IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ミライズテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特許-死角補助装置 図1
  • 特許-死角補助装置 図2
  • 特許-死角補助装置 図3
  • 特許-死角補助装置 図4
  • 特許-死角補助装置 図5
  • 特許-死角補助装置 図6
  • 特許-死角補助装置 図7
  • 特許-死角補助装置 図8
  • 特許-死角補助装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】死角補助装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/04 20060101AFI20240409BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240409BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B60R1/04 H
G02B5/18
G02B5/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021103414
(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公開番号】P2023002275
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2023-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 裕次郎
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】武田 広大
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-123750(JP,A)
【文献】特開2006-231998(JP,A)
【文献】特開2005-199844(JP,A)
【文献】特開2017-198810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/02 - 1/08
G02B 5/00 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外景から第1角度で入射した光の1部を互いに異なる複数の第2角度で反射するように構成された第1光学素子(11,12)と、
前記第1光学素子と対向する位置に配置され、前記第1光学素子により反射されて前記複数の第2角度で入射した複数の光を、使用者の方向へ第3角度で反射するように構成された第2光学素子(20)と、
を備える、死角補助装置。
【請求項2】
外景から第1角度で入射した光の1部を透過し、且つ、別の1部を互いに異なる複数の第2角度で反射するように構成された第1光学素子(13,14,15)と、
前記第1光学素子と対向する位置に配置され、前記第1光学素子により反射されて前記複数の第2角度で入射した複数の光を、使用者の方向へ第3角度で反射するように構成された第2光学素子(20,21)と、
を備える、死角補助装置。
【請求項3】
前記第3角度は前記第1角度と等しく、
前記第1角度と前記複数の第2角度との関係は、θ=φ1<φ2<…<φnを満たし、
nは、2以上の整数であり、
θは、前記第1角度であり、
φ1、φ2、…、φnは、前記複数の第2角度である、
請求項1に記載の死角補助装置。
【請求項4】
前記第3角度は前記第1角度と等しく、
前記第3角度と前記複数の第2角度との関係は、θ=φ1<φ2<…<φnを満たし、
nは2以上の整数であり、
θは、前記第1角度であり、
φ1、φ2、…、φnは、前記複数の第2角度である、
請求項2に記載の死角補助装置。
【請求項5】
前記第3角度は前記第1角度と等しく、
前記第1角度と前記複数の第2角度との関係は、θ<φ1<φ2<…<φnを満たし、
nは2以上の整数であり、
θは、前記第1角度であり、
φ1、φ2、…、φnは、前記複数の第2角度である、
請求項1に記載の死角補助装置。
【請求項6】
前記第3角度は前記第1角度と等しく、
前記第1角度と前記複数の第2角度との関係は、θ<φ1<φ2<…<φnを満たし、
nは、2以上の整数であり、
θは、前記第1角度であり、
φ1、φ2、…、φnは、前記複数の第2角度である、
請求項2に記載の死角補助装置。
【請求項7】
前記第1光学素子(15)は、第1領域から第n領域までのn種類の領域を有し、
