(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20240409BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 610A
(21)【出願番号】P 2021140353
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 明紀
(72)【発明者】
【氏名】後藤 啓稀
(72)【発明者】
【氏名】野垣 崇央
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0299229(US,A1)
【文献】特開2003-125516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコネクタ部を有するケース本体と、前記ケース本体に収容された電源側回路板と、前記ケース本体の一部分に設けられて複数種のコネクタを選択的に着脱自在とする汎用コネクタ装着部と、
を備え、
前記汎用コネクタ装着部は、前記ケース本体とは別の部材であり、前記複数のコネクタ部のうちの1つに装着され、
前記汎用コネクタ装着部は、前記電源側回路板における一部の端子接続部に、前記複数種のコネクタにおける電源側端子がそれぞれ電気的に接続可能とされ
、
前記複数種のコネクタにおける前記電源側端子は、前記複数種のコネクタの種類毎に形状が異なり、
前記電源側回路板の一部における前記端子接続部は、何れの種類の前記複数種のコネクタにおける前記電源側端子でもそれぞれ電気的に接続可能な形状を有していることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記電源側回路板の一部における前記端子接続部が音叉端子とされ、外力による前記音叉端子の変形を防止する変形防止保護構造が前記汎用コネクタ装着部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記汎用コネクタ装着部には、前記ケース本体の上方から解除可能なロック機構を介して前記複数種のコネクタがそれぞれロック固定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
車種やグレードの違いにより柔軟に対応することが出来、更なる開発工数および製造コストの低減を図ることの出来る、電気接続箱が提案されている(特許文献1参照)。
この電気接続箱は、車体に設けられた負荷と接続する電気回路を備えた電気接続箱において、複数の車種又はグレードに共通して用いられる共通回路を備えたベースユニットに対して、車種又はグレードに応じて選択的に用いられる付加回路を備えた複数種類のオプションユニットが用意されている。そして、ベースユニットに対してオプションユニットが選択的に組み合わされることで、ベースユニットの共通回路と選択されたオプションユニットの付加回路とで電気回路が構成されている。これらベースユニットおよび選択されたオプションユニットは、車種又はグレード毎に用意された合成樹脂からなるケースに取り付けられて車体に固定される。
【0003】
また、車種を跨いで使用することのできる電気接続箱が提案されている(特許文献2参照)。
この電気接続箱は、電気接続箱筐体(ケース本体)と、共通リレーブロックと、個別対応リレーブロックと、共通電源ブロックと、個別対応半導体モジュールとで構成される。電気接続箱筐体の収容室には、共通リレーブロックと個別対応リレーブロックと共通電源ブロックの1つ以上のブロックと、個別対応半導体モジュールとが収容され、収容されなかったブロックは収容されたブロックに形成された収容室に収容するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-193073号公報
【文献】特開2015-231309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電気接続箱は、同一の装着部(ヒュージブルリンク装着部やヒューズ装着部等)に対して、異なるコネクタ(ヒュージブルリンクやヒューズ等)を入れ替えて装着ができなかったため、回路変更が困難であった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、異なるコネクタの入れ替えが可能となることにより、回路の変更が容易に行える電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
