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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】卓球ラケット
(51)【国際特許分類】
   A63B 60/12 20150101AFI20240409BHJP
   A63B 59/40 20150101ALI20240409BHJP
   A63B 102/16 20150101ALN20240409BHJP
【FI】
A63B60/12
A63B59/40
A63B102:16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020104411
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021194350
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】518218069
【氏名又は名称】安井 明
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 明
【審査官】三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0817249(KR,B1)
【文献】特開2019-217242(JP,A)
【文献】特開2006-130279(JP,A)
【文献】特開昭52-043525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 49/00-51/16
A63B 55/00-60/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有する、平板状のブレードと、当該ブレードの先端部とは反対の基端部に設けられているグリップとを備え、前記ブレードの第1面及び第2面の両面にラバーを貼着して使用される卓球ラケットであって、
前記グリップは、
前記ブレードの第1面側に位置付けられてブレードの先端部側を向いており、使用者の示指が接触して押圧される示指接触面、
前記ブレードの第2面側に位置付けられてブレードの先端部側を向いており、使用者の中指が接触して押圧される中指接触面、
前記ブレードの先端部とは反対側の終端に位置付けられて、ブレードの第1面側から第2面側に亘り傾斜して形成され、使用者の掌が当接して押圧される掌当接面、及び
前記中指接触面に隣接し、当該掌当接面と平行するように傾斜して形成され、使用者の薬指が接触して押圧される薬指接触面を有し、
使用時に、前記示指接触面を押圧する示指、前記中指接触面を押圧する中指、及び前記薬指接触面を押圧する薬指と、前記掌当接面を押圧する掌とにより前記グリップを掴むように把持されて使用される、卓球ラケット。
【請求項2】
前記グリップは、前記ブレードの外周縁から延出したグリップ芯体と、前記グリップ芯体における第1面の側に配設された第1突出部材と、前記グリップ芯体における第2面の側に配設された第2突出部材とを備え、
前記示指接触面は、第1突出部材における前記ブレード先端部側に位置する一方端に設けられ、
前記中指接触面は、第2突出部材における前記ブレード先端部側に位置する一方端に設けられ、
前記掌当接面は、前記第1突出部材における前記ブレード先端部とは反対の側に位置する他方端、前記グリップ芯体における前記ブレード先端部とは反対の側に位置する終端、及び前記第2突出部材における前記ブレード先端部とは反対の側に位置する他方端を連接し、ブレードの第1面側から第2面側に亘り傾斜して形成され、
前記薬指接触面は、第2突出部材における前記中指接触面に隣接し、前記掌当接面と平行するように傾斜して形成される、請求項1に記載の卓球ラケット。
【請求項3】
前記掌当接面は、使用時に前記グリップを掴むように把持したとき、使用者の掌の受容面に適合する曲面を備えて形成されている、請求項2に記載の卓球ラケット。
【請求項4】
前記薬指接触面は、使用者の薬指を受容するに適合する曲面を備えて形成されている、請求項2または3に記載の卓球ラケット。
【請求項5】
第1突出部と第2突出部が形成するグリップ形状は、掌を閉じる際に掌内に形成され、掌によって区画される空間形状に合致する、請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の卓球ラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卓球ラケットに関し、詳しくは、従来のペンホルダーラケットやシェークハンドラケットとは異なる打法を可能にし、ペンホルダーラケットの卓球台上での操作性の利点とシェークハンドラケットの攻撃性とを兼ね備えた卓球ラケットのグリップ形状の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の代表的な卓球ラケットとしては、グリップを、ペンを持つように握るタイプのペンホルダーラケット、及びグリップを握手するように握るタイプのシェークハンドラケットが知られているが、こられの卓球ラケットのグリップ形状とは全く異なる卓球ラケットが、特許公報第650015号により知られている。
