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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/56 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A61F13/56 220
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021016146
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022119125
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 彩
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-072687(JP,A)
【文献】特開2013-123483(JP,A)
【文献】特開2016-059608(JP,A)
【文献】特表2010-537765(JP,A)
【文献】特表平9-505227(JP,A)
【文献】特開2014-73250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/56
A61F 13/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹側部、股部及び背側部が前後方向に連なって一体に形成され、
前記腹側部及び前記背側部のうち一方の両側部にそれぞれ固定された固定端と、前記固定端とは反対側の自由端とを有し、前記自由端の近傍に係止部を有する一組のファスニングテープと、前記腹側部及び前記背側部のうち他方に設けられた、前記係止部がそれぞれ貼り合わされることで前記係止部を固定するターゲットテープと、を備え、
前記ファスニングテープは、前記固定端が、前記自由端に比べて前記前後方向に幅広く形成された基材シートと前記係止部とを有し、
前記基材シートは、前記固定端と前記自由端とを繋ぐ前記前後方向の各辺縁部の少なくとも一部が幅方向の内側に折り返され、折り返された部分のうち長手方向における少なくとも前記自由端の側が、対向した部分に接合されている使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記折り返された部分は、前記係止部に重ならない範囲に形成されている請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記基材シートは、2つの前記折り返された部分の間の一般部に、前記固定端から前記自由端に向かって収束するように延びた、前記基材シートの湾曲を誘導する誘導線が形成されている請求項1又は2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記折り返された部分は、前記基材シートが固定されている前記腹側部又は前記背側部に重ならない範囲に形成されている請求項1から3のうちいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつは、股部と、股部よりも前側で腹側に配置される腹側部と、股部よりも後側で背側に配置される背側部とが一体に形成されている。使い捨ておむつには、パンツ式のものとテープ式のものとがある。テープ式のものは、腹側部と背側部は離れていて、使用者の身体に背側部、股部、腹側部をそれぞれあてがった後に、背側部の両側にそれぞれ設けられたファスニングテープを、身体の胴回りに腹側に引っ張り、腹側部に設けられたターゲットテープに貼り付けることで身体に装着する。
【0003】
ここで、ファスニングテープをターゲットテープに貼り付ける位置に応じて、足回りの周長と腰回りの周長とが調整されるが、足回りの周長と腰回りの周長との組み合わせには個人差があるため、左右一組のファスニングテープだけでこれら2つの周長を同時に最適化するのは難しい。
【0004】
これに対して、背側部の両側にそれぞれ上下1つずつ(左右で二組)のファスニングテープを設けたおむつが提案されている。この提案によれば、上側一組のファスニングテープで主に腰回りの周長を調整し、下側一組のファスニングテープで主に足回りを調整することができるため、足回りの周長と腰回りの周長とを略独立して適切に調整することができるが、左右二組のテープを別個に貼付するのは手間がかかり、装着が面倒である。
【0005】
そこで、上側1本のファスニングテープと下側1本のファスニングテープを係止部(自由端側)において1つにまとめて左右一組とした構成のもの(例えば、特許文献1参照)や、左右一組のファスニングテープを上半分と下半分とで、背側部における固定端の位置を周方向にずらしたもの(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-180751号公報