複数のコネクタ部を有するケース本体と、前記ケース本体に収容された電源側回路板と、前記ケース本体の一部分に設けられて複数種のコネクタを選択的に着脱自在とする汎用コネクタ装着部と、を備え、前記汎用コネクタ装着部は、前記ケース本体とは別の部材であり、前記複数のコネクタ部のうちの1つに装着され、前記汎用コネクタ装着部は、前記電源側回路板における一部の端子接続部に、前記複数種のコネクタにおける電源側端子がそれぞれ電気的に接続可能とされ、前記複数種のコネクタにおける前記電源側端子は、前記複数種のコネクタの種類毎に形状が異なり、前記電源側回路板の一部における前記端子接続部は、何れの種類の前記複数種のコネクタにおける前記電源側端子でもそれぞれ電気的に接続可能な形状を有していることを特徴とする電気接続箱。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電気接続箱によれば、異なるコネクタの入れ替えが可能となることにより、回路の変更が容易に行える。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る電気接続箱の要部分解斜視図である。
【
図2】
図2は、ヒュージブルリンク部と汎用コネクタ装着部との分解斜視図である。
【
図3】
図3は、汎用コネクタ装着部の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、ヒュージブルリンク、ヒュージブルリンクソケット、及び電源側端子を説明する分解斜視図である。
【
図5】
図5は、コネクタ装着部に変形防止保護構造を備えた汎用コネクタ装着部の斜視図である。
【
図6】
図6は、ヒューズ部と汎用コネクタ装着部を説明する分解斜視図である。
【
図7】
図7は、ヒューズ、ヒューズソケット、及び音叉端子を説明する分解斜視図である。
【
図8】
図8は、救援端子部と汎用コネクタ装着部を説明する分解斜視図である。
【
図9】
図9は、回動ヒンジ構造により樹脂カバーが開放位置に回転されて表出した救援端子部の斜視図である。
【
図10】
図10は、救援端子部と音叉端子を説明する分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電気接続箱11の要部分解斜視図である。
例えば車両の電力伝送ラインには、各種の電子機器の電気回路を保護するために、多数のヒューズを抜き差し可能に配設した「ヒューズブロック」が用いられる。ヒューズブロックは、リレーなどを有することもあることから、「リレーボックス」若しくは「ジャンクションブロック」とも呼ばれる。本明細書では、これらヒューズブロック、リレーボックス、ジャンクションブロックを総称して電気接続箱11と呼ぶ。
【0012】
本実施形態に係る電気接続箱11は、外殻を形成するケース本体13と、このケース本体13と一体に設けられる電源側回路板としてのバスバー10と、ケース本体13の下方開口を覆うロアカバー19と、ケース本体13の上方開口を覆うアッパーカバー(不図示)とを備えている。ケース本体13の例えば上面には、リレー、ヒューズやヒュージブルリンク、ハーネス接続用ソケット等の電気部品が装着されるコネクタ部が複数設けられている。本実施形態において、コネクタ部は、ケース本体13を複数の隔壁15で仕切ることにより、ケース本体13の上面に開口する箱状凹部となった装着部17である。それぞれの装着部17には、板状のバスバーを折り曲げたり、切り欠いたりして形成した端子部(不図示)が配置されている。装着部17に配置された端子部は、装着部17に装着されるリレー(不図示)、ヒューズやヒュージブルリンク、ハーネス接続用ソケット等の電源側端子に導通接続される。
なお、アッパカバーは、ケース本体13の上部に装着された電気部品を覆い、ロアカバー19は、ケース本体13の下部から電線を導出させる。
【0013】
本実施形態に係る電気接続箱11は、ケース本体13の一部分に設けられて複数種のコネクタを選択的に着脱自在とする汎用コネクタ装着部21を備える。汎用コネクタ装着部21は、バスバー10における一部の端子接続部である音叉端子57に、複数種のコネクタにおける電源側端子である電源側接続端子61、電源側端子23、又は救援端子107(
図4、
図7、
図10参照)がそれぞれ電気的に接続可能とされる。
【0014】
本実施形態におけるコネクタは、例えば
図1に示すヒュージブルリンク部25、
図6に示すヒューズ部27、
図8に示す救援端子部29である。
図1に示すヒュージブルリンク部25は、2つのヒュージブルリンク31と、これを装着するヒュージブルリンクソケット33と、を有する。ヒュージブルリンク部25は、汎用コネクタ装着部21のコネクタ装着部35に装着される。
【0015】
図2は、ヒュージブルリンク部25と汎用コネクタ装着部21との分解斜視図である。
汎用コネクタ装着部21は、絶縁樹脂により成形されるハウジング本体37が、平面視で矩形状に形成される。ハウジング本体37の長手方向一端には、平面視でほぼ正方形のバスバー接続ハウジング部39が一体に成形されている。このバスバー接続ハウジング部39には、ケース本体13の内部に収容されたバスバー10の端子連結部12と接続されるバスバー接続部41(
