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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】1軸ヒンジ
(51)【国際特許分類】
   E05D 11/08 20060101AFI20240409BHJP
   E05D 11/10 20060101ALI20240409BHJP
   E05F 1/14 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
E05D11/08 E
E05D11/10
E05F1/14 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020568352
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2020028995
(87)【国際公開番号】W WO2021039254
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2019158940
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】柏熊 一彰
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直也
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3181787(EP,A1)
【文献】特開2009-121169(JP,A)
【文献】特開2020-63556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 11/00-11/10
E05F 1/14
E05F 3/20
E05D 3/02
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に取り付けられる第1部材と、
扉に取り付けられ、鉛直方向を向く軸を中心に前記第1部材に対して回転可能な第2部材と、
ばねを有し、閉じ位置の近傍にある前記扉に閉じ方向の回転力を与えるキャッチ機構と、
リニアダンパを有し、前記扉が閉じる際に前記扉の回転を制動するダンパ機構と、を備え、
前記キャッチ機構と前記ダンパ機構が前記第1部材又は前記第2部材のいずれか一方に配置され
前記第1部材は、樹脂製の本体部と、前記本体部と一緒に前記キャッチ機構及び前記ダンパ機構の収容スペースを形成する金属製の補強部と、を備え、
前記補強部には、前記ばねから作用する力と前記リニアダンパから作用する力を受ける曲げ片が形成される1軸ヒンジ。
【請求項2】
前記第1部材と前記第2部材が折れ曲がった状態から展開状態に変化する際、前記キャッチ機構が、前記展開状態の近傍にある前記第1部材と前記第2部材が展開するように回転力を発生させることを特徴とする請求項1に記載の1軸ヒンジ。
【請求項3】
本体に取り付けられる第1部材と、
扉に取り付けられ、鉛直方向を向く軸を中心に前記第1部材に対して回転可能な第2部材と、
ばねを有し、閉じ位置の近傍にある前記扉に閉じ方向の回転力を与えるキャッチ機構と、
リニアダンパを有し、前記扉が閉じる際に前記扉の回転を制動するダンパ機構と、を備え、
前記キャッチ機構と前記ダンパ機構が前記第1部材に配置され、
前記第1部材と前記第2部材が折れ曲がった状態から展開状態に変化する際、前記キャッチ機構が、前記展開状態の近傍にある前記第1部材と前記第2部材が展開するように回転力を発生させ
前記第2部材は、前記軸が挿入される筒部を有し、
前記キャッチ機構のスライダが前記ばねによって前記筒部の外面に付勢され、
前記第1部材を前記本体の外面に取り付け、前記第2部材を前記扉の小口に取り付け、前記扉の閉じ位置近傍でキャッチ力を働かせる1軸ヒンジ。
【請求項4】
前記第2部材は、前記軸が挿入され、外面に前記ダンパ機構のスライダを作動させる突起が形成される筒部を有し、
前記ダンパ機構の前記スライダには、前記筒部の外面の円筒部と相補的な曲面状凹部が形成されることを特徴とする請求項3に記載の1軸ヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に鉛直方向を向く軸を中心に第1部材と第2部材が相対的に回転する1軸ヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の1軸ヒンジとして、特許文献1には、折戸の隣接する一対の扉パネルを開閉可能に連結するものが開示されている。一対の扉のいずれか一方に1軸ヒンジの第1部材が取り付けられ、他方に第2部材が取り付けられる。
【0003】
特許文献1に記載の1軸ヒンジには、キャッチ機構とダンパ機構が組み込まれる。キャッチ機構は、ばねを有し、閉じ位置の近傍にある一対の扉パネルに閉じ方向の回転力を与える。このキャッチ機構により、一対の扉パネルの閉じ位置を保持することができる。
