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特許7469291磁気軸受、これを備えた駆動装置及びポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】磁気軸受、これを備えた駆動装置及びポンプ
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/04 20060101AFI20240409BHJP
   F04D 29/048 20060101ALI20240409BHJP
   H02K 7/09 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F16C32/04 A
F16C32/04 B
F04D29/048
H02K7/09
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021505543
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2020000656
(87)【国際公開番号】W WO2020183884
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2019046982
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019151775
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127352
【氏名又は名称】株式会社イワキ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】是枝 進一郎
(72)【発明者】
【氏名】亀井 利晃
(72)【発明者】
【氏名】関 拓哉
【審査官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-121157(JP,A)
【文献】特開平11-325073(JP,A)
【文献】特開昭59-043220(JP,A)
【文献】実開昭60-073929(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/04
F04D 29/048
H02K 7/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを磁気力によって非接触で支持する磁気軸受であって、
前記ロータに設けられた磁性材料からなる軸受ロータ部材と、
前記軸受ロータ部材の周囲に配置された軸受ステータ部材と
を備え、
前記軸受ステータ部材は、磁性材料からなるコアと、前記コアに巻回されたコイルとを有し、
前記コアの縦断面形状は、
前記軸受ロータ部材との対向方向と直交する第1方向に延び前記コイルが巻回される第1部分と、
前記第1部分の前記第1方向の両端部から前記軸受ロータ部材側に延びたのち、前記第1方向に互いに近づく向きに延びる一対の第2部分と、
前記一対の第2部分の各先端部から前記軸受ロータ部材側に向けて延びる一対の第3部分と
を有し、
前記軸受ロータ部材は、前記軸受ロータ部材及び前記コアで形成される磁気回路にバイアス磁束を供給する永久磁石を含み、
前記第1部分に巻き付けられた前記コイルの前記第1方向の長さは、前記一対の第3部分の前記第1方向の対向面間の距離よりも大きい
ことを特徴とする磁気軸受。
【請求項2】
前記一対の第3部分の前記第1方向の対向面と反対側の面間の距離は、前記第1部分の前記第1方向の長さよりも小さい
ことを特徴とする請求項1記載の磁気軸受。
【請求項3】
前記一対の第3部分の前記第1方向の対向面と反対側の面間の距離は、前記第3部分と対向する前記軸受ロータ部材の前記第1方向の長さとほぼ等しい
ことを特徴とする請求項1又は2記載の磁気軸受。
【請求項4】
前記軸受ロータ部材は、
円環状の前記永久磁石と、
前記永久磁石を前記第1方向に挟み込むように配置された円環状の一対のヨークとを有し、
前記一対のヨークの縦断面形状は、
前記永久磁石の前記第1方向の両端面を覆い前記軸受ステータ部材と反対側に延びる一対の第4部分と、
前記一対の第4部分の前記軸受ステータ部材と反対側の端部から前記第1方向に互いに近づく向きに延びる一対の第5部分とを有し、
前記第5部分と前記永久磁石との間に第1間隙が形成され、
前記一対の第5部分の互いに対向する各先端部間には、第2間隙が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の磁気軸受。
【請求項5】
前記軸受ステータ部材は、前記軸受ロータ部材の径方向の外側に複数配置され、前記軸受ロータ部材と径方向にそれぞれ対向する
ことを特徴とする請求項1記載の磁気軸受。
【請求項6】
前記軸受ステータ部材は、前記軸受ロータ部材の軸方向の少なくとも一方の側に複数配置され、前記軸受ロータ部材と前記軸方向にそれぞれ対向する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の磁気軸受。
【請求項7】
ロータと、
前記ロータを磁気力によって支持する磁気軸受と、
前記ロータを回転駆動する駆動機構と
を備え、
前記磁気軸受は、
前記ロータに設けられた磁性材料からなる軸受ロータ部材と、
前記軸受ロータ部材の周囲に配置された軸受ステータ部材と
を備え、
前記軸受ステータ部材は、磁性材料からなるコアと、前記コアに巻回されたコイルとを有し、
前記コアの縦断面形状は、
前記軸受ロータ部材との対向方向と直交する第1方向に延び前記コイルが巻回される第1部分と、
