IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社KDDI研究所の特許一覧

<>
  • 特許-ネットワークの制御装置及びプログラム 図1
  • 特許-ネットワークの制御装置及びプログラム 図2
  • 特許-ネットワークの制御装置及びプログラム 図3
  • 特許-ネットワークの制御装置及びプログラム 図4
  • 特許-ネットワークの制御装置及びプログラム 図5
  • 特許-ネットワークの制御装置及びプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ネットワークの制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/02 20090101AFI20240409BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20240409BHJP
   H04W 92/04 20090101ALI20240409BHJP
【FI】
H04W24/02
H04W88/08
H04W92/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020175342
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066800
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-02-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度総務省「第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】塚本 優
(72)【発明者】
【氏名】平山 晴久
(72)【発明者】
【氏名】難波 忍
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10805831(US,B1)
【文献】塚本 優、平山 晴久、ムン スンイル 、難波 忍、西村 公佐、新保 宏之,適応型RANにおける多様なサービスに応じた基地局機能配置手法,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.119 No.448,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2020年02月26日,p.7~12
【文献】NEC,RAN Internal Functional Split[online],3GPP TSG-RAN WG3#92 R3-161186,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG3_Iu/TSGR3_92/Docs/R3-161186.zip>,2016年05月14日
【文献】NEC, KDDI,Options of Functionality Splitting in RAN logical architecture[online], 3GPP TSG-RAN WG3#91bis R3-160767,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG3_Iu/TSGR3_91bis/Docs/R3-160767.zip>,2016年04月01日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1サイトに配置された1つ以上の計算機と、伝送路により前記第1サイトに接続される第2サイトに配置された1つ以上の計算機と、を含む計算機群を制御して、前記第1サイトと前記第2サイトとの間でサービストラフィックを搬送するための複数のネットワーク機能を前記計算機群で実現する制御装置であって、
第1所定期間において、前記第1サイトと前記第2サイトとの間で搬送される複数のサービストラフィックそれぞれの第1速度を予測する予測手段と、
前記複数のサービストラフィックを前記第1サイトと前記第2サイトとの間で搬送するために、前記第1所定期間において前記複数のサービストラフィックそれぞれに適用する前記複数のネットワーク機能の前記第1サイト及び前記第2サイトへの配置パターンを、前記複数のサービストラフィックそれぞれの前記第1速度に基づき、複数の配置パターンから選択して決定する決定手段と、
前記決定手段が決定した、前記第1所定期間において前記複数のサービストラフィックそれぞれに適用する前記配置パターンを実現する様に前記計算機群を制御する制御手段と、
を備え、
