IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ H&H CONNECT株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-服薬管理装置及び服薬管理システム 図1
  • 特許-服薬管理装置及び服薬管理システム 図2
  • 特許-服薬管理装置及び服薬管理システム 図3
  • 特許-服薬管理装置及び服薬管理システム 図4
  • 特許-服薬管理装置及び服薬管理システム 図5
  • 特許-服薬管理装置及び服薬管理システム 図6
  • 特許-服薬管理装置及び服薬管理システム 図7
  • 特許-服薬管理装置及び服薬管理システム 図8
  • 特許-服薬管理装置及び服薬管理システム 図9
  • 特許-服薬管理装置及び服薬管理システム 図10
  • 特許-服薬管理装置及び服薬管理システム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】服薬管理装置及び服薬管理システム
(51)【国際特許分類】
   A61J 7/04 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A61J7/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021009772
(22)【出願日】2021-01-25
(65)【公開番号】P2022113490
(43)【公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】521036919
【氏名又は名称】H&H CONNECT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】佐古 卓人
(72)【発明者】
【氏名】林 哲
(72)【発明者】
【氏名】坂東 和道
(72)【発明者】
【氏名】望月 聡
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-158944(JP,A)
【文献】特開2019-155033(JP,A)
【文献】特開2013-248873(JP,A)
【文献】特開2019-198604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装された薬を保持可能な保持部と、
前記保持部の状態及びその変化を検出可能な検出部と、
前記検出部が前記保持部の状態の変化を検出した場合に、前記薬が投入あるいは取り出されたと判断する判断部とを備え、
表面に前記薬を使用するタイミングが表わされる基板を備え、
前記保持部は、前記表面に表わされた前記タイミング毎に設けられ、
前記検出部は、前記表面における前記保持部に対応する位置に設けられ、
前記保持部は、
前記表面に対し固定された第1固定部材と、
前記第1固定部材に設けられた弾性体、及び、当該弾性体に固定され前記第1固定部材に対して回転可能な回転体を有する第1回転部材と、
下端が前記回転体に固定され前記第1固定部材に対して回転可能であり、自然状態においては、前記弾性体の弾性力により前記表面に設けられた前記検出部に押しつけられる板状部材とを備える
ことを特徴とする服薬管理装置。
【請求項2】
前記判断部は、各前記検出部の位置に基づき、前記薬が投入あるいは取り出された前記タイミングも判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の服薬管理装置。
【請求項3】
前記保持部は、
前記表面に対し固定された平板状の基板側板状部材と、
前記基板側板状部材に対し固定された第2固定部材と、
弾性体を介して前記第2固定部材に対して回転可能に設けられた第2回転部材と、
下端側が前記回転部材に固定され前記第2回転部材に対して回転可能であり、自然状態においては、前記弾性体の弾性力により前記基板側板状部材に押しつけられる開閉板状部材とを備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の服薬管理装置。
【請求項4】
前記判断部により判断した情報を、ネットワーク回線を介して外部に送信可能である通信制御手段を備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の服薬管理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の服薬管理装置と、前記情報を受信するサーバとを備える
ことを特徴とする服薬管理システム。
【請求項6】
前記サーバから前記情報を受信可能であるとともに、受信した前記情報を通知可能である端末を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の服薬管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、服薬を管理する装置及びシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
