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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電線の集束用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021128514
(22)【出願日】2021-08-04
(65)【公開番号】P2023023212
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 崇人
(72)【発明者】
【氏名】八木 淳
(72)【発明者】
【氏名】巖 哲央
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-144216(JP,A)
【文献】特開昭60-212911(JP,A)
【文献】特開2018-014262(JP,A)
【文献】特開2018-006309(JP,A)
【文献】特開2018-153891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
H01B 13/00-13/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線が略水平面内において並行して配索された作業空間に対して設置されるロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられ、任意の位置および姿勢に制御されることで、前記複数の電線のうちの任意の複数の電線を集束して把持する把持機構を備えたロボットハンドと、
前記ロボットアームおよびロボットハンドを駆動制御することで、前記把持機構に、前記任意の複数の電線を集束して把持する動作をさせる制御装置と、を備え、
前記把持機構は、前記電線の延在方向と交差する水平方向に互いに対向し、前記水平方向に沿って直線的に開閉動作し、閉じ動作により、前記複数の電線を集束して把持する少なくとも一対の把持爪を有し、
前記互いに対向する一対の把持爪のうちの少なくとも一方の把持爪は、下から斜め上向きに移動することですくい爪として機能する下側爪部を有しており、
前記制御装置は、集束動作の前または途中で、集束すべき電線をすくい上げるよう、前記ロボットアームおよびロボットハンドの少なくともいずれかを駆動制御して、前記一方の把持爪の下側爪部を下から斜め上向きに移動させる、
電線の集束用ロボット。
【請求項2】
前記互いに対向する一対の把持爪の両方が、相手側の把持爪との対向面に電線の取り込み空間としてのV字形凹部を設けることで、斜め下向きの前記下側爪部と斜め上向きの上側爪部とを有しており、
前記一対の把持爪は、前記電線の延在方向に位置をずらして隣接配置され、閉じ動作の際に両方の前記下側爪部と前記上側爪部とが互いにすれ違い状態で重なることで、両方の前記下側爪部および前記上側爪部による電線の囲い空間を小さくして電線を集束する、
請求項1に記載の電線の集束用ロボット。
【請求項3】
前記互いに対向する一対の把持爪のうちの一方が、相手側の把持爪との対向面に電線の取り込み空間としてのV字形凹部を設けることで、斜め下向きの前記下側爪部と斜め上向きの上側爪部とを有し、
前記互いに対向する一対の把持爪のうちの他方が、上下方向に直線状に延びた直線爪部として構成されており、
前記一対の把持爪は、前記電線の延在方向に位置をずらして隣接配置され、閉じ動作の際に一方の把持爪の前記下側爪部および上側爪部と他方の把持爪の直線爪部とが互いにすれ違い状態で重なることで、前記下側爪部および前記上側爪部と前記直線爪部とによる電線の囲い空間を小さくして電線を集束する、
請求項1に記載の電線の集束用ロボット。
【請求項4】
前記互いに対向する一対の把持爪が、前記電線の延在方向に離隔した第1の把持爪と第2の把持爪により構成され、前記第1の把持爪と前記第2の把持爪との間に、両把持爪を閉じることによって集束した電線に対するテープ巻き等の作業空間が確保される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電線の集束用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略水平面内において並行して配索された複数の電線のうちの任意の複数の電線を、テープ巻き等による結束のために集束する電線の集束用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のワイヤハーネスは、複数の電線を集束して、テープ巻き等を施すことにより製造される。最近では、効率化および省力化の要請により、ロボットによって配索作業を行うシステムが開発されてきている。