前記決定手段は、前記複数の配置パターンそれぞれについて、前記サービストラフィックを前記第1サイトと前記第2サイトとの間で搬送する場合の前記伝送路でのトラフィックの増加係数を示す情報を保持しており、前記サービストラフィックの前記第1速度と、当該サービストラフィックに適用する前記配置パターンの前記増加係数とに基づき、当該サービストラフィックを前記第1サイトと前記第2サイトとの間で搬送するために前記伝送路で伝送する、当該サービストラフィックに対応する伝送トラフィックの第2速度を求める手段を有し、
前記決定手段は、前記複数のサービストラフィックそれぞれに対応する各伝送トラフィックの前記第2速度の第1合計値に基づく値が、前記伝送路で伝送可能な上限値を超えない様に、前記第1所定期間において前記複数のサービストラフィックそれぞれに適用する前記配置パターンを決定し、
前記第1合計値に基づく値は、前記第1合計値に、前記第1所定期間の補正係数を乗じた値であることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記第1合計値に基づく値が、前記上限値を超えない範囲において、前記複数のサービストラフィックそれぞれに適用する前記配置パターンに基づき求められる評価値が最大又は最小となる様に、前記第1所定期間において前記複数のサービストラフィックそれぞれに適用する前記配置パターンを決定することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記計算機群で観測された、前記第1所定期間において前記伝送路で伝送された各伝送トラフィックの速度の第2合計値を取得する取得手段と、
前記第1合計値に前記第1所定期間の補正係数を乗じた値と、前記第2合計値とに基づき前記第1所定期間の次の第2所定期間の補正係数を算出する算出手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記第2合計値が、前記第1合計値に前記第1所定期間の補正係数を乗じた値より大きいと、前記第2所定期間の補正係数を前記第1所定期間の補正係数より増加させ、前記第2合計値が、前記第1合計値に前記第1所定期間の補正係数を乗じた値より小さいと、前記第2所定期間の補正係数を前記第1所定期間の補正係数より減少させることを特徴とする請求項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記第2所定期間の補正係数を前記第1所定期間の補正係数から増加させる場合の増加量の絶対値を、前記第2所定期間の補正係数を前記第1所定期間の補正係数から減少させる場合の減少量の絶対値より大きくすることを特徴とする請求項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記第2所定期間の補正係数を前記第1所定期間の補正係数から増加させる場合の増加量の絶対値を、前記第2所定期間の補正係数を前記第1所定期間の補正係数から減少させる場合の減少量の絶対値より小さくすることを特徴とする請求項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記複数のネットワーク機能は、移動通信ネットワークの基地局装置の基地局機能であり、
前記第1サイトは、アンテナが設置されるアンテナサイトであり、
前記第2サイトは、前記伝送路により前記アンテナサイトに接続される収容サイトであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記複数のネットワーク機能は、第1機能と第2機能であり、
前記複数の配置パターンは、前記第1機能と前記第2機能の両方を前記アンテナサイトに配置する第1配置パターンと、前記第1機能を前記アンテナサイトに配置し、かつ、前記第2機能を前記収容サイトに配置する第2配置パターンと、前記第1機能と前記第2機能の両方を前記収容サイトに配置する第3配置パターンと、を含むことを特徴とする請求項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記伝送路は、1つ以上の前記アンテナサイトを1つの前記収容サイトに接続するパッシブ光ネットワークによる伝送路であることを特徴とする請求項又はに記載の制御装置。
【請求項10】
1つ以上のプロセッサを有する装置の前記1つ以上のプロセッサで実行されると、前記装置を請求項1からのいずれか1項に記載の制御装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク機能の配置を制御する制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動通信ネットワークの基地局装置(以下、単に、基地局と表記する。)は、アンテナが設置されるアンテナサイトに設置され、ユーザデータを無線信号として送信するための様々な処理を1つの装置内にて行っていた。これに対し、近年、基地局の機能を分割し、分割した機能を実現する装置を異なるサイトに配置することが行われている。図1は、基地局機能の配置パターン例を示している。なお、図1は、基地局機能を、中央ユニット(CU)、分散ユニット(DU)及び無線ユニット(RU)に分割した例を示している。なお、CUは、SDAPレイヤ及びPDCPレイヤに関する処理を行い、DUは、RLCレイヤ、MACレイヤ及び物理レイヤの一部に関する処理を行い、RUは、物理レイヤの残りの一部に関する処理と、無線信号の送受信処理を行う。