前記第1光学素子の第m領域は、θで入射した光を、φmで反射させるように構成されており、mは、1以上且つn以下の整数である、
請求項3又は5に記載の死角補助装置。
【請求項8】
前記第1光学素子(15)は、第0領域から第n領域までの(n+1)種類の領域を有し、
前記第1光学素子の前記第0領域は、θで入射した光を、φ0の屈折角で透過させるように構成されており、
前記第1光学素子の第m領域は、θで入射した光を、φmで反射させるように構成されており、mは、1以上且つn以下の整数である、
請求項4又は6に記載の死角補助装置。
【請求項9】
前記第2光学素子(21)は、第1領域から第n領域までのn個の領域を有し、
前記第2光学素子の第k領域は、φkで入射した光を、θで反射させるように構成されており、kは、1以上且つn以下の整数である、
請求項3~8のいずれか1項に記載の死角補助装置。
【請求項10】
前記第1光学素子(11,12)は、前記第1角度で入射した光の1部を、複数の第1反射率で反射するように構成され、
前記第2光学素子は、前記複数の第2角度で入射した複数の光を、複数の第2反射率で反射するように構成され、
前記複数の第1反射率の各々は、前記複数の第2角度の各々に対応し、
前記複数の第2反射率の各々は、前記複数の第2角度の各々に対応し、
前記複数の第1反射率と前記複数の第2反射率との関係は、
R11×R21=R12×R22=…=R1n×R2nを満たし、
R11、R12、…、R1nは、前記複数の第1反射率であり、
R21、R22、…、R2nは、前記複数の第2反射率である、
請求項3、5、7のいずれか1項に記載の死角補助装置。
【請求項11】
前記第1光学素子(13,14,15)は、前記第1角度で入射した光の1部を、所定透過率で透過し、別の1部を複数の第1反射率で反射するように構成され、
前記第2光学素子は、前記複数の第2角度で入射した複数の光を、複数の第2反射率で反射するように構成され、
前記複数の第1反射率の各々は、前記複数の第2角度の各々に対応し、
前記複数の第2反射率の各々は、前記複数の第2角度の各々に対応し、
前記所定透過率と前記複数の第1反射率と前記複数の第2反射率との関係は、
T1=R11×R21=R12×R22=…=R1n×R2nを満たし、
T1は、前記所定透過率であり、
R11、R12、…、R1nは、前記複数の第1反射率であり、
R21、R22、…、R2nは、前記複数の第2反射率である、
請求項4、6、8のいずれか1項に記載の死角補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、死角補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の死角補助装置は、半透過ミラーと、半透過ミラーと対向するように配置された平面ミラーとを備える。上記死角補助装置では、死角領域の物体から半透過ミラーへ入射した光が、半透過ミラーと平面ミラーとの間で反射を繰り返し、半透過ミラーから物体の像を示す複数の光が射出される。そのため、使用者は、広い範囲で物体の像を視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6172511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半透過ミラーと平面ミラーとの間隔を狭くすると、死角補助装置を薄型化できるが、反射回数が増加することにより輝度が低下し、輝度ムラが増加する。一方、半透過ミラーと平面ミラーとの間隔を広くすると、輝度が向上し、輝度ムラが改善するが、死角補助装置が大型化する。
【0005】
本開示の1つの局面は、輝度向上及び輝度ムラの改善を実現しつつ、薄型化が可能な死角補助装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面の死角補助装置は、第1光学素子(11,12)と、第2光学素子(20)と、を備える。第1光学素子は、外景から第1角度で入射した光の1部を互いに異なる複数の第2角度で反射するように構成される。第2光学素子は、第1光学素子と対向する位置に配置され、第1光学素子により反射されて複数の第2角度で入射した複数の光を、使用者の方向へ第3角度で反射するように構成される。
【0007】
