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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ドア装置、及び、ドア装置の組付け方法
(51)【国際特許分類】
   B61D 19/00 20060101AFI20240409BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B61D19/00 D
B61D19/00 A
E05D15/06 117
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020188792
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077791
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】山田 晋輔
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-201849(JP,A)
【文献】特開2002-227502(JP,A)
【文献】特開2005-240272(JP,A)
【文献】米国特許第06698138(US,B1)
【文献】韓国公開実用新案第20-2010-0008829(KR,U)
【文献】特開2006-152612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 19/00
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口を開閉可能なドアリーフと、
前記出入口の上部に、前記ドアリーフの開閉方向に沿って移動可能に支持されるとともに、前記ドアリーフの上部に結合されて当該ドアリーフを吊り下げ支持するドアハンガーと、
前記ドアリーフの開閉方向に沿って延びた前記ドアハンガーの締結壁を前記ドアリーフの上面に締結する締結部材と、
前記締結部材の軸部挿入可能な貫通孔を有する座金であって下面と前記ドアリーフの上面との間に前記締結壁を挟み込んだ状態で前記締結部材によって前記締結壁とともに前記ドアリーフの上面に締結される、前記座金と、を備え、
前記締結壁は、前記ドアリーフの厚み方向の一端側に向かって開口するとともに、前記ドアリーフの上面に固定された前記締結部材の軸部を開口側から受容可能な切欠きを有し、
前記座金は、前記締結部材が貫通する前記貫通孔の貫通位置の中心と重心の位置がずれているドア装置。
【請求項2】
前記座金は、前記切欠きに嵌り合って当該座金の前記軸部周りの回転を規制する回転止め部を備える請求項1に記載のドア装置。
【請求項3】
前記座金は、前記貫通孔を挟んで前記重心と反対側の端部に、前記ドアリーフの開閉方向に沿って延びる補強壁が屈曲、若しくは、湾曲して形成されている請求項1または2に記載のドア装置。
【請求項4】
前記座金は、前記貫通孔を挟んで前記重心と反対側の端部の下方の角部に湾曲面が設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載のドア装置。
【請求項5】
前記座金は、前記貫通孔を挟んで前記重心と反対側の端部の下方の角部に湾曲面が設けられ、
前記補強壁の前記重心と反対側の外側面と前記座金の下面とが前記湾曲面を介して連続している請求項3に記載のドア装置。
【請求項6】
前記ドアハンガーは、
前記締結壁の前記ドアリーフの厚み方向の前記一端側から上方に屈曲して延びる屈曲壁を備え、
前記屈曲壁には、ドアハンガーにドアリーフを仮組みする際に、前記軸部に支持された前記座金の挿入を許容する組付け孔が形成されている請求項1~5のいずれか1項に記載のドア装置。
【請求項7】
出入口を開閉可能なドアリーフと、
前記出入口の上部に、前記ドアリーフの開閉方向に沿って移動可能に支持されるとともに、前記ドアリーフの上部に結合されて当該ドアリーフを吊り下げ支持するドアハンガーと、
