(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】熱交換構造
(51)【国際特許分類】
F28D 7/16 20060101AFI20240409BHJP
F01N 5/02 20060101ALI20240409BHJP
F28F 13/12 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F28D7/16 A
F01N5/02 C
F28F13/12 Z
(21)【出願番号】P 2020129633
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】永井 孝範
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2006-0094756(KR,A)
【文献】特表2010-532858(JP,A)
【文献】特表2020-513535(JP,A)
【文献】米国特許第05251693(US,A)
【文献】特開2002-054511(JP,A)
【文献】特開平09-061071(JP,A)
【文献】特開2013-210157(JP,A)
【文献】特開2006-282413(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0080789(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 13/00
F28F 1/00 - 99/00
F01N 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度差のある第1流体と第2流体との熱交換を行う熱交換構造であって、
前記第1流体が軸方向に流れる基管の内部に上流側閉塞部と下流側閉塞部が設けられ、
前記基管の前記上流側閉塞部より上流側と前記下流側閉塞部より下流側が前記基管の軸方向に延びる第1流体分岐管で連通され、
前記第1流体分岐管の入口が前記基管の管路断面における縦横に間隔を開けて前記上流側閉塞部に配設され、
前記第1流体分岐管の出口が前記基管の管路断面における縦横に間隔を開けて前記下流側閉塞部に配設され、
前記上流側閉塞部と前記下流側閉塞部との間で前記基管の内部に連通する第2流体導入口と第2流体導出口が設けられ、
前記第2流体導入口と前記第2流体導出口の一方が前記上流側閉塞部寄り、他方が前記下流側閉塞部寄りに配置され、
前記第1流体分岐管の軸方向の中間部に、前記第1流体分岐管の軸方向に延びる整流壁が前記第1流体分岐管相互に架設され、
前記第2流体が前記第1流体分岐管の外側を前記第1流体分岐管と前記整流壁に略沿うように流され
、
前記整流壁が前記第1流体分岐管の前記中間部だけに設けられ、
前記基管内の前記中間部の軸方向両側に位置する第2流体導入部及び第2流体導出部で、第2流体が前記第1流体分岐管相互の隙間を前記第1流体分岐管を横切るように流され、
少なくとも、前記第2流体導出部に位置する前記第1流体分岐管の部分に管路が捩じられた捩じり部が形成されていることを特徴とする熱交換構造。
【請求項2】
温度差のある第1流体と第2流体との熱交換を行う熱交換構造であって、
前記第1流体が軸方向に流れる基管の内部に上流側閉塞部と下流側閉塞部が設けられ、
前記基管の前記上流側閉塞部より上流側と前記下流側閉塞部より下流側が前記基管の軸方向に延びる第1流体分岐管で連通され、
前記第1流体分岐管の入口が前記基管の管路断面における縦横に間隔を開けて前記上流側閉塞部に配設され、
前記第1流体分岐管の出口が前記基管の管路断面における縦横に間隔を開けて前記下流側閉塞部に配設され、
前記上流側閉塞部と前記下流側閉塞部との間で前記基管の内部に連通する第2流体導入口と第2流体導出口が設けられ、
前記第2流体導入口と前記第2流体導出口の一方が前記上流側閉塞部寄り、他方が前記下流側閉塞部寄りに配置され、
前記第1流体分岐管の軸方向の中間部に、前記第1流体分岐管の軸方向に延びる整流壁が前記第1流体分岐管相互に架設され、
前記第2流体が前記第1流体分岐管の外側を前記第1流体分岐管と前記整流壁に略沿うように流され、
前記整流壁が前記第1流体分岐管の前記中間部だけに設けられ、
前記基管内の前記中間部の軸方向両側に位置する第2流体導入部及び第2流体導出部で、第2流体が前記第1流体分岐管相互の隙間を前記第1流体分岐管を横切るように流され、
前記第2流体導入部に位置する前記第1流体分岐管の部分に管路が捩じられた第1の捩じり部が形成され、
前記第2流体導出部に位置する前記第1流体分岐管の部分に管路が捩じられた第2の捩じり部が形成され、
