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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】インク吐出装置および印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 303
B41J2/01 305
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020132387
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029178
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】星野 真澄
(72)【発明者】
【氏名】藤田 陽
(72)【発明者】
【氏名】千田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】戸田 陽
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-109408(JP,A)
【文献】特開2018-144410(JP,A)
【文献】特開2017-109361(JP,A)
【文献】特開2011-042087(JP,A)
【文献】特開2014-069342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びたガイドレールと、
前記ガイドレールに対して摺動自在に設けられ、インクを吐出するインクヘッドと、
前記インクヘッドを前記第1方向に移動させる移動機構と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記インクヘッドを前記第1方向に移動させると共に、前記インクヘッドが前記第1方向に移動している間、前記インクヘッドからインクを吐出させるスキャン印刷を行う印刷制御部と、
媒体を支持し、かつ、前記インクヘッドに対して第2方向に媒体を相対的に搬送する媒体搬送装置から、搬送要求信号を受信する受信部と、
前記受信部によって前記搬送要求信号が受信されたとき、前記印刷制御部による前記スキャン印刷におけるインクの吐出が終了したか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記スキャン印刷におけるインクの吐出が終了していないと判定されたとき、媒体を前記インクヘッドに対して相対的に搬送することを許可しない搬送不許可信号を前記媒体搬送装置に送信する不許可送信部と、
前記判定部によって前記スキャン印刷におけるインクの吐出が終了したと判定されたとき、媒体を前記インクヘッドに対して相対的に搬送することを許可する搬送許可信号を前記媒体搬送装置に送信する許可送信部と、
を備えた、インク吐出装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記印刷制御部によって移動する前記インクヘッドが、インクが吐出される吐出域であって、印刷対象の印刷データに基づいて予め設定された前記吐出域を通過したか否かを判定し、
前記不許可送信部は、前記判定部によって前記インクヘッドが前記吐出域を通過していないと判定されたとき、前記搬送不許可信号を送信し、
前記許可送信部は、前記判定部によって前記インクヘッドが前記吐出域を通過したと判定されたとき、前記搬送許可信号を送信する、請求項1に記載されたインク吐出装置。
【請求項3】
前記許可送信部は、媒体の相対的な搬送量を含む前記搬送許可信号を前記媒体搬送装置に送信する、請求項1または2に記載されたインク吐出装置。
【請求項4】
前記印刷制御部は、印刷対象の印刷データに基づいて印刷を行うように構成され、
前記制御装置は、前記受信部によって前記搬送要求信号が受信されたとき、前記印刷制御部による前記印刷データに基づく印刷が終了したか否かを判定する終了判定部を備え、
前記不許可送信部は、前記終了判定部によって前記印刷データに基づく印刷が終了したと判定されたとき、前記搬送不許可信号を前記媒体搬送装置に送信する、請求項1から3までの何れか1つに記載されたインク吐出装置。
【請求項5】
前記受信部は、前記媒体搬送装置から印刷開始信号を受信し、
前記印刷制御部は、前記受信部によって前記印刷開始信号が受信されたとき、前記インクヘッドを前記第1方向に移動させると共に、前記インクヘッドが前記第1方向に移動している間、前記インクヘッドからインクを吐出させる前記スキャン印刷を開始する、請求項1から4までの何れか1つに記載されたインク吐出装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか1つに記載されたインク吐出装置と、
前記インク吐出装置と通信可能に接続された媒体搬送装置と、
を備え、
前記媒体搬送装置は、
媒体を支持する支持台と、
前記支持台に支持された媒体を、前記インクヘッドに対して相対的に前記第2方向に移動させる搬送機構と、
を備えた、印刷システム。
【請求項7】
前記媒体搬送装置は、
前記搬送機構を制御する搬送制御装置と、
前記インク吐出装置の前記制御装置、および、前記搬送制御装置と通信可能に接続された中間制御装置と、
を備え、
前記中間制御装置は、
前記制御装置に前記搬送要求信号を送信する信号送信部と、
前記制御装置の前記不許可送信部によって送信された前記搬送不許可信号、および、前記許可送信部によって送信された前記搬送許可信号を受信する信号受信部と、
を備え、
前記搬送制御装置は、前記信号受信部によって前記搬送許可信号が受信されたとき、前記支持台に支持された媒体を前記インクヘッドに対して前記第2方向に相対的に所定の距離、移動させる搬送制御部を備えた、請求項6に記載された印刷システム。
【請求項8】
前記信号送信部は、前記搬送制御部によって、前記支持台に支持された媒体が前記インクヘッドに対して前記第2方向に相対的に搬送されていないとき、前記搬送要求信号を送信する、請求項7に記載された印刷システム。
【請求項9】
前記信号送信部は、所定の時間の間隔で、前記搬送要求信号を送信し続ける、請求項8に記載された印刷システム。
【請求項10】
前記インク吐出装置と、前記媒体搬送装置とは、別体で構成されている、請求項6から9までの何れか1つに記載された印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出装置および印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、媒体を支持するプラテンと、プラテンに向かってインクを吐出するインクヘッドとを備えたインクジェットプリンタが開示されている。インクヘッドは、キャリッジに搭載されており、キャリッジは、主走査方向に延びたガイドレールに係合している。
【0003】
上記インクジェットプリンタでは、キャリッジおよびインクヘッドを主走査方向へ移動させつつ、インクヘッドからインクを吐出させることで、主走査方向の1ラインにおける印刷が行われる。ここで、当該1ラインの印刷のことをスキャン印刷という。スキャン印刷が終了した後、プラテンに支持された媒体を副走査方向に所定の距離、搬送する。媒体の搬送の後、次のスキャン印刷が行われる。以下、スキャン印刷と、媒体の搬送とを繰り返し実行することで、対象の印刷画像を媒体に印刷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-196537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記インクジェットプリンタでは、スキャン印刷と、媒体の搬送とは1つの装置で実現されている。しかしながら、スキャン印刷と、媒体の搬送とが異なる装置で実現されることがあり得る。例えば上記インクジェットプリンタにおけるキャリッジ、インクヘッドおよびガイドレールと、媒体を支持するプラテンとが異なる装置で実現されることがあり得る。この場合、スキャン印刷の制御と、媒体の搬送の制御とは異なる制御装置で行われる。ここで、スキャン印刷を行う装置をインク吐出装置といい、媒体の搬送が行われる装置を媒体搬送装置という。
