(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ヒートパイプ恒温槽
(51)【国際特許分類】
F25B 21/02 20060101AFI20240409BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F25B21/02 D
F25B21/02 K
F28D15/02 101L
F28D15/02 101A
(21)【出願番号】P 2020139328
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516319500
【氏名又は名称】株式会社ロータス・サーマル・ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚英
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 準也
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕太
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 翔平
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩和
(72)【発明者】
【氏名】井手 拓哉
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-203211(JP,A)
【文献】登録実用新案第3129409(JP,U)
【文献】国際公開第2019/216426(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2578741(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-49/04
F24F 1/00-13/32
F28D 1/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒温槽内と恒温槽外とに亘って設けられ、冷媒が循環する第1及び第2のヒートパイプと、
前記恒温槽外において前記第1及び第2のヒートパイプの熱を放熱する放熱部と、
前記恒温槽内に設けられ、前記第1及び第2のヒートパイプに前記恒温槽内の熱を伝達する熱交換部と、
前記恒温槽外であって、前記熱交換部と前記放熱部との間に設けられ、前記第1及び第2のヒートパイプの熱をペルチェ素子を用いて吸熱する吸熱部と、
前記放熱部と前記吸熱部とに亘って設けられ、前記ペルチェ素子から放出された熱を前記放熱部へと伝達する第3のヒートパイプと、を備え、
前記第3のヒートパイプは、前記第1及び第2のヒートパイプの間に配置されており、
前記ペルチェ素子は、前記吸熱部において、前記第3のヒートパイプと前記第1及び第2のヒートパイプとの間の各々に設けられた一対のペルチェ素子であり、
前記一対のペルチェ素子の吸熱面の各々は、前記第1及び第2のヒートパイプと接するように設けられ、
前記一対のペルチェ素子の放熱面の各々は、前記第3のヒートパイプと接するように設けられ、
前記一対のペルチェ素子の放熱面から放出された熱は、前記第3のヒートパイプを介して前記放熱部へと伝達される、
ヒートパイプ恒温槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒートパイプ恒温槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートパイプにペルチェ素子を用いて冷却性能を向上させる技術が知られている。ペルチェ素子は、素子自体の放熱量が大きいため、ペルチェ素子を冷却する必要がある。例えば、特許文献1には、送風ファンを用いてペルチェ素子を冷却する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたような送風ファンによるペルチェ素子の冷却では不十分な場合があった。本発明は、このような不十分な場合に備えてなされたものであり、ペルチェ素子の冷却効率に優れたヒートパイプ恒温槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るヒートパイプ恒温槽は、
恒温槽内と恒温槽外とに亘って設けられ、冷媒が循環する第1及び第2のヒートパイプと、
前記恒温槽外において前記第1及び第2のヒートパイプの熱を放熱する放熱部と、
前記恒温槽内に設けられ、前記第1及び第2のヒートパイプに前記恒温槽内の熱を伝達する熱交換部と、
