IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社モリタ製作所の特許一覧

特許7469265医療用診療装置、制御装置、チェアユニット、および制御方法
<>
  • 特許-医療用診療装置、制御装置、チェアユニット、および制御方法 図1
  • 特許-医療用診療装置、制御装置、チェアユニット、および制御方法 図2
  • 特許-医療用診療装置、制御装置、チェアユニット、および制御方法 図3
  • 特許-医療用診療装置、制御装置、チェアユニット、および制御方法 図4
  • 特許-医療用診療装置、制御装置、チェアユニット、および制御方法 図5
  • 特許-医療用診療装置、制御装置、チェアユニット、および制御方法 図6
  • 特許-医療用診療装置、制御装置、チェアユニット、および制御方法 図7
  • 特許-医療用診療装置、制御装置、チェアユニット、および制御方法 図8
  • 特許-医療用診療装置、制御装置、チェアユニット、および制御方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】医療用診療装置、制御装置、チェアユニット、および制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A61C19/00 B
A61C19/00 E
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021124199
(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公開番号】P2023019468
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2022-11-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪口 修弘
(72)【発明者】
【氏名】石原 圭
(72)【発明者】
【氏名】馬野 峻哉
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-122383(JP,A)
【文献】米国特許第05467002(US,A)
【文献】特表2014-516706(JP,A)
【文献】特開2018-130560(JP,A)
【文献】実公平07-013707(JP,Y2)
【文献】特開2007-051459(JP,A)
【文献】特開2006-122274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の診療に用いる医療用診療装置であって、
前記患者を診療するための診療台と、
使用者の操作を受け付ける、複数のスイッチが設けられ、かつ、略面一となった操作パネルと、
前記操作パネルで受け付けた操作に基づいて前記医療用診療装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記操作パネルで受け付ける操作のうち前記診療台を前記患者の退出ポジションに移動させる操作を受け付けることで前記患者の前記診療台からの退出を推定した場合に、前記操作パネルで受け付けた操作に基づく前記医療用診療装置の制御を制限し、当該制御を制限してから所定時間の経過、または、前記操作パネルで所定操作を受け付けた場合に、当該制御に対する制限を解除する、医療用診療装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記患者の退出を推定した場合に前記医療用診療装置の制御を制限する第1モードと、当該制限をしない第2モードとを切る替えることが可能な、請求項1に記載の医療用診療装置。
【請求項3】
前記所定操作とは、複数の操作スイッチを同時に操作することを含む、請求項1または2に記載の医療用診療装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定時間または前記所定操作を変更することが可能な請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の医療用診療装置。
【請求項5】
前記医療用診療装置は、歯科診療に用いられる歯科診療装置である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の医療用診療装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記医療用診療装置の所定動作に基づいて前記患者の退出を推定する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の医療用診療装置。
【請求項7】
前記所定動作は、少なくとも、前記診療台に含まれる診療椅子の背もたれ部の起立動作と、前記診療椅子の座面シートの下降動作とを含む、請求項6に記載の医療用診療装置。
【請求項8】
前記患者を検出するセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記センサからの検出結果に基づいて前記患者の退出を推定する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の医療用診療装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記医療用診療装置に対して通信可能に接続される外部装置から取得した前記患者の情報に基づいて前記患者の退出を推定する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の医療用診療装置。
【請求項10】
前記制御部は、少なくとも、前記操作パネルが受け付けた操作内容と、機械学習によって生成された推定モデルに基づき、前記患者の退出を推定し、
前記推定モデルは、前記操作パネルで受け付けた操作の履歴と、前記患者の退出の記録とに基づき機械学習される、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の医療用診療装置。
【請求項11】
コップ給水装置をさらに備え、
前記制御部は、前記患者の退出を推定した場合に、前記コップ給水装置の給水制御を制限する、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の医療用診療装置。
【請求項12】
照明装置をさらに備え、
