(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】排気部品
(51)【国際特許分類】
F01N 13/08 20100101AFI20240409BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240409BHJP
F01N 13/10 20100101ALI20240409BHJP
【FI】
F01N13/08 F
F01N3/28 301V
F01N13/10
(21)【出願番号】P 2021175878
(22)【出願日】2021-10-27
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浅井 竜司
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017146(JP,A)
【文献】特開2015-004281(JP,A)
【文献】特開平10-252458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00- 1/24
F01N 3/00, 3/02
F01N 3/04- 3/38
F01N 5/00- 5/04
F01N 9/00-11/00
F01N 13/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気ガスを導く排気流路を形成する排気部品であって、
前記排気部品は、
前記内燃機関からの排気ガスが流入する流入口として機能する少なくとも1つの貫通孔が形成されるフランジと、前記少なくとも1つの貫通孔を通過した排気ガスが流入する少なくとも1つの排気管と、を有するエキゾーストマニホールドと、
前記エキゾーストマニホールドよりも下流側に配置され、排気ガスを浄化する触媒を内部に収容する筒状部を有する触媒ケースと、
当該排気部品における前記少なくとも1つの排気管よりも下流側かつ前記筒状部よりも上流側に位置する部分であって、排気ガスの流れ方向と垂直な当該部分の断面における断面積が下流側に向かって拡大する部分である中間部と、を含み、
前記中間部は、当該中間部を形成する壁部において、曲率が変化する複数の屈折点を有する
少なくとも1つの屈折部を有
し、
前記中間部を上流側から見た場合、前記中間部の上流側の開口を中心として、前記少なくとも1つの屈折部と対向する位置には、前記少なくとも1つの屈折部が設けられず、
前記少なくとも1つの屈折部は、前記中間部の周方向に沿って円弧状に湾曲する形状である、排気部品。
【請求項2】
内燃機関からの排気ガスを導く排気流路を形成する排気部品であって、
前記排気部品は、
前記内燃機関からの排気ガスが流入する流入口として機能する少なくとも1つの貫通孔が形成されるフランジと、前記少なくとも1つの貫通孔を通過した排気ガスが流入する少なくとも1つの排気管と、を有するエキゾーストマニホールドと、
前記エキゾーストマニホールドよりも下流側に配置され、排気ガスを浄化する触媒を内部に収容する筒状部を有する触媒ケースと、
当該排気部品における前記少なくとも1つの排気管よりも下流側かつ前記筒状部よりも上流側に位置する部分であって、排気ガスの流れ方向と垂直な当該部分の断面における断面積が下流側に向かって拡大する部分である中間部と、を含み、
前記中間部は、当該中間部を形成する壁部において、曲率が変化する複数の屈折点を有する
少なくとも1つの屈折部を有
し、
前記中間部を上流側から見た場合、前記中間部の上流側の開口を中心として、前記少なくとも1つの屈折部と対向する位置には、前記少なくとも1つの屈折部が設けられず、
前記少なくとも1つの屈折部は、複数の屈折部であり、
当該複数の屈折部は、前記流れ方向に沿って互いに間隔を空けて設けられる、排気部品。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の排気部品であって、
前記屈折部は、前記壁部の一部が内側に凹む凹部である、排気部品。
【請求項4】
請求項1
から請求項
3までのいずれか一項に記載の排気部品であって、
前記フランジは、板状の部材であり、
前記少なくとも1つの貫通孔は、複数の貫通孔であり、
前記複数の貫通孔に沿った並び方向を前記フランジの長手方向として、
前記屈折部は、前記フランジの前記複数の貫通孔が形成される平面に沿った第1仮想平面に当該排気部品を投影したときに、前記筒状部の中心軸が、前記フランジの前記長手方向の中心を通る線であって、前記長手方向と直交する線である第1中心線からズレて配置される場合、前記中間部における前記第1中心線側の範囲に位置する、排気部品。
【請求項5】
請求項1
から請求項
3までのいずれか一項に記載の排気部品であって、
前記フランジは、板状の部材であり、
