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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】車両の点検整備用ピット装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 7/28 20060101AFI20240409BHJP
   B66F 7/06 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B66F7/28 M
B66F7/06 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020103198
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021195227
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000117467
【氏名又は名称】安全自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浮津 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】小倉 聖良
(72)【発明者】
【氏名】鞠子 凌平
(72)【発明者】
【氏名】廣田 琴音
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-508189(JP,A)
【文献】特開2009-208962(JP,A)
【文献】特開2019-202839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 7/28
B66F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面を長方形状に掘り起こしたピットの内部に、ピット床面昇降テーブルと、該ピット床面昇降テーブルを昇降自在とするピット床面昇降機構とを備えた車両の点検整備用ピット装置であって、
前記ピット床面昇降テーブルは、基部を構成する本体部と、前記本体部の上面に載置され互いに上下に分離可能に重なった多層部材とから構成され、
前記多層部材は、前記長方形状の長手方向に複数に分割されて形成されるとともに、前記多層部材は、
前記分割された複数の領域毎において、上層側を形成し、前記ピット床面昇降機構によって最上昇位置に上昇した際に、床側に固定されて前記ピットの開口部を塞ぎ前記床面と面一になるピットカバー部材と、
下層側を形成し、前記ピットカバー部材が床側に固定された際に、上層側に上昇して前記ピット床面昇降テーブルのテーブル面と面一になるフラット部材と、
を有することを特徴とする車両の点検整備用ピット装置。
【請求項2】
前記ピットカバー部材を床側と係合及び離脱可能とするピットカバー固定手段が、前記ピットカバー部材に設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両の点検整備用ピット装置。
【請求項3】
前記フラット部材を昇降させるフラット部材昇降手段が設けられ、前記ピット床面昇降機構による前記ピット床面昇降テーブルの昇降に連動して、前記ピットカバー固定手段の作動、及び前記フラット部材昇降手段の作動を制御する制御装置を備えることを特徴とする請求項2に記載の車両の点検整備用ピット装置。
【請求項4】
前記フラット部材と前記本体部との間に設けられ、前記フラット部材を上方に付勢するとともに、前記ピットカバー部材が前記フラット部材の上面に載置されているときは、前記ピットカバー部材の自重によって前記フラット部材の上方への移動が阻止され、前記ピットカバー部材が前記フラット部材の上面に載置されないときは、前記フラット部材を上方に移動させて、前記ピット床面昇降テーブルのテーブル面と面一にする付勢手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の点検整備用ピット装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の点検整備用ピット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車整備工場等において車両の点検整備や修理等を行う際、車両を床面から切り離して上昇させて作業するリフトタイプと、車両を床面に接地させた状態で車両の下に潜り込んで作業するピットタイプとが知られている。
【0003】
車両整備工場等に設置される点検整備用ピットは、車両を持ち上げることなく下からの点検整備を可能とするために、車両が乗り入れられる幅に床面を長方形状に掘り起こした車両点検整備用ピットが設けられ、ピット内に、ピット床面昇降テーブルと、このピット床面昇降テーブルを昇降自在とするピット床面昇降機構とを設けて構成されている。
【0004】