図3参照)が収容される。ハウジング本体37には、コネクタ装着部35の他に、例えばヒューズ43等(
図6参照)の装着が可能となる複数のヒューズ装着部45が設けられている。
【0016】
ヒュージブルリンクソケット33には、コネクタ装着部35への装着時に、ハウジング本体37に当接して位置決めされることとなる上側段部47と、下側段部49とが形成されている。下側段部49は、上側段部47よりも、下側(
図2の下側)に垂下して形成されている。また、ヒュージブルリンクソケット33には、コネクタ装着部35の内壁面51に対向する側面53に、上下に延在する係合リブ55が突設されている。
【0017】
図3は、汎用コネクタ装着部21の分解斜視図である。
電気接続箱11は、バスバー10の一部における端子接続部が、音叉端子57とされる。即ち、バスバー10を収容したケース本体13に装着される汎用コネクタ装着部21は、バスバー接続部41を介してバスバー10の端子連結部12に接続される音叉端子57が内部に収容されている。
【0018】
音叉端子57は、音叉状に起立した一対の挟持片59が、ハウジング本体37の長手方向に沿って複数対(本実施形態では8対)形成されている。音叉端子57は、一対の挟持片59の間に挿入されたコネクタの電源側端子である電源側接続端子61、電源側端子23、又は救援端子107(
図4、
図7、
図10参照)と接触する。
【0019】
本実施形態において、8対の挟持片59は、等間隔のピッチPで配置された4対の挟持片59からなるグループG1を有する。4対の挟持片59のグループG1は、等間隔のピッチPで配置された2対の挟持片59からなるグループG2と、等間隔のピッチPで配置された他の2対の挟持片59からなるグループG3とに挟まれる。グループG1とグループG2の離間距離a、およびグループG1とグループG3の離間距離aは、ピッチPよりも小さく(P>a)設定されている。これにより、コネクタ装着部35は、ピッチPの整数倍と異なる間隔で離間して対となった複数種の電源側端子23が同時に接続できるように構成されている。
【0020】
図4は、ヒュージブルリンク31、ヒュージブルリンクソケット33、及び電源側接続端子61を説明する分解斜視図である。
ヒュージブルリンクソケット33には、ヒュージブルリンク部25の電源側端子である電源側接続端子61が装着される。電源側接続端子61は、ヒュージブルリンクソケット33に装着された2つのヒュージブルリンク31のそれぞれの電源側端子(不図示)と導通する。電源側接続端子61は、一対のタブ端子である電気接触片65を有する。一対の電気接触片65のそれぞれは、音叉端子57の異なる一対の挟持片59の間に挿入れて導通される。また、ヒュージブルリンクソケット33には、一対の負荷側接続タブ端子63が装着される。一対の負荷側接続タブ端子63のそれぞれは、一対のヒュージブルリンク31のそれぞれの負荷側端子(不図示)に導通する。
【0021】
図5は、コネクタ装着部35に変形防止保護構造を備えた汎用コネクタ装着部21の斜視図である。
汎用コネクタ装着部21は、コネクタ装着部35に、変形防止保護構造を有する。変形防止保護構造は、コネクタ装着部35において、表出する音叉端子57を包囲する周壁部67を有する。周壁部67は、外力による音叉端子57の変形を防止する。周壁部67は、一対の挟持片59ごとに、一対の挟持片59を表出させる上部開口部69を有する。また、周壁部67は、一対の挟持片59の間にコネクタの電源側端子である電源側接続端子61における電気接触片65を挿入可能とするスリット71が、上部開口部69から下方へ切り込まれて形成されている。
【0022】
周壁部67は、上部開口部69の周縁が、開口部上端面73となる。この開口部上端面73は、上側段部47と対向する。周壁部67の裾部には、開口部上端面73と平行な着座部75が周壁部67から延出して形成されている。この着座部75には、係合リブ55の下端が当接、若しくは近接する。コネクタ装着部35の内壁面51には、開口部上端面73と平行な載置面を有する載置リブ77が突設されている。載置リブ77には、下側段部49が載置される。載置リブ77は、周壁部67に向かって延在し、周壁部67に対して隙間を有して垂下することにより、L字状となって着座部75に接続される。この周壁部67と垂下した載置リブ77との隙間は、係合溝79となる。係合溝79には、係合リブ55が上方より挿入される。これにより、汎用コネクタ装着部21のコネクタ装着部35に装着されたヒュージブルリンク部25は、少なくとも下側段部49が載置リブ77に載置される。また、ヒュージブルリンク部25は、係合リブ55が係合溝79に嵌入することにより、前後方向(内壁面51と平行かつ周壁部67に垂直な方向)と、左右方向(コネクタ装着部35の長手方向)と、下方向(コネクタ装着部35に対するヒュージブルリンクソケット33の装着方向)への移動が規制される。