前記少なくとも1つの貫通孔は、複数の貫通孔であり、
前記複数の貫通孔に沿った並び方向である前記フランジの長手方向に対して直交する方向であって、前記フランジの前記複数の貫通孔が形成される平面に沿った方向を前記フランジの短手方向として、
前記屈折部は、前記平面に沿った第1仮想平面に直交する面であって、前記短手方向に沿った面である第2仮想平面に当該排気部品を投影したときに、前記筒状部の中心軸が、前記フランジの前記短手方向の中心を通る線であって、前記短手方向と直交する線である第2中心線に対して傾斜して配置される場合、前記中間部における前記フランジ側の範囲に位置する、排気部品。
【請求項6】
請求項1
から請求項
3までのいずれか一項に記載の排気部品であって、
前記フランジは、板状の部材であり、
前記少なくとも1つの貫通孔は、複数の貫通孔であり、
前記複数の貫通孔に沿った並び方向を前記フランジの長手方向として、
前記長手方向に対して直交する方向であって、前記フランジの前記複数の貫通孔が形成される平面に沿った方向を前記フランジの短手方向として、
前記屈折部は、前記平面に沿った第1仮想平面に当該排気部品を投影したときに、前記筒状部の中心軸が、前記フランジの前記長手方向の中心を通る線であって、前記長手方向と直交する線である第1中心線からズレて配置される状態、かつ、前記第1仮想平面に直交する面であって、前記短手方向に沿った面である第2仮想平面に当該排気部品を投影したときに、前記中心軸が、前記フランジの前記短手方向の中心を通る線であって、前記短手方向と直交する線である第2中心線に対して傾斜して配置される状態にある場合、前記中間部における前記第1中心線側の範囲、かつ、前記中間部における前記フランジ側の範囲に位置する、排気部品。
【請求項7】
請求項1から請求項
6までのいずれか1項に記載の排気部品であって、
前記屈折部は、前記中間部の周方向に沿った方向に長さを有する、排気部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、触媒を収容する筒状容器と、筒状容器の上部開口部に溶接され、エキゾーストマニホールドと連結する上流側ディフューザと、筒状容器の下部開口部に溶接される下流側ディフューザと、を備えるマニホールドコンバータが開示されている。上流側ディフューザの下部開口部には、当該上流側ディフューザの剛性を高めて下部開口部の排気ガスの熱による変形を防止するために、内側へ折り曲げされた補強フランジが、下部開口部の全周に亘って一体に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したマニホールドコンバータには、排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びが生じる。そして、当該マニホールドコンバータが他の部材に締結されていることで、当該熱伸びが制限される結果、当該マニホールドコンバータに熱応力が加わる。この熱応力によって、例えば、周囲の部分と比較して縮径されている部分や剛性が低い部分などの脆弱な部分を有する上流側ディフューザに破損等が生じる可能性があるという問題があった。
【0005】
本開示の一局面は、排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びに起因して発生する熱応力による排気部品の破損を抑制する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、内燃機関からの排気ガスを導く排気流路を形成する排気部品であって、エキゾーストマニホールドと、触媒ケースと、中間部と、を含む。エキゾーストマニホールドは、内燃機関からの排気ガスが流入する流入口として機能する少なくとも1つの貫通孔が形成されるフランジと、少なくとも1つの貫通孔を通過した排気ガスが流入する少なくとも1つの排気管と、を有する。触媒ケースは、エキゾーストマニホールドよりも下流側に配置され、排気ガスを浄化する触媒を内部に収容する筒状部を有する。中間部は、当該排気部品における少なくとも1つの排気管よりも下流側かつ筒状部よりも上流側に位置する部分であって、排気ガスの流れ方向と垂直な当該部分の断面における断面積が下流側に向かって拡大する部分である。また、中間部は、当該中間部を形成する壁部において、曲率が変化する複数の屈折点を有する屈折部を有する。
【0007】
このような構成では、排気部品の排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びに起因して発生する熱応力によって破損しやすいと考えられる中間部に屈折部が設けられる。このため、当該熱応力が中間部に加わったとしても、屈折部が有する複数の屈折点において、熱応力が分散されやすい。したがって、排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びに起因して発生する熱応力による排気部品の破損を抑制することができる。