車両点検整備等を行うときは、ピット床面昇降テーブルの高さを所望の高さ位置に昇降させ、ピット床面昇降テーブル上に作業者が乗って作業を行う。一方、車両整備等を行わない時は、ピット床面昇降テーブルの高さを最上位置まで上昇させてピット開口面が塞がれ、ピット床面昇降テーブルの上面が床面と面一となるため、作業者はピット床面昇降テーブル上であるか床面上であるかを特段意識することなく自在に歩くことができる。
【0005】
また、車両がピットの開口部の全域に位置されず一部のみを利用する場合には、利用しない開口部を転落防止の観点からピットカバーで覆う必要がある。例えば、図8に示すように、作業者が手動で収納場所01からピットカバー03を展開して設置する場合や、また、特許文献1に示されるように、ピットカバーを収納場所から自動で展開するピットカバー駆動部を備えた車両整備用ピット装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-202839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図8の従来技術や特許文献1に示される車両整備用ピット装置においては、ピットカバーの収納場所としてピットの開口部の一端部分を充当しているため、ピットが大型化し、工事費用が増大する問題が生じる。
【0008】
一方、車両点検整備等を行うときは、ピット床面昇降テーブルの高さを所望の高さ位置に昇降させ、ピット床面昇降テーブル上に作業者が乗って作業を行うため、作業者の作業効率を考慮すると、ピット床面昇降テーブル上での作業者の移動は、障害物等によって影響されることなくスムーズに行われることが望ましい。
【0009】
そこで、上記課題に鑑み、本発明の少なくとも一つの実施形態は、ピットの開口部を覆うピットカバーを、ピット床面昇降テーブル上に収納するとともに、テーブル上での作業者の移動に支障を与えないようにして、ピットの大型化の抑制と作業性の向上を図ることができる車両の点検整備用ピット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)前述した目的を達成するために発明されたものであり、本発明の少なくとも一つの実施形態は、床面を長方形状に掘り起こしたピットの内部に、ピット床面昇降テーブルと、該ピット床面昇降テーブルを昇降自在とするピット床面昇降機構とを備えた車両の点検整備用ピットであって、前記ピット床面昇降テーブルは、基部を構成する本体部と、前記本体部の上面に載置され互いに上下に分離可能に重なった多層部材とから構成され、前記多層部材は、前記長方形状の長手方向に複数に分割されて形成されるとともに、前記多層部材は、前記分割された複数の領域毎において、上層側を形成し、前記ピット床面昇降機構によって最上昇位置に上昇した際に、床側に固定されて前記ピットの開口部を塞ぎ前記床面と面一になるピットカバー部材と、下層側を形成し、前記ピットカバー部材が床側に固定された際に、上層側に上昇して前記ピット床面昇降テーブルのテーブル面と面一になるフラット部材と、を有することを特徴とする。
【0011】
このような構成(1)によれば、ピットの開口部を塞ぎ床面と面一になるピットカバー部材を、ピット床面昇降テーブルを構成する多層部材の上層側部材として設けるので、ピットカバー部材を設置するスペースをピットの開口部の端部に確保しなくてよいため、ピットの大型化を抑制できる。
【0012】
また、ピットカバー部材が床側に固定された際に、上層側に上昇してピット床面昇降テーブルのテーブル面と面一になるフラット部材を下層側部材として設けるので、ピット床面昇降テーブルの高さを所望の高さ位置に保持してピット床面昇降テーブル上に作業者が乗って作業を行う際に、ピット床面昇降テーブル上がフラットで段差がないため、移動がスムーズに行われ作業性が向上する。
【0013】
(2)幾つかの実施形態では、前記ピットカバー部材を床側に係合及び離脱可能とするピットカバー固定手段が、前記ピットカバー部材に設けられる。
【0014】
このような構成(2)によれば、ピットカバー固定手段が、前記ピットカバー部材に設けられるので、床面側の構造物に大きな追加工事を施す必要がないため、既存のピットにおいても簡単に本装置が設置可能である。
【0015】
(3)幾つかの実施形態では、前記フラット部材を昇降させるフラット部材昇降手段が設けられ、前記ピット床面昇降機構による前記ピット床面昇降テーブルの昇降に連動して、前記ピットカバー固定手段の作動、及び前記フラット部材昇降手段の作動を制御する制御装置を備える。
【0016】
このような構成(3)によれば、制御装置によって、ピット床面昇降機構によるピット床面昇降テーブルの昇降に連動して、ピットカバー固定手段の作動、及びフラット部材昇降手段の作動が自動的に制御される。
【0017】
