(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20240409BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20240409BHJP
B01D 53/94 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
F01N3/24 N
F01N3/08 B ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 400
(21)【出願番号】P 2020189660
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石松 貴洋
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-145638(JP,A)
【文献】特開2016-133091(JP,A)
【文献】特開2017-187033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00, 3/02
F01N 3/04- 3/38
F01N 9/00-11/00
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気ガスを浄化する排気浄化装置であって、
上流側の排気流路を形成する上流部と、前記上流部よりも下流側の曲がった排気流路を形成する曲げ部と、前記曲げ部よりも下流側の排気流路を形成する下流部と、を有する流路部材と、
前記流路部材の排気流路に還元剤を供給する供給部と、
前記流路部材の中心軸に垂直な第1平面における排気流路の流路断面の一部の領域を塞ぐように前記上流部よりも下流側の排気流路内に設けられ、前記排気ガスに旋回流を発生させる攪拌部と、
を備え、
前記攪拌部は、
前記曲げ部の上流側から下流側に延びる湾曲した中心軸を通る第2平面により前記流路断面を前記第2平面の法線方向に第1流路断面と第2流路断面とに区分した場合に、前記第1流路断面を覆う面積と前記第2流路断面を覆う面積とが異なるように配置され、
前記流路部材の内面から前記流路部材の中心軸方向に延びる板状部材であり、前記流路部材の内面側の部分よりも、前記流路部材の中心軸側の部分の方が、前記第1平面における排気流路の流路断面の領域を塞ぐ面積が大きい、排気浄化装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の排気浄化装置であって、
前記攪拌部は、前記第1流路断面及び前記第2流路断面における当該攪拌部が投影された投影領域以外の領域の面積比率が異なるように配置される、排気浄化装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の排気浄化装置であって、
前記攪拌部は、前記第1流路断面側又は前記第2流路断面側において、前記投影領域が前記流路断面の全体面積の25~50パーセントを占めるように設けられる、排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか1項に記載の排気浄化装置であって、
前記攪拌部は、前記曲げ部の排気流路内に設けられる、排気浄化装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか1項に記載の排気浄化装置であって、
前記攪拌部は、前記流路部材の内面から、前記流路部材の中心軸方向かつ下流側方向に向かって延びる、排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から排出される排気ガスを浄化する技術として、排気ガス中に含まれる窒素酸化物を尿素水等の還元剤と触媒とによって還元するSCR(Selective Catalytic Reduction)システムが知られている。SCRシステムにおいては、排気流路内を流れる排気ガスに対して還元剤が噴射され、排気ガスと還元剤との混合ガスが触媒へ導かれる。SCRシステムにおいて排気ガスの浄化率を高めるためには、排気ガスと還元剤とが均一に混合されていることが好ましい。
【0003】