【0008】
本開示の一態様では、屈折部は、壁部の一部が内側に凹む凹部であってもよい。このような構成では、中間部に設けられる凹部によって、熱応力による排気部品の破損を抑制することができる。なお、中間部における相対的に断面積が小さい部分である上流側の部分に凹部が設けられる場合、中間部にかかる熱応力を緩和するのに特に有効である。
【0009】
本開示の一態様では、フランジは、板状の部材であってもよい。少なくとも1つの貫通孔は、複数の貫通孔であってもよい。複数の貫通孔に沿った並び方向をフランジの長手方向としてもよい。屈折部は、フランジの複数の貫通孔が形成される平面に沿った第1仮想平面に排気部品を投影したときに、筒状部の中心軸が、フランジの長手方向の中心を通る線であって、長手方向と直交する線である第1中心線からズレて配置される場合、中間部における第1中心線側の範囲に位置してもよい。
【0010】
このような構成では、第1仮想平面において筒状部の中心軸が第1中心線からズレて配置される。このような場合、中間部における第1中心線側の範囲に、当該熱伸びに起因して発生する熱応力が加わりやすい。したがって、上述したように筒状部が配置される構成においては熱応力が加わりやすい中間部における第1中心線側の範囲に屈折部が位置することで、中間部にかかる当該熱応力を緩和することができる。
【0011】
本開示の一態様では、フランジは、板状の部材であってもよい。少なくとも1つの貫通孔は、複数の貫通孔であってもよい。複数の貫通孔に沿った並び方向であるフランジの長手方向に対して直交する方向であって、フランジの複数の貫通孔が形成される平面に沿った方向をフランジの短手方向としてもよい。屈折部は、フランジの複数の貫通孔が形成される平面に沿った第1仮想平面に直交する面であって、短手方向に沿った面である第2仮想平面に排気部品を投影したときに、筒状部の中心軸が、フランジの短手方向の中心を通る線であって、短手方向と直交する線である第2中心線に対して傾斜して配置される場合、中間部におけるフランジ側の範囲に位置してもよい。
【0012】
このような構成では、第2仮想平面において筒状部の中心軸が第2中心線に対して傾斜して配置される。このような場合、中間部におけるフランジ側の範囲に、当該熱伸びに起因して発生する熱応力が加わりやすい。したがって、上述したように筒状部が配置される構成においては熱応力が加わりやすい中間部におけるフランジ側の範囲に屈折部が位置することで、中間部にかかる当該熱応力を緩和することができる。
【0013】
本開示の一態様では、フランジは、板状の部材であってもよい。少なくとも1つの貫通孔は、複数の貫通孔であってもよい。複数の貫通孔に沿った並び方向をフランジの長手方向としてもよい。長手方向に対して直交する方向であって、フランジの複数の貫通孔が形成される平面に沿った方向をフランジの短手方向としてもよい。屈折部は、フランジの複数の貫通孔が形成される平面に沿った第1仮想平面に排気部品を投影したときに、筒状部の中心軸が、フランジの長手方向の中心を通る線であって、長手方向と直交する線である第1中心線からズレて配置される状態、かつ、第1仮想平面に直交する面であって、短手方向に沿った面である第2仮想平面に排気部品を投影したときに、筒状部の中心軸が、フランジの短手方向の中心を通る線であって、短手方向と直交する線である第2中心線に対して傾斜して配置される状態にある場合、中間部における第1中心線側の範囲、かつ、中間部におけるフランジ側の範囲に位置してもよい。
【0014】
このような構成では、第1仮想平面において筒状部の中心軸が第1中心線からズレて配置され、かつ、第2仮想平面において筒状部の中心軸が第2中心線に対して傾斜して配置される。このような場合、中間部における第1中心線側の範囲かつフランジ側の範囲に、排気部品の排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びに起因して発生する熱応力が加わりやすい。したがって、上述したように筒状部が配置される構成においては熱応力が加わりやすい中間部における第1中心線側の範囲かつフランジ側の範囲に屈折部が位置することで、中間部にかかる当該熱応力を緩和することができる。
【0015】
本開示の一態様では、屈折部は、中間部の周方向に沿った方向に長さを有してもよい。このような構成では、屈折部が中間部の周方向に沿って延びる。このため、屈折部が排気ガスの流れ方向に沿って延びる構成と比較して、屈折部により中間部にかかる応力の分散を図りつつ、当該屈折部が設けられる部分周辺の中間部の剛性も保ちやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】背面側からみた排気部品を示す斜視図である。