【0004】
ダンパ機構は、リニアダンパを有し、一対の扉パネルが閉じる際に一対の扉パネルの回転を制動する。ダンパ機構により、一対の扉が閉じる際の衝撃を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-121169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の1軸ヒンジにおいては、キャッチ機構が第1部材に配置され、ダンパ機構が第2部材に配置されるので、第1部材と第2部材の大きさがいずれも大きくなる。このため、例えば扉又は本体の小口、扉又は本体の厚み内等の取付けスペースが小さい部分に第1部材又は第2部材を取り付けにくいという課題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、例えば扉又は本体の小口、扉又は本体の厚み内等の取付けスペースが小さい部分に第1部材又は第2部材を取り付けることができるダンパ機構及びキャッチ機構付き1軸ヒンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、本体に取り付けられる第1部材と、扉に取り付けられ、鉛直方向を向く軸を中心に前記第1部材に対して回転可能な第2部材と、ばねを有し、閉じ位置の近傍にある前記扉に閉じ方向の回転力を与えるキャッチ機構と、リニアダンパを有し、前記扉が閉じる際に前記扉の回転を制動するダンパ機構と、を備え、前記キャッチ機構と前記ダンパ機構が前記第1部材又は前記第2部材のいずれか一方に配置され、前記第1部材は、樹脂製の本体部と、前記本体部と一緒に前記キャッチ機構及び前記ダンパ機構の収容スペースを形成する金属製の補強部と、を備え、前記補強部には、前記ばねから作用する力と前記リニアダンパから作用する力を受ける曲げ片が形成される1軸ヒンジである。
本発明の他の態様は、本体に取り付けられる第1部材と、扉に取り付けられ、鉛直方向を向く軸を中心に前記第1部材に対して回転可能な第2部材と、ばねを有し、閉じ位置の近傍にある前記扉に閉じ方向の回転力を与えるキャッチ機構と、リニアダンパを有し、前記扉が閉じる際に前記扉の回転を制動するダンパ機構と、を備え、前記キャッチ機構と前記ダンパ機構が前記第1部材に配置され、前記第1部材と前記第2部材が折れ曲がった状態から展開状態に変化する際、前記キャッチ機構が、前記展開状態の近傍にある前記第1部材と前記第2部材が展開するように回転力を発生させ、前記第2部材は、前記軸が挿入される筒部を有し、前記キャッチ機構のスライダが前記ばねによって前記筒部の外面に付勢され、前記第1部材を前記本体の外面に取り付け、前記第2部材を前記扉の小口に取り付け、前記扉の閉じ位置近傍でキャッチ力を働かせる1軸ヒンジである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、キャッチ機構とダンパ機構を第1部材又は第2部材のいずれか一方に配置するので、例えば扉又は本体の小口、扉又は本体の厚み内等の取付けスペースが小さい部分に第1部材又は第2部材の他方を取り付けることができる。また、第1部材が、樹脂製の本体部と、金属製の補強部と、を備えるので、必要な強度を確保した上で第1部材をコンパクトにすることができる。
本発明の他の態様によれば、キャッチ機構とダンパ機構を第1部材に配置するので、扉の小口に第2部材を取り付けることができる。また、1軸ヒンジを本体の外面に取り付けた場合でも、閉じ位置近傍で扉にキャッチ力を働かせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態の1軸ヒンジが組み込まれたキャビネットの斜視図である(図1(a)は扉の開き位置を示し、図1(b)は扉の閉じ位置を示す)。
図2】1軸ヒンジの斜視図である(図2(a)は扉が開き位置にあるときの1軸ヒンジを示し、図2(b)は扉が閉じ位置にあるときの1軸ヒンジを示す)。
図3】1軸ヒンジの正面側分解斜視図である。
図4】1軸ヒンジの背面側分解斜視図である。
図5】キャッチ機構の動作図である(図2のV-V線断面図、図5(a)は第2部材の開き位置、図5(b)は第2部材の中間位置、図5(c)は第2部材の閉じ位置を示す)。
図6】ダンパ機構の動作図である(図2のVI-VI線断面図、図6(a)は第2部材の開き位置、図6(b)は第2部材の中間位置、図6(c)は第2部材の閉じ位置を示す)。
図7】本発明の第2の実施形態の1軸ヒンジが組み込まれたキャビネットの斜視図である(図7(a)は扉の開き位置を示し、図7(b)は扉の閉じ位置を示す)。
図8】第2の実施形態の1軸ヒンジの斜視図である(図8(a)は扉が開き位置にあるときの1軸ヒンジを示し、図8(b)は扉が閉じ位置にあるときの1軸ヒンジを示す)。
図9】第2の実施形態の1軸ヒンジの取付け状態を示す斜視図である(図9(a)は取付け後の斜視図を示し、図9(b)は取付け前の斜視図を示す)。