前記制御部は、前記患者の退出を推定した場合に、前記照明装置の点灯制御を制限する、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の医療用診療装置。
【請求項13】
患者の診療に用いる医療用診療装置を制御する制御装置であって、
前記患者を診療するための診療台と、
前記医療用診療装置において複数のスイッチが設けられ、かつ、略面一となった操作パネルで受け付けた操作に関するデータを入力する入力部と、
前記入力部に入力された前記データに基づいて前記医療用診療装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記操作パネルで受け付ける操作のうち前記診療台を前記患者の退出ポジションに移動させる操作を受け付けることで前記患者の前記診療台からの退出を推定した場合に、前記操作パネルで受け付けた操作に基づく前記医療用診療装置の制御を制限し、当該制御を制限してから所定時間の経過、または、前記操作パネルで所定操作を受け付けた場合に、当該制御に対する制限を解除する、制御装置。
【請求項14】
患者の診療に用いる医療用診療装置を制御する制御方法であって、
前記医療用診療装置において複数のスイッチが設けられ、かつ、略面一となった操作パネルで受け付けるステップと、
前記操作パネルで受け付けた操作に基づいて前記医療用診療装置を制御するステップと、
前記操作パネルで受け付ける操作のうち前記患者を診療するための診療台を患者の退出ポジションに移動させる操作を受け付けることで前記患者の前記診療台からの退出を推定した場合に、前記操作パネルで受け付けた操作に基づく前記医療用診療装置の制御を制限するステップと、
当該制御を制限してから所定時間の経過、または、前記操作パネルで所定操作を受け付けた場合に、当該制御に対する制限を解除するステップと、を含む、制御方法。
【請求項15】
患者の歯科診療に用いる歯科医療用のチェアユニットであって、
背もたれと、
座面シートと、
使用者の操作を受け付ける、複数のスイッチが設けられ、かつ、略面一となった操作パネルと、
前記操作パネルで受け付けた操作に基づいて前記背もたれの傾き、または、前記座面シートの高さを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記操作パネルで受け付ける操作のうち前記チェアユニットを前記患者の退出ポジションに移動させる操作を受け付けることで前記患者の診療台からの退出を推定したことに基づいて、前記背もたれを前記座面シートに対して略平衡に制御し、かつ、前記座面シートを第1の高さに制御して前記チェアユニットを第1状態にしてから、前記背もたれを起立させる制御をし、かつ、前記座面シートを前記第1の高さよりも低い第2の高さに制御して前記チェアユニットを第2状態にした場合に、前記操作パネルで受け付けた操作に基づく前記チェアユニットの制御を制限する、チェアユニット。
【請求項16】
前記制御部は、前記チェアユニットを前記第2状態にしてから一定時間が経過した場合に、前記チェアユニットを制限する、請求項15に記載のチェアユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用診療装置、制御装置、チェアユニット、および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
診療を行う医院において感染症対策等のため、患者の診療を終える毎に使用した医療用診療装置の清掃、消毒などの作業を行っている。しかし、次の患者を診療するため、医療用診療装置の電源はON状態を維持しつつ、医療用診療装置の清掃、消毒などの作業が行われる。そのため、作業中に誤って医療用診療装置を操作することがあった。
【0003】
一方、電気メスやレーザメス等の診療器具から発する特有のノイズにより、医療用診療装置である診療台が不意に昇降等する誤動作を防止するために、電源と診療台姿勢制御スイッチとの間に安全スイッチを設ける構成が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4796762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1で提案されている医療用診療装置は、診療器具から発する特有のノイズによる誤動作を防止することを目的にしており、誤動作を防止する対象は特有のノイズによる影響を受ける範囲に限定される。また、作業を行う前に安全スイッチを操作する必要があり、患者の診療を終える毎に安全スイッチを操作して医療用診療装置の清掃、消毒などの作業を行うため操作が煩雑であった。特に、清掃時において、勝手にコップ給水したりライトが点灯、消灯したりしないようにセンサを無効にする操作は煩雑であった。
【0006】
本開示は、これらの問題点を解決するためになされたものであり、医療用診療装置の清掃、消毒などの作業による誤動作を防止することができる医療用診療装置、制御装置、チェアユニット、および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る医療用診療装置は、患者の診療に用いる医療用診療装置である。医療用診療装置は、使用者の操作を受け付ける操作部と、操作部で受け付けた操作に基づいて医療用診療装置を制御するとともに、患者の医療用診療装置からの退出を推定する制御部と、を備える。制御部は、患者の退出を推定した場合に、医療用診療装置の制御を制限し、当該制御を制限してから所定時間の経過、または、操作部で所定操作を受け付けた場合に、当該制御に対する制限を解除する。
【0008】
本開示に係る医療用診療装置は、患者の診療に用いる医療用診療装置である。医療用診療装置は、患者を診療するための診療台と、使用者の操作を受け付ける、複数のスイッチが設けられ、かつ、略面一となった操作パネルと、操作パネルで受け付けた操作に基づいて医療用診療装置を制御する制御部と、を備える。制御部は、操作パネルで受け付ける操作のうち診療台を患者の退出ポジションに移動させる操作を受け付けることで前記患者の前記診療台からの退出を推定した場合に、操作パネルで受け付けた操作に基づく医療用診療装置の制御を制限し、当該制御を制限してから所定時間の経過、または、操作パネルで所定操作を受け付けた場合に、当該制御に対する制限を解除する。
【0009】
