(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネセント化合物及びそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイス
(51)【国際特許分類】
H10K 50/12 20230101AFI20240409BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240409BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H10K50/12
H10K85/60
C09K11/06 610
C09K11/06 630
(21)【出願番号】P 2020106209
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0082765
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム・チシク
(72)【発明者】
【氏名】キム・ヨンギル
(72)【発明者】
【氏名】オ・ホンス
(72)【発明者】
【氏名】イ・トンヒュン
【審査官】西岡 貴央
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0255017(US,A1)
【文献】特開2019-057711(JP,A)
【文献】特開2018-115194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B33/00-33/28
H10K50/00-102/20
G09F 9/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式1:
【化1】
[式中、
Ar
1は、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、又は置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリールを表し;
R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、又は置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリールを表し;
Ar
2は、
【化2】
を表し;
ここで、Ar
2は、位置R
1~R
4の1つで
【化3】
に結合しており(*は、Ar
2に結合している位置を表す)、及び
【化4】
に結合していないR
1~R
4は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、又は置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリールを表し;
a及びdは、それぞれ独立して、1~3の整数を表し、b、c、e、及びfは、それぞれ独立して、1~4の整数を表し、
式中、a~fが2以上の整数である場合、各R
1~各R
6は、互いに同じものであっても、異なってもよい]
で表される有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項2】
式1が、次式1-1又は1-2:
【化5】
(式中、
R
1~R
6、Ar
1、及びa~fは、請求項1において定義された通りである、但し、dは、式1-1において1又は2であり、bは、式1-2において1、2、又は3である)
で表される、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項3】
R
1~R
6、及びAr
1における前記置換アルキル、前記置換アリール、及び前記置換ヘテロアリールの置換基が、それぞれ独立して、重水素;ハロゲン;シアノ;カルボキシル;ニトロ;ヒドロキシル;(C1~C30)アルキル;ハロ(C1~C30)アルキル;(C2~C30)アルケニル;(C2~C30)アルキニル;(C1~C30)アルコキシ;(C1~C30)アルキルチオ;(C3~C30)シクロアルキル;(C3~C30)シクロアルケニル;(3~7員)ヘテロシクロアルキル;(C6~C30)アリールオキシ;(C6~C30)アリールチオ;非置換の若しくは(C6~C30)アリールで置換された(3~30員)ヘテロアリール;非置換の若しくは重水素、(C1~C30)アルキル及び(3~30員)ヘテロアリールの少なくとも1つで置換された(C6~C30)アリール;トリ(C1~C30)アルキルシリル;トリ(C6~C30)アリールシリル;ジ(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールシリル;(C1~C30)アルキルジ(C6~C30)アリールシリル;アミノ;モノ若しくはジ(C1~C30)アルキルアミノ;モノ若しくはジ(C6~C30)アリールアミノ;(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールアミノ;(C1~C30)アルキルカルボニル;(C1~C30)アルコキシカルボニル;(C6~C30)アリールカルボニル;ジ(C6~C30)アリールボロニル;ジ(C1~C30)アルキルボロニル;(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールボロニル;(C6~C30)アリール(C1~C30)アルキル;及び(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項4】
Ar
1が、置換若しくは非置換(C6~C24)アリール又は置換若しくは非置換(5~20員)ヘテロアリールであり;
【化6】
に結合していないR
1~R
4が、それぞれ独立して、水素、重水素、又は置換若しくは非置換(C6~C12)アリールであり;
R
5及びR
6が、それぞれ独立して、水素又は重水素である、
請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項5】
Ar
1が、非置換の若しくは重水素、(C1~C6)アルキル、(C6~C12)アリール、重水素で置換された(C6~C12)アリール、及び(5~15員)ヘテロアリールから選択される1つ以上で置換された(C6~C24)アリール;又は非置換の若しくは重水素、(C6~C12)アリール、及び重水素で置換された(C6~C12)アリールから選択される1つ以上で置換された(5~20員)ヘテロアリールであり;
【化7】
に結合していないR
1~R
4が、それぞれ独立して、水素、重水素、又は非置換(C6~C12)アリールであり;
R
5及びR
6が、それぞれ独立して、水素又は重水素である、
請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項6】
式1で表される前記化合物が、以下の化合物:
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
(式中、D
nは、式1中のn個の水素が重水素で置き換わっていることを意味する)
からなる群から選択される、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物を含む有機エレクトロルミネセント材料。
