(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/42 20060101AFI20240409BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20240409BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20240409BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20240409BHJP
B29C 70/68 20060101ALI20240409BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20240409BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20240409BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20240409BHJP
B29K 105/12 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
B29C70/42
B29C43/18
B29C45/14
B29C70/06
B29C70/68
C08J5/04 CFG
B29K101:12
B29K105:08
B29K105:12
(21)【出願番号】P 2020100310
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大賀
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060051(JP,A)
【文献】特開2016-150547(JP,A)
【文献】国際公開第2012/074083(WO,A1)
【文献】特開2019-126989(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0355110(US,A1)
【文献】特開2016-055539(JP,A)
【文献】国際公開第2020/004597(WO,A1)
【文献】特表2019-527162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/42
B29C 70/06
B29C 70/68
B29C 45/14
B29C 43/18
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属と、連続強化繊維を含む繊維強化樹脂と
、不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂とを含
み、
前記金属が、前記連続強化繊維を含む繊維強化樹脂と前記不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂とに挟まれた部分を有し、
前記金属が凹部を有し、前記凹部に嵌合する凸部が前記繊維強化樹脂に形成されている、且つ/又は、前記金属が凸部を有し、前記凸部に嵌合する凹部が前記繊維強化樹脂に形成されている、
ことを特徴とする、複合体。
【請求項2】
前記金属が化学的及び/又は機械的に表面処理されている、請求項
1に記載の複合体。
【請求項3】
前記金属が締結用穴を有する、請求項1
又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記金属の総表面積をA、前記金属の面のうち前記連続強化繊維を含む繊維強化樹脂と重なっている面の面積をA1、前記金属の面のうち前記不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂と重なっている面の面積をA2としたときに、(A1+A2)/Aが0.20以上である、請求項
1~
3のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項5】
前記繊維強化樹脂が熱可塑性樹脂を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂である、請求項
5に記載の複合体。
【請求項7】
前記繊維強化樹脂の強化繊維がガラス繊維である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の複合体を含むことを特徴とする、箱型部材。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の複合体を含むことを特徴とする、オイルパン。
【請求項10】
請求項
1~
7のいずれか一項に記載の複合体の製造方法であり、
金属、及び連続強化繊維を含む繊維強化樹脂(連続繊維強化樹脂)の両方又はいずれか一方を予熱し、
前記金属と前記連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めした後、前記金型内に不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂(不連続繊維強化樹脂)を射出することを含み、
前記不連続繊維強化樹脂は、前記金属及び前記連続繊維強化樹脂の両方に接合する
ことを特徴とする、複合体の製造方法。
【請求項11】
請求項
1~
7のいずれか一項に記載の複合体の製造方法であり、
金属と、連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めした後、加熱し、前記金型内に不連続繊維強化樹脂を射出することを含み、
前記不連続繊維強化樹脂は、前記金属及び前記連続繊維強化樹脂の両方に接合する
ことを特徴とする、複合体の製造方法。
【請求項12】
請求項
1~
7のいずれか一項に記載の複合体の製造方法であり、
金属、連続繊維強化樹脂、及び不連続繊維強化樹脂の少なくとも1つを予熱し、
前記金属と前記連続繊維強化樹脂と前記不連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めすることを含み、
前記不連続繊維強化樹脂は、前記金属及び前記連続繊維強化樹脂の両方に接合する
ことを特徴とする、複合体の製造方法。
【請求項13】
請求項
1~
7のいずれか一項に記載の複合体の製造方法であり、
金属と連続繊維強化樹脂と不連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めした後、加熱することを含み、
前記不連続繊維強化樹脂は、前記金属及び前記連続繊維強化樹脂の両方に接合する
ことを特徴とする、複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属と、連続強化繊維を含む繊維強化樹脂とを含む複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両において、路面との接触や路上の障害物との衝突等の外部からの衝撃を受けやすい車両部品(オイルパン、ホイール等)は、強度の点から金属製のものが使用されてきた。これに対し、近年、車両の軽量化の要求から、構成要素の多くを樹脂等のより軽量な材料で製造することが検討されている。