本開示に係る制御方法は、患者の診療に用いる医療用診療装置を制御する制御方法である。制御方法は、医療用診療装置において複数のスイッチが設けられ、かつ、略面一となった操作パネルで受け付けるステップと、操作パネルで受け付けた操作に基づいて医療用診療装置を制御するステップと、操作パネルで受け付ける操作のうち患者を診療するための診療台を患者の退出ポジションに移動させる操作を受け付けることで前記患者の前記診療台からの退出を推定した場合に、操作パネルで受け付けた操作に基づく医療用診療装置の制御を制限するステップと、当該制御を制限してから所定時間の経過、または、操作パネルで所定操作を受け付けた場合に、当該制御に対する制限を解除するステップと、を含む。
【0010】
本開示に係るチェアユニットは、患者の歯科診療に用いる歯科医療用のチェアユニットである。チェアユニットは、背もたれと、座面シートと、使用者の操作を受け付ける、複数のスイッチが設けられ、かつ、略面一となった操作パネルと、操作パネルで受け付けた操作に基づいて背もたれの傾き、または、座面シートの高さを制御する制御部と、を備える。制御部は、操作パネルで受け付ける操作のうちチェアユニットを患者の退出ポジションに移動させる操作を受け付けることで前記患者の前記診療台からの退出を推定したことに基づいて、背もたれを座面シートに対して略平衡に制御し、かつ、座面シートを第1の高さに制御してチェアユニットを第1状態にしてから、背もたれを起立させる制御をし、かつ、座面シートを第1の高さよりも低い第2の高さに制御してチェアユニットを第2状態にした場合に、操作パネルで受け付けた操作に基づくチェアユニットの制御を制限する。
【発明の効果】
【0011】
本開示では、制御部が、患者の退出を推定した場合に、医療用診療装置の制御を制限し、当該制御を制限してから所定時間の経過、または、操作部で所定操作を受け付けた場合に、当該制御に対する制限を解除するので、医療用診療装置に対して清掃、消毒などの作業を行う際の誤動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る医療用診療装置の構成を説明するための概略図である。
図2】実施の形態に係る医療用診療装置の構成を説明するためのブロック図である。
図3】実施の形態に係るレセプトコンピュータの構成を説明するためのブロック図である。
図4】診療台が備える操作パネル上のアイコンを説明するための図である。
図5】オートRスイッチが押圧操作された場合の診療台の動作を説明するための図である。
図6】実施の形態に係る医療用診療装置の制御を説明するためのフローチャートである。
図7】実施の形態に係るコップ給水装置の構成を説明するための概略図である。
図8】実施の形態に係る照明装置に設けられたセンサを説明するための概略図である。
図9】実施の形態に係る医療用診療装置で収集される履歴情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について図に基づいて説明する。
本開示の実施の形態に係る医療用診療装置は、医院(例えば、歯科医院)に設置される。医院に設置される医療用診療装置には、チェアユニットである診療台、X線撮影装置、CT撮影装置などの様々な種類がある。これらの医療用診療装置は、いずれも患者と接触または近接するため、感染防止等の観点から患者の診療を終える毎に清掃、消毒などの作業を行うことが望まれる。
【0014】
清掃、消毒などの作業による医療用診療装置の誤動作を防ぎ、安全に当該作業を行うためには、当該作業を行う前に医療用診療装置をOFF状態にすることが望ましい。しかし、患者が入れ替わる毎に医療用診療装置をOFF状態する操作は煩雑であり、装置によっては、OFF状態から起動するまでの時間が長時間となることがあった。
【0015】
そこで、実施の形態に係る医療用診療装置では、患者の診療台からの退出を推定した場合に、医療用診療装置の制御を制限し、当該制御を制限してから所定時間の経過、または、操作部で所定操作を受け付けた場合に、当該制御に対する制限を解除する制御を行っている。以下の本実施の形態では、診療台を一例に当該制御を説明するが、X線撮影装置、CT撮影装置などの他の医療用診療装置に対しても同様の制御を行うことができる。
【0016】
図1は、実施の形態に係る医療用診療装置の構成を説明するための概略図である。なお、図1に示す医療用診療装置では、患者の情報を管理するレセプトコンピュータ20に対して接続されている診療台10が図示されている。なお、医療用診療装置である診療台10は、レセプトコンピュータ20に接続されていなくてもよい。また、レセプトコンピュータ20に対して複数の診療台10が接続されていてもよい。
【0017】
まず、診療台10について詳しく説明する。図2は、実施の形態に係る医療用診療装置の構成を説明するためのブロック図である。図1および図2に示すように、医療用診療装置である診療台10は、診療椅子1と、ベースンユニット2と、トレーテーブル3と、フットコントローラ5と、表示モニタ6と、照明装置(オペライト)7と、操作パネル8と、制御装置9と、インスツルメントホルダ50と、を含む。
【0018】
診療椅子1は、患者の頭を支えるヘッドレスト1aと、患者の背中を支える背もたれ1bと、患者の尾尻を支える座面シート1cと、患者の足を支える足置き台1dと、シート駆動部11とを含む。シート駆動部11は、図示しない基板上に実装されたCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などによって構成され、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、座面シート1c、および足置き台1dのそれぞれの駆動を制御する。
【0019】
たとえば、座面シート1cは、シート駆動部11の制御に基づき上昇または下降する。ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dのそれぞれは、シート駆動部11の制御に基づき座面シート1cに対して垂直方向または水平方向に移動する。ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dが座面シート1cに対して垂直方向に移動すると、診療椅子1に座った患者が座位姿勢になる。ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dが座面シート1cに対して水平方向に移動すると、診療椅子1に座った患者が仰向け姿勢になる。このように、シート駆動部11は、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、座面シート1c、および足置き台1dを駆動させて診療椅子1の姿勢を変更する。