【0003】
特許文献1には、垂れ下がった状態の複数の電線を集束する技術が開示されている。この特許文献1には、電線に対する作業を行うロボットハンドとして、電線を最終的に結束できる状態にまで集束する把持用ハンドと、把持用ハンドが閉じる前に、予め集束しやすい状態となるよう、散在する電線を囲い込む補助ハンドと、を有する加工ロボットが開示されている。
【0004】
この特許文献1に記載の技術は、把持用ハンドとは別に、電線の囲い込み専用の補助ハンドを設ける必要があるので、構造が複雑化する問題がある。
【0005】
ところで、多くの電線を配索してワイヤハーネスを製造するには、電線を水平な治具板の上で展開する方が合理的なシステムを作りやすい。そこで、電線を略水平面内で配索する治具板に対してロボットを設置し、ロボットで配索作業を行うシステムが検討されている。
【0006】
ところが、水平方向に電線を配索してワイヤハーネスを製造する場合、電線に張力を加えても、電線が自重で弛む問題がある。また、ワイヤハーネスの製造工程によっては、意図的に電線を弛ませることもある。したがって、同じ高さで複数の電線を並列して配索しても、各電線の自重や張力などの条件の違いにより、結束しようとする電線の高さにバラツキが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-144501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、電線の並び方向の両側からロボットハンドの把持爪を閉じても、集束に漏れる電線が発生する可能性がある。もちろん、ロボットハンドの把持爪のサイズを大きくすれば、電線の拾い漏れを防止できる可能性は高まるが、そうするとロボットハンドの取り回し性能が悪くなる問題があり、あまり把持爪のサイズを大きくすることはできない。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、補助ハンドのような余計な装備を設ける必要がなく構成を単純化できると共に、把持爪のサイズをあまり大きくしなくても、集束しようとする電線を、多少の位置ずれに拘わらず漏れなく囲い込んで、集束し把持することのできる電線の集束用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係る集束用ロボットは、下記を特徴としている。
【0011】
複数の電線が略水平面内において並行して配索された作業空間に対して設置されるロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられ、任意の位置および姿勢に制御されることで、前記複数の電線のうちの任意の複数の電線を集束して把持する把持機構を備えたロボットハンドと、
前記ロボットアームおよびロボットハンドを駆動制御することで、前記把持機構に、前記任意の複数の電線を集束して把持する動作をさせる制御装置と、を備え、
前記把持機構は、前記電線の延在方向と交差する水平方向に互いに対向し、前記水平方向に沿って直線的に開閉動作し、閉じ動作により、前記複数の電線を集束して把持する少なくとも一対の把持爪を有し、
前記互いに対向する一対の把持爪のうちの少なくとも一方の把持爪は、下から斜め上向きに移動することですくい爪として機能する下側爪部を有しており、
前記制御装置は、集束動作の前または途中で、集束すべき電線をすくい上げるよう、前記ロボットアームおよびロボットハンドの少なくともいずれかを駆動制御して、前記一方の把持爪の下側爪部を下から斜め上向きに移動させる、