当該卓球ラケットは、使用者がそのグリップを指と掌とで包み込むように掴んで使用することから、これを、「鷲掴みグリップラケット」または「イーグルグリップラケット」と称し、或いは簡略的に「EGラケット」とも呼ばれている(以下、このグリップをイーグルグリップと呼び、ラケットをイーグルグリップラケットと呼ぶ)。
【0003】
より詳細には、イーグルグリップラケットは、使用者が当該ラケットのグリップを握る際に、使用者の示指と中指とでブレードを挟むようにして、示指をラケット上面側(表面側)のグリップ前端面に当接させ、中指をラケット下面側(裏面側)のグリップ前端面に当接させ、また、母指球と指尖球との間の掌部分(本明細書全体を通して、以下、単に「掌グリップ受容部位」と称し、その詳細は後述する)をグリップの掌当接面に当接させて使用するものである。イーグルグリップラケットは、使用者がイーグルグリップラケットのグリップの全体を掌の中に包み込むように保持して把持するので、球に前進性の回転を与えるスイングによるドライブを効果的に産み出すことができ、これまでのラケットになかった表面及び裏面を使ってフォアとバックハンドで打つことが出来、ペンホルダーラケットの卓球台上での操作性とシェークハンドラケットの攻撃性の利点とを兼ね備えたラケットである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許公報第650015号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EGラケットは、上述した通り、使用者がそのグリップを掌と指で包み込むように掴んで使用することから、そのグリップの形状は、種々の球の打ち易さや打ち返し易さ、ラケットを長時間使用する際のグリップの安定感や掌を傷つけないこと、更には卓球台上での操作性、等が求められる。特に、最近の卓球の試合では、サーブに始まる卓球台上での初期の打ち合いで勝負が決まることが多く、卓球台上でのラケットの操作性やそれにより生まれる返球の難しい打球を打てる機能は極めて重要であり、卓球ラケットの機能性は、主としてグリップ形状の最適化により実現される。
【0006】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、イーグルグリップラケットのグリップ形状の改良にあり、使用者の握り易さ、安定感やフィット感に優れ、更には卓球台上での操作性に優れたグリップ形状を備え、しかも、長時間のプレーにおいて手に疲れを与えることのない卓球ラケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、第1面及び第2面を有する、平板状のブレードと、当該ブレードの先端部とは反対の基端部に設けられているグリップとを備え、前記ブレードの第1面及び第2面の両面にラバーを貼着して使用される卓球ラケットであって、当該グリップは、ブレードの第1面側に位置付けられてブレードの先端部側を向いており、使用者の示指が接触して押圧される示指接触面、ブレードの第2面側に位置付けられてブレードの先端部側を向いており、使用者の中指が接触して押圧される中指接触面、薬指が接触して押圧される薬指接触面、及びブレードの先端部とは反対側の終端に位置付けられ、使用者の掌が当接して押圧される掌当接面を有する卓球ラケットが提供される。
【0008】
本発明に係るイーグルグリップラケットのグリップは、更に、前記掌当接面が、ブレードの第1面側から第2面側に亘り連続面として形成され、前記薬指接触面が、前記中指接触面に隣接し、且つ、前記掌当接面に平行するように形成される。そして、使用時に、前記示指接触面を押圧する示指、中指接触面を押圧する中指、及び薬指接触面を押圧する薬指に対して、掌当接面を押圧する掌とがグリップを囲むように把持していて力のバランスが生じ、グリップの形は掌を閉じたときに生じる空間の形になる(掌を閉じた形の図6及びその空間に入ったラケット図12)。このグリップの形が、イーグルグリップラケットの打球機能を発揮させ、その長期の使用に耐え得る理想の人間工学的形状である。
【0009】
