(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】レンチウイルスベクターのバイオ生産法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/867 20060101AFI20240409BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240409BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C12N15/867 Z ZNA
C12N5/10
C12N15/63 Z
(21)【出願番号】P 2021181556
(22)【出願日】2021-11-08
(62)【分割の表示】P 2017559296の分割
【原出願日】2016-05-12
【審査請求日】2021-12-07
(32)【優先日】2015-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512010890
【氏名又は名称】シーエスエル ベーリング ジーン セラピー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】リー チー-リン
(72)【発明者】
【氏名】バートレット ジェフリー エス.
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特許第6975643(JP,B2)
【文献】特開2013-208107(JP,A)
【文献】Database GenBank [online], Accession No. JF714900, 2012-03-30 uploaded, [retrieved on 2020-05-28], <https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/JF714900.1/>, Cloning vector pCAG.I-SceI, complete sequence
【文献】Database GenBank [online], Accession No. AF334827, 2002-11-19 uploaded, [retrieved on 2020-05-28], <https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AF334827.1/>, Cloning vector pTurbo-Cre, complete sequence
【文献】BLOOD, 2009, Vol.113, No.21, p.5104-5110
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/867
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 15/63
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも
95%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するベクターカセットを含む、組換えプラスミドであって、該ベクターカセットが、レンチウイルスベクター骨格をコードし、該組換えプラスミドが、4つの制限エンドヌクレアーゼ部位を含むマルチクローニングサイトを含み、かつ、該4つの制限エンドヌクレアーゼ部位が、BstBI、MluI、NotI、およびClaI制限エンドヌクレアーゼ部位である、組換えプラスミド。
【請求項2】
前記ベクターカセットが、SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも97%の同一性を有するヌクレオチド配列を有する、請求項1に記載の組換えプラスミド。
【請求項3】
前記組換えプラスミドが、SEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項
1または2に記載の組換えプラスミド。
【請求項4】
前記ベクターカセットが、少なくとも2つの制限エンドヌクレアーゼ部位と隣接しており、該少なくとも2つの制限エンドヌクレアーゼ部位が、sfiIおよびBsu36Iからなる群より独立して選択される、請求項
1または2に記載の組換えプラスミド。
【請求項5】
前記ベクターカセットの上流にテトラサイクリン抑制性プロモーターを含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組換えプラスミド。
【請求項6】
前記組換えプラスミドが、(a)パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列と;(b)セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列と;(c)Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列と;(d)自己不活性化末端反復配列をコードするヌクレオチド配列とを含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組換えプラスミド。
【請求項7】
前記パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 3の配列を含み、
前記セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 4の配列を含み、
前記Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 5の配列を含み、または
前記自己不活性化末端反復配列をコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 6の配列を含む、
請求項
6に記載の組換えプラスミド。
【請求項8】
前記マルチクローニングサイトをコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 7の配列を含む、請求項
6に記載の組み換えプラスミド。
【請求項9】
前記組み換えプラスミドが、内部プロモーターを含まない、請求項
1または2に記載の組み換えプラスミド。
【請求項10】
SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を有するベクターカセットを含む、組換えプラスミドであって、該ベクターカセットが、レンチウイルスベクター骨格をコードし、かつ、該組換えプラスミドが、SEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、組換えプラスミド。
【請求項11】
前記組換えプラスミドが、(a)パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列と;(b)セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列と;(c)Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列と;(d)自己不活性化末端反復配列をコードするヌクレオチド配列とを含む、請求項
10に記載の組換えプラスミド。
【請求項12】
SEQ ID NO: 2に示した配列とはヌクレオチド100個以下だけ異なるヌクレオチド配列を有するベクターカセットを含む、組換えプラスミドであって、該組換えプラスミドが、SEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、組換えプラスミド。
【請求項13】
マルチクローニングサイトにクローニングされた導入遺伝子とともに請求項1~
12のいずれか一項に記載の組み換えプラスミドを含む、レンチウイルスベクター。
【請求項14】
請求項
13に記載のレンチウイルスベクターのベクターカセット配列と、抗生物質耐性カセットと、を含む、コンカテマーDNA。
【請求項15】
前記コンカテマーDNAが、一方向性コンカテマーである、請求項
14に記載のコンカテマーDNA。
【請求項16】
請求項
14または
15に記載のコンカテマーDNAがトランスフェクトされたパッケージング細胞株であって、該パッケージング細胞株がGPR、GPRG、GPRT、およびGPRT-Gパッケージング細胞株からなる群から選択される、パッケージング細胞株。
【請求項17】
請求項
16に記載のトランスフェクトされたパッケージング細胞株から選択される安定した産生細胞株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年5月13日に出願された米国仮特許出願第62/161,133号の出願日の恩典を主張するものであり、さらに2015年5月13日に出願された米国仮特許出願第62/161,152号の出願日の恩典も主張するものであり、これらの開示内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示の分野
本開示は、一般に、分子生物学およびウイルス学の分野に関する。特に、本開示は、レンチウイルスベクターおよびレンチウイルストランスファープラスミドのバイオ生産に関する。
【0003】
産業上の利用可能性の記述
本開示は、遺伝子治療およびバイオマニュファクチャリングの分野において産業上の利用可能性を有する。
【背景技術】
【0004】
本開示の背景
HIV-1は、世界中で3000万人ほどが感染している後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因病原体である。HIVは免疫系を機能不全にさせ、日和見感染症によって死亡する確率を高める。HIV感染症は、世界保健機関(World Health Organization)によりパンデミックと指定されたことからも明らかなように、世界規模での主要な健康上の問題である。HIVに感染した、特に発展途上国の、多くの人々は最終的にAIDSを発症し、毎年100万人を上回る人々が命を奪われている。
【0005】
HIV-1は、レトロウイルス科のウイルスに属し、ゲノムが2本の一本鎖RNA分子(ssRNA)からなる、エンベロープを持ったウイルスである。HIV-1の一次標的は、CD4+ T細胞のようなCD4+発現細胞である。HIV-1ウイルスの糖タンパク質は、標的細胞のCD4分子と相互作用し、かつ標的細胞の表面上のケモカイン共受容体(co-receptor)CCRSまたはCXCR4と相互作用する。標的細胞への融合および侵入後、ウイルスゲノムを含むヌクレオキャプシドが解離して、ssRNAを含むウイルスの内容物を細胞質に放出する。HIV-1の逆転写(RT)酵素はssRNAゲノムからウイルス二本鎖DNA(dsDNA)を合成する。二本鎖HIV-1 DNA分子の合成後、HIV-1 DNAは宿主ゲノムに組み込まれる。
【0006】
組み込まれたHIV-1 DNAは、同一の5'および3'末端反復配列(LTR)と隣接しており、該配列からHIV-1は組み込まれたHIV-1ゲノムの転写を開始することができる。ウイルスDNAの転写には、NF-κBのような転写因子が必要であり、こうした因子は活性化されたT細胞において上方制御されている。結果として、ウイルスの転写は、感染中のような、T細胞の活性化後のT細胞において最も活発である。組み込まれたHIV-1ゲノムの転写から生じるウイルスRNAは、続いて翻訳されてウイルス粒子にパッケージングされ、その後細胞を出て感染性ウイルスになる。
【0007】
HIV-1感染症の治療には、抗レトロウイルス併用療法(cART)が含まれる。cARTは、ヌクレオシドアナログ逆転写酵素阻害物質、プロテアーゼ阻害物質、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害物質、インテグラーゼ、および融合阻害物質の組み合わせを含み、HIVの進行を遅らせる。これは、ひいては、該治療を用いることができる世界の諸地域においてHIV/AIDSの罹患率と死亡率を劇的に減少させる。しかしながら、cARTはHIV/AIDSのあらゆる症状を治癒したり、完全に取り除いたりするわけではない。また、cART療法は、薬物耐性突然変異によって危険にさらされることがあり、重篤でかつ蓄積性であるようにみえる様々な副作用を有する。さらに、cART療法の中断は、ほとんど例外なく、検出可能なウイルスの複製の再発とAIDSへの進行につながり、あらゆる原因による死亡および深刻な非AIDS事象の発生率の上昇と関連することが示されている。これらの理由から、ならびにcARTの高いコストおよび厳密な服薬順守の必要性のために、こうした治療は多くの患者にとって比較的効果が薄い可能性がある。
【0008】
HIVベースのレンチウイルスベクターは、研究および遺伝子導入の臨床的応用のために選択されるレトロウイルスベクター系に急速になりつつある。静止幹細胞と非分裂性最終分化細胞の両方に形質導入するレンチウイルスベクターの能力の向上は、広範囲の治療用遺伝子送達ベクターの開発、ならびに短鎖ヘアピンRNA(shRNA)遺伝子ノックダウンライブラリーおよび最終分化細胞における多能性の誘導のためのベクターなどの、有望な研究ツールの開発につながった。初期のガンマレトロウイルス臨床遺伝子治療ベクターは、X連鎖重症複合免疫不全症(SCID-X1)の患者の免疫機能を回復させたが、それらは癌原遺伝子のトランス活性化を介して増殖性疾患を引き起こすことがその後判明した。より新しいレンチウイルスベクターの設計はその危険性を大いに減少させる可能性があり、それらは予測された安全性の最終確認のための臨床試験待ちである。この分野は依然として流動的であり、その臨床試験の結果は予測不可能である。
【0009】
臨床治験を支援するスケールでSIN-レンチウイルスベクターを生産することは、この分野における重要な課題である。ガンマレトロウイルスベクターは一過性のトランスフェクションまたは安定した産生細胞株の作製のいずれかによって産生され得るが、レンチウイルスは複数の細胞傷害性アクセサリー遺伝子の発現を必要とし、このことは産生細胞の作製をより複雑にする(全体として参照により本明細書に組み入れられる、Greene et al., Transduction of Human CD34+ Repopulating Cells with a Self - Inactivating Lentiviral Vector for SCID-X1 Produced at Clinical Scale by a Stable Cell Line, HGTM, 23, 297-308 (October 2012)(非特許文献1))。一過性トランスフェクションは、むしろ、LVのパイロット生産のための最近の技術であり、安全性、コストおよび再現性の観点から超大規模適用には実用的でない。実際、この技術は高価であり、標準化およびスケールアップが困難であり、バッチ間のバラツキおよび低い逆転写酵素忠実度に悩まされる(全体として参照により本明細書に組み入れられる、Stornaiuolo et al., RD2-MolPack-Chim3, a Packaging Cell Line for Stable Production of Lentiviral Vectors for Anti-HIV Gene Therapy, HGTM, 24:228-240 (August 2013)(非特許文献2))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Greene et al., Transduction of Human CD34+ Repopulating Cells with a Self - Inactivating Lentiviral Vector for SCID-X1 Produced at Clinical Scale by a Stable Cell Line, HGTM, 23, 297-308 (October 2012)