引用文献1には、排気流路内に噴射された還元剤と排気ガスとの混合ガスを曲がった排気管の下流側に設けられる反応器に収容される触媒に供給する構成において、排気ガスの密度を均一にするために排気ガスの流れを乱流にさせる遮蔽板が反応器内に設けられた排気浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、SCRシステムを車両等に搭載する場合、他の周辺機器との兼ね合いによる配置上の制約のため、上述した排気浄化装置のように、排気管が曲がった状態で配置されることが多い。
【0006】
上述した排気浄化装置では、曲がった排気管を排気ガスが通過する際に、排気ガスが遠心力によって排気管の曲げ部の外周側に多く流れる。これにより、還元剤も曲げ部の外周側に偏り、還元剤が偏った状態で反応器内に供給されるため、反応器内で乱流を生じさせたとしても、還元剤が十分に拡散されにくいという課題があった。
【0007】
本開示の一局面は、曲げ部の下流側から還元剤が均一に排出されやすくする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、内燃機関からの排気ガスを浄化する排気浄化装置であって、流路部材と、供給部と、攪拌部と、を備える。流路部材は、上流側の排気流路を形成する上流部と、上流部よりも下流側の曲がった排気流路を形成する曲げ部と、曲げ部よりも下流側の排気流路を形成する下流部と、を有する。供給部は、流路部材の排気流路に還元剤を供給する。攪拌部は、流路部材の中心軸に垂直な第1平面における排気流路の流路断面の一部の領域を塞ぐように上流部よりも下流側の排気流路内に設けられ、排気ガスに旋回流を発生させる。また、攪拌部は、曲げ部の上流側から下流側に延びる湾曲した中心軸を通る第2平面により流路断面を第2平面の法線方向に第1流路断面と第2流路断面とに区分した場合に、第1流路断面を覆う面積と第2流路断面を覆う面積とが異なるように配置される。
【0009】
このような構成では、攪拌部により、当該攪拌部の後方で、流路部材の中心軸を中心として流路部材の内面に沿って回転するような旋回流が発生する。これにより、攪拌部によって排気ガスが排気流路内を偏りが少なく流れやすく、曲げ部の下流側から還元剤が均一に排出されやすい。換言すると、排気ガスが遠心力によって曲げ部の外周側に多く流れることで還元剤が曲げ部の外周側に偏った場合にも、旋回流によって内周側にも還元剤が拡散されるため、還元剤が十分に拡散されやすい。したがって、還元剤が十分に拡散された状態の排気ガスが触媒へ供給されやすくすることができる。
【0010】
本開示の一態様では、攪拌部は、第1流路断面及び第2流路断面における当該攪拌部が投影された投影領域以外の領域の面積比率が異なるように配置される。
本開示の一態様では、攪拌部は、第1流路断面側又は第2流路断面側において、投影領域が流路断面の全体面積の25~50パーセントを占めるように設けられてもよい。このような構成によれば、還元剤の拡散効果が得られる程度の旋回流を発生させつつ、攪拌部によって排気流路の流路断面の一部の領域を塞ぐことによる圧力損失の増大を抑えることができる。
【0011】
本開示の一態様では、攪拌部は、曲げ部の排気流路内に設けられてもよい。このような構成では、遠心力による排気ガスの流れが最も偏りやすい曲げ部に攪拌部が設けられる。このため、攪拌部により発生する旋回流による還元剤の拡散効果をより高めることができる。
【0012】
本開示の一態様では、攪拌部は、流路部材の内面から流路部材の中心軸方向に延びる板状部材であり、流路部材の内面側の部分よりも、流路部材の中心軸側の部分の方が、第1平面における排気流路の流路断面の領域を塞ぐ面積が大きくてもよい。このような構成では、攪拌部における流路部材の内面側の部分周辺には隙間が形成され得るため、攪拌部によって排気流路の流路断面を塞ぎすぎることにより増大する圧力損失を抑えやすくすることができる。
【0013】
本開示の一態様では、攪拌部は、流路部材の内面から、流路部材の中心軸方向かつ下流側方向に向かって延びてもよい。このような構成では、攪拌部が排気ガスの流れに対して下流側に向かう傾斜を有する。このため、流路部材の中心軸に垂直な第1平面において同じ面積の投影領域を有する場合にも、例えば流路部材の内面から流路部材の中心軸に向かって垂直に延びるような構成と比較して、圧力損失を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図7】排気浄化装置の側面図において排気ガスの流れを模式的に示す図である。
【