前記第1部分の前記第1方向の両端部から前記軸受ロータ部材側に延びたのち、前記第1方向に互いに近づく向きに延びる一対の第2部分と、
前記一対の第2部分の各先端部から前記軸受ロータ部材側に向けて延びる一対の第3部分と
を有し、
前記軸受ロータ部材は、前記軸受ロータ部材及び前記コアで形成される磁気回路にバイアス磁束を供給する永久磁石を含み、
前記第1部分に巻き付けられた前記コイルの前記第1方向の長さは、前記一対の第3部分の前記第1方向の対向面間の距離よりも大きい
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項8】
前記軸受ロータ部材は、
円環状の前記永久磁石と、
前記永久磁石を前記第1方向に挟み込むように配置された円環状の一対のヨークとを有し、
前記一対のヨークの縦断面形状は、
前記永久磁石の前記第1方向の両端面を覆い前記軸受ステータ部材と反対側に延びる一対の第4部分と、
前記一対の第4部分の前記軸受ステータ部材と反対側の端部から前記第1方向に互いに近づく向きに延びる一対の第5部分とを有し、
前記第5部分と前記永久磁石との間に第1間隙が形成され、
前記一対の第5部分の互いに対向する各先端部間には、第2間隙が設けられている
ことを特徴とする請求項記載の駆動装置。
【請求項9】
前記駆動機構は、
前記ロータにおける前記軸受ロータ部材の径方向の内側に配置された従動部材と、
前記従動部材の内側に配置されて前記従動部材と磁気結合されて前記ロータを駆動する駆動部と
を有する
ことを特徴とする請求項又は記載の駆動装置。
【請求項10】
ロータと、
前記ロータを磁気力によって支持する磁気軸受と、
前記ロータを回転駆動する駆動機構と、
前記ロータに取り付けられたインペラを含むポンプ機構と
を備え、
前記磁気軸受は、
前記ロータに設けられた磁性材料からなる軸受ロータ部材と、
前記軸受ロータ部材の周囲に配置された軸受ステータ部材と
を備え、
前記軸受ステータ部材は、磁性材料からなるコアと、前記コアに巻回されたコイルとを有し、
前記コアの縦断面形状は、
前記軸受ロータ部材との対向方向と直交する第1方向に延び前記コイルが巻回される第1部分と、
前記第1部分の前記第1方向の両端部から前記軸受ロータ部材側に延びたのち、前記第1方向に互いに近づく向きに延びる一対の第2部分と、
前記一対の第2部分の各先端部から前記軸受ロータ部材側に向けて延びる一対の第3部分と
を有し、
前記軸受ロータ部材は、前記軸受ロータ部材及び前記コアで形成される磁気回路にバイアス磁束を供給する永久磁石を含み、
前記第1部分に巻き付けられた前記コイルの前記第1方向の長さは、前記一対の第3部分の前記第1方向の対向面間の距離よりも大きい
ことを特徴とするポンプ。
【請求項11】
前記軸受ロータ部材は、
円環状の前記永久磁石と、
前記永久磁石を前記第1方向に挟み込むように配置された円環状の一対のヨークとを有し、
前記一対のヨークの縦断面形状は、
前記永久磁石の前記第1方向の両端面を覆い前記軸受ステータ部材と反対側に延びる一対の第4部分と、
前記一対の第4部分の前記軸受ステータ部材と反対側の端部から前記第1方向に互いに近づく向きに延びる一対の第5部分とを有し、
前記第5部分と前記永久磁石との間に第1間隙が形成され、
前記一対の第5部分の互いに対向する各先端部間には、第2間隙が設けられている
ことを特徴とする請求項10記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気軸受、これを備えた駆動装置及びポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ装置のインペラの荷重等を磁気力により非接触で支持する磁気軸受が知られている(例えば、特許文献1参照)。図20に示すように、このような磁気軸受300は、例えばインペラ300aを備えたロータ301に設けられた軸受ロータ部材306と、ハウジング309に固定された軸受ステータ部材302とで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-121157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような磁気軸受300においては、軸受ステータ部材302を構成するコの字型のコア304と軸受ロータ部材306とで形成される磁気回路を通る磁束φによって、ロータ301に対する規定位置への復元力が働く。この復元力は、例えば軸受ステータ部材302のコア304の長さと、軸受ロータ部材306のスラスト方向の厚みLがほぼ等しく、且つ極力薄いほど大きいことが知られている。
【0005】
一方、磁束φは、軸受ステータ部材302のコイル305によって制御される。応答性を高めるためには、コイル305のインダクタンスを極力小さくすることが望まれる。コイルのインダクタンスは、コイルの断面積Sに比例し、コイル長lに反比例する。このため、コイル305の応答性を上げるためには、コイル305の断面積Sを小さくし、コイル305の長さlを長くするように、コア304にコイル305を巻き付ける必要がある。
【0006】