【0003】
図1の参照符号90は、CU、DU及びRUの機能を有する装置をアンテナサイトに配置した例であり、当該装置は、基地局機能の総てを備えた従来の基地局装置に対応する。なお、この配置パターンは、分散RAN(D-RAN)構成として参照される。D-RAN構成において収容サイトとアンテナサイトとの間の区間で伝送される信号は、CUへの入力インタフェースに対応しバックホールと呼ばれる。また、図1の参照符号91は、CUの機能を有する装置を収容サイトに設置し、DU及びRUの機能を有する装置をアンテナサイトに設置した例を示している。なお、この配置パターンは、分割RAN(S-RAN)構成として参照される。S-RAN構成において収容サイトとアンテナサイトとの間の区間で伝送される信号は、CUとDUとの間のインタフェースに対応しミッドホールと呼ばれる。さらに、図1の参照符号92は、CU及びDUの機能を有する装置を収容サイトに設置し、RUの機能を有する装置をアンテナサイトに設置した例を示している。なお、この配置パターンは、集中RAN(C-RAN)構成として参照される。C-RAN構成において収容サイトとアンテナサイトとの間の区間で伝送される信号は、DUとRUとの間のインタフェースに対応しフロントホールと呼ばれる。
【0004】
D-RAN構成では、ユーザにサービス提供するサーバをアンテナサイトに置くことで、低遅延のサービスを提供することができる。これに対してC-RAN構成及びS-RAN構成では、その様なサーバについては収容サイトに設置しなければならず、D-RAN構成の様な低遅延のサービスを提供することが難しくなる。一方、アンテナサイトは、地理的に分散しているため、D-RAN構成では、セル間(基地局間)の連携制御が複雑になる。これに対し、C-RAN構成では、複数のアンテナサイトのRUに接続する、CU及びDUの機能を有する装置それぞれが同じ収容サイトに設置されるため、セル間の連携制御の実現が容易になる。
【0005】
また、収容サイトとアンテナサイトとの間で伝送されるトラフィック量(トラフィック速度)も3つの配置パターンでは異なる。例えば、速度Sのユーザデータ(サービストラフィック)を収容サイトからアンテナサイトに伝送して無線信号として送信する場合を考える。なお、以下の説明においては、収容サイトとアンテナサイトとの間の区間を伝送区間と表記し、サービストラフィックを収容サイトとアンテナサイトとの間で伝送するために、収容サイトとアンテナサイトとの間で伝送されるトラフィックを伝送トラフィックと表記する。D-RAN構成では、サービストラフィックと伝送トラフィックは基本的に等しく、よって、伝送トラフィック速度はSに略等しい。一方、S-RAN構成では、SDAPレイヤ及びPDCPレイヤでの処理後のサービストラフィックを伝送トラフィックとして伝送区間に送信するため、伝送トラフィック速度は、サービストラフィック速度より大きいαS(α>1)となる。なお、αは、増加係数であり、SDAPレイヤ及びPDCPレイヤでの処理により付加されるオーバヘッドと、CU機能とDU機能との間の制御信号により付加されるオーバヘッドにより決定される。また、C-RAN構成では、さらに、物理レイヤの一部の処理まで収容サイトで行うため、伝送トラフィック速度は、S-RAN構成の伝送トラフィック速度より大きくなる。つまり、C-RAN構成での伝送トラフィック速度はβS(β>α)となる。
【0006】
非特許文献1は、ネットワーク仮想化技術により上記3つのRAN構成を実現することを開示している。具体的には、収容サイト及び各アンテナサイトそれぞれに1つ以上の計算機を配置し、これら計算機の計算機資源を上記基地局機能の実現ために割り当てることで、上記3つのRAN構成を柔軟に実現することを非特許文献1は開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Takahide MURAKAMI,et al.,"Research Project to Realize Various High-reliability Communications in Advanced 5G Network",2020 IEEE Wireless Communications and Networking Conference(WCNC),IEEE,2020年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
各サービストラフィックは時間と共に変動する。したがって、基地局機能(ネットワーク機能)をサービストラフィックに応じて適切に配置するには、個々のサービストラフィック速度を予測し、予測結果に基づいて各サービストラフィックに適用する配置パターン(RAN構成)を決定して、収容サイトの計算機資源及びアンテナサイトの計算機資源を制御する必要がある。