前記第1の捩じり部と前記第2の捩じり部とに、前記中間部に位置する前記第1流体分岐管の部分よりも外周寸法の小さい領域がそれぞれ形成されていることを特徴とする熱交換構造。
【請求項3】
前記第1流体分岐管の入口が前記上流側閉塞部に前記基管の管路断面の全面に亘って網状に配設され、
前記第1流体分岐管の出口が前記下流側閉塞部に前記基管の管路断面の全面に亘って網状に配設されていることを特徴とする請求項
1又は2記載の熱交換構造。
【請求項4】
前記第2流体導入口が前記下流側閉塞部寄りに配置され、前記第2流体導出口が前記上流側閉塞部寄りに配置されていることを特徴とする請求項
1~3の何れかに記載の熱交換構造。
【請求項5】
前記第2流体導入部に位置する前記第1流体分岐管の部分と、前記第2流体導出部に位置する前記第1流体分岐管の部分とに、前記中間部に位置する前記第1流体分岐管の部分よりも外周寸法の小さい領域が形成されていることを特徴とする請求項
1記載の熱交換構造。
【請求項6】
前記第1流体分岐管が前記基管よりも熱伝導率が高い材料で形成されていることを特徴とする請求項1~
5の何れかに記載の熱交換構造。
【請求項7】
前記第1流体分岐管の入口が前記上流側閉塞部に前記基管の管路断面に千鳥配置で配設され、
前記第1流体分岐管の出口が前記下流側閉塞部に前記基管の管路断面に千鳥配置で配設されていることを特徴とする請求項1~
6の何れかに記載の熱交換構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度差のある流体相互の熱交換を行う熱交換構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度差のある流体相互の熱交換を行う熱交換構造として特許文献1の熱交換構造がある。この熱交換構造は、内筒と外筒との間の円筒状の流路形成空間内に、第1流体を軸方向に流動させる第1流路と第2流体を軸方向に流動させる第2流路が周方向に交互に並ぶ状態で設けられるものであり、第1流路を形成する第1流路形成用筒体が流路形成空間の周方向に沿って間隔を隔てて並置され、周方向に隣接する第1流路形成用筒体の間の隙間空間で第2流路が形成されて製作の容易化が図られているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の熱交換構造は、内筒と外筒との間の円筒状の流路形成空間内に第1流路と第2流路を周方向に交互に並置することにより、ある程度高い熱交換効率を得ることができるものの、細分化された第1流路と第2流路が周方向にだけ熱交換するもの、換言すれば断面視で1次元的に熱交換するものであるため、未だ十分な熱交換効率を発揮するものとは言い難い。そのため、より優れた熱交換効率を実現できる熱交換構造が求められている。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、温度差のある流体相互の熱交換を行う熱交換構造において、非常に高い熱交換効率で熱交換を行うことができる熱交換構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱交換構造は、温度差のある第1流体と第2流体との熱交換を行う熱交換構造であって、前記第1流体が軸方向に流れる基管の内部に上流側閉塞部と下流側閉塞部が設けられ、前記基管の前記上流側閉塞部より上流側と前記下流側閉塞部より下流側が前記基管の軸方向に延びる第1流体分岐管で連通され、前記第1流体分岐管の入口が前記基管の管路断面における縦横に間隔を開けて前記上流側閉塞部に配設され、前記第1流体分岐管の出口が前記基管の管路断面における縦横に間隔を開けて前記下流側閉塞部に配設され、前記上流側閉塞部と前記下流側閉塞部との間で前記基管の内部に連通する第2流体導入口と第2流体導出口が設けられ、前記第2流体導入口と前記第2流体導出口の一方が前記上流側閉塞部寄り、他方が前記下流側閉塞部寄りに配置され、前記第1流体分岐管の軸方向の中間部に、前記第1流体分岐管の軸方向に延びる整流壁が前記第1流体分岐管相互に架設され、前記第2流体が前記第1流体分岐管の外側を前記第1流体分岐管と前記整流壁に略沿うように流されることを特徴とする。
これによれば、第1流体分岐管の断面視における多様な方向で2次元的に第1流体と第2流体の熱交換を行うことができると共に、第2流体を第1流体分岐管と整流壁に略沿うように流すことにより、実効性のある熱交換面積を増大させることができ、非常に高い熱交換効率で熱交換を行うことができる。また、第1流体は、基管の軸方向に一貫して流されることから、第1流体の乱流化を抑制して第1流体の流れの圧力損失を抑制することができる。