前記ドアリーフの開閉方向に沿って延びた前記ドアハンガーの締結壁を前記ドアリーフの上面に締結する締結部材と、
前記締結部材の軸部が挿入可能な貫通孔を有する座金であって下面と前記ドアリーフの上面との間に前記締結壁を挟み込んだ状態で前記締結部材によって前記締結壁とともに前記ドアリーフの上面に締結される、前記座金と、を備え、
前記締結壁は、前記ドアリーフの厚み方向の一端側に向かって開口するとともに、前記ドアリーフの上面に固定された前記締結部材の軸部を開口側から受容可能な切欠きを有し、
前記座金は、前記締結部材が貫通する前記貫通孔の貫通位置の中心と重心の位置がずれているドア装置の組付け方法であって、
前記座金の前記貫通孔に前記締結部材の軸部を挿入した状態で前記締結部材を前記ドアリーフに仮固定する工程と、
その後、前記座金を当該座金の重心方向に傾斜させて前記座金の前記貫通孔のエッジ部を前記締結部材の軸部の外周面に引っ掛け、前記座金を傾斜姿勢に維持する工程と、
その後、前記ドアハンガーの前記締結壁が前記ドアリーフの上面と前記座金の間の隙間に挿入され、かつ前記締結部材の軸部が前記切欠き内に受容されるように、前記ドアリーフを前記ドアハンガーに仮組みする工程と、
その後、前記締結部材を締め込んで前記ドアハンガーを前記ドアリーフに固定する工程と、
を備えるドア装置の組付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両等に用いられるドア装置、及び、ドア装置の組付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両等に用いられるドア装置は、出入口(乗降口)を開閉するドアリーフの上部が複数のドアハンガーを介して出入口の上部のドアレール等に支持されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
この種のドア装置では、ドアハンガーが出入口の上部のドアレール等に先に取り付けられ、その後にドアリーフの上面が、ドアハンガーの締結壁に締結部材によって固定されることがある。この場合、締結部材の軸部には座金が取り付けられ、ドアハンガーの締結壁が座金とともに締結部材によってドアリーフの上面に締め込まれる。ドアハンガーの締結壁はドアリーフの開閉方向に延びた板状に形成されている。締結壁には、ドアリーフの厚み方向の一端側に向かって開口する切欠きが形成され、締結部材の軸部がその切欠き内を貫通する。
【0004】
このドア装置の組付けに際しては、座金の貫通孔に締結部材の軸部を挿入し、その状態で締結部材の軸部の先端部をドアリーフの上面に先に仮固定しておく。そして、座金を上方に持ち上げてドアリーフの上面と座金の間に隙間を作り、粘着テープ等によって座金をその状態のまま一時固定する。ドアリーフは、この状態のままドアハンガーの方向に移動させ、締結部材の軸部が締結壁の切欠きに開口側から受容されるようにして、ドアハンガーに仮組みする。このとき、ドアリーフの上面は締結壁の下面側に配置され、座金と締結部材の頭部は締結壁の上面側に配置される。この状態で締結部材を締め込むことにより、ドアリーフがドアハンガーに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-152612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のドア装置は、ドアハンガーにドアリーフを組付ける際に、ドアリーフの上面と座金の間に組付け用の隙間を作るために、座金を上方に持ち上げた状態で粘着テープ等によって一時固定する必要がある。このため、組付け作業が煩雑になり、組付け作業を完了するまでに多く時間を要する。
【0007】