(4)幾つかの実施形態では、前記フラット部材と前記本体部との間に設けられ、前記フラット部材を上方に付勢するとともに、前記ピットカバー部材が前記フラット部材の上面に載置されているときは、前記ピットカバー部材の自重によって前記フラット部材の上方への移動が阻止され、前記ピットカバー部材が前記フラット部材の上面に載置されていないときは、前記フラット部材を上方に移動させて、前記ピット床面昇降テーブルのテーブル面と面一にする付勢手段を備える。
【0018】
このような構成(4)によれば、フラット部材昇降手段を制御装置によって制御することなく、フラット部材の上昇と下降とを簡単な機構によって達成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、ピットの開口部を覆うピットカバーを、ピット床面昇降テーブル上に収納するとともに、テーブル上での作業者の移動に支障を与えないようにして、ピットの大型化の抑制と作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の点検整備用ピット装置の全体構成を示し、ピット床面昇降テーブルを最上昇位置に上昇させた状態を示す側面図である。
図2】ピット床面昇降テーブルを作業位置に下降した状態を示す側面図である。
図3】ピット床面昇降テーブルを作業位置に下降し、中央のピットカバーがピット開口部を塞ぐ位置に残した状態を示す側面図である。
図4】ピット床面昇降テーブルを最上昇位置に上昇させた状態を示す平面図である。
図5】コントローラの制御フローチャートである。
図6】フラット部材昇降手段の他の実施形態を示し、図3に対応する側面図である。
図7】フラット部材昇降手段の有無による比較例を示し、図3に対応する側面図である。
図8】ピットカバーの従来例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、実施形態として記載されている、または図面に示されている構成部品の相対的配置等は、本発明の範囲をこれらに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0022】
図1~5を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1~5に示すように、点検整備工場内には、車両の点検整備用ピット装置1が設置されている。床面3に、車両5、7の左右輪の幅よりも狭く車両5、7が乗り入れられる幅で、車両5、7の前後方向に延びる長方形に掘り起こした車両点検整備用のピット(以下ピットという)9が設けられる。
【0023】
ピット9の開口部11の縁には、例えば、コ字形状又はI形状の断面の鋼材のピットコーナ枠13が、床面3に埋め込まれている。また、ピット9の内部には、ピット床面昇降機構15によって昇降されるピット床面昇降テーブル17が設けられ、ピット9内でのピット床面が昇降して作業位置が調整される。
【0024】
また、ピット9内の前後方向の端部(前端部)には、階段部19が設けられ、作業位置に降下されたピット床面昇降テーブル17に乗り移る際に用いられる。ピット9を使用しないときには、転落防止のため階段部19の開口は階段部カバー21によって閉塞される。階段部カバー21は、スライド式であり、塞ぎたい際に床面3をスライドさせ階段部19の開口を塞ぐ。この階段部19は、固定階段の例を示すが、勾配や段数が可動式のものであってもよい。
【0025】
ピット床面昇降機構15は、ピット9の底面23に設置されたX型のリンク機構からなり、このX型のリンク機構は、リンク部材25、27、ピット床面昇降テーブル17、及び油圧ユニットの油圧シリンダ29を有している。油圧シリンダ29の作動により、リンク部材25、27の立ち上がりによってピット床面昇降テーブル17が上昇し、リンク部材25、27の倒れによってピット床面昇降テーブル17が下降するようになっている。ピット9内での作業時には、ピット床面昇降テーブル17を必要な高さに油圧シリンダ29の作動によって昇降して使用する。
【0026】
ピット床面昇降テーブル17は、X型のリンク機構の一部を構成するとともに、ピット床面昇降テーブル17の基部を構成する本体部31と、本体部31の上面に載置され互いに上下に分離可能に重なった多層部材33とから構成されている。
【0027】
多層部材33は、上下2層の構造からなり、上層側の部材は、ピット床面昇降機構15によって最上昇位置に上昇した際に、ピットコーナ枠13に後述するピットカバー固定手段43によって固定されてピット9の開口部11を塞ぎ床面3と面一になるピットカバー部材35によって構成される。下層側の部材は、ピットカバー部材35が床側に固定された際に、上層側に上昇してピット床面昇降テーブル17のテーブル面37と面一になるフラット部材39によって構成される。
【0028】
また、この多層部材33は、長方形状のピット9の長手方向に複数に分割されて形成されるとともに、多層部材33は、分割された複数の領域のそれぞれにおいて、上層側の部材と下層側の部材とを有している。
【0029】