図10】第2の実施形態の1軸ヒンジの取付け状態を示す平面図である。
図11】キャッチ機構の動作図である(図11(a)は第2部材の開き位置、図11(b)は第2部材の中間位置、図11(c)は第2部材の閉じ位置を示す)。
図12】ダンパ機構の動作図である(図12(a)は第2部材の開き位置、図12(b)は第2部材の中間位置、図12(c)は第2部材の閉じ位置を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態の1軸ヒンジを詳細に説明する。ただし、本発明の1軸ヒンジは種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(第1の実施形態)
【0012】
図1(a)(b)は、本発明の第1の実施形態の1軸ヒンジ2が組み込まれたキャビネット1の斜視図を示す。図1(a)は扉4の開き位置、図1(b)は扉4の閉じ位置を示す。3は本体としてのキャビネットの筐体、4は扉である。
【0013】
1軸ヒンジ2は、第1部材11と、第2部材12と、を備える。第1部材11は、筐体3の外側面(側板の外面)に取り付けられる。第2部材12は、扉4の小口(扉4の幅方向の端面)に取り付けられる。1軸ヒンジ2により、扉4と筐体3が鉛直方向を向く軸を中心に回転可能に連結される。
【0014】
図2(a)(b)は、本実施形態の1軸ヒンジ2の斜視図を示す。図2(a)は扉4が開き位置にあるときの1軸ヒンジ2を示し、図2(b)は扉4が閉じ位置にあるときの1軸ヒンジ2を示す。図2(a)に示すように、扉4が開き位置にあるとき、第1部材11と第2部材12は折れ曲がった状態にある。図2(b)に示すように、扉4が閉じ位置にあるとき、第1部材11と第2部材12は展開状態にある。展開状態において、第1部材11の取付け面11aと第2部材12の取付け面12aは、互いに平行又は実質的に同一平面にある。扉4を閉じる際、第1部材11と第2部材12は、図2(a)に示す折れ曲がった状態から図2(b)に示す展開状態に変化する。
【0015】
図2(b)に示すように、第1部材11には、締結部材によって第1部材11を筐体3に取り付けるための通し穴等の取付け部11bが形成される。第1部材11には、後述するキャッチ機構とダンパ機構の収容部11cが形成される。第2部材12には、締結部材によって第2部材12を扉4に取り付けるための通し穴等の取付け部12bが形成される。第2部材12には、キャッチ機構とダンパ機構の収容部が形成されておらず、第2部材12は板状である。
【0016】
図2(a)に示すように、第1部材11には、鉛直方向を向く軸13が挿入される一対の筒部11dが形成される。第2部材12には、軸13が挿入される筒部12dが形成される。第1部材11の一対の筒部11dの間に第2部材12の筒部12dが配置される。第1部材11と第2部材12は、軸13を介して互いに相対的に回転可能に連結される。
【0017】
図3及び図4は、1軸ヒンジ2の分解斜視図を示す。図3は、正面側の分解斜視図を示し、図4は、背面側の分解斜視図を示す。6はキャッチ機構、7はダンパ機構である。キャッチ機構6とダンパ機構7とは、第1部材11に並列に配置される。キャッチ機構6のばね8の中心線C1とダンパ機構7のリニアダンパ9の中心線C2は、互いに平行であり、軸13に対して直角である。
【0018】
図3に示すように、第1部材11は、樹脂製の本体部11-1と、締結部材14によって樹脂製の本体部11-1に取り付けられる金属製の補強部11-2と、を備える。本体部11-1と補強部11-2との間にキャッチ機構6とダンパ機構7が収容される。キャッチ機構6とダンパ機構7の収容スペースは、本体部11-1に設けた区画壁11fによって区画される(図4参照)。
【0019】
補強部11-2は、収容スペースを形成する補強プレート11gと、補強プレート11gに対して折れ曲がる曲げ片11hと、を備える。曲げ片11hが、ばね8から作用する力とリニアダンパ9から作用する力を受ける。
【0020】
キャッチ機構6は、ばね8と、スライダ20と、ばね力調節手段18,19と、を備える。ばね8は、コイルばねである。スライダ20は、略箱状に形成されるスライダ本体15を備える。スライダ20は、区画された収容スペースを移動可能である。スライダ20の移動は、本体部11-1と補強部11-2によって案内される。スライダ20は、ばね8によって筒部12dの外面に付勢される。スライダ20は、スライダ本体15を有する。スライダ本体15の一端部には、ローラ16が軸17を介して回転可能に設けられる。このローラ16が筒部12dの外面に接する。
【0021】
図4に示すように、第2部材12の筒部12dの外面は、円筒部12d1を有する(図5(a)も参照)。筒部12dの外面には、カムとして機能する凹部12d2が形成される。凹部12d2の傾斜面にローラ16を付勢することで、第2部材12に閉じ方向の回転力が働く。
【0022】