例えば、特許文献1には、メインボディが重合体材料から作られ、固定手段を受けるための貫通開口部に金属又はセラミックで作られるスリーブを受けさせたホイールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のホイールは、重合体材料から作られるメインボディの強度、重合体材料と金属又はセラミックとの接合強度の点で改良の余地がある。
そこで、本発明は、軽量で強度に優れた複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、金属と、連続強化繊維を含む繊維強化樹脂とを含む複合体とすることで、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記に示すとおりである。
【0006】
[1]
金属と、連続強化繊維を含む繊維強化樹脂とを含むことを特徴とする、複合体。
[2]
不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂を更に含む、[1]に記載の複合体。
[3]
前記金属が凹部を有し、前記凹部に嵌合する凸部が前記繊維強化樹脂に形成されている、且つ/又は、前記金属が凸部を有し、前記凸部に嵌合する凹部が前記繊維強化樹脂に形成されている、[1]又は[2]に記載の複合体。
[4]
前記金属が化学的及び/又は機械的に表面処理されている、[1]~[3]のいずれかに記載の複合体。
[5]
前記金属が締結用穴を有する[1]~[4]のいずれかに記載の複合体。
[6]
前記金属が、前記連続強化繊維を含む繊維強化樹脂と前記不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂とに挟まれた部分を有する、[2]~[5]のいずれかに記載の複合体。
[7]
前記金属の総表面積をA、前記金属の面のうち前記連続強化繊維を含む繊維強化樹脂と重なっている面の面積をA1、前記金属の面のうち前記不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂と重なっている面の面積をA2としたときに、(A1+A2)/Aが0.20以上である、[2]~[6]のいずれかに記載の複合体。
[8]
前記繊維強化樹脂が熱可塑性樹脂を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の複合体。
[9]
前記熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂である、[8]に記載の複合体。
[10]
前記繊維強化樹脂の強化繊維がガラス繊維である、[1]~[9]のいずれか一項に記載の複合体。
[11]
[1]~[10]のいずれかに記載の複合体を含むことを特徴とする、箱型部材。
[12]
[1]~[10]のいずれかに記載の複合体を含むことを特徴とする、オイルパン。
[13]
[2]~[10]のいずれかに記載の複合体の製造方法であり、
金属、及び連続強化繊維を含む繊維強化樹脂(連続繊維強化樹脂)の両方又はいずれか一方を予熱し、
前記金属と前記連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めした後、前記金型内に不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂(不連続繊維強化樹脂)を射出することを含み、
前記不連続繊維強化樹脂は、前記金属及び前記連続繊維強化樹脂の両方に接合する
ことを特徴とする、複合体の製造方法。
[14]
[2]~[10]のいずれかに記載の複合体の製造方法であり、
金属と、連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めした後、加熱し、前記金型内に不連続繊維強化樹脂を射出することを含み、
前記不連続繊維強化樹脂は、前記金属及び前記連続繊維強化樹脂の両方に接合する
ことを特徴とする、複合体の製造方法。
[15]
[2]~[10]のいずれかに記載の複合体の製造方法であり、
金属、連続繊維強化樹脂、及び不連続繊維強化樹脂の少なくとも1つを予熱し、
前記金属と前記連続繊維強化樹脂と前記不連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めすることを含み、
前記不連続繊維強化樹脂は、前記金属及び前記連続繊維強化樹脂の両方に接合する
ことを特徴とする、複合体の製造方法。
[16]
[2]~[10]のいずれかに記載の複合体の製造方法であり、
金属と連続繊維強化樹脂と不連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めした後、加熱することを含み、
前記不連続繊維強化樹脂は、前記金属及び前記連続繊維強化樹脂の両方に接合する
ことを特徴とする、複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軽量で強度に優れた複合体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明に係る複合体の一実施形態を示す斜視図である。
【
図1B】
図1Aに示す複合体を、別の角度から見たときの斜視図である。
【
図2】本発明に係る複合体の一実施形態とその原材料を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る複合体の一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
<複合体>
本実施形態の複合体は、金属と、連続強化繊維を含む繊維強化樹脂とを含むことを特徴とする。
本実施形態の複合体は、金属と、連続強化繊維を含む繊維強化樹脂とを含むことにより、外部からの衝撃を受けやすい車両部品等に用いた場合にも耐え得る十分な強度及び剛性を有しつつ、連続強化繊維を含む繊維強化樹脂を含むことにより、軽量化を実現することができる。また、特に、他の部材との締結部分を有する部品に用いた場合に、当該締結部分に掛かる荷重に対して十分な強度を発揮し、他の部材との結合を補強することができる。
【0011】
〈金属〉
本実施形態の複合体に含まれる金属は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、銅、亜鉛、銀、金、チタン、ニッケル、及び真鍮等が挙げられる。中でも、軽量化、強度、剛性の観点から、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼が好ましい。
【0012】
金属は、繊維強化樹脂との接合強度を高める観点から、化学的及び/又は機械的に表面処理されていてもよい。
化学的な表面処理としては、例えば、電解処理、化成処理(浸漬処理、スプレー処理、流しかけ処理等)等により金属表面に酸化皮膜を生成させる方法が挙げられる。
機械的な表面処理としては、例えば、レーザー加工、ブラスト加工等により金属表面に凹凸を形成する方法が挙げられる。
【0013】