【0006】
上述のように、スキャン印刷と、媒体の搬送とは交互に行われる。このとき、スキャン印刷の途中で媒体の搬送が開始されると、印刷のズレが生じて印刷の品質が低下するおそれがある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクヘッドに対する媒体の相対的な搬送が異なる装置で実現される場合であっても、印刷の品質が低下することを抑制することが可能なインク吐出装置および印刷システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインク吐出装置は、第1方向に延びたガイドレールと、前記ガイドレールに対して摺動自在に設けられ、インクを吐出するインクヘッドと、前記インクヘッドを前記第1方向に移動させる移動機構と、制御装置と、を備えている。前記制御装置は、印刷制御部と、受信部と、判定部と、不許可送信部と、許可送信部とを備えている。前記印刷制御部は、前記インクヘッドを前記第1方向に移動させると共に、前記インクヘッドが前記第1方向に移動している間、前記インクヘッドからインクを吐出させるスキャン印刷を行う。前記受信部は、媒体を支持し、かつ、前記インクヘッドに対して第2方向に媒体を相対的に搬送する媒体搬送装置から、搬送要求信号を受信する。前記判定部は、前記受信部によって前記搬送要求信号が受信されたとき、前記印刷制御部による前記スキャン印刷におけるインクの吐出が終了したか否かを判定する。前記不許可送信部は、前記判定部によって前記スキャン印刷におけるインクの吐出が終了していないと判定されたとき、媒体を前記インクヘッドに対して相対的に搬送することを許可しない搬送不許可信号を前記媒体搬送装置に送信する。前記許可送信部は、前記判定部によって前記スキャン印刷におけるインクの吐出が終了したと判定されたとき、媒体を前記インクヘッドに対して相対的に搬送することを許可する搬送許可信号を前記媒体搬送装置に送信する。
【0009】
媒体搬送装置では、インク吐出装置から搬送許可信号を受信したとき、インクヘッドに対して第2方向に媒体を相対的に搬送(以下、媒体の相対的な搬送ともいう。)が開始される。一方、媒体搬送装置では、インク吐出装置から搬送不許可信号を受信したとき、媒体の相対的な搬送は開始されない。上記インク吐出装置によれば、媒体搬送装置から搬送要求信号を受信したときに、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了している場合、搬送許可信号を媒体搬送装置に送信し、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了していない場合には、搬送不許可信号を媒体搬送装置に送信する。このことで、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了したタイミングで、媒体の相対的な搬送が開始される。よって、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了しておらず、インクヘッドからインクが吐出されている途中で、媒体の相対的な搬送が開始されないため、印刷のズレが生じ難く、印刷の品質が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る印刷システムの概念図であり、インク吐出装置と媒体搬送装置とが離間した状態を示す正面図である。
図2】実施形態に係る印刷システムを示す正面図である。
図3】実施形態に係る印刷システムを示す平面図である。
図4】実施形態に係る印刷システムを示す右側面図である。
図5】インク吐出装置のキャリッジおよびインクヘッドを模式的に示す底面図である。
図6】実施形態に係る印刷システムのブロック図である。
図7】印刷開始からスキャン印刷開始までにおける制御装置と中間制御装置との信号の送受信について示したタイムチャートである。
図8】インクヘッドが主走査方向に移動している間において、制御装置と中間制御装置と搬送制御装置との信号の送受信について示したタイムチャートである。
図9】インクヘッドが主走査方向に移動している間において、制御装置と中間制御装置と搬送制御装置との信号の送受信について示したタイムチャートである。
図10】搬送要求信号を受信した後のインク吐出装置の制御装置における判定処理を示したフローチャートである。
図11】媒体搬送装置が印刷データに基づく印刷が終了したことを判断する手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の一形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。
【0012】
図1は、本実施形態に係る印刷システム1の概念図である。図2図3図4は、それぞれ本実施形態に係る印刷システム1を示す正面図、平面図、右側面図である。図1に示すように、本実施形態に係る印刷システム1は、インク吐出装置10と、媒体搬送装置50とを備えている。なお、図1では、インク吐出装置10と媒体搬送装置50とが離間した状態が示されている。
【0013】
以下の説明において、左、右、上、下とは、印刷システム1の正面にいるユーザ、ここではインク吐出装置10の後述する操作パネル13(図1参照)と対向する位置にいるユーザから見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、上記ユーザが印刷システム1から遠ざかる方を前方、上記ユーザが印刷システム1に近づく方を後方とする。
【0014】
図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を示している。また、図面中の符号Yは主走査方向を示し、符号Xは副走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。副走査方向Xは平面視において主走査方向Yと直交している。ただし、副走査方向Xは、主走査方向Yと直交していなくてもよく、主走査方向Yと交差していればよい。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。ここでは、主走査方向Yは第1方向の一例であり、副走査方向Xは第2方向の一例である。なお、これら方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0015】
本実施形態に係る印刷システム1では、図1に示すように、媒体搬送装置50によって媒体5が支持される。そして、インク吐出装置10は、媒体搬送装置50によって支持された媒体5における主走査方向Yに沿った1ライン分の印刷(以下、スキャン印刷ともいう。)を行う。そして、インク吐出装置10による1回のスキャン印刷におけるインクの吐出が終了した後、媒体搬送装置50によって、媒体5をインク吐出装置10に対して相対的に副走査方向Xに搬送させる。以下、インク吐出装置10によるスキャン印刷と、媒体搬送装置50による媒体5の相対的な搬送とを繰り返し行うことで、媒体5に対する印刷対象の画像の印刷を行う。
【0016】
ここでは、インク吐出装置10と媒体搬送装置50とは、信号Sを相互に送受信することで、スキャン印刷と、媒体5の相対的な搬送とのタイミングを調整している。以下、インク吐出装置10および媒体搬送装置50について順に説明する。
【0017】
まずインク吐出装置10について説明する。図2に示すように、インク吐出装置10は、媒体搬送装置50に支持された媒体5にインクを吐出することで媒体5に印刷する。インク吐出装置10は、媒体5を支持する機構が省略されたプリンタである。インク吐出装置10は、本体11と、操作パネル13を備えている。
【0018】