【
図4】エキゾーストマニホールドの一部が透過的に示された排気部品を示す上面図である。
【
図7】
図7Aは触媒ケースの変形例を示す図である。
図7Bはエキゾーストマニホールドの変形例を示す図である。
図7Cはエキゾーストマニホールドの別の変形例を示す図である。
図7Dはエキゾーストマニホールドの更に別の変形例を示す図である。
【
図8】
図8Aは本実施形態の排気部品の第1配置状態を模式的に示す図である。
図8Bは本実施形態の排気部品の第2配置状態を模式的に示す図である。
図8Cは排気部品の配置状態の変形例を模式的に示す図である。
図8Dは排気部品の配置状態の別の変形例を模式的に示す図である。
図8Eは排気部品の配置状態の更に別の変形例を模式的に示す図である。
【
図9】
図9Aは互いに平行に配置される2つの触媒ケースを備える排気部品を模式的に示す図である。
図9Bは互いに垂直に配置される2つの触媒ケースを備える排気部品を模式的に示す図である。
【
図10】上流側コーンに2つの屈折部が互いに平行に並んで設けられる構成を示す図である。
【
図12】上流側コーンに2つの屈折部が周方向に間隔を空けて並んで設けられる構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
[1-1.全体構成]
図1~
図4に示す排気部品100は、車両の内燃機関が有する複数の気筒、例えば4つの気筒のそれぞれから排出された排気ガスを車両の外へ導くための排気流路の一部を形成する。排気部品100は、上流側フランジ1と、エキゾーストマニホールド2と、上流側コーン3と、触媒ケース4と、下流側コーン5と、管状部材6と、下流側フランジ7と、を備える。
【0018】
上流側フランジ1は、金属製の板状の部材である。上流側フランジ1は、その一部が車両の内燃機関側に固定される。
図3に示すように、上流側フランジ1には、内燃機関の各気筒からの排気ガスが流入する流入口として機能する複数の貫通孔、例えば4つの貫通孔11~14が形成されている。上流側フランジ1は、4つの貫通孔11~14に沿った並び方向に長さを有する。各貫通孔11~14には、
図1に示すように、後述する4つの排気管21~24の上流側端部が接続される。
【0019】
以下の説明では、4つの貫通孔11~14に沿った並び方向を上流側フランジ1の長手方向とし、長手方向に対して直交する方向であって、上流側フランジ1の4つの貫通孔11~14が形成される面であるフランジ平面15に沿った方向を上流側フランジ1の短手方向とする。また、フランジ平面15に沿った面を
図1に示す第1仮想平面P1とし、第1仮想平面P1に直交する面であって、短手方向に沿った面を
図2に示す第2仮想平面P2とする。なお、排気部品100を流れる排気ガスは、
図2に示す矢印「G」のように、上流側フランジ1に流れ込む。
【0020】
エキゾーストマニホールド2は、金属製の部材であり、
図1に示すように、上流側フランジ1に接続される。エキゾーストマニホールド2は、本実施形態では、4つの気筒に対応した4つの排気流路を1つの排気流路に集約させるように、内燃機関の各気筒から流出した排気ガスを合流させる排気流路を形成する。エキゾーストマニホールド2は、4つの排気管21~24と、合流部25と、を有する。各排気管21~24には、4つの貫通孔11~14を通過した排気ガスが流入する。合流部25は、4つの排気管21~24から流出した排気ガスを合流させるための排気流路を形成する排気管である。
【0021】
上流側コーン3は、エキゾーストマニホールド2の下流側、かつ、後述する触媒ケース4よりも上流側に位置し、エキゾーストマニホールド2及び触媒ケース4を接続する。具体的には、上流側コーン3は、金属製の部材であり、エキゾーストマニホールド2の合流部25の下流側端部に接続される。上流側コーン3は、筒状であり、排気流路の直径が下流側に向かうに従い大きくなるテーパ状の形状を有する。つまり、排気ガスの流れ方向と垂直な当該上流側コーン3の断面における断面積は、下流側に向かって拡大する。なお、上流側コーン3は、排気ガスの流れ方向に沿って分割された2つの部品を突き合わせて接合することで筒状に形成されてもよい。上流側コーン3は、合流部25から流出した排気ガスの排気流路を形成する。
図3~
図6に示すように、上流側コーン3は、当該上流側コーン3を形成する壁部31において、曲率が急激に変化する点である複数の屈折点321を有する屈折部32を有する。曲率が急激に変化する点とは、直線状に延びる状態、すなわち曲率がゼロの状態から一定の曲率以上を有するように急激に屈曲する点である。つまり、屈折部32は、上流側コーン3における排気ガスの流れる方向を導くために必要となる形状とは別に、上流側コーン3に設けられた屈曲した形状の部分である。換言すると、屈折部32は、主な目的が排気ガスの流れる方向を導くために上流側コーン3に設けられたものではない。