電線の集束用ロボット。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、把持爪に設けられた下側爪部によって、集束すべき電線を漏れなくすくい上げて集束することができる。したがって、集束する電線の数や位置の影響を受けにくくなるとともに、把持爪のサイズを特に大きくしなくて済む。また、従来技術のように、把持ハンドとは別に補助ハンドを設ける必要がなく、構造の単純化が図れる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電線の集束用ロボットにおけるロボットハンドの概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、ロボットハンドの把持機構の把持爪を閉じて複数の電線を集束している様子を示す斜視図である。
図3図3は、ロボットハンドとロボットアームの構成の一部を簡略化して示す正面図である。
図4図4は、図3のロボットハンドの把持機構の把持爪を閉じて複数の電線を集束している様子を示す正面図である。
図5図5は、ロボットハンドの把持機構を開状態にして、集束しようとする複数の電線を挟むように、複数の電線の両側に一対の把持爪を位置決めした状態を示す斜視図である。
図6図6は、集束しようとする複数の電線を漏れなくすくい上げることができるように、ロボットハンドの把持機構を傾けている状態を示す斜視図である。
図7図7は、ロボットハンドの把持機構の概略構成を示す正面図で、集束すべき複数の電線の両側に一対の把持爪をセットしようとしている状態を示す図である。
図8図8は、集束すべき複数の電線の両側に把持爪をセットしたものの、この状態では電線の囲み込みから漏れる電線が生じることを示す図である。
図9図9は、図8の囲み込みから漏れる電線をすくい上げることができるように把持爪を傾けて、すくい上げ動作をしようとしている状態を示す図である。
図10図10は、すくい上げた状態で一対の把持爪を閉じることで、電線を集束しようとする途中の状態を示す図である。
図11図11は、把持機構の姿勢を元の水平姿勢に戻した状態を示す図である。
図12図12は、水平姿勢に戻した把持機構の一対の把持爪を閉じて、集束すべき電線を漏れなく全て集束した状態を示す図である。
図13図13は、本発明の別の実施形態に係る概略構成を示す図で、ロボットハンドの把持機構の一対の把持爪のうち、片方の把持爪の形状を直線形状にした例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る電線の集束用ロボットにおけるロボットハンドの概略構成を示す斜視図、図2は、ロボットハンドの把持機構の把持爪を閉じて複数の電線を集束している様子を示す斜視図である。また、図3は、ロボットハンドとロボットアームの構成の一部を簡略化して示す正面図、図4は、図3のロボットハンドの把持機構の把持爪を閉じて複数の電線を集束している様子を示す正面図である。
【0017】
本実施形態の電線の集束用ロボットは、図1図4に示すように、複数の電線Wが略水平面内において並行して配索された作業空間に対して設置されるもので、ロボットアーム1と、ロボットアーム1の先端に設けられたロボットハンド10と、ロボットアーム1やロボットハンド10などを駆動制御する制御装置(図示略)と、を備えている。
【0018】
ロボットハンド10は、複数の電線Wを集束して把持すると共に、把持した状態で電線Wを扱く加工を行う部分である。ロボットアーム1は、複数のアーム部を関節機構を介して軸周りに回転可能に連結した構成となっており、その先端部にロボットハンド10が設けられている。この集束用ロボットは、ロボットアーム1を動作させることによって、ロボットハンド10を、集束すべき電線Wに対し任意の位置に任意の姿勢で移動させることができるようになっている。すなわち、ロボットハンド10は、図1中の矢印H1~H4で示すように、多軸運動ができるようになっている。なお、集束用ロボットとしては、上記のような回転式アームを用いた垂直多関節ロボットの他に、直角座標型ロボット等を用いることもできる。
【0019】
ここで、電線Wを集束する加工とは、複数の電W線が並列的に散在している場合に、その後の把持及び結束加工が行いやすいように、複数の電線Wを集める加工を言う。電線Wを集束する加工を行うために、ロボットハンド10には、開閉可能な把持爪23を有する把持機構11が設けられている。
【0020】