【0009】
ここで、上述した様に、同じサービストラフィック速度であってもネットワーク機能の配置パターンに応じて伝送トラフィック速度が変化する。伝送区間の伝送速度には上限があるため、各サービストラフィックに適用する配置パターンを決定するに当たり、伝送トラフィック速度の合計が伝送区間のこの上限値を超えない様にする必要がある。
【0010】
本発明は、伝送トラフィック速度の合計が上限値を超えない様に各サービストラフィックに適用するネットワーク機能の配置パターンを決定する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によると、第1サイトに配置された1つ以上の計算機と、伝送路により前記第1サイトに接続される第2サイトに配置された1つ以上の計算機と、を含む計算機群を制御して、前記第1サイトと前記第2サイトとの間でサービストラフィックを搬送するための複数のネットワーク機能を前記計算機群で実現する制御装置は、第1所定期間において、前記第1サイトと前記第2サイトとの間で搬送される複数のサービストラフィックそれぞれの第1速度を予測する予測手段と、前記複数のサービストラフィックを前記第1サイトと前記第2サイトとの間で搬送するために、前記第1所定期間において前記複数のサービストラフィックそれぞれに適用する前記複数のネットワーク機能の前記第1サイト及び前記第2サイトへの配置パターンを、前記複数のサービストラフィックそれぞれの前記第1速度に基づき、複数の配置パターンから選択して決定する決定手段と、前記決定手段が決定した、前記第1所定期間において前記複数のサービストラフィックそれぞれに適用する前記配置パターンを実現する様に前記計算機群を制御する制御手段と、を備え、前記決定手段は、前記複数の配置パターンそれぞれについて、前記サービストラフィックを前記第1サイトと前記第2サイトとの間で搬送する場合の前記伝送路でのトラフィックの増加係数を示す情報を保持しており、前記サービストラフィックの前記第1速度と、当該サービストラフィックに適用する前記配置パターンの前記増加係数とに基づき、当該サービストラフィックを前記第1サイトと前記第2サイトとの間で搬送するために前記伝送路で伝送する、当該サービストラフィックに対応する伝送トラフィックの第2速度を求める手段を有し、前記決定手段は、前記複数のサービストラフィックそれぞれに対応する各伝送トラフィックの前記第2速度の第1合計値に基づく値が、前記伝送路で伝送可能な上限値を超えない様に、前記第1所定期間において前記複数のサービストラフィックそれぞれに適用する前記配置パターンを決定し、前記第1合計値に基づく値は、前記第1合計値に、前記第1所定期間の補正係数を乗じた値であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、伝送トラフィック速度の合計が上限値を超えない様に各サービストラフィックに適用するネットワーク機能の配置パターンを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】基地局機能の配置パターン例を示す図。
図2】収容サイトとアンテナサイトとの接続構成を示す図。
図3】仮想化機能による基地局機能の配置例を示す図。
図4】一実施形態による制御構成を示す図。
図5】タイムウィンドウを示す図。
図6】一実施形態による制御装置の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
図2は、本実施形態による収容サイトと、アンテナサイトとの接続構成を示している。図2によると、収容サイトは、N個のアンテンナサイト#1~アンテンナサイト#NとPON(パッシブ光ネットワーク)で接続されている。つまり、本実施形態において、1つの収容サイトと、N個のアンテンナサイト#1~アンテンナサイト#Nを接続する伝送路、つまり、伝送区間はPONで構成されている。以下の説明において、このPONで伝送可能な最大速度(上限値)をTmaxとする。
【0016】
図3は、仮想化機能による基地局機能の配置例を示している。まず、RUは、その性質上、アンテナサイトに配置する。なお、RUの機能は、基本的にはハードウェアで構成され、仮想化の対象外とする。アンテンナサイト#1~アンテンナサイト#N及び収容サイトには、それぞれ、1つ以上の計算機(以下、計算機群と表記する)が配置され、その計算機資源は、DU又はCUを実現するために割り当てられる。図3の各直線は、それぞれ、特定のサービストラフィックを示している。例えば、サービストラフィック#1は、アンテナサイト#1の計算機群により実現されているDU機能及びCU機能において処理される。つまり、サービストラフィック#1には、D-RAN構成が適用されている。また、サービストラフィック#2は、アンテナサイト#1の計算機群により実現されているDU機能と、収容サイトの計算機群により実現されているCU機能において処理される。つまり、サービストラフィック#2には、S-RAN構成が適用されている。さらに、サービストラフィック#3は、収容サイトの計算機群により実現されているDU機能及びCU機能において処理される。つまり、サービストラフィック#3には、C-RAN構成が適用されている。また、アンテナサイト#Nの計算機群の計算機資源は、DU機能のみに割り当てられており、CU機能のためには割り当てられていない。