【0023】
汎用コネクタ装着部21には、ケース本体13の上方から解除可能なロック機構を介して複数種のコネクタ(ヒュージブルリンク部25、ヒューズ部27、又は救援端子部29)が選択的にそれぞれロック固定される。ロック機構は、
図4に示すロックアーム81と、
図5に示す係合凹部83と、により構成される。
【0024】
ロックアーム81は、ヒュージブルリンクソケット33の奥壁面85に形成される。ロックアーム81は、ヒュージブルリンクソケット33の奥壁面85に一対の平行な切り込みを入れることにより、奥壁面85と平行に配置されて、奥壁面85と面一となる。ロックアーム81は、ヒュージブルリンクソケット33の装着方向下側となる基端が奥壁面85に接続され、反対側の装着方向上側の先端が自由端部とされる片持ち梁形状となる。このロックアーム81の自由端部は、奥壁面85と面一の面に、ロック爪87が突出して形成される。即ち、ロック爪87は、ヒュージブルリンクソケット33の奥壁面85よりも突出している。ロックアーム81は、ロック爪87が押されると、ロック爪87が奥壁面85と面一となる位置まで自由端部が弾性変形して押し込まれる。つまり、通常状態では、ロック爪87は、奥壁面85から突出している。
【0025】
ヒュージブルリンクソケット33は、コネクタ装着部35に装着されると、ロック爪87がコネクタ装着部35の内側面89に押圧されて押し込まれる。ヒュージブルリンクソケット33が所定の位置まで挿入(装着)されると、コネクタ装着部35の内側面89に形成された係合凹部83に、弾性復元力により元の位置に変位したロックアーム81のロック爪87が係止される。これにより、ヒュージブルリンクソケット33(すなわち、ヒュージブルリンク部25)は、コネクタ装着部35からの離脱が規制される。一方、ロックアーム81は、治具等を用いてロック爪87が奥壁面85と面一となる位置まで移動されると、係合凹部83との係止が解除され、ヒュージブルリンク部25をコネクタ装着部35から離脱可能となる。
【0026】
図6は、ヒューズ部27と汎用コネクタ装着部21を説明する分解斜視図である。
図6に示すように、電気接続箱11は、コネクタが、ヒューズ部27であってもよい。ヒューズ部27は、4つのヒューズ43と、これらを装着するヒューズソケット91と、からなる。ヒューズ部27は、汎用コネクタ装着部21のコネクタ装着部35に装着される。ヒューズ43は、ヒューズ部27の電源側端子としての電源側端子23と、負荷側端子93とを有する。ヒューズソケット91は、ヒュージブルリンクソケット33と同様に、上側段部47、下側段部49、及び係合リブ55を側面53に有する。
【0027】
図7は、ヒューズ43、ヒューズソケット91、及び音叉端子57を説明する分解斜視図である。
ヒューズソケット91に装着されたそれぞれのヒューズ43は、電源側端子23が直接、ハウジング本体37に収容されている音叉端子57の挟持片59に接触する。また、ヒューズソケット91には、電線97の端末に取り付けられた負荷側接続端子95が挿入される。ヒューズソケット91に挿入された負荷側接続端子95は、ヒューズソケット91内におけるヒューズ43の負荷側端子93に直接接続される。
【0028】
このヒューズ部27の場合も、ヒュージブルリンク部25と同様に、上側段部47、下側段部49、及び係合リブ55が、コネクタ装着部35の開口部上端面73、載置リブ77、係合溝79に係合する。また、ヒューズ部27は、ロックアーム81と係合凹部83とにより構成されたロック機構により、汎用コネクタ装着部21からの離脱が規制される。
【0029】
図8は、救援端子部29と汎用コネクタ装着部21を説明する分解斜視図である。
図8に示すように、電気接続箱11は、コネクタが、救援端子部29であってもよい。救援端子部29は、汎用コネクタ装着部21のコネクタ装着部35に、着脱自在に装着される。救援端子部29は、平面視で長方形の直方体状に形成される。救援端子部29は、救援端子107が樹脂カバー99により表出可能に覆われている。樹脂カバー99は、救援端子部29に対し、回動ヒンジ構造により回転自在に取り付けられる。樹脂カバー99は、
図8に示す閉鎖位置において、救援端子部29の救援端子107を覆う。
【0030】
図9は、回動ヒンジ構造により樹脂カバー99が開放位置に回転されて表出した救援端子部29の斜視図である。
樹脂カバー99は、救援端子部29における一方の長手方向側面101と、長手方向側面101に隣り合う両短手方向側面103と、上面105とを覆う。
【0031】