1つの局面の死角補助装置において、第1光学素子は、入射した光を互いに異なる複数の第2角度で反射し、第2光学素子は、入射した複数の光を使用者の方向へ反射する。そのため、第1光学素子で反射された光は、第2光学素子の互いに異なる複数の領域に入射して、使用者の方向へ反射され、広い範囲へ射出され、所定の条件を満たすことにより、第2光学素子で反射された光は、第1光学素子へ戻らない。よって、外景を視認可能な範囲を広げるために、第1光学素子と第2光学素子との間で反射を繰り返すさず、第1光学素子と第2光学素子との間隔を狭くしつつ、第1光学素子と第2光学素子との間での反射の繰り返しを抑制できる。ひいては、輝度向上及び輝度ムラの改善を実現しつつ、死角補助装置を薄型化することができる。
【0008】
本開示の他の1つの局面の死角補助装置は、第1光学素子(13,14,15)と、第2光学素子(20,21)と、を備える。第1光学素子は、外景から第1角度で入射した光の1部を透過し、且つ、別の1部を互いに異なる複数の第2角度で反射するように構成される。第2光学素子は、第1光学素子と対向する位置に配置され、第1光学素子により反射されて複数の第2角度で入射した複数の光を、使用者の方向へ第3角度で反射するように構成される。
【0009】
他の1つの局面の死角補助装置は、前述の死角補助装置と同様の効果を奏するとともに、外景を視認可能な範囲を更に広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】死角領域に対する死角補助装置の配置を示す図である。
図2】第1実施形態に係る死角補助装置の構成を示す側面図である。
図3】第1実施形態に係る死角補助装置の第1光学素子の対向部分の長さの条件を示す図である。
図4】第2実施形態に係る死角補助装置の構成を示す側面図である。
図5】第1及び第2実施形態に係る第1光学素子と第2光学素子の間隔の比較を示す図である。
図6】第3実施形態に係る死角補助装置の構成を示す側面図である。
図7】第4実施形態に係る死角補助装置の構成を示す側面図である。
図8】第5実施形態に係る第1光学素子の構成を示す平面図である。
図9】第5実施形態に係る死角補助装置の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
(1.第1実施形態)
<1-1.構成>
本実施形態に係る死角補助装置101は、使用者が死角領域の外景を視認するための装置である。死角補助装置101は、例えば、車両に設置され、使用者(具体的には運転者)の死角を補う。図1は、車両のフロントピラー400に取り付けられた死角補助装置101を示す。死角補助装置101は、運転席が右側の場合には、右側のフロントピラー400に取り付けられ、運転席が左側の場合には、左側のフロントピラー400に取り付けられる。
【0012】
使用者は、フロントガラスとサイドガラスを介して、フロントガラスとサイドガラスの外側に広がる外景を直接視認することができる。しかしながら、フロントガラスとサイドガラスとの間には、フロントピラー400が設けられている。フロントピラー400は、使用者の視界を遮り、死角領域200を生じさせる。すなわち、フロントガラスを介して視認可能な領域と、サイドガラスを介して視認可能な領域との間に、死角領域200が存在する。使用者は、死角領域200内の外景を直接視認することができない。
【0013】
次に、死角補助装置101の構成について、図2を参照して説明する。死角補助装置101は、第1光学素子11と、第2光学素子20と、を備える。第1光学素子11と、第2光学素子20とは、板状の部材であり、所定の間隔で互いに平行に対向するように、間隔W離して配置されている。詳しくは、第1光学素子11と、第2光学素子20とは、図示しないホルダ部材で固定されて、フロントピラー400に取り付けられている。第1光学素子11は、使用者側に配置され、第2光学素子20は、フロントピラー400側に配置される。
【0014】
第1光学素子11及び第2光学素子20は、反射光学素子である。第1光学素子11及び第2光学素子20は、透光性の樹脂材料と、樹脂材料に設けられた反射角調整部材とを備える。反射角調整部材は、ホログラムシート、プリズムシート、回折光学素子などの部材、あるいは、ホログラムシート、プリズムシート、回折光学素子などをミラーコーティングした部材である。第1光学素子11及び第2光学素子20は、反射角整部材が互いに対向するように配置されている。
【0015】
第1光学素子11は、外景から第1角度θで入射した光の1部を、互いに異なる複数の第2角度で反射するように構成されている。複数の第2角度は、φ1a、φ2、…φnを含む。第1角度と複数の第2角度の関係は、θ=φ1a<φ2<…<φnを満たす。nは2以上の整数である。
【0016】
第1光学素子11は、複数の第1反射角調整部材が、第2光学素子20と対向する対向面に垂直な方向に積層されて構成されている。複数の第1反射角調整部材は、入射角θで入射した光を反射角φ1aで反射する部材と、入射角θで入射した光を反射角φsで反射する部材とを含む。sは、2以上且つn以下の整数である。
