(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電気機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 5/04 20060101AFI20240409BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240409BHJP
H01F 41/12 20060101ALI20240409BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01F5/04 Q
H01F27/28 128
H01F41/12 G
H01F41/04 Z
(21)【出願番号】P 2021033041
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】舘村 誠
(72)【発明者】
【氏名】筒井 宏
(72)【発明者】
【氏名】島尾 大輔
(72)【発明者】
【氏名】御子柴 諒介
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 博之
(72)【発明者】
【氏名】篠原 誠
(72)【発明者】
【氏名】河内 康貴
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 駿
(72)【発明者】
【氏名】城杉 孝敏
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-134126(JP,A)
【文献】特開昭51-114628(JP,A)
【文献】実公昭50-031453(JP,Y1)
【文献】特開2018-015765(JP,A)
【文献】特開2001-068354(JP,A)
【文献】特開2004-039759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/04
H01F 27/28
H01F 41/12
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁物で覆われたコイル線を鉄心の周りに巻回して構成されたコイルと、リード線と、前記コイルの一部と前記リード線とを接続する電気機器の製造方法であって、
前記リード線に接続する接合部の前記コイル線の前記絶縁物を剥がし、前記リード線の端部を前記絶縁物が剥がされた前記接合部に対し圧力を加えて接触させ、前記接触させた状態で前記接合部と前記リード線の前記端部とを接合し、前記接合が完了した後、前記接合部および前記リード線の前記端部を
前記絶縁物とは異なる別に用意した絶縁物により絶縁
し、
前記接合は加熱接合を用い、前記加熱接合の際に発生する溶融物を前記接合の作業中に除去する電気機器の製造方法。
【請求項2】
請求項
1に記載された電気機器の製造方法において、前記コイルに使用するコイル線はアルミ線であることを特徴とする電気機器の製造方法。
【請求項3】
請求項
1に記載された電気機器の製造方法において、前記溶融物は、ノズルから噴出するガスにより除去することを特徴とする電気機器の製造方法。
【請求項4】
請求項
3に記載された電気機器の製造方法において、前記除去された前記溶融物を吸引機により吸引することを特徴とする電気機器の製造方法。
【請求項5】
請求項
1に記載された電気機器の製造方法において、前記接合を行う際に、前記接合部と前記リード線の前記端部とをボックスにより覆い、前記ボックス内で前記接合を行うことを特徴とする電気機器の製造方法。
【請求項6】
請求項
5に記載された電気機器の製造方法において、前記接合を行う際に発生する溶融物を、前記ボックス内で噴出ガスにより除去することを特徴とする電気機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルを有する電気機器および電気機器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミ線を鉄心の周りに巻回したコイルを用い、そのアルミ線と銅製の電気端子とを接続する電気的接続装置が、特開2014-44887号公報(特許文献1)に開示されている。