本発明は、ドアハンガーにドアリーフを容易に組付けられるようにして、組付け作業効率を高めることができるドア装置、及び、ドア装置の組付け方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るドア装置は、出入口を開閉可能なドアリーフと、前記出入口の上部に、前記ドアリーフの開閉方向に沿って移動可能に支持されるとともに、前記ドアリーフの上部に結合されて当該ドアリーフを吊り下げ支持するドアハンガーと、前記ドアリーフの開閉方向に沿って延びた前記ドアハンガーの締結壁を前記ドアリーフの上面に締結する締結部材と、前記締結部材の軸部挿入可能な貫通孔を有する座金であって下面と前記ドアリーフの上面との間に前記締結壁を挟み込んだ状態で前記締結部材によって前記締結壁とともに前記ドアリーフの上面に締結される、前記座金と、を備え、前記締結壁は、前記ドアリーフの厚み方向の一端側に向かって開口するとともに、前記ドアリーフの上面に固定された前記締結部材の軸部を開口側から受容可能な切欠きを有し、前記座金は、前記締結部材が貫通する前記貫通孔の貫通位置の中心と重心の位置がずれている。
【0009】
上記の構成において、ドアハンガーにドアリーフを組付けるときには、最初に、座金の貫通孔に軸部を挿入した締結部材をドアリーフに仮固定しておく。このとき、軸部が略鉛直方向に向くようにドアリーフの姿勢が維持されていれば、座金が重力によって重心方向に傾斜し、座金の貫通孔のエッジ部が締結部材の軸部の外周面に引っ掛かる。これにより、座金はドアリーフの上面との間に隙間を確保した状態で傾斜姿勢に維持される。この後、座金とドアリーフの上面の間の隙間に締結壁が挿入され、かつ締結壁の切欠きが締結部材の軸部を受容するように、ドアリーフをドアハンガーに仮組みする。この後、締結部材を締め込み、ドアハンガーを座金とともにドアリーフの上面に固定する。本形態のドア装置を採用した場合には、特別な一時固定手段を用いることなく、ドアリーフをドアハンガーに容易に組み付けることができる。
【0010】
前記座金は、前記切欠きに嵌り合って当該座金の前記軸部周りの回転を規制する回転止め部を備えるようにしても良い。
【0011】
前記座金は、前記貫通孔を挟んで前記重心と反対側の端部に、前記ドアリーフの開閉方向に沿って延びる補強壁が屈曲、若しくは、湾曲して形成されるようにしても良い。
【0012】
前記座金は、前記貫通孔を挟んで前記重心と反対側の端部の下方の角部に湾曲面が設けられるようにしても良い。
【0013】
前記座金は、前記貫通孔を挟んで前記重心と反対側の端部の下方の角部に湾曲面が設けられ、前記補強壁の前記重心と反対側の外側面と前記座金の下面とが前記湾曲面を介して連続するようにしても良い。
【0014】
前記ドアハンガーは、前記締結壁の前記ドアリーフの厚み方向の前記一端側から上方に屈曲して延びる屈曲壁を備え、前記屈曲壁には、前記ドアハンガーに前記ドアリーフを仮組みする際に、前記軸部に支持された前記座金の挿入を許容する組付け孔が形成されるようにしても良い。
【0015】
本発明の一態様に係るドア装置の組付け方法は、出入口を開閉可能なドアリーフと、前記出入口の上部に、前記ドアリーフの開閉方向に沿って移動可能に支持されるとともに、前記ドアリーフの上部に結合されて当該ドアリーフを吊り下げ支持するドアハンガーと、前記ドアリーフの開閉方向に沿って延びた前記ドアハンガーの締結壁を前記ドアリーフの上面に締結する締結部材と、前記締結部材の軸部が挿入可能な貫通孔を有する座金であって下面と前記ドアリーフの上面との間に前記締結壁を挟み込んだ状態で前記締結部材によって前記締結壁とともに前記ドアリーフの上面に締結される、前記座金と、を備え、前記締結壁は、前記ドアリーフの厚み方向の一端側に向かって開口するとともに、前記ドアリーフの上面に固定された前記締結部材の軸部を開口側から受容可能な切欠きを有し、前記座金は、前記締結部材が貫通する前記貫通孔の貫通位置の中心と重心の位置がずれているドア装置の組付け方法であって、前記座金の前記貫通孔に前記締結部材の軸部を挿入した状態で前記締結部材を前記ドアリーフに仮固定する工程と、その後、前記座金を当該座金の重心方向に傾斜させて前記座金の前記貫通孔のエッジ部を前記締結部材の軸部の外周面に引っ掛け、前記座金を傾斜姿勢に維持する工程と、その後、前記ドアハンガーの前記締結壁が前記ドアリーフの上面と前記座金の間の隙間に挿入され、かつ前記締結部材の軸部が前記切欠き内に受容されるように、前記ドアリーフを前記ドアハンガーに仮組みする工程と、その後、前記締結部材を締め込んで前記ドアハンガーを前記ドアリーフに固定する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