【請求項8】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物を含む有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項9】
前記有機エレクトロルミネセント化合物が発光層に含まれる、請求項8に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機エレクトロルミネセント化合物及びそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセント(EL)デバイスは、より広い視野角、より大きなコントラスト比、及びより速い応答時間を提供するという点で利点を有する自発光デバイスである。有機ELデバイスは,1987年にEastman Kodakによって、発光層を形成するための材料として小さい芳香族ジアミン分子とアルミニウム錯体とを使用することによって、最初に開発された[(非特許文献1)]。
【0003】
有機エレクトロルミネセントデバイス(OLED)は、有機発光材料に電気を印加することによって電気エネルギーを光に変換し、通常、アノード、カソード、及び2つの電極間に形成された有機層を含む。OLEDの有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、正孔補助層、発光補助層、電子阻止層、発光層(ホスト材料及びドーパント材料を含有する)、電子緩衝層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等を含み得る。有機層において使用される材料は、機能に応じて、正孔注入材料、正孔輸送材料、正孔補助材料、発光補助材料、電子阻止材料、発光材料、電子緩衝材料、正孔阻止材料、電子輸送材料、電子注入材料等に分類することができる。OLEDにおいて、電圧の印加により、正孔がアノードから発光層に注入され、電子がカソードから発光層に注入され、高エネルギーの励起子が正孔と電子との再結合によって形成される。このエネルギーから、有機エレクトロルミネセント化合物は励起状態に達し、発光は、有機エレクトロルミネセント化合物の励起状態が基底状態に戻るときにエネルギーから発光することによって起こる。
【0004】
最近、ディスプレイのより大きい面積により、より繊細な及び鮮明な色を示すことができる発光材料が必要とされている。具体的には、青色発光材料の場合に、ADN及びDPVBiなどの材料がホスト材料として使用され、芳香族アミン系化合物、銅フタロシアニン化合物、カルバゾール系誘導体、ペリレン系誘導体、クマリン系誘導体、及びピレン系誘導体などの材料がドーパント材料として使用されている。しかしながら、これらの材料は、高い色純度の藍色を得ることが困難であり、且つ、波長がより短くなるにつれてより不十分な電流効率を有するために問題がある。
【0005】
したがって、フルカラーディスプレイを実現する際に、優れた電流効率を有する藍色の発光材料と、青色発光材料と共に好適なエネルギーレベルを有する他の有機材料との開発が必要とされている。
【0006】
(特許文献1)は、アントラセン部分を含む有機エレクトロルミネセント化合物を開示している。しかしながら、この参考文献は、ビフェニル及びナフタレンが融合している芳香族部分を含む本開示の有機エレクトロルミネセント化合物を具体的に開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Appl.Phys.Lett.51,913,1987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の目的は、まず第一に、低い駆動電圧及び/又は高い電流効率特性を有する有機エレクトロルミネセントデバイスを製造するために有効な有機エレクトロルミネセント化合物を提供することである。第二は、この有機エレクトロルミネセント化合物を含む有機エレクトロルミネセントデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
今までのところ一般に使用されている青色発光有機エレクトロルミネセントデバイスは、緑色及び赤色発光有機エレクトロルミネセントデバイスよりも低い電流効率を有する。これは、青色発光有機エレクトロルミネセントデバイスが蛍光性ドーパントを使用しているからである。蛍光性材料におけるエネルギー移行メカニズムは、フェルスター(Foerster)エネルギー移行に従う。フェルスターエネルギー移行において、ホストの発光は、ドーパントを励起するのに重要である。すなわち、ホストの発光が増加するにつれて、有機エレクトロルミネセントデバイスの電流効率は高まる。ホストの発光を増加させるために、ホスト発光の消光を減らすことが一般に必要であり、ホスト発光の消光はホストの積み重ねのためであると考えられる。本発明者らは、ホストの積み重ねを妨げるために研究した後に、ビフェニル及びナフタレンが置換基として融合している嵩高い芳香族部分を導入している。結果として、青色有機エレクトロルミネセントデバイスの電流効率が改善されることが確認された。加えて、ビフェニル及びナフタレンが融合している本開示の芳香族部分が、発光の点で優れているナフタレン構造を含むので、青色発光有機エレクトロルミネセントデバイスの電流効率をより効果的に高めることが可能であると考えられる。具体的には、本発明者らは、次式で表される有機エレクトロルミネセント化合物が前述の目的を達成することを見いだすことによって本発明を完成した。
【化1】
式中、
Ar
1は、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、又は置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリールを表し;
R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、又は置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリールを表し;
Ar
2は、
【化2】
を表し;
ここで、Ar
2は、位置R
1~R
4の1つで
【化3】
に結合しており(*は、Ar
2に結合している位置を表す)、
【化4】
に結合していないR
1~R
4は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換若しくは非置換(C1-C30)アルキル、置換若しくは非置換(C6-C30)アリール、又は置換若しくは非置換(5-30員)ヘテロアリールを表し;
a及びdは、それぞれ独立して、1~3の整数を表し、b、c、e及びfは、それぞれ独立して、1~4の整数を表し;
式中、a~fが2以上の整数である場合、各R
1~各R
6は、互いに同じものであっても、異なってもよい。
【0011】
発明の有利な効果
本開示による有機エレクトロルミネセント化合物を使用することによって、改善された駆動電圧及び/又は電流効率特性を有する有機エレクトロルミネセントデバイスを製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で以下、本開示が詳細に説明される。しかしながら、以下の説明は、本発明を説明することを意図し、本発明の範囲を限定することを決して意味しない。
【0013】
本開示における用語「有機エレクトロルミネセント化合物」は、有機エレクトロルミネセントデバイスに使用され得る、且つ、必要に応じて、有機エレクトロルミネセントデバイスを構成する任意の層に含まれ得る化合物を意味する。
