(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】抗BTLA抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240409BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240409BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240409BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240409BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240409BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240409BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240409BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240409BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240409BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240409BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 U
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P31/00
A61P29/00
A61P37/06
A61K47/68
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2021505851
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(86)【国際出願番号】 CN2019098150
(87)【国際公開番号】W WO2020024897
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】201810870514.0
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】320000850
【氏名又は名称】上海君▲実▼生物医▲薬▼科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JUNSHI BIOSCIENCES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Floor 13, Building 2, Nos. 36 and 58, Haiqu Road, Pilot Free Trade Zone, Shanghai 201210 CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】519301559
【氏名又は名称】▲蘇▼州君盟生物医▲薬▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武海
(72)【発明者】
【氏名】姚▲劍▼
(72)【発明者】
【氏名】姚盛
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼静
(72)【発明者】
【氏名】周岳▲華▼
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/014438(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/144668(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
A61K 39/395
A61P 43/00
A61P 35/00
A61P 31/00
A61P 29/00
A61P 37/06
A61K 47/68
A61K 45/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメントであって、前記単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメントのHCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列とLCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列は以下のII及びVIII~XII群のうちのいずれか1つの群に示される、
【表1】
ことを特徴とする単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:37に示され、重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:34に示され、又は
前記単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:37に示され、重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:35に示され、又は
前記単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:37に示され、重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:40に示され、又は
前記単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:37に示され、重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:42に示され、又は
前記単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:37に示され、重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:43に示され、又は
前記単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:46に示され、重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:45に示され、又は
前記単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:47に示され、重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:45に示される、ことを特徴とする請求項1に記載の単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記単離抗BTLA抗体はキメラ抗体又はヒト化抗体である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