上述のドア装置は、座金の貫通孔に締結部材の軸部を挿入した状態で締結部材をドアリーフに対して仮固定した後に、座金を重心方向に傾斜させて座金の貫通孔のエッジ部を締結部材の軸部の外周面に引っ掛け、座金を傾斜姿勢に維持することができる。このため、特別な一時固定手段を用いることなく、座金とドアリーフの上面の間に傾斜した隙間を維持し、その状態でドアリーフをドアハンガーに容易に仮組みすることができる。
したがって、上述のドア装置を採用した場合には、ドアハンガーに対するドアリーフの組付け作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の鉄道車両のドア装置を室内側から見た正面図。
図2】実施形態のドア装置のドアリーフとドアハンガーの組付け部の斜視図。
図3】実施形態のドア装置のドアリーフとドアハンガーの組付け部の側面図。
図4】実施形態のドア装置のドアハンガーを下方側から見た斜視図。
図5】実施形態のドア装置のドアリーフとドアハンガーの組付けの一工程を示す側面図。
図6】実施形態のドア装置の仮固定状態の締結部材と座金の引っ掛かり状態を示す断面図。
図7】実施形態のドア装置のドアリーフとドアハンガーの組付けの一工程を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、鉄道車両のドア装置1を車内側から見た正面図である。
ドア装置1は、乗員が出入りする出入口2(乗降口)を開閉するドアリーフ10と、出入口2の上部に固定設置されたドアレール3と、ドアレール3に図示しない戸車を介して移動可能に取り付けられるとともに、ドアリーフ10を吊り下げ支持するドアハンガー11と、ドアハンガー11を介してドアリーフ10を開閉方向に移動させる駆動装置4と、を備えている。ドアハンガー11は、ドアレール3に案内されることにより、ドアリーフ10の開閉方向に沿う方向に移動可能とされている。
本実施形態のドア装置1は、二枚のドアリーフ10が相反方向に移動して出入口2を開閉する。ただし、出入口2を開閉するドアリーフ10の枚数や移動方式はこれに限定されるものではない。
【0020】
図2は、ドアリーフ10とドアハンガー11の組付け部を車室外側の上部から見た斜視図である。図3は、ドアリーフ10とドアハンガー11の組付け部の側面図である。
ドアリーフ10は、図1に示すように、正面視が縦長の略長方形状に形成されている。ドアリーフ10は、図2図3に示すように、略一定厚みに形成され、上面10aは厚み方向と直交する方向(ドアリーフ10の開閉方向)に延びる平坦面とされている。ドアリーフ10は、上面10aを含む主要部が金属材料によって形成されている。
【0021】
以下の説明では、ドアリーフ10の移動する方向を「ドア開閉方向」と称し、ドアリーフ10の厚み方向を「ドア厚み方向」と称する。また、ドア厚み方向のうちの車外側に向く側を「ドア厚み方向外側」と称し、それと逆側を「ドア厚み方向内側」と称する。
なお、図面の適所には、鉛直上方を向く矢印Auと、ドア厚み方向外側(車外側)を向く矢印Aoと、ドア厚み方向内側(車内側)を向く矢印Aiが記されている。
【0022】
図4は、ドアハンガー11をドア厚み方向内側の下方から見た斜視図である。
ドアハンガー11は、図2図4に示すように、ドア開閉方向に長尺に延び、ドアリーフ10の上面10aに締結部材であるボルト17によって固定される平坦な締結壁12と、締結壁12のドア厚み方向内側の端部から上方に屈曲して延びる屈曲壁13と、を備えている。ドアハンガー11は、充分な厚みを持つ金属プレートによって形成されている。屈曲壁13のドア開閉方向に離間した複数個所(4個所)には、略矩形状の組付け孔14が形成されている。各組付け孔14は屈曲壁13の下端に達する位置まで広がり、その下端位置において、締結壁12のドア厚み方向内側の端部を内側(車内側)に露出させている。
