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特許7469227耐酸化性に優れた粒界強化型UNおよびU3Si2ペレット
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  • 特許-耐酸化性に優れた粒界強化型UNおよびU3Si2ペレット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】耐酸化性に優れた粒界強化型UNおよびU3Si2ペレット
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/62 20060101AFI20240409BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240409BHJP
【FI】
G21C3/62 300
G21C3/62 220
G21C3/62 600
B22F1/00 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020541427
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 US2019015618
(87)【国際公開番号】W WO2019152388
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】62/623,621
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/655,421
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ラホーダ、エドワード、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュウ、ペン
(72)【発明者】
【氏名】エルリッチ、ロバート、エル、ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】シャー、ヘマント
(72)【発明者】
【氏名】ライト、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】チャイ、ルー
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-520642(JP,A)
【文献】特開平04-001594(JP,A)
【文献】特開2004-333435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0240334(US,A1)
【文献】特開2014-129683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/00-3/64
G21C 21/00-21/18
B22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Siから成り、粉末状で、粒界を有する粒子より成る核分裂性物質(12)を耐酸化性材料から選択した添加物(14)と混合するステップと、
当該核分裂性物質と当該添加物の混合物を加圧してペレットにするステップと、
当該ペレットを、当該添加物の融点を超える焼結温度で焼結することにより、当該添加物(14)を溶融させて当該核分裂性物質(12)の粒界内部に浸透させ、当該ペレットを緻密化させるステップと
を含み、
当該添加物の融点は当該核分裂性物質の融点よりも低いことを特徴とする方法。
【請求項2】
UNおよびUSiから成る群より選択した核分裂性物質(12)の粒子であって、粒界を有する圧縮および緻密化された粒子より成るペレットと、
当該核分裂性物質の当該粒界の少なくとも一部を覆う耐酸化性添加物(14)と
より成り、
当該耐酸化性添加物の融点は当該核分裂性物質の焼結温度よりも高く、当該耐酸化性添加物のメジアン粒度は当該核分裂性物質のメジアン粒度よりも小さい、原子燃料。
【請求項3】
前記核分裂性物質(12)はUNであり、前記耐酸化性添加物(14)は、タングステン、タングステンを少なくとも50%の原子濃度で含む合金、およびUOからなる群より選択される、請求項に記載の原子燃料。
【請求項4】
Siから成る核分裂性物質(12)の粒子であって、粒界を有する圧縮および緻密化された粒子より成るペレットと、