【0007】
本発明の熱交換構造は、前記第1流体分岐管の入口が前記上流側閉塞部に前記基管の管路断面の全面に亘って網状に配設され、前記第1流体分岐管の出口が前記下流側閉塞部に前記基管の管路断面の全面に亘って網状に配設されていることを特徴とする。
これによれば、第1流体分岐管の入口と出口を基管の管路断面の全面に亘って網状に配設することにより、第1流体分岐管をより細分化して第1流体と第2流体の熱交換面積をより増大させることができ、より一層高い熱交換効率を実現することができる。
【0008】
本発明の熱交換構造は、前記第2流体導入口が前記下流側閉塞部寄りに配置され、前記第2流体導出口が前記上流側閉塞部寄りに配置されていることを特徴とする。
これによれば、第2流体導入口から第2流体が導入されて第2流体導出口から第2流体が導出するまで、第1流体と第2流体の温度差を確実に維持することができ、より一層高い熱交換効率を実現することができる。
【0009】
本発明の熱交換構造は、前記整流壁が前記第1流体分岐管の前記中間部だけに設けられ、前記基管内の前記中間部の軸方向両側に位置する第2流体導入部及び第2流体導出部で、第2流体が前記第1流体分岐管相互の隙間を前記第1流体分岐管を横切るように流されることを特徴とする。
これによれば、第2流体導入部と第2流体導出部には整流壁を設けずに済むことから、例えばハニカム構造体の第1流体の分岐流路だけをパイプを接合する等で延設して第1流体分岐管とするような製造等が可能となり、効率的且つ低コストで製造することが可能となる。また、第2流体導入部と第2流体導出部には整流壁を設ける構造にせずに済むことから、第2流体導入部と第2流体導出部を小型化して、熱交換構造の小型化、設置場所の省スペース化を図ることができる。また、第2流体導入部と第2流体導出部には整流壁を設ける複雑な構造にせずに済むことから、故障時の修理の容易化、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0010】
本発明の熱交換構造は、前記第2流体導入部に位置する前記第1流体分岐管の部分と、前記第2流体導出部に位置する前記第1流体分岐管の部分とに、前記中間部に位置する前記第1流体分岐管の部分よりも外周寸法の小さい領域が形成されていることを特徴とする。
これによれば、第1流体と第2流体の熱交換面積をより増加させるために、並設される第1流体分岐管の数を多くして配置密度を高くした場合にも、第1流体分岐管の外周寸法の小さい領域により、第2流体がスムーズに流れる隙間を第2流体導入部と第2流体導出部に確保することができる。
【0011】
本発明の熱交換構造は、少なくとも、前記第2流体導出部に位置する前記第1流体分岐管の部分に管路が捩じられた捩じり部が形成されていることを特徴とする。
これによれば、第2流体導出部に位置する第1流体分岐管の捩じり部により、第1流体と熱交換した第2流体を乱流化して流体塊の混合を促進し、第2流体の熱伝達性、熱交換性をより一層高めることができる。
【0012】
本発明の熱交換構造は、前記第2流体導入部に位置する前記第1流体分岐管の部分に管路が捩じられた第1の捩じり部が形成され、前記第2流体導出部に位置する前記第1流体分岐管の部分に管路が捩じられた第2の捩じり部が形成され、前記第1の捩じり部と前記第2の捩じり部とに、前記中間部に位置する前記第1流体分岐管の部分よりも外周寸法の小さい領域がそれぞれ形成されていることを特徴とする。
これによれば、第2流体導出部に位置する第1流体分岐管の第2の捩じり部により、第1流体と熱交換した第2流体を乱流化して流体塊の混合を促進し、第2流体の熱伝達性、熱交換性をより一層高めることができる。また、第1流体と第2流体の熱交換面積をより増加させるために、並設される第1流体分岐管の数を多くして配置密度を高くした場合にも、第1の捩じり部と第2の捩じり部の第1流体分岐管の外周寸法の小さい領域により、第2流体がスムーズに流れる隙間を第2流体導入部と第2流体導出部に確保することができる。また、第2流体導入部と第2流体導出部の第1流体分岐管の外周寸法の小さい領域を同一構成の第1の捩じり部と第2の捩じり部で形成することにより、製造作業の容易化を図ることができる。
【0013】
本発明の熱交換構造は、前記第1流体分岐管が前記基管よりも熱伝導率が高い材料で形成されていることを特徴とする。
これによれば、熱伝達率が比較的低い基管で放熱を抑制しながら、熱伝導率が比較的高い第1流体分岐管を介して優れた熱交換を行うことができ、全体として熱エネルギーの有効利用を促進することができる。