【0020】
フットコントローラ5は、ユーザの足踏操作を受け付ける複数のスイッチ(ペダル)を有する。ユーザは、これら複数のスイッチそれぞれに対して所定の機能を割り当てることができる。
【0021】
たとえば、ユーザは、診療椅子1の姿勢を変更する機能をフットコントローラ5のスイッチに対して割り当てることができる。ユーザが、診療椅子1の姿勢を変更する機能が割り当てられたスイッチを足踏操作すると、フットコントローラ5は、シート駆動部11に制御信号を出力する。シート駆動部11は、制御信号に基づき、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、座面シート1c、および足置き台1dを駆動させる。
【0022】
また、ユーザは、後述する診療器具4を駆動する機能をフットコントローラ5のスイッチに対して割り当てることができる。ユーザが、診療器具4を駆動する機能が割り当てられたスイッチを足踏操作すると、フットコントローラ5は、後述する診療器具駆動部14に制御信号を出力する。診療器具駆動部14は、制御信号に基づき診療器具4の駆動を制御する。
【0023】
なお、フットコントローラ5のスイッチには、照明装置7の照明および消灯を制御する機能など、その他の機能を割り当てることもできる。
【0024】
トレーテーブル3は、診療時の物置台として用いられる。トレーテーブル3は、診療椅子1または床から延びるアーム(図示は省略する)に接続されている。このため、ユーザは、トレーテーブル3を診療椅子1に対して手動で回動、水平移動、および垂直移動させることが可能である。
【0025】
制御装置9は、トレーテーブル3の下部に設けられている。制御装置9には、診療椅子1と、複数の診療器具4と、インスツルメントホルダ50と、ベースンユニット2と、操作パネル8と、表示モニタ6とが接続されている。制御装置9は、後述するように、操作制御部12、診療器具駆動部14、表示モニタ制御部15、および保持解除特定部19を含む。これらの各部は、いずれも、図示しない基板上に実装されたCPU、ROM、RAM、入力インターフェイス、および出力インターフェイスなどによって構成される。制御装置9のCPUにおいて、入力インターフェイスに入力されたデータに基づいて診療台10を制御するとともに、患者の診療台10からの退出を推定することができるプログラムが実行される。
【0026】
診療器具4は、たとえば、エアータ-ビンハンドピース、マイクロモータハンドピース、スケーラ、スリーウェイシリンジ、およびバキュームシリンジなどの歯科診療用のインスツルメントである。なお、診療器具4は、これらに限らず、口腔内カメラ、光重合用照射器、根管長測定器、3次元スキャナおよび根管拡大器などであってもよいし、デンタルミラーや注射器、充填器具など、駆動しない器具であってもよい。
【0027】
診療台10においては、診療器具4a~4eの5種類が用いられる。たとえば、診療器具4aおよび診療器具4bは、エアータ-ビンハンドピースである。診療器具4cは、マイクロモータハンドピースである。診療器具4dは、スケーラである。診療器具4eは、スリーウェイシリンジである。
【0028】
各診療器具4は、インスツルメントホルダ50によって保持される。診療器具4がインスツルメントホルダ50から取り出されると、インスツルメントホルダ50による保持が解除され、診療器具4が選択された状態(被選択状態と称する)になる。
【0029】
各診療器具4は、制御装置9に含まれる診療器具駆動部14に接続されている。診療器具駆動部14は、フットコントローラ5に対するユーザの足踏操作に基づき各診療器具4を駆動する。たとえば、ユーザが、フットコントローラ5におけるエアータ-ビンハンドピースを駆動するためのスイッチを足踏操作すると、診療器具駆動部14は、エアータ-ビンハンドピースのヘッド部に保持される切削工具を回転させる。このように、診療器具駆動部14は、フットコントローラ5に対するユーザの操作に基づき診療器具4を駆動する。
【0030】
インスツルメントホルダ50は、各診療器具4を保持する保持部材である。インスツルメントホルダ50は、制御装置9に含まれる保持解除特定部19を介して操作制御部12に接続されている。保持解除特定部19は、診療器具4に対するインスツルメントホルダ50による保持が解除されたことを特定するとともに、その特定結果を示す信号を操作制御部12に出力する。操作制御部12は、保持解除特定部19からの信号に基づき被選択状態の診療器具4を特定する。
【0031】
ベースンユニット2は、図1に示すように、診療椅子1の側部に備え付けられている。ベースンユニット2は、排水口が形成された鉢2aと、コップが載置されるコップ台2bと、コップに給水するための給水栓2cと、本体部2dとを含む。患者は、給水栓2cによってコップに給水された水を用いてうがいをすることができる。
【0032】
図2に示すように、ベースンユニット2は、ベースン制御部16および給水センサ22を含む。ベースン制御部16は、診療台10で用いられる水や空気の流れを制御する。例えば、ベースン制御部16は、給水センサ22がコップを検知した場合、給水栓2cからコップへの給水を開始する。さらに、ベースンユニット2は、照明制御部17を含む。照明制御部17は、照明装置7の点灯スイッチ71の操作に基づいて点灯および消灯を制御する。なお、点灯スイッチ71は、操作パネル8に含まれていてもよい。
【0033】
また、ベースンユニット2は、診療台10内の履歴情報を収集する履歴収集部18を含む。診療台10内の各制御間の通信には、CAN(Controller Area Network)通信などの関連する公知の技術が適用されている。そのため、履歴収集部18は、例えばCAN通信を介して、シート駆動部11から送られてくるチェアユニット位置制御の情報、操作制御部12から送られてくる診療器具4の情報、ベースン制御部16から送られてくるコップ給水電磁弁制御の情報、照明制御部17から送られてくる照明装置7の点灯制御の情報などから履歴情報を収集する。なお、履歴収集部18が収集する履歴情報には、診療台10で行われた操作の操作履歴、および診療台10で検出した検出履歴を少なくとも含む。
【0034】
ベースンユニット2は、外部装置と通信可能に接続するための入出力ポート21を含む。入出力ポート21にレセプトコンピュータ20を接続した場合、履歴収集部18は、入出力ポート21を介して、収集した履歴情報をレセプトコンピュータ20に出力することができる。レセプトコンピュータ20では、受信した履歴情報を診療装置データベースに記憶する。また、制御装置9は、入出力ポート21を介してレセプトコンピュータ20から患者の情報を入力することができる。