更にまた、本発明に係るイーグルグリップラケットのグリップは、前記掌当接面が使用者の掌受容面に適合する長さと曲面を備えて形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の卓球ラケット(EGラケット)は、グリップ形状の改良により、薬指接触面を介して掌当接面に向かって薬指の押圧力を無駄なく掛けることが出来るようになり、更にまた、掌当接面を使用者の掌受容面に適合する長さと曲面を備えて形成させたことにより、使用者にとって握り易く、安定感やフィット感、更には卓球台上での優れた操作性を使用者に与え、長時間のプレーにおいて手に疲れや痛みを与えることが少ない新しい卓球ラケットが実現される。
【0011】
そして、本発明のEGラケットを用いると、グリップに掛けた指、特に、ラケット表面(第1面)及び裏面(第2面)に配される示指、中指、薬指及び親指により、グリップの軸回りに容易に回転を掛けることができ、フォア及びバックハンドのいずれであっても、また、イーグルグリップラケットの表面(第1面)及び裏面(第2面)のいずれの面で打球しても、ドライブ或いはスピン回転が掛かった球を容易に打球することができる。
【0012】
このことは現在最も注目されているが打つのが難しいとされるバックハンドで裏面を強く回転させて打つチキータに最も適したラケットであり、シェイクハンドで手首を使って打つチキータよりもイーグルグリップでは指先を使う分だけ回転半径が大きく効果も大きい。
【0013】
さらに、このイーグルグリップラケットを用いるとバックハンドのチキータと全く左右対照的なフォアハンドで裏面を回転させて打つフォアハンドチキータが可能となる。現在、逆チキータと言われているのはシェイクのフォアハンドで表面を台上で回転させて打つことを指しているが、裏面と違って手首の回転は弱く効果が少ない打ち方であるのに対してイーグルグリップラケットのフォアハンド裏面チキータはバックハンドのそれよりも効果のあるチキータを打つことができる。
【0014】
その理由は、イーグルグリップラケットでの裏面を用いたフォアハンドスイングでは手首が曲がる方向に動かすリストスナップと呼ばれる動きを使うことが可能になったことである。シェイクハンドもペンホルダーも打球の速さは肩と肘の回転の速さで決まるが、イーグルグリップラケットでは手首のスナップで瞬時に強い球を作り出せる。ラケットを球に直角に打てばスマッシュで回転を加えると強烈なドライブが生み出され、チキータは本来回転中心の打球を作るが、スナップを加味するとスピードのある回転チキータになり相手は対応が困難である。
【0015】
これらの新しい技術を実践で可能にするには、グリップが機能的で安定的に保持される構造が必要で、この発明でそれを可能にするグリップの形状を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る第1実施形態の卓球ラケットを示した斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る卓球ラケットの、図1中の矢印A1方向に見た際の正面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る卓球ラケットを示した側面図である。
図4】本発明に係る卓球ラケットのグリップを握る使用者の掌の各部位を説明するための図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る卓球ラケットのグリップを、親指を閉じて使用者が正に握ろうとしている状態を示す、図面代用写真である。
図6】本発明の第1実施形態に係る卓球ラケットのグリップを、使用者がグリップを指で巻き込むようにして握った状態を示した斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る卓球ラケットの一打法を示す図面代用写真であり、ラケットの表面を使用して台上ショートプッシュ或いはバックハンドスイングする様を示す。
図8】本発明の第1実施形態に係る卓球ラケットの別の打法を示す図面代用写真であり、裏面を使用してフォアハンドスイングする様を示す。
図9】本発明の第1実施形態に係る卓球ラケットの、また別の打法を示す図面代用写真であり、表面を使用してフォアハンドスイングする様を示す。
図10】本発明の第1実施形態に係る卓球ラケットのグリップを、使用者の示指で浅く握った状態を示し、ペンホルダーラケットの打法に類似する打法を可能にするグリップ把持方法を示す写真代用斜視図である。
図11】本発明の第1実施形態に係る卓球ラケットのグリップを、使用者の示指で深く巻き込むようにして握った状態を示した写真代用斜視図である。