【0014】
本開示における用語「有機エレクトロルミネセント材料」は、有機エレクトロルミネセントデバイスに使用され得る、且つ、少なくとも1つの化合物を含み得る材料を意味する。有機エレクトロルミネセント材料は、必要に応じて、有機エレクトロルミネセントデバイスを構成する任意の層に含まれ得る。例えば、有機エレクトロルミネセント材料は、正孔注入材料、正孔輸送材料、正孔補助材料、発光補助材料、電子阻止材料、発光材料、電子緩衝材料、正孔阻止材料、電子輸送材料、電子注入材料等であり得る。
【0015】
本開示の有機エレクトロルミネセント材料は、式1で表される少なくとも1つの化合物を含み得る。式1で表される化合物は、発光層に含まれ得るが、それに限定されない。発光層に含まれる場合、式1で表される化合物は、青色発光用のホストなどのホストとして含まれ得る。本開示の一実施形態によれば、式1の化合物は、蛍光性ホスト、例えば、青色発光用の蛍光性ホストであり得る。
【0016】
本明細書で以下、式1で表される化合物がより詳細に説明される。
【0017】
本明細書において、用語「(C1~C30)アルキル」は、鎖を構成する1~30個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状アルキルであることを意味し、ここで、炭素原子の数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10である。上記アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル等が挙げられ得る。用語「(C2~C30)アルケニル」は、鎖を構成する2~30個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状アルケニルであることを意味し、ここで、炭素原子の数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~10である。上記アルケニルとしては、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチルブタ-2-エニル等が挙げられ得る。用語「(C2~C30)アルキニル」は、鎖を構成する2~30個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状アルキニルであることを意味し、ここで、炭素原子の数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~10である。上記アルキニルとしては、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチルペンタ-2-イニル等が挙げられ得る。用語「(C3~C30)シクロアルキル」は、3~30個の環骨格炭素原子を有する単環式若しくは多環式炭化水素であることを意味し、ここで、炭素原子の数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~7である。上記シクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられ得る。用語「(3~7員)ヘテロシクロアルキル」は、3~7個、好ましくは5~7個の環骨格原子を有し、且つ、B、N、O、S、Si、及びPからなる群、好ましくはO、S、及びNからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むシクロアルキルであることを意味する。上記ヘテロシクロアルキルとしては、テトラヒドロフラン、ピロリジン、チオラン、テトラヒドロピラン等が挙げられ得る。用語「(C6~C30)アリール」は、6~30個の環骨格炭素原子を有する芳香族炭化水素に由来する単環式環若しくは縮合環ラジカルであることを意味し、ここで、環骨格炭素原子の数は、好ましくは6~25、より好ましくは6~18である。上記アリールは、部分的に飽和され得、スピロ構造を含み得る。上記アリールとしては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、フェニルナフチル、ナフチルフェニル、フェニルテルフェニル、フルオレニル、フェニルフルオレニル、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、フェナントレニル、フェニルフェナントレニル、アントラセニル、インデニル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニル、スピロビフルオレニル、アズレニル等が挙げられ得る。より具体的には、アリールとしては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、ベンズアントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、ナフタセニル、ピレニル、1-クリセニル、2-クリセニル、3-クリセニル、4-クリセニル、5-クリセニル、6-クリセニル、ベンゾ[c]フェナントリル、ベンゾ[g]クリセニル、1-トリフェニレニル、2-トリフェニレニル、3-トリフェニレニル、4-トリフェニレニル、1-フルオレニル、2-フルオレニル、3-フルオレニル、4-フルオレニル、9-フルオレニル、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリル、o-テルフェニル、m-テルフェニル-4-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-3-イル、p-テルフェニル-2-イル、m-クアテルフェニル、3-フルオランテニル、4-フルオランテニル、8-フルオランテニル、9-フルオランテニル、ベンゾフルオランテニル、o-トリル、m-トリル、p-トリル、2,3-キシリル、3,4-キシリル、2,5-キシリル、メシチル、o-クメニル、m-クメニル、p-クメニル、p-t-ブチルフェニル、p-(2-フェニルプロピル)フェニル、4’-メチルビフェニリル、4’-t-ブチル-p-テルフェニル-4-イル、9,9-ジメチル-1-フルオレニル、9,9-ジメチル-2-フルオレニル、9,9-ジメチル-3-フルオレニル、9,9-ジメチル-4-フルオレニル、9,9-ジフェニル-1-フルオレニル、9,9-ジフェニル-2-フルオレニル、9,9-ジフェニル-3-フルオレニル、9,9-ジフェニル-4-フルオレニル等が挙げられ得る。
【0018】