【0023】
締結壁12のうちの、屈曲壁13の各組付け孔14に対応するドア開閉方向の位置には、ドア厚み方向内側に向かって開口する略U字状の切欠き15が形成されている。切欠き15は、締結壁12がボルト17の軸部17aと直交する姿勢の状態において、開口側からボルト17の軸部17aを受容し得る幅に形成されている。各切欠き15は、略U字形状の基部(開口側と逆側の端部)が、締結壁12のドア厚み方向の中央位置よりも外側(ドア厚み方向外側)位置になるように形成されている。また、締結壁12と屈曲壁13の間は、図2に示すように、適宜補強材16によって補強されている。なお、補強材16は必須ではなく、補強材16を設けない構成とすることも可能である。
【0024】
ドアハンガー11は、屈曲壁13がドア厚み方向内側となるように締結壁12がドアリーフ10の上面10aに重ねられ、その状態で締結壁12がドアリーフ10の上面10aにボルト17によって固定されている。ドアハンガー11は、図3に示すように、ドアリーフ10の上面10aに固定された状態において、屈曲壁13がドアリーフ10のドア厚み方向内側の端部よりも車内側(ドア厚み方向内側)にオフセットして配置される。また、締結壁12は、このときドアリーフ10のドア厚み方向外側の端部よりも車外側(ドア厚み方向外側)にはみ出さないように設定されている。
【0025】
締結部材であるボルト17の軸部17aには、スプリングワッシャ18と角座金19(座金)が取り付けられる。これらはボルト17の頭部17bと締結壁12の上面の間に介在される。スプリングワッシャ18はボルト17の頭部17bの座面に当接するように配置され、角座金19はスプリングワッシャ18の下面と締結壁12の上面に当接するように配置される。
【0026】
図5は、ドアリーフ10とドアハンガー11の組付けの一工程を示す側面図であり、図6は、その工程の際のボルト17の軸部17aに対する角座金19の引っ掛かり状態を示す断面図である。また、図7は、図5と同じ組付け工程を示す斜視図である。
角座金19は、ドア開閉方向に長い略長方形状に形成されている。本実施形態の角座金19は、全体が一定厚みの金属プレートによって形成されている。角座金19は、ドアリーフ10の上面10aに重ねられる長方形状のベース壁19aと、ベース壁19aのドア厚み方向外側の辺に上方側に屈曲して形成された補強壁19bと、ベース壁19aのドア厚み方向内側の辺に下方側に屈曲して形成された回転止め部19cと、を有する。
なお、角座金19は、ドアリーフ10の上面10aに締結された状態で、ドアリーフ10に対して車外側にはみ出さない大きさと形状に形成されている。ただし、角座金19が、ドアリーフ10の上面10aに締結された状態で、ドアリーフ10に対して車外側にはみ出さないことは必須ではなく、角座金19は、車外側にはみ出す大きさや形状であっても良い。
【0027】
角座金19のベース壁19aには、ボルト17の軸部17aが挿入される貫通孔20が形成されている。貫通孔20は、図6に示すように、その中心o1(締結部材の貫通位置の中心)が角座金19全体の重心Gに対しドア厚み方向外側にずれた位置となるように、ベース壁19aに形成されている。貫通孔20は、ベース壁19aの上下の面に対して直交するように形成されている。このため、貫通孔20の上下の各端部のエッジ部20eは略直角を成している。
なお、本実施形態では、貫通孔20は円形に形成されている。また、貫通孔20は、ベース壁19aのドア厚み方向の中心に対してドア厚み方向外側にずれた位置に形成されている。
【0028】
角座金19の補強壁19bは、ベース壁19aのドア厚み方向外側の端部となる辺の全域が上方に曲げられて形成されている。補強壁19bは、ベース壁19aのドア厚み方向外側の端部において、ドアリーフ10の開閉方向に沿う方向に延びている。また、補強壁19bは、ベース壁19aのドア厚み方向外側の端部となる辺が曲げられることにより、下側の角部に円弧状の湾曲面21が形成されている。湾曲面21は、ベース壁19aの下面と補強壁19bの外側面(ドア厚み方向外側に向く面)の間を滑らかに連続させている。