服薬に関しては、医師が正確に診断し、最適な薬剤を処方する。しかし、患者が正しく服薬しないケースがある。例えば、飲み間違いにより副作用が出たり、飲み忘れによって治癒しなかったりすることがある。
【0003】
上述のようなケースを抑制するため、医療現場では様々な工夫を行っている。例えば、一度に飲む薬を一つの袋(分包紙)に入れておく「一包化」(下記特許文献1等)、さらには、薬を入れた分包紙を服薬のタイミング毎に設けておく「お薬カレンダー」(下記特許文献2等)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-011753号公報
【文献】実登3197075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、それでも残薬は日本全体で年間1000億円以上生じていると言われている。そして、正しく服薬することができない背景は、外来患者と入院患者とで異なる。
【0006】
外来患者の服薬管理の問題点としては、患者は独居高齢者の割合が多く、独居高齢者の患者が服薬できているかは、その家族や在宅医療を行う医療従事者が確認しに来たとき、あるいは、例えば服薬カレンダーに次回分の薬をセットしに来たときにしか把握することができないことが挙げられる。さらに、たとえ服薬できていることを把握したとしても、一日の中での時間帯(食前、食後、食間等)が守られているか否かを把握することはできない。
【0007】
一方、入院患者の服薬管理の問題点としては、看護師(医療従事者)が入院患者に与薬するが、入院患者が多い病院においては、与薬を管理し切れず、与薬忘れがたびたび発生することが挙げられる。この与薬忘れは非常に件数が多く、それを防ぐためのダブルチェックが看護師の負担になっている。
【0008】
本発明では、このような課題に鑑み、患者の服薬の有無及びタイミングを、医療従事者及び家族が即座に把握することができる、服薬管理装置及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点における服薬管理装置は、
包装された薬を保持可能な保持部と、
前記保持部の状態及びその変化を検出可能な検出部と、
前記検出部が前記保持部の状態の変化を検出した場合に、前記薬が投入あるいは取り出されたと判断する判断部とを備える
ことを特徴とする。
【0010】
より好適には、
表面に前記薬を使用するタイミングが表わされる基板を備え、
前記保持部は、前記表面に表わされた前記タイミング毎に設けられ、
前記検出部は、前記表面における前記保持部に対応する位置に設けられる
ことを特徴とする。
【0011】
より好適には、
前記判断部は、各前記検出部の位置に基づき、前記薬が投入あるいは取り出された前記タイミングも判断する
ことを特徴とする。
【0012】
より好適には、
前記保持部は、
前記表面に対し固定された第1固定部材と、
前記第1固定部材に設けられた弾性体、及び、当該弾性体に固定され前記第1固定部材に対して回転可能な回転体を有する第1回転部材と、
下端が前記回転体に固定され前記第1固定部材に対して回転可能であり、自然状態においては、前記弾性体の弾性力により前記表面に設けられた前記検出部に押しつけられる板状部材とを備える
ことを特徴とする。
【0013】
より好適には、
前記保持部は、
前記表面に対し固定された平板状の基板側板状部材と、
前記基板側板状部材に対し固定された第2固定部材と、
弾性体を介して前記第2固定部材に対して回転可能に設けられた第2回転部材と、
下端側が前記回転部材に固定され前記第2回転部材に対して回転可能であり、自然状態においては、前記弾性体の弾性力により前記基板側板状部材に押しつけられる開閉板状部材とを備える
ことを特徴とする。
【0014】
より好適には、
前記判断部により判断した情報を、ネットワーク回線を介して外部に送信可能である通信制御手段を備える
ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の観点における服薬管理システムは、
服薬管理装置と、前記情報を受信するサーバとを備える
ことを特徴とする。
【0016】
より好適には
前記サーバから前記情報を受信可能であるとともに、受信した前記情報を通知可能である端末を備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る服薬管理装置及びシステムによれば、患者が服用すべき薬を正しいタイミングで服用したか否かを、医療従事者及び家族が即座に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1に係る服薬管理システムの構成を説明する概略図である。
