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特許7469289マイクロポーラスめっき液およびこのめっき液を用いた被めっき物へのマイクロポーラスめっき方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】マイクロポーラスめっき液およびこのめっき液を用いた被めっき物へのマイクロポーラスめっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/12 20060101AFI20240409BHJP
   C25D 15/02 20060101ALI20240409BHJP
   C25D 21/14 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C25D3/12
C25D15/02 F
C25D15/02 G
C25D21/14 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021504951
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2020008897
(87)【国際公開番号】W WO2020184289
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2019044556
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000120386
【氏名又は名称】株式会社JCU
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 佳那
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-125274(JP,A)
【文献】特表2016-505720(JP,A)
【文献】特開2010-185116(JP,A)
【文献】特開平04-371597(JP,A)
【文献】特開平03-291395(JP,A)
【文献】特開平10-251870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00-3/66
C25D 15/02
C25D 21/00-21/22
G03G 9/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性粒子とポリ塩化アルミニウムを含有し、
非導電性粒子がケイ素、バリウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタン酸化物、窒化物、硫化物および無機塩から選ばれる1種以上であり、
非導電性粒子の平均粒子径が0.1~10μmであり、
ポリ塩化アルミニウムの塩基度が50~65であり、
ポリ塩化アルミニウムの含有量が0.06~50.0wt%である、
ことを特徴とするマイクロポーラス電解ニッケルめっき液。
【請求項2】
非導電性粒子の含有量が0.01~10wt%である請求項1記載のマイクロポーラス電解ニッケルめっき液。
【請求項3】
更に界面活性剤を含有するものである請求項1または2記載のマイクロポーラス電解ニッケルめっき液。
【請求項4】
更に光沢剤を含有するものである請求項1~3の何れかに記載のマイクロポーラス電解ニッケルめっき液。
【請求項5】
電解ニッケルめっき液である請求項1~4の何れかに記載のマイクロポーラス電解ニッケルめっき液。
【請求項6】
非導電性粒子が二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウムおよび硫酸バリウムから選ばれる1種以上である請求項1~5の何れかに記載のマイクロポーラス電解ニッケルめっき液。
【請求項7】
被めっき物を請求項1~6の何れかに記載のマイクロポーラス電解ニッケルめっき液中でめっきすることを特徴とする被めっき物へのマイクロポーラス電解ニッケルめっき方法。
【請求項8】
被めっき物を請求項1~6の何れかに記載のマイクロポーラス電解ニッケルめっき液中でめっきする際に、マイクロポーラスめっき液中に含有されるポリ塩化アルミニウムの塩基度を変化させることを特徴とする電解ニッケルめっきのマイクロポーラスの数の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非導電性粒子を含有するマイクロポーラスめっき液およびこのめっき液を用いた被めっき物へのマイクロポーラスめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車部品、水洗金具などの装飾めっきとしてクロムめっきが使用されている。しかしクロムめっきは均一に析出せず皮膜に孔が開くため、クロムめっき皮膜のみでは腐食電流が一点に集中してしまう。そのため通常では耐食性向上のためにクロムめっきの下に多層ニッケルを使用することが多い。
【0003】
多層ニッケルは下から半光沢ニッケルめっき、高硫黄含有ニッケルストライクめっき、光沢ニッケルめっき、マイクロポーラスめっきからなるが、特に耐食性向上に寄与するのはマイクロポーラスめっきである。このマイクロポーラスめっき皮膜があることで、クロムめっき表層に目には見えない微小な孔を多数形成することができ、腐食電流を分散し、耐食性を向上することが可能である(特許文献1)。
【0004】