本体11は、左側部材12aと、右側部材12bと、中央部材12cとを有している。左側部材12aは、媒体搬送装置50の後述するテーブル55よりも左方に配置される。右側部材12bは、左側部材12aの右方、かつ、テーブル55よりも右方に配置される。左側部材12aと右側部材12bとは、所定の間隔を空けて、主走査方向Yに並んで配置されている。中央部材12cは、主走査方向Yに延び、左側部材12aと右側部材12bとに掛け渡されている。中央部材12cの左端は左側部材12aに接続され、中央部材12cの右端は右側部材12bに接続されている。左側部材12aの下部、および、右側部材12bの下部は、中央部材12cから下方に突出している。
【0019】
操作パネル13は、本体11に設けられ、詳しくは右側部材12bの前面に設けられている。ただし、操作パネル13の設置位置は特に限定されない。操作パネル13は、例えば解像度、インクの濃さなどの印刷に関する情報や、印刷中のインク吐出装置10のステータスなどが表示される表示部14と、印刷に関する情報を入力するための入力キー15とを有する。
【0020】
図5は、インク吐出装置10のキャリッジ21およびインクヘッド22を模式的に示す底面図である。図6は、本実施形態に係る印刷システム1のブロック図である。本実施形態では、図2に示すように、インク吐出装置10は、ガイドレール20と、キャリッジ21と、インクヘッド22(図5参照)と、移動機構25(図6参照)とを備えている。ガイドレール20は、本体11に固定されている。ここでは、ガイドレール20は、本体11の中央部材12cに設けられている。ガイドレール20は、主走査方向Yに延びている。
【0021】
キャリッジ21は、ガイドレール20に摺動可能に係合している。キャリッジ21は、ガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0022】
図5に示すインクヘッド22は、媒体搬送装置50に支持された媒体5(図2参照)に向かってインクを吐出する。ここでは、インクヘッド22は、下方に向かってインクを吐出する。図5に示すように、インクヘッド22は、キャリッジ21に設けられている。ここでは、インクヘッド22の下面が露出するように、キャリッジ21に取り付け固定されている。インクヘッド22は、キャリッジ21を介してガイドレール20に摺動自在に設けられている。インクヘッド22は、キャリッジ21と共にガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0023】
なお、インクヘッド22の数は特に限定されない。本実施形態では、図5に示すように、インクヘッド22の数は4つである。4つのインクヘッド22は、主走査方向Yに並んで配置されている。
【0024】
本実施形態では、インクヘッド22の下面には、複数のノズル23が形成されたノズル面24が設けられている。1つのインクヘッド22において、複数のノズル23が副走査方向Xに並んで配置されている。ノズル23は下方に開口しており、ノズル23から下方に向かってインクが吐出される。
【0025】
各インクヘッド22から異なる色のインクが吐出される。各インクヘッド22から吐出されるインクの色は、特に限定されないが、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどのプロセスカラーインク、および、クリアインク、ホワイトインクなどの特色インクのうちの何れかの色である。本実施形態では、各インクヘッド22から吐出されるインクは、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、および、ブラックインクの何れかである。
【0026】
図6に示す移動機構25は、キャリッジ21と共にインクヘッド22を主走査方向Yに移動させる機構である。移動機構25は、媒体搬送装置50に支持された媒体5(図2参照)に対してインクヘッド22を相対的に主走査方向Yに移動させる。移動機構25の構成は特に限定されない。本実施形態では、図示は省略するが、移動機構25は、ガイドレール20の左右の端部に配置された左右のプーリと、左右のプーリに掛け渡され、キャリッジ21が取り付け固定されたベルトと、左右のプーリの何れか一方に接続されたスキャンモータとを有している。スキャンモータが駆動することでプーリが回転し、ベルトが走行する。このことで、キャリッジ21およびインクヘッド22は、ガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動する。
【0027】
本実施形態では、図6に示すように、インク吐出装置10は、制御装置30を備えている。制御装置30は、インクヘッド22からのインクの吐出、および、インクヘッド22の主走査方向Yへの移動を制御することで、媒体5への印刷を制御する。制御装置30の構成は特に限定されない。例えば制御装置30は、マイクロコンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという。)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置30は、図2に示す本体11の内部に設けられている。ただし、制御装置30は本体11の内部に設けられていなくてもよい。例えば制御装置30は、本体11の外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置30は、有線または無線を介して本体11の基板(図示せず)などと通信可能に接続されている。
【0028】
図6に示すように、制御装置30は、操作パネル13の表示部14および入力キー15と通信可能に接続されている。制御装置30は、インクヘッド22に通信可能に接続されており、インクヘッド22からのインクの吐出のタイミングや吐出量を制御する。制御装置30は、移動機構25に通信可能に接続されている。制御装置30は、移動機構25を制御することで、キャリッジ21およびインクヘッド22の主走査方向Yへの移動を制御する。
【0029】
次に、媒体搬送装置50について説明する。図3に示すように、媒体搬送装置50は、媒体5を支持すると共に、媒体搬送装置50が支持している媒体5と、インク吐出装置10のインクヘッド22(図5参照)との相対的な副走査方向Xの位置を変更する装置である。なお、媒体搬送装置50の構成は特に限定されない。本実施形態では、図4に示すように、媒体搬送装置50は、台51と、テーブル55と、搬送機構60とを備えている。
【0030】
台51は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がったものである。台51は、インク吐出装置10よりも下方に配置されており、平面視において一部がインク吐出装置10と重なるように配置されている。台51の上面には、テーブル55が支持される。台51には、台51から下方に延びた脚52が設けられている。脚52は、台51を支持するように構成されている。
【0031】
テーブル55は、媒体5を支持する。媒体5は、テーブル55の上面に載置される。テーブル55に支持された媒体5に対して、インク吐出装置10によって印刷が行われる。ここでは、図3に示すように、テーブル55は主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がっており、図2に示すように、台51によって支持されている。テーブル55は、インク吐出装置10の左側部材12aと右側部材12bとの間に配置され、中央部材12cの下方に配置される。また、テーブル55は、ガイドレール20の下方に配置され、かつ、キャリッジ21およびインクヘッド22(図5参照)の下方に配置されている。テーブル55は、支持台の一例である。
【0032】
搬送機構60は、テーブル55に支持された媒体5を、インクヘッド22(言い換えると、キャリッジ21)に対して相対的に副走査方向Xに搬送する機構である。本実施形態では、搬送機構60は、インクヘッド22、すなわちインク吐出装置10を副走査方向Xに搬送することで、テーブル55に支持された媒体5をインクヘッド22に対して相対的に副走査方向Xに搬送する。なお、搬送機構60の構成は特に限定されない。例えば搬送機構60は、図4に示すように、Xレール61と、搬送部材62と、フィードモータ63とを有している。