しかし、コイル長lが長くなると、ロータ301の軸受ロータ部材306のスラスト方向の厚みLも増してしまう。このため、ロータ301の復元力が低下してしまう。特にロータ301が傾いたときの復元トルクが低下すると共に、スラスト方向の磁気軸受300の寸法(サイズ)が大きくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ロータの復元力を強くしつつ、応答性を高めることができる磁気軸受、これを備えた駆動装置及びポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る磁気軸受は、ロータを磁気力によって非接触で支持する磁気軸受であって、前記ロータに設けられた磁性材料からなる軸受ロータ部材と、前記軸受ロータ部材の周囲に配置された軸受ステータ部材とを備え、前記軸受ステータ部材は、磁性材料からなるコアと、前記コアに巻回されたコイルとを有し、前記コアの縦断面形状は、前記軸受ロータ部材との対向方向と直交する第1方向に延び前記コイルが巻回される第1部分と、前記第1部分の前記第1方向の両端部から前記軸受ロータ部材側に延びたのち、前記第1方向に互いに近づく向きに延びる一対の第2部分と、前記一対の第2部分の各先端部から前記軸受ロータ部材側に向けて延びる一対の第3部分とを有し、前記軸受ロータ部材は、前記軸受ロータ部材及び前記コアで形成される磁気回路にバイアス磁束を供給する永久磁石を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記コイルの前記第1方向の長さは、前記一対の第3部分の前記第1方向の対向面間の距離よりも大きい。
【0010】
本発明の他の実施形態において、前記一対の第3部分の前記第1方向の対向面と反対側の面間の距離は、前記第1部分の前記第1方向の長さよりも小さい。
【0011】
本発明の更に他の実施形態において、前記一対の第3部分の前記第1方向の対向面と反対側の面間の距離は、前記第3部分と対向する前記軸受ロータ部材の前記第1方向の長さとほぼ等しい。なお、本発明の更に他の実施形態において、前記軸受ロータ部材は、円環状の前記永久磁石と、前記永久磁石を前記第1方向に挟み込むように配置された円環状の一対のヨークとを有し、前記一対のヨークの縦断面形状は、前記永久磁石の前記第1方向の両端面を覆い前記軸受ステータ部材と反対側に延びる一対の第4部分と、前記一対の第4部分の前記軸受ステータ部材と反対側の端部から前記第1方向に互いに近づく向きに延びる一対の第5部分とを有し、前記第5部分と前記永久磁石との間に第1間隙が形成され、前記一対の第5部分の互いに対向する各先端部間には、第2間隙が設けられている。
【0012】
本発明の更に他の実施形態において、前記軸受ステータ部材は、前記軸受ロータ部材の径方向の外側に複数配置され、前記軸受ロータ部材と径方向にそれぞれ対向する。
【0013】
本発明の更に他の実施形態において、前記軸受ステータ部材は、前記軸受ロータ部材の軸方向の少なくとも一方の側に複数配置され、前記軸受ロータ部材と前記軸方向にそれぞれ対向する。
【0014】
本発明に係る駆動装置は、ロータと、前記ロータを磁気力によって支持する磁気軸受と、前記ロータを回転駆動する駆動機構とを備え、前記磁気軸受は、前記ロータに設けられた磁性材料からなる軸受ロータ部材と、前記軸受ロータ部材の周囲に配置された軸受ステータ部材とを備え、前記軸受ステータ部材は、磁性材料からなるコアと、前記コアに巻回されたコイルとを有し、前記コアの縦断面形状は、前記軸受ロータ部材との対向方向と直交する第1方向に延び前記コイルが巻回される第1部分と、前記第1部分の前記第1方向の両端部から前記軸受ロータ部材側に延びたのち、前記第1方向に互いに近づく向きに延びる一対の第2部分と、前記一対の第2部分の各先端部から前記軸受ロータ部材側に向けて延びる一対の第3部分とを有し、前記軸受ロータ部材は、前記軸受ロータ部材及び前記コアで形成される磁気回路にバイアス磁束を供給する永久磁石を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記軸受ロータ部材は、円環状の前記永久磁石と、前記永久磁石を前記第1方向に挟み込むように配置された円環状の一対のヨークとを有し、前記一対のヨークの縦断面形状は、前記永久磁石の前記第1方向の両端面を覆い前記軸受ステータ部材と反対側に延びる一対の第4部分と、前記一対の第4部分の前記軸受ステータ部材と反対側の端部から前記第1方向に互いに近づく向きに延びる一対の第5部分とを有し、前記第5部分と前記永久磁石との間に第1間隙が形成され、前記一対の第5部分の互いに対向する各先端部間には、第2間隙が設けられている。
【0016】
また、本発明の他の実施形態において、前記駆動機構は、前記ロータにおける前記軸受ロータ部材の径方向の内側に配置された従動部材と、前記従動部材の内側に配置されて前記従動部材と磁気結合されて前記ロータを駆動する駆動部とを有する。
【0017】
本発明に係るポンプは、ロータと、前記ロータを磁気力によって支持する磁気軸受と、前記ロータを回転駆動する駆動機構と、前記ロータに取り付けられたインペラを含むポンプ機構とを備え、前記磁気軸受は、前記ロータに設けられた磁性材料からなる軸受ロータ部材と、前記軸受ロータ部材の周囲に配置された軸受ステータ部材とを備え、前記軸受ステータ部材は、磁性材料からなるコアと、前記コアに巻回されたコイルとを有し、前記コアの縦断面形状は、前記軸受ロータ部材との対向方向と直交する第1方向に延び前記コイルが巻回される第1部分と、前記第1部分の前記第1方向の両端部から前記軸受ロータ部材側に延びたのち、前記第1方向に互いに近づく向きに延びる一対の第2部分と、前記一対の第2部分の各先端部から前記軸受ロータ部材側に向けて延びる一対の第3部分とを有し、前記軸受ロータ部材は、前記軸受ロータ部材及び前記コアで形成する磁気回路にバイアス磁束を供給する永久磁石を含むことを特徴とする。本発明の一実施形態において、前記軸受ロータ部材は、円環状の前記永久磁石と、前記永久磁石を前記第1方向に挟み込むように配置された円環状の一対のヨークとを有し、前記一対のヨークの縦断面形状は、前記永久磁石の前記第1方向の両端面を覆い前記軸受ステータ部材と反対側に延びる一対の第4部分と、前記一対の第4部分の前記軸受ステータ部材と反対側の端部から前記第1方向に互いに近づく向きに延びる一対の第5部分とを有し、前記第5部分と前記永久磁石との間に第1間隙が形成され、前記一対の第5部分の互いに対向する各先端部間には、第2間隙が設けられている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロータの復元力を強くしつつ、応答性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気軸受及びこれを備えた駆動装置が適用されたポンプの全体構成を概略的に示す切欠斜視図である。