めっき皮膜にこのようなマイクロポーラスを形成する技術として、水酸化アルミニウムを用いてプラスに帯電させたシリカ粒子等の非導電性粒子を含有させためっき液を用いて電気めっきを行うことが知られている(特許文献2)。この技術では、めっき液中で水酸化アルミニウムを形成させるアルミニウム化合物として、アルミン酸ナトリウム(NaAlO)が用いられているが、このようなアルミニウム化合物としては、アルミニウムの硫酸塩や塩化物、ないしは塩化物の無水和物等を用いられることも知られている。
【0005】
しかしながら、このような従来の技術でプラスに帯電させた非導電性粒子を予め調製しておくと固化してしまうため、使用時に毎回別々に添加する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平03-291395号公報
【文献】特開平04-371597号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】「マイクロポーラスクロムめっきの表面腐食防止」、古賀孝昭、実務表面技術、28巻、11号、p522-527、(1981)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、プラスに帯電させた非導電性粒子の調製が容易で、安定性が高く、めっき皮膜に形成されるマイクロポーラスの数も良好なものとなるマイクロポーラスめっき液やめっき方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが上記課題を解決するために鋭意研究した結果、非導電性粒子をプラスに帯電させる際に、従来は使用されていなかった特定のアルミニウム化合物を使用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、非導電性粒子とポリ塩化アルミニウムを含有することを特徴とするマイクロポーラスめっき液である。
【0011】
また、本発明は、非導電性粒子とポリ塩化アルミニウムを含有することを特徴とするマイクロポーラスめっき用添加剤である。
【0012】
更に、本発明は、次の(a)および(b)をそれぞれ別に含有するマイクロポーラスめっき用添加剤キットである。
(a)非導電性粒子
(b)ポリ塩化アルミニウム
【0013】
また更に、本発明は、被めっき物を、上記のマイクロポーラスめっき液中で電気めっきすることを特徴とする被めっき物へのマイクロポーラスめっき方法である。
【0014】
更にまた、本発明は、被めっき物を、上記のマイクロポーラスめっき液中でめっきする際に、マイクロポーラスめっき液中に含有されるポリ塩化アルミニウムの塩基度を変化させることを特徴とするめっきのマイクロポーラスの数の制御方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマイクロポーラスめっき液は、プラスに帯電させた非導電性粒子の調製が容易で、安定性が高く、これを用いてめっきをすればめっき皮膜に形成されるマイクロポーラスの数も良好なものとなる。
【0016】
また、本発明のマイクロポーラスめっき液に用いられるポリ塩化アルミニウムの塩基度を変化させることによりめっきのマイクロポーラスの数も制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】試験例1の結果を示す図である(比較例1のマイクロポーラスめっき用添加剤。:実施例1のマイクロポーラスめっき用添加剤)。
図2】試験例2で用いたベントカソードテストピース(真鍮)の形状および微孔数測定部位を示す図である。
図3】試験例7の分散性試験の結果を示す図である。
図4】試験例7において、測定値を示す図である。
図5】試験例8で用いたベントカソードテストピース(真鍮)の形状および微孔数測定部位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のマイクロポーラスめっき液(以下、「本発明めっき液」という)は、非導電性粒子とポリ塩化アルミニウムを含有するものである。
【0019】
本発明めっき液に用いられる非導電性粒子は特に限定されないが、例えば、ケイ素、バリウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタンの酸化物、窒化物、硫化物および無機塩等が挙げられる。これらの中でも、シリカ(二酸化ケイ素)、ジルコニア(二酸化ジルコニウム)等の酸化物、硫酸バリウム等の無機塩が好ましい。これらは1種以上を用いることができる。このような非導電性粒子としては、例えば、株式会社JCUのMP POWDER 308やMP POWDER 309A等の市販品も用いることができる。これら非導電性粒子の平均粒子径は特に限定されないが、例えば、0.1~10μm、好ましくは1.0~3.0μmである。なお、この平均粒子径は、大塚電子株式会社製、ゼータ電位・粒径・分子量測定システムELSZ-2000で測定される値である。
【0020】
本発明めっき液における非導電性粒子の含有量は特に限定されないが、例えば0.01~10wt%(以下、単に「%」と言う)、好ましくは0.05~10%である。
【0021】
本発明めっき液に用いられるポリ塩化アルミニウムは下記式で表されるものである。ポリ塩化アルミニウムの塩基度は特に限定されないが、例えば、50~65である。また塩基度とは下記式におけるn/6×100(%)で表す数値であり、ビシンコニン酸法を用い吸光度から算出する事が可能である。なお、本発明めっき液に用いられるポリ塩化アルミニウムの塩基度が低いとめっきのマイクロポーラスの数は増え、塩基度が高いとマイクロポーラスの数は減るので、ポリ塩化アルミニウムの塩基度を適宜選択することによりマイクロポーラスの数を制御できる。
【0022】
【化1】
【0023】