前記恒温槽外であって、前記熱交換部と前記放熱部との間に設けられ、前記第1及び第2のヒートパイプの熱をペルチェ素子を用いて吸熱する吸熱部と、
前記放熱部と前記吸熱部とに亘って設けられ、前記ペルチェ素子から放出された熱を前記放熱部へと伝達する第3のヒートパイプと、を備え、
前記第3のヒートパイプは、前記第1及び第2のヒートパイプの間に配置されており、
前記ペルチェ素子は、前記吸熱部において、前記第3のヒートパイプと前記第1及び第2のヒートパイプとの間の各々に設けられた一対のペルチェ素子であり、
前記一対のペルチェ素子の吸熱面の各々は、前記第1及び第2のヒートパイプと接するように設けられ、
前記一対のペルチェ素子の放熱面の各々は、前記第3のヒートパイプと接するように設けられ、
前記一対のペルチェ素子の放熱面から放出された熱は、前記第3のヒートパイプを介して前記放熱部へと伝達されるものである。
【0006】
本発明に係るヒートパイプ恒温槽では、第3のヒートパイプが、第1及び第2のヒートパイプの間に配置されており、吸熱部において、第3のヒートパイプと第1及び第2のヒートパイプとの間の各々に一対のペルチェ素子が配置されている。その一対のペルチェ素子の放熱面の各々は、第3のヒートパイプと接するように設けられ、一対のペルチェ素子の放熱面から放出された熱は、第3のヒートパイプを介して放熱部へと伝達される。そのため、ペルチェ素子の冷却効率に優れている。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ペルチェ素子の冷却効率に優れたヒートパイプ恒温槽を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態にかかるヒートパイプ恒温槽の斜視図である。
【
図2】第1の実施形態にかかるヒートパイプ恒温槽の構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0010】
(第1の実施形態)
以下、
図1、
図2を参照して本発明の第1の実施形態に係るヒートパイプ恒温槽について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るヒートパイプ恒温槽の斜視図である。
図2は、第1の実施形態に係るヒートパイプ恒温槽の構成を示す模式断面図である。なお、当然のことながら、
図1、及び
図2に示した右手系xyz直交座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、z軸正方向が鉛直上向き、xy平面が水平面であり、図面間で共通である。
【0011】
図1に示すように、第1の実施形態に係るヒートパイプ恒温槽1は、ヒートパイプ11-13、放熱部20、吸熱部30、及び熱交換部40を備えている。ヒートパイプ恒温槽1は、例えば一定温度下での試験や分析などに使用される。
【0012】
ヒートパイプ11(第1のヒートパイプ)、ヒートパイプ12(第2のヒートパイプ)は、内部を冷媒が循環する銅管などの金属パイプである。ただし、目的の恒温槽温度、省エネルギー性能、許容寸法に応じ、ヒートパイプ11、12を構成する材料は、アルミニウム、鉄、ステンレスなど他の熱伝導性の高い金属でもよい。
図1に示すように、ヒートパイプ11、12は、恒温槽内に設けられた熱交換部40と恒温槽外に設けられた放熱部20及び吸熱部30とを循環するループ構造を有している。熱交換部40において温められた冷媒が、放熱部20、吸熱部30において順次冷却される。ヒートパイプ11、12は、全周に亘り略平行に設けられている。
【0013】
以下に、
図1に示したヒートパイプ11、12の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、恒温槽内において、ヒートパイプ11、12は、x軸方向に平行に並んで分岐されるとともにy軸方向に延設され、熱交換部40の内部を貫通している。
熱交換部40のy軸負方向側端部に沿ってx軸方向に沿って延設されたヒートパイプ11、12は、x軸負方向側端部でL字状に折れ曲がり、放熱部20及び吸熱部30のy軸負方向側端面に沿って、z軸正方向に延設されている。ここで、熱交換部40のy軸負方向側端部に沿ってx軸方向に沿って延設されたヒートパイプ11、12のx軸正方向側端部は閉じられている。
さらに、ヒートパイプ11、12は、z軸正方向側端部でL字状に折れ曲がり、放熱部20のz軸正方向側側面に沿ってy軸正方向に延設されている。
【0014】
他方、