本明細書において、用語「(3~30員)ヘテロアリール」は、3~30個の環骨格原子を有し、且つ、B、N、O、S、Si、及びPからなる群から選択される少なくとも1つ、好ましくは1~4つのヘテロ原子を含むアリール基である。上記ヘテロアリールは、単環式環、又は少なくとも1つのベンゼン環と縮合した縮合環であり得;部分飽和であり得;少なくとも1つのヘテロアリール又はアリール基を単結合によってヘテロアリール基に結び付けることによって形成されるものであり得;スピロ構造を含み得得る。上記ヘテロアリールとしては、フリル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアジニル、テトラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル等などの単環式環型ヘテロアリール、及びベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾナフトチオフェニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ナフトチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソインドリル、インドリル、ベンゾインドリル、インダゾリル、ベンゾチアジアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、ベンゾキナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾキノキサリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾカルバゾリル、ジベンゾカルバゾリル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナントリジニル、ベンゾジオキソリル、ジヒドロアクリジニル等の縮合環型ヘテロアリールが挙げられ得る。より具体的には、ヘテロアリールとしては、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、ピラジニル、2-ピリジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル、1,2,3-トリアジン-4-イル、1,2,4-トリアジン-3-イル、1,3,5-トリアジン-2-イル、1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、1-ピラゾリル、1-インドリジニル、2-インドリジニル、3-インドリジニル、5-インドリジニル、6-インドリジニル、7-インドリジニル、8-インドリジニル、2-イミダゾピリジニル、3-イミダゾピリジニル、5-イミダゾピリジニル、6-イミダゾピリジニル、7-イミダゾピリジニル、8-イミダゾピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル、1-イソインドリル、2-イソインドリル、3-イソインドリル、4-イソインドリル、5-イソインドリル、6-イソインドリル、7-イソインドリル、2-フリル、3-フリル、2-ベンゾフラニル、3-ベンゾフラニル、4-ベンゾフラニル、5-ベンゾフラニル、6-ベンゾフラニル、7-ベンゾフラニル、1-イソベンゾフラニル、3-イソベンゾフラニル、4-イソベンゾフラニル、5-イソベンゾフラニル、6-イソベンゾフラニル、7-イソベンゾフラニル、2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、6-キノリル、7-キノリル、8-キノリル、1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル、6-イソキノリル、7-イソキノリル、8-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、6-キノキサリニル、1-カルバゾリル、2-カルバゾリル、3-カルバゾリル、4-カルバゾリル、9-カルバゾリル、アザカルバゾリル-1-イル、アザカルバゾリル-2-イル、アザカルバゾリル-3-イル、アザカルバゾリル-4-イル、アザカルバゾリル-5-イル、アザカルバゾリル-6-イル、アザカルバゾリル-7-イル、アザカルバゾリル-8-イル、アザカルバゾリル-9-イル、1-フェナントリジニル、2-フェナントリジニル、3-フェナントリジニル、4-フェナントリジニル、6-フェナントリジニル、7-フェナントリジニル、8-フェナントリジニル、9-フェナントリジニル、10-フェナントリジニル、1-アクリジニル、2-アクリジニル、3-アクリジニル、4-アクリジニル、9-アクリジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-オキサジアゾリル、5-オキサジアゾリル、3-フラザニル、2-チエニル、3-チエニル、2-メチルピロール-1-イル、2-メチルピロール-3-イル、2-メチルピロール-4-イル、2-メチルピロール-5-イル、3-メチルピロール-1-イル、3-メチルピロール-2-イル、3-メチルピロール-4-イル、3-メチルピロール-5-イル、2-t-ブチルピロール-4-イル、3-(2-フェニルプロピル)ピロール-1-イル、2-メチル-1-インドリル、4-メチル-1-インドリル、2-メチル-3-インドリル、4-メチル-3-インドリル、2-t-ブチル-1-インドリル、4-t-ブチル-1-インドリル、2-t-ブチル-3-インドリル、4-t-ブチル-3-インドリル、1-ジベンゾフラニル、2-ジベンゾフラニル、3-ジベンゾフラニル、4-ジベンゾフラニル、1-ジベンゾチオフェニル、2-ジベンゾチオフェニル、3-ジベンゾチオフェニル、4-ジベンゾチオフェニル、1-シラフルオレニル、2-シラフルオレニル、3-シラフルオレニル、4-シラフルオレニル、1-ゲルマフルオレニル(germafluorenyl)、2-ゲルマフルオレニル、3-ゲルマフルオレニル、4-ゲルマフルオレニル等が挙げられ得る。「ハロゲン」としては、F、Cl、Br、及びIが挙げられる。
【0019】
加えて、「オルト(o-)」、「メタ(m-)」、及び「パラ(p-)」は、それぞれ、置換基の相対的な位置を表わす、接頭辞である。オルトは、2つの置換基が互いに隣り合っていることを示し、例えば、ベンゼン誘導体における2つの置換基が1及び2位を占めている場合に、それは、オルト位と呼ばれる。メタは、2つの置換基が1及び3位にあることを示し、例えば、ベンゼン誘導体における2つの置換基が1及び3位を占めている場合に、それは、メタ位と呼ばれる。パラは、2つの置換基が1及び4位にあることを示し、例えば、ベンゼン誘導体における2つの置換基が1及び4位を占めている場合に、それは、パラ位と呼ばれる。
【0020】
本明細書において、表現「置換若しくは非置換」における「置換」は、特定の官能基中の水素原子が別の原子又は別の官能基、すなわち置換基で置き換えられていることを意味する。R1~R6、及びAr1における置換アルキル、置換アリール、及び置換ヘテロアリールの置換基は、それぞれ独立して、重水素;ハロゲン;シアノ;カルボキシル;ニトロ;ヒドロキシル;(C1~C30)アルキル;ハロ(C1~C30)アルキル;(C2~C30)アルケニル;(C2~C30)アルキニル;(C1~C30)アルコキシ;(C1~C30)アルキルチオ;(C3~C30)シクロアルキル;(C3~C30)シクロアルケニル;(3~7員)ヘテロシクロアルキル;(C6~C30)アリールオキシ;(C6~C30)アリールチオ;非置換の若しくは(C6~C30)アリールで置換された(3~30員)ヘテロアリール;非置換の若しくは重水素、(C1~C30)アルキル及び(3~30員)ヘテロアリールの少なくとも1つで置換された(C6~C30)アリール;トリ(C1~C30)アルキルシリル;トリ(C6~C30)アリールシリル;ジ(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールシリル;(C1~C30)アルキルジ(C6~C30)アリールシリル;アミノ;モノ若しくはジ(C1~C30)アルキルアミノ;モノ若しくはジ(C6~C30)アリールアミノ;(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールアミノ;(C1~C30)アルキルカルボニル;(C1~C30)アルコキシカルボニル;(C6~C30)アリールカルボニル;ジ(C6~C30)アリールボロニル;ジ(C1~C30)アルキルボロニル;(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールボロニル;(C6~C30)アリール(C1~C30)アルキル;並びに(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールからなる群から選択される少なくとも1つである。