図2】同ポンプを概略的に示す縦断面図である。
図3】同磁気軸受を概略的に示す拡大縦断面図である。
図4】同駆動装置の全体構成を概略的に示す上面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る駆動装置の全体構成を概略的に示す上面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る磁気軸受を概略的に示す斜視図である。
図7図6のA-A´線断面図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係る磁気軸受を概略的に示す斜視図である。
図9図8のB-B´線断面図である。
図10】同磁気軸受の軸受ロータ部材を概略的に示す斜視図である。
図11】本発明の第5の実施形態に係る軸受ロータ部材を概略的に示す斜視図である。
図12】本発明の第6の実施形態に係る軸受ロータ部材を概略的に示す縦断面図である。
図13図12の磁性材料部を概略的に示す斜視図である。
図14】本発明の第7の実施形態に係る磁気軸受を概略的に示す上面図である。
図15】本発明の第8の実施形態に係る磁気軸受を概略的に示す縦断面図である。
図16】本発明の第9の実施形態に係る磁気軸受を概略的に示す上面図である。
図17】本発明の第10の実施形態に係る磁気軸受及びこれを備えたポンプの全体構成を、一部を省略して概略的に示す縦断面図である。
図18図17のC-C´線断面図である。
図19】本発明の第11の実施形態に係る磁気軸受を概略的に示す縦断面図である。
図20】従来の磁気軸受の全体構成を概略的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係る磁気軸受、これを備えた駆動装置及びポンプを詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、以下の実施形態において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を附して重複した説明を省略する。また、実施形態においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0021】
[第1の実施形態]
[磁気軸受、駆動装置及びポンプの構成]
図1は、第1の実施形態に係る磁気軸受10及びこれを備えた駆動装置90が適用されたポンプ100の全体構成を概略的に示す一部切欠した斜視図である。図2は、ポンプ100を概略的に示す縦断面図、図3は、磁気軸受10を概略的に示す拡大縦断面図、図4は、駆動装置90の全体構成を概略的に示す上面図である。
【0022】
図1図4に示すように、第1の実施形態に係るポンプ100は、例えば人工心臓用のポンプ等に用いられ、ロータ20と、このロータ20を磁気力により非接触で支持する磁気軸受10と、ロータ20を回転駆動する駆動機構30とを備えている。なお、この例では、ポンプ100を示しているが、これらロータ20、磁気軸受10及び駆動機構30は、ロータ20を回転駆動するという機能のみに着目すると、図4に示すように、駆動装置(アクチュエータ)90として捉えることができる。
【0023】
なお、以後の説明では、ロータ20の回転軸方向をZ方向(スラスト方向とも呼ぶ。)、ロータ20の径方向をX方向及びY方向(ラジアル方向とも呼ぶ。)、Z軸(回転軸)周りの回転方向をΨ方向、X軸回りの回転方向をΘ方向、Y軸回りの回転方向をΦ方向とそれぞれ呼ぶことにする。また、X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交するものとする。
【0024】
ロータ20は、全体が樹脂などの非磁性体で形成され、Z軸方向の一端に設けられた環状の軸受/駆動部21と、他端に設けられたインペラ22とを一体に形成してなる。ロータ20は、フロントケーシング41とリアケーシング42とで形成される密閉空間Aに収容されている。密閉空間Aは、インペラ22が収容されるポンプ室A1と、軸受/駆動部21が収容される環状空間A2とを含む。インペラ22は、ポンプ室A1と共にポンプ機構を構成する。フロントケーシング41の前面中央部にはポンプ室A1に連通する吸込口51が設けられ、フロントケーシング41の側面にはポンプ室A1に連通する吐出口(不図示)が設けられている。
【0025】
磁気軸受10は、ロータ20の軸受/駆動部21の外周側に装着された環状の磁性材料からなる軸受ロータ部材11と、この軸受ロータ部材11のラジアル方向の外側に、軸受ロータ部材11と所定の間隔を介して配置された軸受ステータ部材12とを有する。軸受ステータ部材12は、環状のヨークベース43と、リアケーシング42の外周部との間に装着されている。
【0026】