本実施形態の複合体において、金属は、強度及び剛性の観点から、荷重が掛かり強度を要する部分を構成していることが好ましい。上記強度を要する部分が繊維強化樹脂で構成されていると、荷重により経時的にクリープが発生し、歪み、破壊等が生じる可能性がある。上記強度を要する部分としては、例えば、複合体とその他の部材との締結部分、当該締結部分における締結用穴を含めた種々の穴を有する部分等が挙げられる。
図1A及びBは、本実施形態の複合体の一例を示す斜視図である。複合体1において、締結用穴3を有する締結部分2は、金属で構成されていることが好ましい。
【0014】
〈連続強化繊維を含む繊維強化樹脂〉
本実施形態の複合体に含まれる、連続強化繊維を含む繊維強化樹脂(以下、「連続繊維強化樹脂」ともいう)は、連続強化繊維を含有させることにより強度を高めた樹脂である。
使用する連続強化繊維の種類、配合量、太さ、及び方向性等、並びに樹脂の種類及び配合量等を目的に応じて選択することにより、連続繊維強化樹脂の強度及び耐衝撃性等を調整することができる。
【0015】
[連続強化繊維]
本実施形態の連続繊維強化樹脂に含まれる連続強化繊維は、通常の繊維強化複合材料として使用されるものを用いることができ、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維、セラミックス繊維等が挙げられる。機械的特性、熱的特性、汎用性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維が好ましく、経済性の面からは、ガラス繊維が好ましい。
上記連続強化繊維は、一種を単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0016】
[1]
金属と、連続強化繊維を含む繊維強化樹脂と、不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂とを含み、
前記金属が、前記連続強化繊維を含む繊維強化樹脂と前記不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂とに挟まれた部分を有し、
前記金属が凹部を有し、前記凹部に嵌合する凸部が前記繊維強化樹脂に形成されている、且つ/又は、前記金属が凸部を有し、前記凸部に嵌合する凹部が前記繊維強化樹脂に形成されている、
ことを特徴とする、複合体。
[2]
前記金属が化学的及び/又は機械的に表面処理されている、[1]に記載の複合体。
[3]
前記金属が締結用穴を有する、[1]又は[2]に記載の複合体。
[4]
前記金属の総表面積をA、前記金属の面のうち前記連続強化繊維を含む繊維強化樹脂と重なっている面の面積をA1、前記金属の面のうち前記不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂と重なっている面の面積をA2としたときに、(A1+A2)/Aが0.20以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の複合体。
[5]
前記繊維強化樹脂が熱可塑性樹脂を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の複合体。
[6]
前記熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂である、[5]に記載の複合体。
[7]
前記繊維強化樹脂の強化繊維がガラス繊維である、[1]~[6]のいずれかに記載の複合体。
[8]
[1]~[7]のいずれかに記載の複合体を含むことを特徴とする、箱型部材。
[9]
[1]~[7]のいずれかに記載の複合体を含むことを特徴とする、オイルパン。
[10]
[1]~[7]のいずれかに記載の複合体の製造方法であり、
金属、及び連続強化繊維を含む繊維強化樹脂(連続繊維強化樹脂)の両方又はいずれか一方を予熱し、
前記金属と前記連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めした後、前記金型内に不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂(不連続繊維強化樹脂)を射出することを含み、
前記不連続繊維強化樹脂は、前記金属及び前記連続繊維強化樹脂の両方に接合する
ことを特徴とする、複合体の製造方法。
[11]
[1]~[7]のいずれかに記載の複合体の製造方法であり、
金属と、連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めした後、加熱し、前記金型内に不連続繊維強化樹脂を射出することを含み、
前記不連続繊維強化樹脂は、前記金属及び前記連続繊維強化樹脂の両方に接合する
ことを特徴とする、複合体の製造方法。
[12]
[1]~[7]のいずれかに記載の複合体の製造方法であり、
金属、連続繊維強化樹脂、及び不連続繊維強化樹脂の少なくとも1つを予熱し、
前記金属と前記連続繊維強化樹脂と前記不連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めすることを含み、
前記不連続繊維強化樹脂は、前記金属及び前記連続繊維強化樹脂の両方に接合する
ことを特徴とする、複合体の製造方法。
[13]
[1]~[7]のいずれかに記載の複合体の製造方法であり、
金属と連続繊維強化樹脂と不連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めした後、加熱することを含み、
前記不連続繊維強化樹脂は、前記金属及び前記連続繊維強化樹脂の両方に接合する
ことを特徴とする、複合体の製造方法。
【0017】
また、連続強化繊維として炭素繊維を選択した場合も同様に、集束剤を用いてもよく、集東剤としては、潤滑剤及び結束剤を含むことが好ましい。
炭素繊維に用いる集束剤の種類については、特に制限はなく公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、特開2015-101794号公報に記載のものを用いることができる。
【0018】
その他の連続強化繊維を用いる場合においても、連続強化繊維の特性に応じて、ガラス繊維、炭素繊維に用いることが可能な集束剤の種類、付与量を適宜選択して用いることができ、炭素繊維に用いる集束剤に準じた集束剤の種類、付与量とすることが好ましい。
【0019】
上記連続強化繊維は、単糸又は撚糸であってもよいし、2種以上の強化繊維からなる複合糸であってもよい。
また、上記強化繊維は、糸のままであってもよいし、紐状、組紐状、シート状(織物、編物、一方向配列シート、多軸織物等)等にしたものであってもよい。
【0020】
上記強化繊維の平均繊維長は、特に限定されず、所望される複合体の大きさ及び形状等に依存して種々の長さとすることができるが、複合体の最長辺の長さよりも長いことが好ましい。
上記強化繊維の単糸数は、取扱い性の観点から、30~15,000本であることが好ましい。
また、上記強化繊維の繊度は、取扱い性の観点から、100~50,000dtexであることが好ましい。
【0021】
上記強化繊維の断面形状は、特に限定されず、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状等)、及び中空状等のいずれであってもよい。