また、電線Wを扱く加工とは、把持機構11によって電線Wを把持した状態で、電線Wの延在方向に沿ってロボットハンド10を摺動させていく加工である。この加工により、電線Wについた癖を矯正したり電線Wを張った状態にすることができる。つまり、電線Wを結束する前に電線Wを扱くことで、電線Wの一部が撓んだ状態で電線Wが結束されてしまうことを抑制することができる。これにより、寸法精度の向上を図ることができる。
【0021】
このような電線Wを扱く加工を行うために、ロボットハンド10の把持機構11は、電線Wを摺動可能な力で把持することができるようになっている。また、ロボットアーム1は、ロボットハンド10を電線Wに沿って摺動させることができるようになっている。
【0022】
扱き加工の後は、集束した電線Wに粘着テープを巻き付けて、複数の電線Wを結束する加工が行われる。この結束加工を行うために、周知のテープ自動巻機を含む各種構成が、ロボットハンド10自体やロボットハンド10とは別に設けられている。
【0023】
次に、ロボットハンド10に設けられている把持機構11について説明する。
把持機構11は、ロボットハンド10が任意の位置および姿勢に制御されることで、複数の電線のうちの任意の複数の電線を集束して把持することができるように設けられている。制御装置は、ロボットアーム1およびロボットハンド10を駆動制御することで、把持機構11に集束や扱きのための動作をさせる。
【0024】
把持機構11は、電線Wの延在方向と交差する水平方向に互いに対向して開閉動作する一対の把持ブロック20A、20Bを有している。図1中の矢印Y1が開き方向、矢印Y2が閉じ方向を示している。一方の把持ブロック20Aには、電線Wの延在方向に離隔して第1、第2の2つの把持片21A、22Aが設けられている。また、他方の把持ブロック20Bにも、電線Wの延在方向に離隔して第1、第2の2つの把持片21B、22Bが設けられている。各把持片21A、22A、21B、22Bの先端には、それぞれ把持爪23が設けられている。
【0025】
そして、一方の把持ブロック20Aの把持片21Aの把持爪23と、他方の把持ブロック20Bの把持片21Bの把持爪23とが対向して組み合わせられることで、第1の把持部21が構成されている。また、一方の把持ブロック20Aの把持片22Aの把持爪23と、他方の把持ブロック20Bの把持片22Bの把持爪23とが対向して組み合わせられていることで、第2の把持部22が構成されている。これにより、第1の把持部21と第2の把持部22は、電線Wの延在方向に離隔して位置している。
【0026】
第1の把持部21の一方の把持片21Aの把持爪23と、第2の把持部22の一方の把持片22Aの把持爪23は、一方の把持ブロック20Aに一体的に設けられているので、開閉動作時に一体的に動く。また、第1の把持部21の他方の把持片21Bの把持爪23と、第2の把持部22の他方の把持片22Bの把持爪23は、他方の把持ブロック20Bに一体的に設けられているので、開閉動作時に一体的に動く。したがって、第1の把持部21と第2の把持部22は、把持機構11の駆動機構(図示略)を駆動することによって、同時に開閉動作する。
【0027】
また、第1の把持部21と第2の把持部22の互いに対向する一対の把持爪23が電線Wを集束するために同時に閉じたとき、図2に示すように、第1の把持部21と第2の把持部22との間には、集束した電線Wに対するテープ巻き等の作業空間28が確保されるように、把持ブロック0A、20Bの形状が設定されている。
【0028】
第1の把持部21の互いに対向する一対の把持爪23、23は、両方とも、相手側の把持爪23との対向面に電線の取り込み空間としてのV字形凹部を設けることで、斜め下向きの下側爪部23aと斜め上向きの上側爪部23bとを有している。そして、一対の把持爪23は、電線Wの延在方向に位置をずらして隣接配置されており、閉じ動作の際に両方の下側爪部23aと上側爪部23bとが互いにすれ違い状態で重なることで、両方の下側爪部23aおよび上側爪部23bによる電線Wの囲い空間を小さくして電線Wを集束することができるようになっている。
【0029】
第2の把持部22の互いに対向する一対の把持爪23、23についても、第1の把持部21と全く同様の構成になっている。なお、第1の把持部21および第2の把持部22のそれぞれ対をなす把持爪23、23のすれ違いのための位置のずらし方向は任意である。図2の例では、第1の把持部21の図中左側の把持爪23(把持片21A)が手前側にあり、第1の把持部21の図中右側の把持爪23(把持片21B)が奥側にある。また、第2の把持部22の図中左側の把持爪23(把持片22A)が奥側にあり、第2の把持部22の図中右側の把持爪23(把持片22B)が手前側にある。