【文献】Stornaiuolo et al., RD2-MolPack-Chim3, a Packaging Cell Line for Stable Production of Lentiviral Vectors for Anti-HIV Gene Therapy, HGTM, 24:228-240 (August 2013)
【発明の概要】
【0011】
本開示の概要
本開示の一局面には、SEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むプラスミドがある。いくつかの態様では、該ヌクレオチド配列はSEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの態様では、レンチウイルスベクターは該プラスミドに由来する。いくつかの態様では、派生したこのレンチウイルスベクターは、HIV-1共受容体の下方制御のための短鎖ヘアピンRNAおよび/またはHIV-1融合阻害物質をコードする1つまたは複数の追加の配列を含む。いくつかの態様では、それに由来するレンチウイルスベクターは、LVsh5/C46 (本明細書で定義される)である。
【0012】
本開示の別の局面には、SEQ ID NO: 1のヌクレオチド配列を含むプラスミドがある。いくつかの態様では、レンチウイルスベクターは該プラスミドに由来する。いくつかの態様では、派生したこのレンチウイルスベクターは、HIV-1共受容体(例えば、CCR5)の下方制御のための短鎖ヘアピンRNAおよび/またはHIV-1融合阻害物質(例えば、C46)をコードする1つまたは複数の追加の配列を含む。CCR5およびC46に関する情報は、それらのヌクレオチド配列を含めて、米国特許出願公開第US2012/0201794号にさらに記載されており、その開示内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0013】
本開示の別の局面には、SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むプラスミドがある。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも97%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 2のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、レンチウイルスベクターは該プラスミドに由来する。いくつかの態様では、派生したこのレンチウイルスベクターは、HIV-1共受容体(例えば、CCR5)の下方制御のための短鎖ヘアピンRNAおよび/またはHIV-1融合阻害物質(例えば、C46)をコードする1つまたは複数の追加の配列を含む。
【0014】
本開示の別の局面には、SEQ ID NO: 1に示された配列(例えば、非連続または連続)とはヌクレオチド500個以下だけ異なる配列を有するプラスミドがある。本開示の別の局面には、SEQ ID NO: 1に示された配列(例えば、非連続または連続)とはヌクレオチド250個以下だけ異なる配列を有するプラスミドがある。本開示の別の局面には、SEQ ID NO: 1に示された配列(例えば、非連続または連続)とはヌクレオチド150個以下だけ異なる配列を有するプラスミドがある。本開示の別の局面には、SEQ ID NO: 1に示された配列(例えば、非連続または連続)とはヌクレオチド100個以下だけ異なる配列を有するプラスミドがある。いくつかの態様では、該配列はSEQ ID NO: 1に示された配列(例えば、非連続または連続)とはヌクレオチド50個以下だけ異なる。
【0015】
本開示の別の局面には、ヌクレオチド約6500個~ヌクレオチド約6750個を含むプラスミドがあり、該プラスミドはSEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列またはその断片を含む。いくつかの態様では、該プラスミドはヌクレオチド約6600個~ヌクレオチド約6700個を含む。いくつかの態様では、該プラスミドはヌクレオチド約6611個を含む。
【0016】
本開示の別の局面には、
図11にpUC57-TL20cとして示されるプラスミドがある。いくつかの態様では、レンチウイルスベクターは該プラスミドに由来する。いくつかの態様では、派生したこのレンチウイルスベクターは、HIV-1共受容体の下方制御のための短鎖ヘアピンRNAおよび/またはHIV-1融合阻害物質をコードする1つまたは複数の追加の配列を含む。
【0017】
本開示の別の局面には、BstBI、MluI、NotI、およびClaI制限エンドヌクレアーゼ部位から本質的になるマルチクローニングサイトを含むプラスミドがある。いくつかの態様では、該プラスミドは、パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列と;セントラルポリプリントラクト(central polypurine tract)をコードするヌクレオチド配列と;Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列と;自己不活性化末端反復配列をコードするヌクレオチド配列とをさらに含む。他の態様では、該プラスミドは、BstBI、MluI、NotI、およびClaI制限エンドヌクレアーゼ部位からなるマルチクローニングサイトを含む。いくつかの態様では、レンチウイルスベクターは該プラスミドに由来する。いくつかの態様では、派生したこのレンチウイルスベクターは、HIV-1共受容体の下方制御のための短鎖ヘアピンRNAおよび/またはHIV-1融合阻害物質をコードする1つまたは複数の追加の配列を含む。
【0018】
本開示の別の局面には、(a)パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列と;(b)セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列と;(c)Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列と;(d)自己不活性化末端反復配列をコードするヌクレオチド配列と;(e)酵素BstBI、MluI、NotI、およびClaIに対する制限部位を有するマルチクローニングサイトをコードするヌクレオチド配列とを含むプラスミドがある。いくつかの態様では、該パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 3の配列を含む。いくつかの態様では、該セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 4の配列を含む。いくつかの態様では、該Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 5の配列を含む。いくつかの態様では、該自己不活性化末端反復配列をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 6の配列を含む。いくつかの態様では、該マルチクローニングサイトをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 7の配列を含む。
【0019】
本開示の別の局面には、(a)プラスミドのヌクレオチド配列のヌクレオチド約762からヌクレオチド約1104までに存在するパッケージング配列と;(b)プラスミドヌクレオチド配列のヌクレオチド約1121からヌクレオチド約1597までに存在するセントラルポリプリントラクトと;(c)プラスミドヌクレオチド配列のヌクレオチド約1598からヌクレオチド約2366までに存在するRev応答エレメントと;(d)プラスミドヌクレオチド配列のヌクレオチド約409からヌクレオチド約589までに存在する自己不活性化末端反復配列と;(e)プラスミドヌクレオチド配列のヌクレオチド約2376からヌクレオチド約2400までに存在するマルチクローニングサイトとを含むプラスミドがある。いくつかの態様では、該プラスミドヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの態様では、該パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 3の配列を含む。いくつかの態様では、該セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 4の配列を含む。いくつかの態様では、該Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 5の配列を含む。いくつかの態様では、該自己不活性化末端反復配列をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 6の配列を含む。いくつかの態様では、該マルチクローニングサイトをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 7の配列を含む。
【0020】
本開示の別の局面には、BstBI、MluI、NotI、およびClaI制限エンドヌクレアーゼ部位を含むマルチクローニングサイトを含むプラスミドがあり、該プラスミドは、SEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、レンチウイルスベクターは該プラスミドに由来する。いくつかの態様では、派生したこのレンチウイルスベクターは、HIV-1共受容体の下方制御のための短鎖ヘアピンRNAおよび/またはHIV-1融合阻害物質をコードする1つまたは複数の追加の配列を含む。
【0021】
本開示の別の局面には、SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するベクター骨格をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドがあり、該ベクター骨格は少なくとも2つの追加の制限エンドヌクレアーゼ部位と隣接しており、該少なくとも2つの追加の制限エンドヌクレアーゼ部位はsfiIおよびBsu36Iからなる群より独立して選択される。いくつかの態様では、レンチウイルスベクターは該プラスミドに由来する。いくつかの態様では、派生したこのレンチウイルスベクターは、HIV-1共受容体の下方制御のための短鎖ヘアピンRNAおよび/またはHIV-1融合阻害物質をコードする1つまたは複数の追加の配列を含む。
【0022】
本開示の別の局面には、SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するベクター骨格をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドがあり、該ベクター骨格はBstBI、MluI、NotI、およびClaI制限エンドヌクレアーゼ部位を有するマルチクローニングサイトを含み、該プラスミドは該ベクター骨格の上流にテトラサイクリン抑制性プロモーターをさらに含む。本開示のさらに別の局面には、SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも85%の同一性を有するベクター骨格をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドがあり、該ベクター骨格はBstBI、MluI、NotI、およびClaI制限エンドヌクレアーゼ部位を有するマルチクローニングサイトからなる。
【0023】
本開示の別の局面には、本明細書に記載されるプラスミドまたはそれに由来するレンチウイルスベクターを含む細胞がある。いくつかの態様では、該細胞は、造血前駆細胞/幹細胞、単球、マクロファージ、末梢血単核細胞、CD4+ Tリンパ球、CD8+ Tリンパ球、または樹状細胞である。本発明の別の局面には、第1の容器内の造血前駆細胞/幹細胞と、
図11のプラスミドまたはそれに由来するレンチウイルスベクターとを含むキットがある。
【0024】
本開示の別の局面には、(a)本明細書に記載されるプラスミドに、例えばpUC57-TL20cに1つまたは複数の遺伝子をクローニングすることによって、レンチウイルスベクターを合成する段階;(b)合成されたレンチウイルスベクターからDNA断片を生成する段階;(c)合成されたレンチウイルスベクターの生成されたDNA断片から、および抗生物質耐性カセットプラスミド由来のDNA断片から、コンカテマーアレイを形成する段階;(d)GPR、GPRG、GPRT、GPRGT、もしくはGPRT-Gパッケージング細胞株またはそれらの派生物に、形成されたコンカテマーアレイをトランスフェクトする段階;ならびに(e)1つまたは複数の安定した産生細胞株クローンを単離する段階を含む、安定した産生細胞株を作製する方法がある。いくつかの態様では、前記方法は、該安定した産生細胞株を、レンチウイルスベクターを産生するように誘導する段階をさらに含む。
【0025】
本開示の別の局面には、(a)HIV-1共受容体の下方制御のための短鎖ヘアピンRNAをコードしかつHIV-1融合阻害物質をコードするレンチウイルスベクターを合成する段階であって、該レンチウイルスベクターは、本明細書に記載されるプラスミドに、該短鎖ヘアピンRNAと該融合阻害物質の両方をコードするcDNAをクローニングすることによって合成される、段階;(b)合成されたレンチウイルスベクターからDNA断片を生成する段階;(c)合成されたレンチウイルスベクター由来の生成されたDNA断片から、および抗生物質耐性カセットプラスミド由来のDNA断片から、コンカテマーアレイを形成する段階;(d)GPR、GPRG、GPRT、GPRGT、もしくはGPRT-Gパッケージング細胞株またはそれらの派生物に、形成されたコンカテマーアレイをトランスフェクトする段階;ならびに(e)1つまたは複数の安定した産生細胞株クローンを単離する段階を含む、安定した産生細胞株を作製する方法がある。いくつかの態様では、前記方法は、該安定した産生細胞株を、HIV-1共受容体の下方制御のための短鎖ヘアピンRNAをコードしかつHIV-1融合阻害物質をコードするレンチウイルスベクター(LVsh5/C46)を産生するように誘導する段階をさらに含む。
【0026】
本開示の別の局面には、安定した産生細胞株からベクター上清を回収する方法があり、この方法では、該ベクター上清を約48時間毎に回収する。本開示の別の局面には、安定した産生細胞株からベクター上清を回収する方法があり、この方法では、該ベクター上清を40~56時間毎に回収する。
【0027】
本開示の別の局面には、LVsh5/C46レンチウイルスベクターを含むベクター上清を回収する方法があり、この方法では、該ベクター上清を約48時間毎に回収する。
【0028】
本開示の別の局面には、LVsh5/C46を産生させるのに適している安定した産生細胞株がある。いくつかの態様では、安定した産生細胞株は、GPRGパッケージング細胞株に基づいている。いくつかの態様では、安定した産生細胞株は、GPRTパッケージング細胞株に基づいている。いくつかの態様では、安定した産生細胞株は、GPRパッケージング細胞株に基づいている。いくつかの態様では、安定した産生細胞株は、GPRT-Gパッケージング細胞株に基づいている。
【0029】
本開示の別の局面は、SEQ ID NO: 8の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する自己不活性化レンチウイルスベクターを産生させるのに適している安定した産生細胞株がある。いくつかの態様では、安定した産生細胞株は、GPRGパッケージング細胞株に基づいている。いくつかの態様では、安定した産生細胞株は、GPRTパッケージング細胞株に基づいている。いくつかの態様では、安定した産生細胞株は、GPRパッケージング細胞株に基づいている。いくつかの態様では、安定した産生細胞株は、GPRT-Gパッケージング細胞株に基づいている。
【0030】
