(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】逆止弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 15/06 20060101AFI20240409BHJP
F25B 41/20 20210101ALI20240409BHJP
【FI】
F16K15/06
F25B41/20 B
(21)【出願番号】P 2021078396
(22)【出願日】2021-05-06
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】濱田 正吾
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-128314(JP,A)
【文献】特開平11-344274(JP,A)
【文献】特開2009-041701(JP,A)
【文献】特開2013-234754(JP,A)
【文献】特開2010-139031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00-15/20
F25B 31/00-31/02
39/00-41/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる筒状の外管部と、前記外管部に内蔵される弁本体と、前記弁本体に設けられる弁体と、を備えた逆止弁であって、
前記弁本体は、
前記弁体を支持する筒状の弁ホルダと、
前記弁体が着座可能な弁座部と、が一体に形成され、
前記弁体は、
前記弁ホルダ内において、前記弁座部に着座する弁閉位置と、前記弁座部から離れた弁開位置と、の間を軸方向に移動自在に設けられ、
前記弁ホルダにおける前記弁座部の反対側には、弁開位置にて前記弁体の移動を規制する弁受部材が設けられ、
前記弁受部材の外周面には、内方に向けて窪んだ窪み部
と、前記窪み部の軸方向一次側および二次側に位置する一対の縁部と、が設けられ、前記弁ホルダの外周から内方に向けて変形された変形部が前記窪み部に係合することにより前記弁受部材が固定され
、
前記弁ホルダの内周面には、外方に向かって拡径された段付き部が設けられ、
前記弁受部材は、前記段付き部に当接した状態で固定され、前記一次側の縁部が前記変形部と前記段付き部との間に挟まれ、前記二次側の縁部が前記変形部に押圧されていることを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記弁ホルダの前記変形部は、前記外周からのロールカシメ、ポンチ加工、またはプレス加工により形成される請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記窪み部は、V字形状または四角形状の溝で構成される請求項1
または2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記窪み部は、半円または楕円形状の湾曲した溝で構成される請求項1
または2に記載の逆止弁。
【請求項5】
前記窪み部は、前記弁受部材の外周における全周に亘って設けられている請求項1~
4のいずれか一項に記載の逆止弁。
【請求項6】
前記
弁受部材と前記弁体との間には、前記弁体を前記弁座部に向かって付勢する圧縮ばねが設けられ、
前記弁受部材には、前記圧縮ばねの位置ずれを防止する凹部または突起部が設けられている請求項1~
5のいずれか一項に記載の逆止弁。
【請求項7】
前記弁体は、前記弁受部材に向かって開口するとともに前記圧縮ばねが挿入される筒状部を有して形成され、前記筒状部の先端側内周面には、径方向に拡がるテーパ部が設けられている請求項
6に記載の逆止弁。
【請求項8】
請求項1~
7の逆止弁を備えた冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、逆止弁として、外管の内部に設けられる弁本体と、弁本体の内部に設けられる弁体と、を備え、弁本体は、弁口を構成する弁座部と、弁体を移動自在に収容する筒状の弁ホルダと、を有したものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この逆止弁において、弁ホルダ(弁筐体)には、外管の内部と弁口とを連通する連通孔(導通孔)が設けられており、流体の通常の流れである正流に対して、弁体が弁ホルダ内の出口側に移動し、弁口(流入口)から流入した流体が連通孔から外管内部を通過して流出口から流出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭47-34622号公報