本発明めっき液に、ポリ塩化アルミニウムを含有させる際には、粉体のポリ塩化アルミニウムを添加してもよいし、例えば、大明化学工業株式会社のタイパックシリーズ、南海化学株式会社のPAC等の酸化アルミニウムとして10%程度の水溶液となっている市販品を添加してもよい。これらのポリ塩化アルミニウムはそのままあるいは適宜希釈等してから添加してもよい。
【0024】
本発明めっき液におけるポリ塩化アルミニウムの含有量は特に限定されないが、酸化アルミニウムとして例えば、0.06~50.0%が好ましく、より好ましくは0.06~40%である。
【0025】
本発明めっき液は、ベースとなるめっき液に非導電性粒子とポリ塩化アルミニウムが含有されていればよい。ベースとなるめっき液は特に限定されず、例えば、ワット浴、スルファミン酸浴等の電解ニッケルめっき液、硫酸塩浴・塩化物浴等の3価クロムめっき液、次亜リン酸塩を還元剤として用いる無電解ニッケルめっき液、スズ-ニッケル合金電解めっき浴、スズ-コバルト合金電解めっき浴、ニッケル-りん合金電解めっき浴等の合金電解めっき液等が挙げられる。これらのめっき液の中でも電解ニッケルめっき液が好ましい。
【0026】
なお、上記ベースとなるめっき液は、均一な微孔の生成を維持するために、比重が1.0~1.6g/cmのものが好ましく、1.1~1.4g/cmのものがより好ましい。
【0027】
また、上記ベースとなるめっき液のpHは、特に規定されないが、後述するめっき時のpHと同様にしておくことが望ましい。
【0028】
本発明めっき液には、更に界面活性剤を含有させることが、分散性維持の点から好ましい。界面活性剤は特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコールのようなノニオン系やポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムのようなアニオン系や、塩化ベンゼトニウム、ステアリルアミンアセテートのようなカチオン系、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性界面活性剤等が挙げられる。これら界面活性剤は1種以上を用いることができる。これら界面活性剤の中でもプラスに帯電するカチオン系もしくは使用するpH領域でカチオン性を示す両性界面活性剤が好ましい。
【0029】
本発明めっき液における界面活性剤の含有量は特に限定されないが、例えば、0.001~5%が好ましく、より好ましくは0.001~2%である。
【0030】
本発明めっき液には、更に、光沢剤を含有させることが、外観向上および防錆目的のための電気化学的電位の調整の点から好ましい。光沢剤の種類は特に限定されず、各種ベースとなるめっき液に適した光沢剤の中から適宜1種または2種以上選択すればよい。
【0031】
本発明めっき液における光沢剤の含有量は特に限定されないが、例えば、0.01~20%は好ましく、より好ましくは0.1~15%である。
【0032】
本発明めっき液には、更に、防錆目的で電気化学的電位を調整するために、例えば、抱水クロラール等の成分を含有させてもよい。
【0033】
ベースとなるめっき液のうち、ワット浴の組成としては下記のような組成が挙げられる。
硫酸ニッケル(NiSO・6HO):240~300g/L
塩化ニッケル(NiCl・6HO): 30~ 45g/L
ほう酸(HBO): 30~ 45g/L
【0034】
スルファミン酸浴の組成としては下記のような組成が挙げられる。
スルファミン酸ニッケル(Ni(SONH)・4HO):
300~600g/L
塩化ニッケル(NiCl・6HO): 0~ 15g/L
ほう酸(HBO): 30~ 40g/L
【0035】
上記ワット浴、スルファミン酸浴等の電解ニッケルめっき浴には、更に、一次光沢剤、二次光沢剤を含有させることが好ましい。一次光沢剤としては、例えば、スルフォンアミド、スルフォンイミド、ベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸等が挙げられる。この一次光沢剤としては、例えば、MP333(株式会社JCU製)等が市販されているのでこれを用いてもよい。また、二次光沢剤としては、例えば、1,4-ブチンジオールやクマリン等が挙げられる。二次光沢剤は次のような官能基(C=O、C=C、C≡C、C=N、C≡N、N-C=S、N=N、-CH-CH-O)を有する有機化合物である。この二次光沢剤としては、例えば、#810(株式会社JCU製)等が市販されているのでこれを用いてもよい。これら一次光沢剤および二次光沢剤は、単独でも組み合わせてもよい。また、一次光沢剤は5~15 ml/L、二次光沢剤は10~35 ml/L程度加えることが好ましい。
【0036】
3価クロムめっき浴の組成としては下記のような組成が挙げられる。
<硫酸塩浴>
塩基性硫酸クロム(Cr(OH)SO): 50~ 80g/L
酒石酸ジアンモニウム([CH(OH)COONH]):
25~ 35g/L
硫酸カリウム(KSO): 5~150g/L
硫酸アンモニウム((NHSO): 5~150g/L
ほう酸(HBO): 60~ 80g/L
【0037】