【0017】
第2光学素子20は、第1光学素子11により反射されて複数の第2角度で入射した複数の光を、使用者の方向へ第3角度で反射するように構成されている。第3角度と第1角度は等しくθである。
【0018】
第2光学素子20は、複数の第2反射角調整部材が、第1光学素子11と対向する対向面に対直な方向に積層されて構成されている。複数の第2反射角調整部材は、入射角φ1aで入射した光を反射角θで反射する部材と、入射角φtで入射した光を反射角θで反射する部材と、を含む。tは、2以上且つn以下の整数である。
【0019】
第1光学素子11の複数の第1反射率と、第2光学素子20の複数の第2反射率との関係は、R11×R21=R12×R22=…=R1n×R2nを満たす。第1反射率R11は、第2角度φ1aでの反射の反射率である。第1反射率R1sは、第2角度φsでの反射の反射率である。第2反射率R21は、第2角度φ1aで入射した光の反射率である。第2反射率R2tは、第2角度φtで入射した光の反射率である。
【0020】
第1光学素子11において第2角度φ1aで反射した光は、第2光学素子20における第1光学素子11に最も近い領域(図面の左側)で反射される。また、第1光学素子11において第2角度φnで反射した光は、第2光学素子20における第1光学素子11から最も遠い領域(図面の右側)で反射される。すなわち、第1光学素子11で反射された複数の光は、第2角度が互いに異なることにより、第2光学素子20の異なる領域で反射される。第2角度が大きい光ほど、第2光学素子20において第1光学素子11から遠い領域で反射される。以下では、図面の右側を死角補助装置101の右側と称し、図面の左側を死角補助装置101の左側と称する。
【0021】
図3に示すように、第1光学部材11は、基部11aと延設部11bとを含む。基部11aは、第1光学部材11のうちの第2光学部材12と対向する部分である。延接部11bは、基部11aから左側へ延設されている。基部11aは、長さDを有する。長さDは、交点P2から第1光学素子11の右端P3までの距離に相当する。交点P2は、第2光学素子20の左端P1から第1光学素子11へ下した垂線と第1光学素子11との交点に相当する。
【0022】
第1光学素子11と第2光学素子20との間で、反射を繰り返さないためには、第2光学素子20で反射された光が、再度第1光学素子11へ入射することを回避する必要がある。第2光学素子20で反射された光が、再度第1光学素子11へ入射しない条件は、長さDと、間隔Wと、第1角度θと、最小の第2角度φ1aとが、以下の式(1)を満たすことである。式(1)を満たすとき、第1光学素子11と第2光学素子20との間で、反射の繰り返しが回避される。
D<2Wtanθ+Wtanφ1a (1)
【0023】
図3に示すように、死角補助装置101へ到来する外光がある程度の広がりを持ち、第1角度θがθ1~θ2の範囲を持つことがある。θ1~θ2は、θ0を中心とする角度範囲である。第1角度θ1は、光線L1の入射角であり、最も小さい入射角である。第1角度θ2は、光線L2の入射角であり、最も大きい入射角である。第1角度θ0は、光線L0の入射角であり、中心の入射角である。
【0024】
第1角度θが範囲を持つ場合、複数の第2角度φ1a、φ2、…φnのそれぞれも範囲を持つ。光線L1が反射した場合の複数の第2角度は、φ11、φ12、φ13、…φ1nであり、φ11<φ12<φ13<…<φ1nの関係を満たす。光線L2が反射した場合の複数の第2角度は、φ21、φ22、φ23、…φ2nであり、φ21<φ22<φ23<…<φ2nの関係を満たす。光線L0が反射した場合の複数の第2角度は、φ01、φ02、φ03、…φ0nであり、φ01<φ02<φ03<…<φ0nの関係を満たす。
【0025】
外光がある程度の広がりを持つ場合、最も入射角が小さい光線L2の第1角度θ1と、第2角度φ11とが、式(1)を満たす場合に、第1光学素子11と第2光学素子20との間で、反射の繰り返しが回避される。すなわち、以下の式(2)を満たす場合に、第1光学素子11と第2光学素子20との間で、反射の繰り返しが回避される。
D<2Wtanθ1+Wtanφ11 (2)
【0026】
複数の第2角度を適切に設定することにより、第2光学素子20で反射されたn個の光は、図の左右方向において連続する。したがって、死角補助装置101は、θ方向の外景を示す光、使用者の目の左右方向に沿って幅広い範囲で射出する。よって、反射を繰り返すことなく、外景を視認可能なアイボックスを広げることができる。使用者は、死角補助装置101を介して、θ方向の外景を、左右方向の幅広い範囲で、直接視認できる外景と連続して視認することができる。