【0022】
図6に示すように、屈折部32は、壁部31の一部が内側に凹む形状を有する凹部である。なお、屈折部32は、壁部31の一部が外側に突出する形状を有する凸部であってもよい。すなわち、複数の屈折点321を有する屈折部32は、凹部又は凸部である。屈折部32は、
図5に示すように、上流側コーン3の周方向に沿って延びる凹部である。換言すると、屈折部32に含まれる複数の屈折点321は、上流側コーン3の周方向に沿った方向に長さを有する。屈折部32は、上流側コーン3の周方向の全周の長さにおける、約1/4の程度の長さを有する。屈折部32は、上流側コーン3における所定の範囲に設けられる。所定の範囲とは、上流側コーン3における上流側フランジ1に対する触媒ケース4の配置に基づき定まる範囲であって、上流側コーン3における断面係数が小さい範囲である。断面係数とは、断面を曲げる応力に対する抵抗性を表す。なお、屈折部32が設けられる所定の範囲についての詳細は後述する。
【0023】
触媒ケース4は、金属製の部材であり、
図1~
図3に示すように、上流側コーン3の下流側端部に接続される。触媒ケース4は、円筒状の形状を有する。触媒ケース4は、排気ガスを浄化するための図示しない円柱状の触媒を内部に収容する。
【0024】
下流側コーン5は、金属製の部材であり、触媒ケース4の下流側端部に接続される。下流側コーン5は、筒状であり、排気流路の直径が下流側に向かうに従い小さくなるテーパ状の形状を有する。なお、下流側コーン5は、排気ガスの流れ方向に沿って分割された2つの部品を突き合わせて接合することで筒状に形成されてもよい。下流側コーン5は、触媒によって浄化された排気ガスの排気流路を形成する。
【0025】
管状部材6は、金属製の部材であり、下流側コーン5の下流側端部に接続される。管状部材6は、円筒状の形状を有する。管状部材6は、下流側コーン5から流出した排気ガスの排気流路を形成する。
【0026】
下流側フランジ7は、金属製の板状の部材である。下流側フランジ7は、管状部材6を挿入可能な貫通孔が形成され、当該貫通孔を貫通した状態の管状部材6に固定されている。下流側フランジ7は、その一部が内燃機関側に固定される。
【0027】
[1-2.触媒ケースの配置、及び、屈折部の位置]
本実施形態では、排気部品100における上流側フランジ1に対して、触媒ケース4は次に説明するように配置される。また、触媒ケース4の配置に対して、屈折部32は、上流側コーン3における次に説明する所定の範囲に位置する。
【0028】
図1に示すように、触媒ケース4は、第1仮想平面P1に排気部品100を投影したときに、触媒ケース4の中心軸Aが、第1中心線B1からズレて配置される第1配置状態にある。第1中心線B1は、上流側フランジ1の長手方向の中心を通る線であって、長手方向と直交する線である。なお、中心軸Aが第1中心線B1からズレて配置されるという状態には、第1中心線B1に対して中心軸Aが平行に離れて配置される状態、及び、第1中心線B1に対して中心軸Aが傾斜して配置される状態を含む。本実施形態では、触媒ケース4は、第1中心線B1に対して中心軸Aが平行に離れて配置される状態にある。
【0029】
また、
図2に示すように、触媒ケース4は、第2仮想平面P2に排気部品100を投影したときに、触媒ケース4の中心軸Aが、第2中心線B2に対して傾斜して配置される第2配置状態にある。第2中心線B2は、上流側フランジ1の短手方向の中心を通る線であって、短手方向と直交する線である。本実施形態では、触媒ケース4は、第2中心線B2に対して中心軸Aが直角よりもやや大きい角度で交差し、かつ、下流側に向かうほど第1仮想平面P1から離れるように配置された状態にある。
【0030】
上述したように、触媒ケース4は第1配置状態かつ第2配置状態で配置される。そのため、
図4に示すように、上流側コーン3における所定の範囲とは、上流側コーン3における第1中心線B1側の第1範囲C1、かつ、上流側コーン3における上流側フランジ1側の第2範囲C2の重複する範囲である。屈折部32は、その範囲に位置する。
【0031】
具体的には、上流側コーン3における第1範囲C1とは、
図4に示すように、排気部品100を上流側から見た状態において、上流側コーン3における、第2中心線B2に対して平行な線で上流側コーン3を分割した場合の第1中心線B1側の範囲である。換言すると、上流側コーン3における第1範囲C1とは、
図5に示す上流側コーン3の上面視において、紙面上側から下側を上下方向及び紙面左側から右側を左右方向とした場合、上流側コーン3における、上流側コーン3を左右方向に半分に分けた場合の左側半分の範囲である。