【文献】特開2010-136788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に提案されたおむつは、上下2本のファスニングテープを、係止部で1つにまとめた構造であり、構造が複雑である。一方、特許文献2に提案されたおむつは、1つのファスニングテープによって、使用者のウェスト側周囲(腰回り)の引張り力とレッグ側周囲(足回り)の引張り力とで差が出るように調整している。しかし、上下幅の狭いファスニングテープで、個人差が大きい腰回りと足回りとを同時に適切に調整することは困難である。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、構造が簡単で、左右一組の係止部により腰回りと足回りとをそれぞれ適切に調整することができる使い捨ておむつを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、腹側部、股部及び背側部が前後方向に連なって一体に形成され、前記腹側部及び前記背側部のうち一方の両側部にそれぞれ固定された固定端と、前記固定端とは反対側の自由端とを有し、前記自由端の近傍に係止部を有する一組のファスニングテープと、前記腹側部及び前記背側部のうち他方に設けられた、前記係止部がそれぞれ貼り合わされることで前記係止部を固定するターゲットテープと、を備え、前記ファスニングテープは、前記固定端が、前記自由端に比べて前記前後方向に幅広く形成された基材シートと前記係止部とを有し、前記基材シートは、前記固定端と前記自由端とを繋ぐ前記前後方向の各辺縁部の少なくとも一部が幅方向の内側に折り返され、折り返された部分のうち長手方向における少なくとも前記自由端の側が、対向した部分に接合されている使い捨ておむつである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の使い捨ておむつによれば、構造が簡単で、左右一組の係止部により腰回りと足回りとをそれぞれ適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】使い捨ておむつの内面側(着用者の体表面側)を広げた状態で示す平面図である。
図2図1に示したおむつの外面側を示す図である。
図3図1,2に示したおむつを着用者(想像線である二点鎖線で示す)に装着した状態を示す斜視図である。
図4】ファスニングテープの詳細を示す平面図である。
図5】ファスニングテープに引っ張り力を加えた際に、ファスニングテープが湾曲した様子を模式的に示した図である。
図6】ファスニングテープに引っ張り力を加えたことにより、着用者の腰回り及び足回りの密着性を調整する作用を模式的に示す斜視図である。
図7】一般部に、固定端から自由端に向かって延びた誘導線を設けたパネルを模式的に示した図である。
図8】一般部の、固定端に近い部分に、誘導線を設けたパネルを模式的に示した図である。
図9】係止部に切り欠きを設けたパネルを模式的に示した図である。
図10】タックを、背側部に重ならない範囲に形成したパネルを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る使い捨ておむつの実施形態について、図面を参照して説明する。図1は使い捨ておむつ1(以下、単におむつ1という。)の内面側(着用者の体表面側)を広げた状態で示す平面図、図2図1に示したおむつ1の外面側を示す図、図3図1,2に示したおむつ1を着用者に装着した状態を示す斜視図である。図示のおむつ1は、本発明に係る使い捨ておむつの一実施形態である。
【0013】
(使い捨ておむつの構成)
おむつ1は、図1,2に示すように、腹側部2、股部3及び背側部4が前後方向Xに沿って連なって一体に形成されている。図3に示すように、腹側部2はおむつ1の着用者100の腹側を覆うように配置される部分であり、股部3は着用者の股間を覆うように配置される部分であり、背側部4は着用者の背側を覆うように配置される部分である。
【0014】
おむつ1は、腹側部2、股部3及び背側部4に内部に、前後方向Xに連なった吸収体5を備えているが、本発明の説明上不要であるため、詳細な構造等の説明を省略する。
【0015】
股部3は、腹側部2に接続する前後方向Xの前側部3aの幅方向Yの寸法が腹側部2と同じ寸法に形成され、背側部4に接続する前後方向Xの後側部3cの幅方向Yの寸法が背側部4と同じ寸法に形成されているが、前後方向Xの前側部3aと後側部3cとの間の中間部3bは、前側部3a及び後側部3cよりも幅方向Yの寸法が狭く形成されている。これにより、両側縁部3dで区切られた股部3は括れた形状に形成されている。
【0016】
おむつ1は、図1,2に示すように、背側部4の幅方向Yの両側部4a,4aにそれぞれ、背側部4の幅方向Yの外側に突出した左右で一組のファスニングテープ10,10が設けられている。また、おむつ1は、図2に示すように、腹側部2の外面側に、幅方向Yに沿って延びた矩形状の一つのターゲットテープ20が設けられている。
【0017】
ファスニングテープ10は、シート状のパネル11(基材シート)と係止部12とを備えている。パネル11は、例えば、不織布、プラスチックフィルム、ポリエチレンの薄膜で表面を覆ったポリラミ不織布、紙、又はこれらの複合素材を用いることができる。