図12】本発明に係る第2実施形態の卓球ラケットのグリップ形状を示す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る卓球ラケット(イーグルグリップラケット)の第1実施形態を、図面を参照して説明する。尚、本明細書において特に記載がない限り、便宜上右手で把持するイーグルグリップラケットについて説明し、左手で把持するラケットについては容易に類推可能であろうからその説明を省略する。
【0018】
本発明に係る第1実施形態の卓球ラケット2は、図1乃至図3に示すように、平板状のブレード4と、ブレード4の先端部6とは反対の基端部8の側に設けられたグリップ10と、ブレード4の第1面(表面)12に貼り付けられた第1ラバー14と、ブレード4の第1面12とは反対側の第2面(裏面)16に貼り付けられた第2ラバー18とを備えている。
【0019】
ブレード4は、ラバーを介してボールを打つ打球部である。このブレード4は、本実施形態においては、複数の木製の板を重ね合わせた合板により形成されている合板タイプを採用している。この合板タイプのブレードにおいては、合板を構成する板材の中間の層に特殊素材を挟み込んだ特殊素材入り合板タイプのものを採用することもできる。尚、ブレード4は、合板タイプに限定されるものではなく、木製の無垢板1枚だけの単板タイプであっても構わない。
【0020】
また、ブレード4の平面視形状は特に限定されず、任意の形状を採用することができる。本実施形態では、図1に示すように、いわゆる角丸型の形状を採用している。
第1ラバー14及び第2ラバー18は、特に限定されず、任意の種類、材質のラバーを採用することができ、プレーヤの好みに応じたラバーを別途購入してブレードに貼着させることが多い。
【0021】
一例として、ラバーは貼ればラケットの重量が増すので、重量増加を考慮して、第1面には重くなるが攻撃的な打法に適したラバーが、第2面では球に回転を掛ける事が多いので第1面よりは軽量なラバーでドライブに有利なラバーを選択する方法等が例示される。
【0022】
尚、本発明に係る卓球ラケットは、詳細は後述するように、従来のペンホルダーグリップやシェークハンドグリップとは全く異なる「イーグルグリップ」によりラケットを把持することを特徴としており、フォアハンドストローク及びバックハンドストロークのいずれにおいても、本発明の卓球ラケットでは、通常は、ブレードの表面と裏面との両面を使用することを想定している。
【0023】
しかしながら、第1面のみにラバーを貼った場合でも「イーグルグリップ」によるラケットの把持方法は、第1面(表面)のみにラバーを貼り、第1面(表面)のみを使った打法であっても、ペンホルダーグリップの打法よりも威力を増したフォアとバックを打つ事ができる。
【0024】
更に、ラケットに貼るラバーは、上述したスピードのある攻撃的な打法に適したラバーや球に回転を掛けるのに適したラバーを、表面及び裏面のいずれの面に貼ることも任意であり、更にまた、後述するように、試合中にラケットのグリップを回転させて表面を裏面に、裏面を表面に切り替えることも自由にできる。従って、どちらの面を「表面」と称し、他の面を「裏面」と称するかは、特に第1実施形態では、意味を持たない。
【0025】
グリップ10は、使用者が手で握る部分であり、ブレード4の基端部8において、ブレード4の外周縁から突出するように設けられている。
【0026】
本第1実施形態において、グリップ10は、ブレード4の基端部8から外側へ突出するように延びているグリップ芯体20と、グリップ芯体20におけるブレード4の第1面12側に配設された、第1突出部材としての第1突出ブロック22と、グリップ芯体20におけるブレード4の第2面16側に配設された、第2突出部材としての第2突出ブロック24とを備えている。
【0027】
グリップ芯体20は、ブレード4の基端部8の外周縁から延出した部分であり、通常ブレード4と同じ材料で一体的に形成されている。このため、グリップ芯体20の厚さは、ブレード4の厚さと通常同じである。
【0028】
第1突出ブロック22は、直方体のブロックを、後述する掌面と当接する面を斜めに切断した、側面視で台形の直方体形状をなす。
図1乃至図3を参照してより詳しく説明すると、ブレードの第1面12に接合され、長方形状をなす底面22a、当該底面の各長辺から垂直に立ち上り、台形形状をなす両側面22b、22b、示指が当接する前端面22c、長方形状の上端面22d、当該上端面22dの後端縁から底面22aに向かって斜めに傾斜し、掌が当接する長方形状の掌当接面22eを備えている。
【0029】
第1突出ブロック22に使用される材料としては、特に限定されるものではないが、檜材や杉材、好ましくはコルク材が用いられる。第1実施形態に係る第1突出ブロック22は、各面が上述のような形状を有するブロック体に加工され、全体がコルク材により形成される。第1突出ブロック22は、その底面22aをグリップ芯体20におけるブレード4の第1面12の側に接合される。