図9に示すように、樹脂カバー99が開放位置となって表出した救援端子部29は、一方の長手方向側面101に、救援端子部29における電源側端子である板状の救援端子107が設けられている。救援端子107は、汎用コネクタ装着部21に対して垂直に起立する絶縁樹脂製の端子支持板109により支持されている。即ち、救援端子部29は、救援端子107と端子支持板109とが板厚方向で重ねられて、端子支持板109の一方の面側に救援端子107が表出している。救援端子部29は、ばねの力で閉じる導電金属製のクランプ部111(わに口)により板厚方向から挟まれ、救援端子107がブースタケーブル(不図示)に導通接続される。
【0032】
図10は、救援端子部29と音叉端子57を説明する分解斜視図である。
救援端子部29は、端子支持板109に形成される挿入部113が、汎用コネクタ装着部21のコネクタ装着部35に着脱自在に装着される。救援端子部29は、
図10に示すように、救援端子107の端子基端部115に、救援端子107から垂直に折り曲げられた一対の平行なタブ端子である電気接触片116を有する。救援端子107は、端子基端部115を除く端子先端部117が、端子支持板109に形成されたスリット穴119に挿通されて端子支持板109に保持される。
【0033】
救援端子107と端子支持板109とが一体となった救援端子部29は、コネクタ装着部35に挿入部113が装着されると、一対の電気接触片116が、汎用コネクタ装着部21に配置される音叉端子57に導通接続される。音叉端子57は、救援端子107の電気接触片116を板厚方向から一対の挟持片59が挟む。
【0034】
挿入部113が汎用コネクタ装着部21のコネクタ装着部35に装着された救援端子部29は、上述した他のコネクタと同様に、ロック爪87が形成されたロックアーム81により、コネクタ装着部35からの離脱が規制される。
【0035】
樹脂カバー99は、一方の長手方向側面101の基端部側における長手方向に沿って延びる同軸となった一対の回動軸121を有する。樹脂カバー99は、この回動軸121を中心に、救援端子部29に対して回動自在とされる。
【0036】
救援端子部29の端子支持板109は、端子先端部117が突出するスリット穴119が開口した挿入部113の上面に、一対の軸受け部123を備えている。一対の軸受け部123は、一対の回動軸121を支持する位置に離間して配置されている。樹脂カバー99に設けられた一対の回動軸121は、双方が、同一端側(
図10の右端側)に形成される軸支持部125により樹脂カバー99に設けられている。一対の回動軸121は、軸支持部125と反対側の軸先端部を、一対の軸受け部123の同じ方向から同時にスライドされて挿入されるようになっている。スライドされて回動軸121が軸受け部123に挿入された樹脂カバー99は、軸支持部125が軸受け部123に当接してそれ以上のスライドが規制される。
【0037】
図9に示すように、樹脂カバー99は、救援端子部29が汎用コネクタ装着部21に装着された時に、閉鎖位置(
図8に示す位置)からほぼ90°の位置となる開放位置(
図9に示す位置)まで回転される。また、樹脂カバー99は、救援端子部29が汎用コネクタ装着部21から脱着された後には、挿入部113の側面に当接する位置(全開放位置)まで更にほぼ90°の回転が可能となる。つまり、樹脂カバー99の回転角度範囲は、救援端子部29が汎用コネクタ装着部21から脱着された状態では、閉鎖位置から全開放位置までのほぼ180°となる。
【0038】
樹脂カバー99は、一方(
図10の左方)の軸支持部125と他方(
図10の右方)の軸支持部125との間に、スライド規制突起127が形成されている。樹脂カバー99は、一方(
図9の左方)の軸支持部125とスライド規制突起127との間に渡って、補強板部129が形成されている。一方、救援端子部29の端子支持板109には、スライド規制突起127に当接して樹脂カバー99の
図10における右方向へのスライドを規制するストッパ突起131が、挿入部113の上面に形成されている。
【0039】
樹脂カバー99は、
図8に示す閉鎖位置において、スライド規制突起127がストッパ突起131に当接してスライドが規制されている。また、樹脂カバー99は、
図9に示す90°回転された開放位置においても、スライド規制突起127がストッパ突起131に当接してスライドが規制される。すなわち、樹脂カバー99は、救援端子部29が汎用コネクタ装着部21に装着された状態では、樹脂カバー99が汎用コネクタ装着部21に当たって90°の開放位置までしか回転されないので、スライドが規制されたままの状態となる。つまり、樹脂カバー99は、救援端子部29を汎用コネクタ装着部21から脱着しなければ、救援端子部29から外れない。
【0040】