当該核分裂性物質の当該粒界の少なくとも一部を覆う耐酸化性添加物(14)と
より成り、
当該耐酸化性添加物の融点は当該核分裂性物質の焼結温度よりも低く、当該耐酸化性添加物は溶融して当該粒界の少なくとも一部に浸透している、原子燃料。
【請求項5】
前記耐酸化性添加物(14)の量は、前記核分裂性物質(12)の20重量%未満である、請求項に記載の原子燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利に関する陳述
本発明は、エネルギー省との契約第DE-NE0008222号に基づく政府支援の下でなされたものである。米国政府は、本発明に対して一定の権利を有している。
【0002】
本発明は原子炉用燃料に関し、具体的には、原子燃料の耐腐食性を高める方法に関する。
【背景技術】
【0003】
軽水炉の安全性と性能の向上は、継続的な研究課題である。窒化ウラン(UN)およびケイ化ウラン(USi)燃料は、高い熱伝導率と密度を有することから、新型軽水炉の燃料の最有力候補に選ばれている。しかし、UN燃料の大きな弱点の一つは、通常の運転条件や高温の下で水や蒸気と相互作用することである。USiはUNほど水や蒸気と激しく反応しないが、改善できるのであれば有益である。UNやUSiは、水や蒸気に晒されると粒界が真っ先に攻撃を受け、それがこれらの核分裂性物質の急速な反応や分解の主な原因らしいことが文献で報告されている。
【0004】
UNおよびUSi燃料は、熱伝導率と密度がほとんどの燃料タイプに比べて大幅に改善されている。UNやUSiの水や蒸気に対する耐腐食性の問題が解決されれば、事故耐性燃料ペレットとしての魅力が大幅に高まるであろう。
【発明の概要】
【0005】
本願には、窒化ウラン(UN)およびケイ化ウラン(USi)ペレットに添加物またはドーパントを添加して、原子炉運転時の冷却材および冷却材喪失事故時の高温蒸気の水に対する耐腐食性を向上させる方法が記載されている。UNペレットは、水中や蒸気中(200℃でも)の耐酸化性が極めて小さいことがわかっている。USiの耐酸化性はUNほど小さくないが、360℃以上の高温では空気、水または蒸気と反応する。E. Sooby Wood, et al.の「Oxidation behavior of U-Si compounds in air from 25 to 1000℃」、Journal of Nuclear Materials、484(2016)、pp. 245-257を参照のこと。
【0006】
本願に記載する原子燃料の耐腐食性を向上させる方法は、UNおよびUSiから成る群より選択した、粉末状で、粒界を有する粒子より成る核分裂性物質を、耐酸化性材料から選択した添加物と混合するステップと、当該核分裂性物質と当該添加物との混合物を加圧してペレットにするステップと、当該ペレットを、当該添加物の融点を超える温度であって、当該添加物を溶融させて当該核分裂性物質の粒界内部に浸透させ、当該ペレットを緻密化させるに十分な温度で焼結するステップとを含む。当該選択した添加物はまた、当該UNまたはUSiよりも高い融点を有する一方で、当該UNまたはUSiに比べて有意に小さいメジアン粒度を有してもよい。様々な局面において、当該耐酸化性添加物は、当該核分裂性物質の焼結温度よりも低い融点を有してよい。様々な局面において、当該耐酸化性添加物の融点がUNまたはUSiの焼結温度より高い場合、当該耐酸化性粒子のメジアン粒度は、当該UNまたはUSiメジアン粒度の10%未満とするとよい。
【0007】
本願に記載する方法によると、少量の耐酸化性配合物(20重量%未満)が、当該核分裂性物質(すなわちUNおよびUSi)の粒界に組み込まれ、耐酸化性を改善させる。当該添加物は粉末状で、加圧してペレットにし焼結する前に、USiまたはUN粉末に添加するか混合すればよい。加圧してペレットにし焼結する前に、当該USiまたはUN粉末を当該添加物で覆って保護層を形成する。また、当該耐酸化性粒子をUNまたはUSiの生(未焼)ペレットに蒸着(物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積など)して、当該粒子が当該ペレットの外面を覆い、当該生ペレットに開いた間隙や通孔に浸透するようにしてもよい。焼結すると、当該耐酸化性材料は、当該UNまたはUSiの粒子外面構造(粒界)に組み込まれる。
【0008】