図2】本発明の実施例1における判断部、通信制御手段、及び、バッテリを表わすブロック図である。
図3】本発明の実施例1における保持部周辺の拡大斜視図である。
図4図3のa-a断面図である。
図5】薬が入った分包紙の概略図である。
図6】本発明の実施例1に係る服薬管理システムによる処理の一例を説明するフローチャートである。
図7】本発明の実施例1に係る服薬管理システムによる処理の他の例を説明するフローチャートである。
図8】本発明の実施例2に係る服薬管理装置の構成を説明する全体斜視図である。
図9】本発明の実施例2における保持部周辺の拡大斜視図である。
図10図9のb-bの断面図である。
図11】本発明の実施例2における判断部、通信制御手段、及び、バッテリを表わすブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る服薬管理装置及びシステムについて、実施例にて図面を用いて説明する。なお、下記の実施例においては、主に飲み薬を摂取することを指す「服薬」との文言を用いているが、本発明は、飲み薬に限らず外用薬や吸入薬等、薬全般を使用する場合に適用可能である。また、それに伴い、実施例中では「分包紙」との文言を用いているが、分包紙に限らず、薬を包装するもの全般に適用可能である。
【0020】
[実施例1]
図1に示すように、本実施例に係る服薬管理システムは、服薬管理装置1、ルータ2、サーバ3、第1端末4、及び、第2端末5を備えている。以下では、まず服薬管理装置1の構成について説明する。
【0021】
服薬管理装置1は、図1~4に示すように、主たる構成として、基板11、保持部12、貫通穴13、側面板14、検出部15、判断部16、バッテリ17、及び、通信制御手段18を備えている。このうち、保持部12、貫通穴13、側面板14、検出部15、判断部16、バッテリ17、及び、通信制御手段18は、全て基板11に取り付けられている。
【0022】
基板11は、平板状のものである。基板11は、一枚の板であるものとしてもよいが、図1に示すように、各孔11Eに通され固定された2本の紐状部材11Fによって、鉛直方向に連結された2枚の板からなるものとしてもよい。
【0023】
また、基板11の表面11Aには、服薬のタイミングを表示する表示部11Bが設けられている。図1では、基板表面11Aの水平方向側端部(左側)に縦軸として曜日(月曜日~日曜日)が、また、基板表面11Aの鉛直方向上部に横軸として服薬の時間帯(朝、昼、夕、寝る前)が、それぞれ表示されている。これが表示部11Bである。
【0024】
なお、これはあくまで一例であり、表示部11Bの表示を変えてもよい。例えば、縦軸として日にちを表示してもよく、あるいは、縦軸を時間帯とし、横軸を曜日又は日にちとしてもよい。
【0025】
いずれにしても、表示部11B、すなわち上記縦軸及び上記横軸を設けることにより、基板表面11Aに服薬のタイミング(曜日及び時間帯、あるいは、日にち及び時間帯)が表わされた状態となる。
【0026】
また、基板11は上記縦軸が鉛直方向となるように設置されるものとする。したがって、基板11の鉛直方向上端部(上記横軸の上)には、孔11Cが左右対称に2カ所形成されており、2つの孔11Cには、紐状部材11Dの端部がそれぞれ取り付けられ、この紐状部材11Dを任意の場所に掛けることで、基板11を設置する。
【0027】
また、保持部12は、開閉手段12A及び板状部材12Bを備え、図5に示すような薬32が入った分包紙31を保持可能なものである。また保持部12は、基板表面11Aに複数設けられている。より詳しくは、基板表面11Aにおいて表示部11B(上記縦軸及び上記横軸)により表わされる服薬のタイミングを示す全ての位置(月曜日の朝や火曜日の昼等)に対して、それぞれ設けられている。図1では、縦軸方向(鉛直方向)に7行、横軸方向(水平方向)に4列の計28カ所の位置に設けられている。さらに、図1に示すように、服薬のタイミングを示す位置以外(鉛直方向下方)にも1つ以上の保持部12が設けられるようにしてもよい。
【0028】
図3,4に示すように、開閉手段12Aは、固定部材21及び回転部材22を備えている。固定部材21は、基板11に対し固定され、基板表面11A側において上記横軸方向(水平方向)に延伸する円柱状の軸心部21Aを有する部材である。回転部材22は、固定部材21の軸心部21Aに設けられたバネ等の弾性体22A、及び、弾性体22Aに固定され固定部材21に対して回転可能な2枚の回転平板(回転体)22Bを有するものである。
【0029】
板状部材12Bは、下端側が2枚の回転体22Bに固定されており、軸心部21Aに対して回転可能である(図3の破線矢印参照)。自然状態においては、弾性体22Aの弾性力により、板状部材12Bが基板表面11Aに押しつけられている。また、板状部材12Bは透明乃至半透明の材質、つまり、板状部材12Bを介して基板表面11Aが透けて見える材質とするのが好ましい(例えば透明プラスチック等)。