【0018】
パネル11は、使用中の不要な破れや伸びを防止するため、おむつ1のトップシート(着用者100の身体表面に接するシート)やバックシート(最外面のシート)等よりも高目付の素材で形成されている。
【0019】
パネル11は、一端が背側部4の側部4aに固定された固定端11aとされ、背側部4から幅方向Yの外側に突出した他端が自由端11bとされている。係止部12は、自由端11bの内面側に固定されている。
【0020】
係止部12は、例えば、メカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材や、粘着剤層である。ターゲットテープ20は、係止部12が貼り合わされることで係止部12を固定するものである。
【0021】
係止部12が例えばメカニカルファスナーのフック材である場合は、ターゲットテープ20はメカニカルファスナーのループ材であり、係止部12が例えば粘着剤層である場合は、ターゲットテープ20は粘着剤層が固定される被粘着剤層である。
【0022】
係止部12とターゲットテープ20とは、互いに、係止と剥離とを繰り返すことが可能なものであれば、それぞれの材質や形状等について、上述した例示に限定されない。
【0023】
そして、図3に示すように、着用者100の腹側に腹側部2を、股間に股部3を、背側に背側部4をあてがって、2つのファスニングテープ10を幅方向Yに引っ張って、着用者100の腰回りに腹側部2に回し込み、ファスニングテープ10の係止部12を腹側部2のターゲットテープ20に貼り付けることで、各ファスニングテープ10をターゲットテープ20に固定する。これにより、おむつ1は、着用者100に装着される。
【0024】
おむつ1が着用者100に装着された状態で、腹側部2の前後方向Xの端部2bと背側部4の前後方向Xの端部4bとが着用者100の腰回りに密着し、股部3の括れた側縁部3dが着用者100の各足回りに密着する。おむつ1の腰回りや足回りには、ギャザーが備えられていて伸縮性が確保され、着用者100の腰回り及び足回りの密着性を向上させている。
【0025】
(ファスニングテープの構成)
次に、ファスニングテープ10の詳細な構成について説明する。ファスニングテープ10のパネル11は、図4に示すように、背側部4に固定されている固定端11aが、係止部12の設けられた自由端11bよりも、前後方向Xに沿った寸法が広く形成されている。そして、パネル11は、自由端11bを上底、固定端11aを下底とする略台形状に形成されている。
【0026】
また、パネル11は、台形の上底の端と下底の端とを繋いだ2つの辺縁部の少なくとも一部に、折り返された部分であるタック11c,11dを有している。タック11c,11dは、折り返された部分以外の部分である一般部に比べて、幅方向Yへの引っ張りに対する剛性を強く形成されている。
【0027】
具体的には、パネル11は、上述した台形状に形成される前は、自由端11bに近い部分まで、固定端11aにおける前後方向Xの寸法と同じ寸法で形成されているが、固定端11aの各端と、固定端11aよりも前後方向Xの寸法が短い自由端11bの各端とを結ぶように、図4の二点鎖線で示した上側三角形の部分11eと下側三角形の部分11fとがそれぞれ、パネル11の幅方向(おむつ1の前後方向X)の内側に折り返されている。
【0028】
内側に折り返された上側三角形の部分11eの一部がさらに外側に折り返されていることで、傾斜した辺縁部の一部は折り返されたタック11cを形成する。内側に折り返された下側三角形の部分11fの一部もさらに外側に折り返されていることで、傾斜した辺縁部の一部は折り返されたタック11dを形成する。タック11c,11dは、パネル11を形成するシートが2枚又は3枚重ねられた状態となっている。
【0029】
そして、上側のタック11cのうち、最初に内側に折り返された上側三角形の部分11eの自由端11bに近い側の端部13aと外側に折り返された部分とが重なる、上側三角形の部分11eに対向した部分は、例えばホットメルト接着剤により接合されている。また、最初に内側に折り返した上側三角形の部分11eの一部を外側に折り返した部分の自由端11bに近い側の端部13bと最初に内側に折り返した上側三角形の部分11eが重なる、外側に折り返した部分に対向した部分との間も接合されている。
【0030】
なお、端部13aの接合は、ホットメルト接着剤の他、熱融着、超音波接着等であってもよい。
【0031】
また、最初に内側に折り返した上側三角形の部分11eのうち折り返した部分と重なる端部13a以外の部分も接合されていてもよく、全面が接合されていてもよい。ただし、接合した部分は接合していない部分に比べてごわつくため、ごわつく領域が広いほど、装着感の低下を招く可能性がある。したがって、接合する範囲は最小限であることが好ましく、この観点から、上側三角形の部分11eの自由端11bに近い側の端部13aだけを接合することが好ましい。
【0032】