上記強化繊維の平均断面径は、長期特性の観点から、3~25μmであることが好ましい。
なお、強化繊維の平均断面径は、光学顕微鏡、デジタルマイクロスコープや走査型電子顕微鏡(SEM)等により測定することができる。
【0022】
連続繊維強化樹脂における連続強化繊維の含有量は、30~80量%であることが好ましく、35~75質量%であることがより好ましい。
【0023】
[樹脂]
本実施形態の連続繊維強化樹脂に含まれる樹脂は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよいが、熱可塑性樹脂であることがより好ましい。
【0024】
-熱可塑性樹脂-
連続繊維強化樹脂に含まれる熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンサルファイド;熱可塑性ポリエーテルイミド;テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂、及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、結晶性樹脂が好ましく、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、及び熱可塑性フッ素系樹脂が好ましく、機械的物性、汎用性の観点から、ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリエステル系樹脂がより好ましく、熱的物性の観点を加えると、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が更に好ましい。また、繰り返し荷重負荷に対する耐久性の観点から、ポリアミド系樹脂がより更に好ましく、ポリアミド66を好適に用いることができる。
上記熱可塑性樹脂は、一種を単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0025】
--ポリアミド系樹脂--
ポリアミド系樹脂とは、主鎖に-CO-NH-(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω-アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ポリアミドとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
その他の上記のラクタム、ジアミン(単量体)、ジカルボン酸(単量体)の詳細に関しては、適宜特開2015-101794号公報に記載のものを用いることができる。
【0026】
ポリアミドの具体例としては、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドやポリマーアロイ等が挙げられる。これらポリアミドのうち、耐熱性の観点から、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド66を含む共重合体又はアロイ、及びポリアミド6を含む共重合体又はアロイが好ましい。中でも、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6/66、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6I、ポリアミド6とポリアミド6I共重合体、ポリアミド66とポリアミド6I共重合体が好ましい。更に、成形加工性、吸水性能、取り扱いの観点から、ポリアミド6Iを含むアロイがより好ましく、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6Iが最も好ましい。
なお、上記ポリアミドの表記中の「/」は、ポリマーアロイであることを表す。
【0027】
共重合ポリアミドとしては、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合物、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合物、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2-メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合物等が挙げられる。
【0028】
-ポリエステル系樹脂-
ポリエステル系樹脂とは、主鎖に-CO-O-(エステル)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
その他のポリエステル系樹脂の詳細に関しては、適宜特開2015-101794号公報に記載のものを用いることができる。
【0029】
本実施形態の連続繊維強化樹脂に含まれる連続強化繊維及び熱可塑性樹脂は、連続強化繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含む混繊糸、連続強化繊維に熱可塑性樹脂をコーティングしたコーティング糸、又は連続強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させた含浸糸等の複合糸の形態を採ることができる。
熱可塑性樹脂繊維の単糸数は、取扱い性の観点から、30~20,000本であることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂繊維の繊度は、取扱い性の観点から、100~50,000dtexであることが好ましい。
【0030】
-熱硬化性樹脂-
熱硬化性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂、その他工業的に供されている樹脂、及びこれらの樹脂の2種以上を混合して得られる樹脂等が挙げられる。
【0031】
複合体における連続繊維強化樹脂の含有量は、30~80質量%であることが好ましく、35~75量%であることがより好ましく、40~70質量%であることが更に好ましい。
【0032】
〈連続強化繊維を含む繊維強化樹脂の製造方法〉
連続強化繊維を含む繊維強化樹脂は、例えば、フィルム状の樹脂とシート状(織物、編物、一方向配列シート、多軸織物等)の強化繊維との積層体を加熱・加圧処理する方法、繊維状の樹脂(樹脂繊維)と強化繊維とからなるシート(織物、編物、一方向配列シート、多軸織物等)を加熱・加圧処理する方法等により、製造することができる。樹脂繊維と強化繊維とからなるシートは、樹脂繊維と強化繊維との混繊糸、コーティング糸、又は含浸糸等を用いて作製してもよい。
上記の加熱・加圧処理としては、例えば、材料を金型に設置し、金型を加熱して金型温度を樹脂の融点以上又はガラス転移温度以上としたのち、型締め力1~100MPaで型締めして圧縮成形を行う。成形時間は、樹脂の融点又はガラス転移温度に達してから1~30分とし、金型を樹脂の融点又はガラス転移温度マイナス200℃~樹脂の融点又はガラス転移温度マイナス10℃まで冷却したのち開放して、連続繊維強化樹脂を得る。
【0033】