この特許文献1に記載された技術は、鉄製鉄心にアルミ線を巻きつけた巻線コイルと、一端に略平面形状とした溶接部と他端側に圧接部を有する銅製の電気端子と、電源投入用の銅線とを備え、圧接部に前記アルミ線のアルミ芯線を圧接し、電気端子の溶接部に銅線を溶接した巻線コイルと銅線とを備えている。そして、電気端子の圧接部は第一圧接部と第二圧接部とに分かれ、第一圧接部と第二圧接部にアルミ芯線を圧接するときの圧接高さを変える構成とし、少なくとも電気端子の溶接部及び圧接部とを樹脂で覆うように一体成形する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1の技術は、複数の端子電圧を得る場合、コイルからコイル線を引出すことが必要となり、さらにその引出されたコイル線に対し、一端に圧接部を有する銅製の電気端子によりコイル線を圧接し、電気端子の他端をリード線と溶接して接続するので、接続装置の構造が複雑になる。圧接部を有する電気端子も必要である。また、圧接は、第一圧接部と第二圧接部との圧接高さを変えるなどの複雑な調整作業が必要である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、リード線とコイル線との接続構造が簡単で、製造時の作業性を改善した電気機器および電気機器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明は、その一例を挙げると、絶縁物で覆われたコイル線を鉄心の周りに巻回して構成されたコイルと、リード線と、前記コイル線と前記リード線とを接続した接続部とを有する電気機器であって、前記接続部は、前記リード線に接合する接合部の前記絶縁物を剥がし、前記リード線の端部を前記絶縁物が剥がされた前記コイルの前記接合部に接触させた状態で接合し、前記接合後に前記接合部および前記リード線の端部を絶縁物により絶縁している電気機器である。
【0007】
また、本発明の他の例を挙げると、絶縁物で覆われたコイル線を鉄心の周りに巻回して構成されたコイルと、リード線と、前記コイルの一部と前記リード線とを接続する電気機器の製造方法であって、前記リード線に接続する接合部の前記コイル線の前記絶縁物を剥がし、前記リード線の端部を前記絶縁物が剥がされた前記接合部に対し圧力を加えて接触させ、前記接触させた状態で前記接合部と前記リード線の前記端部とを接合し、前記接合が完了した後、前記接合部および前記リード線の前記端部を絶縁物により絶縁する電気機器の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リード線とコイル線との接続を簡単な構造とした電気機器および電気機器の製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1におけるコイル線とリード線の接続を示す構造図である。
【
図2】本発明の実施例1における接合部の接合方法を示す図である。
【
図3】コイル線とリード線の接合後に取り付ける絶縁紙の外観図である。
【
図4】コイル線とリード線の接合後後に絶縁紙を取付ける構成の外観図である。
【
図5】本発明の実施例2に係る接合部の接合方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体的な実施例により詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。また、各図面では、同一の部品や機器には同一の符号(番号)を用いており、すでに説明した部品や機能についての重複する説明を省略する場合がある。
【0011】
まず、本発明の理解を容易にするために、従来の一般的なリード線とコイル線との接続方法を説明する。
【0012】
従来の接続方法では、コイル線とリード線とをコイル巻付け中にコイル内部の箇所へ接続させることが困難であった。例えば、特許文献1に示すように、アルミ素材のコイル線はコイルの外側に一度引出して、コイルが巻き終わった後に、リード線と該引出したコイル線とを溶接と圧接などの方法を組み合わせて接続していた。
【0013】
ところで、変圧器の二次側から複数の端子電圧(タップ電圧)を得るには、コイルを所定数巻き回したコイル線の一部分とリード線とを接続する必要がある。具体的には、コイル線とリード線とを接続するには、コイル線の巻付けが端子電圧を得るために必要な所定巻回数に達したら、一度コイルの外側へコイル線をリード線との接続のために引出す。接続に必要な長さ分だけ引出したコイル線(引出し線)は、そのまま折り返してコイルの元の巻回中の位置へ戻し、再び巻回を始めるようにする必要がある。このとき、引出線と折返した線(折返し線)は、端子電圧に対応する1本のリード線と接続される。すなわち、各々1つの規定巻回数につきコイルの外側へ伸びた2本のコイル線が各1本のリード線に接続されることになる。