或る特定の局面において、当該添加物は、モリブデン、チタン、アルミニウム、クロム、トリウム、銅、ニッケル、マンガン、タングステン、ニオブ、ジルコニウム、イットリウム、セリウムおよびマグネシウム、ならびにモリブデン、チタン、アルミニウム、クロム、トリウム、銅、ニッケル、マンガン、タングステン、ニオブ、ジルコニウム、イットリウム、セリウムおよびマグネシウムのうちの少なくとも1つを50%以上の原子濃度で含む合金、ならびに窒化マグネシウム、ZrSi、ZrSiO、CrSi、BeOおよびUO、ならびにホウケイ酸ガラスなどのガラス質材料のうちの1つまたはその混合物を含む。当該核分裂性物質と混合される当該添加物もしくは添加物の混合物はUNもしくはUSiの融点よりも低い融点を有するか、または、当該添加物もしくは添加物の混合物は当該原子燃料との間で低融点共晶を形成する。
【0009】
様々な局面において、液相焼結または共焼結によって緻密化を達成する。ペレットは例えば、無圧焼結、熱間加圧、熱間等方圧加圧、放電プラズマ焼結、電場支援焼結またはフラッシュ焼結から成る群より選択される焼結方法を用いて焼結することができる。当業者であれば、任意の適切な既知の焼結方法を使用できることがわかるであろう。
【0010】
本願はまた、UNおよびUSiから成る群より選択した圧縮および緻密化された核分裂性物質の粒子と、好ましくは当該核分裂性物質の約20重量%未満の量存在し、当該核分裂性物質の粒界の少なくとも一部を覆う耐酸化性添加物とを含むペレットを具備する原子燃料の製造方法を記載する。或る特定の局面において、当該添加物は、モリブデン、チタン、アルミニウム、クロム、トリウム、銅、ニッケル、マンガン、タングステン、ニオブ、ジルコニウム、イットリウム、セリウムおよびマグネシウム、ならびにモリブデン、チタン、アルミニウム、クロム、トリウム、銅、ニッケル、マンガン、タングステン、ニオブ、ジルコニウム、イットリウム、セリウムおよびマグネシウムのうちの少なくとも1つを50%以上の原子濃度で含む合金、ならびに窒化マグネシウム、ZrSi、ZrSiO、CrSi、BeOおよびUO、ならびにホウケイ酸ガラスなどのガラス質材料のうちの1つまたはその混合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付の図面を参照することにより、本発明の特徴と利点の理解が深まるであろう。
【0012】
図1】A部は核分裂性物質の粒界の概略図を示し、B部は粒子を覆う二次相の理想像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願に使用する「a」、「an」および「the」に先導される単数形は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、複数形をも包含する。したがって、本願に使用する冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上における対象物が1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)であることを表す。例として、「an element」は1つの要素または複数の要素を意味する。
【0014】
特許請求の範囲を含み、本願では、特段の指示がない限り、量、値または特性を表すあらゆる数字は、すべての場合において「約」という用語により修飾されると理解されたい。したがって、数字と共に「約」という用語が明記されていない場合でも、その数字の前に「約」という語があるものと読み替えることができる。したがって、別段の指示がない限り、以下の説明に記載されるすべての数値パラメータは、本発明に基づく組成物および方法において指向する所望の特性に応じて変わる可能性がある。最低限のこととして、また均等論の適用を特許請求の範囲に限定する意図はないが、本願に記載された各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を勘案し、通常の丸め手法を適用して解釈するべきである。
【0015】
また、本願で述べるあらゆる数値範囲は、内包されるすべての断片的部分を含むものとする。例えば、「1~10」という範囲は、記述された最小値1と最大値10との間(最小値と最大値を含む)のあらゆる断片的部分を含むことを意図している。すなわち、最小値は1以上、最大値は10以下である。
【0016】