なお、補強壁19bは、角座金19のうちの貫通孔20を挟んで重心Gと反対側の端部に形成されている。
【0029】
また、角座金19の回転止め部19cは、ベース壁19aのドア厚み方向内側の辺の一部に形成された矩形断面の幅の狭い板片が下方に曲げられて形成されている。回転止め部19cは、ドア開閉方向の幅が、ドアハンガー11の切欠き15の幅とほぼ同幅(切欠き15の幅よりも若干狭い幅)に形成されている。回転止め部19cは、角座金19がドアハンガー11の締結壁12の上面の所定位置に配置されるときに、締結壁12の切欠き15の開口側の端部に嵌り合う。これにより、角座金19のボルト17の軸部17a周りの回転が規制される。
【0030】
以下、ドア装置1の組付け方法について説明する。
ドアハンガー11は、先に、出入口2の上部のドアレール3に戸車を介して取り付けておく。
一方、ドアリーフ10側では、各ボルト17の軸部17aにスプリングワッシャ18と角座金19を取り付け、その状態で各ボルト17の軸部17aの先端部をドアリーフ10の上面10aに仮固定(仮締め)しておく(図5図7参照)。なお、ボルト17の軸部17aは角座金19の貫通孔20に挿入される。
【0031】
このとき、ボルト17の軸部17aが鉛直方向を向くようにドアリーフ10を起立姿勢にしておくと、図6に示すように、角座金19が貫通孔20を中心として重心Gの方向に下方傾斜し、貫通孔20の上下のエッジ部20eがボルト17の軸部17aの外周面に引っ掛かる。これにより、角座金19は、傾斜姿勢を維持したままボルト17の軸部17aに支持されることになる。
なお、角座金19は、角座金19の下面とドアリーフ10の上面10aの間に充分な隙間が確保されるように上下方向の位置を調整する。また、角座金19は、ドアリーフ10の上面10aと角座金19の間の離間距離が最大となる側がドア厚み方向外側を向くように貫通孔20(軸部17a)を中心とした回転位置を調整する。
【0032】
次に、図5図7中のドット入りの矢印で示すように、ドアリーフ10と角座金19の仮組体をドアハンガー11に対して組み付ける。このとき、ドアリーフ10上の各角座金19がドアハンガー11の屈曲壁13の対応する組付け孔14に対向するように位置合わせを行い、各角座金19が補強壁19b側から対応する組付け孔14内に挿入されるように、ドアリーフ10をドアハンガー11の方向(ドア厚み方向外側)に移動させる。このとき、各角座金19は、ドアハンガー11の締結壁12の端部と対向する側が上方に傾斜しているため、ドアリーフ10の移動に伴って締結壁12の上面側に乗り上がる。こうしてドアリーフ10の移動が進むと、各角座金19の姿勢が傾斜姿勢から水平姿勢に変化し、各ボルト17の軸部17aが締結壁12の切欠き15に開口側から次第に受容される(挿入される)ようになる。各ボルト17の軸部17aが対応する切欠き15の最深部まで移動すると、ドアハンガー11に対するドアリーフ10の仮組みが完了する。
なお、角座金19が組付け孔14内に挿入されるときには、ドアハンガー11側の締結壁12の端部に角座金19の湾曲面21が当接することにより、角座金19の締結壁12の上面側への相対移動が円滑に案内される。
【0033】
この後、例えば、ドアハンガー11の各組付け孔14に工具を差し込み、その工具によって各ボルト17の頭部17bを締め込む。これにより、ドアハンガー11に対するドアリーフ10の固定が完了する。
【0034】
なお、ドアハンガー11の屈曲壁13に設けらている組付け孔14は、ボルト17の軸部17aが切欠き15内に受容されるときに、ボルト17に傾斜姿勢で支持された角座金19の挿入を許容する大きさと形状に形成されている。
【0035】