【文献】特許第4454329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1、2のような構成の逆止弁において、弁座と弁ホルダとが切削加工等により一体に形成された逆止弁では、弁開位置の弁体に当接して移動を規制するための受け部品がホルダ先端部の曲げカシメにより固定される場合がある。
【0005】
しかしながら、このような弁ホルダの構造において、高圧作動が求められる環境では、弁開時に弁体が受け部品に衝突する際の衝撃が大きくなるため、カシメ部が緩んで作動不良を起こす可能性がある。また、ホルダ先端部の曲げカシメ加工は、弁ホルダに強い負荷がかかることから、横穴を有する弁ホルダに歪みが生じる可能性があり、弁体の作動不良の懸念が生じる。
【0006】
本発明の目的は、弁開時の衝撃で弁受部材の固定が緩む可能性を低減し、弁受部材の固定時に生じる弁ホルダの歪みを回避することで、弁体が作動不良を起こす可能性が軽減できる逆止弁および冷凍サイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の逆止弁は、軸方向に延びる筒状の外管部と、前記外管部に内蔵される弁本体と、前記弁本体に設けられる弁体と、を備えた逆止弁であって、前記弁本体は、前記弁体を支持する筒状の弁ホルダと、前記弁体が着座可能な弁座部と、が一体に形成され、前記弁体は、前記弁ホルダ内において、前記弁座部に着座する弁閉位置と、前記弁座部から離れた弁開位置と、の間を軸方向に移動自在に設けられ、前記弁ホルダにおける前記弁座部の反対側には、弁開位置にて前記弁体の移動を規制する弁受部材が設けられ、前記弁受部材の外周面には、内方に向けて窪んだ窪み部と、前記窪み部の軸方向一次側および二次側に位置する一対の縁部と、が設けられ、前記弁ホルダの外周から内方に向けて変形された変形部が前記窪み部に係合することにより前記弁受部材が固定され、前記弁ホルダの内周面には、外方に向かって拡径された段付き部が設けられ、前記弁受部材は、前記段付き部に当接した状態で固定され、前記一次側の縁部が前記変形部と前記段付き部との間に挟まれ、前記二次側の縁部が前記変形部に押圧されていることを特徴とする。
【0008】
このような本発明によれば、弁ホルダの外周から内方に向けて変形された変形部が弁受部材の窪み部に係合することにより、弁ホルダと弁受部材とが固定されているので、弁座部と弁ホルダとが一体に形成された逆止弁であっても、弁開時の衝撃で弁ホルダと弁受部材との固定が緩む可能性を低減し、弁受部材の固定時に生じる弁ホルダの歪みを回避できる。かくして、本発明では弁体が作動不良を起こす可能性が軽減できる。
【0009】
この際、前記弁ホルダの前記変形部は、前記外周からのロールカシメ、ポンチ加工、またはプレス加工により形成されることが好ましい。この構成によれば、弁受部材の固定時に弁ホルダの弁体をガイドする内周面に歪みが生じる可能性をより低減できる。とりわけ、弁ホルダの横穴が開いた部分は歪みやすいので、特に有効である。
【0010】
また、前記窪み部は、V字形状または四角形状の溝で構成されることが好ましい。なお、前記窪み部は、V字形状または四角形状の溝に限らず、半円または楕円形状の湾曲した溝で構成されてもよい。さらに、前記窪み部は、前記弁受部材の外周における全周に亘って設けられていることが好ましい。これらの構成によれば、弁受部材の固定時に生じる弁ホルダの歪みを回避できる上、弁ホルダの段付き部と変形部との軸方向における間に弁受部材の外周側端部が挟まれて堅固に固定されているため、弁開時の衝撃による弁ホルダと弁受部材との固定を更に緩み難くすることができる。そのため、弁体による全開位置のばらつきが無く、全開時の流量を安定させることができる。
【0011】
さらに、前記弁受部材と前記弁体との間には、前記弁体を前記弁座部に向かって付勢する圧縮ばねが設けられ、前記弁受部材には、前記圧縮ばねの位置ずれを防止する凹部または突起部が設けられていることが好ましい。この構成によれば、圧縮ばねの径方向の位置ずれを防止できる。