【0032】
本実施形態では、当該排気部品100は、上流側フランジ1及び下流側フランジ7によって他の部材に締結されている。このため、
図1に示すように、触媒ケース4が第1配置状態にある場合、排気部品100の排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びが当該締結によって制限されると、
図1の矢印で示す圧縮される方向に負荷が加わることで排気部品100がたわみやすい。つまり、第1仮想平面P1において、上流側フランジ1の長手方向に対し、触媒ケース4の中心軸Aが第1中心線B1からズレて配置される場合に、
図1に示す、上流側フランジ1における中心軸Aからの長さがL1である側の反力F1が中心軸Aからの長さがL2である側の反力F2よりも小さくなる。ここでいう反力とは、排気部品100の排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びにより内燃機関に上流側フランジ1が加える力とは反対向きの内燃機関から上流側フランジ1が受ける力である。このため、上流側フランジ1における中心軸Aからの長さがL1である側において、エキゾーストマニホールド2と触媒ケース4とが接近するように負荷が加わることで、エキゾーストマニホールド2と触媒ケース4との間の部分が屈曲するように排気部品100がたわみやすい。このように排気部品100がたわむことで、上流側コーン3における第1範囲C1に、排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びが制限されることで発生する熱応力が加わりやすい。
【0033】
また、上流側コーン3における第2範囲C2とは、
図4に示すように、排気部品100を上流側から見た状態において、上流側コーン3における、第1仮想平面P1に対して平行な線で上流側コーン3を分割した場合の上流側フランジ1側の範囲である。換言すると、上流側コーン3における第2範囲C2とは、
図5に示す上流側コーン3の上面視において、紙面上側から下側を上下方向及び紙面左側から右側を左右方向とした場合、上流側コーン3における、上流側コーン3を上下方向に半分に分けた場合の上側半分の範囲である。
【0034】
上述したように、当該排気部品100は、上流側フランジ1及び下流側フランジ7によって他の部材に締結されている。このため、
図2に示すように、触媒ケース4が第2配置状態にある場合、排気部品100の排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びが当該締結によって抑制されると、
図2の矢印で示す圧縮される方向に負荷が加わることで排気部品100がたわみやすい。このように排気部品100がたわむことで、上流側コーン3における第2範囲C2に、排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びが抑制されることで発生する熱応力が加わりやすい。
【0035】
つまり、上述した第1範囲C1かつ第2範囲C2の範囲は、触媒ケース4が第1配置状態及び第2配置状態にある場合において、排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びが制限されることで発生する熱応力によって破損しやすいと考えられる上流側コーン3の脆弱な部分である。換言すると、上流側コーン3における第1範囲C1かつ第2範囲C2の範囲は、上流側フランジ1に対する触媒ケース4の配置に基づき定まる、排気部品100における排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びが制限されることで発生する熱応力が加わりやすい範囲である。すなわち、上流側コーン3における第1範囲C1かつ第2範囲C2の範囲は、上流側コーン3における断面係数が小さい範囲である。
【0036】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)本実施形態では、触媒ケース4よりも縮径された部分を有する上流側コーン3に、複数の屈折点321を有する屈折部32が設けられる。このため、排気部品100の排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びが、当該排気部品100が上流側フランジ1及び下流側フランジ7によって他の部材に締結されることで制限された結果発生した熱応力が上流側コーン3に加わったとしても、屈折部32が有する複数の屈折点321において、熱応力が分散されやすい。したがって、排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びに起因して発生する熱応力による排気部品100の上流側コーン3における破損を抑制することができる。