図1に示すように、熱交換部40のy軸正方向側端部に沿ってx軸方向に沿って延設されたヒートパイプ11、12は、x軸負方向側端部でU字状に折れ曲がり、吸熱部30のz軸負方向側側面に沿ってy軸負方向に延設されている。ここで、熱交換部40のy軸正方向側端部に沿ってx軸方向に沿って延設されたヒートパイプ11、12のx軸正方向側端部は閉じられている。
放熱部20のz軸正方向側側面及び吸熱部30のz軸負方向側側面に沿ってy軸方向に延設されたヒートパイプ11、12は、y軸方向に平行に並んで分岐されるとともにz軸方向に延設され、放熱部20及び吸熱部30の内部を貫通している。ここで、放熱部20のz軸正方向側側面に沿ってy軸方向に沿って延設されたヒートパイプ11、12のy軸正方向側端部は閉じられている。また、吸熱部30のz軸負方向側側面に沿ってy軸方向に沿って延設されたヒートパイプ11、12のy軸負方向側端部は閉じられている。
【0015】
ヒートパイプ13(第3のヒートパイプ)も、ヒートパイプ11、12と同様に、内部を冷媒が循環する銅管などの金属パイプである。放熱部20のz軸正方向側側面及び吸熱部30のz軸負方向側側面に沿ってy軸方向に延設されたヒートパイプ13は、y軸方向に平行に並んで分岐されるとともにz軸方向に延設され、放熱部20及び吸熱部30の内部を貫通している。
【0016】
図2に示すように、ヒートパイプ13は、放熱部20と吸熱部30とに亘ってz軸方向に延設され、ヒートパイプ11、12の間に配置されている。なお、
図2は
図1を特定の平面で切断した断面ではなく、放熱部20及び吸熱部30の内部の構造を示すための模式的な断面図である。ここで、
図1に示すように、放熱部20のz軸正方向側側面に沿ってy軸方向に沿って延設されたヒートパイプ13のy軸正方向側端部及びy軸負方向側端部は閉じられている。また、吸熱部30のz軸負方向側側面に沿ってy軸方向に沿って延設されたヒートパイプ13のy軸正方向側端部及びy軸負方向側端部は閉じられている。
【0017】
恒温槽外の吸熱部30において、ペルチェ素子50は、ヒートパイプ11とヒートパイプ13との間、ヒートパイプ12とヒートパイプ13との間の各々に配置されている。ヒートパイプ13は、吸熱部30でペルチェ素子50から放出された熱を放熱部20へと伝達するために用いられる。換言すると、ヒートパイプ13はペルチェ素子50の冷却に用いられる。ヒートパイプ11-13の3本のヒートパイプで構成された三層構造を取ることにより、ペルチェ素子50の冷却を効率化することができる。ペルチェ素子50の冷却を効率化するメカニズムは、
図2を用いて後述する。さらに、一対のペルチェ素子50を1つのヒートパイプ13で冷却する構造としたことで、一対のペルチェ素子50を2つのそれぞれ別のヒートパイプで冷却する場合に比べて、ヒートパイプの数を1つ削減でき、小型化することができている。
【0018】
図2に示した例では、ヒートパイプ恒温槽1は、ヒートパイプ11-13の三層構造を有してしている。なお、ヒートパイプ恒温槽1は、ヒートパイプ11、12の外側に新たに別のペルチェ素子と、そのペルチェ素子冷却専用ヒートパイプを別途設けた五層構造を有していてもよい。この場合、消費電力は大きくなるが、冷却能力を向上させることができる。また、ヒートパイプ恒温槽1は、三層構造、五層構造の他にも、ペルチェ素子とペルチェ素子冷却専用ヒートパイプを設けた層を任意に増やした多層構造であってもよい。
【0019】
放熱部20は、ヒートパイプ11-13の熱を放熱するために、恒温槽外に設けられた熱交換器である。
図1に示した例では、放熱部20は、主面がyz平面に平行であって、z軸方向に延設された直方体形状を有している。放熱部20においては、冷却能力を高くすることが重要である。そのため、放熱部20において、例えば銅やアルミニウムなどからなる通常の金属フィンに比べて、6倍以上の熱輸送量を有する多孔質金属銅のフィンを用いてもよい。このことにより、放熱部20において、ヒートパイプ11-13の冷却効率を上げることができる。多孔質金属銅は、銅やアルミニウムの金属フィンに比べ冷却効率が高いことから、銅やアルミニウムの金属フィンを使用している場合と比べるとフィン自体の使用量を削減できる。このことにより、放熱部を小型化することができる。また、多孔質ゆえに軽量化もつながる。なお、当然のことながら、冷却用のフィンとして銅やアルミニウムの金属フィンを用いることもできる。
【0020】
吸熱部30は、ヒートパイプ11-13、及びペルチェ素子50の熱を放熱するために、恒温槽外に設けられた熱交換器である。また、吸熱部30の内部にはペルチェ素子50が設けられており、ヒートパイプ11、12の熱をペルチェ素子50により吸熱している。