本開示の別の局面には、第1のプラスミドにおよび第2のプラスミドに由来するDNA断片を含むコンカテマーアレイがあり;第1のプラスミドはpUC57-TL20cに由来し;第2のプラスミドはブレオマイシン抗生物質耐性カセットを含み;第1のプラスミド由来のDNA断片対第2のプラスミド由来のDNA断片の比は、約50:1~約1:50の範囲である。いくつかの態様では、第1のプラスミド由来のDNA断片対第2のプラスミド由来のDNA断片の比は、約25:1~約1:25の範囲である。いくつかの態様では、第1のプラスミド由来のDNA断片対第2のプラスミド由来のDNA断片の比は、約15:1~約1:15の範囲である。
【0031】
本開示の別の局面には、安定した産生細胞株があり、該安定した産生細胞株は、GPR、GPRG、GPRT、GPRT-G、およびそれらの派生物からなる群より選択されるパッケージング細胞株にコンカテマーアレイをトランスフェクトすることによって作製され、該コンカテマーアレイは、第1のプラスミドにおよび第2のプラスミドに由来するDNA断片を含み;第1のプラスミドはpUC57-TL20cに由来し;第2のプラスミドはブレオマイシン抗生物質耐性カセットを含み;第1のプラスミド由来のDNA断片対第2のプラスミド由来のDNA断片の比は約25:1~約1:25の範囲である。いくつかの態様では、安定した産生細胞株はLVsh5/C46を産生する。いくつかの態様では、LVsh5/C46は約48時間毎に回収することが可能である。
【0032】
本開示の別の局面には、SEQ ID NO: 7に示されるヌクレオチド配列を含むマルチクローニングサイトを含む、
図11のプラスミドマップを有する単離されたベクターがある。
【0033】
本開示の別の局面には、(1)本明細書に記載されるプラスミドと、(2)ブレオマイシン耐性(ble)カセットとを含むキットがある。いくつかの態様では、該キットは、例えば本明細書に記載の手順に従って、レンチウイルスベクターおよび/またはコンカテマーアレイを調製するための説明書をさらに含む。
【0034】
本開示の別の局面には、(a)本明細書に記載されるレンチウイルストランスファーベクタープラスミドと、(b)パッケージング細胞とを含むキットがある。いくつかの態様では、パッケージング細胞は、GPR、GPRG、GPRT、GPRTG、およびそれらの派生物からなる群より選択される。いくつかの態様では、該キットは、ブレオマイシン耐性(ble)カセットをさらに含む。いくつかの態様では、該キットは、例えば本明細書に記載の手順に従って、レンチウイルスベクターおよび/またはコンカテマーアレイを調製するための説明書をさらに含む。
【0035】
本開示の別の局面には、本明細書に記載されるプラスミドに由来するレンチウイルスベクターがある。いくつかの態様では、レンチウイルスベクターは、少なくとも1つの追加のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該少なくとも1つの追加のヌクレオチド配列は、HIV-1共受容体の下方制御のための短鎖ヘアピンRNAをコードするヌクレオチド配列およびHIV-1融合阻害物質をコードするヌクレオチド配列からなる群より選択される。いくつかの態様では、レンチウイルスベクターはLVsh5/C46である。いくつかの態様では、レンチウイルスベクターは、SEQ ID NO: 8の配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。
【0036】
本開示の別の局面には、上記のレンチウイルスベクターと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物がある。いくつかの態様では、薬学的に許容される担体は、医薬品、例えばヒトへの投与に適した医薬品を製剤化するのに許容される溶媒、緩衝剤、溶液、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤と抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的担体を用いて化合物を製剤化する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Science, (第17版, Mack Publishing Company, Easton, Pa. 1985);およびGoodman & Gillman's: The Pharmacological Basis of Therapeutics (第11版, McGraw-Hill Professional, 2005)に記載され;これらの各々の開示内容は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
[本発明1001]
SEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、組換えプラスミド。
[本発明1002]
前記ヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも95%の同一性を有する、本発明1001の組換えプラスミド。
[本発明1003]
SEQ ID NO: 1のヌクレオチド配列を含む、組換えプラスミド。
[本発明1004]
SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、組換えプラスミド。
[本発明1005]
SEQ ID NO: 1に示された配列とはヌクレオチド100個以下だけ異なる配列を有する、組換えプラスミド。
[本発明1006]
前記配列が、SEQ ID NO: 1に示された配列とはヌクレオチド50個以下だけ異なる、本発明1005の組換えプラスミド。
[本発明1007]
ヌクレオチド約6500個~ヌクレオチド約6750個を含み、かつSEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、組換えプラスミド。
[本発明1008]
ヌクレオチド約6600個~ヌクレオチド約6700個を含む、本発明1007の組換えプラスミド。
[本発明1009]
ヌクレオチド約6611個を含む、本発明1007の組換えプラスミド。
[本発明1010]
図11にpUC57-TL20cとして示された組換えプラスミド。
[本発明1011]
BstBI、MluI、NotI、およびClaI制限エンドヌクレアーゼ部位から本質的になるマルチクローニングサイトを含む、組換えプラスミド。
[本発明1012]
パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列と;セントラルポリプリントラクトをコードするヌクレオチド配列と;Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列と;自己不活性化末端反復配列をコードするヌクレオチド配列とをさらに含む、本発明1011の組換えプラスミド。
[本発明1013]
(a)パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列と;(b)セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列と;(c)Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列と;(d)自己不活性化末端反復配列をコードするヌクレオチド配列と;(e)酵素BstBI、MluI、NotI、およびClaIに対する制限部位を有するマルチクローニングサイトをコードするヌクレオチド配列とを含む、組換えプラスミド。
[本発明1014]
前記パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 3の配列を含む、本発明1013の組換えプラスミド。
[本発明1015]
前記セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 4の配列を含む、本発明1013の組換えプラスミド。
[本発明1016]
前記Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 5の配列を含む、本発明1013の組換えプラスミド。
[本発明1017]
前記自己不活性化末端反復配列をコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 6の配列を含む、本発明1013の組換えプラスミド。
[本発明1018]
前記マルチクローニングサイトをコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 7の配列を含む、本発明1013の組換えプラスミド。
[本発明1019]
(a)プラスミドのヌクレオチド配列のヌクレオチド約762からヌクレオチド約1104までに存在するパッケージング配列と;(b)プラスミドヌクレオチド配列のヌクレオチド約1121からヌクレオチド約1597までに存在するセントラルポリプリントラクトと;(c)プラスミドヌクレオチド配列のヌクレオチド約1598からヌクレオチド約2366までに存在するRev応答エレメントと;(d)プラスミドヌクレオチド配列のヌクレオチド約409からヌクレオチド約589までに存在する自己不活性化末端反復配列と;(e)プラスミドヌクレオチド配列のヌクレオチド約2376からヌクレオチド約2400までに存在するマルチクローニングサイトとを含む、組換えプラスミド。
[本発明1020]
前記プラスミドヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、本発明1019の組換えプラスミド。
[本発明1021]
前記パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 3の配列を含む、本発明1019の組換えプラスミド。
[本発明1022]
前記セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 4の配列を含む、本発明1019の組換えプラスミド。
[本発明1023]
前記Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 5の配列を含む、本発明1019の組換えプラスミド。
[本発明1024]
前記自己不活性化末端反復配列をコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 6の配列を含む、本発明1019の組換えプラスミド。
[本発明1025]
前記マルチクローニングサイトをコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO: 7の配列を含む、本発明1019の組換えプラスミド。
[本発明1026]
BstBI、MluI、NotI、およびClaI制限エンドヌクレアーゼ部位を含むマルチクローニングサイトを含み、かつSEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、組換えプラスミド。
[本発明1027]
SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するベクターカセットをコードするヌクレオチド配列を含み、かつ該ベクターカセットが、少なくとも2つの制限エンドヌクレアーゼ部位と隣接しており、該少なくとも2つの制限エンドヌクレアーゼ部位が、sfiIおよびBsu36Iからなる群より独立して選択される、組換えプラスミド。
[本発明1028]
SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するベクターカセットをコードするヌクレオチド配列を含み、該ベクターカセットが、BstBI、MluI、NotI、およびClaI制限エンドヌクレアーゼ部位を有するマルチクローニングサイトを含む、組換えプラスミドであって、該ベクターカセットの上流にテトラサイクリン抑制性プロモーターをさらに含む、組換えプラスミド。
[本発明1029]
本発明1001~1028のいずれかのプラスミドを含む、細胞。
[本発明1030]
本発明1001~1028のいずれかのプラスミドと、ブレオマイシン耐性(ble)カセットとを含む、キット。
[本発明1031]
(a)本発明1001~1028のいずれかのプラスミドに1つまたは複数の遺伝子をクローニングすることによって、レンチウイルスベクターを合成する段階;(b)合成された該レンチウイルスベクターからDNA断片を生成する段階;(c)合成された該レンチウイルスベクター由来の生成された該DNA断片から、および抗生物質耐性カセットプラスミド由来のDNA断片から、コンカテマーアレイを形成する段階;(d)GPR、GPRG、GPRT、GPRGT、もしくはGPRT-Gパッケージング細胞株またはそれらの派生物に、形成された該コンカテマーアレイをトランスフェクトする段階;ならびに(e)安定した産生細胞株を単離する段階を含む、該安定した産生細胞株を作製する方法。
[本発明1032]
(a)HIV-1共受容体の下方制御のための短鎖ヘアピンRNAをコードしかつHIV-1融合阻害物質をコードするレンチウイルスベクターを合成する段階であって、該レンチウイルスベクターが、本発明1001~1028のいずれかのプラスミドに該短鎖ヘアピンRNAと該融合阻害物質の両方をコードするcDNAをクローニングすることによって合成される、段階;(b)合成された該レンチウイルスベクターからDNA断片を生成する段階;(c)合成された該レンチウイルスベクター由来の生成された該DNA断片から、および抗生物質耐性カセットプラスミド由来のDNA断片から、コンカテマーアレイを形成する段階;(d)GPR、GPRG、GPRT、GPRGT、もしくはGPRT-Gパッケージング細胞株またはそれらの派生物に、形成された該コンカテマーアレイをトランスフェクトする段階;ならびに(e)安定した産生細胞株を単離する段階を含む、該安定した産生細胞株を作製する方法。
[本発明1033]
ベクター上清を約40時間~約56時間毎に回収する、安定した産生細胞株から該ベクター上清を回収する方法。
[本発明1034]
LVsh5/C46レンチウイルスベクターを含むベクター上清を約40時間~約56時間毎に回収する、該ベクター上清を回収する方法。
[本発明1035]
LVsh5/C46を産生させるのに適している安定した産生細胞株。
[本発明1036]
GPRGパッケージング細胞株に基づいている、本発明1035の安定した産生細胞株。
[本発明1037]
GPRTパッケージング細胞株に基づいている、本発明1035の安定した産生細胞株。
[本発明1038]
GPRパッケージング細胞株に基づいている、本発明1035の安定した産生細胞株。
[本発明1039]
自己不活性化レンチウイルスベクターを産生させるのに適している安定した産生細胞株であって、該レンチウイルスベクターが、SEQ ID NO: 8の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、安定した産生細胞株。
[本発明1040]
GPRGパッケージング細胞株に基づいている、本発明1039の安定した産生細胞株。
[本発明1041]
GPRTパッケージング細胞株に基づいている、本発明1039の安定した産生細胞株。
[本発明1042]
GPRパッケージング細胞株に基づいている、本発明1039の安定した産生細胞株。
[本発明1043]
第1のプラスミドにおよび第2のプラスミドに由来するDNA断片を含むコンカテマーアレイであって、該第1のプラスミドがpUC57-TL20cに由来し、該第2のプラスミドがブレオマイシン抗生物質耐性カセットを含み、該第1のプラスミド由来のDNA断片対該第2のプラスミド由来のDNA断片の比が、約25:1~約1:25の範囲である、コンカテマーアレイ。
[本発明1044]
GPR、GPRG、GPRT、GPRGT、およびGPRT-Gパッケージング細胞株またはそれらの派生物からなる群より選択されるパッケージング細胞株に、本発明1043のコンカテマーアレイをトランスフェクトすることによって作製される、安定した産生細胞株。
[本発明1045]
LVsh5/C46を産生する、本発明1044の安定した産生細胞株。
[本発明1046]
前記LVsh5/C46を約40時間~約56時間毎に回収することが可能である、本発明1045の安定した産生細胞株。
[本発明1047]