ここで、樹脂カバー99を回動自在に保持する回動ヒンジ構造は、樹脂カバー99を、全開放位置(180°回転された位置)においてのみ救援端子部29に対して着脱自在とする。すなわち、樹脂カバー99は、閉鎖位置から180°回転された位置では、スライド規制突起127がストッパ突起131に対して干渉しない位置へと移動される。
【0041】
樹脂カバー99は、この全開放位置において、スライド規制突起127が、ストッパ突起131と干渉しなくなるので、軸受け部123から回動軸121を引き抜く方向のスライドが可能となる。回動軸121が軸受け部123から抜かれた樹脂カバー99は、救援端子部29からの取り外しが可能となる。なお、救援端子部29に対する樹脂カバー99の取り付けは、この全開放位置から取り外しと逆の手順で行うことができる。
【0042】
救援端子部29は、端子支持板109の挿入部113に、他のコネクタと同様に、コネクタ装着部35と係合する上側段部47、下側段部49、及び係合リブ55を有する。また、救援端子部29は、挿入部113に、他のコネクタと同様に、ロック爪87が形成されたロックアーム81を有している。
【0043】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施形態に係る電気接続箱11では、ケース本体13が、複数のコネクタ部を有する。コネクタ部は、例えばリレー、ヒューズやヒュージブルリンク、ハーネス接続用ソケット等の電気部品が装着される装着部17である。ケース本体13は、このケース本体13に一体的に設けられる電源側回路板であるバスバー10を有する。
【0044】
それぞれの装着部17には、板状のバスバーを折り曲げたり、切り欠いたりして形成したケース端子部(不図示)が配置される。それぞれの装着部17に配置されたケース端子部は、装着部17に装着されるリレー、ヒューズやヒュージブルリンク、ハーネス接続用ソケット等の電源側端子に導通接続される。
【0045】
ケース本体13の一部分(すなわち、複数の装着部17のうちの1つ)には、汎用コネクタ装着部21が設けられる。この汎用コネクタ装着部21は、複数種のコネクタが選択的に着脱自在とされる。ここで、コネクタとは、本実施形態において、ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29である。
【0046】
汎用コネクタ装着部21は、バスバー10と電気的に接続された音叉端子57に、複数種のコネクタにおける電源側端子である電源側接続端子61、電源側端子23、又は救援端子107がそれぞれ電気的に接続可能とされる。
【0047】
本構成の電気接続箱11では、ケース本体13に設けられた複数の装着部17のうちの一部分に汎用コネクタ装着部21が設けられ、この汎用コネクタ装着部21が、異なる種類のコネクタ(すなわち、ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)を選択的に着脱自在とする。なお、汎用コネクタ装着部21は、ケース本体13に一体的に設けることもできる。
【0048】
汎用コネクタ装着部21は、ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25または救援端子部29を装着可能とするコネクタ装着部35を備える。一方、ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、及び救援端子部29は、コネクタ装着部35と係合する上側段部47、下側段部49、及び係合リブ55を有する。
【0049】
これにより、本実施形態の電気接続箱11では、ケース本体13の装着部17と、異なる種類のコネクタとの間に、汎用コネクタ装着部21が介在することにより、汎用コネクタ装着部21が、異なる種類のコネクタを選択的に接続するアダプター的な機能を果たすことになる。
【0050】
即ち、本構成の電気接続箱11は、ケース本体13の装着部17に、汎用コネクタ装着部21が装着されることにより、従来構造の装着部17では、入れ替えが困難であった異なる種類のコネクタ(すなわち、ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)を、選択的に着脱自在にできる。その結果、電気接続箱では、回路の変更を容易に行うことができるようになっている。
これに加え、異なる種類のコネクタ(例えば不図示のハーネス接続用ソケット等)も選択的に着脱自在となるので、ワイヤハーネスの組付け性も向上させることができる。
【0051】
本実施形態の電気接続箱11では、バスバー10の一部である、汎用コネクタ装着部21に設けられている端子接続部が、音叉端子57とされる。また、汎用コネクタ装着部21には、外力による音叉端子57の変形を防止する変形防止保護構造が設けられる。
【0052】