〈不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂〉
本実施形態の複合体は、不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂(以下、「不連続繊維強化樹脂」ともいう)を更に含んでいてもよい。
不連続繊維強化樹脂は、不連続強化繊維を含有させることにより強度を高めた樹脂である。
使用する不連続強化繊維の種類、配合量、太さ、及び方向性等、並びに樹脂の種類及び配合量等を目的に応じて選択することにより、不連続繊維強化樹脂の強度及び耐衝撃性等を調整することができる。
【0034】
不連続繊維強化樹脂は、連続繊維強化樹脂とは異なり、溶融時に樹脂中の強化繊維も流動するため、複合体の成形時に金型の複雑な形状の細部まで流れ込むことができ、複合体の複雑な形状の部分を構成することができる。
また、本実施形態の複合体において、不連続繊維強化樹脂が、金属の少なくとも一部及び連続繊維強化樹脂の少なくとも一部の両方に接合した構成であると、金属と連続繊維強化樹脂との接合性が強化された、強度の高い複合体となる。
【0035】
[不連続強化繊維]
本実施形態の不連続繊維強化樹脂に含まれる不連続強化繊維は、樹脂中にランダムに分散されていてもよいし、ランダムに配向された不連続繊維を有するランダム配向材(不織布等)として構成されていてもよい。
【0036】
不連続強化繊維は、短繊維、長繊維、ランダム繊維のいずれであってもよい。
不連続強化繊維の平均繊維長は、0.05~20mmであることが好ましく、より好ましくは0.1~15mm、更に好ましくは0.15~10mmである。不連続強化繊維の平均繊維長が上記範囲であると、複合体の成形時に、樹脂だけでなく不連続強化繊維も金型の複雑な形状の細部へと流動するため、複雑な形状の複合体を得ることができる。
なお、不連続強化繊維の平均繊維長は、複合体を焼却したのちに残存する不連続強化繊維の長さの平均値である。
【0037】
上記不連続強化繊維の種類としては、上述の連続強化繊維と同様のものが挙げられ、連続強化繊維と同じであっても異なっていてもよい。
上記不連続強化繊維は、一種を単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0038】
[樹脂]
本実施形態の不連続繊維強化樹脂に含まれる樹脂は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよいが、熱可塑性樹脂であることがより好ましい。
【0039】
-熱可塑性樹脂-
不連続繊維強化樹脂に含まれる熱可塑性樹脂の種類としては、上述の連続繊維強化樹脂に含まれる熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられ、連続繊維強化樹脂に含まれる熱可塑性樹脂と同じであっても異なっていてもよい。
上記熱可塑性樹脂は、一種を単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0040】
複合体における不連続繊維強化樹脂の含有量は、10~70質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることが更に好ましい。
【0041】
〈不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂の製造方法〉
不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂は、例えば、樹脂に強化繊維を混錬して分散させる方法、フィルム状の樹脂とシート状(不織布等)の強化繊維との積層体を加熱・加圧処理する方法等により、製造することができる。
上記の加熱・加圧処理としては、例えば、材料を金型に設置し、金型を加熱して金型温度を樹脂の融点以上又はガラス転移温度以上としたのち、型締め力1~100MPaで型締めして圧縮成形を行う。成形時間は、樹脂の融点又はガラス転移温度に達してから1~30分とし、金型を樹脂の融点又はガラス転移温度マイナス200℃~樹脂の融点又はガラス転移温度マイナス10℃まで冷却したのち開放して、不連続繊維強化樹脂を得る。
【0042】
[添加剤]
本実施形態の複合体には、必要に応じて添加剤を含有させてもよい。本実施形態の複合体は、例えば、老化防止剤、酸化防止剤、耐候剤、金属不活性剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、防菌・防黴剤、防臭剤、導電性付与剤、分散剤、軟化剤、可塑剤、架橋剤、共架橋剤、加硫剤、加硫助剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、難燃剤、制振剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤等の添加剤を含有してもよい。
添加剤の含有量は、複合体100質量%に対して、10質量%以下としてよい。
【0043】
本実施形態の複合体は、金属が凹部を有し、この凹部に嵌合する凸部が繊維強化樹脂(連続繊維強化樹脂及び/又は不連続繊維強化樹脂)に形成されている、且つ/又は金属が凸部を有し、凸部に嵌合する凹部が繊維強化樹脂(連続繊維強化樹脂及び/又は不連続繊維強化樹脂)に形成されていることが好ましい。このような構造を有する複合体は、金属と繊維強化樹脂との接合強度が高く、強度に優れる傾向にある。特に、金属の凹部が貫通穴であり、この貫通穴に嵌合する凸部が繊維強化樹脂に形成されている(即ち、金属の貫通穴に繊維強化樹脂が充填されている)場合に、金属と繊維強化樹脂との接合強度がより高くなる傾向にある。
なお、本明細書において、凹部とは、金属及び繊維強化樹脂の表面上の凹んだ部分、貫通穴も含む穴の部分を意味する。また、本明細書において、凸部とは、金属及び繊維強化樹脂の表面上の突き出た部分を意味する。凹部及び凸部の形状及び大きさは、特に限定されない。
図2は、本実施形態の複合体の一例とその原材料を示す斜視図である。貫通穴12を有する金属11と、連続繊維強化樹脂13とを原料とし、連続繊維強化樹脂13の一部が金属11の貫通穴12の一方の開口部全体と重なるようにして金属11と連続繊維強化樹脂13とを重ね、金型内に設置して型締めするプレス成形により、複合体10を成形することができる。
【0044】
金属の凹部及び凸部は、例えば、上述のレーザー加工やブラスト加工等の機械的な表面処理により形成することができる。繊維強化樹脂の凹部及び凸部は、複合体の形成時に、繊維強化樹脂が金属の凸部及び凹部にそれぞれ嵌合するように成形されることにより形成される。
【0045】
また、本実施形態の複合体は、金属が、連続強化繊維を含む繊維強化樹脂と不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂とに挟まれた部分を有することが好ましい。このような部分を有する複合体は、金属と繊維強化樹脂との接合強度が高く、強度に優れる傾向にある。
図3は、本実施形態の複合体の一例を示す斜視図である。複合体20は、金属11が、連続繊維強化樹脂13と不連続繊維強化樹脂14とに挟まれた部分を有する。
【0046】