SEQ ID NO: 7に示されるヌクレオチド配列を含むマルチクローニングサイトを含む、図11のプラスミドマップを有する単離されたベクター。
[本発明1048]
本発明1001~1028のいずれかのプラスミドを切断する段階、および切断された該プラスミドの末端を、導入されるポリヌクレオチドの適合性末端に連結する段階を含む、プラスミドベクターを作製するための方法。
[本発明1049]
前記導入されるポリヌクレオチドが、HIV-1共受容体の下方制御のための短鎖ヘアピンRNAの少なくとも1つをコードするか、またはHIV-1融合阻害物質をコードする、本発明1048の方法。
[本発明1050]
(a)本発明1001~1028のいずれかのレンチウイルストランスファーベクタープラスミドと;(b)パッケージング細胞株の細胞とを含む、キット。
[本発明1051]
前記パッケージング細胞株の細胞が、GPR、GPRG、GPRT、GPRTG、およびそれらの派生物からなる群より選択される、本発明1050のキット。
[本発明1052]
ブレオマイシン耐性(ble)カセットをさらに含む、本発明1050のキット。
[本発明1053]
本発明1001~1028のいずれかのプラスミドに由来する、レンチウイルスベクター。
[本発明1054]
少なくとも1つの追加のヌクレオチド配列を含む、本発明1053のレンチウイルスベクター。
[本発明1055]
前記少なくとも1つの追加のヌクレオチド配列が、HIV-1共受容体の下方制御のための短鎖ヘアピンRNAをコードするヌクレオチド配列およびHIV-1融合阻害物質をコードするヌクレオチド配列からなる群より選択される、本発明1054のレンチウイルスベクター。
[本発明1056]
LVsh5/C46である、本発明1055のレンチウイルスベクター。
[本発明1057]
SEQ ID NO: 8の配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む、本発明1055のレンチウイルスベクター。
[本発明1058]
本発明1053~1057のいずれかのレンチウイルスベクターを含む、細胞。
[本発明1059]
本発明1053~1057のいずれかのレンチウイルスベクターと担体とを含む、薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】確立された手順によるHEK293T/17細胞の一過性トランスフェクションまたはGPRGベースの安定した産生細胞株の使用のいずれかによって、同じレンチウイルスベクターが繰り返し産生されたことを示す。ベクター含有培地(VCM)を超遠心分離によって100倍に濃縮し、レンチウイルス(LV)力価を遺伝子導入アッセイによって測定した。
【
図2】安定した産生細胞株を作製し、作製された産生細胞株から産生されたレンチウイルスベクターを回収する方法を示すフローチャートである。
【
図3】3ヶ月の連続継代期間にわたる2つの異なる細胞株MWCBについての産生細胞株の安定性の評価を示す。一定の間隔で、LVをテトラサイクリン(TET)の除去により誘導し、VCMを遺伝子導入アッセイによってLV力価について評価した。両細胞株は安定であり、3ヶ月間にわたって約25回を超える継代の間、1e6/ml超のLVを産生することができた。
【
図4】TETの除去により誘導した後のレンチウイルスベクター産生の動力学を示す。ベクター力価は遺伝子導入アッセイによりVCMにおいて評価した。いかなる場合も、GPRGベースの安定した産生細胞株は、誘導後少なくとも5日間、1e6 TU/ml(非濃縮)を上回るレベルでLV産生を維持することができた。
【
図5】安定した細胞株からのレンチウイルスベクター産生の動力学を示す。(A)ベクター産生の間、培地を毎日(■)または2日毎(□)に新しい培地と交換した。(B)回収した培地中のLVの総量を293T細胞で測定した。示したデータは平均値±SD (N=2)である。TU:形質導入単位(transduction unit)。
【
図6】(A)は、ドキシサイクリン(Dox)を含まない培地で誘導されたGPRGおよび293T細胞を示す。誘導された細胞は、VSVG発現を検出するために抗VSVG抗体で染色し、フローサイトメトリーにより測定した。(B)は、長期培養後に評価されたGPRGのLV産生能力を示す。
【
図7】異なる培養条件でのレンチウイルス産生を示す。(A)血清含有培地での培養/産生。(B,左)血清含有培地での培養/無血清培地での産生;(B,右)無血清培地での培養/産生。D10:500mL DMEM/GlutaMAX(商標)、50mL FBS(10%w/v)、5mLペニシリン/ストレプトマイシン;SFM:無血清培地。
【
図8】新鮮培地(ベクターなし)またはLVsh5/C46ベクターと共にインキュベートした293T細胞またはTF-1a細胞のFACS分析を示す。
【
図9】感染細胞におけるレンチウイルスベクターコピー数の定量を示す。C46 qPCRを用いて、2回の投与(MOI=1または0.3)での形質導入後の宿主ゲノムあたりのベクターコピー数を測定した。
【
図10】Ghost-CCR5細胞にLVsh5/C46ベクターを形質導入した。CCR5発現レベルの低下をFACSにより測定した。
【
図12】本開示のいくつかの態様によるHIV-1ベースのレンチウイルストランスファーベクターを示す。この特定のトランスファーベクターは、HIV-1共受容体CCR5の下方制御のための短鎖ヘアピンRNA(shRNA)を、HIV-1融合阻害物質(C46)と組み合わせて、コードする。
【
図13】血清ありおよび血清なしで本明細書に開示された方法を使用することによるレンチウイルス誘導を示す。無血清培地で培養した細胞は、10%PBSで培養した細胞とほぼ同じ量のウイルスを産生した。本明細書に開示された方法は、無血清培養環境に適応できると考えられる。
【
図14】DNA断片を生成する方法を示すフローチャートである。
【
図15】コンカテマーアレイを合成する方法を示すフローチャートである。
【
図16】コンカテマーアレイをパッケージング細胞株に導入する方法を示すフローチャートである。
【
図17】トランスフェクトされたクローンを選択する方法を示すフローチャートである。
【
図18】単一コロニーの分離を行う方法を示すフローチャートである。
【
図19】ウイルス産生を評価する方法を示すフローチャートである。
【
図20A】一般に、TL20-Cal1-wpreおよびTL20-Unc-GFPベクターを合成するための産生細胞を記載する。
図20Aは、新鮮培地(左:ベクターなし)または最も強力な産生細胞クローンから回収されたTL20-Cal1-WPRE(右)のいずれかとインキュベートした293T細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図20B】一般に、TL20-Cal1-wpreおよびTL20-Unc-GFPベクターを合成するための産生細胞を記載する。
図20Bは、新鮮培地(濃い灰色のバー:ベクターなし)または最も強力な産生細胞クローンから回収されたTL20-UbcGFP(薄い灰色のバー)のいずれかとインキュベートした293T細胞のフローサイトメトリー分析を示す。記号:Ubc:ユビキチンCプロモーター;GFP:高感度緑色蛍光タンパク質。
【
図20C】一般に、TL20-Cal1-wpreおよびTL20-Unc-GFPベクターを合成するための産生細胞を記載する。
図20Cは、TL20-Cal1-WPREベクター(左)またはTL20-UbcGFPベクター(右)を調製するための独立した産生細胞クローンから得られた上清の測定されたベクター力価の分布を示す。該ベクターを293T細胞でタイトレーションし、フローサイトメトリーにより分析した。多クローン性産生細胞(単一クローンの選択前)を用いて調製されたベクターについて達成された最高力価を破線で示す。記号:Ubc:ユビキチンCプロモーター;GFP:高感度緑色蛍光タンパク質。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
一般的に、本開示は、安定した産生細胞株を作製する方法を提供する。本発明に従って提供されるような安定した産生細胞株の作製は、バイオセーフティーに対する懸念を緩和しつつ高力価レンチウイルスストックの生成の再現性および簡便性を高め、かつ、発現したエンベロープタンパク質の変化により、作製されたウイルスの親和性が規定される。本開示はまた、新規レンチウイルストランスファーベクタープラスミドも提供する。
【0039】
本明細書で使用する用語の単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形の指示対象を含む。同様に、「または」という語は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、「および」を含むことが意図される。
【0040】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」などは、交換可能に使用され、同じ意味を有する。同様に、「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」などは、交換可能に使用され、同じ意味を有する。具体的には、これらの用語の各々は、共通の米国特許法の「含む(comprising)」の定義と一致して定義され、したがって、「少なくとも以下のもの(at least the following)」を意味するオープン・タームであると解釈され、追加の特徴、限定、局面などを排除しないとも解釈される。かくして、例えば、「部品a、bおよびcを有するデバイス」は、該デバイスが少なくとも部品a、bおよびcを含むことを意味する。同様に、「段階a、b、およびcを含む方法」という語句は、該方法が少なくとも段階a、b、およびcを含むことを意味する。さらに、段階および工程は特定の順序で本明細書に記載されるが、当業者は、段階および工程の順序付けが変わり得ることを認識するであろう。
【0041】
本明細書で使用する用語「クローニング」は、核酸分子をプラスミドに連結し、それを宿主の増殖中に複製するために適切な宿主細胞に導入する工程を指す。
【0042】
本明細書で使用する用語「HIV」は、HIV-1だけでなく、様々なHIV-1株(例えば、BaL株またはSF162株)および種々のHIV-1サブタイプ(例えば、サブタイプA、B、C、D、F、G、H、J、およびK)をも含む。
【0043】
本明細書で使用する用語「マルチクローニングサイト」(MCS)は、核酸断片をクローニングベクタープラスミドにクローニングするための制限部位を含むヌクレオチド配列を指す。MCSは、ポリリンカーまたはポリクローニング部位とも呼ばれており、多くの制限酵素がその部位内で作用することができるような、クローニング部位の集まりである。いくつかの態様でのクローニング部位は、制限酵素がプラスミドを線状化または切断するために作用する既知の配列である。
【0044】
本明細書で使用する用語「産生細胞」は、レンチウイルスベクター粒子の産生に必要なエレメントを全て含む細胞を意味する。
【0045】
本明細書で使用する用語「パッケージング細胞」は、感染性組換えウイルスの産生に必要であり組換えウイルスベクターまたはレンチウイルストランスファーベクタープラスミドには欠けているエレメントを含む、細胞を指す。典型的には、このようなパッケージング細胞は、ウイルスの構造タンパク質(例えば、gag、pol、およびenv)を発現することができる1つまたは複数の発現カセットを含むが、それらはパッケージングシグナルを含まない。
【0046】
本明細書で使用する用語「制限エンドヌクレアーゼ」または「制限酵素」とは、核酸分子(例えばDNA)のコグネイト配列に結合し、その配列中の正確な位置でそれを切断する触媒分子のクラスのメンバーを指す。
【0047】
本明細書で交換可能に使用される用語「自己不活性化」または「SIN」は、改変されているベクターを指し、この改変は、いったん該ベクターがレシピエントのゲノムに組み込まれると、該ベクターの動員する能力を大幅に低下させ、それにより遺伝子送達ベクターとしての該ベクターの使用の安全性を高める。
【0048】
本明細書で使用する用語「ベクター」は、別の核酸分子の細胞への侵入、例えば導入、輸送など、を媒介することができる核酸分子を指す。導入される核酸は、一般に、ベクター核酸分子に連結される、例えば挿入される。ベクターは、自律複製を指令する配列を含むか、または宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含み得る。当業者には明らかなように、ウイルスベクターは、導入される核酸の侵入を媒介する核酸に加えて、種々のウイルス成分を含むことができる。
【0049】
方法の概説
レンチウイルスベクター(LV)は、分裂細胞と非分裂細胞の両方に安定して形質導入するそれらの効率および能力のために、遺伝子導入のための重要なツールである。結果として、研究者らは、広範囲の臨床応用において遺伝子送達ビヒクルとしてそれらを使用している。それにもかかわらず、現行の医薬品適正製造規範(current good manufacturing practice: cGMP)の方法を用いた大規模な臨床生産には、レンチウイルスベクターを用いた臨床試験が規制当局の承認を受けるときに考慮しなければならない一連の課題が付いてくる。cGMP適合性工程を設計する際の重要な考慮事項の1つは、多重cGMP生産用の一貫性のあるレンチウイルスを生産することが可能な製造工程に、規制当局の考慮事項を組み入れる必要があることである。臨床的に使用されているレンチウイルスベクターの大部分は、一過性トランスフェクションによって生産されてきた。しかしながら、一過性トランスフェクションに基づいた生産は、しばしば労働集約的であり、バラツキが多い。この理由から、最近、いくつかの安定したパッケージング細胞株系が開発されている。これらの細胞株をLVのバイオ製造に使用することは、スケーラビリティと一貫性の両方にとって特に魅力的であるが、そのような細胞株の開発には時間がかかり、これらの細胞株のcGMP使用のための規制当局による道筋はしっかり確立されていない。
【0050】
このことを考慮して、本開示は、自己不活性化レンチウイルスベクター(SIN-LV)の臨床的生産のための工程を記載する。新規レンチウイルストランスファーベクタープラスミドをGPR、GPRG、GPRT、GPRGT、またはGPRT-Gパッケージング細胞株(またはそれに由来する派生物もしくは類似物パッケージング細胞株)と一緒に使用することによって、自己不活性化レンチウイルスベクター(例えば、LVsh5/C46)の生産を可能にするように、安定した産生細胞株を作製することができると考えられる。本明細書に記載される特定の態様および実施例では、HIV-1共受容体CCR5の下方制御のための短鎖ヘアピンRNA(shRNA)を、HIV-1融合阻害物質(すなわち、C46)と組み合わせて、コードする自己不活性化レンチウイルスベクターであるLVsh5/C46の生産について言及するが、当業者は、本明細書に記載の方法が、任意の望ましいまたはクライアントから提供される遺伝子もしくは配列を含むSIN-LVを産生することが可能な、安定した産生細胞株の作製に適していることを認識するであろう。
【0051】
本出願人は、一過性トランスフェクションによって生産されたSIN-LVと比較して、本開示の方法が、(i)同様の質および量のSIN-LVを生成することができること;(ii)より良好な効力を有し得るLVを生産すること;および(ii)一過性トランスフェクションで見られる調製毎のバラツキを大幅に低減させるとともに収量を維持することを実証した。
【0052】
pUC57-TL20c
本開示の一局面には、新規な、用途の広いマルチクローニングサイト(MCS)を含む、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)に基づいた第3世代の自己不活化(SIN)レンチウイルストランスファーベクタープラスミド(以後、「pUC57-TL20」という)がある(
図11参照)。
【0053】