【0014】
本発明の熱交換構造は、前記第1流体分岐管の入口が前記上流側閉塞部に前記基管の管路断面に千鳥配置で配設され、前記第1流体分岐管の出口が前記下流側閉塞部に前記基管の管路断面に千鳥配置で配設されていることを特徴とする。
これによれば、第1流体分岐管による第1流体の各分岐流路の大きさを平準化できると同時に、第1流体分岐管と整流壁に略沿うように流される第2流体の各分岐流路の大きさを、無駄なスペースを生ずることなく容易に平準化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱交換構造によれば、温度差のある流体相互の熱交換を行う熱交換構造において、非常に高い熱交換効率で熱交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による実施形態の熱交換構造の斜視図。
【
図5】実施形態の熱交換構造における第1流体分岐管の説明図。
【
図7】(a)は
図6のA-A拡大端面図、(b)は
図6のA-A拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態の熱交換構造〕
本発明による実施形態の熱交換構造の構造体1は、温度差のある第1流体F1と第2流体F2との熱交換を行うものであり、
図1、
図2及び
図6に示すように、第1流体F1が軸方向に流れる略筒状の基管2を有し、基管2の軸方向の一方の端部には端縁に向かって漸次縮径する略テーパ筒状の第1流体導入部21が設けられ、他方の端部には端縁に向かって漸次縮径する略テーパ筒状の第1流体導出部22が設けられている。第1流体導入部21と第1流体導出部22との間は全長に亘って略同一径或いは略同一の外周寸法を有する筒状の基部23になっている。
【0018】
基管2の内部には第1流体F1の流れの上流側に上流側閉塞部3が設けられ、その下流側に下流側閉塞部4が設けられている(
図2~
図4参照)。本実施形態では、基管2の内部において、第1流体導入部21と基部23を仕切るように上流側閉塞部3が配設され、基部23と第1流体導出部22を仕切るように下流側閉塞部4が配設されている。基管2の内部において、第1流体F1の流れで上流側閉塞部3より上流側と、下流側閉塞部4より下流側は、基管2の軸方向に延びるように並設された第1流体分岐管5で連通されている(
図2~
図5、
図7、
図8参照)。
【0019】
第1流体分岐管5と基管2は、同一の熱伝導率の同一材料、例えばステンレス(熱伝導率:27[W/m・k])等の金属材で形成してもよいが、例えば第1流体分岐管5をアルミニウム(熱伝導率:237[W/m・k])等の熱伝導率が高い金属材或いは熱伝導率が高い樹脂材等の材料で形成し、基管2をステンレス(熱伝導率:27[W/m・k])等の第1流体分岐管5よりも熱伝導率の低い金属材或いは熱伝導率の低い樹脂材等の材料で形成する等、第1流体分岐管5を、基管2よりも熱伝導率が高い材料で形成すると好適である。
【0020】
第1流体分岐管5の入口51は、基管2の管路断面における縦横に間隔を開けて上流側閉塞部3に配設されており、好適には、第1流体分岐管5の入口51は上流側閉塞部3に基管2の管路断面の全面に亘って網状に配設され、より好適には千鳥配置で配設される。また、第1流体分岐管5の出口52も、基管2の管路断面における縦横に間隔を開けて下流側閉塞部4に配設されており、好適には、第1流体分岐管5の出口52は、下流側閉塞部4に基管2の管路断面の全面に亘って網状に配設され、より好適には千鳥配置で配設される。
【0021】
上流側閉塞部3と下流側閉塞部4との間の基管2の内部は熱交換領域HRになっており、この熱交換領域HRで基管2の内部と連通するようにして第2流体F2が流れる第2流体導入口61と第2流体導出口62が設けられている。第2流体導入口61と第2流体導出口62は、その一方が上流側閉塞部3寄りに配置され、他方が下流側閉塞部4寄りに配置されており、本実施形態では、第2流体導入口61が下流側閉塞部4寄りに配置され、第2流体導出口62が上流側閉塞部3寄りに配置されている。
【0022】
基管2の内部の熱交換領域HRにおいて、第2流体導入口61に対応する位置は第2流体導入口61が連通する第2流体導入部71になっており、第2流体導出口62に対応する位置は第2流体導出口62が連通する第2流体導出部72になっている。第1流体分岐管5の軸方向で第2流体導入部71に位置する部分と第2流体導出部72に位置する部分の間に位置する部分は第1流体分岐管5の中間部53になっており、第1流体分岐管5の軸方向の中間部53では、第1流体分岐管5の軸方向に延びる整流壁8が第1流体分岐管5・5相互に架設されている。