以上のように、本実施形態のドア装置1は、ボルト17の軸部17aをドアリーフ10に対して仮固定し、その状態で角座金19を重心Gの方向に傾斜させて角座金19の貫通孔20のエッジ部20eをボルト17の軸部17aの外周面に引っ掛けることにより、角座金19を傾斜姿勢に維持することができる。このため、粘着テープ等の特別な一時固定手段を用いることなく、角座金19とドアリーフ10の上面10aの間に傾斜した隙間を維持し、その状態でドアリーフ10をドアハンガー11に容易に仮組みすることができる。
したがって、本実施形態のドア装置1を採用した場合には、ドアハンガー11に対するドアリーフ10の組付け作業効率を高めることができる。
【0036】
なお、ドア装置1で採用する座金は、必ずしも外形が矩形状の角座金19である必要はないが、角座金19を採用した場合には、組付け時に座金の向きを容易に目視確認することができ、組付け作業性をより高めることができる。
さらに、本実施形態のように、ドアリーフ10の開閉方向に長い長方形状の角座金19を採用した場合には、肉厚の厚い角座金19によってドアハンガー11の締結壁12の長手方向の曲げ剛性を効率良く高めることができる。したがって、ドア装置1の実使用時に、ドアリーフ10の下方側にドア開き方向に大きな荷重が作用したときに、その荷重によるモーメントによって締結壁12に曲げ変形が生じるのを効果的に抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態のドア装置1は、角座金19のドア厚み方向内側の端部に回転止め部19cが設けられ、その回転止め部19cがドアハンガー11の切欠き15に嵌り合う構造とされている。このため、ドア装置1の組付け時にボルト17を締め込むときに、角座金19がボルト17とともに回転してしまうのを防止することができる。したがって、本構成を採用した場合には、ドア装置1の組付け作業をより容易にすることができる。
さらに、本実施形態のドア装置1は、回転止め部19cが角座金19のドア厚み方向内側の端部に設けられているため、回転止め部19cの重量を利用して角座金19の重心Gの位置を貫通孔20に対してドア厚み方向内側によりずらすことができる。
【0038】
また、本実施形態のドア装置1は、角座金19の貫通孔20を挟んで重心Gと反対側の端部に、ドアリーフ10の開閉方向に沿って延びる補強壁19bが屈曲、若しくは、湾曲して形成されている。このため、貫通孔20によって強度が低下し易い角座金19上の部位を補強壁19bによって補強することができるとともに、ドアハンガー11の締結壁12上の切欠き15によって強度が低下し易い部位を補強壁19bによって補強することができる。特に、補強壁19bは、ドアリーフ10の開閉方向に沿って延びているため、ドアハンガー11の締結壁12の長手方向の曲げ剛性を効率良く高め、ドアリーフ10の下方側にドア開き方向の大きな荷重が作用したときにおける締結壁12の曲げ変形を有効に規制することができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、角座金19の補強壁19bが、ドアハンガー11の締結壁12上の切欠き15よりもドア厚み方向外側に配置されている。このため、切欠き15よってドア厚み方向の幅の狭まった締結壁12上の部位の曲げ変形や捩じれ変形を補強壁19bによって効率良く抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態のドア装置1は、角座金19の貫通孔20を挟んで重心Gと反対側の端部の下方の角部に湾曲面21が設けられている。このため、ドアハンガー11にドアリーフ10を仮組みする際に、湾曲面21によるガイド作用によって角座金19をドアハンガー11の締結壁12上にスムーズに乗り上がらせることができる。したがって、ドアハンガー11に対するドアリーフ10の組付け作業をより効率化することができる。
【0041】