【0033】
Xレール61は、副走査方向Xに延びている。ここでは、Xレール61は、台51の内部に配置され、テーブル55の下方に配置されている。本実施形態では、図2に示すように、Xレール61は、正面視において台51の中央部分に配置されている。
【0034】
図4に示すように、搬送部材62は、Xレール61に摺動可能に係合している。搬送部材62は、Xレール61に沿って副走査方向Xに移動可能に構成されている。
【0035】
図2に示すように、搬送部材62は、ガイドレール20、キャリッジ21およびインクヘッド22(図5参照)を支持する。ここでは、搬送部材62は、インク吐出装置10の本体11を支持し、本体11を介してガイドレール20、キャリッジ21およびインクヘッド22を支持している。詳しくは、搬送部材62の左部62Lは、テーブル55よりも左方に突出し、搬送部材62の右部62Rは、テーブル55よりも右方に突出している。搬送部材62の左部62Lは、インク吐出装置10の左側部材12aを支持し、搬送部材62の右部62Rは、インク吐出装置10の右側部材12bを支持する。
【0036】
本実施形態では、搬送部材62の左部62Lと右部62Rとの間に中央部62Cが配置されている。中央部62Cは、主走査方向Yに延びており、Xレール61に係合する。ここでは、図4に示すように、台51の側面には、副走査方向Xに延びたガイド孔51aが形成されている。搬送部材62は、ガイド孔51aに貫通しており、ガイド孔51aに沿って副走査方向Xに移動可能である。
【0037】
フィードモータ63は、搬送部材62に接続されている。フィードモータ63が駆動することで、搬送部材62は、Xレール61に沿って副走査方向Xに搬送される。搬送部材62の搬送に伴い、インク吐出装置10の本体11、ガイドレール20、キャリッジ21およびインクヘッド22も、Xレール61に沿って副走査方向Xに搬送される。このことによって、テーブル55に支持された媒体5に対するインクヘッド22における副走査方向Xの位置が変更される。
【0038】
本明細書において、媒体搬送装置50の搬送機構60によって、インクヘッド22が副走査方向Xに搬送されて、インクヘッド22に対する媒体5の相対的な副走査方向Xの位置が変更されることを、「媒体5の相対的な搬送」という。
【0039】
本実施形態では、図6に示すように、媒体搬送装置50は、搬送制御装置70と、中間制御装置80とを備えている。搬送制御装置70は、インク吐出装置10のインクヘッド22を副走査方向Xへ搬送する制御をすることで、インクヘッド22と、テーブル55に支持された媒体5との相対的な副走査方向Xの位置の変更を制御する。搬送制御装置70の構成は特に限定されないが、例えば制御装置30と同様に、搬送制御装置70は、マイクロコンピュータであり、CPUと、ROMと、RAMなどを備えている。
【0040】
本実施形態では、搬送制御装置70は、搬送機構60、詳しくはフィードモータ63に通信可能に接続されている。搬送制御装置70は、搬送機構60を制御することで、テーブル55に支持された媒体5に対するインクヘッド22の相対的な副走査方向Xの位置の変更を制御する。
【0041】
中間制御装置80は、例えばプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller(PLC))である。中間制御装置80は、インク吐出装置10の制御装置30と、搬送制御装置70とを繋げる装置であり、制御装置30と搬送制御装置70との相互の制御のタイミングを調整する装置である。中間制御装置80は、制御装置30および搬送制御装置70と通信可能に制御されている。中間制御装置80は、制御装置30と信号の送受信を行う。そして、中間制御装置80は、制御装置30から送信された信号の内容に応じて、搬送制御装置70に、媒体5の相対的な搬送の制御を指示する。
【0042】
ところで、本実施形態に係る印刷システム1では、印刷対象となる印刷データDT1(図6参照)に基づいて媒体5に対して印刷が行われる。ここで、印刷データDT1とは、媒体5に実際に印刷される印刷画像に対してRIP(Raster Image Processor)処理することで得られるラスターデータまたはビットマップデータのことである。印刷画像は、写真などの画像の他に、図形、記号、文字など、または、写真、画像、図形、記号および文字などを組み合わせたものをいう。この印刷データDT1は、RIP処理が行われるRIPソフトウェアがインストールされたコンピュータなどの端末によって作成される。印刷の際、上記端末からインク吐出装置10の制御装置30に印刷データDT1が送信されることで、印刷が開始される。
【0043】
本実施形態では、印刷データDT1には、インクが吐出されるインク領域と、インクが吐出されない非インク領域とが含まれる。インク吐出装置10は、インクヘッド22が主走査方向Yに移動して、媒体搬送装置50のテーブル55に対応した上記インク領域上を通過する際に、インクを吐出する。そのため、インク吐出装置10は、印刷データDT1に基づいて、媒体搬送装置50のテーブル55に対して、どのタイミングでインクを吐出すればよいかを把握することができる。このように、インクヘッド22が主走査方向Yに移動している間に、インクが吐出される領域のことを吐出域AR5(図8参照)という。吐出域AR5は、印刷データDT1に基づいて予め設定された領域であり、テーブル55に対する領域である。
【0044】
本実施形態では、印刷データDT1に基づく印刷は、インク吐出装置10によるインクヘッド22の主走査方向Yへの移動と、媒体搬送装置50による媒体5の副走査方向Xへの相対的な搬送と、を繰り返すことで行われる。図6に示すように、インク吐出装置10の制御装置30は、記憶部31と、印刷制御部33とを備えている。媒体搬送装置50の搬送制御装置70は、搬送制御部73を備えている。
【0045】
上述のように、RIPソフトウェアがインストールされた上記端末によってRIP処理された印刷データDT1は、印刷開始時、制御装置30に送信される。制御装置30が受信した当該印刷データDT1は、記憶部31に記憶される。このように、制御装置30が印刷データDT1を受信した後に、印刷システム1による媒体5への印刷が行われる。
【0046】
ここでは、まず印刷制御部33は、移動機構25を制御することでインクヘッド22を主走査方向Yへ移動させつつ、インクヘッド22からインクを吐出させる。ここでは、印刷制御部33は、インクヘッド22が主走査方向Yに移動して、テーブル55に対する吐出域AR5上を通過するとき、インクヘッド22からインクを吐出させる。これにより、主走査方向Yにおける1ラインの印刷が行われる。ここで、印刷制御部33によって、インクヘッド22が主走査方向Yに移動している間に行われる印刷、すなわち主走査方向Yの1ライン分の印刷のことをスキャン印刷という。印刷制御部33によってスキャン印刷におけるインクの吐出が行われている間、媒体搬送装置50による媒体5の相対的な搬送は行われず、インクヘッド22に対する媒体5の副走査方向Xの位置は固定されている。
【0047】
印刷制御部33による1回のスキャン印刷におけるインクの吐出が終了した後、搬送制御部73は、媒体5の副走査方向Xへの相対的な搬送を行う。ここでは、搬送制御部73は、搬送機構60を制御、詳しくはフィードモータ63の駆動を制御することにより、テーブル55に支持された媒体5をインクヘッド22に対して副走査方向Xに相対的に所定の距離、移動させる。ここでは、搬送制御部73は、インク吐出装置10を副走査方向Xに所定の距離、移動させる。この所定の距離とは、次のスキャン印刷が行われる副走査方向Xの位置までの距離のことであり、予め設定された値である。本実施形態では、搬送制御部73によって媒体5の相対的な搬送が行われている間、インクヘッド22は主走査方向Yに移動せず、スキャン印刷は行われない。
【0048】