上記硫酸塩浴等の3価クロムめっき浴には、更に、硫黄含有有機化合物を含有させることが好ましい。硫黄含有有機化合物としては、サッカリンまたはその塩と、アリル基を有する硫黄含有有機化合物を組み合わせて用いることが好ましい。サッカリンまたはその塩としては、例えば、サッカリン、サッカリン酸ナトリウムが挙げられる。またアリル基を有する硫黄含有有機化合物としては、例えば、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルチオ尿素、2-メチルアリルスルホン酸ナトリウム、アリルイソチオシアネートなどが挙げられる。アリル基を有する硫黄含有有機化合物は1種または2種組み合わせてもよく、アリルスルホン酸ナトリウムやアリルチオ尿素をそれぞれ単独、もしくは組み合わせて使用することが好ましい。これら硫黄含有有機化合物の好ましい組み合わせはサッカリン酸ナトリウムとアリルスルホン酸ナトリウムである。また、硫黄含有有機化合物の含有量は例えば0.5~10g/Lであり、好ましくは2~8g/Lである。
【0038】
<塩化物浴>
塩基性硫酸クロム(Cr(OH)SO): 50 ~ 80 g/L
ギ酸アンモニウム(HCOONH): 13 ~ 22 g/L
塩化カリウム(KCl): 5 ~170 g/L
塩化アンモニウム(NHCl): 90 ~100 g/L
臭化アンモニウム(NHBr): 5.4~ 6.0g/L
ほう酸(HBO): 60 ~ 80 g/L
【0039】
無電解ニッケルめっき浴の組成としては下記のような組成が挙げられる。
硫酸ニッケル(NiSO・6HO): 15~30g/L
ホスフィン酸ナトリウム(NaPH・HO): 20~30g/L
乳酸(CHCH(OH)COOH): 20~35g/L
リンゴ酸(HOOCCH(OH)CHCOOH): 10~20g/L
クエン酸(HOOCCHC(OH)(COOH)CHCOOH):
10~20g/L
プロピオン酸(CHCHCOOH): 5~10g/L
【0040】
スズ-ニッケル合金電解めっき浴の組成としては下記のような組成が挙げられる。
塩化ニッケル(NiCl・6HO): 250~300g/L
塩化錫(SnCl): 40~ 50g/L
塩化アンモニウム(NHCl): 90~110g/L
フッ化アンモニウム(NHF): 55~ 65g/L
【0041】
スズ-コバルト合金電解めっき浴の組成としては下記のような組成が挙げられる。
塩化コバルト(CoCl): 360~440g/L
フッ化第一スズ(SnF): 60~ 72g/L
フッ化アンモニウム(NHF): 25~ 35g/L
【0042】
上記スズ-コバルト合金電解めっき浴には、更に、先に列挙したような一次光沢剤を5~15ml/L、二次光沢剤を10~35ml/L含有させてもよい。
【0043】
ニッケル-りん合金電解めっき浴の組成としては下記のような組成が挙げられる。
硫酸ニッケル(NiSO・6HO): 150~200g/L
塩化ナトリウム(NaCl): 18~ 22g/L
ほう酸(HBO): 18~ 22g/L
次亜リン酸ナトリウム(NaHPO・HO): 20~ 30g/L
正リン酸(HPO): 40~ 50g/L
【0044】
上記ニッケル-りん合金電解めっき浴には、更に、先に列挙したような一次光沢剤を5~15ml/L、二次光沢剤を10~35ml/L含有させてもよい。
【0045】
本発明めっき液の調製方法は、非導電性粒子とポリ塩化アルミニウムをベースとなるめっき液に含有させるだけで非導電性粒子がプラスに帯電するため、特に限定されないが、好ましくは非導電性粒子とポリ塩化アルミニウムを含有するマイクロポーラスめっき用添加剤や、次の(a)および(b)をそれぞれ別に含有するマイクロポーラスめっき用添加剤キット等を、ベースのめっき液に添加し、混合すればよい。
(a)非導電性粒子
(b)ポリ塩化アルミニウム
【0046】
上記非導電性粒子とポリ塩化アルミニウムを含有するマイクロポーラスめっき用添加剤は、例えば、ベースとなるめっき液の一部や水等に、非導電性粒子を添加し、混合した後、ポリ塩化アルミニウムを添加し、混合すればよい。このようなマイクロポーラスめっき用添加剤は、従来の水酸化アルミニウムを形成するアルミニウム化合物を使用した場合と比較して、固化が起こらないため安定に保存することができ、非導電性粒子の消費時の補給をするのに好適である。
【0047】
また、上記マイクロポーラスめっき用添加剤キットにおいて、(a)および(b)は、それぞれそのままでも、ベースとなるめっき液や水等で希釈されていてもよい。
【0048】
本発明めっき液は、従来の被めっき物へのマイクロポーラスめっき方法において、マイクロポーラス形成に用いられるめっき液に代えて用いることにより、従来よりもマイクロポーラスの数も良好なマイクロポーラスめっきをすることができる。
【0049】
本発明めっき液でめっきできる被めっき物としては、めっきができるものであれば特に限定されないが、例えば、銅、ニッケル、亜鉛等の金属、ABS、PC/ABS、PP等の樹脂が挙げられる。また、本発明めっき液のめっき条件は、従来の被めっき物へのマイクロポーラスめっき方法の条件と同様でよく、例えば、温度50~55℃、pH4.0~5.5、電流密度3~4A/dm等の条件が挙げられる。
【0050】
具体的に、本発明めっき液を利用して、マイクロポーラスニッケルめっきを得るには、例えば、半光沢ニッケルめっき、高硫黄含有ニッケルストライクめっき、光沢ニッケルめっきの順でめっきを行い、次いで電解ニッケルめっき液をベースとする本発明めっき液中でめっきを行い、最後に、6価もしくは3価のクロムめっきを行えばよい。また、三価クロムめっきを行った後は電解クロメート処理を行ってもよい。
【0051】
マイクロポーラスニッケルめっきの下層は光沢ニッケルめっき、高硫黄含有ニッケルストライクめっき、半光沢ニッケルめっきとなる。光沢ニッケルめっき皮膜は硫黄含有率が0.05%~0.15%、高硫黄含有ニッケルストライクめっき皮膜は硫黄含有率が0.1~0.25%、半光沢ニッケルめっき皮膜は硫黄含有率が0.005%未満とされていることが好ましい。