【0030】
このようにして保持部12は、板状部材12Bを人手により基板表面11Aから離間する向きに回転させるようにして傾け、離間した板状部材12Bと基板表面11Aとの間に、分包紙31に包装された薬32を入れることで、保持することができる。「保持する」とは、換言すれば、分包紙31に包装された薬32が板状部材12Bにより基板表面11Aに押圧された状態を指す。
【0031】
また、保持部12に保持された分包紙31に包装された薬32を人手により抜くことで、分包紙31に包装された薬32を取り出すことができる。あるいは、板状部材12Bを人手により基板表面11Aから離間する向きに回転させるようにして傾けることで、分包紙31に包装された薬32を取り出すことができる。
【0032】
側面板14は、基板表面11Aにおける各保持部12の上記横軸方向(水平方向)両端位置、より詳細には、基板表面11Aにおける各板状部材12Bの上記横軸方向(水平方向)両端に摺接する位置において、基板表面11Aに対し垂直方向に固定される平板状のものである。
【0033】
貫通穴13は、基板表面11Aにおける各保持部12に対応する各位置、より詳細には、各板状部材12Bが(弾性体22Aの弾性力により)接する各位置に対し、基板11の厚み方向に貫通するようにして形成されている。
【0034】
検出部15は、電極基板15A及び導電性ゴム15Bを備え、電極基板15Aと導電性ゴム15Bとの接触状態及び非接触状態を検出する接触式センサ(メンブレンスイッチ)である。各電極基板15Aは基板11の裏面11Gにおいて各貫通穴13を塞ぐようにしてそれぞれ設けられており、各導電性ゴム15Bは各板状部材12Bの裏面12BAにおいて電極基板15Aに対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0035】
これにより、自然状態すなわち板状部材12Bが基板表面11Aに押しつけられている(接している)状態においては、電極基板15Aと導電性ゴム15Bとは接触状態となり、板状部材12Bが基板表面11Aから離間している状態においては、電極基板15Aと導電性ゴム15Bとは非接触状態となる。
【0036】
判断部16は、基板11の任意の位置(ただし、上述した服薬のタイミングを示す位置以外)に設けられ、検出部15が非接触状態から接触状態への変化を検出した場合、分包紙31に包装された薬32が取り出されたと判断する。
【0037】
つまり、薬32が入った分包紙31が保持部12に保持されている状態においては、基板表面11Aと板状部材の裏面12BAとの間に分包紙31が挟まれる格好となるため、板状部材12Bが基板表面11Aから離間し、電極基板15Aと導電性ゴム15Bとは非接触状態となる。
【0038】
そして、分包紙31が保持されていない状態においては、弾性体22Aの弾性力により板状部材12Bが基板表面11Aに接し、電極基板15Aと導電性ゴム15Bとは接触状態となる。判断部16は、検出部15がこの非接触状態から接触状態への変化を検出した場合に、分包紙31が取り出されたと判断する。
【0039】
また、判断部16は、服薬のタイミングを示す位置毎に設けられた各検出部15のうち、どの検出部15が非接触状態から接触状態となったかを判断することで、実際に分包紙31に包装された薬32が取り出されたタイミングも判断するようにしてもよい(月曜日の朝に分包紙31に包装された薬32が取り出された等)。これにより、患者が服薬のタイミングを間違えてしまったことも判別することができる。
【0040】
同様にして、判断部16は分包紙31に包装された薬32の投入及びそのタイミングについても判断する。すなわち判断部16は、検出部15が接触状態から非接触状態への変化を検出した場合、分包紙31に包装された薬32が投入されたと判断する。これにより、薬のセット忘れ(例えば明日服用すべき薬がまだお薬カレンダーに投入されていない等)を防止することができる。
【0041】
通信制御手段18は、基板11の任意の位置(ただし、上述した服薬のタイミングを示す位置以外)に設けられ、判断部16により判断した情報(以下、判断情報と記載)を、ネットワーク回線を介して外部に送信可能である。
【0042】
バッテリ17は、基板11の任意の位置(ただし、上述した服薬のタイミングを示す位置以外)に設けられており、検出部15、判断部16、及び、通信制御手段18に対し、動作するための電力を供給するものである。
【0043】
以上が、服薬管理装置1の構成についての説明である。以下では、本実施例に係る服薬管理システムの構成について説明する。
【0044】