駆動機構30は、ロータ20の軸受/駆動部21の内周側に装着された環状の従動部材としての従動マグネット31と、この従動マグネット31のラジアル方向の内側に、従動マグネット31と所定の隙間を介して配置された駆動部としてのモータステータ32とを有する。この例では、従動マグネット31が、例えばラジアル方向4極に着磁したネオジム磁石、モータステータ32が、6つの突極を有する磁性体のモータステータコア33と、このモータステータコア33の各突極に巻回されたモータコイル34とを有する三相ブラシレスモータのステータとして構成されている。モータステータ32は、ヨークベース43の内側に固定されたハウジング44とリアケーシング42の中央部の間に装着されている。
【0027】
次に、磁気軸受10の詳細について説明する。
磁気軸受10の軸受ロータ部材11は、例えば円環状に成形されたネオジム磁石からなる永久磁石13と、この永久磁石13と同心で、スラスト方向(Z軸方向)に挟み込むように配置された円環状の電磁軟鉄からなるヨーク14,15とを有する。永久磁石13は、例えばスラスト方向にN極及びS極が対向し且つ周方向全周に亘って同極となるように着磁されている。
【0028】
一方、磁気軸受10の軸受ステータ部材12は、この実施形態では、図4に示すように、軸受ロータ部材11の周方向の4箇所に90°の角度を介して配置されている。そのうち、X軸方向に対向する一対の軸受ステータ部材12xは、ロータ20のX軸方向の位置及びΦ方向の角度を制御し、Y軸方向に対向する一対の軸受ステータ部材12yは、ロータ20のY軸方向の位置及びΘ方向の角度を制御する。また、軸受ステータ部材12x,12yは、Z軸方向の高さを制御する。なお、ヨークベース43には、軸受ロータ部材11のラジアル方向、スラスト方向及び各回転方向の変位を検知する変位センサ16が、X方向及びY方向とそれぞれ45°の角度で交差するように複数(ここでは、4つ)配置されている。変位センサ16は、例えば渦電流式のセンサが挙げられるが、これに限定されるものではなく、種々のセンサを採用し得る。
【0029】
軸受ステータ部材12は、例えば積層電磁鋼板等の磁性材料からなるコア17と、このコア17に巻回されたコイル18とを有する。コア17は、縦断面形状が、軸受ロータ部材11側を開放端とするほぼC字形となっている。より具体的には、コア17の縦断面形状は、図3に示すように、軸受ロータ部材11との対向方向と直交する第1方向(この例ではZ軸方向)に延び、コイル18が巻回される第1部分17aと、この第1部分17aのZ軸方向の両端部から軸受ロータ部材11側に延びたのち、Z軸方向に互いに近づく向きに延びる一対の第2部分17bと、この一対の第2部分の各先端部から軸受ロータ部材11側に向けて延びる一対の第3部分17cとを含む。換言すると、コア17は、縦断面形状において、コイル18が巻回される第1部分17aのZ軸方向の両端から、軸受ロータ部材11に向かって本来は延びるはずのC字形状の開放端部分(図20参照)に、一対のカギ型形状部分を有し、開放端を互いに近づけた形状を有している。
【0030】
このような形状であると、コイル18のZ軸方向の長さlを、コア17の開放端側の一対の第3部分17cのZ軸方向の対向面間の距離L1よりも大きくすることができる。また、コア17の開放端側の幅、すなわち一対の第3部分17cのZ軸方向の対向面と反対側の面間の距離L2は、コア17の本来のZ軸方向の長さL4よりも小さく、軸受ロータ部材11のZ軸方向の長さL3とほぼ等しい。
【0031】
[磁気軸受、駆動装置及びポンプの動作]
次に、上記のように構成された磁気軸受10及びこれを備えた駆動装置90が適用されたポンプ100の動作を説明する。
磁気軸受10を構成する軸受ロータ部材11及び軸受ステータ部材12のコア17は、磁性材料で構成され、磁気回路を形成する。軸受ロータ部材11の永久磁石13は、この磁気回路にバイアス磁束を供給する。図示しない制御回路は、変位センサ16で検出されたロータ20のXYZ軸方向の変位及びΦ及びΘ方向の傾きを補正するように、コイル18に流れる電流を制御して、コイル18により発生する制御磁束を調整する。これによって、ロータ20は、磁気軸受10によって所定位置及び所定姿勢を維持しつつ、非接触状態で支持される。
【0032】
この状態でモータステータ32のモータコイル34に三相交流電力を供給すると、三相ブラシレスモータが動作して、ロータ20が回転する。ロータ20が回転すると、インペラ22も回転するので、吸込口51を介してポンプ室A1に移送流体が導入され、吐出口を介して移送流体が吐出される。
【0033】
[実施形態の効果]
ここで、前述したように、ロータ20の磁気軸受10による位置及び傾きの復元力は、軸受ステータ部材12の開放端(第3部分17c)のZ軸方向の長さL2が軸受ロータ部材11のZ軸方向の長さL3とほぼ等しく、且つ軸受ロータ部材11のZ軸方向の長さL3が短いほど大きくなる。この点、本実施形態に係る磁気軸受10によれば、図19に示す従来のC字形のコア304に比べて、開放端の軸受ロータ部材11に対向する部分(第3部分17c)のZ軸方向の長さL2を短くすることができるので、コイル18の巻き数Nを維持しつつ、軸受ロータ部材11のZ軸方向の長さL3を従来のものよりも短くすることができる。これにより、十分な復元力を確保することができる。なお、永久磁石13の吸引力を最大にするためには、コア17の第3部分17c間の距離L1と永久磁石13のZ軸方向の高さがほぼ等しく、且つコア17の各第3部分17c(突極)のZ軸方向の幅が、ヨーク14,15のZ軸方向の厚みとほぼ等しいことが望ましい。
【0034】
また、前述したように、磁気軸受10の応答性を高めるためには、コイル18のインダクタンスを極力小さくすることが必要である。この点、本実施形態に係る磁気軸受10によれば、コア17のコイル18が巻回される第1部分17aの長さL4を十分に確保することができるので、コイル18のZ軸方向の長さlを長く、且つコイル18の断面積Sを小さくすることができる。これにより、コイル18のインダクタンスを抑えて応答性を向上させることができる。