【0037】
(3b)本実施形態では、触媒ケース4が、排気部品100を第1仮想平面P1に投影したときに、第1仮想平面P1において中心軸Aが第1中心線B1からズレて配置される第1配置状態、かつ、排気部品100を第2仮想平面P2に投影したときに、第2仮想平面P2において中心軸Aが第2中心線B2に対して傾斜して配置される第2配置状態にある。このため、上流側コーン3の第1範囲C1かつ第2範囲C2に、排気部品100の排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びに起因して発生した熱応力が加わりやすい。したがって、上述したような触媒ケース4が配置される構成において、熱応力が加わりやすい範囲である、上流側コーン3の第1範囲C1かつ第2範囲C2の重複する範囲に屈折部32が位置することで、上流側コーン3にかかる当該熱応力を緩和することができる。
【0038】
(3c)本実施形態では、屈折部32は、壁部31の一部が内側に凹む形状を有する凹部である。上流側コーン3に設けられる凹部によって熱応力による排気部品100の破損を抑制することができる。なお、上流側コーン3における相対的に断面積が小さい部分である上流側の部分に凹部が設けられる場合、上流側コーン3にかかる熱応力を緩和するのに特に有効である。
【0039】
(3d)本実施形態では、屈折部32が触媒ケース4の周方向に沿って延びる。このため、屈折部が排気ガスの流れ方向に沿って延びる構成と比較して、屈折部32により上流側コーン3にかかる応力の分散を図りつつ、屈折部32が設けられる部分周辺の上流側コーン3の剛性も保ちやすくできる。
なお、上流側フランジ1がフランジに相当し、上流側コーン3が中間部に相当する。なお、本実施形態では、触媒ケース4全体が筒状部である。
【0040】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0041】
(4a)上記実施形態では、4つの貫通孔11~14が設けられ、当該4つの貫通孔11~14に沿った並び方向に長さを有する上流側フランジ1の構成を例示したが、上流側フランジの形状及び上流側フランジに設けられる貫通孔の数はこれに限定されるものではない。例えば、貫通孔は、5つ以上又は3つ以下であってもよい。
【0042】
(4b)上記実施形態では、4つの排気管21~24を有するエキゾーストマニホールド2と、上流側コーン3と、触媒ケース4と、を排気部品100が備える構成を例示したが、排気部品100の構成はこれに限定されるものではない。なお、図示は省略するが、下記に示す
図7A~
図7Dの排気部品100a~100dにおいても、排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びに起因して発生する熱応力によって破損しやすいと考えられる所定の範囲に屈折部32が設けられる。
【0043】
例えば、
図7Aに示す排気部品100aのように、上流側フランジ1aと、エキゾーストマニホールド2aと、触媒ケース4aと、を備える構成であってもよい。上流側フランジ1aには、3つの貫通孔が設けられる。エキゾーストマニホールド2aは、上流側フランジ1aに設けられる3つの貫通孔に接続する3つの排気管を有し、3つの排気管から流れる排気ガスを合流させる排気流路を形成する。触媒ケース4aは、エキゾーストマニホールド2aと接続する上流側端部が上流側に向かって縮径するような形状を有する。つまり、上流側コーン3を有しない構成において、触媒ケース4aが本実施形態の上流側コーン3に相当する形状の部分を有していてもよい。
【0044】
また、例えば、
図7Bに示す排気部品100bのように、上流側フランジ1bと、エキゾーストマニホールド2bと、上流側コーン3と、触媒ケース4と、を備える構成であってもよい。上流側フランジ1bには、内燃機関の複数の気筒からの排気ガスを集約可能な1つの貫通孔が設けられる。エキゾーストマニホールド2bは、上流側フランジ1bに設けられる1つの貫通孔に接続する1つの排気管により形成される。なお、エキゾーストマニホールド2bは、排気ガスの流れ方向に沿って分割された2つの部品を突き合わせて接合するように形成されていてもよい。すなわち、エキゾーストマニホールド2bは、排気ガスの流れ方向に垂直な断面がU字状の2つの部品を突き合わせて筒状に形成されていてもよい。
【0045】
また、例えば、