図1に示す第1端末4は、医療従事者が所持するPC、スマートフォン、タブレット等を指し、第2端末5は、患者の家族が所持するPC、スマートフォン、タブレット等を指す。ただし、本実施例では第1端末4、第2端末5が一つずつであるものとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1端末4及び第2端末5がそれぞれ複数であってもよいし、あるいは、第1端末4又は第2端末5のいずれかを設けなくてもよい。以下では、第1端末4と第2端末5の両方を備えるものとして説明する。
【0045】
服薬管理装置1は、服薬管理装置1の通信制御手段18は、Wi-Fi(あるいはLAN)によってルータ2と通信可能となっており、第1端末4及び第2端末5の表示を生成可能な情報を送信する。また、ルータ2は、インターネットによってサーバ3と通信可能である。
【0046】
サーバ3は、インターネットによってルータ2、第1端末4及び第2端末5と通信可能である。そして、服薬管理装置1から、ルータ2を介して、判断部16の判断情報(分包紙31に包装された薬32が取り出されたタイミングも含む)を受信すると、その判断情報を記憶するとともに、第1端末4及び第2端末5に送信する。
【0047】
第1端末4及び第2端末5は、判断部16の判断情報を受信可能であり、その判断情報を画面表示又は音により通知することが可能となる。また、服薬のタイミングで判断情報を受信しない場合、あるいは、服薬のタイミングを誤った場合、その旨を画面表示又は音によりプッシュ通知(アラート通知)するようにしてもよい。
【0048】
以上が、本実施例に係る服薬管理システムの構成についての説明である。以下では、本実施例に係る服薬管理システムを用いた処理の一例について、図6,7のフローチャートを用いて説明する。
【0049】
図6は、外来患者が自宅で服薬する場合のフローチャートである。
ステップS1では、患者の家族又は医療従事者が、服薬管理装置1の保持部12に分包紙31をセットする(保持させる)。
【0050】
ステップS2では、患者が服薬するために保持部12から分包紙31を取り出す。
【0051】
ステップS3では、ステップS2により検出部15が接触状態となる。そして、判断部16が保持部12から分包紙31が取り出されたと判断し、その判断情報は、通信制御手段18により、ルータ2を介してサーバ3に送信される。さらに、その判断情報は、サーバ3に記憶されるとともに、サーバ3から第1端末4及び第2端末5に送信される。
【0052】
ステップS4では、第1端末4及び第2端末5に表示された上記判断情報を、それぞれ患者の家族及び医療従事者が見ることで、予め指定された服薬のタイミングで保持部12から分包紙31が取り出されたか、すなわち、患者が正しく薬を服用したかを確認する。
【0053】
なお、患者が服薬していない場合にも、患者の家族及び医療従事者はそれを確認することができる。すなわち、予め指定された服薬のタイミングで上記判断情報が第1端末4及び第2端末5に来なければ、つまりステップS3,S4がなければ、患者の家族及び医療従事者は患者が服薬をしていないと見做すことができる(あるいはアラート通知により確認する)。
以上が、外来患者が自宅で服薬する場合の説明である。
【0054】
また、図7は、入院患者が病院で服薬する場合のフローチャートである。
ステップS11では、看護師(医療従事者)が、服薬管理装置1の保持部12に分包紙31をセットする(保持させる)。
【0055】
ステップS12では、看護師(医療従事者)が患者に服薬させるために保持部12から分包紙31を取り出す。
【0056】
ステップS13では、ステップS12により検出部15が非接触状態から接触状態となる。そして、判断部16が保持部12から分包紙31が取り出されたと判断し、その判断情報は、通信制御手段18により、ルータ2を介してサーバ3に送信される。さらに、その判断情報は、サーバ3に記憶されるとともに、サーバ3から第1端末4に送信される。
【0057】
ステップS14では、第1端末4に表示された上記判断情報を、服薬管理を担当する看護師(医療従事者)が見ることで、予め指定された服薬のタイミングで保持部12から分包紙31が取り出されたか、すなわち、患者が服薬したかを確認する。
【0058】
なお、患者が服薬していない場合にも、服薬管理を担当する医療従事者はそれを確認することができる。すなわち、予め指定された服薬のタイミングで上記判断情報が第1端末4に来なければ、つまりステップS13,S14がなければ、服薬管理を担当する医療従事者は患者が服薬をしていないと見做すことができる(あるいはアラート通知により確認する)。
【0059】
また、図6の場合であっても、医療従事者が所持する第1端末4だけでなく、患者の家族が所持する第2端末5にも上記判断情報が送信されるようにしてもよい。
以上が、入院患者が病院で服薬する場合の説明である。
【0060】
なお、本実施例では、服薬管理装置1の判断部16による判断情報が、通信制御手段18から、ルータ2、サーバ3を介して第1端末4及び第2端末5に送信されるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、通信制御手段18からサーバ3にインターネットを用いて送信される仕様にしてもよく、あるいは、通信制御手段18から第1端末4及び第2端末5にインターネットを用いて直接送信されるものとしてもよい。