【0035】
表示モニタ6は、図1に示すように、トレーテーブル3から上方に延びるアームに設けられている。表示モニタ6は、表示領域が大きい画面を有している。表示モニタ6は、制御装置9が備える表示モニタ制御部15を介して操作制御部12に接続されている。表示モニタ制御部15は、操作制御部12からの指令に基づき、画像および操作画像に関連した関連画像などを表示モニタ6に表示させる。
【0036】
次に、レセプトコンピュータ20について詳しく説明する。図3は、実施の形態に係るレセプトコンピュータ20の構成を説明するためのブロック図である。レセプトコンピュータ20は、オペレーティングシステム(OS:Operating System)を含む各種プログラムを実行するCPU200と、CPU200でのプログラムの実行に必要なデータを一時的に記憶するメモリ部212と、CPU200で実行されるプログラムを不揮発的に記憶するハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)210とを含む。また、ハードディスク210には、後述するような分析を実現するためのプログラムが予め記憶されており、このようなプログラムは、CD-ROMドライブ214などによって、それぞれCD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory)214aなどの記憶媒体から読み取られる。
【0037】
CPU200は、キーボードやマウスなどからなる入力部208を介してユーザなどからの指示を受取るとともに、プログラムの実行によって分析される分析結果などを、ディスプレイ部204へ出力する。各部は、バス202を介して互いに接続される。また、インターフェイス部206は、診療台10の入出力ポート21に接続されている。なお、レセプトコンピュータ20と診療台10との接続は、有線で接続されても無線で接続されてもよい。
【0038】
本実施の形態に係る診療台10では、患者の診療台10からの退出を推定した場合に、清掃、消毒などの作業を行えるように、診療台10の制御を制限している。具体的には、診療台10では、例えば、患者の診療台10からの導入・退出ポジションに移動させるオートRスイッチを使用者が押圧操作した場合に、患者の診療台10からの退出を推定すると設定できる。
【0039】
図4は、診療台10が備える操作パネル8上のアイコンを説明するための図である。操作パネル8の内部には、各機能部のそれぞれの機能を有効化させるための各スイッチ(図示は省略する)が基板上に配列されている。その基板の上面には板状のパネルが覆うように設けられている。パネルの表面には、光拡散素材のインクによって複数のアイコンがシルク印刷されている。このアイコンに対して操作パネル8の内部に設けられたLED(図示は省略する)から光を照射することによって、操作パネル8上にアイコンが点灯して現れる。このように、操作パネル8では、各スイッチが板状のパネル上から使用者の指で押圧操作可能に配列されており、また、使用者の指で押圧操作され機能する状況となったスイッチを表すため、当該スイッチに対応してパネルの表面に設けたLEDが点灯する。また、操作パネル8は、各スイッチとLED表示とが板状のパネルの内側に設けられる構造であるため、凹凸がなく略面一となっている。そのため、操作パネル8は、パネルの表面にゴミが溜まりにくいうえに、使用者において拭き掃除や消毒の作業が容易である。
【0040】
なお、図4に示す操作パネル8では、全てのアイコンがパネル上で点灯している状態を示している。まず、アイコン8a、アイコン8b、アイコン8c、およびアイコン8dは、診療椅子1を1回の操作で所定位置に移動させる機能(チェアオート機能とも称する)を設定する際に押圧操作されるアイコンである。なお、チェアオート機能は、シート駆動部11が発揮する機能の一部である。
【0041】
チェアオート機能を発揮するスイッチとしては、1回の操作で奥歯診療に最適な高さや傾斜角度となる位置に診療椅子1を自動的に移動させるオート1スイッチと、1回の操作で前歯診療に最適な高さや傾斜角度となる位置に診療椅子1を自動的に移動させるオート2スイッチと、1回の操作で患者の導入または導出に最適な高さや傾斜角度となる位置に診療椅子1を自動的に移動させるオートRスイッチと、1回の操作で患者がうがいを行うのに最適な高さや傾斜角度となる位置に診療椅子1を自動的に移動させるオートSスイッチとが設けられている。アイコン8aは、オート1スイッチに対応する。アイコン8bは、オート2スイッチに対応する。アイコン8cは、オートRスイッチに対応する。アイコン8dは、オートSスイッチに対応する。
【0042】
なお、オート1スイッチ、オート2スイッチ、またはオートSスイッチの操作によって診療椅子1を自動的に移動させる位置は、ユーザによって任意に設定可能である。
【0043】
アイコン8e、アイコン8f、アイコン8g、およびアイコン8hは、診療椅子1の位置および姿勢のいずれかを連続的に変更する機能(チェアマニュアル機能とも称する)を設定する際に押圧操作されるアイコンである。なお、チェアマニュアル機能は、シート駆動部11の機能の一部である。
【0044】
チェアマニュアル機能を発揮するスイッチとしては、操作時間(押圧の継続時間)に応じて診療椅子1を連続的に起立させる起立スイッチと、操作時間に応じて診療椅子1を連続的に傾斜させる傾斜スイッチと、操作時間に応じて診療椅子1を連続的に上昇させる上昇スイッチと、操作時間に応じて診療椅子1を連続的に下降させる下降スイッチとが設けられている。アイコン8eは、起立スイッチに対応する。アイコン8fは、傾斜スイッチに対応する。アイコン8gは、上昇スイッチに対応する。アイコン8hは、下降スイッチに対応する。
【0045】
使用者がオートRスイッチを押圧操作した場合の診療台10の動作を図を用いて説明する。図5は、オートRスイッチが押圧操作された場合の診療台の動作を説明するための図である。患者の診療時、診療椅子1は、ポジションP1にある。ポジションP1は、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dが座面シート1cに対して略水平方向に移動し、患者が仰向け姿勢になる位置で、かつ使用者が診療しやすい高さまで診療椅子1が上昇した位置である。ここで、使用者が診療しやすい高さとは、使用者である歯科医師が歯科医師用の椅子に座って、横たわっている患者の口腔内を手元で歯科診療する際の適切な高さである。