このように、媒体5の相対的な搬送が終了した後、印刷制御部33によって次のスキャン印刷に関する制御が行われる。以下、印刷制御部33によるスキャン印刷と、搬送制御部73による媒体5の相対的な搬送を、印刷データDT1の終了まで繰り返す。以上のようにして、媒体5に印刷データDT1を印刷することができる。
【0049】
本実施形態では、インク吐出装置10と、媒体搬送装置50とは別体である。ここで、「別体」とは、インク吐出装置10と媒体搬送装置50とがそれぞれ単体で動作可能であることをいう。インク吐出装置10と媒体搬送装置50とは、異なる制御装置によって制御される。ここでは、制御装置30によってインク吐出装置10におけるインクヘッド22のインクの吐出、および、インクヘッド22の主走査方向Yへの移動を行うことができる。搬送制御装置70によって媒体搬送装置50における媒体5の相対的な搬送を行うことができる。本実施形態では、インク吐出装置10と、媒体搬送装置50とは、物理的に切り離すことが可能なものであり、別々に販売されているものである。また、インク吐出装置10と、媒体搬送装置50とは、異なる企業によって製造され得る。
【0050】
ところで、本実施形態のようにインク吐出装置10と媒体搬送装置50とが別体である場合、スキャン印刷の一部(例えばインクの吐出)と、媒体5の相対的な搬送の一部とが同じタイミングで行われることがあり得る。そのため、本実施形態では、インク吐出装置10と媒体搬送装置50とで相互に信号S(図1参照)を送受信し、スキャン印刷と、媒体5の相対的な搬送とが適切なタイミングで行われるように、当該タイミングを決定する。
【0051】
このように、スキャン印刷のタイミングと、媒体5の相対的な搬送のタイミングとを決定するため、図6に示すように、インク吐出装置10の制御装置30は、受信部40と、送信部41と、判定部42と、終了判定部43と、不許可送信部45と、許可送信部46とを備えている。媒体搬送装置50の中間制御装置80は、信号送信部82と、信号受信部84と、搬送指示部86とを備えている。媒体搬送装置50の搬送制御装置70は、搬送受信部75を備えている。なお、上述した制御装置30の各部、中間制御装置80の各部、および、搬送制御装置70の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置30の各部、中間制御装置80の各部、および、搬送制御装置70の各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0052】
図7は、印刷開始からスキャン印刷開始までにおける制御装置30と中間制御装置80との信号の送受信について示したタイムチャートである。図7では、縦軸は時間を示し、図面の下に向かうにしたがって時間が経過している。次に、印刷システム1に関し、印刷開始からスキャン印刷開始までにおいて、インク吐出装置10の制御装置30と、媒体搬送装置50の中間制御装置80との信号の送受信のタイミングについて、図7を用いて説明する。
【0053】
本実施形態では、印刷データDT1を受信したインク吐出装置10では、すぐに印刷データDT1に基づく印刷は開始されず、印刷待機状態になる。印刷待機状態とは、インク吐出装置10が印刷データDT1を受信し、記憶部31に印刷データDT1が記憶されているが、印刷が開始されていない状態であり、インクヘッド22が停止している状態である。なお、例えばインク吐出装置10が印刷データDT1を受信しておらず、記憶部31に印刷データDT1が記憶されていない、すなわち印刷が開始されていない状態を停止状態という。
【0054】
図7に示すように、インク吐出装置10が印刷待機状態のとき、中間制御装置80の信号送信部82(図6参照)は、インク吐出装置10の制御装置30に状態確認信号S10を送信する。この状態確認信号S10は、インク吐出装置10の状態を確認するための信号である。ここでは、状態確認信号S10として「pstatus」が送信される。
【0055】
制御装置30の図6に示す受信部40は、状態確認信号S10を受信する。ここで、制御装置30の図6に示す送信部41は、インク吐出装置10の状態に応じた信号を中間制御装置80に送信する。ここでは、インク吐出装置10は印刷待機状態であるため、送信部41は、印刷待機信号S12を中間制御装置80に送信する。印刷待機信号S12は、例えば「01==PRINTING」である。なお、詳しい図示は省略するが、インク吐出装置10の状態が上記の停止状態の場合には、送信部41は、停止信号(例えば「01!==PRINTING」)を中間制御装置80に送信する。
【0056】
中間制御装置80の図6に示す信号受信部84は、印刷待機信号S12を受信する。印刷待機信号S12を受信したとき、次に中間制御装置80の信号送信部82は、搬送単位取得信号S20を制御装置30に送信する。ここでは、搬送単位取得信号S20として、「S」が送信される。なお、例えば信号受信部84が上記停止信号を受信したとき、印刷データDT1に基づく印刷を開始できないため、信号送信部82は、再度、状態確認信号S10を送信する。
【0057】
制御装置30の受信部40は、搬送単位取得信号S20を受信する。搬送単位取得信号S20を受信したとき、送信部41は、搬送単位信号S21を中間制御装置80に送信する。ここで、搬送単位信号S21は、媒体搬送装置50による媒体5の相対的な搬送の単位当たりの搬送量を指定するための信号である。この単位当たりの搬送量は、例えば印刷データDT1に基づく印刷画像の解像度などによって決定されるものであり、記憶部31に記憶されている。本実施形態では、例えば搬送単位信号S21として、「S1440」が送信される。この「1440」が単位当たりの搬送量となる。
【0058】
中間制御装置80の信号受信部84は、搬送単位信号S21を受信する。このように、搬送単位信号S21を受信した時点で、印刷システム1において印刷データDT1に基づく印刷が実際に開始される。ここで、信号受信部84が搬送単位信号S21を受信した後、信号送信部82は、印刷開始信号S30を制御装置30に送信する。この印刷開始信号S30は、インク吐出装置10によるスキャン印刷の開始、言い換えると、インクヘッド22の主走査方向Yへの移動の開始を指示するための信号である。ここでは、印刷開始信号S30として「ACK」が送信される。
【0059】
制御装置30の受信部40は、印刷開始信号S30を受信する。印刷開始信号S30を受信したとき、インク吐出装置10の状態が印刷待機状態から印刷状態へ変更される。印刷状態は、スキャン印刷が行われている状態である。このように、印刷開始信号S30を受信した後、印刷制御部33は、インクヘッド22を主走査方向Yに移動させると共に、インクヘッド22が主走査方向Yに移動している間、インクヘッド22からインクを吐出させてスキャン印刷を行う。なお、図7などにおいて、符号T11は、インクヘッド22が主走査方向Yに移動している時間的範囲を示している。
【0060】
次に、インクヘッド22が主走査方向Yに移動している間における、制御装置30と中間制御装置80と搬送制御装置70との信号の送受信について説明する。図8図9は、インクヘッド22が主走査方向Yに移動している間において、制御装置30と中間制御装置80と搬送制御装置70との信号の送受信について示したタイムチャートである。なお、図8および図9において、グラフG1は、時間の経過に伴うインクヘッド22の主走査方向Yへの移動速度を示している。グラフG2は、時間の経過に伴う媒体5の相対的な搬送の速度を示している。
【0061】
本実施形態では、図8に示すように、媒体搬送装置50によって媒体5の相対的な搬送が行われていない間(ここでは、グラフG2において、速度が0の間)、中間制御装置80の信号送信部82は、所定の間隔T1で制御装置30に搬送要求信号S40を送信する。この搬送要求信号S40は、インク吐出装置10の印刷制御部33によってスキャン印刷が行われている間、言い換えるとインクヘッド22が主走査方向Yに移動している間(ここでは範囲T11)に、信号送信部82によって制御装置30に送信される信号である。
【0062】