【0035】
なお、図4に示すように、軸受ロータ部材11の外周面は曲面で構成されているが、コア17の磁極面17dは平面で形成されている。具体的には、磁極面17dは、X軸方向又はY軸方向及びZ軸方向に延びる同一平面上に形成されている。
【0036】
一般的に、コア17の磁極面17dが軸受ロータ部材11の外周面に沿う曲面で構成されている場合には、磁極面17dの周方向の端部に磁場の磁束φが集中してしまうこととなる。これに対し、磁極面17dが平面で形成されていれば、上記のような磁束φの集中を防ぐことが可能となる。
【0037】
[第2の実施形態]
[駆動装置の他の構成]
図5は、第2の実施形態に係る駆動装置90Aの全体構成を概略的に示す上面図である。ここで、図5を含む以降の説明においては、第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を附しているので、以下では重複する説明は省略する。
【0038】
すなわち、図5に示すように、第2の実施形態に係る駆動装置90Aは、磁気軸受10が、軸受ロータ部材11に対し、X軸方向、Y軸方向及び斜め45°方向のそれぞれの方向で対向する8つの軸受ステータ部材12x、12y、12xy、12yxを備えている点が、第1の実施形態の駆動装置90とは相違している。
この第2の実施形態によれば、ラジアル方向の制御をより高精度に行うことが可能となる。
なお、軸受ステータ部材12の数は、これらに限定されるものではなく、6個、10個、12個、16個等、種々の形態を採用し得る。
【0039】
[第3の実施形態]
[磁気軸受の他の構成]
図6は、第3の実施形態に係る磁気軸受10Aを概略的に示す斜視図であり、図7図6のA-A´線断面図である。
【0040】
図6及び図7に示すように、第3の実施形態に係る磁気軸受10Aは、ロータ20の軸受ロータ部材11aが、例えば円環状の電磁軟鉄のみで構成されている点が、永久磁石13及び電磁軟鉄のヨーク14,15により構成された軸受ロータ部材11を有する磁気軸受10とは相違している。
【0041】
[第4の実施形態]
[磁気軸受の更に他の構成]
図8は、本発明の第4の実施形態に係る磁気軸受10Bを概略的に示す斜視図であり、図9図8のB-B´線断面図、図10は磁気軸受10Bの軸受ロータ部材11bを概略的に示す斜視図である。
【0042】
図8及び図9に示すように、第4の実施形態に係る磁気軸受10Bは、軸受ロータ部材11bが、例えば円環状の永久磁石13aのみで構成されている点が、電磁軟鉄のみで構成された軸受ロータ部材11aを有する磁気軸受10Aとは相違している。
【0043】
なお、永久磁石13aは、図10に示すように、N極及びS極が周方向及び軸方向に交互に配置されるようにラジアル方向に着磁され、いわゆる4極磁石となるように構成されている。このような構成にすれば、磁気軸受10の軸受ステータ部材12のコイル18が、駆動機構30のモータステータ32のモータコイル34を兼ねる構成とすることができるので、駆動機構30を省略することが可能となる。
【0044】
[第5の実施形態]
[軸受ロータ部材の他の構成]
図11は、本発明の第5の実施形態に係る軸受ロータ部材11cを概略的に示す斜視図である。
図11に示すように、第5の実施形態に係る軸受ロータ部材11cは、上述した軸受ロータ部材11bと同様に永久磁石13bのみで構成されているが、周方向に沿って45°毎にN極及びS極の磁極が軸方向に入れ替わる、いわゆる8極磁石となるように構成されている点が、いわゆる4極磁石となるように構成された第4の実施形態とは相違している。このようにすれば、上記第4の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0045】
[第6の実施形態]
[軸受ロータ部材の更に他の構成]
図12は、本発明の第6の実施形態に係る軸受ロータ部材11dを備えた磁気軸受10Cを概略的に示す縦断面図であり、図13図12の軸受ロータ部材11dを概略的に示す斜視図である。
【0046】
図12に示すように、第6の実施形態に係る磁気軸受10Cは、軸受ロータ部材11dが、第4の実施形態の4極の永久磁石13aの軸方向両側に電磁軟鉄からなるヨーク14,15を配置している。このようにすれば、永久磁石13aの磁束φをヨーク14,15に集中させることができるので、ヨーク14,15がない場合に比べて、磁気軸受10C自体の磁気保持力を高めることができると共に、上記第4及び第5の実施形態と同様に、駆動機構30を省略する構成とすることができる。
なお、上述した実施形態では、4極磁石を使用したが、磁極の数は例示したものに限定されるものではない。
【0047】
[第7の実施形態]
[磁気軸受の更に他の構成]
図14は、本発明の第7の実施形態に係る磁気軸受10Dを概略的に示す上面図である。
【0048】
上述した第1~第6の実施形態の磁気軸受10,10A~10Cは、軸受ステータ部材12を軸受ロータ部材11,11a~11dのラジアル方向の外側に配置したが、第7の実施形態は、軸受ステータ部材12を軸受ロータ部材11eのスラスト方向の一方の側に配置した例である。
【0049】