【0027】
また、死角補助装置10では、アイボックスを広げるために、第1光学素子11と第2光学素子20との間で反射を繰り返す必要がない。そのため、第1光学素子11と第2光学素子20との間隔Wを狭めても、反射の繰り返しが抑制され、輝度低下及び輝度ムラが改善される。
【0028】
さらに、複数の第1反射率と複数の第2反射率との関係が、R11×R21=R12×R22=…=R1n×R2nを満たすため、第2光学素子20から放射される複数の光の輝度損失が一定になり、輝度ムラがさらに改善される。
【0029】
また、第1光学素子11は、外景から入射した光を1回反射するだけであるため、繰り返し反射する場合と比べて、開口幅(すなわち、左右方向の長さ)を短くすることができる。第1光学素子11の開口幅は、第2光学素子20よりも短くすることができる。具体的には、第1光学素子11の開口幅は、外景から死角補助装置101へ入射した光の入射幅Wの射影成分Wcosθの長さまで短くすることができる。これにより、死角補助装置101を小型化することができる。
【0030】
<1-2.効果>
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)第1光学素子11で反射された光は、第2光学素子20の互いに異なる複数の領域に入射して、使用者の方向へ反射され、広い範囲へ射出される。よって、第1光学素子11と第2光学素子20との間での反射を繰り返すことなく、広い範囲に外景からの入射光を射出することができる。よって、アイボックスを広げるために、第1光学素子11と第2光学素子20との間で反射を繰り返す必要がない。したがて、第1光学素子11と第2光学素子20との間隔を狭くしつつ、第1光学素子11と第2光学素子20での反射を1回に制限できる。ひいては、輝度向上及び輝度ムラの改善を実現しつつ、死角補助装置101を薄型化することができる。
【0031】
(2)第1角度と複数の第2角度の関係が、θ=φ1a<φ2<…<φnを満たすことにより、第1光学素子11で反射した光が、第2光学素子20の互に異なる領域に入射して反射し、左右方向の広い範囲に射出される。よって、使用者は、広いアイボックスで、死角領域内の外景を視認することができる。
【0032】
(3)複数の第1反射率と複数の第2反射率の関係が、R11×R21=R12×R22=…=R1n×R2nを満たすことにより、使用者方向へ射出される複数の光の輝度の損失を一定にして、輝度ムラをより改善することができる。
【0033】
(2.第2実施形態)
<2-1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0034】
前述した第1実施形態に係る死角補助装置101は、第1光学素子11を備えていた。これに対して、第2実施形態に係る死角補助装置102は、第1光学素子12を備えている。
【0035】
図4に示すように、第1光学素子12の配置は、第1光学素子11の配置と同じである。第1実施形態では、第1光学素子11は、外景から第1角度θで入射した光の1部を、複数の第2角度φ1a、φ2、…、φnで反射した。第1実施形態では、第1角度と複数の第2角度の関係は、θ=φ1a<φ2<…<φnを満たした。これに対し、図4に示すように、第1光学素子12は、外景から第1角度θで入射した光の1部を、複数の第2角度φ1b、φ2、…、φnで反射する。第2実施形態では、第1角度と複数の第2角度の関係は、θ<φ1b<φ2<…<φnを満たす。
【0036】
また、第1光学素子12における第2角度φ1bでの第1反射率はR11であり、第2光学素子20において第2角度φ1bで入射した光の第2反射率はR21である。よって、第1実施形態と同様に、複数の第1反射率と複数の第2反射率の関係は、R11×R21=R12×R22=…=R1n×R2nを満たす。
【0037】
すなわち、第1光学素子12は、第1角度θよりも大きい複数の第2角度で入射光を反射する。これにより、第1光学素子12と第2光学素子20との間隔Wを、より狭くすることができる。
【0038】
図5に示すように、第1実施形態では、第1角度θで入射した光を、第2角度θ(=φ1a)で反射するので、第1光学素子11と第2光学素子20との間隔WはH/tanθになる。Hは、第1光学素子11,12の開口幅(すなわち、左右方向の長さ)である。一方、第2実施形態では、第1角度θで入射した光を、第2角度φ1bで反射するので、間隔WはH/tanφ1bになる。θ<φ1bである場合、第2実施形態における間隔Wは、第1実施形態における間隔WよりもH(1/tanθ-1/tanθ1)だけ狭くすることができる。ひいては、死角補助装置102を、より薄型化することができる。