【0030】
制御装置は、ロボットアーム1やロボットハンド10や把持機構11を制御することにより、これら第1、第2の把持部21、22の把持爪23に対して任意の動きをさせることができる。特に、本実施形態では、必要時に制御装置が、互いに対向する一対の把持爪23、23のうちの一方の把持爪23を下から斜め上向きに移動することで、一方の把持爪23の下側爪部23aを「すくい爪」として機能するように動かすことができるように制御する。この動作のタイミングは、例えば、集束動作の前または途中である。
【0031】
次に作用を説明する。
図5は、ロボットハンド10の把持機構11を開状態にして、集束しようとする複数の電線Wを挟むように、複数の電線Wの両側に対をなす把持爪23、23を位置決めした状態を示す斜視図である。また、図6は、集束しようとする複数の電線Wを漏れなくすくい上げることができるように、ロボットハンド10の把持機構11を傾けている状態を示す斜視図である。さらに、図7は、ロボットハンド10の把持機構11の概略構成を示す正面図で、集束すべき複数の電線Wの両側に一対の把持爪23、23をセットしようとしている状態を示す図、図8は、集束すべき複数の電線Wの両側に把持爪23、23をセットしたものの、この状態では電線の囲み込みから漏れる電線Wxが生じることを示す図である。また、図9は、図8の囲み込みから漏れる電線をすくい上げることができるように把持爪を傾けて、すくい上げ動作をしようとしている状態を示す図である。
【0032】
さらに、図10は、すくい上げた状態で一対の把持爪23、23を閉じることで、電線Wを集束しようとする途中の状態を示す図、図11は、把持機構11の姿勢を元の水平姿勢に戻した状態を示す図、図12は、水平姿勢に戻した把持機構11の一対の把持爪23、23を閉じて、集束すべき電線Wを漏れなく全て集束した状態を示す図である。
【0033】
電線Wの集束作業を行う場合、図5図8に示すように、集束すべき複数の電線Wの並び方向(水平方向)の両側の位置に、把持機構11の対をなす把持爪23を上方から挿入して位置決めセットする。その際、集束すべき複数の電線Wの両側に把持爪23、23をセットしたものの、図8に示すように、この状態で把持爪23を閉じ操作しても、電線Wの囲み込みから漏れる電線Wxが発生する場合がある。
【0034】
そのような可能性がある場合は、ロボットハンド10(把持機構11)を、図6中や図9中の矢印S1で示すように適当に傾けたり動かしたりし、下方に位置する把持爪23の下側爪部23aで、漏れる可能性のある電線Wxをすくい上げられるように、把持機構11の位置や姿勢を制御する。
【0035】
そして、図9に示すように、集束すべき電線Wを全てすくい上げることができるように、ロボットアーム1およびロボットハンド10(把持機構11を含む)の少なくともいずれかを駆動制御して、一方の把持爪23の下側爪部23aを下から斜め上向きに移動させる。移動の仕方は、図9中の矢印J1で示すように直線的な経路で動かしてもよいし、矢印J2で示すように曲線的な経路で動かしてもよい。
【0036】
上記のように、集束すべき電線Wを漏れなくすくい上げることができるように下側爪部23aを動かし、それと同時に、またはその後に、図10に示すように、一対の把持爪23、23を閉じていく。すると、集束すべき全ての電線Wは、漏れなく一対の把持爪23、23によって囲み込まれる。その状態から、図11に示すように、把持機構11を元の水平姿勢に戻して、図12に示すように、一対の把持爪23、23を更に閉じることにより、電線Wを目標通りに集束して把持することができる。
【0037】
次に、集束した電線Wに対する扱きが必要な場合は、集束した電線Wを把持爪23、23で把持した状態で、電線Wに対してロボットハンド10を電線Wの長さ方向に相対移動させて電線Wを結束箇所まで扱く。具体的には、把持機構11により、集束した電線Wを軽く把持した状態で、ロボットアーム1によりロボットハンド10を電線Wに沿って結束箇所まで移動させる。このように結束箇所まで扱くと、電線Wが張った状態となる。この状態で、結束箇所で電線Wの周囲に結束用テープ(図2の符号110参照)を巻き付ける。これにより、集束した電線Wが結束箇所で結束された状態となる。