【0012】
さらに、前記弁体は、前記弁受部材に向かって開口するとともに前記圧縮ばねが挿入される筒状部を有して形成され、前記筒状部の先端側内周面には、径方向に拡がるテーパ部が設けられていることが好ましい。この構成によれば、テーパ部によって、ばねの逃げ場所ができるため、弁体の全開位置への移動時に圧縮ばねが弁体の後端面と弁受部材の外周一次側面との間に挟まる、ばね噛みが生じるのを防止できる。このため、ばね噛みが生じることに起因して弁体が全開できなくなることを回避でき、全開流量の不足や、作動不良を起こす可能性を軽減できる。
【0013】
本発明の冷凍サイクルシステムは、前記いずれかの逆止弁を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の逆止弁および冷凍サイクルシステムによれば、弁開時の衝撃で弁受部材の固定が緩む可能性を低減し、弁受部材の固定時に生じる弁ホルダの歪みを回避することで、弁体が作動不良を起こす可能性が軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る逆止弁の弁開時を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る逆止弁の弁閉時を示す断面図である。
【
図3】
図1の逆止弁における弁ホルダを拡大して示す断面図である。
【
図4】
図3の弁ホルダと弁受部材との固定部分を示す要部拡大断面図である。
【
図5】
図3の弁ホルダと弁受部材との固定部分の変形例を示す拡大断面図である。
【
図6】
図3の弁ホルダと弁受部材との固定部分の変形例を示す拡大断面図である。
【
図7】
図5の弁ホルダと弁受部材との固定方法の説明に供する図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は側面から見た断面図である。
【
図8】
図5の弁ホルダと弁受部材との固定方法の説明に供する図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のB-B断面図、(c)は側面から見た断面図である。
【
図9】
図5の弁ホルダと弁受部材との固定方法の説明に供する図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のC-C断面図、(c)は側面から見た断面図である。
【
図10】
図5の弁ホルダと弁受部材との固定方法の説明に供する図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のD-D断面図、(c)は側面から見た断面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る冷凍サイクルシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る逆止弁を
図1~
図5に基づいて説明する。
図1~
図3に示すように、本実施形態の逆止弁1は、一次側(
図1および
図2の左側)から二次側(
図1および
図2の右側)への流体の流れ(正流)を許可し、二次側から一次側への流体の流れ(逆流)を禁止する弁装置である。逆止弁1は、軸線Lに沿った軸方向に延びる円筒状の外管部2と、外管部2に内蔵される弁本体3と、弁本体3に設けられる弁体4と、を備えている。弁本体3は、弁体4を支持する筒状の弁ホルダ5と、弁体4が着座可能な弁座部6と、が切削加工等により一体に形成された黄銅製部材等であり、弁座部6には、着座した弁体4により閉じられる弁口7が形成されている。
【0017】
外管部2は、銅製の一体成形部材であり、一次側の一次継手部11と、二次側の二次継手部12と、一次継手部11よりも拡径された第一拡径部13と、第一拡径部13よりも拡径されて二次継手部12に連続する第二拡径部14と、を備えている。一次継手部11は、一次配管(不図示)に連結される一次開口部11Aと、一次開口部11Aに連続する円筒状の一次円筒部11Bと、一次円筒部11Bから第一拡径部13に向かって拡径される第一連結部11Cと、を有し、一次開口部11Aは、一次円筒部11Bよりも若干拡径されている。二次継手部12は、二次配管(不図示)に連結される二次開口部12Aと、二次開口部12Aに連続する円筒状の二次円筒部12Bと、二次円筒部12Bから第二拡径部14に向かって拡径される第二連結部12Cと、を有し、二次開口部12Aは、二次円筒部12Bよりも若干拡径されている。
