなブレーキパッド90に交換するときに、新たなブレーキパッド90に合わせて雄ねじ部71の位置を調整できる。
【0085】
(8)ブレーキ装置10においては、雄ねじ部71の第1調整部71Eが車幅方向I側に位置しており、雄ねじ部71の第2調整部71Gが車幅方向H側に位置している。これにより、雌ねじ部72に対する雄ねじ部71の位置調整に際し、車幅方向のどちら側からでも位置調整が可能である。その結果、作業者の作業性の向上に寄与できる。
【0086】
(9)ブレーキ装置10の雄ねじ部71は、ねじ本体71Aと、ロッド71Fとを備えている。また、ねじ本体71Aは第1調整部71Eを備え、ロッド71Fは第2調整部71Gを備えている。ここで、雄ねじ部71の製造にあたっては、例えば、ねじ本体71Aにおいて第1調整部71Eを形成し、ロッド71Fにおいて第2調整部71Gを形成する。そして、ねじ本体71Aの固定孔71Cにロッド71Fを挿入することで、雄ねじ部71を製造できる。したがって、例えば1部品に対して第1調整部71E及び第2調整部71Gの2つの調整部を形成する必要がなく、雄ねじ部71に対して第1調整部71E及び第2調整部71Gの2つの調整部を形成しやすい。
【0087】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態において、隙間調整機構70と一対の回転アーム40との連結位置は変更できる。例えば、隙間調整機構70の第1ハウジング76は、回転アーム40Bにおけるキャリパーボディ86Aとの連結部分よりも基端側であって基端部よりも先端側の部分に連結されていてもよい。同様に、隙間調整機構70の第2ハウジング77と回転アーム40Aとの連結位置は変更できる。
【0088】
・上記実施形態において、バネ82Bを省略してもよい。この構成においても、雌ねじ部72における突出部72Bの当接面72Cと第2ハウジング77の被当接面77Gとが当接すれば、両者の間に摩擦力が発生する。
【0089】
・上記実施形態において、第2ハウジング77の被当接面の位置は変更できる。例えば、第2ハウジング77における車幅方向I側の端面に被当接面を形成してもよい。
【0090】
・上記実施形態において、雌ねじ部72の突出部の構成は変更できる。例えば、突出部72Bは、雌ねじ本体72Aの周方向の一部分に配置されていてもよい。
・上記実施形態において、雌ねじ部72の突出部を省略してもよい。この構成においても、ワンウェイクラッチ75によって、雄ねじ部71に対して雌ねじ部72が他方の方向に回転することを抑制できる。
【0091】
・上記実施形態において、雄ねじ部71は、ねじ本体71A及びロッド71Fの2つの部品を備えている必要はなく、1つの部品で形成されていてもよい。
・上記実施形態において、雄ねじ部71の調整部の数は変更できる。具体的には、雄ねじ部71は、第1調整部71E及び第2調整部71Gを備えている必要はなく、第1調整部71E及び第2調整部71Gの一方を省略してもよい。また、雄ねじ部71の第1調整部71E及び第2調整部71Gの両方を省略してもよい。なお、この構成においては、例えば、隙間調整機構70の一部を分解して雄ねじ部71及び雌ねじ部72の位置を調整すればよい。
【0092】
・上記実施形態において、ワンウェイクラッチ75の配置は変更できる。例えば、出力軸13の力が雄ねじ部71に伝達される構成においては、第2ハウジング77と雄ねじ部71との間にワンウェイクラッチ75を介在させてもよい。具体的には、雌ねじ部72の内部に挿通された雄ねじ部71のうち、雌ねじ部72から突出した部分にワンウェイクラッチ75を取り付ければ、第2ハウジング77と雄ねじ部71との間にワンウェイクラッチ75を介在できる。また、例えば、雄ねじ部71に対する雌ねじ部72の他方の方向への相対回転を規制できるのであれば、ワンウェイクラッチ75の配置は適宜変更できる。
【符号の説明】
【0093】
10…ブレーキ装置
11…第1シリンダ
12…第1ピストン
13…出力軸
30…回転レバー
40…回転アーム
40A…回転アーム
40B…回転アーム
45…取付部
50…変換部
70…隙間調整機構
71…雄ねじ部
72…雌ねじ部
73…入力部材
74…ワンウェイクラッチ
75…ワンウェイクラッチ
76…第1ハウジング
77…第2ハウジング
78…カバー
90…ブレーキパッド
95…ディスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6