【0061】
また、本実施例では、検出部15が接触及び非接触を検出するメンブレン等の接触式センサであるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の形態としてもよい。すなわち、検出部15は保持部12の状態及びその変化を検出可能であればよい。後述する実施例2にはその一例を示している。
【0062】
本実施例によれば、包装された薬32を保持可能な保持部12と、保持部12の状態及びその変化を検出可能な検出部15と、検出部15が保持部12の状態の変化を検出した場合に、薬32が投入あるいは取り出されたと判断する判断部16とを備えるので、自動的に患者の服薬の有無、さらには薬のセット忘れの有無を確認することができる。
【0063】
本実施例によれば、表面11Aに薬32を使用するタイミングが表わされる基板11を備え、保持部12は、表面11Aに表わされた服薬のタイミング毎に設けられ、検出部15は、表面11Aにおける保持部12に対応する位置に設けられるので、患者が予め指定されたタイミングで服薬することが容易になる。
【0064】
本実施例によれば、判断部16は、各検出部15の位置に基づき、薬32が投入あるいは取り出された服薬のタイミングも判断するので、自動的に患者の服薬のタイミングを確認することができ、利便性が向上する。
【0065】
本実施例によれば、保持部12は、表面11Aに対し固定された固定部材21と、固定部材21に設けられており、固定部材21の周方向のうち表面11A側方向への弾性力を有する回転部材22と、回転部材22に固定され、固定部材22に対して周方向に移動可能であり、自然状態においては、上記弾性力により表面11Aに設けられた検出部15に押しつけられる板状部材12Bとを備えるので、検出部15の接触及び非接触の検出が容易になるとともに、簡便な構造で大きさ(あるいは厚み)の異なる分包紙31を保持することができる。
【0066】
本実施例によれば、判断部16の判断情報を、ネットワーク回線を介して外部に送信可能である通信制御手段18を備える服薬管理装置1と、服薬管理装置1の通信制御手段18から判断部16の判断情報を受信するサーバ3と、前記サーバから前記情報を受信可能であるとともに、受信した前記情報を通知可能である端末4,5とを備えるので、端末4,5を所持する医療従事者及び患者の家族が、患者の服薬の有無及びタイミング、あるいは、薬のセット忘れの有無及びタイミングを即座に確認することができる。
【0067】
本実施例によれば、検出部15を接触式センサとするので、分包紙31及び板状部材12Bが透明又は半透明であっても対応可能であり、例えば赤外線センサと比較して検出の失敗が少ない。そして、板状部材12Bを透明又は半透明とすることで、患者が各保持部12に分包紙31がセットされているか否かを視認しやすくなる。さらには、赤外線センサのように常に電力消費が多いとAC電源すなわちコンセントが必要となってしまい、設置場所や条件が限定的になるが、接触式センサであれば、DC電源すなわちバッテリを設けていればよく、設置場所や条件が限定されない。また、安価に作成することができる。
【0068】
[実施例2]
本実施例に係る服薬管理装置は、実施例1に係る服薬管理装置1の一部を変更したものである。以下では、実施例1と重複する部分については極力省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0069】
図8に示すように服薬管理装置41は、氏名表示部51を備えるとともに、実施例1に係る服薬管理装置1の表示部11Bに代えて表示部52を、保持部12に代えて保持部53を、検出部15に代えて検出部54を、判断部16に代えて判断部55を備えている。なお、実施例1に係る服薬管理装置1の側面板14は削除している。
【0070】
氏名表示部51は、基板表面11A上に患者の氏名を表示するものであり、氏名ラベル51A及びラベル差込部51Bを備えている。
【0071】
氏名ラベル51Aは、患者の氏名が記載されたカードである。ラベル差込部51Bは、基板表面11Aにおいて例えば鉛直方向上端部(2つの孔11Cの間)に設けられ、氏名ラベル51Aを挿脱可能であり、かつ差し込まれた氏名ラベル51Aを保持することが可能なものである。
【0072】
表示部52は、服薬のタイミングを表示するものであり、縦軸カード52A、縦軸カード差込部52B、横軸カード52C、及び、横軸カード差込部52Dを備えている。
【0073】