【0023】
本実施形態では、整流壁8が第1流体分岐管5の中間部53だけに設けられ、第1流体分岐管5の第2流体導入部71に位置する部分と第2流体導出部72に位置する部分には整流壁8は設けられていない。そして、基管2内の第1流体分岐管5の中間部53の軸方向両側に位置する第2流体導入部71及び第2流体導出部72では、第2流体F2が第1流体分岐管5・5相互の隙間Gを第1流体分岐管5を横切るように流れるようになっている。
【0024】
第2流体導入部71に位置する第1流体分岐管5の部分には管及び管路が捩じられた第1の捩じり部56が形成され、第2流体導出部72に位置する第1流体分岐管5の部分には管及び管路が捩じられた第2の捩じり部55が形成されている。第1の捩じり部56及び第2の捩じり部55には、引き伸ばされるように捩じられて形成されることで、中間部53に位置する第1流体分岐管5の部分或いは第1流体分岐管5の中間部よりも、外周寸法或いは外径の小さい領域が形成されている。この外周寸法或いは外径の小さい領域により、第1流体分岐管5の本数を多くして並設する密度を高くした場合にも、第2流体導入部71と第2流体導出部72において、第1流体分岐管5・5相互の隙間Gが確保されるようになっている。
【0025】
本実施形態の熱交換構造の構造体1を使用する際には、基管2内を上流側から下流側に第1流体F1を流した状態にし、第2流体導入口61から基管2内の第2流体導入部71に第1流体F1より低温又は高温の第2流体F2を流して導入する。第2流体導入部71内では、第2流体F2は、第1流体分岐管5やその第1の捩じり部56で乱流化、渦流化されながら第1流体分岐管5・5相互の隙間Gを流れる。
【0026】
そして、隙間Gを流れた第2流体F2は、第1流体分岐管5の中間部53に対応する領域において第1流体分岐管5の外側を流れ、第1流体分岐管5の周壁54と整流壁8で囲まれる分岐流路f21や、中間部53の対応位置で基管2に設けられた基部周壁24と第1流体分岐管5の周壁54と整流壁8で囲まれる分岐流路f22を流れる。第2流体F2は、これらの流路を流れることにより、第1流体分岐管5の外側を第1流体分岐管5と整流壁8が延びる方向に第1流体分岐管5と整流壁8に略沿うように流れる。
【0027】
第1流路分岐管5の周壁54を介して第1流体F1と熱交換を行い、分岐流路f21、f22から第2流体導出部72に流れ出た第2流体F2は、第2流体導出部72において第1流体分岐管5やその第2の捩じり部55で乱流化、渦流化されながら第1流体分岐管5・5相互の隙間Gを流れ、第2流体導出部72から第2流体導出口62へと導出される。
【0028】
本実施形態によれば、第1流体分岐管5の断面視における多様な方向で2次元的に第1流体F1と第2流体F2の熱交換を行うことができると共に、第2流体F2を第1流体分岐管5と整流壁8に略沿うように流すことにより、実効性のある熱交換面積を増大させることができ、非常に高い熱交換効率で熱交換を行うことができる。また、第1流体F1は、基管2の軸方向に一貫して流されることから、第1流体F1の乱流化を抑制して第1流体F1の流れの圧力損失を抑制することができる。
【0029】
また、第1流体分岐管5の入口51と出口52を基管2の管路断面の全面に亘って網状に配設することにより、第1流体分岐管5をより細分化して第1流体F1と第2流体F2の熱交換面積をより増大させることができ、より一層高い熱交換効率を実現することができる。
【0030】
また、第2流体導入口61を下流側閉塞部4寄りに配置し、第2流体導出口62を上流側閉塞部3寄りに配置することにより、第2流体導入口61から第2流体F2が導入されて第2流体導出口62から第2流体F2が導出するまで、第1流体F1と第2流体F2の温度差を確実に維持することができ、より一層高い熱交換効率を実現することができる。
【0031】
また、整流壁8を第1流体分岐管5の中間部53だけに設け、第2流体導入部71及び第2流体導出部72で第2流体F2を第1流体分岐管5・5相互の隙間Gを第1流体分岐管5を横切るように流す構造により、第2流体導入部71と第2流体導出部72に整流壁8を設けずに済むことから、例えばハニカム構造体の第1流体の分岐流路だけをパイプを接合する等で延設して第1流体分岐管5とするような製造等が可能となり、効率的且つ低コストで製造することが可能となる。また、第2流体導入部71と第2流体導出部72に整流壁8を設ける構造にせずに済むことから、第2流体導入部71と第2流体導出部72を小型化して、熱交換構造の構造体1の小型化、設置場所の省スペース化を図ることができる。また、第2流体導入部71と第2流体導出部72には整流壁8を設ける複雑な構造にせずに済むことから、故障時の修理の容易化、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0032】