図1に示した例では、吸熱部30は、主面がyz平面に平行であって、z軸方向に延設された直方体形状を有している。吸熱部30は、例えば熱伝導性の高い金属であるアルミニウム製のフィンが多数積層された構成を有している。なお、吸熱部30に利用する材質は、アルミニウムに代えて、銅、鉄、ステンレスなど他の熱伝導性の高い金属に変更してもよい。吸熱部30の詳細な構成は、
図2を用いて後述する。
【0021】
熱交換部40は、恒温槽内に設けられ、恒温槽内の温度を一定に維持するための熱交換器である。
図1に示した例では、熱交換部40は、主面がxy平面に平行であって、y軸方向に延設された直方体形状を有している。この熱交換部40は、例えば熱伝導性の高い金属であるアルミニウム製のフィンが多数積層された構成を有している。なお、熱交換部40に利用する材質は、アルミニウムに代えて、銅、鉄、ステンレスなど他の熱伝導性の高い金属に変更してもよい。
【0022】
上述の通り、熱交換部40の内部には、x軸方向に平行に並んで分岐されたヒートパイプ11、12が貫通している。このことにより、熱交換部40とヒートパイプ11、12の接する熱交換面積を増やすことができるため、熱交換の効率が上昇する。なお、熱交換部40を貫通するヒートパイプ11、12は単管にしてもよい。また、
図1において、熱交換部40は、ヒートパイプ11が貫通している直方体形状の熱交換器と、ヒートパイプ12が貫通している直方体形状の熱交換器が、それぞれxy平面に平行になるよう別々に設けられている。なお、熱交換部40は、別々でなく一体に設けられていてもよい。
【0023】
同様に、放熱部20、吸熱部30の内部には、y軸方向に並んで分岐されたヒートパイプ11-13が貫通している。このことにより、ヒートパイプ11-13と放熱部20、ヒートパイプ11-13と吸熱部30とのそれぞれの熱交換面積を増やすことができるため、熱交換の効率が上昇する。熱交換の効率が良くなることは、冷却効率が良くなることを意味する。なお、放熱部20、吸熱部30をそれぞれ貫通するヒートパイプ11-13は単管にしてもよい。
【0024】
また、
図1において、放熱部20は、ヒートパイプ11が貫通している直方体形状の熱交換器と、ヒートパイプ13が貫通している直方体形状の熱交換器と、ヒートパイプ12が貫通している直方体形状の熱交換器とが、互いに平面に別々に設けられている。それぞれの熱交換器同士は、互いに接着しておらず、空間を有している。このことにより、恒温槽外の外気に触れる表面積が増え、冷却の効率を上げることができる。なお、放熱部20は、別々でなく一体に設けられていてもよい。
【0025】
吸熱部30に関しても同様に、ヒートパイプ11が貫通している直方体形状の熱交換器と、ヒートパイプ13が貫通している直方体形状の熱交換器と、ヒートパイプ12が貫通している直方体形状の熱交換器とが、互いに平行に別々に設けられている。なお、吸熱部30は、別々でなく一体に設けられていてもよい。
【0026】
また、ヒートパイプ11、12については、それぞれ1つの循環経路で設計できるため、冷媒封入と真空引きを一度に行うことができる。さらには、この循環経路を持つ構造(ループ構造)により、液相と気相の状態転移を含む流路を一方向化できるので、圧損を低減することができる。
【0027】
次に、
図2を参照して、吸熱部30の構造について詳細に説明する。
図2は、第1の実施形態に係るヒートパイプ恒温槽1の構成を示す模式断面図である。
図2に示すように、吸熱部30において、ヒートパイプ11とヒートパイプ13との間、ヒートパイプ12とヒートパイプ13との間の各々に、主面がyz平面に平行な直方体形状の一対のペルチェ素子50が配置されている。
【0028】
ヒートパイプ11に対してペルチェ素子50が対向する面が、ヒートパイプ11の熱を吸熱する吸熱面51である。同様に、ヒートパイプ12に対してペルチェ素子50が対向する面が、ヒートパイプ12の熱を吸熱する吸熱面52である。すなわち、一対のペルチェ素子50の吸熱面51、52の各々は、ヒートパイプ11、12とそれぞれ接するように設けられている。
【0029】
一方で、ヒートパイプ13に対してペルチェ素子50が対向する面が、ヒートパイプ11の熱を放熱する放熱面53である。同様に、ヒートパイプ13に対してペルチェ素子50が対向する面が、ヒートパイプ12の熱を放熱する放熱面54である。すなわち、一対のペルチェ素子50の放熱面53、54の各々は、ヒートパイプ13とそれぞれ接するように設けられている。