【0039】
<2-2.効果>
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)及び(3)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0040】
(4)第1角度と複数の第2角度の関係が、θ<φ1b<φ2<…<φnを満たすことにより、第1光学素子12と第2光学素子20との間隔をより狭くして、死角補助装置102をより薄型化することができる。
【0041】
(3.第3実施形態)
<3-1.第2実施形態との相違点>
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0042】
前述した第1実施形態に係る死角補助装置101は、反射光学素子の第1光学素子11を備えていた。これに対して、第3実施形態に係る死角補助装置103は、透過及び反射光学素子の第1光学素子13を備える点で相違する。
【0043】
図6に示すように、第1光学素子13の配置は、第1光学素子11の配置と同じである。第1光学素子13は、外景から第1角度θで入射した光の1部を所定透過率T1で透過する。これにより、θ方向を視認可能なアイボックスが第1及び第2実施形態よりも拡大する。
【0044】
また、第1光学素子13は、別の一部を互い異なる複数の第2角度φ1a、φ2、…、φnで反射する。複数の第2角度φ1a、φ2、…、φnは、第1実施形態と同様に、θ=φ1a<φ2<…<φnの関係を満たす。所定透過率と第1反射率と第2反射率の関係は、T1=R11×R21=R12×R22=…R1n×R2nを満たす。
【0045】
<3-2.効果>
以上詳述した第3実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)及び(2)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0046】
(5)θ方向を視認可能なアイボックスをより拡大することができる。
(6)所定透過率と複数の第1反射率と複数の第2反射率の関係が、T1=R11×R21=R12×R22=…=R1n×R2nを満たすことにより、使用者方向へ射出される複数の光の輝度の損失を一定にして、輝度ムラをより改善することができる。
【0047】
(4.第4実施形態)
<4-1.第3実施形態との相違点>
第4実施形態は、基本的な構成は第3実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第3実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0048】
前述した第3実施形態に係る死角補助装置103は、第1光学素子13を備えていた。これに対して、第4実施形態に係る死角補助装置104は、第1光学素子14を備えている。
【0049】
図7に示すように、第1光学素子14の配置は、第1光学素子11の配置と同じである。第1光学素子14は、第1光学素子11と同様に、透過及び反射素子である。第1光学素子14は、外景から第1角度θで入射した光の1部を所定透過率T1で透過する。また、第1光学素子14は、別の一部を互い異なる複数の第2角度φ1b、φ2、…、φnで反射する。複数の第2角度φ1b、φ2、…、φnは、第2実施形態と同様に、θ<φ1b<φ2<…<φnの関係を満たす。所定透過率と第1反射率と第2反射率の関係は、T1=R11×R21=R12×R22=…R1n×R2nを満たす。すなわち、第4実施形態は、第2実施形態と第3実施形態との組み合わせに相当する。
【0050】
<4-2.効果>
以上詳述した第4実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)、第2実施形態の効果(4)、第3実施形態の効果(5)及び(6)を奏する。
【0051】
(5.第5実施形態)
<5-1.第3実施形態との相違点>
第5実施形態は、基本的な構成は第3実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第3実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0052】
前述した第3実施形態に係る第1光学素子13は、同じ角度で入射した光を互いに異なる角度で反射する複数の第1反射角調整部材が積層されて形成されていた。また、第3実施形態に係る第2光学素子20は、互いに異なる角度で入射した光を同じ角度で反射する複数の第2反射角調整部材が積層されて形成されていた。