いくつかの態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、それ自体が内部プロモーターを含まない(それゆえに、「プロモーターレス」(promoterless)である)ベクター骨格(「TL20c」)を含む。いくつかの態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、ベクター骨格の上流に、1つのプロモーター、例えばテトラサイクリン抑制性プロモーターを含む(
図12参照)。特定の理論に縛られることを望むものではないが、ベクター骨格のプロモーターレス設計により、関心対象の遺伝子の送達とその後のユーザーが決定したプロモーターからの発現を可能にするレンチウイルストランスファーベクタープラスミドの作製が可能になると考えられる。
【0054】
図11は、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドの構成エレメントを示す遺伝子マップを示す。いくつかの態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、ヌクレオチド約6500個~ヌクレオチド約6750個を含む。他の態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、ヌクレオチド6600個~ヌクレオチド約6700個を含む。いくつかの態様では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドのベクター骨格は、ヌクレオチド約3850個~ヌクレオチド約3950個を含む。いくつかの態様では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドのベクター骨格は、ヌクレオチド約3901個を含む。
【0055】
図11に示すように、該プラスミドは、5'フランキングHIV LTR、パッケージングシグナルまたはψ+、セントラルポリプリントラクト(cPPT)、Rev応答エレメント(RRE)、マルチクローニングサイト(MCS)、および3'フランキングHIV LTRを含む。該LTR領域は、U3およびU5領域ならびにR領域をさらに含む。
【0056】
本開示の特定の態様によれば、該トランスファープラスミドは自己不活性化(SIN) LTRを含む。当技術分野で知られるように、レトロウイルスのライフサイクルの間に、3'LTRのU3領域が複製して、逆転写およびウイルスDNA合成の過程で5'LTRの対応する領域を形成する。SIN LTRの作製は、3'LTRのU3領域を(好ましくは、その一部の欠失、例えばTATA配列の除去により)不活性化することによって達成される。この改変は逆転写後に5'LTRに移され、したがって、プロウイルス中のLTRの転写ユニットを排除し、これは複製可能なウイルスによる動員を防止すると考えられる。さらなる安全性の向上は、ウイルス粒子の産生中にウイルスゲノムの転写を駆動するために、5'LTRのU3領域を異種プロモーターで置換することによってもたらされる。
【0057】
いくつかの態様では、該パッケージングシグナルは、野生型HIVのGag配列の約361塩基対およびPol配列の約448塩基対を含む(例えば、HIV01 HXB2_LAI_IIIB)。いくつかの態様では、該cPPTは、野生型HIVのVif配列の約85塩基対を含む。いくつかの態様では、HIVポリプリントラクト(pPu)は、野生型HIVのNef配列の約106塩基対を含む。いくつかの態様では、該RREは、野生型HIVのRev配列の約26塩基対、tat配列の約25塩基対、およびEnv配列の約769塩基対を含む。いくつかの態様では、該トランスファープラスミドは、クロマチンインスレーター(chromatin insulator)および/またはβ-グロブリンポリアデニル化シグナルを含む。
【0058】
いくつかの態様では、該パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 3の配列、またはSEQ ID NO: 3の配列に対して少なくとも85%の同一性を有する配列を含む。いくつかの態様では、該パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 3の配列、またはSEQ ID NO: 3の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの態様では、該パッケージングシグナルをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 3の配列、またはSEQ ID NO: 3の配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。
【0059】
いくつかの態様では、該セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 4の配列、またはSEQ ID NO: 4の配列に対して少なくとも85%の同一性を有する配列を含む。いくつかの態様では、該セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 4の配列、またはSEQ ID NO: 4の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの態様では、該セントラルポリプリントラクト(cPPT)をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 4の配列、またはSEQ ID NO: 4の配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。
【0060】
いくつかの態様では、該Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 5の配列、またはSEQ ID NO: 5の配列に対して少なくとも85%の同一性を有する配列を含む。いくつかの態様では、該Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 5の配列、またはSEQ ID NO: 5の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの態様では、該Rev応答エレメントをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 5の配列、またはSEQ ID NO: 5の配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。
【0061】
いくつかの態様では、該自己不活性化末端反復配列をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 6の配列、またはSEQ ID NO: 6の配列に対して少なくとも85%の同一性を有する配列を含む。いくつかの態様では、該自己不活性化末端反復配列をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 6の配列、またはSEQ ID NO: 6の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの態様では、該自己不活性化末端反復配列をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 6の配列、またはSEQ ID NO: 6の配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。
【0062】
いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 10の配列に対して少なくとも85%の同一性を有するドキシサイクリン抑制性プロモーターをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 10の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するドキシサイクリン抑制性プロモーターをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 10の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するドキシサイクリン抑制性プロモーターをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0063】
いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 11の配列に対して少なくとも85%の同一性を有するHIV LTR R5領域をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 11の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するHIV LTR R5領域をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 11の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するHIV LTR R5領域をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0064】
いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 12の配列に対して少なくとも85%の同一性を有するHIV LTR U5領域をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 12の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するHIV LTR U5領域をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 12の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するHIV LTR U5領域をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0065】
いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 13の配列に対して少なくとも85%の同一性を有するクロマチンインスレーターをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 13の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するクロマチンインスレーターをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 13の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するクロマチンインスレーターをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0066】
いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 14の配列に対して少なくとも85%の同一性を有するβ-グロビンポリアデニル化シグナルをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 14の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するβ-グロビンポリアデニル化シグナルをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 14の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するβ-グロビンポリアデニル化シグナルをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0067】
いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 15の配列に対して少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 15の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、該プラスミドは、SEQ ID NO: 15の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0068】
本開示は、種々の異なる制限酵素のためのMCSを組み込んだレンチウイルストランスファーベクタープラスミドを提供する。本開示の特定の態様によれば、MCSはヌクレオチド約20~40個を有する配列を含む。いくつかの態様では、本開示のプラスミドのMCSは、少なくとも2つの制限酵素切断部位を含む。他の態様では、本開示のプラスミドのMCSは、少なくとも3つの制限酵素切断部位を含む。さらに他の態様では、本開示のプラスミドのMCSは、約2~約10の制限部位を含む。いくつかの態様では、MCS内の制限部位は、BstBI、MluI、NotI、ClaI、ApaI、XhoI、XbaI、HpaI、NheI、PacI、NsiI、SphI、Sma/Xma、AccI、BamHI、およびSphI、またはそれらの任意の派生物もしくは類似物からなる群より選択される。
【0069】
いくつかの態様では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドのMCS領域は、所望のトランスジーンカセットの容易なサブクローニングを促進すると考えられる4つの独特の制限酵素切断部位を有する。いくつかの態様では、そのマルチクローニングサイトは、BstBI、MluI、NotI、およびClaI制限エンドヌクレアーゼ部位を含む。いくつかの態様では、該マルチクローニングサイトをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 7の配列、またはSEQ ID NO: 7の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。これらの制限部位はどのような順序で配置されてもよい。
【0070】
いくつかの態様では、該トランスファープラスミドは、ベクター骨格に隣接する1つまたは複数の追加の制限酵素切断部位を含む(
図11参照)。いかなる特定の理論にも縛られることを望むものではないが、追加のフランキング制限酵素切断部位は、一方向性(ヘッドトゥーテール)のコンカテマーアレイの作製を可能にすると考えられる。いくつかの態様では、その制限酵素切断部位はSfilおよびBsu36Iから選択される。いくつかの態様では、1つまたは複数の遺伝子を含むレンチウイルスベクターは該プラスミドに由来する。
【0071】
いくつかの態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、SEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。他の態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、SEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらに他の態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、SEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらなる態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、SEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらに別の態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、SEQ ID NO: 1の配列に対して少なくとも97%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、SEQ ID NO: 1の配列を含む。いくつかの態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、SEQ ID NO: 1に示した配列とはヌクレオチド100個以下だけ異なる配列を有する。