【0018】
第一拡径部13は、その内部に圧入された弁座部6を保持する部位であり、周面の4箇所には、径方向内側に変形して弁座部6を固定する固定部13Aが形成されている。これらの固定部13Aは、プレス装置のポンチによってカシメ変形され、弁座部6の環状凹部25に食い込むことで、弁座部6が外管部2内部の所定位置に固定されるようになっている。第二拡径部14は、その内周面と弁ホルダ5の外周面とが所定の隙間を介して対向し、この隙間を流体が円滑に流れる程度の内径寸法を有した円筒状に形成されている。第二拡径部14と第一拡径部13の境界部分には、第一拡径部13に向かって縮径される段差部14Aが設けられている。
【0019】
弁本体3の弁ホルダ5には、円筒状の周面を径方向に貫通する連通孔21が4箇所に設けられ、これらの連通孔21によって、弁ホルダ5の内部と外管部2の第二拡径部14の内部とが連通されている。連通孔21は、側面視で円形に形成されている。すなわち、連通孔21は、弁ホルダ5に対して軸直交方向からドリル等による穴開け加工によって形成されている。弁ホルダ5の二次側端部近傍には、SUS製等で円板状の弁受部材としての弁ストッパ22が取り付けられる係合部8が形成されている(
図3参照)。係合部8は、弁ホルダ5の外周から内方に向けて変形された変形部5Aと、弁ストッパ22の外周面から内方に向けて形成された窪み部22Bと、が係合されて構成されている。
【0020】
具体的に、弁ホルダ5の二次側端部近傍の内面には、弁ストッパ22が取り付けられ、弁開位置(
図1に示す位置)に移動した弁体4が弁ストッパ22に当接することで、弁体4の弁開位置よりも二次側への移動が規制されている。すなわち、弁開位置とは、弁体4が弁座部6から離れた位置で、なおかつ、弁体4が弁ストッパ22に当接したことで、弁ストッパ22よりも二次側に弁体4が移動することが規制された位置(弁ストロークにおける二次側方向最大位置)のことである。なお、弁体4は、弁閉位置(
図2に示す位置)に移動すると、弁ストッパ22から離れた位置で、なおかつ、弁座部6に当接する。
【0021】
ここで、
図3と、
図3中の円で示す要部を拡大した
図4および
図5に示すように、弁ストッパ22の外周面には、内方に向けて窪んだ窪み部22Bが設けられている。そして、窪み部22が、弁ホルダ5の外周から内方に向けて変形された変形部5Aと係合することにより、弁ストッパ22が弁ホルダ5に固定される。弁ストッパ22の窪み部22Bは、弁ストッパ22の外周における全周に亘って設けられている。弁ホルダ5の変形部5Aは、外周からのロールカシメ、ポンチ加工、またはプレス加工により形成される。なお、具体的な加工方法の説明は後述する。弁ホルダ5の内周面には、外方に向かって拡径された段付き部5Bが設けられ、弁ストッパ22は、段付き部5Bに当接した状態で固定される。弁ストッパ22の窪み部22Bは、V字形状の溝(
図4参照)で構成されてもよいし、四角形状の溝(
図5参照)で構成されてもよいし、半円形状の溝(
図6参照)または楕円形状の溝(不図示)で構成されてもよい。要は、弁ホルダ5の外周から内方に向けて変形された変形部5Aが弁ストッパ22の窪み部22Bに係合することにより、弁ホルダ5と弁ストッパ22とが固定され、弁座部6と弁ホルダ5とが一体に形成された逆止弁1において、弁開時の衝撃により弁ホルダ5と弁ストッパ22との固定が緩む可能性を低減可能な形状であればよい。
【0022】
ここで、弁ストッパ22と弁ホルダ5との固定構造に関し、前述したロールカシメ、ポンチ加工、またはプレス加工の具体的な加工方法について説明する。まず、
図7(a)~(c)に示すように、ロールカシメの場合、先端がR形状のローラ付き加工具を、弁ホルダ5を回転させながら外方から押し当て、弁ストッパ22および弁ホルダ5の全周を加締める加工方法である。これにより、弁ホルダ5の全周に亘って外周から内方に向けて変形された変形部5Aが弁ストッパ22の窪み部22Bに係合することにより、弁ホルダ5と弁ストッパ22とが固定される。
【0023】
次に、