図8】排気浄化装置の正面図において排気ガスの流れを模式的に示す図である。
【
図9】
図7のIX-IX拡大断面図において排気ガスの流れを模式的に示す図である。
【
図10】攪拌部が下流部に配置される構成の排気浄化装置の側面図である。
【
図13】排気ガスの流れに対して下流側に向かう傾斜を有する攪拌部を示す図である。
【
図14】排気ガスの流れに対して上流側に向かう傾斜を有する攪拌部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.実施形態]
[1-1.構成]
図1~
図4に示す排気浄化装置100は、自動車の内燃機関から排出された排気ガスGを浄化するための装置である。排気浄化装置100は、流路部材1と、供給部2と、混合部3と、攪拌部4と、触媒ケース5と、触媒6と、を備える。以下の説明では、
図1を基準に上下方向、左右方向及び前後方向を表現するが、あくまでも説明の便宜上の表現であり、排気浄化装置100が設けられる向きは特に限定されない。なお、
図2~
図4において触媒6の図示を省略し、
図4において混合部3の図示を省略する。
【0016】
流路部材1及び触媒ケース5は、排気ガスGを自動車の外部へ導くための排気流路の一部を形成する。流路部材1は、L字状に湾曲した円筒状の部材である。流路部材1は、単一の部材であってもよいし、複数の異なる部材により形成されていてもよい。流路部材1は、当該流路部材1の中心軸Aと直交する方向における流路断面が円形である。流路部材1は、排気ガスGの流れ方向において上流側から順に、上流部11と、曲げ部12と、下流部13と、を有する。
【0017】
上流部11は、上流側の排気流路を形成する。上流部11は、中心軸Aを中心として前後方向に延びる、直管状の部分である。
下流部13は、上流部11よりも下流側の排気流路を形成する。下流部13は、中心軸Aを中心として上下方向に延びる、直管状の部分である。本実施形態では、下流部13は、当該下流部13の中心軸の延長線上の線が上流部11の中心軸の延長線上の線と直交するように上方に延びる。
【0018】
曲げ部12は、上流部11よりも下流側かつ下流部13よりも上流側の曲がった排気流路を形成する。曲げ部12は、上流部11と下流部13とを連結する、流路断面積がほぼ一定の湾曲した管状の部分である。流路断面積とは、排気流路における排気ガスGの流れ方向に直交する断面、すなわち排気流路の流路断面の面積である。本実施形態において、上流部11の直径、曲げ部12の直径及び下流部13の直径はほぼ等しい。つまり、上流部11、曲げ部12及び下流部13の流路断面積はほぼ等しい。
【0019】
触媒ケース5は、円筒状に形成された管であり、流路部材1よりも下流側、換言すると下流部13よりも下流側の排気流路を形成する。触媒ケース5は、流路部材1よりも大きい流路断面積を有する。換言すると、触媒ケース5は、流路部材1の外径よりも大きい内径を有する。本実施形態では、触媒ケース5は流路部材1の下流部13よりも上方に配置され、触媒ケース5の上流側端部側の下方側面に下流部13の下流側端部が溶接等によって接合される。このように、触媒ケース5と流路部材1とを連結する。これにより、下流部13を流れる排気ガスGは、触媒ケース5の側面から触媒ケース5内に供給され、触媒6に供給される。
【0020】
なお、下流部は、曲げ部12の下流側にて排気流路を形成する部材を意味しており、必ずしも曲げ部12と同等の直径の管状部材でなくてもよい。例えば、曲げ部12と触媒ケース5とが直接連結するような構成の場合は、触媒ケース5における曲げ部12のすぐ下流側の部分が下流部に相当する。
【0021】
触媒6は、排気ガスG中に含まれる大気汚染物質である窒素酸化物(NOX)を還元する機能を有するSCR(Selective Catalytic Reduction:選択触媒還元)方式の触媒である。触媒6は、当該触媒6の外周面に図示しないマット等の緩衝部材が設けられた状態で、触媒ケース5に収容されている。
【0022】
供給部2は、液状の還元剤原料を噴射し、流路部材1の上流部11の排気流路における後述する混合部3よりも上流側へ還元剤を供給する供給装置として機能する。排気ガスG中に噴射された尿素水は、排気ガスGの熱により加水分解してアンモニア(NH3)が生じ、こうして生じたアンモニアが還元剤として機能する。尿素水の加水分解により生じたアンモニアは、排気ガスGと共に触媒6へ供給され、排気ガスG中の窒素酸化物は、触媒6においてアンモニアと反応し、還元浄化される。