さらに、本実施形態のドア装置1は、補強壁19bの角座金19の重心Gと反対側の外側面(ドア厚み方向外側に向く面)と角座金19(ベース壁19a)の下面が湾曲面21を介して連続している。このため、ドアハンガー11にドアリーフ10を仮組みする際に、角座金19の補強壁19bがドアハンガー11の締結壁12の端部に当接したとしても、湾曲面21によるガイド作用によって、角座金19をドアハンガー11の締結壁12上にスムーズに乗り上がらせることができる。
【0042】
また、本実施形態のドア装置1は、ドアハンガー11の締結壁12の端部から上方に屈曲して延びる屈曲壁13に組付け孔14が設けられ、ドアハンガー11にドアリーフ10を仮組みする際に、ボルト17の軸部17aに支持された角座金19が組付け孔14を通して締結壁12上に配置できるようになっている。このため、ドアハンガー11にドアリーフ10を仮組みする際には、屈曲壁13に連結されて支持剛性の高い側の締結壁12の端部から角座金19の組付け(締結壁12の上面側への角座金19の配置)を行うことができる。したがって、本構成を採用した場合には、ドアハンガー11にドアリーフ10を仮組みする際に締結壁12の端部が撓み変形しにくくなり、仮組み作業を容易に行うことが可能になる。
【0043】
さらに、本実施形態のドア装置1は、鉄道車両の乗降口に適用され、ドアハンガー11の締結壁12の切欠き15が鉄道車両の車内側に開口し、ドアリーフ10に締結された角座金19がドアリーフ10に対して車外側にはみ出さない大きさとなっている。このため、角座金19が車外側に飛び出してドア収納部内のスペースを圧迫するのを防ぐことができる。
【0044】
<変形例>
上記の実施形態では、座金(角座金19)の形状中心が貫通孔20のボルト挿入位置の中心からずれるように設定することによって、座金の重心の位置を貫通孔20の貫通位置の中心o1からずらしている。座金の重心の位置を貫通孔20の貫通位置の中心o1からずらす手法はこれに限定されるものではない。他の手法としては、例えば、以下のものも採用することができる。
【0045】
(重心のずらし方1)
座金の重心の位置が貫通孔のボルト挿入位置の中心からずれるように、座金の一部の厚みを他の部分よりも厚くする。
【0046】
(重心のずらし方2)
座金の重心の位置が貫通孔のボルト挿入位置の中心からずれるように、座金の貫通孔を楕円形状等の非円形形状にする。
【0047】
(重心のずらし方3)
座金の重心の位置が貫通孔のボルト挿入位置の中心からずれるように、錘となる部材を取り付ける。
【0048】
(重心のずらし方4)
座金の重心の位置が貫通孔のボルト挿入位置の中心からずれるように、座金の一部を他の部分と比重の異なる材料によって形成する。
【0049】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、角座金19(座金)をドアハンガー11とともにドアリーフ10に締結する締結部材として頭部17bを有するボルト17を採用しているが、締結部材は、ドアリーフの上面側に固定したスタッドボルトと、その軸部に締め込まれるナットによって構成するようにしても良い。
また、本実施形態では、ドアハンガー11が出入口の上部に、戸車とドアレールによって移動可能に取り付けられているが、ドアハンガー11は、戸車やドアレールを用いずに、例えば、ドア開閉方向に移動する駆動装置の軸部に直接連結することも可能である。
さらに、上記の実施形態では、ドア装置を鉄道車両の乗降口に適用しているが、ドア装置は、鉄道車両以外の建造物等の出入口にも適用可能である。
また、締結部材であるボルト等の軸部は、断面円形であるものに限定されるものではなく、外周面の一部に切欠きのあるもの等、断面が非円形のものも含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1…ドア装置、2…出入口(乗降口)、10…ドアリーフ、10a上面、11…ドアハンガー、12…締結壁12…屈曲壁、14…組付け孔、15…切欠き、17…ボルト(締結部材)、17a…軸部、19…角座金(座金)、19b…補強壁、19c…回転止め部、20…貫通孔、21…湾曲面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7