【0052】
また、半光沢ニッケルめっき皮膜に対し、光沢ニッケルめっき皮膜は60~200mV程度卑であり、高硫黄含有ニッケルストライクめっき皮膜に対して光沢ニッケルめっき皮膜は10~50mV程度貴であり、マイクロポーラスニッケルめっき皮膜に対して光沢ニッケルめっき皮膜は10~120mV程度卑であることが好ましい。これらの電位調整は特開平5-171468号公報に記載されるような方法で行うことができる。
【0053】
半光沢ニッケルめっき皮膜を得るために用いられる半光沢ニッケルめっき浴は特に限定されないが、例えば、公知のニッケルめっき浴に、先に列挙したような一次光沢剤や二次光沢剤を添加することが好ましい。このような半光沢ニッケルめっき用の一次光沢剤としては、例えば、CF-NIIA(株式会社JCU製)等が市販されているのでこれを用いてもよい。また、半光沢ニッケルめっき用の二次光沢剤としては、例えば、CF-24T(株式会社JCU製)等が市販されているのでこれを用いてもよい。好ましい半光沢ニッケルめっき浴としては以下のものが挙げられる。また、めっき条件は特に限定されない。
【0054】
<半光沢ニッケルめっき浴>
硫酸ニッケル(NiSO・6HO) 200~350g/L
塩化ニッケル(NiCl・6HO) 30~ 45g/L
ほう酸(HBO) 30~ 45g/L
一次光沢剤 0.6~1.6ml/L
二次光沢剤 0.3~1.2ml/L
【0055】
高硫黄含有ニッケルストライクめっき浴は特に限定されないが、例えば、公知のニッケルめっき浴に、高硫黄含有とするために先に列挙したような一次光沢剤を添加することが好ましい。このような高硫黄含有ニッケルストライクめっき浴用の一次光沢剤としては、例えば、TRI-STRIKE(株式会社JCU製)等が市販されているのでこれを用いてもよい。また、好ましい高硫黄含有ニッケルストライクめっき浴としては以下のものが挙げられる。めっき条件は特に限定されない。
【0056】
<高硫黄含有ニッケルストライクめっき浴>
硫酸ニッケル(NiSO・6HO) 240~320g/L
塩化ニッケル(NiCl・6HO) 67~110g/L
ほう酸(HBO) 34~ 38g/L
一次光沢剤 10~ 25ml/L
【0057】
光沢ニッケルめっき浴は、電気化学的に半光沢ニッケルめっき皮膜よりも卑となる皮膜を形成できるものであれば特に限定されないが、例えば、公知のニッケルめっき浴に、先に列挙したような一次光沢剤および二次光沢剤を添加することが好ましい。このような光沢ニッケルめっき用の一次光沢剤としては、例えば、#83-S、#83(株式会社JCU製)等が市販されているのでこれを用いてもよい。また、光沢ニッケルめっき用の二次光沢剤としては#810(株式会社JCU製)等が市販されているのでこれを用いてもよい。好ましい光沢ニッケルめっき浴としては以下のものが挙げられる。また、めっき条件は特に限定されない。
【0058】
<光沢ニッケルめっき浴>
硫酸ニッケル(NiSO・6HO) 200~300g/L
塩化ニッケル(NiCl・6HO) 35~ 60g/L
ほう酸(HBO) 35~ 60g/L
一次光沢剤 5~ 10ml/L
二次光沢剤 10~ 35ml/L
【0059】
本発明めっき液の好ましいものとしては以下のものが挙げられる。また、めっき条件は特に限定されず、従来のマイクロポーラスめっきのめっき条件でよい。
【0060】
<マイクロポーラスニッケルめっき
硫酸ニッケル(NiSO・6HO) 240~320g/L
塩化ニッケル(NiCl・6HO) 35~ 60g/L
ほう酸(HBO) 35~ 60g/L
一次光沢剤 5~ 15ml/L
二次光沢剤 10~ 35ml/L
二酸化ケイ素(平均粒径1.5μm) 0.1~10g/L
ポリ塩化アルミニウム(酸化アルミニウム換算)0.04~0.4g/L
*塩基度55~65
【0061】
六価クロムめっき浴としては公知の六価クロムめっき浴を用いることができるが、更に触媒を添加することが好ましい。触媒としては、例えば、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化ストロンチウム等が挙げられる。また、六価クロムめっき用の触媒としては、例えば、ECR-300L(株式会社JCU製)等が市販されているのでこれを用いてもよい。好ましい六価クロムめっき浴としては以下のものが挙げられる。また、めっき条件は特に限定されない。
【0062】
<六価クロムめっき浴>
無水クロム酸(CrO) 200 ~250g/L
硫酸(HSO) 0.8~ 1g/L
ケイフッ化ナトリウム 5 ~ 10g/L
【0063】
三価クロムめっき浴は、特に限定されず、硫酸塩浴、塩化物浴のどちらでもかまわない。好ましい三価クロムめっき浴としては以下のものが挙げられる。また、めっき条件は特に限定されない。
【0064】
<三価クロムめっき浴>
塩基性硫酸クロム(Cr(OH)SO): 50 ~ 80g/L
ギ酸アンモニウム(HCOONH): 13 ~ 22g/L
塩化カリウム(KCl): 5 ~170g/L
塩化アンモニウム(NHCl): 90 ~100g/L
臭化アンモニウム(NHBr): 5.4~ 6g/L
ほう酸(HBO): 60 ~ 80g/L
【0065】
斯くして得られるマイクロポーラスめっき皮膜は耐食性に優れるため、自動車部品、水洗金具等の用途に好適である。
【実施例
【0066】
以下、本発明を、実施例を挙げ詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等になんら制約されるものではない。
【0067】
実 施 例 1
マイクロポーラスめっき用添加剤の調製:
以下の組成のワット浴を調製し、二酸化ケイ素を50g/L添加し、撹拌・混合した。次いでこれにポリ塩化アルミニウム(大明化学工業株式会社、タイパック6010、塩基度63)を酸化アルミニウム換算で2g/L添加し、攪拌・混合してプラスに帯電した非導電性粒子を含有するマイクロポーラスめっき用添加剤を得た。
【0068】
<ワット浴>
硫酸ニッケル(NiSO・6HO): 260g/L
塩化ニッケル(NiCl・6HO): 45g/L
ほう酸(HBO): 45g/L
比重: 1.200
【0069】
比 較 例 1
マイクロポーラスめっき用添加剤の調製:
実施例1で用いたのと同様の組成のワット浴を調製し、これに二酸化ケイ素を50g/L添加し、撹拌・混合した。次いでこれに水酸化アルミニウムを形成するアルミニウム化合物であるアルミン酸を酸化アルミニウム換算で2g/L添加し、攪拌・混合して帯電シリカ粒子を含有するマイクロポーラスめっき用添加剤を得た。
【0070】
試 験 例 1
分散性試験:
実施例1および比較例1で調製したマイクロポーラスめっき用添加剤を、それぞれガラス瓶容器に入れ、1週間放置した。放置後の容器を横に倒したところ、比較例1のマイクロポーラスめっき用添加剤は固化し、容器の底にこびりついているのが確認できた(図1)。一方、実施例1のマイクロポーラスめっき用添加剤は上手く分散していて、固化せず容器の底にこびりつかないことが確認できた(図1)。
【0071】
実 施 例 2
マイクロポーラスめっき液の調製:
実施例1で調製したマイクロポーラスめっき用添加剤を、以下の組成のワット浴に対し、15ml/L添加し、マイクロポーラスめっき液を調製した。
【0072】
<ワット浴>
硫酸ニッケル(NiSO・6HO): 260g/L
塩化ニッケル(NiCl・6HO): 45g/L
ほう酸(HBO): 45g/L
光沢剤#810: 3ml/L
光沢剤MP333: 10ml/L
浴温: 55℃
比重: 1.205
*株式会社JCU製
【0073】
比 較 例 2
マイクロポーラスめっき液の調製:
比較例1で調製したマイクロポーラスめっき用添加剤を、実施例2で用いたのと同様の組成のワット浴に対し15ml/L添加し、マイクロポーラスめっき液を調製した。
【0074】
試 験 例 2
マイクロポーラスめっき製品の製造:
試験片として図2の形状のベントカソードテストピース(真鍮:株式会社山本鍍金試験機製)を用い、以下の工程でマイクロポーラスめっき製品を製造した。
【0075】
(脱脂・酸活性)
試験片をSK-144(株式会社JCU製)で5分間処理して脱脂を行った後、V-345(株式会社JCU製)で30秒処理を行い、酸活性を行った。
【0076】
(光沢ニッケルめっき)
上記で脱脂・酸活性処理を行った試験片を以下のニッケルめっき液中、4A/dmで3分間めっきを行った。
<光沢ニッケルめっき浴>
硫酸ニッケル(NiSO・6HO): 260g/L
塩化ニッケル(NiCl・6HO): 45g/L
ほう酸(HBO): 45g/L
光沢剤#810: 3ml/L
光沢剤#83: 10ml/L
*株式会社JCU製
【0077】
(マイクロポーラスめっき)
光沢めっきを施した試験片を実施例2もしくは比較例2で調製したマイクロポーラスめっき液中で3A/dmで3分間めっきを行った。
【0078】
(クロムめっき)
上記マイクロポーラスニッケルめっきを施した試験片を以下の組成の六価クロムめっき液中で10A/dmで3分間めっきを行った。
<六価クロムめっき浴>
無水クロム酸(CrO): 250 g/L
硫酸(HSO): 1 g/L
添加剤ECR 300L: 10 ml/L
ミストシャット MISTSHUT NP: 0.1ml/L
*株式会社JCU製
【0079】
(微孔数の測定1)
クロムめっきあがりの試験片に対して以下の組成の硫酸銅めっき液に3分間浸漬を行い、その後、その硫酸銅めっき液中で0.5A/dmで3分間めっきを行った。
【0080】
<硫酸銅めっき
硫酸銅(CuSO・5HO): 220 g/L
硫酸(HSO): 50 g/L
塩酸(HCl): 0.15ml/L
【0081】
(微孔数の測定2)
硫酸銅めっき後、試験片を静かに水洗し、風乾させた後に、めっき皮膜の微孔数を測定した。なお、微孔数の測定は、試験片の評価面に対、株式会社キーエンス製のマイクロスコープVHX-2000を使用して行った。実施例2および比較例2の微孔数の測定結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1から明らかなように、めっき液中の酸化アルミニウムの換算量が同じでも、ポリ塩化アルミニウムを使用している実施例2の方が多くの微孔数を得られた。
【0084】
試 験 例 3
添加剤の経時性能:
実施例2で用いたのと同様の組成のワット浴に対して実施例1で調製した添加剤を10ml/Lで添加を行い、調製直後、調製1ヶ月後での性能差を比較した。めっきは試験例2と同様にして行い、微孔数(個/cm)も同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
表2から明らかなように、調製直後と調製1ヶ月後で微孔数はほぼ一定であった。これらの結果は、実施例1で調製した添加剤は、1ヵ月後でも安定した性能を維持できることを示した。
【0087】
実 施 例 3
マイクロポーラスめっき液の調製:
実施例2で用いたのと同様の組成のワット浴267mlに対し二酸化ケイ素(平均粒径1.5μm)を1g/L、ポリ塩化アルミニウム(タイパック、大明化学工業株式会社製、塩基度55)を酸化アルミニウム換算で0.04g/L加えて、マイクロポーラスめっき液を調製した。