【0014】
以降のコイル線の巻回は、引出線と折返線の2本の線の上からコイル線を巻付けて積層し、各端子電圧に相当する規定巻回数ごとに、同様のコイル線の引出しと折返しの作業を繰り返す。コイルの巻線が完了した後に、それぞれの引出し線と折返し線の2本の線を対応するそれぞれのリード線と接続する。なお、引出し線と折返し線は折返し部分を切断せずに繋げたままでも良いし、作業しやすいようにあらかじめ切断してからリード線と接続しても良い。最終的に、リード線と、引出し線および折返し線とが接続されれば良い。リード線との接続では、コイルの外側に引出される引出し線、折返し線は絶縁紙が巻かれているため、リード線と接続する前にコイル外部で接続部の絶縁紙を剥がし、その後、圧接や溶接などの方法で接続する。
【0015】
本来、コイルを流れる電流はコイル内部で閉じて稼働する方が無駄が無く効率が良い。すなわち、コイル線をコイル1の外側へ引出した箇所からリード線へ接続するための長さ分と、折返して元のコイルの位置に戻すまでの長さ分とは、コイルの機能にとって不要な部分である。しかし、従来の接続方法では、リード線とコイル線とを接続するためには、引出し線および折返し線が必要であり、コイル線の一部を引出すこと、折返して元の位置に戻すことなどの作業も必要である。更にそれら引出し線および折返し線をリード線と接続する接続作業が必要となる。このように、従来の接続方法は複雑で、作業性が悪いという課題を有している。
【0016】
≪実施例1≫
次に、本発明の実施例1について、
図1、
図2を用いて説明する。
図1は、本発明を変圧器に適用した場合の本発明の実施例1の構成を示す図である。
図1では、右側に鉄心にコイルを巻き回した変圧器の概略構造を示し、左側にリード線とコイルとの接続部の構造に係る部分を拡大した図を示している。また、
図2は、本発明の実施例1におけるコイルとリード線との接続方法を説明するための図を示している。
【0017】
まず、
図1において、コイル1は、巻枠7、低圧用コイル1Lと高圧用コイル1Hから構成される。この実施例1において、コイル1は、高圧用コイル1Hと低圧用コイル1Lの少なくとも一方のコイル線2としてアルミ素材の線(アルミ線)を用いている。アルミ線は、銅線に比べて、軽量化、低コスト化の点で優れているからである。コイル線2は、予め絶縁物(絶縁材)でその周囲を絶縁している。絶縁されたコイル線を巻いてコイル1を製造する。なお、この実施例では、絶縁紙5により絶縁したコイル線2を使用したが、コイル線は種々の絶縁物で絶縁されたものを用いることができる。コイル1は、あらかじめ絶縁紙5が巻かれたコイル線2を巻枠7の軸上を周回しながららせん状に巻付け、コイル径方向に複数段積層して形成される。
【0018】
リード線3(銅あるいはアルミなどの良導体を使用する)は、高圧用コイル1Hの規定巻回数でリード線3の一端部をコイル線2と接続し、以降のコイル線2はリード線3の上から巻き付けており、コイル線2とリード線3の接続箇所はコイル1内部に収められている。
【0019】
図1の左側に示す拡大図は、巻回中のコイル線の接合部の周辺を拡大した外観を示している。この拡大部分には、下層のコイル線2b(図ではあらかじめ巻かれた絶縁紙5)が巻かれており、その上層にコイル線2a(図ではあらかじめ絶縁紙5が巻かれている)が積層し巻回されている状態を示している。また、拡大部分の中央には、コイル線とリード線との接合部2an(アルミ線のリード線との接続箇所およびその近傍)を示している。
【0020】
この接合部2anでは、まず、上層のコイル線2aの接合部2anの絶縁紙を剥し、絶縁紙が剥されたコイル線の接合部2anにリード線3の端部を所定の圧力を加えて接触(加圧接触)させる。所定の圧力とは、接合作業に適切である圧力を意味する。その状態において、コイル線とリード線の接合部とを加熱接合などの方法により接合する。そして、この接合後に、別に用意した絶縁紙15を用いて、アルミ素材の面が露出した接合部2anと、リード線3の端部との両方を絶縁紙15により(絶縁紙を巻いて)絶縁した構成になっている。