図8(a)~(c)に示すように、ポンチ加工における例えば4点ポンチ加工の場合、各ポンチの形状は、通常、先端が球(R)形状の加工具を用いて、これらポンチを弁ホルダ5の外周における90°毎の4方向から4点同時に押し込む。これにより、弁ホルダ5の外周における4個所において、外周から内方に向けて外観上丸形状に変形された変形部5A(ポンチ部とも呼ばれる)が弁ストッパ22の窪み部22Bに係合し、弁ホルダ5と弁ストッパ22とが4点で加締められて固定される。なお、加締めるポイントは4点に限らず3点や4点以上であってもよい。また、加工具の先端形状を変更することで、ポンチ部は外観上丸形状に限らず、
図9(a)~(c)に示すような円形の長孔形状などで形成することも可能となっている。
【0024】
また、
図10(a)~(c)に示すように、弁ホルダ5の外周における180°の対角線上の2個所から、R形状加工具によって2個所同時にプレスし押し込むプレス加工であってもよい。これにより、弁ホルダ5の外周における2個所において、外周から内方に向けて円形の長孔形状に変形された変形部5Aが弁ストッパ22の窪み部22Bに係合し、弁ホルダ5と弁ストッパ22とが略半周ずつの2個所で加締められて固定される。
【0025】
弁座部6は、一次側に延びる円筒部23を有し、この円筒部23の二次側(弁ホルダ5側)端部の内面には弁ホルダ5に向かって拡径される段差形状の弁座面24が設けられ(
図3参照)、弁閉位置に移動した弁体4が弁座面24に着座するようになっている(
図2参照)。円筒部23の一次側端部近傍の外面には、外管部2の固定部13Aが食い込む環状凹部25が形成されている。また、弁座部6の二次側端部外面には、径方向に突出した環状凸部26が形成され、この環状凸部26が外管部2の段差部14A内面に当接することで、弁本体3が外管部2に対して位置決めされており、CO
2冷媒等の超高圧で使用する場合、弁閉時に弁座部6が弁閉方向に受ける力をこの段差部14A内面で受けることができるため、弁座部6の圧入ずれ防止の効果がある。環状凸部26には、その周方向の一部が切り欠かれたDカット部27が形成されている。
【0026】
弁体4は、有底円筒状の樹脂製部材であって、その外径は、弁ホルダ5の内径よりも若干小さく、弁ホルダ5の内周面に沿って弁ホルダ5内を軸方向に移動可能に設けられている。弁体4は、有底円筒状の周面である外周面31と、一次側の端面であり底部となる先端面32と、二次側の端面であり弁ストッパ22に向かって開口した後端面33と、を有している。なお、弁体4は、有底円筒状に限らず、先端面32および後端面33のそれぞれ全面が平坦に形成され円柱状に形成されていてもよい。また、弁体4は、有底円筒状の外周面31の形状が、軸線方向Lの途中の一定範囲において、外径が縮径された形状であってもよく、例えば、先端面32および後端面33の外径よりも縮径した部分を途中に有し、この縮径した部分が全周に矩形状またはR状の凹部で構成されていてもよい。
【0027】
弁ホルダ5と弁体4との間には、弁体4を弁座部6に向かって付勢する圧縮ばね34が設けられている。弁体4は、弁ストッパ22に向かって開口するとともに圧縮ばね34が挿入される筒状部41を有して形成されている。筒状部41の先端側内周面には、径方向に拡がり、弁体4の移動時に圧縮ばね34の伸縮移動を案内することで、ばね噛みが生じるのを防止するテーパ部42が設けられている。弁ストッパ22の弁体4側の端面には、圧縮ばね34の径方向の位置ずれを防止する凹部22Aが設けられている。なお、弁ストッパ22は凹部22Aに限らず、弁体4側の端面の中央に圧縮ばね34の内径と対応した寸法からなる円柱状の突起部(不図示)を設けたり、圧縮ばね34の径寸法に対応した円環形状の凹部(不図示)を設けたりすることで、圧縮ばね34を保持し、圧縮ばね34の径方向の位置ずれを防止するようにしてもよい。
【0028】
弁体4は、
図2に示す弁閉位置において、先端面32の外周縁が弁座部6の弁座面24に当接して着座し、これにより弁口7が閉じて二次側から一次側への流体の逆流が阻止されるようになっている。また、弁体4は、
図1に示す弁開位置において、後端面33の外周部が弁ストッパ22に当接して移動が規制される。この弁開位置において、弁体4の先端面32が連通孔21の二次側端縁よりも一次側に位置するようになっている。すなわち、弁開位置に移動した弁体4の外周面31によって連通孔21の一部が塞がれるようになっている。