【0023】
混合部3は、供給部2よりも下流側の上流部11の排気流路内に設けられている。混合部3は、供給部2から供給された液状の還元剤を気化させ、気化された還元剤と排気ガスGとを混合する混合装置として機能する。混合部3は、例えば、金属製の羽根部材や、金属製の円形部材に孔を形成したもの等があるが、これらに限られない。
【0024】
攪拌部4は、上流部11よりも下流側の排気流路内であって、触媒6よりも上流側に設けられ、還元剤が十分に拡散された状態の排気ガスGを触媒6へ導くために、排気ガスGに旋回流を発生させることで還元剤と排気ガスGとを攪拌させる攪拌装置として機能する。
【0025】
本実施形態では、攪拌部4は、曲げ部12の排気流路内、具体的には、曲げ部12における曲率が最も大きい部分に設けられる。より具体的には、攪拌部4は、曲げ部12が略90°に曲がった形状にて、曲げ部12の中心軸Aの長さの略半分の部分に設けられる。攪拌部4は、曲げ部12の内面から中心軸A方向に延びる板状部材であり、溶接等によって曲げ部12の内面に接合される。攪拌部4は、
図5に示す第1平面B1における排気流路の流路断面の一部の領域を塞ぐ。第1平面B1は、中心軸Aに垂直な仮想的な平面である。本実施形態では、攪拌部4は、
図6に示すように、第1平面B1に平行に延びる。換言すると、攪拌部4は、曲げ部12の内面から中心軸Aに向かって垂直に延びる。
図5に示すように、攪拌部4は、曲げ部12の内面側の端部よりも中心軸A側の部分、具体的には中心軸A側の端部が、曲げ部12の内面側の端部よりも、曲げ部12の内径方向に広がる形状を有する。換言すると、攪拌部4は、中心軸A側の端部が、曲げ部12の内面側の端部よりも、曲げ部12の内面側から攪拌部4が延び出す方向と直交する方向、かつ、排気ガスGの流れ方向とも直交する方向に広がる形状を有する。具体的には、攪拌部4は、中心軸Aに垂直な方向から見て略T字状に形成されている。
【0026】
本実施形態では、攪拌部4は、曲げ部12の内面側の部分よりも、中心軸A側の部分の方が、第1平面B1における排気流路の流路断面の領域を塞ぐ面積が大きい。ここで、攪拌部4における曲げ部12の内面側の部分とは、曲げ部12の内面側の端部から攪拌部4の幅が広くなるまでの部分であり、攪拌部4における中心軸A側の部分とは、中心軸A側の端部から攪拌部4の幅が狭くなるまでの部分である。なお、上述したように攪拌部4の中心軸A側の部分の方が上記面積が大きくなる別の例としては、例えば、攪拌部4の中心軸A側ほど徐々に幅が広くなる形状や、攪拌部4の曲げ部12の内面側の端部側の位置に排気ガスが通過する貫通孔が形成された形状などがある。
【0027】
図5に示すように、曲げ部12の排気流路の流路断面を、例えば、第2平面B2により第1流路断面121と第2流路断面122とに区分する。第2平面B2は、曲げ部12の上流側から下流側に延びる湾曲した中心軸A、すなわち曲げ部12の上流側における前後方向と下流側における上下方向との異なる2つの方向を有する中心軸Aを通る仮想的な平面である。なお、第2平面B2は、第1平面B1と直交する。よって、曲げ部12の排気流路の流路断面は、左右方向、すなわち第2平面B2の法線方向に、第1流路断面121と第2流路断面122とに区分される。換言すると、曲げ部12の排気流路の流路断面は、曲げ部12を中心軸Aを中心として左右対称な形状を有するように区分する上下方向に延びる平面により、左側の第1流路断面121と右側の第2流路断面122とに区分される。つまり、曲げ部12の排気流路の流路断面を、中心軸Aを通る平面であって左右2つに区別する平面が第2平面B2である。
【0028】
本実施形態では、曲げ部12の排気流路の流路断面を上述したように2つの領域に区分した場合、攪拌部4は、第1流路断面121側に、当該第1流路断面121の一部の領域を塞ぐように設けられる。なお、攪拌部4は、第2流路断面122側に、当該第2流路断面122の一部の領域を塞ぐように設けられてもよい。攪拌部4は、第1流路断面121側又は第2流路断面122側において、第1流路断面121又は第2流路断面122における攪拌部4が投影された投影領域が、流路断面の全体の面積の25~50パーセントを占めるように配置されることが好ましい。本実施形態では、攪拌部4は、第1流路断面121側において、第1流路断面121における攪拌部4が投影された投影領域が流路断面の全体の面積の約35パーセントを占める。