【0030】
このような構成により、ペルチェ素子50の吸熱面51、52がヒートパイプ11、12の熱を吸熱し、その熱をペルチェ素子50の放熱面53、54がヒートパイプ13へ、放熱する。放出された熱はヒートパイプ13を介し、放熱部20に伝達されることによって、ペルチェ素子50が冷却される。
【0031】
ここで、
図1、
図2を用いて、ヒートパイプ恒温槽1の恒温制御のメカニズムと、ペルチェ素子50の冷却効率を上げるメカニズムについて説明する。本発明のヒートパイプ恒温槽1において、ヒートパイプ11-13には、冷媒が封入されている。ループ構造をしているヒートパイプ11、12中の冷媒が恒温槽内と恒温槽外との間を、循環する。
【0032】
冷媒には、環境性を考慮し、GWP(Global Warming Potential)=1のノンフロン冷媒を利用することで、環境負荷を低減することができる。なお、冷媒は、恒温槽の制御温度範囲に応じて選択することができる。冷媒は、水を用いてもよく、また、アルコールなどのように水よりも沸点の低い冷媒を利用してもよい。水よりも沸点の低い冷媒を利用する場合、水に比べて、外囲温度以下時においても蒸発しやすくなる。そのため、外囲温度以下へ温度を低下させる際の効率が良くなるとともに、恒温槽の制御温度範囲を拡大することもできる。
【0033】
図1の熱交換部40において、恒温槽の熱が、ヒートパイプ11と12中の冷媒へそれぞれ伝達される。熱を受けた冷媒は気相となり、ヒートパイプ11、12を通じて、恒温槽外の放熱部20へ移動する。
【0034】
図2では、放熱部20に冷媒の移動方向を矢印で示している。熱交換部40で熱を受けた冷媒が気相となり、ヒートパイプ11、12をz軸負方向(矢印の方向)へ移動する。このとき、放熱部20において、外囲温度により冷却される。
【0035】
その後、冷媒はz軸負方向側の吸熱部30へ移動し、ペルチェ素子50の吸熱面51、52により吸熱される。このことにより、すでに放熱部20で冷却されていた温度以下に冷却できる。吸熱された冷媒は液相となり、恒温槽外から恒温槽内へ再び戻る(循環する)ことになる。図示していないが、ペルチェ素子50の冷却に関しては、冷却したい温度に応じてペルチェ素子50に適切な電流を印加する。冷媒が液相になる時点は、冷媒の種類や外囲温度により、放熱部20、吸熱部30のどちらの可能性もある。
【0036】
一方で、吸熱部30で吸熱された熱は、ペルチェ素子50の放熱面53、54を通じ、ヒートパイプ13中の冷媒へ伝達される。熱されたヒートパイプ13中の冷媒は気相となり、z軸正方向側の放熱部20に移動し、外囲温度により冷却される。冷却された冷媒は液相へ状態変化し、再度z軸負方向側へ還流する(
図2、ヒートパイプ13中の上下矢印)。
【0037】
ヒートパイプ恒温槽1の恒温制御のメカニズムを説明する。まず、外囲温度によりヒートパイプ11、12により、恒温槽を可能な範囲で冷却する。その冷却した温度以下の温度域に制御するときには、ペルチェ素子50の制御を行い、吸熱部30で冷却を行うこととする。この2段階制御を行うことで、外囲温度以下に恒温槽の温度を制御でき、外囲温度以下の恒温性能を有することができる。このような構成にすることで、効率的に温度制御をすることができている。なお、ペルチェ素子50は逆電流をかけることで吸熱面と放熱面が逆転するため、冷却だけでなく、吸熱部30で加熱するといった温度制御も可能である。
【0038】
以上説明したように、ペルチェ素子50を、ヒートパイプ13で冷却することで、ペルチェ素子50の冷却効率を高めることができる。すなわち、ペルチェ素子50の冷却効率に優れたヒートパイプ恒温槽を提供することができる。
【0039】
ペルチェ素子50の冷却効率を高めることができると、別途他の冷却装置を用いてペルチェ素子50を冷却する必要がなくなるため、その冷却装置を使用するための消費電力を削減することができる。また、ペルチェ素子50の冷却効率を高めることができると、所定の温度制御に用いるペルチェ素子50の使用量も低減することができるので、ペルチェ素子50を使用するための消費電力を削減することができる。以上のことから、本発明に係るヒートパイプ恒温槽1を利用すると、消費電力を削減できる。消費電力を削減することで、CO2排出量の削減に貢献できる。
【0040】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 ヒートパイプ恒温槽
11、12、13 ヒートパイプ
20 放熱部
30 吸熱部
40 熱交換部
50 ペルチェ素子
51、52 吸熱面
53、54 放熱面