電気接続箱11では、上述のように、汎用コネクタ装着部21が、異なる種類のコネクタ(ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)を選択的に接続可能としている。それぞれのコネクタは、電源側端子である電源側端子23、電源側接続端子61、又は救援端子107が、音叉端子57に電気的に接続されることにより、音叉端子57を経由して電気接続箱11のバスバーと導通接続されることになる。この際、音叉端子57は、例えばヒュージブルリンク部25における電源側接続端子61の電気接触片65が、音叉端子57の所定の端子間隙に挿入されず、電源側接続端子61により加えられる所定方向以外の外力によって生じる変形が、変形防止保護構造によって抑制される。
【0053】
すなわち、電源側接続端子61の電気接触片65が、スリット71に挿入されることにより、所定方向以外の外力が、音叉端子57に作用しにくくなる。また、音叉端子57は、例えばヒューズ43やヒュージブルリンク31が必要とするヒューズソケット91やヒュージブルリンクソケット33の接触による外力によって生じる変形も、変形防止保護構造によって囲まれることにより抑制される。
【0054】
本実施形態の電気接続箱11では、ケース本体13に設けられた汎用コネクタ装着部21の開口部上端面73、載置リブ77、及び係合溝79に、それぞれのコネクタ(ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)に設けられている上側段部47、下側段部49、及び係合リブ55が係合して装着が行われる。開口部上端面73、載置リブ77、及び係合溝79と、上側段部47、下側段部49、及び係合リブ55とが係合した汎用コネクタ装着部21とコネクタ(ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)とは、ロック機構によりロック固定される。これにより、コネクタ(ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)は、汎用コネクタ装着部21、すなわち、電気接続箱11からの離脱が規制される。
【0055】
ロック機構は、例えばコネクタ(ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)に設けられたロックアーム81と、汎用コネクタ装着部21に設けられた係合凹部83とにより構成できる。それぞれのコネクタに設けられるロックアーム81は、コネクタが汎用コネクタ装着部21に装着された際、いずれのコネクタにおいても係合凹部83に一致するように、上側段部47、下側段部49、及び係合リブ55に対するロックアーム81の相対位置が設定されている。
【0056】
すなわち、コネクタであるヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、及び救援端子部29は、外形状が異なっていても、それぞれの上側段部47、下側段部49、及び係合リブ55が、汎用コネクタ装着部21の開口部上端面73、載置リブ77、及び係合溝79に係合することができる。
【0057】
これにより、本実施形態の電気接続箱11は、選択的に接続された異なる種類のいずれのコネクタ(ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)であっても、汎用コネクタ装着部21(すなわち、電気接続箱11)に等しくロック固定できる。
【0058】
従って、本実施形態に係る電気接続箱11によれば、異なるコネクタ(ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)の入れ替えが可能となることにより、回路の変更が容易に行えるようになる。
【0059】
ここで、上述した本発明の一実施形態に係る電気接続箱の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
(1) 複数のコネクタ部(装着部17)を有するケース本体(13)と、前記ケース本体(13)に収容された電源側回路板(バスバー10)と、前記ケース本体(13)の一部分に設けられて複数種のコネクタ(ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)を選択的に着脱自在とする汎用コネクタ装着部(21)と、を備え、前記汎用コネクタ装着部(21)は、前記電源側回路板(バスバー10)における一部の端子接続部(音叉端子57)に、前記複数種のコネクタ(ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)における電源側端子(電源側端子23、電源側接続端子61、又は救援端子107)がそれぞれ電気的に接続可能とされることを特徴とする電気接続箱(11)。