【0053】
これに対して、図8に示すように、第5実施形態に係る第1光学素子15は、領域A0から領域Anまでの(n+1)種類の領域を有し、複数の第1反射角調整部材が互いに異なる領域に配置されている点で、第3実施形態に係る第1光学素子13と相違する。また、図9に示すように、第5実施形態に係る第2光学素子21は、領域B1から領域Bnまでのn個の領域を有し、複数の第2反射角調整部材が互いに異なる領域に配置されている点で、第3実施形態に係る第2光学素子20と相違する。
【0054】
詳しくは、領域A0から領域Anまでの(n+1)個の領域で1つのグループが形成されており、第1光学素子15は、複数のグループを含む。各領域は、正方形の形状を有する。領域A0には、第1角度θで入射した光を、屈折角φ0で屈折させる屈折角調整部材が設けられている。また、領域Amには、第1角度θで入射した光を、第2角度φmで反射する第1反射角調整部材が設けられている。mは、1以上且つn以下の整数である。φ1は、θと等しくてもよいし、θよりも大きくてもよい。すなわち、φ1は、φ1a及びφ1bのどちらでもよい。
【0055】
第1~第4実施形態に係る第1光学素子11,12,13,14では、外景からの入射光がn個に分割されて反射されるのに対して、第5実施形態に係る第1光学素子15では、各領域において、外景からの入射光が分割されることなく反射される。したがって、各領域の面積を小さくし、第1光学素子15を細かく分割、例えば、人間の面の分解能よりも小さい領域に分割することにより、第1光学素子15での反射による輝度の損失が抑制される。ひいては、使用者は、外景を鮮明に視認することができる。
【0056】
第2光学素子21は、領域B1から領域Bnまでのn個の領域に分割されている。領域Bkは、第2角度φkで反射された光が入射する領域である。kは、以上且つn以下の整数である。第1~第4実施形態に係る第2光学素子20では、複数の第2角度で入射した複数の光が反射されるため、反射率が低下し、輝度の損失が増加する。第5実施形態に係る第2光学素子21では、領域毎に非対称反射の能力が最適化されるため、反射率が増加し、輝度の損失が抑制される。
【0057】
<5-2.効果>
以上詳述した第4実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)及び(2)、第2実施形態の効果(4)、第3実施形態の効果(5)及び(6)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0058】
(7)第1光学素子15を(n+1)種類の領域に分割し、入射光を領域毎に異なる第2角度で反射することにより、第1光学素子15での反射による輝度の損失を抑制することができる。
【0059】
(8)第2光学素子21をn個の領域に分割し、入射角ごとに異なる領域で反射することにより、領域毎の非対称反射の能力を最適化して、反射率を増加させることができる。ひいては、輝度の損失を抑制することができる。
【0060】
(6.他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0061】
(a)上記各実施形態では、死角補助装置101~105を車両のフロントピラー400に取り付ける例を示したが、死角補助装置101~105の取り付け位置はフロントピラー40に限らず、車両内の他の位置でもよい。また、死角補助装置101~105は、車両以外に取り付けて使用してもよい。
【0062】
(b)上記第5実施形態では、第1光学素子15は、領域A0を有する透過及び反射光学素子であったが、第1光学素子15は、領域A0を有していなくてもよい。すなわち、第1光学素子15は、領域A1から領域Anまでのn種類の領域を有する反射光学素子であってもよい。この場合、1つのグループは、n個の領域で形成される。
【0063】
(c)上記第5実施形態に係る死角補助装置105は、第1光学素子15と第2光学素子21とを備えていたが、第1光学素子15と第2光学素子20とを備えていてもよい。あるいは、死角補助装置105は、第1光学素子11,12,13,14のいずれかと第2光学素子21とを備えていてもよい。
【0064】
(d)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0065】
11,12,13,14,15…第1光学素子、20,21…第2光学素子、101,102,103,104,105…死角補助装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9