同様に、最初に内側に折り返した上側三角形の部分11eの一部を外側に折り返した部分のうち端部13b以外の部分も接合されていてもよいが、端部13bだけを接合することが好ましい。
【0033】
タック11cのうち、固定端11aに近い側の端部14は、三角形の頂点が1点に集まっている状態であり、接着されている端部13aと同様に一体となっている。
【0034】
このように、タック11cは、2枚又は3枚のシートが重ね合わされて一体化されているため、1枚のシートで形成された一般部に比べて幅方向Yへの引っ張りに対する剛性が強い。したがって、幅方向Yの外側に向けた引っ張りが作用したときに、固定端11aには、一般部よりも強い、タック11cの延びた向きに沿った引っ張り力が作用する。また、タック11cは、自由端11bの上側の端から固定端11aの上側の端に向かって傾斜し、この傾斜の延長線が腰回りとなる背側部4の端部4bに達する。
【0035】
下側のタック11dについても同様に、最初に内側に折り返された下側三角形の部分11fの自由端11bに近い側の端部13aと折り返された部分とが重なる、下側三角形の部分11fに対向した部分との間も接合されている。また、最初に内側に折り返された下側三角形の部分11fの一部を外側に折り返された部分の自由端11bに近い側の端部13bと最初に内側に折り返された下側三角形の部分11fとが重なる、外側に折り返した部分に対向した部分との間も接合されている。接合の範囲については、上側三角形の部分11eと同様に、端部13a,13b以外の部分に及んでもよい。
【0036】
これにより、タック11dも、一般部に比べて幅方向Yへの引っ張りに対する剛性が強くなり、幅方向Yの外側に向けた引っ張りが作用したときに、固定端11aに、一般部よりも強い引っ張り力が、タック11dの延びた向きに沿って作用する。また、タック11dは、自由端11bの下側の端から固定端11aの下側の端に向かって傾斜し、この傾斜の延長線が足回りとなる股部3の側縁部3dに達する。
【0037】
2つのタック11c,11dの剛性が一般部よりも強く形成されていることにより、ファスニングテープ10の自由端11bに、図5に示すように、幅方向Yの外側への引っ張り力F0を作用させると、タック11c,11dよりも相対的に剛性の低い一般部は、上側三角形の部分11e、下側三角形の部分11fを折り返した方向とは反対側(図5の紙面の奥側)に突出するように湾曲する。
【0038】
そして、図6に示すように、係止部12を、腹側部2のターゲットテープ20に貼り付けて固定すると、自由端11bに掛けた幅方向Yの外側への引っ張り力F0によって、上側のタック11cに、腰回りの端部4bを幅方向Yの外側に引っ張る分力成分F1yを有する引っ張り力F1が作用するとともに、下側のタック11dに、足回りの側縁部3dを足回りの周方向に引っ張る分力成分F2rを有する引っ張り力F2が作用する。
【0039】
上記の説明は、おむつ1の右側に設けられたファスニングテープ10の作用の説明であるが、おむつ1の左側に設けられたファスニングテープ10についても、右側のファスニングテープ10と左右対称の作用を奏する。
【0040】
これにより、本実施形態のおむつ1は、左右一組のファスニングテープ10,10によって、着用者100の腰回りと足回りとに同時に引っ張り力を作用させることができる。
【0041】
また、係止部12を貼り付けるターゲットテープ20の、前後方向Xの位置を変えることにより、腰回りと足回りとの組み合わせに適切に対応することができる。
【0042】
具体的には、係止部12を貼り付けるターゲットテープ20の、幅方向Yの位置を変えることなく、前後方向Xの位置を後側(図6において下方側)に変化させることにより、変化させる前に比べて、上側のタック11cに作用する引っ張り力F1がより強くなって、腰回りをより強く密着させることができる。一方、幅方向Yの位置を変えることなく、前後方向Xの位置を後側に変化させることにより、変化させる前に比べて、下側のタック11dに作用する引っ張り力F2が弱くなって、足回りの密着を緩めることができる。
【0043】
これとは反対に、係止部12を貼り付けるターゲットテープ20の、幅方向Yの位置を変えることなく、前後方向Xの位置を前側(図6において上方側)に変化させることにより、変化させる前に比べて、上側のタック11cに作用する引っ張り力F1が弱くなって、腰回りの密着を緩めることができる。一方、幅方向Yの位置を変えることなく、前後方向Xの位置を前側に変化させることにより、変化させる前に比べて、下側のタック11dに作用する引っ張り力F2がより強くなって、足回りをより強く密着させることができる。
【0044】
したがって、本実施形態のおむつ1は、自由端11b側に係止部12が設けられた1枚のパネル11という簡単な構造で、1つの係止部12により、個人差のある腰回りと足回りとをそれぞれ適切に調整することができ、左右二組のファスニングテープを備えたおむつにおいて、二組のファスニングテープを交差させるようにして固定する、いわゆるクロス止めと同じ効果を得ることができる。
【0045】