本開示の一実施形態によれば、置換基は、それぞれ独立して、重水素、(C1~C6)アルキル、非置換の若しくは1つ以上の重水素で置換された(C6~C12)アリール、及び(5~15員)ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1つである。具体的には、置換基は、それぞれ独立して、重水素、メチル、tert-ブチル、フェニル、ナフチル、1つ以上の重水素で置換されたフェニル、及びカルバゾリルからなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0021】
式1で表される化合物は、次式1-1又は1-2:
【化5】
(式中、
R
1~R
6、Ar
1、及びa~fは、式1において定義された通りである、但し、dは、式1-1において1又は2であり、bは、式1-2において1、2又は3である)
で表され得る。
【0022】
式1において、Ar1は、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、又は置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリールを表す。本開示の一実施形態によれば、Ar1は、置換若しくは非置換(C6~C24)アリール又は置換若しくは非置換(5~20員)ヘテロアリールである。本開示の別の実施形態によれば、Ar1は、非置換の若しくは重水素、(C1~C6)アルキル、(C6~C12)アリール、重水素で置換された(C6~C12)アリール、及び(5~15員)ヘテロアリールから選択される1つ以上で置換された(C6~C24)アリール;又は非置換の若しくは重水素、(C6~C12)アリール、及び重水素で置換された(C6~C12)アリールから選択される1つ以上で置換された(5~20員)ヘテロアリールである。例えば、Ar1は、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニル、テルフェニル、トリフェニレニル、ナフチルフェニル、フェニルナフチル、フェニルフェナントレニル、ジフェニルフルオレニル、ジフェニルベンゾフルオレニル、1個以上の重水素で置換されたフェニル、1個以上の重水素で置換されたビフェニル、1個以上の重水素で置換されたナフチル、1個以上の重水素で置換されたフェニルナフチル、tert-ブチル、ジメチルフルオレニル、ジメチルベンゾフルオレニルで置換されたフェニル、カルバゾリル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾナフトチオフェニルで置換されたフェニル、1個以上の重水素で置換されたジベンゾフラニル、フェニルで置換されたベンゾフラニル、フェニルで置換されたベンゾチオフェニル、フェニルで置換されたベンゾオキサゾリル、フェニルで置換されたカルバゾリル、フェニルで置換されたナフトオキサゾリル、1個以上の重水素で置換されたフェニルナフトオキサゾリル等であり得る。
【0023】
【0024】
式1において、Ar
2は、位置R
1~R
4の少なくとも1つで
【化7】
に結合しており(*は、Ar
2に結合している位置を表す)、
【化8】
に結合していないR
1~R
4、並びにR
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、又は置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリールを表す。本開示の一実施形態によれば、
【化9】
に結合していないR
1~R
4は、それぞれ独立して、水素、重水素、又は置換若しくは非置換(C6~C12)アリールであり、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素又は重水素である。本開示の別の実施形態によれば、
【化10】
に結合していないR
1~R
4は、それぞれ独立して、水素、重水素、又は非置換(C6~C12)アリールであり、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素又は重水素である。例えば、
【化11】
に結合していないR
1~R
4は、それぞれ独立して、水素、重水素、フェニル等であり得る。
【0025】
本開示の一実施形態によれば、式1において、Ar
1は、置換若しくは非置換(C6~C24)アリール、又は置換若しくは非置換(5~20員)ヘテロアリールであり;
【化12】
に結合していないR
1~R
4は、それぞれ独立して、水素、重水素、又は置換若しくは非置換(C6~C12)アリールであり;R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素又は重水素である。
【0026】
本開示の別の実施形態によれば、式1において、Ar
1は、非置換の若しくは重水素、(C1~C6)アルキル、(C6~C12)アリール、重水素で置換された(C6~C12)アリール、及び(5~15員)ヘテロアリールから選択される1つ以上で置換された(C6~C24)アリール;又は非置換の若しくは重水素、(C6~C12)アリール、及び重水素で置換された(C6~C12)アリールから選択される1つ以上で置換された(5~20員)ヘテロアリールであり;
【化13】
に結合していないR
1~R
4は、それぞれ独立して、水素、重水素、又は非置換(C6~C12)アリールであり;R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素又は重水素である。
【0027】
本開示の式において、隣接置換基が互いに結合して環を形成する場合、この環は、置換若しくは非置換の単環式若しくは多環式(3~30員)脂環式環若しくは芳香環、又はそれらの組み合わせであり得、ここで、形成される環は、B、N、O、S、Si、及びP、好ましくはN、O、及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有し得る。本開示の一実施形態によれば、環骨格原子の数は、5~20個である。本開示の別の実施形態によれば、環骨格原子の数は、5~15個である。例えば、縮合環は、置換若しくは非置換ジベンゾチオフェン環、置換若しくは非置換ジベンゾフラン環、置換若しくは非置換ナフタレン環、置換若しくは非置換フェナントレン環、置換若しくは非置換フルオレン環、置換若しくは非置換ベンゾチオフェン環、置換若しくは非置換ベンゾフラン環、置換若しくは非置換インドール環、置換若しくは非置換インデン環、置換若しくは非置換ベンゼン環、又は置換若しくは非置換カルバゾール環であり得る。
【0028】