本願は、UNおよびUSi原子燃料などの核分裂性物質の粒界の耐酸化性を向上させる方法を記載する。粒界の耐酸化性が向上すると、燃料と水や蒸気との間の相互作用が抑制され、燃料棒に漏洩が生じても燃料ペレットの流出を最小限に抑えることができる。
【0017】
粒界の耐酸化性が向上すると、USiやUNが高温の水や蒸気にさらされたときの重要な劣化メカニズムである、酸化反応に伴う低密度UOの形成によるフラグメンテーションに対する抵抗力が増す。粒界の改質は、USiやUNのような高密度燃料の耐腐食性や耐酸化性を向上させるための最も効果的な方法と考えられる。
【0018】
本願は、粒界の耐酸化性を向上させ、原子燃料の耐腐食性を向上させる方法を記載する。この方法では、UNおよびUSiから成る群より選択した粉末状の核分裂性物質と、耐酸化性材料から選択した添加物とを混合する。様々な局面において、添加物は、核分裂性物質の焼結温度よりも低い融点を有してよい。混合物を加圧してペレットにしたあと、添加物の融点を超える温度で焼結する。添加物は、溶融すると、核分裂性物質のまだ固体のままの粒子の周りを流れ、核分裂性物質の粒界を覆い、ペレットを緻密化させる。様々な局面において、耐酸化性粒子の融点がUNまたはUSiの焼結温度より高い場合、耐酸化性粒子のメジアン粒度は、UNまたはUSiメジアン粒度の10%未満としてよい。或る特定の局面では、USiまたはUN粉末を添加物で覆って保護層を形成してから、加圧してペレットにし焼結してもよい。また、耐酸化性粒子をUNまたはUSiの生(未焼)ペレットに蒸着(物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積など)することにより、当該粒子がペレットの外面を覆い、当該生ペレットに開いた沢山の間隙や通孔に浸透するようにしてもよい。焼結すると、耐酸化性材料は、UNまたはUSiペレットの粒子外面構造(粒界)に組み込まれる。
【0019】
粒界に沿って分布する添加物は、USi粒子からのXeやKrなどの核分裂生成ガスやヨウ素などの揮発性核分裂生成物の放出を停止できる可能性がある。その結果、燃料棒の内圧が下がり、運転余裕と乾式貯蔵が改善される。耐酸化性に加えて、耐腐食相により、USiと被覆、プレナムばね、および他の燃料棒内部部品(例えばUSiを端栓およびプレナムばねから分離させるスペーサ)との間の相互作用も防止される。
【0020】
添加物は粉末状でよく、加圧してペレットにし焼結する前に、USiまたはUN粉末に添加するか混合することができる。当該USiまたはUN粉末を当該添加物で覆って保護層を形成させたあと、加圧してペレットにし焼結してもよい。添加物の望ましい特性は、耐酸化性材料であり、融点が、混合の対象である核分裂性物質(UNまたはUSi)の融点よりも低く、様々な局面において当該核分裂性物質の焼結温度より少なくとも200℃、或る特定の局面では200~300℃低いことである。代案として、耐酸化性粒子の融点がUNまたはUSiの焼結点よりも高い場合、耐酸化性粒子のメジアン粒度はUNまたはUSiメジアン粒度の10%未満、或る特定の局面では1%未満でよい。
【0021】
或る特定の局面において、例示的な添加物は、モリブデン、チタン、アルミニウム、クロム、トリウム、銅、ニッケル、マンガン、タングステン、ニオブ、ジルコニウム、イットリウム、セリウムおよびマグネシウム、ならびにモリブデン、チタン、アルミニウム、クロム、トリウム、銅、ニッケル、マンガン、タングステン、ニオブ、ジルコニウム、イットリウム、セリウムおよびマグネシウムのうちの少なくとも1つを50%以上の原子濃度で含む合金、ならびに窒化マグネシウム、ZrSi、ZrSiO、CrSi、BeOおよびUO、ならびにホウケイ酸ガラスなどのガラス質材料のうちの1つまたはそれらの混合物を含む。(1)添加物もしくは添加物の混合物の融点は混合の対象である核分裂性物質(UNもしくはUSi)の融点よりも低いか、または、(2)添加物もしくは添加物の混合物は原子燃料との間で低融点の共晶を形成する。例えば、核分裂性物質はUNで、添加物としてBeOを混合してもよい。BeOの融点は、UNの焼結温度よりも低い。当業者は、核分裂性物質の融点または焼結温度と、耐酸化性添加物の融点をチェックするか、あるいは、選択された核分裂性物質および添加物の共晶の融点をチェックし、本願に記載する方法に従って、UNまたはUSiのいずれかと混合させる適当な添加物または添加物の混合物を選択すればよい。
【0022】