【0029】
以上の本実施形態によれば、弁ホルダ5の外周から内方に向けて変形された変形部5Aが弁ストッパ22の窪み部22Bに係合することにより、弁ホルダ5と弁ストッパ22とが固定されているので、弁座部6と弁ホルダ5とが一体に形成された逆止弁1であっても、弁開時の衝撃で弁ホルダ5と弁ストッパ22との固定が緩む可能性を低減し、弁ストッパ22の固定時に生じる弁ホルダ5の歪みを回避できる。かくして、本発明では弁体4が作動不良を起こす可能性が軽減できる。
【0030】
また、弁ホルダ5の変形部5Aは、外周からのロールカシメ、ポンチ加工、またはプレス加工により弁ホルダ5の外周から内方に向けて弁ストッパ22の窪み部22B内に形成されることで、弁ストッパ22の固定時に弁ホルダ5の弁体4をガイドする内周面に歪みが生じる可能性をより低減できる。とりわけ、弁ホルダ5の横穴が開いた部分は歪みやすいので、特に有効である。
【0031】
また、弁ホルダ5の内周面には、外方に向かって拡径された段付き部5Bが設けられ、弁ストッパ22の一次側面は、段付き部5Bに当接した状態で固定されることで、弁ストッパ22の固定時に生じる弁ホルダ5の歪みを回避できる上、弁ホルダ5の段付き部5Bと変形部5Aとの軸方向における間に弁ストッパ22の外周側端部が挟まれて堅固に固定されているため、弁開時の衝撃による弁ホルダ5と弁ストッパ22との固定を更に緩み難くすることができる。そのため、弁体4による全開位置のばらつきが無く、全開時の流量を安定させることができる。
【0032】
さらに、弁ストッパ22の窪み部22Bは、V字形状または四角形状の溝や、半円形状または楕円形状の溝で構成されることで、弁ストッパ22の固定時に生じる弁ホルダ5の歪みを回避できる上、弁開時の衝撃による弁ホルダ5と弁ストッパ22との固定を更に緩み難くすることができる。そのため、弁体4による全開位置のばらつきが無く、全開時の流量を安定させることができる。
【0033】
さらに、弁ストッパ22の窪み部22Bは、弁ストッパ22の外周における全周に亘って設けられていることで、弁ストッパ22の固定時に生じる弁ホルダ5の歪みを回避できる上、弁開時の衝撃による弁ホルダ5と弁ストッパ22との固定を更に緩み難くすることができる。そのため、弁体4による全開位置のばらつきが無く、全開時の流量を安定させることができる。
【0034】
さらに、弁ホルダ5(弁ホルダ5に固定された弁ストッパ22)と弁体4との間には、弁体4を弁座部6に向かって付勢する圧縮ばね34が設けられ、弁ストッパ22には、圧縮ばね34の位置ずれを防止する凹部22Bまたは突起部(不図示)が設けられている。この構成によれば、圧縮ばね34の径方向の位置ずれを防止できる。
【0035】
さらに、弁体4は、弁ストッパ22に向かって開口するとともに圧縮ばね34が挿入される筒状部41を有して形成され、筒状部41の先端側内周面には、径方向に拡がるテーパ部42が設けられている。このように、テーパ部42により、ばねの逃げ場所ができるため、弁体4の全開位置への移動時に圧縮ばね34が弁体4の後端面33と弁ストッパ22の外周一次側面との間に挟まる、ばね噛みが生じるのを防止できる。このため、ばね噛みが生じることに起因して弁体4が全開できなくなることを回避でき、全開流量の不足や、作動不良を起こす可能性を軽減できる。
【0036】
次に、本発明の冷凍サイクルシステムを
図11に基づいて説明する。
図11は、
図1~
図3に示す逆止弁1を備えた、一実施形態に係る冷凍サイクルシステム50を示す図である。
【0037】
この
図11に示す冷凍サイクルシステム50は、例えば、業務用エアコンなどの空気調和機に用いられる。この冷凍サイクルシステム50は、室内側熱交換器51、室外側熱交換器52、膨張弁53、四方弁54、および並列に接続された3台の圧縮機55が、配管で接続されたものである。逆止弁1は、各圧縮機55への冷媒の逆流を防ぐために、各圧縮機55における吐出(高圧出力)側と四方弁54との間に、圧縮機55を一次側、四方弁54を二次側として接続されている。
【0038】