【0030】
第2突出ブロック24は、側面視変形5角形状に切り出して形成されたブロック体をなしている。第2突出ブロック24に使用される材料としては、特に限定されるものではないが、この部材も檜材や杉材、好ましくはコルク材が用いられる。第2突出ブロック24も、コルク材により側面視変形5角形状に切り出して形成され、その上面22a(図2参照)がグリップ芯体20におけるブレード4の第2面16の側に接合される。
【0031】
グリップ芯体20におけるブレード4の先端部6とは反対の側に位置する終端面21、第1突出ブロック22におけるブレード4の先端部6とは反対の側に位置し、長方形状をなして傾斜する掌当接面22e、及び第2突出ブロック24におけるブレード4の先端部6とは反対の側に位置する掌当接面24eは、互いに連接する長方形状の傾斜面となっており、これらが一体的に協働してグリップ10の終端面26を形成している。この終端面26は、グリップ10が使用者に握られた際に、使用者の掌に宛がわれて当接するための掌当接面28となる。
【0032】
図2に示すように、第1突出ブロック22におけるブレード4の先端部6側の端面30は、グリップ10が使用者に握られた際に、使用者の示指92(図4図5図9等を参照)と接触する示指接触面32となる。つまり、第1突出ブロック22におけるブレード4の先端部6側は、使用者の示指92が掛けられるための示指かけ部となる(図6参照)。
【0033】
第1突出ブロック22には、上述のように使用者の示指92が掛けられるので、第1突出ブロック22におけるブレード4の第1面12からの突出高さT1(図3参照)は、示指92が引っ掛かるのに十分な寸法(高さ)を有していればよく、好ましくは、示指92の幅(指の太さ)とほぼ同じ寸法に設定する。
【0034】
第2突出ブロック24におけるブレード4の先端部6側の端面34(図2)は、グリップ10が使用者に握られた際に、使用者の中指93と接触する中指接触面36となり(図3図5)、さらに、端面34に隣接して斜めに傾斜し、薬指94が接触する薬指接触面38(図3図5)が形成される。
【0035】
つまり、第2突出ブロック24におけるブレード4の先端部6側は、使用者の中指93がかけられるための中指かけ部となり、それに隣接して続く斜面は、薬指がかけられるための薬指かけ部となる。
【0036】
第2突出ブロック24には、上記のように使用者の中指93が掛けられるので、第2突出ブロック24におけるブレード4の第2面16からの突出高さT2(図3参照)は、中指93が引っ掛かるのに十分な寸法(高さ)を有していればよく、好ましくは、中指93の指の太さとほぼ同じ寸法に設定する。
尚、第1突出ブロック22及び第2突出ブロック24のブレード面からの高さTは、高さ調整部材等によって、使用者の手や指のサイズ、好みにより任意に設定できる。
【0037】
次に、第1突出ブロック22の長手方向の長さ、つまり、示指接触面32の設定位置、及び第2突出ブロック24の中指接触面36の設定位置については、使用者(プレーヤー)の手、掌、指の位置、大きさ、長さ、太さ、肉付き、握ったときの力の入り具合、フィーリングなどにより適宜位置に設定すればよい。
【0038】
例えば、掌当接面28に使用者の掌99を当接させた場合に(図4図6参照)、示指接触面32には、使用者の示指92のどの関節を曲げた状態で示指92を掛けるかによって、第1突出ブロック22の長さや、ブレード4に対する示指接触面32の設定位置が適宜決定され、第2突出ブロック24の中指接触面36の設定位置についても同様である。
【0039】
図4は、指や掌の名称とそれらの各部位の所在位置の概略を示す図であり、医療、技術等の分野において一般に使用されている学術用語またはそれに相当する用語を用いて説明する。
【0040】
右手でラケットを把持する場合、図4に示す各指は、右から順に母指91、示指(人差し指)92、中指93、薬指94、及び小指95であり、掌99の母指91の、付け根近傍の膨らみ部位を母指球96、その他の4本の指の付け根近傍の膨らみ部位を指尖球97と呼ばれている。
【0041】
掌99には、手の動きに合わせて、人それぞれに特長的な皺が現れ、それらは掌線と呼ばれている。掌線は、骨格や筋肉、手の使い方によってその位置はおおよそ一定した位置に現れる。指尖球97の裾野付近には、小指95から示指92に向かって掌線99aが水平に走り、掌線99aは、手相術の分野では感情線と呼ばれている。この感情線99aに向かって図中下方から感情線99aと合流するように斜め上方に知能線99bが走り、更に知能線99bの下方から、略母指球96の裾野に沿って斜め上方に生命線99cが走っている。