【0017】
図4は、本実施形態による制御構成を示す図である。なお、本実施形態の制御装置は、各サービストラフィックについて、サービストラフィックに適用する配置パターンを、図1図3に示す3つの配置パターンから選択して決定するものとする。制御装置は、アンテナサイト#1~アンテンナサイト#N及び収容サイトの計算機群を制御し、それらの計算機資源を決定結果に従いCU機能やDU機能を実現するために割り当てる。以下、制御装置について説明する。
【0018】
まず、以下の説明においては、図2に示す様に、アンテナサイト(セル)の数をN(Nは1以上の整数)とし、nを1~Nまでの整数とする。また、サービス数をS(Sは整数であり、1又は複数)とし、sを1~Sまでの整数とする。なお、サービスは、例えば、Webブラウジング、音楽ストリーミング、ビデオ会議、IoTデバイスによる通信等、トラフィックの特性により予め分類され、これによりサービス数Sが定義される。制御装置は、図5に示す様に、所定期間である時間ウインドウ(TW)毎に、以下に説明する処理を行う。具体的には、制御装置は、TW#k-1の期間に観測したセルnを介するサービスsのサービストラフィック速度SAk-1,n,sと、TW#k-1の期間に観測したPON区間(伝送区間)の伝送速度TAk-1と、に基づき、TW#kの期間における各サービストラフィックのための配置パターンを決定する。なお、PON区間で観測される伝送速度TAk-1とは、各サービストラフィックをPON区間で伝送するための、各サービストラフィックに対応する伝送トラフィック速度の合計である。そして、制御装置は、TW#kの開始時に、決定した配置パターンを実現する様に、アンテナサイト#1~アンテンナサイト#N及び収容サイトの計算機群を制御する。観測する速度は、TW内の最大値とすることができる。また、観測する速度は、TWに渡る平均値とすることができる。さらに、観測する速度は、TWの間における各単位時間、例えば、1秒毎の速度とすることができる。また、観測する速度は、上記の2つ以上とすることができる。
【0019】
図6は、制御装置の機能ブロック図である。上述した様に、制御装置は、TW#k-1の期間に観測したセルnを介するサービスsのサービストラフィック速度SAk-1,n,sと、TW#k-1の期間に観測したPON区間の伝送速度TAk-1を計算機群から取得する。サービストラフィック速度SAk-1,n,sは、トラフィック予測部10に入力され、伝送速度TAk-1は、補正係数算出部13に入力される。
【0020】
トラフィック予測部10は、サービストラフィック速度SAk-1,n,sに基づき、TW#kにおけるセルnを介するサービスsのサービストラフィック速度の予測値Sk,n,sを求める。予測値Sk,n,sの算出には、任意の予測方法を使用できる。一例として、トラフィック予測部10は、TW#k-1に渡るサービストラフィック速度SAk-1,n,sの平均値を予測値Sk,n,sとすることができる。補正係数算出部13は、伝送速度TAk-1と、決定部11から入力される、TW#k-1の期間におけるPON区間の伝送速度の予測値Tk-1と、に基づきTW#kにおける補正係数εを求め、補正係数εを決定部11に通知する。
【0021】
決定部11は、トラフィック予測部10からの予測値Sk,n,sと、補正係数算出部13からの補正係数εと、に基づき、各サービストラフィックに適用する基地局機能の配置パターンを決定する。以下、決定部11での処理について説明する。
【0022】
まず、TW#kにおけるセルnを介するサービスsに適用する配置パターンをベクトルXk,n,s=(Dk,n,s,Sk,n,s,Ck,n,s)と表記する。ベクトルXk,n,sは、1つの要素のみが1であり、他の要素が0のベクトルである。本実施形態において、Xk,n,s=(1,0,0)は、TW#kにおいてセルnを介するサービスsにはD-RAN構成を使用することを示し、Xk,n,s=(0,1,0)は、TW#kにおいてセルnを介するサービスsにはS-RAN構成を使用することを示し、Xk,n,s=(0,0,1)は、TW#kにおいてセルnを介するサービスsにはC-RAN構成を使用することを示している。
【0023】