【0029】
[1-2.攪拌部により発生する旋回流に伴う排気ガスの流れ]
図7~
図9では、攪拌部4により発生する旋回流に伴う排気ガスGの流れ方向を簡易的に排気流れG1として示す。
【0030】
排気ガスGは、曲げ部12を通過する際、遠心力により曲げ部12の外周側に多く流れる。これに伴い、還元剤も曲げ部12の外周側に偏って流れる。本実施形態では、曲げ部12の第1流路断面121側に攪拌部4が配置されるため、排気ガスGは、第2流路断面122側を通過して、攪拌部4の裏側に負圧により流れ込む。これにより、攪拌部4の後方で、中心軸Aを中心として曲げ部12の内面に沿って、曲げ部12の上流側から見た場合に反時計回りの旋回流が発生する。
【0031】
より具体的には、曲げ部12の攪拌部4が設けられる部分の第1平面B1において、排気ガスGは、攪拌部4で覆われていない部分であって曲げ部12の外周側の領域(
図9で示す第1領域C1)に最も流れやすく、次いで、攪拌部4で覆われていない部分であって曲げ部12の内周側の領域(
図9で示す第2領域C2)に流れやすい。そして、攪拌部4で覆われている部分の裏側の領域(
図9で示す第3領域C3)が負圧になりやすいことから、反時計回りの旋回流が発生する。
【0032】
このため、
図7~
図9に示すように、攪拌部4よりも下流側では、排気流れG1のように排気ガスGが流れる。このように、攪拌部4が設けられることによって、排気ガスGが流路部材1の曲げ部12を通過する際、遠心力によって曲げ部12の外周側に多く流れることで還元剤が曲げ部12の外周側に偏った場合にも、上述したような旋回流によって内周側にも還元剤が拡散される。なお、攪拌部4が第2流路断面122側に設けられる場合には、攪拌部4の後方で、中心軸Aを中心として曲げ部12の内面に沿って、曲げ部12の上流側から見た場合に時計回りの旋回流が発生する。この場合にも、本実施形態と同様に、外周側に偏った還元剤が拡散される。
【0033】
[2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)本実施形態では、曲げ部12の排気流路内の第1流路断面121側に攪拌部4が設けられる。このため、攪拌部4の後方で、中心軸Aを中心として曲げ部12の内面に沿って回転するような旋回流が発生する。これにより、攪拌部4によって排気ガスが排気流路内を偏りが少なく流れやすく、曲げ部12の下流側から排出される還元剤は均一になりやすい。
【0034】
本実施形態のように混合部3及び攪拌部4を有する排気浄化装置100の場合、排気ガスGが遠心力によって曲げ部12の外周側に多く流れることで還元剤が曲げ部12の外周側に偏った場合にも、旋回流によって曲げ部12の内周側にも還元剤が拡散されるため、還元剤が十分に拡散されやすい。したがって、還元剤が十分に拡散された状態の排気ガスGが触媒へ供給されやすくすることができる。
【0035】
また、本実施形態では、攪拌部4は、曲げ部12における曲率が最も大きい部分に位置する。このように、上流部11よりも下流側の排気流路内のうち、排気ガスGの排気流路の外周側への偏りが大きくなる位置、かつ、触媒6との間の距離を大きく取れる位置に攪拌部4が配置される。これにより、攪拌部4により発生する旋回流による曲げ部12の排気流路の外周側に偏った還元剤の拡散効果、及び、触媒6との間の距離が小さくなることにより低減される還元剤の分散効果をより高めることが可能である。
【0036】
(2b)本実施形態では、攪拌部4は、中心軸Aに垂直な方向から見て略T字状に形成されている。これにより、攪拌部4における曲げ部12の内面側の端部周辺には隙間が形成され得るため、曲げ部12の内面側の領域を大きく塞ぐような構成と比較して、圧力損失が低減される。したがって、攪拌部4によって曲げ部12の排気流路の流路断面を塞ぎすぎることにより増大する圧力損失を抑えやすくすることができる。
【0037】
(2c)本実施形態では、攪拌部4は、第1流路断面121における攪拌部4が投影された投影領域が流路断面の全体の面積の約35パーセントを占める。これにより、還元剤の拡散効果が得られる程度の旋回流を発生させつつ、攪拌部4によって曲げ部12の排気流路の流路断面の一部の領域を塞ぐことによる圧力損失の増大を抑えることができる。