【0021】
図1の実施例1に示す変圧器の構成は、コイル線を引出したり、折返したりせず、リード線3がコイル1内部で接続されている。コイルのリード線との接続部の構成は、リード線と接合する接合部2anに巻かれている絶縁紙を剥がし、リード線の端部を絶縁紙が剥がされたコイルの接合部2anとを直接接合するため、接合部2anおよびリード線3の端部に対し別に用意した絶縁紙15を巻くことにより、それらの部分を絶縁する。なお、ここでは絶縁紙の例を示しているが、絶縁には絶縁紙以外の公知の絶縁物を使用することができることは言うまでもない。このような構成にすることにより、コイルの任意の接合部とリード線との接続構造が簡単で作業性が改善された変圧器を実現することができる。
【0022】
次に、
図2により、
図1に示す実施例1のリード線とコイルの接合部との接合(接続)方法を詳細に説明する。
【0023】
図2において、40はコイル線2とリード線3とを接合するために用いるボックス(箱体)である。ボックス40には、接合部とリード線を加熱して接合するためのヒータ43と、接合の際に発生する溶融物9を除去するためのガス(この例では、エアー41)を噴出するノズル(この例ではエアーノズル42)と、エアー41により除去された溶融物9を吸引する吸引機44とが取付けられている。
【0024】
リード線3とコイル線2の接合部2anにおける接合は、まず、接合部2anの絶縁紙5を剥す。接合部2anの絶縁紙5を剥した後、巻線中のコイル1の面上(図示せず)で、規定巻回数のコイル線2をコイル1の面に干渉しないよう面上方へ持ち上げ、コイル線2の接合部2anをボックス40内となるように取り付ける。リード線3はボビン(図示せず)に巻かれて巻線中のコイル周辺で待機している。ボビンに巻かれたリード線3は、ここでは絶縁紙が巻かれておらず、素材のまま巻かれているものとする。なお、リード線3は絶縁物で絶縁されたものを用いても良いが、接合に際しては、接合側の端部の絶縁物を剥し素材の状態にする必要がある。素材が露出されたリード線3は、ボックス40へ取り付けるため所定の長さ分だけボビンから繰り出される。リード線3の軸線はコイル線2の接合部2anの軸方向に対し一定の角度(例えば、略垂直方向)となるようにその端部を接続箇所8に位置合わせし、その状態で図示のように、リード線3の端部を接合部2anに接合する。つまり、T字状に配置する。
【0025】
この実施例の接合に用いたコイル線2の断面形状は4mm×7mmの平角線、リード線3の断面形状は4mm×7mmの平角線である。なお、本発明では、コイル線2、リード線3の断面寸法はとくに規定はない。また、接合に用いるコイル線2とリード線3の断面寸法がそれぞれ異なっていても良く、又、断面形状が円形、多角形あるいは楕円断面形状でも問題ない。図ではコイル線2の接合部2an側面にある接続箇所8にリード線3の端部を突き合せた構成としているが、コイル線2とリード線3を重ね合わせた接続構成でも問題ない。
【0026】
リード線3の端部と接合部2anとの接合は、リード線の端部を接合に適した所定の圧力で接合部2anの接続箇所8に押しつける。つまり、加圧接触させる。このような状態のままで、ヒータ43を作動させて加熱する。なお、接続部を加熱する方法は、ここで示したような電気でヒータ管を加熱する方法の他に、高周波誘導加熱、マイクロ波誘電加熱、電気抵抗加熱、レーザ加熱およびアーク放電加熱など、金属を加熱させる公知の方法を利用することができる。加熱中は、リード線3の端部とコイル線2の接合部2anの接続箇所8(接続面)とが離れてしまわないように、接合が修了するまで加圧接触状態を継続する。
【0027】
コイル線2の接合部2anとリード線3の接続の際には、接続箇所8の加熱により、接続箇所8の面外方向へ溶融物9が凸部となって現れることがある。溶融物9はエアーノズル42からエアー41を噴出させ除去する。つまり、加熱により溶融物9は高温で柔らかい状態であり、このエアー41により、溶融物9を除去する(吹き飛ばす)。エアー41の噴出方向には、吸引機44が設けられており、吹き飛ばされた溶融物9はこの吸引機44により吸引され、ボックス40の外部に運ばれて除去される。
【0028】