【0038】
なお、テープによる結束の際には、図2に示すように、把持機構11を構成する一対の把持ブロック20A、20B間の、閉じた状態の第1の把持部21と第2の把持部22の間に、必要な大きさの作業空間28が確保されるので、その作業空間28にテープ自動巻き付け装置の巻き付けヘッド100を挿入することで、テープ巻き付け作業をスムーズに行うことができる。
【0039】
以上のように、本実施形態の集束用ロボットによれば、把持爪23、23に設けられた下側爪部23aによって、集束すべき電線Wを漏れなくすくい上げて集束することができる。したがって、集束する電線Wの数や位置の影響を受けにくくなるとともに、把持爪23、23のサイズを特に大きくしなくて済む。また、従来技術のように、把持ハンド(把持爪23に相当)とは別に補助ハンドを設ける必要がないので、構造の単純化が図れる。
【0040】
また、本実施形態の集束用ロボットによれば、一対の把持爪23、23の両方にV字形凹部による下側爪部23aと上側爪部23bを設けているので、把持爪23、23の閉じ動作の際に、バランスよく電線Wの囲み空間を小さくすることができ、電線Wを集束しやすくなる。
【0041】
また、本実施形態の集束用ロボットによれば、第1の把持部21と第2の把持部22の間にテープ巻き等の作業空間28が確保されるので、上述のように、テープ巻き対象箇所の前後を第1と第2の把持部21、22で把持しながら、安定してテープ巻きを行うことができ、テープ巻き品質の向上が図れる。
【0042】
なお、上記実施形態においては、一対の把持爪23、23の両方に、V字形凹部による下側爪部23aと上側爪部23bを設けた場合を示したが、片方の把持爪23だけにV字形凹部による下側爪部23aと上側爪部23bを設け、もう片方の把持爪23は上下方向に延びる直線状に形成してもよい。
【0043】
図13は、本発明の別の実施形態の概略構成を示す図で、ロボットハンド10の把持機構11の一対の把持爪23、123のうち、片方の把持爪123の形状を直線形状にした例を示す正面図である。
【0044】
本実施形態では、互いに対向する一対の把持爪23、123のうちの一方の把持爪23は、相手側の把持爪123との対向面に電線Wの取り込み空間としてのV字形凹部を設けることで、斜め下向きの下側爪部23aと斜め上向きの上側爪部23bとを有している。一方、互いに対向する一対の把持爪23、123のうちの他方の把持爪123は、上下方向に直線状に延びた直線爪部として構成されている。
【0045】
また、一対の把持爪23、123は、電線Wの延在方向に位置をずらして隣接配置され、閉じ動作の際に一方の把持爪23の下側爪部23aおよび上側爪部23bと他方の把持爪123の直線爪部とが互いにすれ違い状態で重なることで、下側爪部23aおよび上側爪部23bと直線爪部とによる電線Wの囲い空間を小さくして電線を集束するようになっている。
【0046】
この実施形態によれば、一方の把持爪123を直線爪部として構成しているので、電線Wの並び方向における直線爪部の幅寸法を小さくすることができる。そのため、電線Wと電線Wの間の間隔が狭くても、直線爪部を電線Wと電線Wの間に挿入しやすくなり、集束作業の円滑化を図ることができる。
【0047】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る電線の集束用ロボットの特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 複数の電線(W)が略水平面内において並行して配索された作業空間に対して設置されるロボットアーム(1)と、
前記ロボットアーム(1)の先端に設けられ、任意の位置および姿勢に制御されることで、前記複数の電線(W)のうちの任意の複数の電線(W)を集束して把持する把持機構(11)を備えたロボットハンド(10)と、
前記ロボットアーム(1)およびロボットハンド(10)を駆動制御することで、前記把持機構(11)に、前記任意の複数の電線(W)を集束して把持する動作をさせる制御装置と、を備え、
前記把持機構(11)は、前記電線(W)の延在方向と交差する水平方向に互いに対向して開閉動作し、閉じ動作により、前記複数の電線(W)を集束して把持する少なくとも一対の把持爪(23、123)を有し、