図7Cに示す排気部品100cのように、上流側フランジ1bと、エキゾーストマニホールド2cと、触媒ケース4と、を備える構成であってもよい。エキゾーストマニホールド2cは、上流側フランジ1bに設けられる1つの貫通孔に接続する1つの排気管であって、触媒ケース4と接続する下流側端部が下流側に向かって拡径するような形状を有する。つまり、上流側コーン3を有しない構成において、エキゾーストマニホールド2cが本実施形態の上流側コーン3に相当する形状の部分を有していてもよい。なお、エキゾーストマニホールド2cは、排気ガスの流れ方向に沿って分割された2つの部品を突き合わせて形成されるモナカ構造としてもよい。
【0046】
また、
図7Dに示す排気部品100dのように、上流側フランジ1bに設けられる1つの貫通孔に接続する1つの排気管であって、触媒ケース4と接続する下流側端部が下流側に向かって拡径するような形状を有するエキゾーストマニホールド2dは、排気ガスの流れ方向に沿って分割された2つの部品の割方向の向きが、
図7Cのエキゾーストマニホールド2cとは異なるように形成されてもよい。
【0047】
(4c)上記実施形態では、触媒ケース4と上流側フランジ1とが、
図8Aの模式図で示す第1配置状態、かつ、
図8Bの模式図で示す第2配置状態で、車両に搭載される排気部品100の車載状態を示したが、排気部品の車載状態はこれに限定されるものではない。なお、図示は省略するが、下記に示す
図8C~
図8Eの排気部品100e~100gにおいても、排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びに起因して発生する熱応力によって破損しやすいと考えられる所定の範囲に屈折部32が設けられる。
【0048】
例えば、触媒ケース4が、第1配置状態及び第2配置状態のいずれか一方の配置状態にあってもよい。
また、例えば、
図8Cの模式図で示す排気部品100eの車載状態のように、触媒ケース4が、第1仮想平面P1において触媒ケース4の中心軸Aが第1中心線B1からズレて配置されない配置状態、かつ、
図8Bの模式図で示す第2配置状態にあってもよい。換言すると、触媒ケース4が、第1仮想平面P1において触媒ケース4の中心軸Aが第1中心線B1と一致する配置状態、かつ、
図8Bの模式図で示す第2配置状態にあってもよい。
【0049】
また、例えば、
図8Dの模式図で示す排気部品100fの車載状態のように、触媒ケース4が、第1仮想平面P1において触媒ケース4の中心軸Aが上流側フランジ1の長手方向の中心を通り、かつ、当該中心軸Aが第1中心線B1に対して傾斜して配置される配置状態にあってもよい。
【0050】
また、
図8Eの模式図で示す排気部品100gの車載状態のように、触媒ケース4の下流側の排気流路、より具体的には下流側コーン5の排気ガスが流出する側の開口部が、内燃機関側を向かずに配置される配置状態にあってもよい。
【0051】
(4d)上記実施形態では、触媒ケース4を1つ備える排気部品100の構成を例示したが、排気部品100の構成はこれに限定されるものではない。例えば、
図9Aに示す排気部品100hのように、互いに平行に配置される2つの触媒ケース4b、4cを備えてもよい。また、例えば、
図9Bに示す排気部品100iのように、互いに垂直に配置される2つの触媒ケース4b、4cを備えてもよい。なお、図示は省略するが、
図9A及び
図9Bの排気部品100h,100iにおいても、上流側フランジ1と1つめの触媒ケース4bとの間の部分であって、排気ガスの流れ方向に沿った熱伸びに起因して発生する熱応力によって破損しやすいと考えられる所定の範囲に屈折部32が設けられる。
【0052】
(4e)上記実施形態では、上流側コーン3に1つの屈折部32が上流側コーン3aの周方向に沿って延びるように設けられる構成を例示したが、上流側コーンに設けられる屈折部の構成はこれに限定されるものではない。
【0053】
例えば、
図10及び
図11に示すように、上流側コーン3aに、排気ガスの流れ方向に沿って、2つの屈折部32a,32bが間隔を空けて設けられてもよい。2つの屈折部32a,32bは、どちらも、上流側コーン3aの周方向に沿った方向に長さを有する。
また、例えば、
図12に示すように、上流側コーン3bに、上流側コーン3bの周方向に沿って2つの屈折部32c、32dが間隔を空けて設けられていてもよい。
【0054】
(4f)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0055】
1,1a,1b…上流側フランジ、2,2a~2d…エキゾーストマニホールド、3,3a,3b…上流側コーン、4,4a~4c…触媒ケース、5…下流側コーン、6…管状部材、7…下流側フランジ、11~14…貫通孔、15…フランジ平面、21~24…排気管、25…合流部、31…壁部、32,32a~32c…屈折部、100,100a~100i…排気部品、屈折点321、A…中心軸、B1…第1中心線、B2…第2中心線、C1…第1範囲、C2…第2範囲、F1,F2…反力、P1…第1仮想平面、P2…第2仮想平面。