ここで、溶融物9を除去する理由は次のとおりである。すなわち、大きさや形状にもよるが、溶融物9による凸部がある状態で接続箇所8周辺を絶縁紙15で覆うと、コイル径外側へ膨らみ、その後のコイル線の巻回での積層の形成に支障が生じる。また、その凸部が絶縁紙15の面を傷付けてしまい、絶縁が不十分になりやすくなる。そのため、この実施例では、接合の際に発生する溶融物9を、接合作業中にガス(この例ではエアー41)を噴出して除去する。これにより、接合後に別途グラインダ等で除去する作業が不要となる。
【0029】
なお、接合時に溶融物を除去せず、接合後にグラインダあるいはカッタ機器を用いて除去する作業を行うようにしても良い。しかし、溶融物9をグラインダなどで除去する方法では、別途その除去作業が必要であるだけでなく、削除で生じたバリあるいは研削痕が残っている場合には、絶縁紙15を傷つける可能性が残る。そのため、熔融物の除去作業に時間を要する。これに対し、
図2に示すように、接合中にガスを吹き付けて溶融物を除去する方法であれば、そのような問題はなくなる。
【0030】
また、巻線中のコイル線2にリード線3を接続しながら巻回し複数段積層する場合は、コイル1内部でリード線とコイル線とが接続されるため、コイル1の巻線完了後はバリなどの除去を取除くことが出来ない。従って、溶融物9の凸部を削除したときに生じるバリあるいは研削痕を取り除く研磨処理は接続プロセスの一つして常に取り扱う必要があるので作業性が悪い。これに対し、
図2に示すような方法によれば、接合作業中に、自動的に溶融物9の除去ができるので、そのような問題はなくなる。なお、
図2では、ガスとしてエアー41を用いたが、窒素などの不活性ガスを噴出させて除去しても良い。
【0031】
また、エアー41で溶融物9を吹き飛ばした際に、高温の溶融物9が飛び出すのは好ましくない。この実施例では、溶融物9の飛び出しを防止するために、吸引機44により吸引している。この場合、ボックス40の上面に蓋を設けても良い。蓋を設けることにより、溶融物のボックス外部への飛び出しを防ぐとともに、ボックス内の密閉性が高まるので、吸引機44の吸引力を高めることができる。
【0032】
なお、コイル線2とリード線3の接続機器の構成を簡単にするため、吸引機44を用いないでエアー41で吹き飛ばし、ボックス40内のある一カ所、例えばエアー噴出方向のコーナ箇所に溶融物9(後に冷えて固まったもの)を集めるようにしても良い。あるいはエアー41で溶融物9を吹き飛ばさずに、吸引機44の吸引で溶融物9を除去する方法でも良い。あるいはエアー41のガスで吹き飛ばさずに、溶融物9をワイパーのような棒で機械的に拭き取る方法でも良い。
【0033】
このように、
図2に示す電気機器(変圧器)の製造方法では、リード線とコイル線の接続作業において、引出し作業、折返し作業が不要であり、また、接合の際に発生する溶融物を接合中に自動的に除去できるので、接続作業(接合作業)及び接続後の作業を簡素化し、製造の効率化を図ることができる。
【0034】
図2において、コイル線2とリード線3を接合した後は、あらかじめ巻いてあった絶縁紙5とは別の絶縁紙15を用いて、素材が露出している接合部2anおよびリード線3の端部を絶縁する。このとき、接合部2anの絶縁を確実にするため、接合部2anとリード線3の端部は一つの連続した絶縁紙で包むのが好ましい。そして、リード線3の他端(接続部でない端部)を変圧器のタップ端子に繋げることにより、複数の異なるタップ電圧を得ることができる。
【0035】
次に、接合後の絶縁について上述した方法と異なる方法を説明する。上記した
図1の実施例1では、リード線とコイル線との接合後に、リボン状の絶縁紙15を巻き付けて絶縁した例を示したが、このようなリボン状の絶縁紙に限らず、筒状の絶縁紙で包むことでも良い。すなわち、
図3の(a)、(b)に示すように、筒状の絶縁紙15aを用いて素材が露出した接合部2anを包む方法である。
図3(a)、(b)は接合後に取り付ける絶縁紙15aの形態の一つを示している。
【0036】
図4には、
図3に示す筒状の絶縁紙15aを用いた場合の絶縁紙15の装着方法を示す。
図4(a)は接合部2anとリード線3の端部とを接合した後の状態(接合部2anとリード線3の端部の素材が露出している状態)を示す。
図4(b)は、
図3に示す筒状の絶縁紙15aで絶縁した絶縁紙15の状態を示す。
【0037】
図3(a)の絶縁紙による装着方法では、絶縁紙として、筒状の絶縁紙15aとシート状の絶縁紙15bを用いる。
図4(a)に示す状態において、
図3(a)に示す筒状の絶縁紙15aをリード線3の端部から入れてリード線3の端部を筒の中を通し、接続箇所まで入れる。一方、