本実施形態の複合体は、金属の総表面積をA(cm2)、金属の面のうち連続強化繊維を含む繊維強化樹脂と重なっている面の面積をA1(cm2)、金属の面のうち不連続強化繊維を含む繊維強化樹脂と重なっている面の面積をA2(cm2)としたときに、金属と繊維強化樹脂との接合強度の観点から、(A1+A2)/Aが0.20以上であることが好ましく、0.30以上であることがより好ましく、0.50以上であることが更に好ましい。
なお、上記面積A、A1、及びA2は、複合体中の金属から各樹脂を取り除いた後、キーエンスVHX-1000により金属表面の画像を取得し、該画像から金属の総表面積、各樹脂が重なっていた部分の面積をそれぞれ測定することにより得られる値であり、より具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0047】
〈複合体の製造方法〉
本実施形態の複合体は、金属と連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めするプレス成形により、成形することができる。
【0048】
上記製造方法において、金属と連続繊維強化樹脂とは、金型内に設置する前にその両方又はいずれか一方を予熱してもよいし、どちらも予熱せずに金型内に設置し、金型内で加熱してもよい。金属と連続繊維強化樹脂との接合強度の向上、成形形状の自由度の向上、成形時のサイクル短縮の観点から、金属及び連続繊維強化樹脂の両方を予熱してから金型内に設置することが好ましい。
金属を予熱する方法は、特に限定されず、バーナー、赤外線(IR)ヒーター、レーザー、加熱炉、加熱蒸気等を用いる方法が挙げられる。また、連続繊維強化樹脂を予熱する方法は、特に限定されず、IRヒーター、予熱ロール等を用いる方法、複合体成形用金型とは別の金型内で予熱する方法等が挙げられる。
金属の予熱温度は、50~500℃とすることが好ましい。また、連続繊維強化樹脂の予熱温度は、樹脂の分解温度以下とすることが好ましい。
【0049】
金型の温度は、繊維強化樹脂のガラス転移温度以上に設定し、常に一定温度に温調しておくことが好ましい。型締め圧力は、特に限定されないが、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上である。
【0050】
本実施形態の複合体が更に不連続繊維強化樹脂を含む場合の、本実施形態の複合体の製造方法の一態様は、金属と連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めした後、金型内に不連続繊維強化樹脂を射出することを含み、不連続繊維強化樹脂は、金属及び連続繊維強化樹脂の両方に接合することを特徴とする。即ち、圧縮成形と射出成形とを組み合わせたハイブリッド成形を行うことを特徴とする。
【0051】
不連続繊維強化樹脂は、金属の少なくとも一部及び連続繊維強化樹脂の少なくとも一部と接触するように金型内に射出注入されることにより、金属及び連続繊維強化樹脂の両方に接合する。これにより、不連続繊維強化樹脂が金属と連続繊維強化樹脂との繋ぎの役割を果たして両者の接合を高め、複合体の強度を高めることができる。
【0052】
また、不連続繊維強化樹脂を射出注入することにより、複合体の成形時に金型の複雑な形状の細部まで不連続繊維強化樹脂を流れ込ませることができ、複雑な形状の複合体を成形することができる。
【0053】
上記製造方法において、金属と連続繊維強化樹脂とは、金型内に設置する前にその両方又はいずれか一方を予熱してもよいし、どちらも予熱せずに金型内に設置し、金型内でのみ加熱してもよい。
金属及び連続繊維強化樹脂の予熱方法及び予熱温度は、それぞれ上述の方法及び温度範囲と同様としてよい。
【0054】
不連続繊維強化樹脂を射出成形する際の、不連続繊維強化樹脂の射出充填のタイミングは、連続繊維強化樹脂の型締めから30秒以内であることが好ましい。
射出条件としては、射出ユニットのシリンダー温度を270~320℃、充填圧力を1~150MPa、射出速度を5~150mm/秒、保持圧力を3~200MPaに設定することが好ましい。
不連続繊維強化樹脂の射出充填後、1~180分間保持することにより、連続繊維強化樹脂と不連続繊維強化樹脂とを接合する。その際の金型の温度は、繊維強化樹脂のガラス転移温度以上、融点以下に設定し、常に一定温度に温調しておくことが好ましい。また、このときの型締め力は、好ましくは0.01~20MPa、より好ましくは0.1~15MPaである。
なお、連続繊維強化樹脂の樹脂と不連続繊維強化樹脂の樹脂とが異なる場合の金型の温度は、それぞれのガラス転移温度のうち、高い方の温度以上とする。
【0055】
なお、上記製造方法では、不連続繊維強化樹脂を射出成形するため、複合体中の不連続強化繊維の平均繊維長は3mm以下となる傾向があり、強度、剛性、流動性の観点からは0.01~1mmとなるように材料となる不連続強化繊維の繊維長を選択することが好ましい。
【0056】
また、本実施形態の複合体が更に不連続繊維強化樹脂を含む場合の、本実施形態の複合体の製造方法の別の態様は、金属と連続繊維強化樹脂と不連続繊維強化樹脂とを金型内に設置して型締めすることを含み、不連続繊維強化樹脂は、金属及び連続繊維強化樹脂の両方に接合することを特徴とする。
【0057】
上記製造方法において、金属、連続繊維強化樹脂、及び不連続繊維強化樹脂の少なくとも1つを、金型内に設置する前に予熱してもよいし、いずれも予熱せずに金型内に設置し、全て金型内でのみ加熱してもよい。金属と連続繊維強化樹脂との接合強度の向上、成形形状の自由度の向上、成形時のサイクル短縮の観点から、金属、連続繊維強化樹脂、及び不連続繊維強化樹脂の全てを予熱してから金型内に設置することが好ましい。
金属及び連続繊維強化樹脂の予熱方法及び予熱温度は、それぞれ上述の方法及び温度範囲と同様としてよい。また、不連続繊維強化樹脂の予熱方法及び予熱温度は、連続繊維強化樹脂と同様としてよい。
【0058】
なお、上記製造方法では、不連続繊維強化樹脂をプレス成形するため、複合体中の不連続強化繊維の平均繊維長は3~20mmと、射出成形する場合よりも長くなる傾向があり、強度、剛性の観点からは5~10mmとなるように材料となる不連続強化繊維の繊維長を選択することが好ましい。
【0059】
本実施形態の複合体が締結用穴等の貫通穴を有する場合、強度及び剛性、更にコストの観点から、穴加工した金属を用いることにより、繊維強化樹脂ではなく金属により穴を有する部分を形成することが好ましい。連続繊維強化樹脂のプレス成形により穴を形成する場合、バリ取りや連続強化繊維の配向の乱れにより強度が低下する可能性がある。また、複合体の成形後に穴加工したとしても、連続強化繊維の切削による強度低下や後加工を行うことによるコスト上昇の可能性がある。また、射出成形では、プレス成形よりも比較的容易に穴形成が可能なため、不連続強化繊維の射出成形により穴を形成することも可能であるが、不連続強化繊維中の短繊維では強度不足となる可能性がある。
【0060】
本実施形態の複合体は、箱型部材、パイプ部材、ハット型部材、コの字断面部材、中空体部材として好適に用いることができ、特に、オイルパン、シートパン、ポンプ、シリンダーヘッドカバー、ギヤボックス、ケース部品等の自動車部品、航空機部品、鉄道部品、住宅建材部品、ロボット部品等に好適に用いることができる。また、これらの各種部品において、特に、部品本体や、他の部品と結合する締結部分があるパーツに好適に用いることができる