【0072】
いくつかの態様では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドは、SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。他の態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらに他の態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらなる態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。さらに別の態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、SEQ ID NO: 2の配列に対して少なくとも97%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、SEQ ID NO: 2の配列を含む。いくつかの態様では、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドは、SEQ ID NO: 2に示した配列とはヌクレオチド100個以下だけ異なる配列を有する。
【0073】
いくつかの態様では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドは、当業者に公知の方法に従って合成される。例えば、該プラスミドは、当業者に公知の伝統的な制限消化・ライゲーション技術を用いて合成され得る。例えば、TL20cベクター骨格を含むドナープラスミドは、当業者に公知の標準的な消化・ライゲーション法を用いて、pU57Cレシピエントプラスミド(例えば、Genescript社から市販されているものなど)にサブクローニングすることができる(例えば、開示内容が全体として参照により本明細書に組み入れられるSambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed. Cold Spring Harbor, N.Y.を参照されたい)。
【0074】
本開示はまた、レンチウイルスベクター、例えばLVsh5/C46、を作製する方法も含む。一態様では、この方法は、遺伝子のcDNAを合成する段階、および合成されたcDNAをpUC57-TL20cのようなプラスミドの制限部位にクローニングする段階を含む。遺伝子は、当業者に公知の技術を用いて適切なクローニング部位に挿入され得る。例えば、遺伝子をPCRで増幅してから、所望のプロモーターまたは遺伝子発現制御エレメントを含むプラスミドにクローニングすることができる。
【0075】
いくつかの態様では、かつ単に例として、前記方法は、細胞へのHIV融合またはHIV複製を防止することができるタンパク質を発現する遺伝子のcDNAを合成する段階;およびその後、合成されたcDNAを本明細書に開示されるプラスミド中の制限部位にクローニングする段階を含む。
【0076】
安定した産生細胞株の作製およびそれから産生されたレンチウイルスベクターの回収
本開示のいくつかの態様は、安定した産生細胞株を作製し、作製された安定な産生細胞株から産生されたレンチウイルスベクターを回収する方法である。
図2を参照すると、安定した産生細胞株を作製する際の第1段階は、例えば、レンチウイルスベクタートランスファープラスミドからおよび抗生物質耐性カセットプラスミドなどの第2のプラスミドから、DNA断片を生成する(10)ことである。DNA断片の生成(10)に続いて、該DNAを用いてコンカテマーアレイを形成する(20)。続いて、該コンカテマーアレイを、パッケージング細胞株(例えば、GPR、GPRG、GPRT、GPRG、GPRT-G、またはそれらの派生物のパッケージング細胞株)に、例えばトランスフェクションによって、導入する(30)。該アレイの導入(30)およびその後のトランスフェクションに続いて、クローンを選別し(40)、かつ分離して(50)、安定した産生細胞株を作製する(60)。その後、レンチウイルスベクターを含むベクター上清を回収することができる。
【0077】
コンカテマーアレイの形成および精製
「コンカテマー」または「コンカテマーアレイ」(本明細書では交換可能に使用される)(直接または間接的に直列に連結された同じDNA配列の複数コピーを含む長い連続DNA分子)が作製され、パッケージング細胞株のトランスフェクションにおいて使用される。いくつかの態様では、コンカテマーは、抗生物質耐性カセットが散在している、連結されたベクターゲノム発現カセットの大きなアレイである。
【0078】
図14を参照すると、コンカテマーアレイを形成するために、レンチウイルストランスファーベクタープラスミド(段階100)および抗生物質耐性カセットプラスミド(段階110)からDNA断片が生成される。いくつかの態様では、当業者に公知のプロトコールに従って各プラスミドを消化し、次に消化された断片を連結することによって、該DNA断片を調製する。いくつかの態様では、電気泳動およびアガロースゲルを用いて所望のDNA断片を取得する(段階120)。いくつかの態様では、NanoDrop分光光度計を使用してDNA断片の濃度を測定する(段階130)。DNA断片を連結するための様々な戦略が使用可能であり、その選択はDNA断片の末端の性質に依存しており、その選択は当業者によって容易になされ得る。
【0079】
いくつかの態様では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドは、pUC57-TL20cに基づいている。いくつかの態様では、抗生物質耐性カセットプラスミドは、PGKプロモーターによって駆動される。いくつかの態様では、抗生物質耐性カセットプラスミドは、レンチウイルストランスファーベクタープラスミド中のレンチウイルスカセットとのコンカテマー化のためのフランキング部位を含む。いくつかの態様では、抗生物質耐性カセットプラスミドは、PGK-ble(ブレオマイシン耐性)である。いくつかの態様では、PGK-bleプラスミドは、SEQ ID NO: 9の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、コンカテマーアレイは、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドおよびPGK-bleプラスミド由来のDNA断片のインビトロライゲーションによって形成される。
【0080】
図15は、コンカテマーアレイの形成に用いられる一般的な段階の概要を示す。段階200で、生成されたDNA断片を混合し、ライゲーション反応物中の断片の容量を最大化し、所望の比を維持する(段階210)。いくつかの態様では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドDNAの量対抗生物質耐性カセットプラスミドDNAの量の比は、約100:1~約1:100の範囲である。他の態様では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドDNAの量対抗生物質耐性カセットプラスミドDNAの量の比は、約50:1~約1:50の範囲である。さらに他の態様では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドDNAの量対抗生物質耐性カセットプラスミドDNAの量の比は、約25:1~約1:25の範囲である。さらなる態様では、レンチウイルストランスファーベクタープラスミドDNAの量対抗生物質耐性カセットプラスミドDNAの量の比は、約10:1~約1:10の範囲である。
【0081】
いくつかの態様では、コンカテマー反応混合物を室温で一晩インキュベートする(段階220)。続いて、NanoDrop分光光度計を用いて各サンプルのDNA断片濃度を測定することができる(段階230)。
【0082】
いくつかの態様では、一方向性のコンカテマーアレイが形成され、パッケージング細胞株のトランスフェクションにおいて使用される。いくつかの態様では、該方向性アレイの形成は、レンチウイルスベクター骨格に隣接するレンチウイルストランスファーベクタープラスミドの制限酵素部位を用いることによって達成される。いくつかの態様では、制限消化は、TL20cベクターカセットに隣接する制限酵素部位を用い、頭部から尾部への連結にのみ使用され得るヌクレオチド非パリンドロームオーバーハングの形成を可能にする。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法に従う定方向性ライゲーションによって、ヘッドトゥーテールDNA産物を主に含むコンカテマーアレイの作製が可能になる。
【0083】
いくつかの態様では、コンカテマーアレイは、本明細書中の実施例3に記載の方法に従って形成される。当然のことながら、当業者であれば、実施例3で提供される手順は、第1のプラスミド対第2のプラスミドの比率が異なるコンカテマーアレイの形成に、かつLVsh5/C46以外のトランスファープラスミドに、適応できることを理解するであろう。
【0084】
いくつかの態様では、コンカテマーアレイは、パッケージング細胞株へのトランスフェクションの前に、フェノール抽出およびエタノール沈殿によって精製される。この従来技術は安価で効果的であるが、その手順は時間がかかり、再現性のある収量をもたらさない可能性がある。また、最終サンプルへのフェノール/クロロホルムのキャリー・オーバーのリスクがあると考えられる。さらに、この工程には危険な化学薬品が含まれると考えられ、有害廃棄物ガイドラインに従って慎重に廃棄処分する必要がある有毒廃棄物を生成する可能性がある。
【0085】
あるいは、他の態様では、ライゲーション後に新たに合成されたコンカテマーアレイを精製するためにシリカベースの方法が使用される。この方法は、高品質のトランスフェクショングレードのコンカテマーアレイを分離するための、簡単で信頼性がある迅速かつ便利な方法を提供すると考えられる。いくつかの態様では、コンカテマーアレイは、Qiagen社から入手可能なDNeasy Miniスピンカラムを使用して、例えば実施例6に記載の手順を用いて、精製される。
【0086】
トランスフェクション/単一クローン分離
コンカテマーアレイの精製後、該アレイはパッケージング細胞株の細胞をトランスフェクトするために使用される。本明細書で使用する用語「形質転換」および「トランスフェクション」は、外来核酸(例えば、DNAまたはRNA)を細胞に導入するための当技術分野で認識されている様々な技術を指すものとする。本明細書に提供される実施例から明らかなように、レンチウイルス粒子の産生に対して許容状態の宿主細胞に、作製されたコンカテマーアレイをトランスフェクトすると、該細胞は、産生細胞、すなわち感染性レンチウイルス粒子を産生する細胞になる。
【0087】
一般に、コンカテマーアレイまたは方向性コンカテマーアレイは、従来のトランスフェクション技術によって細胞に導入され得る。
図16を参照すると、いくつかの態様では、トランスフェクションの20~24時間前に細胞を回収して播種し(段階300)、その後合成されたコンカテマーアレイ(段階310)をトランスフェクトする(段階320)。パッケージング細胞株の細胞にトランスフェクトする手順は、本明細書中に実施例4として提供される。
【0088】
形成されたコンカテマーアレイによるトランスフェクションに適した1つのパッケージング細胞株は、GPRパッケージング細胞株である。GPR株は、必要なウイルス成分gagpolおよびrevを含む293T/17細胞に由来するHIV-1ベースのパッケージング細胞株である(開示内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる、Throm et al., Efficient construction of producer cell lines for a SIN lentiviral vector for SCID-X1 gene therapy by concatemeric array transfection. Blood 113: 5104-5110を参照されたい)。
【0089】
形成されたコンカテマーアレイによるトランスフェクションに適した別のパッケージング細胞株は、GPRGパッケージング細胞株である。いくつかの態様では、GPRGパッケージング細胞株はgagpol、rev、およびVSV-Gを含む。
【0090】
形成されたコンカテマーアレイによるトランスフェクションに適したさらに別のパッケージング細胞株は、GPRTパッケージング細胞株(gagpol、revおよびtat)である。GPRGおよびGPRTパッケージング細胞株ならびにそれらの作製方法もまた、Thromらにより開示されており、その開示内容は再度全体として参照により本明細書に組み入れられる。その他の適切なパッケージング細胞株(例えば、GPRT-G)は、Wielgosz et al. "Generation of a lentiviral vector producer cell clone for human Wiskott-Aldrich syndrome gene therapy," Molecular Therapy-Methods & Clinical Development 2, Article number: 14063 (2015)に記載されており、その開示内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0091】
当業者は、本明細書に開示された方法で使用するのに適した他のパッケージング細胞株も用いるできることを理解するであろう。いくつかの態様では、他のパッケージング細胞株は、GPR、GPRG、GPRT、またはGPRT-Gパッケージング細胞株に由来し得る。特定の理論に縛られることを望むものではないが、GPRT-G細胞株はCD34+細胞においてより高い形質導入効率を有すると考えられる(Wielgosz参照)。「~に由来する」とは、所与の力価で活性タンパク質を産生する能力、または特定の密度にまで増殖する能力といった、いくつかの選択された性質を有する、個々の細胞からクローン的に派生した細胞の集団を意味する。
【0092】
図17は、トランスフェクトされた細胞を選択する一般的な工程を示す。いくつかの態様では、トランスフェクションの約72時間後に、GPRG細胞を選択培地(ゼオシンおよびドキシサイクリン)で培養する(段階400)。次いで、細胞フォーカスが確認されるまで3~4日毎に選択培地(ゼオシンおよびドキシサイクリン)を該細胞に供給する(段階410)。続いて、該細胞株を増殖させて評価する(段階420)。
【0093】
いくつかの態様では、トランスフェクション後、良好な製造能力を有する単一細胞クローンを同定するために単一フォーカスの選択/スクリーニング工程が用いられる。この方法によれば、いくつかの態様では、選択された細胞を150×25mmの培養皿にまばらに播種し、2~3週間増殖させて目にみえるコロニーを形成させる。次いで、個々のコロニーを単クローン性増殖のために別のより小さな培養容器に移すことができる。この方法は費用対効果が高く、頻繁に採用される技術であると考えられる;しかし、単一フォーカス選択技術の本質的な限界のために、良好な産生細胞株の単クローン性を高い確率で達成することは困難であり得る。
【0094】
図18は、単一コロニーの分離を示す。段階500で、フローサイトメトリーを用いて単一細胞ソーティングを準備する。次いで、該細胞を馴化培地に播種し(段階510)、増殖させる(段階520)。
【0095】