前記互いに対向する一対の把持爪(23、123)のうちの少なくとも一方の把持爪(23)は、下から斜め上向きに移動することですくい爪として機能する下側爪部(23a)を有しており、
前記制御装置は、集束動作の前または途中で、集束すべき電線(W)をすくい上げるよう、前記ロボットアーム(1)およびロボットハンド(10)の少なくともいずれかを駆動制御して、前記一方の把持爪(23)の下側爪部(23a)を下から斜め上向きに移動させる、
電線の集束用ロボット。
【0048】
上記[1]の構成の電線の集束用ロボットによれば、把持爪に設けた下側爪部によって、集束すべき電線を漏れなくすくい上げて集束することができる。したがって、集束する電線の数や位置の影響を受けにくくなるとともに、従来技術のように、把持ハンド(把持爪に相当)とは別に、把持ハンドが電線を集束しやすいように予め囲い込む補助ハンドを設ける必要がなく、構造の単純化が図れる。
【0049】
[2] 前記互いに対向する一対の把持爪(23)の両方が、相手側の把持爪(23)との対向面に電線(W)の取り込み空間としてのV字形凹部を設けることで、斜め下向きの前記下側爪部(23a)と斜め上向きの上側爪部(23b)とを有しており、
前記一対の把持爪(23)は、前記電線(W)の延在方向に位置をずらして隣接配置され、閉じ動作の際に両方の前記下側爪部(23a)と前記上側爪部(23b)とが互いにすれ違い状態で重なることで、両方の前記下側爪部(23a)および前記上側爪部(23b)による電線の囲い空間を小さくして電線(W)を集束する、
上記[2]に記載の電線の集束用ロボット。
【0050】
上記[2]の構成の電線の集束用ロボットによれば、一対の把持爪の両方にV字形凹部による下側爪部と上側爪部を設けているので、把持爪の閉じ動作の際に、バランスよく電線の囲み空間を小さくすることができ、電線を集束しやすくなる。
【0051】
[3] 前記互いに対向する一対の把持爪(23、123)のうちの一方が、相手側の把持爪(123)との対向面に電線(W)の取り込み空間としてのV字形凹部を設けることで、斜め下向きの前記下側爪部(23a)と斜め上向きの上側爪部(23b)とを有し、
前記互いに対向する一対の把持爪のうちの他方が、上下方向に直線状に延びた直線爪部(123)として構成されており、
前記一対の把持爪(23、123)は、前記電線(W)の延在方向に位置をずらして隣接配置され、閉じ動作の際に一方の把持爪(23)の前記下側爪部(23a)および上側爪部(23b)と他方の把持爪の直線爪部(123)とが互いにすれ違い状態で重なることで、前記下側爪部(23a)および前記上側爪部(23b)と前記直線爪部(123)とによる電線の囲い空間を小さくして電線(W)を集束する、
上記[1]に記載の電線の集束用ロボット。
【0052】
上記[3]の構成の電線の集束用ロボットによれば、一方の把持爪を直線爪部として構成しているので、電線の並び方向における直線爪部の幅寸法を小さくすることができる。そのため、電線と電線の間の間隔が狭くても、直線爪部を電線と電線の間に挿入しやすくなり、集束作業の円滑化を図ることができる。
【0053】
[4] 前記互いに対向する一対の把持爪(23)が、前記電線(W)の延在方向に離隔した第1の把持爪(23)と第2の把持爪(23)により構成され、前記第1の把持爪(23)と前記第2の把持爪(23)との間に、両把持爪(23)を閉じることによって集束した電線(W)に対するテープ巻き等の作業空間(28)が確保される、
上記[1]~[3]のいずれかに記載の電線の集束用ロボット。
【0054】
上記[4]の構成の電線の集束用ロボットによれば、第1の把持爪と第2の把持爪の間にテープ巻き等の作業空間が確保されるので、例えば、テープ巻き対象箇所の前後を第1と第2の把持爪で把持しながら、安定してテープ巻きを行うことができ、テープ巻き品質の向上が図れる。
【符号の説明】
【0055】
1 ロボットアーム
10 ロボットハンド
11 把持機構
21 第1の把持部
22 第2の把持部
22A,22B 把持片
23,123 把持爪
23a 下側爪部
23b 上側爪部
100 ヘッド
W 電線
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