決定部11は、予測値Sk,n,sに基づきTW#kにおけるPON区間の伝送速度の予測値Tを求め、この予測値Tが、PON区間の最大速度Tmaxを超えないとの制約条件の下、目的関数f(Xk,n,s)により得られる評価値を最小化又は最大化する配置パターンXk,n,sをそれぞれ決定する。つまり、取り得るXk,n,sの組み合わせそれぞれについて目的関数f(Xk,n,s)の出力(評価値)を求め、予測値TがPON区間の最大速度Tmaxを超えない組み合わせから、その評価値が最小又は最大になるXk,n,sの組み合わせを判定する。なお、評価値を最小とするか、最大とするかは、目的関数に応じて決定される。
【0024】
目的関数fは、例えば、使用する計算機資源の量を評価する評価値を求める関数とすることができる。なお、使用する計算機資源の量が大きくなる程、評価値が大きくなる場合、制御装置は、目的関数を最小化する配置パターンに決定し、使用する計算機資源の量が大きくなる程、評価値が小さくなる場合、制御装置は、目的関数を最大化する配置パターンに決定する。これにより、決定した配置パターンを実現するために使用する計算機資源の量を小さくすることができる。また、目的関数fは、セル間の干渉量を評価する評価値を求める関数とすることができる。この場合、決定した配置パターンにおいてセル間の干渉を減少させることができる。なお、上述した様に、C-RAN構成では、セル間協調が容易になるため、セル間の干渉を減少させることができる。また、目的関数fは、DU間のハンドオーバ数を評価する評価値を求める関数とすることができる。C-RAN構成では、複数のRUを1つのDUに収容することが可能であるため、DU間のハンドオーバ数を低減させることができる。
【0025】
続いて、TW#kにおけるPON区間の伝送速度の予測値Tの算出について説明する。決定部11は、トラフィック予測部10からの予測値Sk,n,sと、補正係数算出部13からの補正係数εと、に基づき予測値Tを求める。具体的には、決定部11は、以下の式(1)で予測値Tを求める。
=ε×ΣΣ(μ・Xk,n,s)×Sk,n,s (1)
式(1)において、ベクトルμ=(μD,μS,μC)であり、μD,μS及びμCは、それぞれ、D-RAN構成、S-RAN構成及びC-RAN構成におけるサービストラフィック速度に対する伝送トラフィック速度の比、つまり、増加係数である。上述した様に、伝送トラフィック速度のサービストラフィック速度に対する比はRAN構成により異なる。ベクトルμ=(μD,μS,μC)は、例えば、D-RAN構成、S-RAN構成及びC-RAN構成それぞれにおいて、1(Mbps)のサービストラフィックがPON区間においてμD(Mbps),μS(Mbps)及びμC(Mbps)の伝送トラフィックになることを示している。なお、ベクトルμを示す情報は、予め決定して決定部11に設定・保持させておく。
【0026】
式(1)において、(μ・Xk,n,s)は、ベクトルμとベクトルXk,n,sとの内積を示している。上述した様に、ベクトルXk,n,sは、1つの要素が1であり、残りの要素が0のベクトルであるため、(μ・Xk,n,s)は、ベクトルXk,n,sに対応するRAN構成の増加係数を取り出すことに対応する。したがって、式(1)の(μ・Xk,n,s)×Sk,n,sは、セルnを介するサービスsのサービストラフィックにベクトルXk,n,sに対応する配置パターンを適用した場合において、当該サービストラフィックをPON区間で搬送するために必要な伝送トラフィック速度に対応する。
【0027】
式(1)において、ΣΣは、n=1~N及びs=1~Sまでの積算を示し、よって、式(1)のΣΣ(μ・Xk,n,s)×Sk,n,sは、各サービストラフィックの予測値Sk,n,sをPON区間における伝送トラフィック速度に換算した上で合計した合計値となる。本実施形態では、この合計値に補正係数εを乗じた値をTW#kにおける予測値Tとする。なお、補正係数εを乗じるのは、PON区間における輻輳の発生を抑えるためのマージンを設定するためである。この様に、決定部11は、各配置パターンの増加係数に基づきサービストラフィック速度に対応する伝送トラフィック速度を算出し、その合計値に補正係数を乗じることで、PON区間における伝送速度を予測する伝送速度予測部を有する。
【0028】
決定部11は、上述した様に、TW#kにおける予測値Tが、PON区間の最大速度Tmaxを超えないとの制約条件の下、目的関数f(Xk,n,s)を最小化又は最大化する配置パターンXk,n,sをそれぞれ決定する。決定部11は、決定した配置パターンXk,n,sを制御部12に通知する。制御部12は、決定部11から通知された配置パターンXk,n,sに従い、アンテナサイト#1~アンテンナサイト#N及び収容サイトの計算機群の計算機資源をCU機能、DU機能のために割り当てる。
【0029】
また、決定部11は、TW#k+1における補正係数εk+1を補正係数算出部13に算出させるため予測値Tを補正係数算出部13に出力する。補正係数算出部13は、予測値Tと、TW#kにおいてPON区間で実際に伝送された伝送速度TAとに基づき補正係数εk+1を算出して決定部11に通知する。具体的には、補正係数算出部13は、以下の式(2)により補正係数εk+1を算出する。