他の態様では、高力価レンチウイルスベクターの安定した産生細胞株を生み出すために、蛍光活性化セルソーター(FACS)が単一クローンを分離するのに使用されている(例えば、
図8参照)。また、細胞付着および生存率を高め、かつコロニー形成を促進するために、馴化培地、例えばゼオシン(50μg/mL)およびドキシサイクリン(1ng/mL)、をソーティングの過程で添加することもできる。馴化増殖培地の使用およびFACSシステムの高い処理能力は、多数のクローンのスクリーニングを可能にすると考えられ、したがって、高力価レンチウイルスベクター産生細胞クローンを見つけ出す確率を高めると考えられる。
【0096】
いくつかの態様では、良好な増殖速度およびウイルス産生能を有するクローンは、約20継代にわたって安定性について試験される。
【0097】
ウイルスを生成するための産生細胞株の誘導
クローンの選択および選択されたクローンの増殖に続いて、選択されたクローンはベクター上清を産生するように誘導され、その誘導は当業者に公知の手順に従って行うことができる。誘導された安定な産生細胞株により産生されたレンチウイルスベクターを生成するために、培養上清が、いくつかの態様では、最大7日間にわたり毎日回収される。この生産プロトコールは、様々な試験ベクターを小規模で生産するために容易に用いることができる。この反復ウイルス回収プロトコールはまた、ウイルスベクターの最終収量を増加させることができる。しかし、毎日の回収と培地交換は経済的でないことが多く、毎日の回収に代わるものとして、新しい2日回収(two-day harvest)プロトコールが考え出された。以下に記載される、この新しいウイルスベクター生産プロトコールは、より少ない培地消費で同量のウイルスベクターを生成させることができる。
【0098】
図19は、誘導および評価の工程をさらに示す。段階600で、ウイルスベクターを誘導し、次に293Tのスピノキュレーション(spinoculation)を実施して形質導入効率を測定する(段階610)。上位3つのクローンをスクリーニングし(段階620)、増殖させる(段階630)。その後、該クローンを(例えば、液体窒素下で)保存する(段階640)。
【0099】
2日毎の回収
本出願人は、予期せざることに、2日回収がより伝統的な毎日回収の場合とほぼ同量のウイルスベクターの生成を可能にすると同時に、より少ない培地を必要とするという利点をもたらすことを見出した。
【0100】
一態様には、本発明による2日回収からウイルスベクターを生成する第1の方法があり、この第1の方法は、以下の段階を含む。
(1)産生細胞株の培養皿の古い培地をできるだけ完全に除去し、該細胞を1×PBSで洗浄する。
(2)該培養皿にTrypLE(商標)Express酵素(1×)を加える(ThermoFisher Scientific社から入手可能)。
(3)37℃のインキュベーターに2分間入れる。
(4)D10培地(薬物なし)を添加することにより細胞を洗い流し、上下にピペッティングして細胞クラスターを単一の細胞に解離させる(D10培地:ダルベッコ改変イーグル培地/高グルコース、GlutaMAX(商標)サプリメント、10%(w/v)FBSおよび1%(w/v)ペニシリン/ストレプトマイシン)。
(5)細胞を4℃、1200rpmで5分間遠心分離する。
(6)培地を吸引し、ペレットを新鮮なD10培地(薬物なし)中に軽く懸濁する。
(7)該細胞を約95%コンフルエントで培養皿に播種する(およそ4×106個/6mm培養皿の細胞を播種することによる;ベクター誘導)。
(8)播種した細胞に、予め温めた新鮮なD10培地を24時間後(誘導後1日目)に補充した。
(9)ウイルスベクターを、1回目の培地交換の48時間後(誘導後3日目)に該細胞から初回回収することができる。
(10)予め温めた新鮮な培地を該培養皿に加える。
(11)2回目の培地交換の48時間後(誘導後5日目)に2回目のウイルスベクター回収を行う。
(12)予め温めた新鮮な培地を該培養皿に加える。
(13)3回目の培地交換の48時間後(誘導後7日目)に3回目のウイルスベクター回収を行う。
【0101】
本出願人は、ウイルスベクターを誘導後7日間収集できるより伝統的な方法と比較して、誘導後4日目と5日目の2回目のウイルスベクター収集でウイルス力価が得られることを見出した。
【0102】
別の態様には、本発明による2日回収からウイルスベクターを生成する第2の方法があり、この第1の方法は、以下の段階を含む。
(1)産生細胞株の培養皿の培地をできるだけ完全に除去し、該細胞を1×PBSで洗浄する。
(2)洗浄した細胞単層上に1×TrypLE Expressを、100mm培養皿の場合は3mL使用して、ピペットで静かに分注する。
(3)TrypLE Expressで単層を覆うようにフラスコを回転させる。
(4)フラスコをインキュベーターに戻し、2分間放置する。
(5)フラスコの片面を軽くタッピングして、付着している残りの細胞を剥離させる。
(6)新鮮なD10培地(抗生物質なし)2mLに該細胞を再懸濁し、15mLコニカル遠心チューブに移す。
(7)細胞を1200rpmで5分間遠心分離する。
(8)培地を吸引し、ペレットを新鮮なD10培地(抗生物質なし)5mL中に軽く懸濁する。
(9)TC10(商標)全自動セルカウンターにより細胞数を測定する。
(10)該細胞を>95%コンフルエントで培養皿に播種する(60mm培養皿に4×106個の生細胞を播種することによる)。
(11)播種した細胞に予め温めた新鮮なD10培地を毎日(24時間毎に)補充した。
【0103】
本出願人は、ウイルスベクターを誘導の48時間後に細胞から回収することができ、かつ最高のウイルス力価が誘導後72時間で得られることを見出した。本出願人は、この場合も予期せずに、ウイルスベクターが誘導後2~4日目に回収され得ることを見出した。
【0104】
いくつかの態様では、回収したベクターは濾過により精製される。いくつかの態様では、回収されたベクターは、ウイルス力価、細胞ゲノムあたりのウイルスコピー数、およびp24濃度を測定することによって特徴決定される。
【0105】
毎日回収と2日回収の毎日の比較は、
図5に示される。
【実施例】
【0106】
実施例1 - 一過性トランスフェクションで産生された自己不活性化レンチウイルスベクターと開示された安定細胞株法で産生された該ベクターの詳細な比較
本明細書に記載の方法を用いて、HIV-1共受容体CCR5の下方制御のための短鎖ヘアピンRNA(shRNA)を、HIV-1融合阻害物質C46と組み合わせて、コードする自己不活性化レンチウイルスベクター(SIN-LV)であるLVsh5/C46を産生させるための安定した細胞株を作製した。一過性トランスフェクションにより産生されたこのLVは、HIV感染者による臨床試験において現在評価中である。ここで、本発明者らは、一過性トランスフェクションにより産生されたLVsh5/C46と、本明細書に記載の方法を用いて産生されたLVsh5/C46の比較分析を行って、LVsh5/C46および他のSIN-LVの臨床製造へのこのシステムの適用を裏付ける。
【0107】
レンチウイルスベクター(LV)は、4プラスミドシステム(1つのトランスファーベクター、2つのパッケージングベクター、および1つのエンベロープベクター)を用いて、293T細胞におけるリン酸カルシウムトランスフェクションにより産生させた。ウイルス含有培地(VCM)をトランスフェクションの48時間後に回収し、20%スクロースクッションに通す超遠心分離により濃縮した。
【0108】
細胞株産生のために、産生細胞をドキシサイクリン(Dox)不含培地で誘導し、VCMを72時間で回収して、同様に超遠心分離により濃縮した。表1ならびに
図8および9に関して、各方法により産生されたLVを、粒子力価に基づいて、かつ293TおよびTF-1a T細胞株に対する遺伝子導入効力についての3つの独立したアッセイを用いて、比較した。これらには、細胞表面C46発現およびshRNA媒介性のCCR5発現ノックダウンについてのFACSアッセイ、ならびに宿主細胞ゲノムあたりのベクターコピー数(VCN)についてのqPCRアッセイが含まれていた。全てのアッセイにおいて、線形関係を明確にするために、ある範囲のベクター希釈にわたって力価を測定した。qPCRアッセイでは、形質導入された細胞から抽出したゲノムDNAを用いて、C46トランスジーンと内因性β-グロビン遺伝子由来の配列とを検出した。このようにして、C46 VCNを細胞ゲノムに対して正規化することができる。
【0109】
(表1)一過性ウイルスベクター産生に対する安定したウイルスベクター産生
1. 略語: TU、形質導入単位;VCM、ウイルス含有培地。
2. VCMは超遠心分離によって20%スクロースクッションに通して100倍に濃縮した。
【0110】
一過性トランスフェクション法と比較して、産生細胞株により産生されたVCMにおいて、より高い濃度のp24が観察された。しかし、2つの異なるシステムを用いて産生されたLVsh5/C46の収量および効力は類似していた。最初に、等容量のVCMを用いたFACSによりC46力価についてベクターを評価した。一過性トランスフェクションにより産生されたベクターは、やや増加した力価を示したが、C46力価を正規化し、かつベクター調製物をqPCRアッセイまたはCCR5の機能的ノックダウンを用いて遺伝子導入についてアッセイした場合、安定した産生細胞株によって産生されたベクターはより大きな効力を示した(表2参照)。CCR5発現の下方制御およびゲノムC46トランスジーン(VCN)は、一過性トランスフェクションにより産生されたベクターで処理した標的細胞よりも、本明細書に開示の方法により産生されたLVsh5/C46で処理した標的細胞において、それぞれ有意に高かった(表3および
図10参照)。
【0111】
(表2)形質導入細胞におけるqPCRによるC46の分析
1. 略語: ND、検出されず;MOI、感染多重度。
2. LVsh5/C46単一コピー細胞株。
3. C46形質導入力価に基づくMOI。
【0112】
(表3)形質導入細胞におけるqPCRによるC46の分析
1. 略語: ND、検出されず;MOI、感染多重度。
2. LVsh5/C46単一コピー細胞株。
3. C46形質導入力価に基づくMOI。
【0113】
3つの独立したアッセイに基づいて、本明細書に記載の方法は、一過性トランスフェクション法と比較して、同様の品質および量のSIN-LVを生成することができる安定したLV産生システムを提供することが実証される。形質導入細胞におけるより高いCCR5下方制御効力およびC46 VCN (C46力価に対して正規化した)は、産生細胞により産生されたLVsh5/C46が、従来の4プラスミド一過性トランスフェクションを用いて生成されたベクターよりも優れた効力を有することを示す。長たらしい一過性トランスフェクション段階を排除することによって、特定の理論に縛られることを望むものではないが、この産生システムは、ヒトに使用する臨床グレードの材料を製造するためのcGMP条件に容易に適合させることができると考えられる。
【0114】
実施例2 - HIV遺伝子治療用のレンチウイルスベクターのバイオ生産のためのGPRGベースの産生細胞株の開発と特徴決定
GPRG細胞株システムは、自己不活性化レンチウイルスベクター(SIN-LV)の臨床生産のために以前に樹立されている。ここで、本発明者らは、HIV感染者の治療のために診療所で現在評価されているSIN-LVであるLVsh5/C46を産生させるための、GPRGに基づいている産生細胞株を樹立しようとした。このベクターは2つのウイルス侵入阻害物質、すなわちHIV共受容体CCR5に対する短鎖ヘアピンRNAであるsh5およびウイルス融合阻害物質であるC46、をコードする。本発明者らはまた、LVsh5/C46のバイオ生産用のGPRGシステムの承認申請と臨床応用に必要とされるGPRGパッケージング細胞株、GRPGベースのLVsh5/C46産生細胞株、およびテトラサイクリン誘導後のLVsh5/C46産生の安定性を明確にしようとした。
【0115】
GPRG細胞を、ドキシサイクリン(Dox)およびピューロマイシン(Puro)を含むD10培地で培養した。LVsh5/C46産生細胞を作製するために、GPRG細胞にトランスファープラスミドTL20-LVsh5/C46およびゼオシン耐性プラスミドをコンカテマーアレイとしてトランスフェクトした。個々のクローンを、LVsh5/C46ベクターを産生する能力について評価し、Dox、Puro、およびゼオシンを含むD10培地中で維持した。LV産生についての親GPRG細胞株の安定性を評価するために、GPRG細胞にトランスファーベクターを10継代毎に3ヶ月間(合計50継代超)にわたってトランスフェクトした(
図3Aおよび3B参照)。トランスフェクションの48時間後にウイルス含有培地(VCM)を回収し、ベクター力価を相補的遺伝子導入アッセイにより評価した。安定した産生細胞クローンからのLV産生の安定性を評価するために、Doxを含まないD10培地中で細胞を誘導した。誘導から72時間後にVCMを回収し、ある範囲のベクター希釈にわたって力価を同様に評価した。長期継代後に誘導後のVSV-G発現の安定性を分析するために、GPRG細胞をDoxの使用中止によって誘導し、次いでビオチン結合抗VSV-G抗体を用いて染色し、その後ストレプトアビジン-フィコエリトリンによる二次染色を行った。
【0116】
GPRG細胞は、厳密にテトラサイクリンで制御されたVSV-G発現を示す。このパッケージング細胞株は、LVトランスファーベクターによるトランスフェクション後に最大107のLV形質導入単位(TU)/mLを産生することができ、連続培養で50継代超にわたって高レベルLV産生を維持した(
図6Aおよび6B参照)。コンカテマーアレイのトランスフェクションを用いることによって、本発明者らは、LVsh5C46生産用のGPRGベースの産生細胞株の効率的な構築を実証する。この細胞株は、一貫して、106 TU/mLを超える力価をもたらした。力価のさらなる増加は、二次産生細胞株の再クローニングおよび選択によって達成されると考えられる。力価は誘導後2~5日でピークに達した。我々はまた、樹立された安定した産生細胞株が、25継代を超える連続培養中に、106 TU/mL超の力価でのLVsh5/C46産生を常に維持できることを示した。
【0117】
GPRG細胞株は、Doxを除去すると、細胞表面上にVSV-Gを効率的に発現した。それはまた、トランスファーベクタープラスミドのトランスフェクション後に高力価のLVを生成することができた。さらに、この細胞株は、SIN-LVの高力価産生細胞株の派生を可能にした。産生細胞株は、長期培養の間、安定したベクター産生を示し、無血清および懸濁培養系にベクター産生を適合させるための適応能力の評価が検討された(
図7Aおよび7B参照)。
【0118】
実施例3 - コンカテマーアレイの作製のためのプロトコール
段階1
490mLの脱イオン水を10mLの50×TAE((Tris-アセテート-EDTA)緩衝液)と合わせることにより、500mLの1×TAEランニング緩衝液を調製する。
1gのアガロースおよび100mLの1×TAE緩衝液(2mLの50×TAEに98mLのオートクレーブ滅菌水を添加)をビーカーに入れて1%アガロースゲルを作り、この混合物を固体粒子または気泡がなくなるまで(約2.5分間)マイクロ波処理する。
該混合物を3分間冷却させる。
アガロースゲル混合液に10μLのGelRed(商標)を添加して、撹拌する(Biotium社から入手可能)。
ゲルキャスターとゲルコームを組み立てる。該混合物をゲルモールドに注ぎ、それを30分間冷ます(大きいコームの場合の容量:60μL)。
ゲルが冷めたら、ゲルが完全に浸水するまでボックスに1×TAE緩衝液を充填する。
DNAを線状化するために消化反応混合液を室温で調製する。
25μgのベクタープラスミドを制限酵素SfiIで消化する。別の反応で、耐性カセットプラスミドPGK-bleをPflMIで消化する(10μgは十分過ぎるほどである)。
【0119】
軽く混合し、加熱して37℃で15分間インキュベートする。
10μLのGeneRuler 1kb plus DNAラダー混合物(2μLのDNAラダー+8μLのヌクレアーゼフリー水)および50μLのサンプル混合物を使用可能なスロットに加える。