【0046】
使用者が患者の診療が終了し、操作パネル8のアイコン8c(オートRスイッチ)を操作した場合、背もたれ1bが矢印S方向に移動して起立し、座面シート1cが矢印D方向に移動して降下する。診療台10は、患者の導入・退出ポジションであるポジションP2に診療椅子1を移動する。ポジションP2は、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dが座面シート1cに対して垂直方向に移動し、患者が座位姿勢位置で、かつ患者が診療椅子1から立ち上がりやすい高さまで診療椅子1が下降した位置である。
【0047】
そのため、制御装置9は、使用者が操作パネル8のアイコン8c(オートRスイッチ)を操作した場合、患者が診療台10から退出したことを推定することができ、清掃、消毒などの作業を行えるように、操作パネル8が受け付けた操作に基づく診療台10の制御などを制限する。つまり、制御装置9は、清掃、消毒などの作業で操作パネル8が押圧操作されても、押圧操作されたアイコンに対応する制御を行わないように制限する。なお、使用者が操作パネル8のアイコン8c(オートRスイッチ)を操作せず、チェアマニュアル機能のアイコンを利用して患者の導入・退出ポジションであるポジションP2に診療椅子1を移動させた場合も制御装置9は、患者が診療台10から退出したと推定してもよい。具体的に、使用者は、アイコン8e(起立スイッチ)を押圧操作し、次にアイコン8h(下降スイッチ)を押圧操作した場合、診療椅子1は、ポジションP2に移動する。さらに、制御装置9は、診療するためのポジションP1で背もたれ1bが座面シート1cに対して略水平になっている状態から、患者を導入・退出させるポジションP2で背もたれb1が起立した状態へと移行し、その移行から一定時間(例えば、5分)が経過した場合に、かつ、その一定時間が経過するまでの間において、そのままの状態(操作パネル8が受け付けた操作や、各センサからの信号によって、診療台10を制御しない状態)のときに、患者が診療台10から退出したことを推定してもよい。これにより、患者が診療台10から退出する直前において使用者が診療台10を制御したい場合があり、ポジションP2への移行後、直ぐに診療台10の制限をせずに一定時間の猶予期間を設けることで使用者の自由度を確保することができる。
【0048】
制御装置9は、清掃、消毒などの作業を行えるように制限した制御を、所定時間(例えば、制限開始から5分)の経過、または、フットコントローラ5や操作パネル8で所定操作を受け付けた場合に解除する。所定操作は、解除の意思を持った使用者によって行われる操作であって、操作する意思のない使用者が偶然操作するような操作は除かれる。所定操作には、例えば、複数の操作スイッチを同時に操作することを含み、うっかりして隣接する複数の操作スイッチを同時に操作するような誤操作によって偶発的に生じる操作ではなく、使用者が解除する意思が現れる操作である。具体的に、所定操作は、フットコントローラ5の特定のスイッチ(ペダル)を足踏操作しつつ、操作パネル8の特定のアイコンを押圧操作する。
【0049】
次に、本実施の形態に係る診療台10での前述の制御についてフローチャートを用いて説明する。図6は、実施の形態に係る医療用診療装置の制御を説明するためのフローチャートである。まず、制御装置9は、患者の退出を推定できるか否かを判断する(ステップS101)。具体的に、制御装置9は、使用者がオートRスイッチを押圧操作したか否かまたは、マニュアルでオートRスイッチが押圧操作され機能する場合と同様の操作をしたか否かで、患者の退出を推定する。患者の退出を推定できない場合(ステップS101でNO)、制御装置9は、処理をステップS101に戻す。
【0050】
一方、患者の退出を推定できる場合(ステップS101でYES)、制御装置9は、フットコントローラ5や操作パネル8などで受け付けた操作に対応する診療台10の制御を制限する(ステップS102)。これにより、使用者がフットコントローラ5や操作パネル8を清掃・消毒する際に、各スイッチを操作して各機能を発揮させてしまうことがない。診療台10の制御を制限する際は、その旨がわかるように使用者に通知するようにしてもよい。例えば、音声やブザー音の出力やLEDランプによる点灯を行う。また、その出力や点灯は、一時的であっても良いし、後述する、ステップS104の制限の解除まで継続してもよい。
【0051】
なお、制限される診療台10の制御は、フットコントローラ5や操作パネル8で受け付けられる操作に対応する診療台10の制御は一例であり、当該制御だけに限定されない。特に、操作部は、フットコントローラ5や操作パネル8に限定されず、例えば、コップ台2bにコップが載置されているか否かを検出するセンサや、照明装置7に設けられた点灯スイッチ71を含む。具体的に、制御装置9は、コップ給水装置であるコップ台2bにコップが載置されたことを検出した場合であってもコップ給水電磁弁の制御を制限して給水栓2cからの給水制御を制限してもよい。これにより、使用者がコップ台2b辺りを清掃・消毒する際に、センサが検知して給水させてしまうことがない。
【0052】
図7は、実施の形態に係るコップ給水装置の構成を説明するための概略図である。図7に示すコップ給水装置では、鉢2a側に設けられた赤外線の光源22aと給水栓2cの先端に取り付けてある受光センサ22bとを用いてコップ台2bにコップCが載置されているか否かを判断してコップCへの給水を開始する。つまり、コップ給水装置では、コップCがコップ台2bに載置されていない場合、光源22aからの赤外線を受光センサ22bで受光できるが、コップCがコップ台2bに載置されている場合、光源22aからの赤外線がコップCで遮られて受光センサ22bで受光できない。コップ給水装置は、受光センサ22bで光源22aからの赤外線を受光できなくなった場合、コップ台2bにコップCが載置されたと判断してコップCへの給水を開始する。
【0053】
コップ給水装置を清掃・消毒する際に、清掃・消毒する人の手が光源22aからの赤外線を遮った場合、コップ給水装置は、誤ってコップ台2bにコップCが載置されたと判断して給水を開始してしまう。そこで、制御装置9は、患者の退出を推定した場合、光源22aからの赤外線を受光センサ22bで受光できないときでも、コップ給水電磁弁の制御を制限して給水栓2cからの給水制御を制限する。また、制御装置9は、患者の退出を推定した場合、コップ台2bにコップCが載置されたか否かを判断する光源22aおよび受光センサ22bの機能自体を停止してもよい。なお、光源22aおよび受光センサ22bで給水センサ22を構成する例を示したが、給水センサ22の構成はこれに限定されず、例えばコップ台2bにロードセルを設けてコップ台2bに載置されたコップCの重さを検知する給水センサ22の構成でもよい。