【0042】
図4において、仮想線で示される領域110Aは、掌99を開けた状態で、本発明に係る卓球ラケットのブレード4を示指92と中指93の間に割り込ませて挟み、指尖球97及び指92~94の上にグリップ10を載置させた場合に、グリップ10が占める領域を示している。
【0043】
また、仮想線で示される領域128Aは、掌99を閉じて本発明に係る卓球ラケットのグリップ10を握った際に、グリップ10の掌当接面28(図1参照)が掌99に当接する領域を示している。
【0044】
尚、使用者が実際に使用するラケットやグリップの大きさ、使用者の掌や指の大きさ、グリップ10を握った際のフィット感、好みなどで、仮想線で示される領域110A及び領域128Aの位置や大きさが大いに影響されるが、示される領域110A、領域128Aは、説明を簡単にし、理解を容易にするために例示する領域に過ぎない。
【0045】
そこで、本発明に係る卓球ラケットの掌当接面28(図1図3参照)を当接させる使用者の掌99の部位は、上記母指球96と指尖球97の間、特に示指92の付け根近傍の部位の間に形成され、図4において仮想線で示す斜線領域128Aで示すことができる(この領域を「掌グリップ受容部位」と言う)。尚、この領域128Aは、上述した生命線99c(図4)を越え、母指球96の領域に及び、掌当接面28の実面積に比し一見過大なように思われるかも知れないが、掌を閉じてグリップ10を握ると、展開していた領域が掌当接面28の実面積に相応して縮小される。
【0046】
一方、図4において、仮想線で囲われる領域110Aは、グリップ10を握る際に掌や指に宛がわれる領域を示している。
先ずは、図4を参照して、指の骨格構造を説明する。示指92は、尖端から末節骨92a(指の先の爪の付いた部分の骨)の部位、中節骨部位92b(指の真中部分の骨)の部位、及び基節骨92c(指の根元の骨)の部位を備えており、これらの内、示指接触面32には、示指92の関節を曲げた状態で、末節骨92aの部位、中節骨部位92bの部位を接触させることができ、基節骨92cを接触させることは難しい。中指93は、尖端から末節骨93aの部位、中節骨部位93bの部位、基節骨93cの部位を備え、これらの内、中指接触面36には、中指93の関節を曲げた状態で、末節骨93aの部位、中節骨部位93bの部位、更には基節骨93cの部位を接触させることができる。
【0047】
例えば、第1突出ブロック22の示指接触面32、及び第2突出ブロック24の中指接触面36のブレード設定位置は、図4に示す掌線(例えば、感情線99a)と第1突出ブロック22の示指92を添わせる側面を基準に選択すると、以下に説明する方法によって容易に設定することができる。
【0048】
すなわち、掌当接面28の側縁28aの先端C(図1参照)を、掌99の知能線99b上に宛がい(図4参照)、掌当接面28を掌グリップ受容部位128Aに押し当て、示指92を、第1突出ブロック22の側部に密着して沿うように宛がい、グリップ10を握った状態での、グリップ端縁Cから示指92の先端関節位置92dまでの距離を求め、これを第1突出ブロック22のグリップ端縁Cからの示指接触面32の適正基準長さLに設定すればよい(図3図4図6参照)。
【0049】
次に、作用効果を説明するにあたり、先ず、卓球ラケット2の握り方について、図5乃至図9を参照して説明する。
卓球ラケット2の使用者は、示指92と中指93との間にブレード4を挟むと共に(図5参照)、グリップ10の掌当接面28を上述した掌グリップ受容部位128A(図4における斜線領域)に当接させる。この状態で示指92及び中指93を曲げて、示指92を示指接触面32に接触させると共に、中指93を中指接触面36に接触させる。このとき、示指92を、第1突出ブロック22の側部に密着して沿うように配置し、図4に示される示指92の末節骨部位92aを第1突出ブロック22の示指接触端面32に接触させ、示指の先端を浅く当接させる(図6図10参照)。
【0050】
また、グリップ10を握る母指91を、第1突出ブロック22の反対側の側部に密着するように沿わせて配置し(図6図9参照)、ブレードの先端部6を下にして第1面12を見たとき、ブレード基端部8の示指接触面右側近傍(図6に示す斜線領域8a)を母指91で押圧するようにブレード上面12に当接させる。
【0051】
このとき中指93は、第2突出ブロック24の側部に密着して沿うように配置し、この中指93も第2突出ブロック24の中指接触面36に浅く当接させて、グリップ22を掴む(図5参照)。
【0052】
薬指94は、これを中指93に沿うようにこれと密着させ、中指接触面36に隣接して形成させた薬指当接面38に宛がい、小指95はこれを薬指94に沿うように宛がって使用される(図5)。
【0053】