本実施形態の複合体の大きさ及び形状は、所望される上記部材及び部品等の大きさ及び形状に依存して種々の大きさ及び形状とすることができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例、参考例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
<測定方法>
実施例、参考例及び比較例において使用した測定方法は、以下のとおりである。
【0063】
(1)金属表面における接合面積の割合
実施例、参考例及び比較例で得られた複合体中の金属の総表面積をA(cm2)、該金属の面のうち連続繊維強化樹脂Xと重なっている面の面積をA1(cm2)、該金属の面のうち不連続繊維強化樹脂Yと重なっている面の面積をA2(cm2)として、それぞれの面積を測定し、(A1+A2)/Aの値を求めた。
各面積の測定は、具体的には、実施例、参考例及び比較例で得られた複合体中の金属から連続繊維強化樹脂Xを取り除いた後、キーエンスVHX-1000により金属表面の画像を取得し、該画像から連続繊維強化樹脂Xが重なっていた部分の面積を測定してA1(cm2)とした。同様にして、複合体中の金属から不連続繊維強化樹脂Yを取り除いた後、キーエンスVHX-1000により取得した金属表面の画像から不連続繊維強化樹脂Yが重なっていた部分の面積を測定してA2(cm2)とした。また、複合体中の金属から全ての樹脂を取り除いた後、キーエンスVHX-1000により取得した金属表面の画像から金属の総表面積を測定してA(cm2)とした。
【0064】
<材料>
実施例、参考例及び比較例において使用した材料は以下のとおりである。
【0065】
[金属]
・ADC12(アルミニウム合金)
・A5052(アルミニウム合金)
【0066】
[連続繊維強化樹脂]
・連続繊維強化樹脂X:以下のようにして、連続繊維強化樹脂Xを製造した。
(連続強化繊維)
ガラス繊維(「ER1200T-423」日本電気硝子株式会社製)
(熱可塑性樹脂)
ポリアミド樹脂A:ポリアミド66(「レオナ1300S」旭化成株式会社製)
ポリアミド樹脂B:ポリアミド66(「レオナ1502S」旭化成株式会社製)とカーボンブラックマスターバッチ(「LC050M-33943-M」旭化成株式会社製)とを4:1の質量比でドライブレンドしたもの
〈ガラスクロスの製造〉
レピア織機(織幅2m)を用い、上記ガラス繊維を経糸及び緯糸として用いて製織することにより、ガラスクロスを製造した。得られたガラスクロスの織形態は平織、織密度は6.5本/25mm、目付は600g/m2であった。
〈ポリアミド樹脂フィルムの製造〉
上記ポリアミド樹脂A及びBを、それぞれTダイ押出成形機(株式会社創研製)を用いて成形することにより、それぞれ厚さ200μmのフィルムを得た。
〈連続繊維強化樹脂Xの製造〉
成形機(最大型締め力50トンの油圧成形機、株式会社ショージ製)及びインロー構造の平板(縦200mm×横100mm×厚み2mm)用金型を準備した。
上記で得られたガラスクロス6枚とポリアミド樹脂Aのフィルム5枚とポリアミド樹脂Bのフィルム2枚とを金型形状に合わせて切断し、ポリアミド樹脂Bのフィルムが表面となるようにガラスクロスとポリアミド樹脂のフィルムとを交互に重ね(B/G/A/G/A/G/A/G/A/G/A/G/Bの順、Aはポリアミド樹脂Aのフィルム、Bはポリアミド樹脂Bのフィルム、Gはガラスクロス)、金型内に設置した。
成形機内温度が330℃となるように加熱し、次いで型締め力5MPaで型締めして、圧縮成形を行った。成形時間は、ポリアミド66の融点である265℃に達してから1分とし、金型を80℃まで急却したのちに開放して、連続繊維強化樹脂X(縦200mm×横100mm×厚み2mm)を得た。
【0067】
[不連続繊維強化樹脂]
・不連続繊維強化樹脂Y:ガラス短繊維強化ポリアミド66(「レオナ14G50」旭化成株式会社製、ガラス繊維:50質量%、平均繊維長0.5mm)
・不連続繊維強化樹脂Z:ガラス繊維強化ポリアミド6(「TEPEX flowcore102」LANXESS社製、ガラス繊維:55質量%、平均繊維長40mm)
【0068】
[
参考例1]
直径7mmの貫通穴を有するADC12の試験片(20mm×40mm×厚み2mm)1つと、IR加熱炉で300℃に加熱した連続繊維強化樹脂X1枚とを、連続繊維強化樹脂Xの一部がADC12試験片の貫通穴の一方の開口部全体と重なるようにして(
図2参照)、120℃のプレス金型の所定の位置に配置し、10MPaの圧力でプレス成形した。連続繊維強化樹脂Xから流出した樹脂がADC12試験片の貫通穴に入り込んで固化した複合体を得た。
得られた複合体の(A1+A2)/Aは0.3であった。ADC12と連続繊維強化樹脂Xとは良好に接合していた。
【0069】
[実施例2]
直径7mmの貫通穴を有するADC12の試験片(20mm×40mm×厚み2mm)1つと、IR加熱炉で300℃に加熱した連続繊維強化樹脂X1枚とを、連続繊維強化樹脂Xの一部がADC12試験片の貫通穴の一方の開口部全体と重なるようにして(
図2参照)、120℃のプレス金型の所定の位置に配置し、10MPaの圧力でプレス成形した。続いて、上記プレス金型のキャビティ内に射出ユニットから不連続繊維強化樹脂Yを射出し(シリンダー設定温度290℃、射出圧力150MPa、射出速度100mm/sec、保持圧力100MPa)、3分間保持することにより、連続繊維強化樹脂Xの一部と不連続繊維強化樹脂Yの一部とが、貫通穴を両側から閉塞するようにしてADC12試験片を挟み、また、連続繊維強化樹脂Xと不連続繊維強化樹脂Yとが接合している部分を有する複合体(
図3参照)を得た。ADC12試験片の貫通穴では、一方の開口部から連続繊維強化樹脂Xから流出した樹脂が入り込み、もう一方の開口部から不連続繊維強化樹脂Yが入り込んでそれぞれ固化し、貫通穴内で接合していた。
得られた複合体の(A1+A2)/Aは0.6であった。ADC12は、連続繊維強化樹脂X及び不連続繊維強化樹脂Yの両方と良好に接合していた。
【0070】
[参考例3]
参考例1と同様にして参考例3を行った。具体的には、大成プラス株式会社製NMT(ナノモールディングテクノロジー)処理を施したA5052の試験片(20mm×40mm×厚み2mm)1つと、IR加熱炉で300℃に加熱した連続繊維強化樹脂X1枚とを、連続繊維強化樹脂Xの一部がA5052試験片の一部と重なるようにして、120℃のプレス金型の所定の位置に配置し、10MPaの圧力でプレス成形した。連続繊維強化樹脂XとA5052とが接触して固化した複合体を得た。
得られた複合体の(A1+A2)/Aは0.4であった。A5052と連続繊維強化樹脂Xとは良好に接合していた。
【0071】
[実施例4]