電気泳動装置の電源を入れて、150Vの電圧で1時間運転する。
該ゲルをUVP PhotoDoc-Itイメージングシステムに移し、結果の画像を取得する。
Eye-Fiウェブサイトからゲル写真をダウンロードする。
NanoDrop 2000分光光度計を用いて各サンプルのDNA濃度を測定する。
【0120】
段階2
アガロースゲルからDNAバンドを切り出す。
1容量のゲルに3倍容量のBuffer QGを加える(一般には500μLのQGを加える)。
ゲルスライスが完全に溶解した後、50℃で10分間インキュベートする。
サンプルをQIAquickカラムにアプライして、17,900rpmで1分間遠心分離する(Qiagen社から入手可能)。
フロースルーを捨て、QIAquickカラムを同じ収集用チューブに戻す。
QIAquickカラムに0.5mlのBuffer QGを添加し、1分間遠心分離する。
QIAquickカラムに0.75mlのBuffer PEを添加し、1分間遠心分離する。
フロースルーを捨て、QIAquickカラムを17,900rpmでさらに1分間遠心分離する。
QIAquickカラムを清浄な1.5ml微量遠心チューブに入れる。
DNAを溶出するために、35μLのBuffer EBをQIAquickメンブレンの中央に加え、カラムを17,900rpmで1分間遠心分離する(Buffer EBは10mM Tris-Cl, pH8.5である)。
NanoDrop 2000分光光度計を用いてDNA断片の濃度を測定する(表1;ブランク測定にEB緩衝液を使用)。
【0121】
段階3
氷上で1.7mLエッペンドルフ微量遠心チューブ内にライゲーション反応をセットアップする。
予め構築されたスプレッドシート(Concatemeric Ligations. xlsx)を使用して、ベクター対PGK-bleのモル比が約25:1になるように混合する必要がある各断片の容量を計算する。
ライゲーション反応における断片の容量を最大化し、所望のモル比を維持する。
T4 DNAリガーゼ緩衝液を解凍し、室温で再懸濁すべきである(T4 DNAリガーゼ緩衝液は以下の成分を含む:50mM Tris-HCl、10mM MgCl
2、1mM ATP、10mM DTT、pH7.5)。
ライゲーション反応をピペットで分注する。上記の例では、10μLの10×ライゲーション緩衝液(NEB Quick Ligationキット)および0.5μLのリガーゼ酵素(New England BioLabs社から入手可能)を添加することにより90μLのDNA混合物を使用した。
以下の成分を含む反応混合物を室温で調製する。
上下にピペッティングして軽く混合する。
室温で一晩インキュベートする。
【0122】
段階4
コンカテマーアレイを回収し、GPRG細胞へのトランスフェクション前にシリカベースのメンブレン(DNeasy Blood & Tissue Kit)により精製した。
2ml収集用チューブに入れたDNeasy Miniスピンカラムにコンカテマーアレイ混合物をピペットで移す。
8000×gで1分間遠心分離する。フロースルーと収集用チューブを捨てる。
該DNeasy Miniスピンカラムを新しい2ml収集用チューブ(装備品)(Qiagen社から入手可能)に入れる。
500μLのBuffer AW1を加えて、8000×gで1分間遠心分離する。
フロースルーと収集用チューブを捨てる。
該DNeasy Miniスピンカラムを新しい2ml収集用チューブ(装備品)に入れる。
500μLのBuffer AW2を加え、20,000×gで3分間遠心分離してDNeasyメンブレンを乾燥させる。
フロースルーと収集用チューブを捨てる。
該DNeasy Miniスピンカラムを清浄な1.7mlエッペンドルフ微量遠心チューブに入れる。
200μLのBuffer AEを該DNeasyメンブレンに直接添加する。
室温で4分間インキュベートする。
8000×gで1分間遠心分離してDNA混合物を溶出する。
溶出を1回繰り返す。
NanoDrop Lite分光光度計でコンカテマーDNA濃度を測定する。
【0123】
実施例4 - コンカテマーアレイを用いて産生細胞株を作製するためのプロトコール
細胞をウイルスベクターの産生に使用する前に、細胞を解凍した後で少なくとも4回継代する。
ベクターの誘導前に、トリパンブルー法を用いて細胞が健全であり、95%超が生存可能であることを確認する(トリパンブルーは一般に生存細胞計数のための色素排除法において使用される。この方法は、生きた(生存可能な)細胞は特定の色素を取り込まないが、死んだ(生存不可能な)細胞は取り込むという原理に基づく。染色は細胞形態の可視化を容易にする)。
所望の量のGPRG細胞を培養する。
細胞を播種する前に、細胞を毎日の継代で少なくとも2回二次培養する。
1日目に、GPRG細胞株の培養皿の培地を除去し、該細胞を1×PBSで洗浄する。
洗浄した細胞単層上に1×TrypLE Expressを、T75フラスコでは3mlを、T25フラスコでは1mLを使用して、ピペットで静かに分注する。
TrypLE Expressで該単層を覆うようにフラスコを回転させる。
フラスコをインキュベーターに戻し、2分間放置する。
フラスコの片面を軽くタッピングして、付着している残りの細胞を剥離させる。
2mLの新鮮なD10培地に該細胞を再懸濁し、15mLコニカル遠心チューブに移す。
細胞を1200rpmで5分間遠心分離する。
培地を吸引し、ペレットを、ドキシサイクリン(1ng/mL)を含む5mLの新鮮なD10培地中に軽く懸濁する。
TC10(商標)全自動セルカウンターにより細胞数を測定する(表5)。
トランスフェクションの20~24時間前に該細胞を80%コンフルエントで培養皿に播種する(ドキシサイクリンを含む60mm培養皿に3.2×106個の生細胞を播種することによる;表9)。
コンカテマーアレイの形成を準備する(例えば、実施例3参照)。
2日目に、トランスフェクションに先立ってCalPhos(商標)Mammalian Transfection Kitを室温に戻す(表7)(ClonTech社から入手可能)。
コンカテマーDNAを精製し、その濃度を測定する(コンカテマーアレイは本明細書に記載の方法に従って精製することができる)。
トランスフェクションプラスミドDNA表を作成する(表8;4mL、60mm培養皿)。
各トランスフェクションのために、溶液Aおよび溶液Bを別々の15mLコニカル遠心チューブに調製する。
ピペットを用いて溶液B(2×HBS)をバブリングし、溶液A(DNA混合物)を一滴ずつ添加する。
該トランスフェクション溶液を室温で15分間インキュベートする。
該トランスフェクション溶液を該培養皿に静かに加える。
プレートを静かに前後に動かして、トランスフェクション溶液をむらなく分配する。
プレートをCO2インキュベーター内で37℃、4時間インキュベートする。
37℃のCO2インキュベーター内で60mm培養皿あたり5mLの新鮮なD10培地を温める。
4時間後、1mLの予め温めたD10培地で洗浄し、4mLの予め温めた新鮮なD10培地と交換する。
37℃の5%CO2インキュベーターでインキュベートする。
コンカテマートランスフェクションの48時間後、トランスフェクトされたGPRG細胞を回収する(二次培養用の細胞で行う)。
ゼオシン(50μg/ml)とドキシサイクリン(1ng/mL)を含む新鮮なD10培地を用いて、T150フラスコまたは30mL,150mm培養皿に該細胞を再播種する。
細胞フォーカスが確認されるまで(通常1~2週間以内に観察される)、該細胞にドキシサイクリン(1ng/mL)を含む選択培地(ゼオシン、50μg/ml)を3~4日毎に供給する。
【0124】
実施例5 - GPRGパッケージング細胞株を作製するために使用される細胞株および配列の説明
HEK-293T/17はHEK-293Tのサブクローンである。これらの細胞はSV-40 T抗原を安定に発現し、特定のクローンを特にその高いトランスフェクション能力(transfectability)のために選択した。HEK-293T/17に基づくマスター細胞バンク(HEK-293T/17 MCB)が作製された。
【0125】
SFG-IC-HIVgp-Ppac2は、CMVプロモーターの制御下でコドン最適化HIV gagpolを発現する、ピューロマイシン耐性を有するガンマレトロウイルスベクターである。このベクターを作製するために使用したプラスミド(pSFG-IC-HIVgp-Ppac2)は以下の成分を用いて構築した:
(1) pSFG tcLuc ECT3は、テトラサイクリン調節プロモーター系を用いる制御された遺伝子発現に適した、レトロウイルスベクター骨格プラスミド(SFG)の派生物である(Lindemann, D., Patriquin, E., Feng, S., & Mulligan, R.C. Versatile retrovirus vector systems for regulated gene expression in vitro and in vivo. Mol. Med. 3, 466-476 (1997));
(2) CMVエンハンサー/プロモーター駆動されたコドン最適化HIV NL4-3 gagpol遺伝子;
(3) pMSCVpacに由来するPGKプロモーター駆動ピューロマイシン耐性遺伝子(Hawley, R.G., Lieu, F.H., Fong, A.Z., & Hawley, T.S. Versatile retroviral vectors for potential use in gene therapy. Gene Ther. 1, 136-138 (1994))。
【0126】
HEK-293T/17 MCBのSFG-IC-HIVgp-Ppac2レトロウイルスベクターによる感染は、GP細胞株をもたらした。
【0127】
SFG-tc-revcoは、テトラサイクリン応答性プロモーターの制御下でコドン最適化HIV revを発現するガンマレトロウイルスベクターである。このベクターを作製するために使用したプラスミド(pSFG-tc-revco)は以下の成分を用いて構築した:
(1) 上記のようなNL4-3株の配列に基づくHIV rev遺伝子;および
(2) pSFG tcLuc ECT3(上記)。
【0128】
SFG-tTAは、レトロウイルスLTRの制御下でキメラ転写トランスアクチベーターを発現するガンマレトロウイルスベクターである(Lindemann, D., Patriquin, E., Feng, S., and Mulligan, R.C. Versatile retrovirus vector systems for regulated gene expression in vitro and in vivo. Mol. Med. 3, 466-476 (1997))。それは、SFGレトロウイルスベクターに基づいており、プラスミドpUHD15-1由来のTetプロモーターエレメントを組み込んでいる(Gossen M, and Bujard, H. (1992) PNAS 89 12:5547-5551)。
【0129】
GP細胞株のSFG-tc-revcoとSFG-tTAによる感染は、GPR細胞株をもたらした。
【0130】
SFG-tc-VSVGは、テトラサイクリン調節プロモーターの制御下でVSV糖タンパク質Gを発現するガンマレトロウイルスベクターである。このベクターを作製するために使用したプラスミド(pSFG-tc-VSVG)は、他のベクターと同じpSFGtcLucECT3骨格、およびVSVGエンベロープタンパク質の供給源としてのプラスミドpMD.Gを用いて作製した(Ory, D.S., Neugeboren, B.A., and Mulligan, R.C. A stable human-derived packaging cell line for production of high titer retrovirus/vesicular stomatitis virus G pseudotypes. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93, 11400-11406 (1996)およびRose, J.K. & Gallione, C. (1981) J. Virol. 39, 519-528を参照されたい)。
【0131】
GPR細胞株のSFG-tc-VSVGによる感染は、GPRG細胞株をもたらした。
【0132】
GPRS細胞株を作製するためのGPR細胞株のRetro-SVGmuによる感染は、Lee, Chi-Lin et al. "Construction of Stable Producer Cells to Make High-Titer Lentiviral Vectors for Dendritic Cell-Based Vaccination." Biotechnology and Bioengineering 109.6 (2012): 1551-1560. PMC. Web. 14 Apr. 2016に記載されている。
【0133】
実施例6 - コンカテマーアレイの精製
GPRG細胞へのトランスフェクション前に、シリカベースのメンブレン(DNeasy Blood & Tissue Kit)でコンカテマーを回収し、精製した。
2mL収集用チューブに入れたDNeasy Miniスピンカラムにコンカテマーアレイ混合物をピペットで移す。
6000×gで1分間遠心分離する。フロースルーと収集用チューブを捨てる。
該DNeasy Miniスピンカラムを新しい2mL収集用チューブ(装備品)に入れる。
500μLのBuffer AW1を加えて、6000×gで1分間遠心分離する。
フロースルーと収集用チューブを捨てる。
該DNeasy Miniスピンカラムを新しい2ml収集用チューブ(装備品)に入れる。
500μLのBuffer AW2を加え、20,000×gで3分間遠心分離してDNeasyメンブレンを乾燥させる。
フロースルーと収集用チューブを捨てる。
該DNeasy Miniスピンカラムを清浄な1.7mLエッペンドルフ微量遠心チューブに入れる。
200μLのBuffer AEを該DNeasyメンブレンに直接添加する。
室温で4分間インキュベートする。
6000×gで1分間遠心分離してDNA混合物を溶出する。
溶出を1回繰り返す(新しい溶出緩衝液を加える)。
NanoDrop Lite分光光度計でコンカテマーDNA濃度を測定する。
【0134】
実施例7 - TL20-Ubc-GFPおよびTL20-Cal1-WPRE産生細胞株
以下の表は、本明細書に記載の方法に従って合成された2つの産生細胞株を要約したものである。TL20-Cal1-wpreおよびTL20-Unc-GFPベクターに関するデータは、
図20A、20B、および20Cにさらに示されている。
【0135】
1. 略語: TU、形質導入単位。
2. USC Flow Cytometry Core Facilityでフローサイトメーターを使用することにより単一細胞ソーティングを行う。
3. 馴化培地: GlutaMax含有DMEM; FBS (10%w/v); ペニシリン/ストレプトマイシン(1%w/v); ドキシサイクリン(1ng/mL)。
【0136】
本明細書で言及された全ての刊行物は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。当業者には、広範に記載された本開示の精神または範囲から逸脱することなく、特定の態様に示されるように、本開示に対して多くの変形および/または修飾をなし得ることが理解されるであろう。したがって、本態様は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0137】
本明細書中の開示は特定の態様に関連して記載されているが、これらの態様は、本開示の原理および適用の単なる例示であることを理解されたい。したがって、例示的な態様に対して多くの変更を行うことができ、添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の精神および範囲から逸脱することなく、他の構成を考え出すことができることを理解すべきである。
【配列表】