そして、示指92と母指91とにより第1突出ブロック22を両側から挟み込み、グリップ10の掌当接面28を掌99のグリップ受容部位128Aに当接させて第1突出ブロック22を両側から支持し、更に、中指93及び薬指94が第2突出ブロック24の中指接触面36、薬指接触面38を介して押圧力をグリップ受容部位128Aに掛け、母指91を含む示指92、中指93、及び薬指93でグリップ10を包み込むようにして、卓球ラケット2を把持する。
【0054】
ドライブやスピンを掛けて激しく競い合う使用者にとって、グリップの握り易さとラケットの操作性は極めて重要である。そして、ドライブやスピンを掛ける際には、第1突出ブロック22及び第2突出ブロック24の長さL(図3参照)が長い程、一般的にはグリップ10を安定的に把持してブレードの捻り(ドライブやスピン)のコントロールを行い易い。また、ドライブやスピンのコントロールには、ブレード4の両面に貼着される第1及び第1のラバー14,18の性能に左右され、所望の高い性能を発揮するラバーは、一般に、ラケット重量に影響を与え、重いラケットは使用者の手首に負担を与える。しかも、EGラケットのグリップ長さLは、ペンホルダーやシェイクハンドタイプの卓球ラケットに比して短寸である。
【0055】
そこで、本発明のイーグルグリップラケットは、そのグリップ形状を、母指、示指、中指、及び薬指を含む4本の指と掌99とでグリップ10を包み込むように確りと把持することができる形状を備えており、このような形状を備える故に、掌99の感情線99aと知能線99bの交点近傍に当接させたグリップエンドCを支点として、示指92、中指93、及び母指91の3本の指により、或いは、示指92、薬指94、及び母指91の3点の指によりブレード操作を安定的に、且つ、短寸のグリップ長とは言え、主として示指92と母指91によるブレード軸X1回りの回転を自在にコントロールすることを可能にして、フォアハンド及びバックハンドのいずれにおいても、ラケットの表面と裏面を使って球に効果的にスピンやドライブを掛ける打法を可能にしている。
【0056】
尚、図10は、示指92及び中指93を示指接触端面32、中指接触面36にそれぞれ浅く当接させてグリップ10を把持する方法を示したが、図11は、示指92の中節骨部位92bを示指接触端面32に接触させ、グリップ22の示指接触端面32を深く巻くように掴んだ状態を示し、このとき中指93は、中指接触面36を深く巻くようにしてグリップ22を掴む。このようにグリップを深く巻くよう掴むと、長期のラリーに打ち克つに必要な、グリップの掴みの安定性を向上させることができる。
【0057】
図12は、本発明に係る第2実施形態の卓球ラケットのグリップ形状を示し、同図において、第1実施形態の卓球ラケット2について説明したと同じ、または実質的に同じ部材や構成要素については、同じ符号を付してそれらの説明を省略、または簡略に説明する。
【0058】
図12において、グリップ10Aは、第1突出ブロック22、グリップ芯体20及び第2突出ブロック24Aを備えて構成され、これらは第1実施形態のグリップ10を構成する第1突出ブロック22、グリップ芯体20及び第2突出ブロック24とほぼ同じ形状と機能を備えているが、第2実施形態のグリップ10Aにおいては、第1突出ブロック22の掌当接面22e、グリップ芯体20の終端面21’及び第2突出ブロック24Aの端面24e'は、使用者の掌グリップ受容部位の受容面128Bに対応して、滑らかに連続する長方形状(受容面を直交する方向から視たとき)の掌当接面28Bを備えている点で異なる。そして、この掌当接面28Bは、図12において、その側面視を湾曲する2点太鎖線CNで示すとおり、使用者の掌受容面に受容されて適合される、凸状に膨出する傾斜曲面で形成されている。
【0059】
第1突出ブロック22と第2突出ブロック24とで形成されるグリップ形状、すなわちグリップ10の外形形状は、使用者の掌を閉じた際に掌内に形成され、掌によって区画される空間形状に合致している。
また、第1突出ブロック22の示指接触面32には、必要に応じ、使用者の示指92を受容する曲面(窪み)32aを適宜備えて形成することもできる(図12において仮想の斜線で示す)。
【0060】
更にまた、第2突出ブロック24Aの端面36、傾斜端面38には、それぞれ中指93、薬指94が受容されて適合する曲面(窪み)36a、38aを適宜備えて形成させることもできる。
【0061】
従って、第2実施形態のグリップ10Aは、使用者が掌当接面28B、示指接触面32、中指接触面36、及び薬指接触面38を掌及び指で握った場合に、傾斜曲面で形成される掌当接面28Bには使用者の掌99が、示指接触面32には示指92が、中指接触面36には中指93、及び薬指接触面38には薬指94がそれぞれピッタリと適合し、使用者にとって握り易く、安定感やフィット感を与えることができる。