【0054】
また、制御装置9は、点灯スイッチ71に代えてセンサを照明装置7に設けた場合でも、当該センサの検知による照明装置7の点灯制御を制限してもよい。照明装置7に設けられる点灯スイッチ71の代わりに、タッチレスの非接触センサが設けられる場合は、使用者の手の動きを非接触センサで検知して、照明装置7を点灯/消灯させることができる。制御装置9は、非接触センサに基づく、点灯/消灯の制御を制限してもよい。これにより、照明装置7を清掃・消毒する際に、非接触センサが清掃・消毒する人の手の動きを検知してしまっても、制御装置9は、照明装置7を点灯/消灯させることがない。
【0055】
図8は、実施の形態に係る照明装置に設けられたセンサを説明するための概略図である。図8(a)に示す照明装置7Aでは、光源および鏡体を含む筐体部73の下側に非接触センサ72が設けられている。一方、図8(b)に示す照明装置7Bでは、筐体部73を支持するアーム74に非接触センサ72が設けられている。なお、非接触センサ72は、超音波センサ、赤外線近接センサ、静電容量型近接センサなどである。照明装置7A,7Bを清掃・消毒する際、清掃・消毒する人の手の動きが非接触センサ72により検知されると、照明装置7A,7Bは、誤って点灯してしまう。そこで、制御装置9は、患者の退出を推定した場合、非接触センサ72が人の手を検知した場合でも、照明装置7A,7Bの点灯を制限する。なお、制御装置9は、患者の退出を推定した場合、非接触センサ72自体の検知を停止してもよい。
【0056】
さらに、制御装置9は、操作パネル8以外の診療器具4に設けられたスイッチ、表示モニタ6のタッチパネル、インスツルメントホルダ50などの操作部で受け付けた操作に基づく診療台10の制御を制限してもよい。つまり、制御装置9が制限する診療台10の制御には、清掃、消毒などの作業により誤動作を防止する必要がある診療台10の制御や、当該作業の安全を確保する必要がある診療台10の制御などが広く含まれる。
【0057】
制御装置9は、診療台10の制御を制限している場合、フットコントローラ5や操作パネル8などで所定操作を受け付けたか否かを判断する(ステップS103)。所定操作を受け付けた場合(ステップS103でYES)、制御装置9は、制御の制限を解除する(ステップS104)。清掃、消毒などの作業のために診療台10の制御を制限している期間であっても、早急に患者を診療台10に導入して診療を行う場合があり、このような場合、使用者は、所定操作を行い強制的に制限を解除することができる。
【0058】
所定操作を受け付けていない場合(ステップS103でNO)、制御装置9は、診療台10の制御を制限してから所定時間を経過したか否かを判断する(ステップS105)。所定時間を経過していない場合(ステップS105でNO)、制御装置9は、処理をステップS102に戻して制御の制限を継続する。一方、所定時間を経過した場合(ステップS105でYES)、制御装置9は、処理をステップS104に進め、制御の制限を解除する。制御装置9は、制御の制限を解除する際、その旨がわかるように使用者に通知するようにしてもよい。例えば、音声やブザー音の出力やLEDランプによる点灯を行う。清掃、消毒などの作業は、所定時間内に終わるため、所定時間の経過後は自動的に制御の制限を解除して、患者の診療を行える通常の状態に戻す。これにより、診療台10では、清掃、消毒などの作業を行う毎にスイッチを操作するなどの煩雑な操作が不要になる。なお、本フローチャートにおいて、ステップS103の判断処理と、ステップS105の判断処理の何れか一方の処理のみを実行するようにしてもよい。
【0059】
(変形例1)
前述において、制御装置9は、使用者がオートRスイッチを押圧操作したか否かで、患者の退出を推定すると説明していた。しかし、当該説明は、患者の退出を推定する方法の一例であり、患者の退出を推定する方法は当該方法に限定されない。以下に、患者の退出を推定する方法を具体的に説明する。
【0060】
診療台10では、診療台10で行われた操作の操作履歴、および診療台10で検出した検出履歴を少なくとも含む履歴情報を履歴収集部18で収集している。そこで、制御装置9は、履歴収集部18で収集している履歴情報を利用して患者の退出を推定してもよい。
【0061】
履歴収集部18で収集する履歴情報の具体例を図に示す。図9は、実施の形態に係る医療用診療装置で収集される履歴情報の一例を示す図である。履歴収集部18では、CAN通信を介してシート駆動部11、操作制御部12、およびベースン制御部16などから送られてくる「イベントコード」、「イベントパラメータ」、「日付」、「時刻」および「チェアNo.」の情報を履歴情報として収集する。例えば、図9に示すように、履歴収集部18は、「イベントコード」=”020035”、「イベントパラメータ」=”1”、「日付」=****/5/25、「時刻」=9:00および「チェアNo.」=1の情報を、ベースン制御部16から送られてくるコップ給水電磁弁制御がON状態の履歴情報として収集する。また、履歴収集部18は、「イベントコード」=”030302”、「イベントパラメータ」=”0”、「日付」=****/5/25、「時刻」=9:09および「チェアNo.」=2の情報を、シート駆動部11から送られてくるチェアユニット位置制御が退出位置の履歴情報として収集する。なお、図6に示す履歴情報の内容は一例であって、図示していない制御も履歴情報として記憶される。例えば、インスツルメントホルダ50から診療器具4を取り出したことを示す保持解除特定部19の情報や、エアータ-ビンハンドピースを駆動した診療器具駆動部14の情報を履歴情報に記憶してもよい。
【0062】