本開示の式において、ヘテロアリール(レン)は、それぞれ独立して、B、N、O、S、Si、及びPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有し得る。加えて、ヘテロ原子は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリール、置換若しくは非置換(C3~C30)シクロアルキル、置換若しくは非置換(C1~C30)アルコキシ、置換若しくは非置換トリ(C1~C30)アルキルシリル、置換若しくは非置換ジ(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキルジ(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは非置換トリ(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは非置換のモノ若しくはジ(C1~C30)アルキルアミノ、置換若しくは非置換のモノ若しくはジ(C6~C30)アリールアミノ、及び置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールアミノからなる群から選択される少なくとも1つの置換基に結合し得る。
【0029】
式1で表される化合物としては、以下の化合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0030】
式において、Dnは、式1においてn個の水素が重水素で置き換えられていることを意味する。例えば、化合物C-65において、化合物の炭素原子に結合した1~26個の水素原子が重水素で置換されていることを意味する。
【0031】
本開示による式1の化合物は、当業者に公知の合成方法によって、例えば、以下の反応スキーム1及び2に示されるように調製され得るが、それらに限定されない。
[反応スキーム1]
【化19】
[反応スキーム2]
【化20】
【0032】
反応スキーム1及び2において、Ar1、R1~R6、及びa~fは、式1において定義された通りであり、Halは、ハロゲンを表す。
【0033】
加えて、式1で表される化合物の非重水素化誘導体は、公知のカップリング反応又は置換反応によって調製され得る。重水素化誘導体は、重水素化前駆体物質を使用する類似の方法によって、又はより一般的には、非重水素化化合物を、三塩化アルミニウム若しくはエチルアルミニウムクロリドなどのルイス酸、トリフルオロメタンスルホン酸若しくはトリフルオロメタンスルホン酸-D等などのH/D交換触媒等の存在下でD6-ベンゼンで処理することによって調製され得る。さらに、重水素化度は、反応温度などの反応条件を変えることによって制御され得る。
【0034】
式1で表される化合物の例示的な合成例が上に記載されたが、当業者は、それらの全てが、ブックワルド-ハートウィッグ(Buchwald-Hartwig)クロスカップリング反応、N-アリール化反応、H-mont媒介エーテル化反応、宮浦ホウ素化反応、鈴木クロスカップリング反応、分子内酸誘発環化反応、Pd(II)触媒酸化的環化反応、グリニャール(Grignard)反応、ヘック(Heck)反応、環状脱水反応、SN1置換反応、SN2置換反応、ホスフィン媒介還元的環化反応等に基づくこと、及び上の式1において定義されているが、具体的な合成例に明記されていない置換基が結合している場合でさえも上記の反応が進行することを容易に理解することができるであろう。
【0035】
本開示は、式1で表される有機エレクトロルミネセント化合物を含む有機エレクトロルミネセント材料、及び有機エレクトロルミネセント材料を含む有機エレクトロルミネセントデバイスを提供する。この材料は、本開示による有機エレクトロルミネセント化合物のみからなり得、又は有機エレクトロルミネセント材料に含まれる従来の材料をさらに含み得る。
【0036】
本開示による有機エレクトロルミネセントデバイスは、第1電極、第2電極、及び第1電極と第2電極との間の少なくとも1つの有機層を含み、ここで、有機層は、式1で表される少なくとも1つの有機エレクトロルミネセント化合物を含み得る。
【0037】
第1及び第2電極のうちの1つは、アノードであり得、他は、カソードであり得る。有機層は、発光層を含み得、正孔注入層、正孔輸送層、正孔補助層、発光補助層、電子輸送層、電子緩衝層、電子注入層、中間層、正孔阻止層、及び電子阻止層から選択される少なくとも1つの層をさらに含み得る。
【0038】
第2電極は、半透過電極又は反射電極であり得、有機エレクトロルミネセントデバイスは、形成される材料の種類にしたがってトップエミッション型、ボトムエミッション型、又は両側エミッション型であり得る。
【0039】
第1電極及び第2電極は、それぞれ、透過性の導電性材料、半透過性の導電性材料、又は反射性の導電性材料で形成され得る。有機エレクトロルミネセントデバイスは、第1電極及び第2電極を形成する材料の種類にしたがってトップエミッション型、ボトムエミッション型、又は両側エミッション型であり得る。加えて、正孔注入層は、p-ドーパントでさらにドープされ得、電子注入層は、n-ドーパントでさらにドープされ得る。
【0040】
本開示の式1で表される有機エレクトロルミネセント化合物は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、正孔補助層、発光補助層、電子輸送層、電子緩衝層、電子注入層、中間層、正孔阻止層、及び電子阻止層の少なくとも1つに含まれ得、好ましくは、発光層に含まれ得る。発光層に使用される場合、本開示の式1で表される有機エレクトロルミネセント化合物は、ホスト材料として含まれ得る。好ましくは、発光層は、少なくとも1つのドーパントをさらに含み得る。必要に応じて、本開示の有機エレクトロルミネセント化合物は、共ホスト材料として使用され得る。すなわち、発光層は、第2のホスト材料として、本開示の式1で表される有機エレクトロルミネセント化合物(第1ホスト材料)以外の化合物をさらに含み得る。第1ホスト材料と第2ホスト材料との間の重量比は、1:99~99:1の範囲にある。
【0041】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスに含まれるドーパントは、少なくとも1つのリン光性又は蛍光性ドーパント、好ましくは少なくとも1つのリン光性ドーパントである。本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスに適用されるリン光性ドーパント材料は、特に制限されない。
【0042】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスに含まれるドーパントとして、例えば、式40で表される縮合多環式アミン誘導体が典型的な例であり得るが、それに限定されない。
【化21】
式中、
Ar
41は、置換若しくは非置換(C6~C50)アリール又はスチリルを表し;L
aは、単結合、置換若しくは非置換(C6~C30)アリーレン、又は置換若しくは非置換(3~30員)ヘテロアリーレンを表し;Ar
42及びAr
43は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、又は置換若しくは非置換(3~30員)ヘテロアリールを表すか;或いは隣接置換基と結合して(3~30員)の単環式若しくは多環式の脂環式、芳香族又はそれらの組み合わせの環を形成し得、ここで、形成された脂環式、芳香族又はそれらの組み合わせの炭素原子は、N、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子で置き換えられ得;jjは、1又は2であり、jjが2である場合、各