【0062】
以上、本発明に係る卓球ラケット(イーグルグリップラケット)の好ましい実施形態について詳述したが、以上の説明を要約して、本発明のイーグルグリップラケットは、従来のペンホルダーラケットやシェークハンドラケットと対比して、以下のような新規で顕著な、イーグルグリップラケットに特有な作用、効果を列挙することができる。
【0063】
第1に、グリップの特異な握り方から、イーグルグリップラケットはペンホルダーのように指先で操作して台上の球を処理することができ、シェークハンドラッケトのように球がラケットに直角に当たるので返球に威力がある(図7乃至図9参照)。
第2に、イーグルグリップラケットは、フォア(ラケットを持っている手の側)とバック(ラケットを持っていない手の側)で打つ場合に、ラケットの両面に貼ったラバーの表面でも裏面でも打つもことができ、それぞれの打ち方でこのラケットの特徴が活かせる(図7乃至図9参照)。
【0064】
第3に、ラケットの握り方は、グリップ(図1乃至図3参照)の3箇所にそれぞれ人差し指92、中指93、薬指94を当てて持ち(図4及び図5参照)、親指91を人差し指92の横に置いてグリップを握る(図6)。好ましくは、親指91及び人差し指92をグリップ10に深く絡ませて握った方(図11参照)がよいが、浅く絡ませて握ることもできる(図10参照)。
【0065】
深く絡ませて握った方場合には(図11参照)、例えば、バックを裏面で打つ時に、示指当接面32、中指当接面36、薬指当接面38をそれぞれの指で引っ掛けて強い回転をかけることができ、強力なドライブや強烈なチキータを打つことができる。
また、バックを表面(第1面)14で打つ場合は、示指当接面36に掛けた人差し指92を中心にラケットを振って必要なドライブを生み出すことができる。台から離れたバックには裏面(第2面)18のバックスイング打法より、表面(第1面)14のバックスイング打法の方が強い球が打てる。
【0066】
第4に、体の正面に来た球に対しては裏面(第2面)18のバックスイング(図8参照)や表面(第1面)14のバックスイング(図9参照)、あるいはペンホルダーのショートができる(図7参照)。
第5に、フォアに来た台上の球に対しては裏面(第2面)18のフォアスイングが打てる(図8参照)。この打ち方は本発明のイーグルグリップラケットにしかないもので、グリップ10に掛けた中指93を中心にイーグルグリップラケットの裏面(第2面)18を相手側に開いて体の内側に振ることによりドライブの大変効いたフォアのチキータというべきユニークな回転とスナップを利かせて打つことにより、スピードのある球を打つことができる。
【0067】
第6に、最も普通の打ち方である、フォア側に来た球をラケットの表面(第1面)14で打つのはペンホルダーのフォアスイングと変わりはないが、ペンホルダーのラケットではグリップの部分が邪魔をしてラケット面に球が直角に当たらないので打球の強さが軽減されてしまうが、本発明に係るイーグルグリップラケットは、シェークハンドラケットのように球を打面に直角に当ててスイングするので、打球は強く打ち出され、ペンホルダーで打つよりも、球はより左側に打ち返すことができる(右利きの場合。図9参照)。
【0068】
最後に、上記イーグルグリップラケット特有のグリップの握り方から、従来のEGラケットでは表面のフォアハンド打法(この打法が最もよく使う打ち方である)が、EGラケットのグリップエンドC部分(図3斜線領域参照)に掌を長時間押宛て使用すると痛みを感じて打ち難いという問題があったが、掌受容部位の形状に合わせてC部分を削り取り、掌当接面に丸みを与えることによって、長時間の使用にも特に問題はなく、更に、グリップエンドC部分の滑らかな形状は、従来型ペンホルダーラケットと同じ感覚で表面14のフォアハンド打法を行いたい場合にでも(図10図11参照)、グリップエンドCを掌の領域28A(図4参照)に素早く且つ容易にずらすことができ、図10に示される握り方から、グリップ力を緩めフォアで振ると自然に図11に示す握り方で移行させることができる。また、元の握り方に戻るのも簡単で、裏面のフォアを打つと自然に図10に示すイーグルグリップに移行させることができる。
【符号の説明】
【0069】
2 卓球ラケット
4 ブレード
10 グリップ
14 第1のラバー
18 第2のラバー
20 グリップ芯体
22 第1突出ブロック(第1突出部材)
24 第2突出ブロック(第2突出部材)
28、28A 掌当接面
32 示指接触面
36 中指接触面
38 薬指当接面
98 掌グリップ受容部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12