制御装置9は、図9に示す履歴情報から、「時刻」=9:22および「チェアNo.」=1の情報から患者の退出を推定する。具体的に、「時刻」=9:22および「チェアNo.」=1の履歴情報では、「イベントコード」=”030302”のチェアユニット位置制御において「イベントパラメータ」が”0”の退出位置となり、次に、「イベントコード」=”020284”のオペライト点灯制御において「イベントパラメータ」が”0”のOFFとなっている。そのため、制御装置9は、チェアユニット位置が退出位置で、オペライト点灯がOFF状態であるので、患者が診療台10から退出したと推定することができる。つまり、制御装置9は、特定のチェアにおける各ハードウェア(チェアユニットやオペライトなど)の制御の順序、各ハードウェアの制御開始から終了までの時間、制御されていない時間などを含む過去の履歴と、現在の各ハードウェアの状況とに基づいて、患者が診療台10に対して導入または退出したことを推定する。制御装置9は、例えば、過去の履歴と、現在の各ハードウェアの状況との類似レベルに基づいて、患者が診療台10に対して導入または退出したことを推定する。
【0063】
制御装置9は、履歴情報から診療台10において所定動作が行われたか否かを判断し、患者の退出を推定することができれば、チェアユニット位置およびオペライト点灯に限定されない。診療台10の場合、所定動作として、少なくとも、診療台10の背もたれ1b(背もたれ部)の起立動作と、診療台10の座面シート1cの下降動作とを含まれていればよい。
【0064】
もちろん、患者の退出を推定する方法は、スイッチの押圧操作や履歴情報から推定する方法に限定されない。例えば、診療台10に患者を検出するセンサ(例えば、荷重センサ、人感センサなど)を設け、制御装置9が、当該センサからの検出結果に基づいて患者の退出を推定してもよい。つまり、制御装置9は、特定のチェアにおける各センサにより検出される順序、継続時間、および検知されない時間などを含む過去の履歴と、現在の各センサにより検出される状況とに基づいて、患者が診療台10に対して導入または退出したことを推定する。制御装置9は、例えば、過去の履歴と、現在の各センサにより検出される状況とに基づいて、患者が診療台10に対して導入または退出したことを推定する。
【0065】
さらに、制御装置9は、レセプトコンピュータ20の情報を利用して患者の退出を推定してもよい。制御装置9は、診療台10に対して通信可能に接続されるレセプトコンピュータ20(外部装置)から取得した患者の情報に基づいて、患者の退出を推定する。具体的に、レセプトコンピュータ20に記憶されているレセプト記録には、例えば、「患者No.」の情報ごとに、「予約時刻」、「来院時刻」、「診療案内時刻」、「カルテ入力時刻」、「次回予約時刻」、「会計時刻」、および「チェアNo.」の情報をまとめて記憶してある。そのため、制御装置9は、例えば「カルテ入力時刻」から患者の診療が終了し、診療台10から患者が退出したと推定する。なお、レセプトコンピュータ20は一例であって、患者の退出を推定できる患者の情報を保持している外部装置であればよい。
【0066】
レセプトコンピュータ20は、患者の予約システムを含んでもよい。レセプトコンピュータ20に患者の予約システムを含むことで、患者の来院スケジュールを把握することができ、制御装置9は、当該スケジュールから診療台10の空き時間を特定することができる。つまり、制御装置9は、レセプトコンピュータ20から得た患者の来院スケジュールにより特定の診療台10が”〇〇:〇〇”から”××:××”まで使用されないことを把握でき、患者が診療台10に対して導入または退出したことを推定することができる。また、特定の診療台10が次に使用されるまでの時間が長い場合、制御装置9は、それに応じて制限を解除するための所定時間を長くしてもよい。なお、レセプトコンピュータ20を設けずに、患者の予約システムを含むコンピュータが診療台10に対して通信可能に接続されていてもよい。
【0067】
(変形例2)
前述の実施の形態では、患者の退出を推定した場合には、制御装置9が診療台10の制御を制限すると説明した。しかし、診療台10が使用される状況によっては、当該制御の制限が不要となる場合も考えられる。そこで、制御装置9は、患者の退出を推定した場合には、制御装置9が診療台10の制御を制限する清掃モード(第1モード)と、患者の退出を推定した場合でも、制御装置9が診療台10の制御を制限しない通常モード(第2モード)との切り替えを可能にしてもよい。これにより、診療台10は、必要となる場合のみ清掃モードを設定することができる。
【0068】
(変形例3)
また、前述の実施の形態では、診療台10において、制限を解除するための所定時間または所定操作があらかじめ設定されて記憶されていることを前提に説明した。しかし、診療台10が使用される状況に応じて、所定時間または所定操作の変更を可能にしてもよい。患者の入れ替え時間が短い医院の場合、制御装置9は、所定時間を例えば5分から3分に短く変更することができる。また、制御装置9は、過去の履歴から学習して所定時間を変更するようにしてもよい。例えば、過去における制御の制限(ステップS102)から所定の操作が実施(ステップS103)されるまでの時間を設定してもよい。その場合、直近過去の所定回数(例えば、5回)の平均時間を設定してもよい。さらに、制御装置9は、複数の操作スイッチを同時に操作する所定操作を、例えば、特定の操作スイッチを2秒以上の長押する所定操作に変更する。同時に操作するボタンについて、ユーザが任意に変更できるようにしてもよい。
【0069】
(変形例4)
制御装置9は、患者の退出を推定する処理に、ディープラーニングなど機械学習が可能なAI(人工知能)エンジンを利用してもよい。制御装置9は、少なくとも、操作部(フットコントローラ5や操作パネル8など)が受け付けた操作内容と、操作時間と、各センサの検出結果と、機械学習された推定モデル(ニューラルネットワークを含む)に基づき、患者の退出を推定する。推定モデルは、操作部で受け付けた操作の履歴と、患者の退出の記録とを含む教師データを利用して、ニューラルネットワークのパラメータが最適化されることであらかじめ機械学習されている。制御装置9は、推定モデルに基づき患者の退出を推定することで、精度よく患者の退出を推定することができる。なお、推定モデルに含まれる人工知能はニューラルネットワークに限られず、既知の人工知能を採用してもよい。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 診療椅子、2 ベースンユニット、3 トレーテーブル、4 診療器具、5 フットコントローラ、6 表示モニタ、7 照明装置、8 操作パネル、9 制御装置、10,10a 診療装置、11 シート駆動部、12 操作制御部、14 診療器具駆動部、15 表示モニタ制御部、16 ベースン制御部、17 照明制御部、18 履歴収集部、20 レセプトコンピュータ、21 入出力ポート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9