【化22】
は、同じものであっても、異なってもよい。
【0043】
Ar41における好ましいアリール基は、置換若しくは非置換フェニル、置換若しくは非置換フルオレニル基、置換若しくは非置換アントリル基、置換若しくは非置換ピレニル基、置換若しくは非置換クリセニル基、置換若しくは非置換ベンゾフルオレニル基、スピロ[フルオレン-ベンゾフルオレン]等である。
【0044】
有機層は、アリールアミン系化合物及びスチリルアリールアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含み得る。
【0045】
加えて、本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスにおいて、有機層は、周期表の1族の金属、2族の金属、第4周期の遷移金属、第5周期の遷移金属、d-遷移元素のランタニド及び有機金属、又は前記金属を含む少なくとも1つの錯体化合物からなる群から選択される少なくとも1つの金属をさらに含み得る。
【0046】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスは、本開示の有機エレクトロルミネセント化合物に加えて、当技術分野において公知である、青色、赤色、又は緑色発光化合物を含有する少なくとも1つの発光層をさらに含むことによって白色光を発し得る。加えて、それは、必要に応じて、黄色又は橙色の発光層をさらに含み得る。
【0047】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスにおいて、カルコゲナイド層、金属ハロゲン化物層及び金属酸化物層から選択される少なくとも1つの層(本明細書では以下、「表面層」)が、好ましくは、1つ又は両方の電極の内面上に配置され得る。具体的には、シリコン又はアルミニウムのカルコゲナイド(酸化物を含む)層が、好ましくは、エレクトロルミネセント媒体層のアノード表面上に配置され、金属ハロゲン化物層又は金属酸化物層が、好ましくは、エレクトロルミネセント媒体層のカソード表面上に配置される。表面層は、有機エレクトロルミネセントデバイスに動作安定性を提供し得る。好ましくは、カルコゲナイドとしては、SiOX(1≦X≦2)、AlOX(1≦X≦1.5)、SiON、SiAlON等が挙げられ;金属ハロゲン化物としては、LiF、MgF2、CaF2、希土類金属フッ化物等が挙げられ;金属酸化物としては、Cs2O、Li2O、MgO、SrO、BaO、CaO等が挙げられる。
【0048】
正孔注入層、正孔輸送層、若しくは電子阻止層、又はそれらの組み合わせが、アノードと発光層との間に使用され得る。正孔注入層は、アノードから正孔輸送層又は電子阻止層への正孔注入障壁(又は正孔注入電圧)を下げるために多層であり得、ここで、多層のそれぞれは、2つの化合物を同時に使用し得る。正孔輸送層又は電子阻止層はまた、多層であり得る。
【0049】
電子緩衝層、正孔阻止層、電子輸送層、若しくは電子注入層、又はそれらの組み合わせは、発光層とカソードとの間に使用することができる。電子緩衝層は、電子の注入を制御し、且つ、発光層と電子注入層との間の界面特性を改善するために多層であり得、ここで、多層のそれぞれは、2つの化合物を同時に使用し得る。正孔阻止層又は電子輸送層はまた、多層であり得、ここで、多層のそれぞれは、複数の化合物を使用し得る。
【0050】
発光補助層は、アノードと発光層との間、又はカソードと発光層との間に配置され得る。発光補助層がアノードと発光層との間に配置される場合、それは、正孔注入及び/若しくは正孔輸送を促進するために、又は電子のオーバーフローを防止するために使用することができる。発光補助層がカソードと発光層との間に配置される場合、それは、電子注入及び/若しくは電子輸送を促進するために、又は正孔のオーバーフローを防止するために使用することができる。加えて、正孔補助層は、正孔輸送層(又は正孔注入層)と発光層との間に配置され得、正孔輸送速度(又は正孔注入速度)を促進する又は阻止するのに有効であり得、それによって電荷のバランスが制御されることを可能にする。さらに、電子阻止層は、正孔輸送層(又は正孔注入層)と発光層との間に配置され得、発光層からのオーバーフローしている電子を阻止し、発光層中に励起子を閉じ込めて光漏れを防止し得る。有機エレクトロルミネセントデバイスが2つ以上の正孔輸送層を含む場合、さらに含まれる正孔輸送層は、正孔補助層又は電子阻止層として使用され得る。正孔補助層及び電子阻止層は、有機エレクトロルミネセントデバイスの効率及び/又は寿命を向上させる効果を有し得る。
【0051】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスにおいて、電子輸送化合物と還元性ドーパントとの混合領域、又は正孔輸送化合物と酸化性ドーパントとの混合領域は、好ましくは、電極の対の少なくとも1つの表面上に配置される。この場合、電子輸送化合物はアニオンに還元されるため、混合領域からエレクトロルミネセント媒体に電子を注入する及び輸送することがより容易になる。さらに、正孔輸送化合物はカチオンに酸化されるため、混合領域からエレクトロルミネセント媒体に正孔を注入する及び輸送することがより容易になる。好ましくは、酸化性ドーパントは、種々のルイス酸及びアクセプター化合物を含み;還元性ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、希土類金属、及びそれらの混合物を含む。還元性ドーパント層を電荷発生層として用いて2つ以上の発光層を有する有機エレクトロルミネセントデバイスであって、白色光を発するデバイスを調製し得る。
【0052】
本開示の一実施形態による有機エレクトロルミネセント材料は、白色有機発光デバイス用の発光材料として使用され得る。白色有機発光デバイスは、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)、又はYG(黄色がかった緑色)発光ユニットの配列に従って、平行サイドバイサイド配列法、スタッキング配列法、又はCCM(色変換材料)法等などの様々な構造物において提案されてきた。加えて、本開示の一実施形態による有機エレクトロルミネセント材料はまた、QD(量子ドット)を含む有機エレクトロルミネセントデバイスにも適用され得る。
【0053】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスのそれぞれの層を形成するために、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等などの乾式成膜法、又はスピンコーティング、インクジェット印刷、ディップコーティング、フローコーティング等などの湿式成膜法を用いることができる。
【0054】
湿式膜形成法を用いる場合、薄膜は、それぞれの層を形成する材料を、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等などの任意の好適な溶媒に溶解させる又は拡散させることによって形成することができる。溶媒は、それぞれの層を形成する材料が、膜を形成するのにいかなる問題も引き起こさない、溶媒に可溶であるか又は分散可能である限り、特に制限されない。