本実施形態のおむつ1は、パネル11の上側のタック11cと下側のタック11dとが上下(前後)で対称の角度で傾斜して形成されているが、本発明に係る使い捨ておむつは、上側の折り返された部分(タック)と下側の折り返された部分(タック)とが上下(前後)で非対称の角度で傾斜して形成されていてもよい。
【0046】
この場合の上側の折り返された部分の傾斜角度や下側の折り返された部分の傾斜角度は、パネル11の幅方向Yの長さや、足回りとなる側縁部3dの長さ等に応じて任意に設定することができる。
【0047】
なお、腰回りの周長が足回りの周長よりも個人差が大きいため、腰回りの調整幅をより大きくする目的で、上側の折り返された部分の傾斜角度を下側の折り返された部分の傾斜角度よりも大きく設定してもよい。
【0048】
本実施形態のおむつ1は、剛性の強いタック11c,11dを形成している上側三角形の部分11eと下側三角形の部分11fとがそれぞれ、係止部12に重ならない範囲に設定されている。上側三角形の部分11eが係止部12に重なったり、下側三角形の部分11fが係止部12に重なったりする構成は、係止部12がターゲットテープ20に貼り付けられたとき、ターゲットテープ20に対して係止部12が浮き上がり気味となって固定力が低下し易いが、本実施形態のおむつ1は、そのような固定力の低下が発生するのを防止することができる。
【0049】
なお、本実施形態のおむつ1において、パネル11のタック11c,11dではない一般部に、図7に示す、固定端11a側から自由端11b側に向かって収束するように延びた、パネル11の湾曲を誘導する誘導線11hを形成してもよい。1本又は2本以上の誘導線11hは、例えば、パネル11のシートの厚さを薄くしたり、折り曲げ癖をつけたりした線状の部分として形成すればよい。
【0050】
誘導線11hが形成されていることにより、自由端11bに幅方向Yの外側に向かう引っ張り力F0を作用させたときに、パネル11の一般部が誘導線11hに沿って折り曲げられ易くなって、パネル11の湾曲を誘導させ易くすることができる。
【0051】
ここで、誘導線11hとしては、図7に示すように、固定端11a側から自由端11b側まで長く延びたものであってもよいし、図8に示すように、パネル11の固定端11aに近い部分だけに形成し、自由端11bまで延びていないものであってもよい。
【0052】
また、誘導線11hに代えて、図9に示すように、係止部12の、固定端11aに近い側の辺縁12aに、係止部12の剛性を低下させる切り欠き12bを形成してもよい。係止部12は、パネル11に重ねて設けられているため、係止部12が設けられている部分は、パネル11の一般部よりも剛性が高い。
【0053】
その係止部12に切り欠き12bが形成されていることにより、自由端11bに幅方向Yの外側に向かう引っ張り力F0を作用させたときに、係止部12が切り欠き12bの部分において折れ曲がるように湾曲することで、係止部12が設けられている部分よりも剛性の低いパネル11の一般部を、係止部12の湾曲に倣って湾曲させることができる。
【0054】
本実施形態のおむつ1は、パネル11の上側のタック11cや下側のタック11cのうち固定端11aに近い側の端部14,14が、それぞれ、図4,5に示すように、背側部4の端部4bと重なっている。
【0055】
このように、一般部に比べて剛性の高いタック11c,11dが、別の部材である背側部4に重なると、その重なった部分の剛性がさらに高くなる。そして、着用者100の肌が、その剛性の高い部分に触れることで、着用者100の肌に無用な刺激を与える可能性がある。
【0056】
そこで、上側のタック11c、下側のタック11dの各端部14が、図10に示すように、背側部4の端部4bに重ならない範囲となるように、パネル11を形成することが好ましい。これにより、着用者100の肌に、無用な刺激が加わるのを防止することができる。
【0057】
なお、各タック11c,11dの端部14が、背側部4の端部4bに重ならない範囲となるように、タック11c,11dを形成するための、上側三角形の部分11e及び下側三角形の部分11fが折り返される線の、固定端11a側の端部に、折り返しを抑制するための折り返し抑制部を形成してもよい。
【0058】
本実施形態のおむつ1は、ファスニングテープ10を背側部4に設けたものであるが、本発明に係る使い捨ておむつは、ファスニングテープを背側部に設けたものに限定されず、ファスニングテープを腹側部に設けたものであってもよいし、一方のファスニングテープを腹側部に設け、他方のファスニングテープを背側部に設けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 使い捨ておむつ
2 腹側部
3 股部
3d 側縁部
4 背側部
4b 端部
10 ファスニングテープ
11 パネル
11a 固定端
11b 自由端
11c,11d タック
12 係止部
13a,13b 端部
20 ターゲットテープ
100 着用者
F0,F1、F2 引っ張り力
F1y,F2r 分力成分
X 前後方向
Y 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10