縦軸カード52Aは、例えば曜日が記載されたカードであり、複数枚設けられている。縦軸カード差込部52Bは、基板表面11Aにおいて、水平方向側端部(左側)に複数設けられ、それぞれ縦軸カード52Aを挿脱可能であり、差し込まれた縦軸カード52Aを保持することが可能なものである。これにより、各縦軸カード52Aが各縦軸カード差込部52Bに保持された状態が、実施例1の縦軸に相当することになる。
【0074】
横軸カード52Cは、例えば服薬の時間帯が記載されたカードであり、複数枚設けられている。横軸カード差込部52Dは、基板表面11Aにおいて、鉛直方向上部に設けられ、複数枚の横軸カード52Cを挿脱可能であり、差し込まれた横軸カード52Cを保持することが可能なものである。これにより、各横軸カード52Cが横軸カード差込部52Dに保持された状態が、実施例1の横軸に相当することになる。
【0075】
なお、縦軸カード52A及び横軸カード52Cの表記はあくまで一例であって、これらの表示を変えてもよい。例えば、縦軸カード52Aに日にちを表示してもよく、あるいは、縦軸カード52Aの表示を時間帯とし、横軸カード52Cの表示を曜日又は日にちとしてもよい。
【0076】
いずれにしても、表示部52により基板表面11Aに服薬のタイミング(曜日及び時間帯、あるいは、日にち及び時間帯)が表わされた状態となる。
【0077】
保持部53は、基板表面11Aに複数設けられている。より詳しくは、基板表面11Aにおける服薬のタイミングを示す全ての位置に対して、それぞれ設けられている。
【0078】
そして図9,10に示すように、各保持部53は、それぞれ開閉手段53A、開閉板状部材53B、基板側板状部材53C、取手部53D、挿入用板体53E、及び、側方カバー53Fを備えている。
【0079】
基板側板状部材53Cは、基板表面11Aの服薬のタイミングを示す全ての位置にそれぞれ固定される平板状のものであり、鉛直方向上端側には、厚み方向に貫通する第1開口部61Aが、水平方向中央には、厚み方向に貫通する第2開口部61Bが、それぞれ形成されている。第1開口部61Aは水平方向に延伸した形状であり、第2開口部61Bは鉛直方向に延伸した形状である。なお、保持部53のいずれかの箇所が故障した場合には、基板側板状部材53Cを基板表面11Aから取り外すことも可能である。
【0080】
開閉手段53Aは、固定部材62及び回転部材63を備えている。固定部材62は、基板側板状部材53Cに対し固定され、基板側板状部材53Cの表面53CA側において水平方向に延伸する円柱状の軸心部62Aを有する部材である。回転部材63は、内部に備わる図示しない弾性体(バネ等)を介して軸心部62Aに対して回転可能に設けられている。
【0081】
開閉板状部材53Bは、下端側が回転部材63に固定されており、軸心部62Aに対して回転可能である。自然状態においては、回転部材63内の弾性体の弾性力により、開閉板状部材53Bが基板側板状部材53Cに押しつけられている。また、開閉板状部材53Bは透明乃至半透明の材質、つまり、開閉板状部材53Bを介して基板側板状部材53Cが透けて見える材質とするのが好ましい(例えば透明プラスチック等)。
【0082】
取手部53Dは、開閉板状部材53Bの表面53BA側の上端部(自然状態における鉛直方向上端部)に固定され、人手により把持可能な取手である。
【0083】
挿入用板体53Eは、開閉板状部材53Bの裏面53BB側の水平方向中央部に固定され、第2開口部61Bに対応する形状及び固定位置であることで、第2開口部61Bに対し挿脱可能な板体である。なお、挿入用板体53Eは開閉板状部材53Bと一体的に成形されるものであってもよく、あるいは、別体として成形されて、接着剤等で開閉板状部材53Bに固定されるものとしてもよい。
【0084】
側方カバー53Fは、側方カバー片64,65、及び、架橋部66を備えている。これらは全て薄いシート状であり、好ましくはポリプロピレン等の樹脂シートである。側方カバー片64,65は、共に、一端が基板側板状部材53Cの水平方向両端部に固定され、他端が架橋部66によって互いに連結されている。
【0085】
このようにして保持部53は、人手により取手部53Dを把持し手前に引き、開閉板状部材53Bを基板側板状部材53Cの表面から離間する向きに回転させるようにして傾け、離間した開閉板状部材53Bと基板側板状部材53Cとの間に、分包紙31に包装された薬32を入れることで、保持することができる。ここでの「保持する」とは、換言すれば、分包紙31に包装された薬32が開閉板状部材53Bにより基板側板状部材53Cに押圧された状態を指す。
【0086】
また、保持部53に保持された分包紙31に包装された薬32を人手により抜くことで、分包紙31に包装された薬32を取り出すことができる。あるいは、開閉板状部材53Bを人手により基板側板状部材53Cの表面から離間する向きに回転させるようにして傾けることで、分包紙31に包装された薬32を取り出すことができる。
【0087】