【0055】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスを用いることによって、ディスプレイシステム、例えば、スマートホン、タブレット、ノートブック、PC、TV、若しくは自動車用のディスプレイシステム、又は照明システム、例えば、屋外若しくは屋内照明システムを製造することが可能である。
【0056】
本明細書で以下、本開示の化合物の調製方法、及びそれの特性、並びにそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイスの発光特性を、本開示の代表的な化合物に関して詳細に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例に限定されない。
【実施例】
【0057】
実施例1:化合物C-1の調製
【化23】
化合物A-1(10.5g、0.029mol)、化合物A-2(8.9g、0.032mol)、Pd(OAc)
2(0.33g、0.001mol)、s-phos(1.2g、0.002mmol)、K
2CO
3(12.1g、0.088mol)、26mLのアセトニトリル、52mLの蒸留水、及び126mLのトルエンをフラスコに添加し、120℃で16時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(EA)で抽出し、有機層を蒸留水で洗浄した。得られた有機層を減圧下に蒸留し、カラムクロマトグラフィーによって分離して化合物C-1(4g、26.5%)を得た。
【0058】
【0059】
実施例2:化合物C-35の調製
【化24】
1)化合物B-3の調製
化合物9-ブロモアントラセン(20g、0.077mol)、化合物B-4(25.1g、0.085mol)、Pd(PPh
3)
4(4.5g、0.003mol)、K
2CO
3(32g、0.23mol)、97mLのエタノール、97mLの蒸留水、及び390mLのトルエンをフラスコに添加し100℃で撹拌した。12時間後に、混合物を室温に冷却し、ジクロロメタンで抽出し、有機層を蒸留水で洗浄した。得られた有機層を減圧下に蒸留し、カラムクロマトグラフィーによって分離して化合物B-3(25.8g、96.6%)を得た。
【0060】
2)化合物B-2の調製
化合物B-3(25.8g、0.074mol)をフラスコに添加し、374mLのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、N-ブロムスクシンイミド(13.3g、0.074mol)をそれに添加した。混合物を室温で18時間撹拌し、ジクロロメタンで抽出し、有機層を蒸留水で洗浄した。得られた有機層を減圧下に蒸留し、カラムクロマトグラフィーによって分離して化合物B-2(30g、94.6%)を得た。
【0061】
3)化合物B-1の調製
化合物B-2(30g、0.070mol)をフラスコに添加し、700mLのテトラヒドロフランをそれに添加した。n-BuLi(37mL、2.5M、0.092mol)を-78℃でゆっくり添加した。10分後に、トリメチルボレート(10.3mL、0.092mol)をそれに添加した。混合物を12時間撹拌した後、蒸留水をそれに添加した。有機層を酢酸エチルで抽出し、残りの水分を硫酸マグネシウムで除去した。有機層を減圧下に蒸留し、ヘキサンを添加することによって固化させて化合物B-1(16g、58.8%)を得た。
【0062】
4)化合物C-35の調製
化合物A-1(6g、0.016mol)、化合物B-1(8.4g、0.021mol)、Pd(PPh3)4(0.97g、0.00084mol)、K2CO3(6.9g、0.050mol)、20mLのエタノール、20mLの蒸留水、及び84mLのトルエンをフラスコに添加し、混合物を130℃で撹拌した。16時間後に、混合物を室温に冷却し、酢酸エチルで抽出し、有機層を蒸留水で洗浄した。得られた有機層を減圧下に蒸留し、カラムクロマトグラフィーによって分離して化合物C-35(5.5g、52.7%)を得た。
【0063】
【0064】
デバイス実施例1:本開示による化合物を含むOLEDの製造
本開示による有機エレクトロルミネセント化合物を使用するOLEDを以下の通り製造した:OLED用のガラス基板上の透明電極酸化インジウムスズ(ITO)薄膜(10Ω/sq)(ジオマテック株式会社、日本)を、順次、アセトン、エタノール、及び蒸留水での超音波洗浄にかけ、その後イソプロパノール中に保存した。ITO基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着した。化合物HI-1を真空蒸着装置のセルに導入し、装置のチャンバー中の圧力を10-6トールに制御した。その後、セルに電流を流して上記導入された物質を蒸発させ、それによってITO基板上に60nmの厚さを有する第1正孔注入層を形成した。次に、化合物HI-2を真空蒸着装置の別のセルに導入し、セルに電流を流すことによって蒸発させ、それによって第1正孔注入層上に5nmの厚さを有する第2正孔注入層を形成した。次いで、化合物HT-1を真空蒸着装置の別のセルに導入し、セルに電流を流すことによって蒸発させ、それによって第2正孔注入層上に20nmの厚さを有する第1正孔輸送層を形成した。次いで、化合物HT-2を真空蒸着装置の別のセルに導入し、セルに電流を流すことによって蒸発させ、それによって第1正孔輸送層上に5nmの厚さを有する第2正孔輸送層を形成した。正孔注入層及び正孔輸送層を形成した後、発光層をその上に以下の通り形成した:化合物C-1を発光層のホストとして真空蒸着装置の1つのセルに導入し、化合物BDを別のセルに導入した。2つの物質を異なる速度で蒸発させ、ドーパントを、ホストとドーパントの総量を基準として2重量%のドープ量で蒸着させて、第2正孔輸送上に20nmの厚さを有する発光層を形成した。次に、化合物ET-1及び化合物EI-1を、2つの他のセルにおいて、それぞれ、50重量%の量で1:1の速度で蒸発させて発光層上に35nmの厚さを有する電子輸送層を蒸着させた。電子輸送層上に2nmの厚さを有する電子注入層として化合物EI-1を蒸着させた後、別の真空蒸着装置によって電子注入層上に80nmの厚さを有するAlカソードを蒸着させた。このようにして、OLEDを製造した。
【0065】
デバイス実施例2:本開示による化合物を含むOLEDの製造
発光層のホスト材料として化合物C-1の代わりに化合物C-35を使用したことを除いて、デバイスの実施例1におけるのと同じ方法でOLEDを製造した。
【0066】
比較例:従来の化合物を含むOLEDの製造
発光層のホスト材料として化合物C-1の代わりに化合物BH-1を使用したことを除いて、デバイス実施例1におけるのと同じ方法でOLEDを製造した。
【0067】
結果として、デバイス実施例1及び2並びに比較例の有機エレクトロルミネセントデバイスの1,000ニット輝度に基づく駆動電圧、電流効率、及びエレクトロルミネセンス波長の測定結果を下の表1に示す。
【0068】
【0069】
上の表1から、ホスト材料として本開示による有機エレクトロルミネセント化合物を含む有機エレクトロルミネセントデバイスが、比較化合物を使用するデバイスと比較したときにより低い駆動電圧を示し、電流効率特性をかなり改善することを理解することができる。
【0070】
デバイス実施例及び比較例に使用した化合物を下の表2に示す。
【0071】