【0060】
上記(1)の構成の電気接続箱(11)によれば、ケース本体(13)が、複数のコネクタ部(装着部17)を有する。コネクタ部は、例えばリレー、ヒューズやヒュージブルリンク、ハーネス接続用ソケット等の電気部品が装着される装着部である。ケース本体(13)の一部分(例えば、複数のコネクタ部のうちの1つ)には、汎用コネクタ装着部(21)が設けられる。この汎用コネクタ装着部(21)は、複数種のコネクタ(ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)が選択的に着脱自在とされる。
汎用コネクタ装着部(21)は、電源側回路板(バスバー10)と電気的に接続された一部の端子接続部(音叉端子57)に、複数種のコネクタにおける電源側端子(電源側端子23、電源側接続端子61、又は救援端子107)がそれぞれ電気的に接続可能とされる。
本構成の電気接続箱(11)では、ケース本体(13)と、異なる種類のコネクタとの間に、汎用コネクタ装着部(21)が介在することにより、汎用コネクタ装着部(21)が、異なる種類のコネクタを選択的に接続するアダプター的な機能を果たすことになる。
即ち、本構成の電気接続箱(11)は、ケース本体(13)が汎用コネクタ装着部(21)を備えることにより、従来構造の装着部では、入れ替えが困難であった異なる種類のコネクタ(すなわち、ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、救援端子部29等)を、選択的に着脱自在にできるようになる。その結果、本構成の電気接続箱(11)によれば、回路の変更を容易に行うことができる。
【0061】
(2) 前記電源側回路板(バスバー10)の一部における前記端子接続部が音叉端子(57)とされ、外力による前記音叉端子(57)の変形を防止する変形防止保護構造が前記汎用コネクタ装着部(21)に設けられていることを特徴とする上記(1)に記載の電気接続箱(11)。
【0062】
上記(2)の構成の電気接続箱(11)によれば、電源側回路板(バスバー10)の一部である、汎用コネクタ装着部(21)に設けられている端子接続部が、音叉端子(57)とされる。また、汎用コネクタ装着部(21)には、外力による音叉端子(57)の変形を防止する変形防止保護構造が設けられる。それぞれのコネクタ(ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)は、電源側端子(電源側端子23、電源側接続端子61、又は救援端子107)が音叉端子(57)に電気的に接続されることにより、音叉端子(57)を経由して電気接続箱(11)の電源側回路板(バスバー10)と導通接続されることになる。この際、音叉端子(57)は、例えばコネクタの電源側端子が、音叉端子(57)の所定の端子間隙に挿入されず、電源側端子により加えられる所定方向以外の外力によって生じる変形が、変形防止保護構造によって抑制される。
【0063】
(3) 前記汎用コネクタ装着部(21)には、前記ケース本体(13)の上方から解除可能なロック機構(ロックアーム81及び係合凹部83)を介して前記複数種のコネクタ(ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)がそれぞれロック固定されることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の電気接続箱(11)。
【0064】
上記(3)の構成の電気接続箱(11)によれば、ケース本体(13)に設けられた汎用コネクタ装着部(21)には、それぞれのコネクタが選択的に装着される。汎用コネクタ装着部には、コネクタ(ヒューズ部27、ヒュージブルリンク部25、又は救援端子部29)がロック機構(ロックアーム81及び係合凹部83)によりロック固定される。これにより、コネクタは、汎用コネクタ装着部(21)、すなわち、電気接続箱(11)からの離脱が規制される。その結果、本構成の電気接続箱(11)は、選択的に接続された異なる種類のいずれのコネクタであっても、ケース本体(13)の汎用コネクタ装着部(21)に等しくロック固定できる。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0066】
11…電気接続箱
13…ケース本体
17…装着部(コネクタ部)
21…汎用コネクタ装着部
23…電源側端子
25…ヒュージブルリンク部(コネクタ)
27…ヒューズ部(コネクタ)
29…救援端子部(コネクタ)
57…音叉端子(端子接続部)
61…電源側接続端子(電源側端子)
67…周壁部(変形防止保護構造)
81…ロックアーム(ロック機構)
83…係合凹部(ロック機構)
107…救援端子(電源側端子)