【0088】
実 施 例 4
マイクロポーラスめっき液の調製:
実施例2で用いたのと同様の組成のワット浴267mlに対し二酸化ケイ素(平均粒径1.5μm)を1g/L、ポリ塩化アルミニウム(アルファイン83、大明化学工業株式会社製、塩基度83)を酸化アルミニウム換算で0.04g/L加えて、マイクロポーラスめっき液を調製した。
【0089】
実 施 例 5
マイクロポーラスめっき液の調製:
実施例2で用いたのと同様の組成のワット浴267mlに対し二酸化ケイ素(平均粒径1.5μm)を1g/L、ポリ塩化アルミニウム(PAC、南海化学工業株式会社、塩基度53)を酸化アルミニウム換算で0.04g/L加えて、マイクロポーラスめっき液を調製した。
【0090】
実 施 例 6
マイクロポーラスめっき液の調製:
実施例2で用いたのと同様の組成のワット浴267mlに対し二酸化ケイ素(平均粒径1.5μm)を1g/L、ポリ塩化アルミニウム(タイパック6010、大明化学工業株式会社製、塩基度63)を酸化アルミニウム換算で0.04g/L加えて、マイクロポーラスめっき液を調製した。
【0091】
試 験 例 4
ポリ塩化アルミニウムの塩基度の比較:
60cm×10cmの大きさの真鍮板(ハルセル板)を試験片として用いた。この試験片を、マイクロポーラスめっき液として実施例3~6で調製したマイクロポーラスめっき液を用いる以外は試験例2と同様にし、電流値は2Aとしてマイクロポーラスめっき製品を製造した。
【0092】
なお、微孔数(個/cm)の測定は、ハルセル板の6A/dm、3A/dm、1A/dm部位に対、株式会社キーエンス製のマイクロスコープVHX-2000を使用して行った。その結果を表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
表3から、同じポリ塩化アルミニウムでも塩基度の違いで微孔数をコントロールできることが分かった。また耐食性にとって好適な塩基度としては50~65であると言える。
【0095】
実 施 例 7
マイクロポーラスめっき用添加剤の調製:
以下の組成の溶液に対して、二酸化ケイ素(平均粒径1.5μm)を50g/L添加し、撹拌・混合した。次いでこれにポリ塩化アルミニウム(大明化学工業株式会社、タイパック6010、塩基度63)を酸化アルミニウム換算で2gL添加し、攪拌・混合してプラスに帯電した非導電性粒子を含有するマイクロポーラスめっき用添加剤を得た。
【0096】
硫酸ニッケル(NiSO・6HO): 260g/L
ほう酸(HBO): 45g/L
比重: 1.162
【0097】
実 施 例 8
マイクロポーラスめっき用添加剤の調製:
以下の組成の溶液に対して、二酸化ケイ素(平均粒径1.5μm)を50g/L添加し、撹拌・混合した。次いでこれにポリ塩化アルミニウム(大明化学工業株式会社、タイパック6010、塩基度63)を酸化アルミニウム換算で2gL添加し、攪拌・混合してプラスに帯電した非導電性粒子を含有するマイクロポーラスめっき用添加剤を得た。
【0098】
塩化ニッケル(NiCl・6HO): 260g/L
ほう酸(HBO): 45g/L
比重: 1.133
【0099】
実 施 例 9
マイクロポーラスめっき用添加剤の調製:
以下の組成の溶液に対して、二酸化ケイ素(平均粒径1.5μm)を50g/L添加し、撹拌・混合した。次いでこれにポリ塩化アルミニウム(大明化学工業株式会社、タイパック6010、塩基度63)を酸化アルミニウム換算で2gL添加し、攪拌・混合してプラスに帯電した非導電性粒子を含有するマイクロポーラスめっき用添加剤を得た。
【0100】
硫酸ニッケル(NiSO・6HO): 470g/L
塩化ニッケル(NiCl・6HO): 35g/L
ほう酸(HBO): 40g/L
比重: 1.280
【0101】
実 施 例 10
マイクロポーラスめっき用添加剤の調製:
以下の組成の溶液に対して、二酸化ケイ素(平均粒径1.5μm)を50g/L添加し、撹拌・混合した。次いでこれにポリ塩化アルミニウム(大明化学工業株式会社、タイパック6010、塩基度63)を酸化アルミニウム換算で2gL添加し、攪拌・混合してプラスに帯電した非導電性粒子を含有するマイクロポーラスめっき用添加剤を得た。
【0102】
水: 1L/L
比重: 1.000
【0103】
実 施 例 11
マイクロポーラスめっき液の調製:
実施例7で調製したマイクロポーラスめっき用添加剤を、実施例2で用いたのと同様の組成のワット浴1Lに対し、10ml/L添加してマイクロポーラスめっき液を調製した。
【0104】
実 施 例 12
マイクロポーラスめっき液の調製:
実施例8で調製したマイクロポーラスめっき用添加剤を、実施例2で用いたのと同様の組成のワット浴1Lに対し、10ml/L添加してマイクロポーラスめっき液を調製した。
【0105】
実 施 例 13
マイクロポーラスめっき液の調製:
実施例9で調製したマイクロポーラスめっき用添加剤を、実施例2で用いたのと同様の組成のワット浴1Lに対し、10ml/L添加してマイクロポーラスめっき液を調製した。
【0106】
実 施 例 14
マイクロポーラスめっき液の調製:
実施例10で調製したマイクロポーラスめっき用添加剤を、実施例2で用いたのと同様の組成のワット浴267mLに対し、3ml/L添加してマイクロポーラスめっき液を調製した。
【0107】
実 施 例 15
マイクロポーラスめっき液の調製:
実施例1で調製したマイクロポーラスめっき用添加剤を、実施例2で用いたのと同様の組成のワット浴267mLに対し、3ml/L添加してマイクロポーラスめっき液を調製した。
【0108】
試 験 例 5
添加剤の溶媒の検討:
マイクロポーラスめっき液として実施例11~13で調製したマイクロポーラスめっき液を用いる以外は試験例2と同様にしてマイクロポーラスめっき製品を製造した。微孔数(個/cm)も試験例2と同様にして測定した。結果を表4に示す。
【0109】
【表4】
【0110】
添加剤の溶媒によって同じ添加量でも微孔の数が異なることがわかった。
【0111】
試 験 例 6
添加剤の溶媒の検討:
マイクロポーラスめっき液として実施例14~15で調製したマイクロポーラスめっき液を用いる以外は試験例4と同様にしてマイクロポーラスめっき製品を製造した。微孔数(個/cm)も試験例と同様にして測定した。結果を表5に示す。
【0112】
【表5】
【0113】
添加剤の溶媒によって同じ添加量でも微孔の数が異なることがわかった。
【0114】
試 験 例 7
沈降性試験:
実施例1および実施例7~10で調製したマイクロポーラスめっき用添加剤を、それぞれ透明なガラス容器に入れ、1時間放置した。放置後、容器を確認したところ実施例10のマイクロポーラスめっき用添加剤は他のサンプルよりもプラスに帯電した非導電性粒子の沈降が早かった。一方で、実施例のマイクロポーラスめっき用添加剤が最もプラスに帯電した非導電性粒子の沈降が遅かった(図3)。
【0115】
続いて図4のように溶液全体の高さからプラスに帯電した非導電性粒子が沈降した部分の高さを引き、パウダーの沈降した高さを求めた。結果を表6に示す。
【0116】
【表6】
【0117】
添加剤の溶媒によって沈降速度が異なることがわかった。
【0118】
実 施 例 16
マイクロポーラスめっき液の調製:
以下の組成のワット浴に対して、二酸化ケイ素(平均粒径1.5μm)を1g/L添加し、撹拌・混合した。次いでこれにポリ塩化アルミニウム(大明化学工業株式会社、タイパック6010、塩基度63)を酸化アルミニウム換算で0.04gL添加し、攪拌・混合してプラスに帯電した非導電性粒子を含有するマイクロポーラスめっき液を得た。
【0119】
<ワット浴>
硫酸ニッケル(NiSO・6HO): 260g/L
塩化ニッケル(NiCl・6HO): 40g/L
ほう酸(HBO): 40g/L
光沢剤#810: 3ml/L
光沢剤MP333: 10ml/L
比重: 1.191
*株式会社JCU製
【0120】
実 施 例 17
マイクロポーラスめっき液の調製:
以下の組成のワット浴に対して、二酸化ケイ素(平均粒径1.5μm)を1g/L添加し、撹拌・混合した。次いでこれにポリ塩化アルミニウム(大明化学工業株式会社、タイパック6010、塩基度63)を酸化アルミニウム換算で0.04gL添加し、攪拌・混合してプラスに帯電した非導電性粒子を含有するマイクロポーラスめっき液を得た。
【0121】
<ワット浴>
硫酸ニッケル(NiSO・6HO): 300g/L
塩化ニッケル(NiCl・6HO): 40g/L
ほう酸(HBO): 40g/L
光沢剤#810: 3ml/L
光沢剤MP333: 10ml/L
比重: 1.212
*株式会社JCU製
【0122】
実 施 例 18
マイクロポーラスめっき液の調製:
以下の組成のワット浴に対して、二酸化ケイ素(平均粒径1.5μm)を1g/L添加し、撹拌・混合した。次いでこれにポリ塩化アルミニウム(大明化学工業株式会社、タイパック6010、塩基度63)を酸化アルミニウム換算で0.04gL添加し、攪拌・混合してプラスに帯電した非導電性粒子を含有するマイクロポーラスめっき液を得た。
【0123】
<ワット浴>
硫酸ニッケル(NiSO・6HO): 350g/L
塩化ニッケル(NiCl・6HO): 40g/L
ほう酸(HBO): 40g/L
光沢剤#810: 3ml/L
光沢剤MP333: 10ml/L
比重: 1.241
*株式会社JCU製
【0124】
実 施 例 19
マイクロポーラスめっき液の調製:
以下の組成のワット浴に対して、二酸化ケイ素(平均粒径1.5μm)を1g/L添加し、撹拌・混合した。次いでこれにポリ塩化アルミニウム(大明化学工業株式会社、タイパック6010、塩基度63)を酸化アルミニウム換算で0.04gL添加し、攪拌・混合してプラスに帯電した非導電性粒子を含有するマイクロポーラスめっき液を得た。
【0125】
<ワット浴>
硫酸ニッケル(NiSO・6HO): 400g/L
塩化ニッケル(NiCl・6HO): 40g/L
ほう酸(HBO): 40g/L
光沢剤#810: 3ml/L
光沢剤MP333: 10ml/L
比重: 1.275
*株式会社JCU製
【0126】
試 験 例 8
ワット浴比重による微孔数の確認:
マイクロポーラスめっき液として実施例16~19で調製したマイクロポーラスめっき液を用いる以外は試験例2と同様にしてマイクロポーラスめっき製品を製造した。微孔数(個/cm)も試験例と同様にして測定した。なお、この試験例では微孔数を測定する評価面を、図5に示すベントカソードテストピースの棚上、垂直面、棚下とした。また、実施例16~19の微孔数の最大から最少を引いた値をレンジ幅とした。これらの結果を表7に示す。
【0127】
【表7】
【0128】
表7から、多少のばらつきはあるもののワット浴の比重が高いほど、レンジ幅が小さく棚上と棚下の微孔数のばらつきが少なくなっていることが示唆された。すなわち、複雑な形状で均一な微孔数を得るためには、ワット浴の比重を高くした方がよいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上のことから本発明は、自動車部品、水洗金具等の製造に利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5