図14に示すように、第7の実施形態に係る磁気軸受10Dにおいては、軸受ロータ部材11eが、環状の永久磁石13cと、この永久磁石13cの外周側と内周側にそれぞれ配置されて永久磁石13cをラジアル方向に挟持する電磁軟鉄で形成されたヨーク14a,15aとにより構成されている。永久磁石13cはラジアル方向に着磁されている。この永久磁石13cによるバイアス磁束で、外側のヨーク14aの軸方向端面と、内側のヨーク15aの軸方向端面にそれぞれ磁極が現われるようになっている。これらヨーク14a,15aの磁極面が、軸受ステータ部材12のコア17の開放端に位置する磁極面17dと対向するように、軸受ステータ部材12は、軸受ロータ部材11eのスラスト方向の一方の側に配置される。この例では、軸受ロータ部材11eの軸方向の一方の端面に沿って、周方向の4箇所に90°の間隔で4つの軸受ステータ部材12x,12yが配置されている。この実施形態では、軸受ロータ部材11eとの対向方向と直交する第1方向が、X軸方向の変位を制御する軸受ステータ部材12xではX軸方向、Y軸方向の変位を制御する軸受ステータ部材12yではY軸方向となる。そして、コイル18が巻回される第1部分17aが、X軸方向又はY軸方向に沿って延びている。
【0050】
このような構成の磁気軸受10Dによれば、軸受ロータ部材11eと軸受ステータ部材12とが、永久磁石13cからの磁束φのループによってスラスト方向に磁気カップリングされる。軸受ステータ部材12は、C字形のコアと同じ巻き数条件下において、上述したようにコア17がコイル18の断面積Sを小さくしつつコイル18の長さlを長くすることができる構造を採用するので、ロータ20の復元力を強くし、応答性を高めることができる。
【0051】
[第8の実施形態]
[磁気軸受の更に他の構成]
図15は、本発明の第8の実施形態に係る磁気軸受10Eを概略的に示す縦断面図である。
図15に示すように、第8の実施形態に係る磁気軸受10Eは、軸受ロータ部材11eのスラスト方向の両側に、軸受ステータ部材12を配置した例を示している。
【0052】
このような構成の磁気軸受10Eによれば、軸受ロータ部材11eと軸受ステータ部材12とが、永久磁石13cからの磁束φのループによってスラスト方向の両側から磁気カップリングされる。従って、磁気軸受10Dと比較して、ロータ20の復元力をより強くし、磁気保持力をより高めることが可能となる。
【0053】
[第9の実施形態]
[磁気軸受の更に他の構成]
図16は、本発明の第9の実施形態に係る磁気軸受10Fを概略的に示す上面図である。
上述した第7の実施形態の磁気軸受10Dは、軸受ステータ部材12が、X軸方向に2つ、Y軸方向に2つの計4つであった。これに対し、図16に示すように、本実施形態の磁気軸受10Fは、これら軸受ステータ部材12を軸受ロータ部材11eのZ軸方向端面に沿って周方向に8つ配置している。このように構成された磁気軸受10Fによれば、磁気軸受10Dに比べて、ロータ20の磁気力による支持を、より強力且つ高精度に行うことが可能となる。
なお、軸受ステータ部材12の数は、これらに限定されるものではなく、6個、10個、12個、16個等、種々の形態を採用し得る。
【0054】
[第10の実施形態]
[磁気軸受及び駆動装置の他の構成]
図17は、本発明の第10の実施形態に係る磁気軸受110及びこれを備えたマグネットポンプ100Aの全体構成を、一部を省略して概略的に示す縦断面図である。図18は、図17のC-C´線断面図である。
【0055】
図17及び図18に示すように、第10の実施形態に係るマグネットポンプ100Aは、第1の実施形態のポンプ100と同様の構成を備えるが、例えば流体移送用のマグネットポンプ100Aである。このマグネットポンプ100Aは、磁気軸受110の他に、磁気カップリング型の駆動機構130を備える。
【0056】
このマグネットポンプ100Aは、全体が円筒状に形成され、軸方向の一方にフロントケーシング141を有する。フロントケーシング141は、内部にポンプ室A1を形成し、前方中央に円筒状の吸込口151を有し、側面に吐出口152を有する。フロントケーシング141の後端にはリアケーシング142が接続されている。リアケーシング142は、フロントケーシング141と共にポンプ室A1を含む密閉空間Aを形成する。また、リアケーシング142は、後方に突出した環状空間A2を形成する。このリアケーシング142の外周を覆うように円筒状のブラケット143が設けられている。
【0057】
密閉空間Aには、ロータ120が収容される。ロータ120は、軸方向の前方にインペラ122、後方に環状の軸受/駆動部121を有する。インペラ122は、ポンプ室A1に収容され、ポンプ室A1と共にポンプ機構を構成する。軸受/駆動部121は環状空間A2に収容される。ロータ120の軸受/駆動部121の外周側には、ロータ120を磁気力によって支持する磁気軸受110が設けられている。また、ロータ120の軸受/駆動部121の内周側には、ロータ120を駆動する駆動機構130が設けられている。
【0058】
磁気軸受110は、ロータ120の軸受/駆動部121の外周側に装着された環状の磁性材料からなる軸受ロータ部材111と、この軸受ロータ部材111のラジアル方向の外側に、軸受ロータ部材111と所定の間隔を介して配置された軸受ステータ部材112とを有する。軸受ステータ部材112は、リアケーシング142とヨークベース144の間に装着されている。
【0059】
軸受ロータ部材111は、例えば円環状に成形されたネオジム磁石からなる永久磁石113と、この永久磁石113と同心で、スラスト方向(Z軸方向)に挟み込むように配置された円環状の電磁軟鉄からなるヨーク114,115とを有する。永久磁石113は、例えばスラスト方向にN極及びS極が対向し且つ周方向全周に亘って同極となるように着磁されている。
【0060】
軸受ステータ部材112は、この実施形態では、図18に示すように、軸受ロータ部材111の周方向の4箇所に90°の角度を介して配置されている。ヨークベース144には、軸受ロータ部材111のラジアル方向、スラスト方向及び各回転方向の変位を検知する変位センサ116が、軸受ステータ部材112とそれぞれ45°の角度をなすように、複数(ここでは、4つ)配置されている。変位センサ116は、例えば渦電流式のセンサが挙げられるが、これに限定されるものではなく、種々のセンサを採用し得る。