【0038】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0039】
(3a)上記実施形態では、攪拌部4が曲げ部12の曲率が最も大きい部分に設けられる構成を例示したが、排気流路内において、攪拌部4が設けられる位置はこれに限定されるものではない。例えば、攪拌部4は、上流部11よりも下流側であって、触媒6よりも上流側の位置である曲げ部12及び下流部13の任意の位置に設けられていてもよい。
【0040】
例えば、
図10及び
図11に示すように、攪拌部4aは、下流部13に設けられていてもよい。なお、攪拌部4aは、触媒6との間の距離が大きくなるように、下流部13の上流側に設けられることが好ましい。これにより、触媒6との間の距離が小さくなることで還元剤の分散効果が低減することを抑制することができる。
【0041】
(3b)上記実施形態では、攪拌部4が第1流路断面121側に設けられる構成を例示したが、攪拌部は、第1流路断面121を覆う面積と第2流路断面122を覆う面積とが異なるように配置されるような構成であれば、攪拌部が設けられる位置はこれに限定されるものではない。例えば、攪拌部は、第2流路断面122側に設けられていてもよい。また、例えば、攪拌部は、第1流路断面121及び第2流路断面122における攪拌部が投影された投影領域以外の領域の面積比率が異なるような構成であれば、第1流路断面121及び第2流路断面122の両方の領域を含むような配置であってもよい。この場合、第1流路断面121の投影領域が第2流路断面122の投影領域よりも大きく、又は、第2流路断面122の投影領域が第1流路断面121の投影領域よりも大きくなるように配置される。
【0042】
(3c)上記実施形態では、攪拌部4が略T字状に形成される構成を例示したが、攪拌部4の形状はこれに限定されるものではない。攪拌部は、第1流路断面121及び第2流路断面122における攪拌部が投影された投影領域以外の領域の面積比率が異なるように流路部材1の排気流路の流路断面の一部を塞ぐような形状であれば、どのような形状を有していてもよい。例えば、
図12に示すように、攪拌部4bは、半円状に形成されていてもよい。攪拌部4bは、第1流路断面121及び第2流路断面122のいずれかの領域を全て塞ぐように配置されていてもよい。
図12に示す例では、第1流路断面121に攪拌部4bが配置され、第1流路断面121における攪拌部4bが投影された投影領域が流路断面の全体の面積の50パーセントを占める。
【0043】
(3d)上記実施形態では、攪拌部4は、第1平面B1に平行に延びるような構成を例示したが、攪拌部は、第1平面B1に対して角度を有する構成であってよい。例えば、
図13に示すように、攪拌部4cは、攪拌部4cが排気ガスGの流れ、換言すると第1平面B1に対して下流側に向かう傾斜を有するように、流路部材1の内面から中心軸A方向かつ下流側方向に向かって延びてもよい。これにより、中心軸Aに垂直な第1平面B1において同じ面積の投影領域を有する場合にも、流路部材1の内面から流路部材1の中心軸Aに向かって垂直に延びるような構成と比較して、圧力損失を小さくすることができる。また、
図14に示すように、攪拌部4dは、攪拌部4dが排気ガスGの流れ、換言すると第1平面B1に対して上流側に向かう傾斜を有するように、流路部材1の内面から中心軸A方向かつ上流側方向に向かって延びてもよい。
【0044】
(3e)曲げ部が3次元で曲がっている場合、本開示を逸脱しない範囲で、2次元とみなして本開示を適用することができる。
(3f)排気浄化装置は、混合部3を有しない構成であってもよい。
【0045】
(3g)上記実施形態では、供給部2は、上流部11の排気流路に設けられる構成を例示したが、供給部が設けられる場所はこれに限定されるものではない。例えば、供給部は、曲げ部12及び下流部13のいずれかの排気流路に設けられる構成であってもよい。ただし、上記実施形態のように、供給部は上流部11に設けられることが好ましい。
【0046】
(3h)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0047】
1…流路部材、2…供給部、3…混合部、4,4a~4d…攪拌部、5…触媒ケース、6…触媒、11…上流部、12…曲げ部、13…下流部、100…排気浄化装置、121…第1流路断面、122…第2流路断面、A…中心軸、B1…第1平面、B2…第2平面、G…排気ガス。