燃料と添加物の混合物からのペレットの形成は、所望の「生」密度および強度が得られるように、粒子混合物を市販の適当な機械式または液圧式プレスで圧縮することにより行うことができる。
【0023】
基本的なプレスは単動式のダイプラテンが組み込まれているが、最も複雑な様式のプレスは、「複数レベルの」部品を形成できるように複動式のプラテンを具備する。プレスは、広範囲にわたる加圧能力に応じて選択可能である。粉末を圧縮して、所望のコンパクトなペレットにするために必要な加圧能力は、部品の投影表面積と、粉末の圧縮特性によって決まる荷重係数との積によって求められる。
【0024】
プロセスを開始するに当たって、ダイに粒子混合物を充填する。ダイ充填速度は、主に粒子の流動性に基づく。ダイを充填したら、パンチを粒子の方へ移動させる。パンチが粒子に圧力をかけて、ダイの幾何学形状に圧密化する。或る特定のペレット形成プロセスでは、ダイに供給した粒子に数百MPaの荷重をかけて二軸圧縮し、円柱形ペレットを形成する。
【0025】
圧縮に続いて、耐酸化性粒子をUNまたはUSiの生(未焼)ペレットに蒸着(物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積など)することにより、当該耐酸化性粒子がペレットの外面を覆い、当該生ペレットの開いた間隙や通孔に浸透するようにしてもよい。ペレットを、加熱炉の制御された雰囲気(通常はアルゴンを含む)内で加熱して焼結する。加熱温度は、焼結する材料によって異なる。焼結は、圧縮時に粒子に形成された機械的結合をより強固な結合に変換してペレットの強度を大幅に高めることにより、生ペレットの硬化した固まりを作る熱的プロセスである。焼結すると、耐酸化性材料は、UNまたはUSiペレットの粒子外面構造(粒界)に組み込まれる。圧縮および焼結済みペレットを冷却し、所望の寸法に機械加工する。例示的なペレットの直径は約1センチメートルまたはそれより若干小さく、長さは1センチメートルまたはそれより若干大きい。
【0026】
図を参照すると、図1のA部の六角形は、添加物14の粒子を混合したUNまたはUSi燃料12の粒子を表している。焼結工程では、温度が添加物の融点または軟化点に達し、様々な局面において当該融点または軟化点を超えると、添加物14は溶融または軟化し、図1のB部に示すように混合物の隅々を流れて、UNまたはUSi燃料の粒子12の全部または少なくとも一部の粒界を覆うようになる。添加物の融点がUSiまたはUNの焼結温度よりも高い場合、その微細な粒子はより大きなUSiまたはUN粒子の粒界内部で焼結する。図は燃料12の粒界の大部分が添加物14により覆われる理想的なケースを示しているが、実際には大部分が覆われる訳ではない。添加物相は相互に繋がっていることが好ましい。
【0027】
様々な局面において、液相焼結または共焼結によって緻密化を達成する。ペレットは例えば、液相焼結、無圧焼結、熱間加圧、熱間等方圧加圧、放電プラズマ焼結(電場支援焼結またはパルス通電焼結と呼ばれることもある)から成る群より選択した焼結方法を用いて焼結することができる。当業者であれば、任意の適切な既知の焼結方法を使用できることがわかるであろう。
【0028】
原子燃料ペレットを製造するための典型的な焼結工程では、隣接する粒子同士が融着するように圧縮された粉末ペレットを加熱することで、加熱前に比べて機械的強度が向上した固体燃料ペレットを生成させる。このように粒子が「融合」すると、ペレットの密度が増加する。そのため、このプロセスを緻密化と呼ぶこともある。熱間等方圧加圧は、圧密化工程と焼結工程を1つのステップで行う。
【0029】
様々な局面において、焼結は液相焼結および共焼結工程によって行われるが、これらの先進的な焼結技術は共にこれまで原子燃料の製造に用いられていなかった。
【0030】
液相焼結では、固体粒子は液中で不溶なため、液相が固相を濡らすことができる。この不溶性のため、液相が固体を濡らし、粒子を互いに引き寄せる毛細力を発生させる。同時に、高温によって固体が軟化し、さらに緻密化を促進させる。加熱時に粒子が焼結する。溶融物が形成されて広がると、固体粒子が再配列する。その後の緻密化は粗粒化を伴う。液体は固体粒子を濡らし、粒子間に浸透する。German,R.M.、Suri,P.およびPark,S.J.、J Mater Sci(2009)44:1を参照のこと。
https://doi.org/10.1007/s10853-008-3008-0