例えば、図1に示すように、長手方向に3分割され、多層部材33は、第1ピットカバー部材35aと第1フラット部材39aからなる第1多層部材33aと、第2ピットカバー部材35bと第2フラット部材39bからなる第2多層部材33bと、第3ピットカバー部材35cと第3フラット部材39cからなる第3多層部材33cとによって構成されている。
【0030】
また、整備工場内にはピット9の近くには、操作盤41が設置されている。この操作盤41は、ピット9内のピット床面昇降テーブル17の上昇、下降、停止、さらには、分割された多層部材33の何れの部分のピットカバー部材35を、床側に固定して開口部11を塞ぐか等の操作信号を出力するとともに、操作信号に対応した作動を実行させる。なお、操作盤41は、固定式のものではなくハンディタイプの無線リモコン装置であっても良い。
【0031】
各ピットカバー部材35a、35b、35cの内部には、各ピットカバー部材35a、35b、35cを床側に係合及び離脱可能とするピットカバー固定手段43が設けられている。例えば、油圧若しくは電気駆動によるシリンダが作動して、ロックピンがピット9のピットコーナ枠13に向かって突出及び収縮可能であり、突出したときには、ピットコーナ枠13の鋼材に係合して指定されたピットカバー部材35が、ピットコーナ枠13に固定されてピット9の開口部11を塞ぎ、ピットカバー部材35の上面は床面3と面一になる。
【0032】
ピットカバー固定手段43が、各ピットカバー部材35a、35b、35cの内部に設けられるので、床面側の構造物に大きな追加工事を施す必要がないため、既存のピットにおいても簡単に設置可能である。
【0033】
また、各フラット部材39a、39b、39cとピット床面昇降テーブル17の本体部31との間には、本体部31に対してフラット部材39を昇降させるフラット部材昇降手段45が設けられている。例えば、油圧若しくは電気駆動によるシリンダが作動して、フラット部材39を上昇及び下降可能であり、上昇したときには、フラット部材39の上面は、ピット床面昇降テーブル17のテーブル面37と面一になる。
【0034】
また、車両5、7の点検整備用ピット装置1には、図1に示すように、ピット床面昇降機構15によるピット床面昇降テーブル17の昇降に連動して、ピットカバー固定手段43の作動、及びフラット部材昇降手段45の作動を制御するコントローラ(制御装置)47が備えられている。
【0035】
このコントローラ47には、操作盤41からの操作信号が入力されると共に、各ピットカバー部材35a、35b、35cのピットカバー固定手段43からの作動状態信号、及び、各フラット部材39a、39b、39cに対するフラット部材昇降手段45からの作動状態信号が入力される。
【0036】
コントローラ47の制御フローを図5のフローチャートを参照して説明する。まず、ステップS1では、操作盤41の操作信号を読み込む。ステップS2では、その操作信号がピット床面昇降テーブル17の上昇信号であるかを判定する。ステップS2の判定結果がYesの場合にはステップS3に進む。
【0037】
ステップS3では、開口部11の一部の領域のみを塞ぐような操作信号かを判定する。ステップS3の判定結果がYesの場合には、ステップS4に進んで、ステップS4では、ピット床面昇降テーブル17を最上昇位置まで上昇する。そして、ステップS5では、ピットカバー固定手段43を作動して、指定された領域のピットカバー部材35をピットコーナ枠13に固定する。
【0038】
次に、ステップS6では、ピットコーナ枠13に固定されたピットカバー部材35を残して、ピット床面昇降テーブル17を最上昇位置から下降する。ステップS7では、ピット床面昇降テーブル17が、最上昇位置から所定量以上下降したかを判定する。この所定量は、フラット部材39を上昇できる量である。
【0039】
ステップS7の判定がYesの場合には、ステップS8に進んで、ステップS8では、フラット部材昇降手段45を作動して、フラット部材39を上昇する。次に、ステップS10に進んで、ステップS10では、ピット床面昇降テーブル17を、作業を行う所定の位置まで下降して保持する。
【0040】
一方、ステップS3で、開口部11の一部の領域のみを塞ぐような操作信号ではないと判定した場合には、NOとなって、ステップS9に進んで、ステップS9では、ピット床面昇降テーブル17を最上昇位置まで上昇してその状態を保持する。すなわち、各ピットカバー部材35a、35b、35cが最上昇位置に保持されて、ピット9の開口部11が全てのピットカバー部材35によって塞がれる状態となる。
【0041】
このように、コントローラ47によって、ピット床面昇降テーブル17の昇降に連動して、ピットカバー固定手段43の作動、及びフラット部材昇降手段45の作動が自動的に制御することができる。
【0042】
以上のように構成された点検整備用ピット装置1において、図1図3を参照してピット床面昇降テーブル17が、最上昇位置、下降した作業位置に位置されている状態を説明する。
【0043】