実施例2と同様にして実施例4を行った。具体的には、大成プラス株式会社製NMT(ナノモールディングテクノロジー)処理を施したA5052の試験片(20mm×40mm×厚み2mm)1つと、IR加熱炉で300℃に加熱した連続繊維強化樹脂X1枚とを、連続繊維強化樹脂Xの一部がA5052試験片の一部と重なるようにして、120℃のプレス金型の所定の位置に配置し、10MPaの圧力でプレス成形した。続いて、上記プレス金型のキャビティ内に射出ユニットから不連続繊維強化樹脂Yを射出し(シリンダー設定温度290℃、射出圧力150MPa、射出速度100mm/sec、保持圧力100MPa)、3分間保持することにより、連続繊維強化樹脂Xの一部と不連続繊維強化樹脂Yの一部とでA5052試験片の一部を挟み、また、連続繊維強化樹脂Xと不連続繊維強化樹脂Yとが接合している部分を有する複合体を得た。
得られた複合体の(A1+A2)/Aは0.8であった。A5052は、連続繊維強化樹脂X及び不連続繊維強化樹脂Yの両方と良好に接合していた。
【0072】
[実施例5]
実施例2と同様にして実施例5を行った。具体的には、直径7mmの貫通穴を有するADC12の試験片(20mm×40mm×厚み2mm)1つと、IR加熱炉で300℃に加熱した連続繊維強化樹脂X1枚とを、連続繊維強化樹脂Xの一部がADC12試験片の貫通穴の一方の開口部全体と重なるようにして、120℃のプレス金型の所定の位置に配置し、10MPaの圧力でプレス成形した。続いて、上記プレス金型のキャビティ内に射出ユニットから不連続繊維強化樹脂Yを射出し(シリンダー設定温度290℃、射出圧力150MPa、射出速度100mm/sec、保持圧力100MPa)、3分間保持することにより、連続繊維強化樹脂Xの一部と不連続繊維強化樹脂Yの一部とが、貫通穴を両側から閉塞するようにしてADC12試験片を挟み、また、連続繊維強化樹脂Xと不連続繊維強化樹脂Yとが接合している部分を有する複合体を得た。ADC12試験片の貫通穴では、一方の開口部から連続繊維強化樹脂Xから流出した樹脂が入り込み、もう一方の開口部から不連続繊維強化樹脂Yが入り込んでそれぞれ固化し、貫通穴内で接合していた。
得られた複合体の(A1+A2)/Aは0.1であった。ADC12と連続繊維強化樹脂Xとの接合強度、及びADC12と不連続繊維強化樹脂Yとの接合強度は、いずれも他の実施例と比較して低かった。
【0073】
[実施例6]
直径7mmの貫通穴を有するADC12の試験片(20mm×40mm×厚み2mm)1つと、連続繊維強化樹脂X1枚とを、連続繊維強化樹脂Xの一部がADC12試験片の貫通穴の一方の開口部全体と重なるようにして(
図2参照)プレス金型の所定の位置に配置し、型締め後、10MPaの圧力で加圧しながら金型の温度を300℃まで加熱した。続いて、上記プレス金型のキャビティ内に射出ユニットから不連続繊維強化樹脂Yを射出した後(シリンダー設定温度290℃、射出圧力150MPa、射出速度100mm/sec、保持圧力100MPa)、金型の温度を50℃まで冷却することにより、連続繊維強化樹脂Xの一部と不連続繊維強化樹脂Yの一部とが、貫通穴を両側から閉塞するようにしてADC12試験片を挟み、また、連続繊維強化樹脂Xと不連続繊維強化樹脂Yとが接合している部分を有する複合体(
図3参照)を得た。ADC12試験片の貫通穴では、一方の開口部から連続繊維強化樹脂Xから流出した樹脂が入り込み、もう一方の開口部から不連続繊維強化樹脂Yが入り込んでそれぞれ固化し、貫通穴内で接合していた。
得られた複合体の(A1+A2)/Aは0.6であった。ADC12は、連続繊維強化樹脂X及び不連続繊維強化樹脂Yの両方と良好に接合していた。
【0074】
[実施例7]
直径7mmの貫通穴を有するADC12の試験片(20mm×40mm×厚み2mm)1つと、300℃に予熱した連続繊維強化樹脂X1枚と、250℃に予熱した不連続繊維強化樹脂Z1枚(縦200mm×横100mm×厚み2mm)とを、連続繊維強化樹脂Xの一部がADC12試験片の貫通穴の一方の開口部全体と重なり、不連続繊維強化樹脂Zの一部がADC12試験片の貫通穴のもう一方の開口部全体と重なるようにして120℃のプレス金型の所定の位置に配置し、型締め後、10MPaの圧力で3分間加圧した。連続繊維強化樹脂Xの一部と不連続繊維強化樹脂Zの一部とが、貫通穴を両側から閉塞するようにしてADC12試験片を挟み、また、連続繊維強化樹脂Xと不連続繊維強化樹脂Zとが接合している部分を有する複合体(
図3参照)を得た。ADC12試験片の貫通穴では、一方の開口部から連続繊維強化樹脂Xから流出した樹脂が入り込み、もう一方の開口部から不連続繊維強化樹脂Yが入り込んでそれぞれ固化し、貫通穴内で接合していた。
得られた複合体の(A1+A2)/Aは0.6であった。ADC12は、連続繊維強化樹脂X及び不連続繊維強化樹脂Yの両方と良好に接合していた。
【0075】
[実施例8]
直径7mmの貫通穴を有するADC12の試験片(20mm×40mm×厚み2mm)1つと、連続繊維強化樹脂X1枚と、不連続繊維強化樹脂Z1枚(縦200mm×横100mm×厚み2mm)とを、連続繊維強化樹脂Xの一部がADC12試験片の貫通穴の一方の開口部全体と重なり、不連続繊維強化樹脂Zの一部がADC12試験片の貫通穴のもう一方の開口部全体と重なるようにしてプレス金型の所定の位置に配置し、型締め後、10MPaの圧力で加圧しながら300℃まで金型の温度を上げた。その後、金型の温度を50℃まで冷却することにより、連続繊維強化樹脂Xの一部と不連続繊維強化樹脂Zの一部とが、貫通穴を両側から閉塞するようにしてADC12試験片を挟み、また、連続繊維強化樹脂Xと不連続繊維強化樹脂Zとが接合している部分を有する複合体(
図3参照)を得た。ADC12試験片の貫通穴では、一方の開口部から連続繊維強化樹脂Xから流出した樹脂が入り込み、もう一方の開口部から不連続繊維強化樹脂Zが入り込んでそれぞれ固化し、貫通穴内で接合していた。
得られた複合体の(A1+A2)/Aは0.6であった。ADC12は、連続繊維強化樹脂X及び不連続繊維強化樹脂Yの両方と良好に接合していた。
【0076】
[比較例1]
実施例4と同様にして比較例1を行った。具体的には、A5052の試験片(20mm×40mm×厚み2mm)1つと、IR加熱炉で300℃に加熱した連続繊維強化樹脂X1枚とを、連続繊維強化樹脂Xの一部がA5052試験片の一部と重なるようにして120℃のプレス金型の所定の位置に配置し、10MPaの圧力でプレス成形した。続いて、上記プレス金型のキャビティ内に射出ユニットから不連続繊維強化樹脂Yを射出し(シリンダー設定温度290℃、射出圧力150MPa、射出速度100mm/sec、保持圧力100MPa)、3分間保持した。A5052は連続繊維強化樹脂X及び不連続繊維強化樹脂Yのいずれとも接合せず、分離したため、連続繊維強化樹脂Xと不連続繊維強化樹脂Yとが接合している部分を有する、連続繊維強化樹脂X及び不連続繊維強化樹脂Yのみからなる複合体を得た。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の複合体は、軽量で強度に優れるため、特に、オイルパン、シートパン、ポンプ、シリンダーヘッドカバー、ギヤボックス、ケース部品等の自動車部品、航空機部品、鉄道部品、住宅建材部品、ロボット部品等への適用に好適である。
【符号の説明】
【0078】
1、10、20:複合体
2:締結部分
3:締結用穴
11:金属
12:貫通穴
13:連続繊維強化樹脂
14:不連続繊維強化樹脂