【0031】
様々な局面において、焼結工程は、外圧と電場を同時に印加して圧縮された粉末ペレットの緻密化を促進する放電プラズマ焼結によって行ってもよい。金型および粉末圧密体に直接、パルス直流電流を通電する。電場によってもたらされる緻密化は、焼結を熱間加圧の一種によって補足するものであり、一般的な焼結よりも低温かつ短時間の焼結を可能にする。従来の熱間加圧が外部の発熱体から熱の供給を受けるのとは対照的に、電場を用いる方法では熱が内部で発生する。
【0032】
無加圧焼結は、粉末圧密体(粉末によっては非常に高温である)を加圧せずに焼結するよく知られた焼結方法である。この方法は、従来型の熱間加圧法で生じる最終的なペレット密度のばらつきを防ぐ。
【0033】
別の局面では、焼結を熱間等方圧加圧で行ってもよい。この手法は通常、金属製またはガラス製の容器に封入した粉末を用いる。容器を真空にし、圧密段階における残留ガスによる材料の汚染を避けるために粉体をガス抜きし、容器を密閉したあと、容器を加熱し、容器と粉末をともに塑性変形させるに十分な等方圧を加える。
【0034】
粉末の緻密化速度は、選択した温度および圧力における粉末の降伏強度に依存する。中程度の温度では、粉末の降伏強度がまだ高く、採算の合う時間内で緻密化を達成するには高圧をかける必要が生じる可能性がある。
【0035】
本方法は、UNおよびUSiから成る群より選択した核分裂性物質の圧縮および緻密化した粒子と、好ましくは当該核分裂性物質の約20重量%未満の量存在し、当該核分裂性物質の粒界の少なくとも一部を覆う耐酸化性添加物とを含むペレットより成る原子燃料を製造するものである。或る特定の局面において、当該添加物は、モリブデン、チタン、アルミニウム、クロム、トリウム、銅、ニッケル、マンガン、タングステン、ニオブ、ジルコニウム、イットリウム、セリウムおよびマグネシウム、ならびにモリブデン、チタン、アルミニウム、クロム、トリウム、銅、ニッケル、マンガン、タングステン、ニオブ、ジルコニウム、イットリウム、セリウムおよびマグネシウムのうちの少なくとも1つを50%以上の原子濃度で含む合金、ならびに窒化マグネシウム、ZrSi、ZrSiO、CrSi、BeOおよびUO、ならびにホウケイ酸ガラスなどのガラス質材料のうちの1つまたはその混合物を含む。
【0036】
本発明をいくつかの例に基づいて説明してきたが、いずれの例も、すべての点において制限的ではなく例示的なものである。したがって、本発明は、詳細な実施態様において、通常の技量を有する当業者が本願の説明から導くことができる多くの変形例が可能である。
【0037】
本願で言及したすべての特許、特許出願、刊行物または他の開示資料は、各々の参考文献が参照により明示的に本願に組み込まれるように、その全体が参照により本願に組み込まれる。本願で参照により組み込まれると述べられるすべての参考文献およびあらゆる資料またはそれらの一部分は、本願に記載された既存の定義、言明または他の開示資料と矛盾しない範囲でのみ本願に組み込まれる。したがって、本願に記載の開示事項は、必要な範囲において、それと矛盾する、参照により本願に組み込まれた資料に取って代わり、本願に明示的に記載された開示事項が決定権をもつ。
【0038】
本発明を、様々な例示的な実施態様を参照して説明してきた。本願に記載の実施態様は、開示された発明の様々な実施態様の様々な詳細度の例示的な特徴を示すものとして理解されたい。したがって、特に断らない限り、可能な範囲において、開示した実施態様における1つ以上の特徴、要素、構成部品、成分、構造物、モジュールおよび/または局面は、本発明の範囲から逸脱することなく、当該開示した実施態様における他の1つ以上の特徴、要素、構成部品、成分、構造物、モジュールおよび/または局面との間で、複合、分割、置換えおよび/または再構成が可能であることを理解されたい。したがって、通常の技量を有する当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施態様のいずれにおいても様々な置換え、変更または組み合わせが可能であることを理解するであろう。当業者はまた、本願を検討すれば、本願に記載された本発明の様々な実施態様に対する多くの均等物を認識するだろう。あるいは単に定常的な実験を用いてかかる均等物を確認できるであろう。したがって、本発明は、様々な実施態様の説明によってではなく、特許請求の範囲によって限定される。
図1