【0061】
軸受ステータ部材112は、例えば積層電磁鋼板等の磁性材料からなるコア117と、このコア117に巻回されたコイル118とを有する。コア117の縦断面形状は、軸受ロータ部材111側を開放端とするほぼC字形であり、コイル118の巻回部分の軸方向長さよりも開放端の先端間の距離が小さい。コア117の縦断面形状の詳細については、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
駆動機構130は、ロータ120の軸受/駆動部121の内周側に装着された環状の従動部材としての従動マグネット131と、この従動マグネット131の内側に、従動マグネット131と所定の間隔を介して配置された駆動部としての駆動マグネット132と、この駆動マグネット132を先端部に装着し軸受135によって回転可能に支持されたモータ軸133と、このモータ軸133を回転駆動するモータ134とを有する。この例では、従動マグネット131及び駆動マグネット132が、例えばラジアル方向2極又は4極に着磁したネオジム磁石から構成されている。この例では、駆動マグネット132とモータ軸133がほぼ同径として示されているが、両者は同径でなくても良い。
【0063】
このように構成されたマグネットポンプ100Aでは、モータ134がモータ軸133を回転させることにより駆動マグネット132が回転し、この駆動マグネット132の磁気力により従動マグネット131が従動してロータ120、すなわちインペラ122が非接触で回転する。磁気軸受110は、第1の実施形態の磁気軸受10と同様に、ラジアル方向、スラスト方向及び2つのラジアル回転軸方向の5自由度を制御する。従って、この実施形態によっても、ロータ120の復元力及び応答性を高めることが可能となる。
【0064】
[第11の実施形態]
[磁気軸受の他の構成]
図19は、第11の実施形態に係る磁気軸受110Aを概略的に示す縦断面図である。 図19に示すように、第11の実施形態に係る磁気軸受110Aは、軸受ロータ部材171の構成が、第10の実施形態に係る磁気軸受110の軸受ロータ部材111とは相違している。
【0065】
すなわち、軸受ロータ部材171は、例えば、円環状の永久磁石113と、この永久磁石113と同心で、永久磁石113をスラスト方向(Z軸方向)の両側から挟み込むように配置された円環状の一対のヨーク174,175とを有する。本実施形態では、一対のヨーク174,175の縦断面形状が、軸受ステータ部材112側を開放端としZ軸方向の真ん中が寸断されたほぼコの字型となっている。
【0066】
具体的には、図19に示すように、一対のヨーク174,175の縦断面形状は、永久磁石113の第1方向(ここでは、Z軸方向)の両端面を覆うようにZ軸方向と直交する第2方向(ここでは、ラジアル方向(X軸方向))に延びる第4部分174a,175aと、これら第4部分174a,175aの軸受ステータ部材112と反対側の端部からZ軸方向に互いに近づく向きに延びる一対の第5部分174b,175bとを有している。第4部分174a,175aの内周部は、永久磁石113の内周部よりも内側に突出している。第5部分174b,175bと永久磁石113との間には、第1間隙g1が形成されている。また、これら一対の第5部分174b,175bの対向する先端部間には、第2間隙g2が設けられている。
【0067】
このような形状であると、第1間隙g1によって永久磁石113の両磁極が第5部分174b,175bに近づきすぎるのを防止することができるので、永久磁石113によるバイアス磁束φbを、軸受ステータ部材112に安定して供給することができる。また、磁気抵抗が大きい永久磁石113と並列に磁気抵抗の小さい第5部分174b,175bによる磁気回路が形成されるので、コイル118により発生する制御磁束φcを極力損失なく軸受ロータ部材171に通すことが可能となる。但し、第2間隙g2が無いと、永久磁石113の両磁極が第5部分174b,175bを介して短絡してしまうので、バイアス磁束φbの軸受ステータ部材112側への安定供給と、制御磁束φcの通る磁気回路の磁気抵抗とのバランスを考慮して、第2間隙g2の幅を適切に設定することが望ましい。
【0068】
本実施形態の磁気軸受110Aは、図15に示した第8の実施形態に適用することもできる。また、磁気軸受110Aは、図20に示した一般的なコの字型のコアを有する軸受ステータ部材と組み合わせても良いが、特に、第1部分17a~第3部分17cを有する上述した軸受ステータ部材112(軸受ステータ部材12)と組み合わせることで、例えば、上記マグネットポンプ100Aに適用した場合、その運転状況に応じたロータ120の回転制御を精度良く行うことが可能となる。なお、マグネットポンプ100Aに適用する場合等、軸受ロータ部材171の内周側には、図示しない駆動マグネットに従動する従動マグネット131が非磁性体131Aによりラジアル方向に挟み込まれた状態で配置される。
【0069】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
10 磁気軸受
11 軸受ロータ部材
12 軸受ステータ部材
13 永久磁石
14,15 ヨーク
16 変位センサ
17 コア
17a 第1部分
17b 第2部分
17c 第3部分
18 コイル
20 ロータ
30 駆動機構
90 駆動装置
100 ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20