図3に示すように、ばね力調節手段18,19は、調節ねじ19と、調節ねじ19が螺合する受け板18と、を備える。受け板18は、ばね8の端部を受ける。調節ねじ19は、曲げ片11hに支持されるフランジ19aを有する(図4参照)。調節ねじ19を回すと、受け板18が中心線C1の方向に移動して、ばね8のばね力が調節される。受け板18には、突起18aが形成される。この突起18aは本体部11-1の窓11iに入り、外部から受け板18の位置が確認できるようになっている。
【0023】
ダンパ機構7は、リニアダンパ9と、スライダ21と、を備える。リニアダンパ9には、本体部9aに対して軸部9bが移動すると制動力が発生する公知のリニアダンパを用いる。本体部9aには、流体が充填される。軸部9bには、本体部9a内に収容されるピストンが設けられる。本体部9aには、軸部9bを伸長状態に復帰させるコイルばねが収容される。
【0024】
スライダ21は、区画された収容スペースを移動可能である。スライダ21の移動は、本体部11-1と補強部11-2によって案内される。スライダ21は、略箱状である。スライダ21には、筒部12dの外面の円筒部12d1と相補的な曲面状凹部21aが形成される(図4図6(a)も参照)。
【0025】
図4に示すように、筒部12dの外面には、スライダを作動させる突起12d3が形成される。突起12d3と凹部12d2とは筒部12dの軸方向に位置がずれている。23は軸13が挿入されるブッシュである。
【0026】
図5(a)(b)(c)は、キャッチ機構6の動作図を示す。図5(a)は第2部材12の開き位置、図5(b)は第2部材12の中間位置、図5(c)は第2部材12の閉じ位置を示す。
【0027】
第2部材12が図5(a)に示す開き位置から図5(b)に示す中間位置まで回転する間、キャッチ機構6のスライダ20は筒部12dの外面の円筒部12d1に付勢される。この間、筒部12dが回転してもスライダ20は一定位置を保つ。このため、キャッチ機構6は、扉4に任意の位置を保持するような保持力を与える。すなわち、キャッチ機構6は、フリーストップ機能を持つ。
【0028】
第2部材12が図5(b)に示す中間位置を超えて、図5(c)に示す閉じ位置近傍に回転すると、スライダ20のローラ16が凹部12d2の傾斜面に接し、第2部材12に閉じ方向の回転力が働く。第2部材12に働く閉じ方向の回転力は、第2部材12が閉じ位置に移動するまで継続する。このため、扉4の閉じ位置が保持される。すなわち、キャッチ機構6にキャッチ機能を持たせることができる。
【0029】
図6(a)(b)(c)は、ダンパ機構7の動作図を示す。図6(a)は第2部材12の開き位置、図6(b)は第2部材12の中間位置、図6(c)は第2部材12の閉じ位置を示す。
【0030】
第2部材12が図6(a)に示す開き位置から図6(b)に示す中間位置まで回転する間、ダンパ機構7のスライダ21の曲面状凹部21aは、筒部12dの外面の円筒部12d1に接する。このため、この間、スライダ21の位置は一定である。
【0031】
第2部材12が図6(b)に示す中間位置を超えて、さらに閉じ方向に回転すると、第2部材12の突起12d3がスライダ21を押して、スライダ21がリニアダンパ9を圧縮する。これにより、第2部材12の回転が制動され、扉4が閉じる際の衝撃が緩和される。なお、キャッチ機構6が第2部材12に閉じ方向の回転力を与えた後、ダンパ機構7が第2部材12の回転を制動するのが望ましいが、逆でもよい。
【0032】
以上に本実施形態の1軸ヒンジ2の構成を説明した。本実施形態の1軸ヒンジ2によれば、以下の効果を奏する。
【0033】
キャッチ機構6とダンパ機構7を第1部材11に配置するので、扉4の小口に第2部材12を取り付けることができる。
【0034】
第1部材11と第2部材12が折れ曲がった状態から展開状態に変化する際、キャッチ機構6が、展開状態の近傍にある第1部材11と第2部材12が展開するように回転力を与えるので、1軸ヒンジ2をキャビネット1の外面に取り付けた場合でも、閉じ位置近傍で扉4にキャッチ力を働かせることができる。
【0035】
円筒部12d1と凹部12d2を有する筒部12dにキャッチ機構6のスライダ20を付勢するので、キャッチ機構6にキャッチ機能だけでなくフリーストップ機能を持たせることができる。
【0036】
ダンパ機構7のスライダ21に筒部12dの外面の円筒部12d1と相補的な曲面状凹部21aを形成するので、ダンパ機構7をコンパクトにすることができる。
【0037】
第1部材11が、樹脂製の本体部11-1と、金属製の補強部11-2と、を備えるので、必要な強度を確保した上で第1部材11をコンパクトにすることができる。
(第2の実施形態)
【0038】
図7(a)(b)は、本発明の第2の実施形態の1軸ヒンジ30が組み込まれたキャビネット1の斜視図を示す。第1の実施形態の1軸ヒンジ2は、キャビネット1の外側面に取り付けられるのに対し、第2の実施形態の1軸ヒンジ30は、キャビネット1に埋め込まれる。図7(a)は扉4の開き位置、図7(b)は扉4の閉じ位置を示す。図8(a)(b)は、本実施形態の1軸ヒンジ30の斜視図を示す。図8(a)は扉4が開き位置にあるときの1軸ヒンジ30を示し、図8(b)は扉4が閉じ位置にあるときの1軸ヒンジ30を示す。