さらに、側方カバー53Fが開閉板状部材53Bの開閉(基板側板状部材53Cと接触、離間)動作に追従し、特に開閉板状部材53Bが開状態すなわち基板側板状部材53Cと離間状態にある場合、側方カバー53Fは開閉板状部材53B及び基板側板状部材53Cの水平方向両端を覆うため、開閉板状部材53Bと基板側板状部材53との間に室Rが形成されることになる。この室Rにて分包紙31に包装された薬32を保持することができる。
【0088】
検出部54は、基板側板状部材53Cにおける第2開口部62Bの端縁の一部、より詳しくは当該一部に形成された凹部71に対し、第2開口部62Bの内側を向くようにして固定されているフォトセンサであり、好ましくは防塵型透過型フォトセンサである。
【0089】
これにより検出部54は、第2開口部62Bに対して挿入用板体53Eが挿入された状態(以下、挿入状態)、及び、挿入されていない状態(以下、非挿入状態)を検出することができる。
【0090】
なお、挿入用板体53Eはフォトセンサである検出部54の検出精度を高めるため、不透明材質である必要がある。しかしながら、既に説明したように挿入用板体53Eを開閉用板状部材53Bと一体的に成形する場合、開閉板状部材53Bが透明乃至半透明の材質であるものとするならば、挿入用板体53Eも自ずと透明乃至半透明の材質となるため、検出部54による検出精度が低下する。そのような場合には、挿入用板体53Eの検出部54側を向く面にシールを貼り付ける等により、検出部54による検出精度を高める必要がある。
【0091】
判断部55は、基板11の任意の位置(ただし、上述した服薬のタイミングを示す位置以外)に設けられ、検出部54が挿入状態を検出した場合、分包紙31に包装された薬32が取り出されたと判断する。
【0092】
つまり、薬32が入った分包紙31が保持部53に保持されている状態においては、第2開口部62Bと挿入用板体53Eとの間に分包紙31が挟まれる格好となるため、挿入用板体53Eは非挿入状態となる。
【0093】
そして、分包紙31が保持されていない状態においては、回転部材63内の弾性体の弾性力により挿入用板体53Eは挿入状態となる。判断部55は、検出部54がこの非挿入状態から挿入状態への変化を検出した場合に、分包紙31が取り出されたと判断する。
【0094】
また、判断部55は、服薬のタイミングを示す位置毎に設けられた各検出部54のうち、どの検出部54が非挿入状態から接触状態となったかを判断することで、実際に分包紙31に包装された薬32が取り出されたタイミングも判断するようにしてもよい。これにより、患者が服薬のタイミングを間違えてしまったことも判別することができる。
以上が、本実施例に係る服薬管理装置41の構成についての説明である。
【0095】
本実施例によれば、保持部53がユニット化されている(包装された薬32を保持するのに、実施例1のように基板表面11Aを用いることなく、保持部53自身の構成で完結している)ことで、保持部53が故障した際に、当該保持部53を基板11から取り外して新たな保持部53と交換することが容易にできるので、実施例1に比べ、故障時の対応にかかる工数を抑えることが可能である。
【0096】
本実施例によれば、検出部54がフォトセンサであることで、接触非接触を判断する検出部15を用いる実施例1に比べ、検出精度が向上するとともに、被検出体との間に摩擦が発生しないため耐久性が向上する。
【0097】
本実施例によれば、挿入用板体53Eは、検出部54による検出に用いられるのみならず、分包紙31に包装された薬32を保持する際に、押さえとして機能する。これにより、保持しているのが例えば縦長の分包紙31である場合等に、分包紙31自身の重みにより前方に倒れるようにして落下するのを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、服薬を管理する装置及びシステムとして好適である。
【符号の説明】
【0099】
1,41 服薬管理装置
2 ルータ
3 サーバ
4 第1端末
5 第2端末
11 基板
11A 基板表面
11B,52 表示部
11C 孔
11D 紐状部材
11E 孔
11F 紐状部材
11G 基板裏面
12,53 保持部
12A 開閉手段
12B 板状部材
13 貫通穴
14 仕切り板
15,54 検出部
15A 電極基板
15B 導電性ゴム
16 判断部
17 バッテリ
18 通信制御手段
21,62 固定部材
21A,62A 軸心部
22,63 回転部材
22A 弾性体
22B 回転平板
31 分包紙
32 薬
51 氏名表示部
51A 氏名ラベル
51B ラベル差込部
52A 縦軸カード
52B 縦軸カード差込部
52C 横軸カード
52D 横軸カード差込部
53A 開閉手段
53B 開閉板状部材
53C 基板側板状部材
53D 取手部
53E 挿入用板体
53F 側方カバー
61A,61B 開口部
64,65 側方カバー片
66 架橋部
71 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11