搬送要求信号S40は、インク吐出装置10に1回のスキャン印刷におけるインクの吐出が終了したか否かを確認するための信号であり、かつ、媒体搬送装置50による媒体5の相対的な搬送を開始してよいか否かを確認するための信号である。なお、搬送要求信号S40の具体的な文字列または数字列は特に限定されないが、ここでは、搬送要求信号S40として、「F」が制御装置30に送信される。
【0063】
このように、信号送信部82によって搬送要求信号S40が制御装置30に送信された後、制御装置30の受信部40は、搬送要求信号S40を受信する。図10は、搬送要求信号S40を受信した後のインク吐出装置10の制御装置30における判定処理を示したフローチャートである。受信部40が搬送要求信号S40を受信した後、図10のフローチャートに沿った判定処理が行われる。
【0064】
図10のステップS101では、制御装置30の受信部40は、搬送要求信号S40を受信する。次に、図10のステップS103では、制御装置30の判定部42は、印刷開始信号S30(図8参照)が既に受信されているか否かを判定する。本実施形態では、インク吐出装置10と媒体搬送装置50との信号の送受信が正常に行われている場合、印刷開始信号S30が制御装置30に送信された後に、搬送要求信号S40が連続して制御装置30に送信される。また、印刷開始信号S30が既に受信されていない場合、スキャン印刷が開始されていない状態である。そこで、ここでは、判定部42は、信号の送受信が正常に行われているか否か、および、スキャン印刷が開始されているか否かを判定するために、印刷開始信号S30が既に受信されているか否かを判定する。
【0065】
判定部42によって印刷開始信号S30が既に受信されていないと判定された場合、スキャン印刷は開始されていないため、信号を送信するなどの処理は行われず、図10のフローチャートは終了する。この場合、インク吐出装置10側は、印刷開始信号S30を受信するまで待機することになる。
【0066】
ステップS103において、判定部42によって印刷開始信号S30が既に受信されていると判定された場合、次に図10のステップS105に進む。ステップS105では、判定部42は、媒体搬送装置50による媒体5の相対的な搬送を許可するか否かを判定する。判定部42は、スキャン印刷におけるインクの吐出が行われているか否かを判定する。ここでは、スキャン印刷が行われており、かつ、インクヘッド22からインクが吐出されているときには、媒体5の相対的な搬送が行われないように、当該判定を行う。
【0067】
本実施形態では、図8に示すように、印刷制御部33によるスキャン印刷において、インクヘッド22が主走査方向Yに移動する速度(言い換えると、加速度)に応じて、加速域AR1と、定速域AR2と、減速域AR3とに区分けされる。ここで、加速域AR1とは、インクヘッド22が加速している範囲であり、スキャン印刷の開始から定速域AR2の開始までの範囲をいう。定速域AR2とは、インクヘッド22の移動速度が一定のときの範囲である。定速域AR2は、加速域AR1と減速域AR3との間の範囲である。
【0068】
定速域AR2内の少なくとも一部の領域では、インクヘッド22からインクが吐出されている。そのため、定速域AR2内に、インクが吐出される吐出域AR5が含まれる。なお、定速域AR2に対する吐出域AR5の位置は、印刷データDT1に基づいて決定される。吐出域AR5は、定速域AR2と同じ領域、または、定速域AR2よりも狭い領域である。吐出域AR5の開始のタイミングは、定速域AR2の開始のタイミングと同じことがあり得るし、異なることもあり得る。また、吐出域AR5の終了のタイミングは、定速域AR2の終了のタイミングと同じことがあり得るし、異なることもあり得る。そのため、インク吐出装置10の設定や、印刷データDT1によっては、吐出域AR5が終了するタイミングが、定速域AR2の終了のタイミングよりも随分早いことがあり得る。
【0069】
減速域AR3は、インクヘッド22が減速している範囲であり、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了した後の範囲である。減速域AR3は、定速域AR2の終了からインクヘッド22の移動が終了するまでの範囲である。
【0070】
本実施形態では、インクヘッド22が主走査方向Yに移動している時間的範囲T11は、加速域AR1、定速域AR2、および、減速域AR3を含む。符号T12は、スキャン印刷の開始から終了までを示す時間的範囲を示している。本実施形態では、スキャン印刷は、時間的範囲で示したとき、インクヘッド22の加速域AR1および定速域AR2のときに行われる。
【0071】
なお、本実施形態では、スキャン印刷が行われていないときは、インクヘッド22は停止している。このように、インクヘッド22が停止している範囲を、停止域AR4という。ここでは、加速域AR1は、停止域AR4と加速域AR1との間の範囲である。減速域AR3は、定速域AR2と停止域AR4との間の範囲である。
【0072】
本実施形態では、スキャン印刷のときにインクヘッド22からインクが吐出されるのは、定速域AR2のうちの吐出域AR5のときであり、定速域AR2の後の減速域AR3および停止域AR4のときには、スキャン印刷のときにおけるインクヘッド22の吐出は終了していると考えられる。本実施形態では、図10のステップS105では、判定部42は、インクヘッドがテーブル55に対する吐出域AR5上を通過したか否かを判定する。すなわち、判定部42は、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了したか否かを判定する。なお、図8では、インクヘッド22が吐出域AR5を通過した後、インクヘッド22が減速しているときに、中間制御装置80の信号送信部82が搬送要求信号S40を送信した状態(ここでは、4回目の搬送要求信号S40の送信)が示されている。図9では、インクヘッド22が吐出域AR5を通過した後、インクヘッド22が停止しているときに、信号送信部82が搬送要求信号S40を送信した状態(ここでは、4回目の搬送要求信号S40の送信)が示されている。
【0073】
図10のステップS105において、判定部42によってインクヘッド22が吐出域AR5を通過したと判定されたとき、次に、図10のステップS107に進む。ステップS107では、制御装置30の図6に示す終了判定部43は、印刷制御部33による印刷データDT1に対する印刷が終了したか否かを判定する。本実施形態では、印刷データDT1に対する印刷が終了した後であっても、信号送信部82から制御装置30に搬送要求信号S40が送信されることがあり得る。このように、印刷データDT1に対する印刷が終了した後では、媒体5の相対的な搬送は行われなくてもよい。そのため、ステップS107における終了判定部43による判定が行われる。
【0074】
ステップS107において、終了判定部43によって印刷データDT1に対する印刷が終了していないと判定された場合、次に図10のステップS109に進む。ステップS109では、制御装置30の図6に示す許可送信部46は、搬送許可信号S41を中間制御装置80に送信する。なお、図8および図9では、4回目の搬送要求信号S40に対する応答信号として、搬送許可信号S41が制御装置30から中間制御装置80に送信されている。
【0075】
搬送許可信号S41は、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了し、媒体搬送装置50による媒体5の相対的な搬送を指示する信号である。ここでは、搬送許可信号S41には、媒体5の相対的な搬送量が含まれる。本実施形態では、上記搬送量は、媒体5に対するインクヘッド22の副走査方向Xの搬送の量となる。上記搬送量は、上述の搬送単位信号S21(図7参照)に含まれた単位当たりの搬送量に基づいて設定されている。ここでは、搬送許可信号S41として、例えば「F10」が送信される。この「F」の後に示された数字(ここでは、10)が媒体5の相対的な搬送量となる。
【0076】