図1は、ピット床面昇降テーブル17が最上昇位置に上昇した状態を示す。第1ピットカバー部材35a、第2ピットカバー部材35b、及び第3ピットカバー部材35cが最上昇位置に保持されて、ピット9の開口部11が、第1多層部材33a、第2多層部材33b、第3多層部材33cの全てのピットカバー部材35によって塞がれる状態となる。この場合には、ピット9は不使用の状態である。
【0044】
図2は、ピット床面昇降テーブル17が下降して所定の作業位置に位置された状態を示す。この場合には、ピット9に、大型の車両5が入って点検整備が行われている状態であり、ピット9の開口部11の全領域は開かれ、ピットカバー部材35によっては塞がれていない。
【0045】
図3は、ピット9に小型の車両7が前後に入って点検整備が行われる状態を示す。中央部分に車両7で塞がれない領域が生じるため、ピット床面昇降テーブル17が作業位置に下降され、中央部分の第2多層部材33bの第2ピットカバー部材35bがピット9の開口部11を塞ぐ位置に固定され、さらに、第2フラット部材39bが上昇してピット床面昇降テーブル17のテーブル面37と面一になっている状態である。
【0046】
図3に示すように、ピット床面昇降テーブル17上に作業者が乗って作業を行う際に、ピット床面昇降テーブル17のテーブル面37がフラットで段差がないため、移動がスムーズに行われ作業性が向上する。
【0047】
一方、図7の比較例には、第2フラット部材39bが上昇しない場合を示す。この場合には、ピット床面昇降テーブル17のテーブル面37と第2フラット部材39bの上面との間に段差Aが生じるので、足元が不安定になり引っ掛かりや、足を取られて作業者の移動や点検整備機器の移動に悪影響が生じる。
【0048】
以上説明した一実施形態によれば、ピット9の開口部11を塞ぎ床面3と面一になるピットカバー部材35を、ピット床面昇降テーブル17を構成する多層部材33の上層側部材として設けるので、ピットカバー部材35を設置するスペースをピット9の開口部11の端部に確保しなくてよいため、ピット9の大型化を抑制できる。
【0049】
また、ピットカバー部材35の一部が、ピットの開口部11の一部を塞ぐ位置に固定された際に、固定されたピットカバー部材35の下側に設置されているフラット部材39が上昇して、ピット床面昇降テーブル17のテーブル面37と面一になるので、ピット床面昇降テーブル17上での作業性が向上する。
【0050】
次に、図6を参照して、他の実施形態を説明する。この他の実施形態は、一実施形態において説明したフラット部材昇降手段45をコントローラ47によって制御することなく、フラット部材39の上昇と下降とを簡単な機構によって達成する。
【0051】
第1多層部材33a、第2多層部材33b、第3多層部材33cのそれぞれにおいて、フラット部材39とピット床面昇降テーブル17の本体部31との間に設けられ、フラット部材39を上方に付勢するとともに、ピットカバー部材35がフラット部材39の上面に載置されているときは、ピットカバー部材35の自重によってフラット部材39の上方への移動が阻止され、ピットカバー部材35がフラット部材39の上面に載置されないときは、フラット部材39を上方に移動させて、ピット床面昇降テーブル17のテーブル面37と面一にする付勢手段49を備える。
【0052】
付勢手段49は、例えば、コイルバネ又は空気バネ等のバネ部材によって構成される。さらに、フラット部材39が上方に移動されたときに、フラット部材39の上面をピット床面昇降テーブル17のテーブル面37と面一に位置させるために、バネ部材にストローク規制部が設けられ、又はバネ部材のバネ力が調整される。
【0053】
このような構成によれば、一実施形態において説明したフラット部材昇降手段45をコントローラ47によって制御することなく、フラット部材39の上昇と下降とを簡単な機構によって達成することができるので、装置の簡素化が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、ピットの開口部を覆うピットカバーを、ピット床面昇降テーブル上に収納するとともに、テーブル上での作業者の移動に支障を与えないようにして、ピットの大型化の抑制と作業性の向上を図ることができるので、車両の点検整備用ピット装置への利用に適している。
【符号の説明】
【0055】
1 点検整備用ピット装置
3 床面
5、7 車両
9 ピット
11 開口部
15 ピット床面昇降機構
17 ピット床面昇降テーブル
23 ピットの底面
31 本体部
33 多層部材
33a 第1多層部材
33b 第2多層部材
33c 第3多層部材
35 ピットカバー部材
35a 第1ピットカバー部材
35b 第2ピットカバー部材
35c 第3ピットカバー部材
37 テーブル面
39 フラット部材
39a 第1フラット部材
39b 第2フラット部材
39c 第3フラット部材
41 操作盤
43 ピットカバー固定手段
45 フラット部材昇降手段
47 コントローラ(制御装置)
49 付勢手段
A 段差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8