【0039】
第1の実施形態では、扉4が開き位置にあるとき、第1部材11と第2部材12が折れ曲がった状態にあり、扉4が閉じ位置にあるとき、第1部材11と第2部材12が展開状態にある。これに対して、第2の実施形態では、図8(a)に示すように、扉4が開き位置にあるとき、第1部材11と第2部材12が展開状態にあり、扉4が閉じ位置にあるとき、第1部材11と第2部材12が折れ曲がった状態にある。
【0040】
図9(a)の取付け状態を示す斜視図に示すように、第2部材12は、扉4の厚み内に収容される。扉4の内面には、ブラケット31が固定されていて、扉4とブラケット31との間に第2部材12が挿入される。図9(b)に示すように、第2部材12には、取付け部としてのねじ穴12bが形成される。扉4の枠には、ヒンジ30との干渉を避けるための切欠き4aが形成される。扉4の内面とブラケット31との間に第2部材12を挿入し、締結部材を取付け部12bに締結することで、扉4に第2部材12を取り付ける。
【0041】
筐体3の内側面には、ブラケット32が固定されていて、筐体3の内側面とブラケット32との間に第1部材11が挿入される。第1部材11には、取付け部としてのねじ穴11bが形成される。筐体3の枠には、第1部材11を挿入するための切欠き3aが形成される。筐体3の内側面とブラケット32との間に第1部材11を挿入し、締結部材を取付け部11bに締結することで、筐体3に第1部材11を取り付ける。図10の平面図に示すように、1軸ヒンジ30の軸13は、扉4の厚み内に配置される。
【0042】
上記の点を除いて、第2の実施形態の1軸ヒンジ30の各部の構成は、第1の実施形態の1軸ヒンジ2の各部の構成と略同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0043】
図11(a)(b)(c)は、第2の実施形態の1軸ヒンジ30のキャッチ機構6の動作図を示す。図11(a)は第2部材12の開き位置、図11(b)は第2部材12の中間位置、図11(c)は第2部材12の閉じ位置を示す。
【0044】
第2部材12が図11(a)に示す開き位置から図11(b)に示す中間位置まで回転する間、キャッチ機構6のスライダ20は筒部12dの外面の円筒部12d1に付勢される。第2部材12が図11(b)に示す中間位置を超えて、閉じ位置近傍に回転すると、図11(c)に示すように、スライダ20のローラ16が凹部12d2の傾斜面に接し、第2部材12に閉じ方向の回転力が働く。
【0045】
図12(a)(b)(c)は、ダンパ機構7の動作図を示す。図12(a)は第2部材12の開き位置、図12(b)は第2部材12の中間位置、図12(c)は第2部材12の閉じ位置を示す。
【0046】
第2部材12が図12(a)に示す開き位置から図12(b)に示す中間位置まで回転する間、スライダ21の位置は一定を保つ。第2部材12が図6(b)に示す中間位置を超えて、さらに閉じ方向に回転すると、図12(c)に示すように、第2部材12の突起12d3がスライダ21を押して、スライダ21がリニアダンパ9を圧縮する。これにより、第2部材12の回転が制動され、扉4が閉じる際の衝撃が緩和される。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に変更可能である。
【0048】
上記実施形態では、1軸ヒンジをキャビネットに取り付けているが、家具、建築物の枠、折戸等に取り付けてもよい。
【0049】
上記実施形態では、キャッチ機構とダンパ機構を第1部材に配置しているが、本体側の取付けスペースが小さい場合、キャッチ機構とダンパ機構を第2部材に配置してもよい。
【0050】
本明細書は、2019年8月30日出願の特願2019-158940に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
【符号の説明】
【0051】
2…1軸ヒンジ
3…筐体(本体)
4…扉
6…キャッチ機構
8…ばね
7…ダンパ機構
9…リニアダンパ
11…第1部材
11-1…本体部
11-2…補強部
11h…曲げ片
12…第2部材
12d…筒部
12d1…円筒部
12d2…凹部
12d3…突起
13…軸
20…キャッチ機構のスライダ
21…ダンパ機構のスライダ
21a…曲面状凹部
30…1軸ヒンジ
図1
図2
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図5
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図10
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図12