図8および図9に示すように、本実施形態では、中間制御装置80の信号受信部84(図6参照)は、搬送許可信号S41を受信する。信号受信部84によって搬送許可信号S41が受信されることで、中間制御装置80は、媒体搬送装置50による媒体5の相対的な搬送を開始してもよいと判断する。このとき、中間制御装置80の図6に示す搬送指示部86は、搬送指示信号S45を搬送制御装置70に送信する。搬送制御装置70の図6に示す搬送受信部75は、搬送指示信号S45を受信する。搬送指示信号S45を受信した搬送制御装置70では、搬送制御部73は、媒体5の副走査方向Xへの相対的な搬送を行う。ここでは、搬送制御部73は、搬送機構60を制御することで、テーブル55に支持された媒体5を、インクヘッド22に対して副走査方向Xに相対的に所定の距離、移動させる。
【0077】
なお、媒体5の相対的な搬送が終了すると、中間制御装置80の信号送信部82は、制御装置30に印刷開始信号S30(図8参照)を送信する。その後、信号送信部82は、搬送制御部73によってテーブル55に支持された媒体5がインクヘッド22に対して相対的に搬送されていないとき、所定の間隔T1で搬送要求信号S40を制御装置30に送信し続ける。
【0078】
一方、図10のステップS105において、判定部42によってインクヘッド22が吐出域AR5を通過していないと判定、すなわちインクヘッド22が加速域AR1または吐出域AR5を通過中であり、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了していないと判定されたとき、図10のステップS111に進む。また、図10のステップS107において、終了判定部43によって印刷データDT1に対する印刷が終了したと判定された場合、ステップS111に進む。ステップS111では、制御装置30の図6に示す不許可送信部45は、搬送不許可信号S42を中間制御装置80に送信する。なお、図8および図9では、1~3回目の搬送要求信号S40に対する応答信号として、搬送不許可信号S42が制御装置30から中間制御装置80に送信されている。
【0079】
搬送不許可信号S42は、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了していないために、媒体搬送装置50による媒体5の相対的な搬送を許可しない信号である。本実施形態では、搬送不許可信号S42として、例えば「ACK」が送信される。
【0080】
本実施形態では、図8および図9に示すように、中間制御装置80の信号受信部84(図6参照)は、搬送不許可信号S42を受信する。信号受信部84によって搬送不許可信号S42が受信されたとき、中間制御装置80は、インク吐出装置10によるスキャン印刷のインクの吐出が終了していないため、媒体5の相対的な搬送を行わないと判断する。このとき、中間制御装置80から搬送制御装置70に対して信号などは送信されず、信号送信部82は、制御装置30に搬送要求信号S40を再度送信する。
【0081】
ところで、本実施形態では、印刷データDT1に基づく印刷が終了したとき、インク吐出装置10側では、印刷データDT1にこれから印刷するデータが残っているか否かを判定し、印刷データDT1にこれから印刷するデータが残っていない場合には、印刷データDT1に基づく印刷が終了したと判断される。しかしながら、媒体搬送装置50側では、インク吐出装置10が印刷データDT1のどのデータに関する印刷を行っているかは分からないため、印刷データDT1に基づいて、印刷データDT1の印刷が終了したか否かを判断することができない。
【0082】
図11は、媒体搬送装置50が印刷データDT1に基づく印刷が終了したことを判断する手順を示したフローチャートである。次に、媒体搬送装置50が印刷データDT1に基づく印刷が終了したことを判断する手順について、図11のフローチャートに沿って説明する。
【0083】
本実施形態では、印刷データDT1に基づく印刷が終了した場合であっても、媒体搬送装置50における媒体5の相対的な搬送が終了した後、信号送信部82から制御装置30に搬送要求信号S40が送信される。例えば図11のステップS201では、中間制御装置80の信号送信部82は、制御装置30に搬送要求信号S40を送信する。このとき、制御装置30側では、印刷データDT1に基づく印刷が終了しているとき、この搬送要求信号S40の応答信号として、終了信号S15が送信部41から中間制御装置80に送信される。そのため、図11のステップS203では、中間制御装置80の信号受信部84は、終了信号S15を受信する。本実施形態では、信号受信部84は、終了信号S15として例えば「E」を受信する。
【0084】
次に、ステップS205では、信号送信部82は、インク吐出装置10の制御装置30に状態確認信号S10を送信する。
【0085】
ここで、印刷データDT1に基づく印刷が終了したとき、インク吐出装置10の状態は停止状態になる。そのため、状態確認信号S10を受信した制御装置30では、送信部41が停止信号S13を送信する。そのため、図11のステップS207では、中間制御装置80の信号受信部84は、停止信号S13を受信する。このように、中間制御装置80側で停止信号S13を受信することで、図11のステップS209に示すように、印刷データDT1に基づく印刷が終了したと判断される。
【0086】
以上、本実施形態では、図1に示すように、印刷システム1は、インク吐出装置10と、インク吐出装置10と通信可能に接続された媒体搬送装置50と、を備えている。図2および図6に示すように、インク吐出装置10は、主走査方向Yに延びたガイドレール20と、ガイドレール20に対して摺動自在に設けられ、インクを吐出するインクヘッド22(図5参照)と、インクヘッド22を主走査方向Yに移動させる移動機構25と、制御装置30と、を備えている。制御装置30は、印刷制御部33と、受信部40と、判定部42と、不許可送信部45と、許可送信部46とを備えている。印刷制御部33は、インクヘッド22を主走査方向Yに移動させると共に、インクヘッド22が主走査方向Yに移動している間、インクヘッド22からインクを吐出させるスキャン印刷を行う。図10のステップS101に示すように、受信部40は、媒体5を支持し、かつ、インクヘッド22に対して副走査方向Xに媒体5を相対的に搬送する媒体搬送装置50から、搬送要求信号S40を受信する。判定部42は、図10のステップS105に示すように、受信部40によって搬送要求信号S40が受信されたとき、印刷制御部33によるスキャン印刷におけるインクの吐出が終了したか否かを判定する。図10のステップS111に示すように、不許可送信部45は、判定部42によってスキャン印刷におけるインクの吐出が終了していないと判定されたとき、媒体5をインクヘッド22に対して相対的に搬送することを許可しない搬送不許可信号S42を媒体搬送装置50に送信する。図10のステップS109に示すように、許可送信部46は、判定部42によってスキャン印刷におけるインクの吐出が終了したと判定されたとき、媒体5をインクヘッド22に対して相対的に搬送することを許可する搬送許可信号S41を媒体搬送装置50に送信する。
【0087】
図4に示すように、媒体搬送装置50は、媒体5を支持するテーブル55と、テーブル55に支持された媒体5を、インクヘッド22に対して相対的に副走査方向Xに移動させる搬送機構60とを備えている。
【0088】
本実施形態では、図8および図9に示すように、媒体搬送装置50から搬送要求信号S40を受信したときに、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了している場合、搬送許可信号S41を媒体搬送装置50に送信し、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了していない場合には、搬送不許可信号S42を媒体搬送装置50に送信する。このことで、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了したタイミングで、媒体5の相対的な搬送が開始される。よって、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了しておらず、インクヘッド22からインクが吐出されている途中で、媒体5の相対的な搬送が開始されないため、印刷のズレが生じ難く、印刷の品質が低下することを抑制することができる。