εk+1=ε+ρ(TA-T)/T (2)
式(2)において、(TA-T)は、観測した値(観測値)TAと予測値Tとの差、つまり、予測誤差であり、(TA-T)/Tは、予測誤差率である。式(2)は、あるTWにおける予測誤差率に基づき当該TWの補正係数を増加又は減少させることで、次のTWの補正係数を求めるものであり、ρは、この増加量又は減少量を調整するための応答係数である。なお、予測誤差が正、つまり、観測値が予測値より大きい場合、補正係数は増加する様に更新され、予測誤差が負、つまり、予測値が観測値より大きい場合、補正係数は減少する様に更新され、予測誤差が0であると、補正係数の値は変更されない。
【0030】
応答係数ρの値は、事前に決定して補正係数算出部13に設定しておく。ここで、応答係数ρとして1つの値を固定的に使用することができるが、予測誤差の正負に応じて2つの値を使い分ける構成とすることもできる。以下、予測誤差が正、つまり、TA>Tの場合に使用する応答係数の値をρとし、予測誤差が負、つまり、TA<Tの場合に使用する応答係数の値をρとする。
【0031】
ρ>ρに設定した場合、予測誤差が正の場合の補正係数の増加量の絶対値は、予測誤差が負の場合の補正係数の減少量の絶対値より大きくなる。これは、PON区間の伝送速度の予測値に大きなマージンを見込むことに対応する。したがって、PON区間(伝送区間)において輻輳が生じる確率が減少する。しかしながら、大きなマージンを見込むことにより、PON区間(伝送区間)の利用効率は低下する。一方、ρ<ρに設定した場合、予測誤差が正の場合の補正係数の増加量の絶対値は、予測誤差が負の場合の補正係数の減少量の絶対値より小さくなる。これは、PON区間の伝送速度の予測値に考慮するマージンを小さくすることに対応する。したがって、PON区間(伝送区間)の利用効率が向上する。しかしながら、マージンが小さくなるため、PON区間(伝送区間)で輻輳が生じる確率が高くなる。したがって、システムの設計方針に従い、ρ>ρとするか、ρ<ρとするかを決定して、補正係数算出部13に設定する。
【0032】
以上の構成により、PON区間の伝送速度、つまり、PON区間の各サービストラフィックに対応する伝送トラフィック速度の合計が上限値、つまり、伝送路の最大速度Tmaxを超えない様に各サービストラフィックに適用する配置パターンを決定することができる。なお、配置パターンの決定に使用するTW#kにおけるサービストラフィック速度は、TW#k-1におけるサービストラフィック速度の観測値に基づく予測値であるため、予測が大きくずれた場合には、伝送速度が上限値を超えて輻輳が生じ得る。つまり、本発明は、伝送速度が上限値を超えることが少なくなる様に配置パターンを決定するものであって、伝送速度が上限値を超えないことを確実に保証するものではない。
【0033】
なお、本実施形態では、図1に示す様に基地局の機能を3つに分割し、その内の2つの機能、つまり、DU及びCUの配置パターンを決定していた。しかしながら、基地局の機能を任意の数に分割し、その内の任意の数の配置パターンを決定することに本発明を適用することができる。したがって、配置パターンの数も、3つに限定されない。
【0034】
また、本実施形態では、収容サイトと複数のアンテナサイトとをPONにより接続していた。つまり、サイト間の接続構成は、P-MP構成であった。しかしながら、収容サイトとアンテナサイトをP-P構成で接続する場合にも、本発明を適用することができる。さらに、本実施形態では、基地局の機能を分割してその配置パターンを決定していたが、本発明は、ネットワークの任意のノードのネットワーク機能を分割してその配置パターンを決定することに適用することもできる。つまり、本発明は、2つのサイト間でサービストラフィックを伝送する際、複数のネットワーク機能の配置パターンに応じて、サイト間で伝送される伝送トラフィック速度が異なる構成において、複数のネットワーク機能の配置パターンを決定することに適用できる。
【0035】
なお、本発明による制御装置は、コンピュータの1つ以上のプロセッサで実行されると、当該コンピュータを上記制御装置として動作させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータの1つ以上の記憶デバイス(HDD、SSD)等に格納される。或いは、これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布され得る。
【0036】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
10:トラフィック予測部、11:決定部、12:制御部、13:補正係数算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6