図3(a)のシート状の絶縁紙15bは、折れ線31で折返しておき、コイル線2の接合部2anを持ち上げ、該絶縁紙15bを下層と持ち上げたコイル線2の接合部2anの間に入れ、
図4(b)のように折り挟んで包む。包んだ際に、既にリード線3を通した筒状の絶縁紙15aを重ねて覆い、絶縁紙15aと絶縁紙15bを絶縁テープ(図示せず)などで留めて固定する。
【0038】
図3(b)の絶縁紙15aを用いた装着方法では、まずコイル1の外側まで伸びる長さのリード線3までを包む長さの筒状の絶縁紙15aを準備し、図に示す切込み線30に沿って切出し、
図3(b)下図の右側のようにして切出した部分を開く。
図3(b)は
図3(a)で分割していた二つの絶縁紙15aと15bを一つの絶縁紙15で構成したものである。
【0039】
図4(a)に示す接合後の状態において、
図3(b)の絶縁紙15aはシート状に開いた側から接続箇所8の反対側のリード線3の端部を筒の中に入れてリード線3を通し、接続箇所8まで入れる。続いて、コイル線2の接合部2anを持ち上げ、絶縁紙15aのシート状に開いた部分を下層と持ち上げたコイル線2の接合部2anの間に入れ、
図4(b)に示すように折り挟んで接続箇所8の接合部2anとリード線3をいっしょに包む。これにより、接合部とリード線の端部は素材が露出することなく絶縁紙15で覆われ、絶縁紙15aの筒状のものとシート状のものが開かないように絶縁テープ(図示せず)などで留めて固定する。
図3(a)、(b)に示す筒状の絶縁紙を用いると、リボン状の絶縁紙15で巻き付ける方法に比べて効率が良い。なお、筒状の絶縁紙に代えて、樹脂やその他の筒状の絶縁体で絶縁しても同様である。
【0040】
このように、本実施例の接続方法では、コイル線を引出すことなく、コイル1内部においてリード線3を接続した構造にしている。そのため、コイル線2の一部を接続のためにコイルから引出したり、また折返して元のコイルの位置まで戻す作業は不要である。また、調整を伴う圧接などの複雑な接続作業が不要となる。さらに、引出線、折返線を使用しないので、コイル線の長さが短かくなり、効率の良い変圧器を実現することができる。
【0041】
≪実施例2≫
次に、本発明の実施例2について
図5を用いて説明する。
図5は、本発明の実施例2における製造方法を示している。本発明の実施例2は、基本的に実施例1と同様の構成であるが、一つの接合部において、複数のリード線を接合する点が異なる。そのため、実施例2の説明は、その異なっている点を中心に説明する。
【0042】
図5において、コイル線2のリード線との接合部2anの絶縁紙5を剥す工程は、実施例1と同じである。また、その状態で、ボックス40を用意し、コイル線2と接続するためのリード線3の端部を接合部2anに略直角に押し当て、適度に加圧した状態で加熱接合を行う点も同様である。この実施例2では、コイル線2と接続するリード線3が複数(この例では2つ)であるために、夫々のリード線3を接合部2anに加圧接触させて接合している点が異なっている。つまり、接合部2anにおいて、2つのリード線の端部は、接合部2anの夫々の接続箇所8に所定の圧力で接触させる。その状態で、接合を実施する。接合後には、別途用意した絶縁紙15により、それらリード線の端部および接合部を絶縁する。この絶縁は、実施例1と同様の作業である。
【0043】
この実施例2によれば、コイル線とリード線の接続が簡単であるなどの実施例1と同様の効果を有するとともに、コイル線の接合部から同一電圧の2つの電圧端子を実現することができる。なお、このリード線の数は、この例では2つとしたが、必要に応じて3つ以上であっても良い。
【0044】
≪その他の実施例≫
上述した実施例では本発明を変圧器の例で説明したが、本発明は変圧器に限らず、コイルを有する電気機器および電気機器の製造方法に適用することができる。また、上記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0045】
1…コイル、1L…低圧用コイル、1H…高圧用コイル、2…コイル線、2a…上層のコイル線、2b…下層のコイル線、2an…接合部、3…リード線、5…絶縁紙、7…巻枠、8…接続箇所、9…溶融物、15…絶縁紙、30…切り込み線、31…折れ線、40…ボックス、41…エアー、42…エアーノズル、43…ヒータ、44…吸引機