【0089】
本実施形態では、中間制御装置80は、媒体5の相対的な搬送に関連した制御以外の他の制御することがあり得る。このように、他の制御を行っている間に、制御装置30から搬送許可信号S41が唐突に送信されると、搬送許可信号S41を受信し損なうおそれがあり得る。この場合、媒体5の相対的な搬送が行われないため、印刷データDT1を適切に印刷することができず、エラーが発生する。しかしながら、本実施形態では、中間制御装置80から搬送要求信号S40が送信されるタイミングで、中間制御装置80は、搬送許可信号S41または搬送不許可信号S42を受信するまで、待ち状態となる。そのため、搬送許可信号S41または搬送不許可信号S42を確実に受信することができるため、搬送許可信号S41または搬送不許可信号S42を受信し損なうことで生じるエラーを発生し難くすることができる。
【0090】
本実施形態では、判定部42は、図10のステップS105に示すように、印刷制御部33によって移動するインクヘッド22が、インクが吐出される吐出域AR5であって、印刷対象の印刷データDT1に基づいて予め設定された吐出域AR5を通過したか否かを判定する。不許可送信部45は、図10のステップS111に示すように、判定部42によってインクヘッド22が吐出域AR5を通過していないと判定されたとき、搬送不許可信号S42を送信する。許可送信部46は、図10のステップS109に示すように、判定部42によってインクヘッド22が吐出域AR5を通過したと判定されたとき、搬送許可信号S41を送信する。このように、スキャン印刷中において、インクヘッド22が吐出域AR5を通過したか否かを判定することで、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了したか否かをより正確に判定することができる。
【0091】
本実施形態では、許可送信部46は、媒体5の相対的な搬送量を含む搬送許可信号S41を媒体搬送装置50に送信する。このことによって、搬送許可信号S41に、媒体5の相対的な搬送量を含ませることで、中間制御装置80側は、搬送許可信号S41と共に、媒体5の相対的な搬送量を同時に取得することができる。
【0092】
本実施形態では、印刷制御部33は、印刷対象の印刷データDT1に基づいて印刷を行うように構成されている。制御装置30は、図10のステップS107に示すように、受信部40によって搬送要求信号S40が受信されたとき、印刷制御部33による印刷データDT1に基づく印刷が終了したか否かを判定する終了判定部43(図6参照)を備えている。図10のステップS111では、不許可送信部45は、終了判定部43によって印刷データDT1に基づく印刷が終了したと判定されたとき、搬送不許可信号S42を媒体搬送装置50に送信する。このように、印刷データDT1に基づく印刷が終了した後において、消費電力の観点から、媒体5の相対的な搬送は、行われない方が好ましい。よって、印刷データDT1に基づく印刷が終了しているときには、搬送不許可信号S42を媒体搬送装置50に送信することで、消費電力を抑えることができる。
【0093】
本実施形態では、図8および図9に示すように、制御装置30の受信部40は、媒体搬送装置50から印刷開始信号S30を受信する。印刷制御部33は、受信部40によって印刷開始信号S30が受信されたとき、インクヘッド22を主走査方向Yに移動させると共に、インクヘッド22が主走査方向Yに移動している間、インクヘッド22からインクを吐出させるスキャン印刷を開始する。この印刷開始信号S30は、媒体搬送装置50による媒体5の相対的な搬送が終了した後に、媒体搬送装置50から送信される信号である。よって、媒体5の相対的な搬送が終了した後に、次のスキャン印刷が開始されるため、媒体5の相対的な搬送の途中にスキャン印刷が開始されることで生じる印刷のズレを発生し難くすることができる。よって、印刷の品質の低下をより抑制することができる。
【0094】
本実施形態では、図6に示すように、媒体搬送装置50は、搬送機構60を制御する搬送制御装置70と、インク吐出装置10の制御装置30、および、搬送制御装置70と通信可能に接続された中間制御装置80と、を備えている。中間制御装置80は、信号送信部82と、信号受信部84とを備えている。図8に示すように、信号送信部82は、制御装置30に搬送要求信号S40を送信する。信号受信部84は、制御装置30の不許可送信部45によって送信された搬送不許可信号S42、および、許可送信部46によって送信された搬送許可信号S41を受信する。搬送制御装置70は、信号受信部84によって搬送許可信号S41が受信されたとき、テーブル55に支持された媒体5をインクヘッド22に対して副走査方向Xに相対的に所定の距離、移動させる搬送制御部73(図6参照)を備えている。このことによって、信号受信部84が搬送許可信号S41を受信したタイミングで、搬送制御部73による媒体5の相対的な搬送を開始することで、媒体5の相対的な搬送を、スキャン印刷におけるインクの吐出が終了したタイミングでより確実に行うことができる。
【0095】
本実施形態では、信号送信部82は、搬送制御部73によって、テーブル55に支持された媒体5がインクヘッド22に対して副走査方向Xに相対的に搬送されていないとき、搬送要求信号S40を送信する。媒体5の相対的な搬送が行われているときには、次の媒体5の相対的な搬送は行われない。そのため、媒体5の相対的な搬送が行われているときに、搬送要求信号S40は送信されない方が好ましい。このように、媒体5の相対的な搬送が行われていないときのみに、搬送要求信号S40を送信することで、無駄な信号の送信を抑えることができる。
【0096】
本実施形態では、信号送信部82は、所定の時間の間隔T1で、搬送要求信号S40を送信し続ける。このことで、例えば信号受信部84が、搬送許可信号S41を受信し損なった場合であっても、次の搬送要求信号S40に対する搬送許可信号S41を受信することで、媒体5の相対的な搬送を開始することができる。よって、信号受信部84が搬送許可信号S41を受信し損なった場合であっても、媒体5の相対的な搬送が開始されないことによるエラーの発生を抑制することができる。
【0097】
本実施形態では、インク吐出装置10と、媒体搬送装置50とは、別体で構成されている。このように、インク吐出装置10と、媒体搬送装置50とが別体であっても、搬送要求信号S40、搬送許可信号S41、および、搬送不許可信号S42を送受信し合うことで、スキャン印刷のタイミングと、媒体5の相対的な搬送のタイミングとを調整することができる。
【0098】
なお、本実施形態では、媒体搬送装置50の搬送機構60は、テーブル55に対してインク吐出装置10、言い換えるとガイドレール20、キャリッジ21およびインクヘッド22を副走査方向Xに搬送することで、インクヘッド22に対して媒体5を相対的に副走査方向Xに搬送するように構成されていた。しかしながら、搬送機構60は、インクヘッド22に対してテーブル55および媒体5を副走査方向Xに搬送するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 印刷システム
10 インク吐出装置
20 ガイドレール
22 インクヘッド
25 移動機構
30 制御装置
33 印刷制御部
40 受信部
42 判定部
43 終了判定部
45 不許可送信部
46 許可送信部
50 媒体搬送装置
55 テーブル(支持台)
60 搬送機構
70 搬送制御装置
73 搬送制御部
80 中間制御装置
82 信号送信部
84 信号受信部
図1
図2
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