また、第2流体導入部71に位置する前記第1流体分岐管5の部分と、第2流体導出部72に位置する第1流体分岐管5の部分とに、中間部53に位置する第1流体分岐管5の部分よりも外周寸法の小さい領域、本実施形態では第1の捩じり部56と第2の捩じり部55の第1流体分岐管の外周寸法の小さい領域を形成することにより、第1流体F1と第2流体F2の熱交換面積をより増加させるために、並設される第1流体分岐管5の数を多くして配置密度を高くした場合にも、第2流体F2がスムーズに流れる隙間Gを第2流体導入部71と第2流体導出部72に確保することができる。
【0033】
また、第2流体導出部72に位置する第1流体分岐管5の第2の捩じり部55により、第1流体F1と熱交換した第2流体F2を乱流化して流体塊の混合を促進し、第2流体F2の熱伝達性、熱交換性をより一層高めることができる。また、第2流体導入部71と第2流体導出部72の第1流体分岐管5の外周寸法の小さい領域を同一構成の第1の捩じり部56と第2の捩じり部55で形成することにより、製造作業の容易化を図ることができる。
【0034】
また、第1流体分岐管5を基管2よりも熱伝導率が高い材料で形成する場合には、熱伝達率が比較的低い基管2で放熱を抑制しながら、熱伝導率が比較的高い第1流体分岐管5を介して優れた熱交換を行うことができ、全体として熱エネルギーの有効利用を促進することができる。
【0035】
また、第1流体分岐管5の入口51を上流側閉塞部3に基管2の管路断面に千鳥配置で配設し、第1流体分岐管5の出口52が下流側閉塞部4に基管2の管路断面に千鳥配置で配設する構成、換言すれば第1流体分岐管5を断面視で千鳥配置で配設することにより、第1流体分岐管5による第1流体F1の各分岐流路の大きさを平準化できると同時に、第1流体分岐管5と整流壁8に略沿うように流される第2流体F2の各分岐流路の大きさを、無駄なスペースを生ずることなく容易に平準化することができる。
【0036】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0037】
例えば第1流体F1の流量、第2流体F2の流量は適用可能な範囲で適宜設定することが可能であり、例えば第1流体F1が排気等の気体である場合に第1流体F1の流量を10~150g/secとし、第2流体F2が冷却水等の液体である場合に第2流体F2の流量を10~40L/minとしても好適である。また、第1流体分岐管5の流路断面積、第1流体分岐管5の中間部53に対応する領域における第1流体分岐管5に略沿うように流れる第2流体F2の各分岐流路の流路断面積は、適用可能な範囲で適宜設定することが可能であるが、第1流体F1の流れの圧力損失と、第2流体F2の流れの圧力損失をバランスよく低減しつつ、熱交換面積を増加させる観点から、例えば第1流体分岐管5の流路断面積を0.25mm2~4.0mm2、第2流体F2の各分岐流路の流路断面積を0.25mm2~4.0mm2とすると好適である。
【0038】
また、第1流体分岐管5の流路断面積と、第1流体分岐管5の中間部53に対応する領域における第1流体分岐管5に略沿うように流れる第2流体F2の各分岐流路の流路断面積の流路比率は適用可能な範囲で適宜であり、例えば1:1~1:2.5等とすることが可能である。この際、
図7及び
図8の例のように、第1流体分岐管5を千鳥配置で配設し、断面視矩形の第1流体分岐管5の外側に断面視八角形の第2流体F2の分岐流路を設ける構成では、八角形の辺の長さを変更するだけで流路比率を変更することが可能となって好適である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、例えば自動車の内燃機関の排気と冷却水の熱交換など温度差のある流体相互の熱交換に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…熱交換構造の構造体 2…基管 21…第1流体導入部 22…第1流体導出部 23…基部 24…基部周壁 3…上流側閉塞部 4…下流側閉塞部 5…第1流体分岐管 51…入口 52…出口 53…中間部 54…周壁 56…第1の捩じり部 55…第2の捩じり部 61…第2流体導入口 62…第2流体導出口 71…第2流体導入部 72…第2流体導出部 8…整流壁 F1…第1流体 F2…第2流体 f21、f22…第2流体の分岐流路 HR…熱交換領域 G…隙間