冷房運転時には、実線矢印D51で示されているように、室内側熱交換器51で熱を吸収した冷媒が、四方弁54を介して圧縮機55へと流れ、圧縮機55で圧縮された後、逆止弁1と四方弁54を経て室外側熱交換器52に至る。そして、この室外側熱交換器52で熱を放出した後、膨張弁53を経て室内側熱交換器51に戻る。暖房運転時には、点線矢印D52で示されているように、室内側熱交換器51で熱を放出した冷媒が、膨張弁53を経て室外側熱交換器52に至る。そして、この室外側熱交換器52で熱を吸収した後、四方弁54を介して圧縮機55へと流れ、圧縮機55で圧縮された後、逆止弁1と四方弁54を経て室内側熱交換器51に戻る。冷凍サイクルシステム50は、これらのサイクルを繰り返して室内の冷房または暖房を行う。
【0039】
ここで、例えば、冷却負荷が大きい条件では、3台の圧縮機55を同時に運転するため、3台の各逆止弁1は全開状態となる。また、冷却負荷が小さい条件では、1台の圧縮機55の運転だけで足りるので、他の2台の圧縮機55は運転しない。このときには、2台の逆止弁1の二次側圧力が一次側圧力より高くなることで二次側からの逆流が生じ、2台の逆止弁1が閉じた状態となる。
【0040】
以上に説明した実施形態の逆止弁1を備える冷凍サイクルシステム50によれば、前述したように、逆止弁1が弁開時の衝撃による弁ホルダ5と弁ストッパ22との固定を緩み難くし、弁体4による全開位置のばらつきが無く、全開時の流量を安定させることができるため、冷凍サイクルシステム50における冷媒の循環効率を向上させることができる。
【0041】
なお、以上に説明した実施形態や変形例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これに限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によっても尚本発明の逆止弁および冷凍サイクルシステムの構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0042】
例えば、上述の実施形態では、業務用エアコンなどの空気調和機に用いられる逆止弁1を例示したが、逆止弁1としては、業務用エアコンに限らず、家庭用エアコンに用いてもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機、冷蔵庫等にも適用可能である。また、以上の様々な冷凍サイクルシステムにおいて、
図11の冷凍サイクルシステム50の逆止弁取付け例の様に圧縮機55の吐出側への取付けに限定するものではなく、様々な冷凍サイクルシステム中の様々な場所での逆流防止用として適用が可能である。また、各冷凍サイクルシステムの冷媒としては、多種多様な冷媒(例えば、各種フロン系冷媒や、炭化水素系冷媒やCO
2やアンモニア等といった自然冷媒等)がある。本発明の逆止弁は、これらのどの冷媒に対応した冷凍サイクルシステムにも適用可能である。
【0043】
なお、前述した実施形態の説明では、連通孔21については、弁ホルダ5の円筒状の周面を径方向に貫通する4箇所に設けられている構造について説明したが、連通孔21は4箇所に限定するものではなく1箇所や、2箇所以上の複数箇所でもよい。また、連通孔21は、側面視で円形に形成された孔について記述したが、側面視で円形に限定するものではなく、楕円形などでもよい。また、前述した実施形態では、外管部2(継手部材と本体部材)が銅製の一体形成部材の構造の逆止弁1について説明したが、入口、出口の銅管継手部材と、弁体を収容する本体部材と、を別体とした構造の逆止弁にも適用可能である。
【0044】
また、前述した実施形態では、弁ストッパ(弁受部材)の一例として、円板状部材で構成された弁ストッパ22が例示されている。しかしながら、弁ストッパは、外周面に内方に向けて窪んだ窪み部が設けられ、弁ホルダの外周から内方に向けて変形された変形部が窪み部に係合することにより、弁ホルダに固定されて弁体の開度を規制するものであれば、例えば円環形状などであってもよい。ただし、円環形状の弁ストッパを用いることで、弁体の開閉移動を更に円滑化することができ、また、製造コストを低減させることもできる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 逆止弁
2 外管部
3 弁本体
4 弁体
5 弁ホルダ
5A 変形部
5B 段付き部
6 弁座部
7 弁口
8 係合部
21 連通孔
22 弁ストッパ(弁受部材)
22A 凹部
22B 窪み部
32 先端面
41 筒状部
42 テーパ部
50 冷凍サイクルシステム