単離核酸であって、
(1)請求項1~3のいずれか1項に記載の単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド配
列
から選ばれる核酸。
【請求項5】
請求項4に記載の単離核酸を含有する、ことを特徴とする発現ベクター又は該発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項6】
医薬組成物であって、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメント
、請求項5に記載の発現ベクター又は宿主細胞、又はこれらの任意の組み合わせを含有する、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメント
、請求項5に記載の発現ベクター又は宿主細胞の、BTLA媒介性疾患を治療又は予防するための医薬品の製造における使用。
【請求項8】
治療剤に結合された請求項1~3のいずれか1項に記載の単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメントを含有する、ことを特徴とする免疫抱合体。
【請求項9】
前記治療剤は毒素、放射性同位体、医薬品又は細胞傷害性剤である、ことを特徴とする請求項8に記載の免疫抱合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物技術分野に属し、具体的には、BTLAと結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、並びにその用途に関する。より具体的には、本発明は、ヒトBTLAを認識し、腫瘍、感染症、炎症、自己免疫疾患などの治療又は予防に用いられる活性抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
正と負の共刺激シグナルはB細胞とT細胞活性の調整において決定的な役割を果たし、そしてこれらのシグナルを介する分子が免疫調整剤の効果的なターゲットであることが証明された。T細胞受容体(TCR)の関与のほか、ナイーブT細胞の最適な活性化にも正の共刺激が必要であり、負の共刺激は、自己免疫耐性の取得及びエフェクターT細胞機能の終了に必要なものとみなされる。抗原提示細胞(APC)表面上のB7.1又はB7.2と相互作用するときに、プロトタイプT細胞共刺激分子CD28はTCRの関与に応答してT細胞増殖と分化を促進するシグナルを発生させるが、CD28ホモログの細胞毒性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)はT細胞増殖やエフェクター機能の抑制(Chambersら、Ann.Rev.Immunol.、19:565-594、2001;Egenら、Nature Immunol、3:611-618、2002)を介する。B7ファミリーと相同性のあるいくつかの新しい分子(Abbasら、Nat.Med.、5:1345-6、1999;Coyleら、Nat.Immunol.、2:203-9、2001;Carrenoら、Annu.Rev.Immunol.、20:29-53、2002;Liangら、Curr.Opin.Immunol.、14:384-90、2002)がすでに発見されており、そしてT細胞活性化における作用が説明されている。
【0003】
BとTリンパ球アテニュエータBTLAはCD28ファミリーのメンバーであり、該ファミリーはまたCD28、ICOS、CTLA-4及びPD-1も含む。モノクローナル抗体の添加によりT細胞増殖を向上させるという機能から、該ファミリーの最初のメンバーCD28及びICOSが免疫活性化作用(Hutloffら、1999)を有することが発見される。BTLA、CTLA-4及びPD-1などは負の調節タンパク質として記述されている。いくつかの生体内の研究からBTLAのリンパ球応答における抑制作用が証明されている。Murphyと同僚(Washington University St.Louis)により製造されたBTLA欠陥のマウスでは、T依存性抗原に応答した時に産生するIgGが3倍増加する。また、BTLA-マウスから分離したT細胞とB細胞はそれぞれ、CD3-と抗IgMを使用して抗原-受容体刺激を行うと、大きな増殖応答を示す(Watanabe、2003)。過剰発現研究において、BTLAがB細胞受容体複合物及びT細胞受容体と会合することが発見られる。該研究結果と一致し、BTLA欠損リンパ球では、ConA(T細胞)又はLPS(B細胞)を使用して抗原-受容体非依存性刺激を行うと、影響を受けず、そして抗BTLA抗体を使用しても調整されない。BTLAノックアウトマウスでは、経時的には自発性自己免疫疾患が発症し、そして寿命が短縮される(Oya、2008)ことが明らかになる。BTLAノックアウトマウスでは、自己免疫性脳脊髄炎(EAE)とアレルギー性気道炎症のモデルにおいて疾患の重症度が進行し、その2つのモデルのいずれもT細胞活性に依存する(Watanabe、2005;Deppong、2006)ことが示されている。
【0004】
ヘルペスウイルスエントリーメディエータ(HVEM)はBTLAのリガンド(Scullyら、2005)であることが明らかになる。HVEMはI型膜貫通糖タンパク質であり、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーであり、4個の細胞外システインリッチ領域(CDRs)を有し、6個の偽重複システインを含む。BTLA及びHVEMは主に細胞表面での動的発現によりT細胞とAPCの機能を調整する。BTLAは、リガンドと結合すると、T細胞増殖を抑制し、T細胞活性化マーカーCD25をダウンレギュレートし、また、IFNーγ、ILー2、ILー4、及びILー10などの産生を抑制するが、細胞アポトーシスを誘導できない。HVEMは、BTLAと結合すると、T細胞活性化と増殖のダウンレギュレート(Sedy、2005)を引き起こす。これらの研究結果から明らかなように、BTLAの発現又はBTLAーHVEM結合の状況は、T細胞の活性化と増殖に緊密に関連している。
【0005】
抗体は医薬品に用いられる。一部の抗体は、生体内で治療薬として用いられる場合、不要な抗体免疫原性を引き起こすことがある。ほとんどのモノクローナル抗体が齧歯動物に由来するため、ヒトにおいて繰り返して使用すると、治療用抗体(たとえば、ヒト抗マウス抗体又はHAMA)に対する免疫応答を招く。このような免疫応答は、少なくとも治療が効かないことを引き起こし、最悪な場合、潜在的で致命的なアレルギー反応を引き起こす。齧歯動物抗体の免疫原性を低減させる方法の1つは、キメラ抗体の産生を含み、この場合、マウス可変領域(Fv)とヒト定常領域とを融合する(Liuら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439-43)。しかしながら、ヒト可変領域とマウス定常領域とのヘテロ接合体を注射したマウスには、ヒト可変領域に対する強い抗体応答が発生し、このことから、このようなキメラ抗体における完全な齧歯動物Fv領域の保留は依然として患者で有害な免疫原性を引き起こすことが明らかになる。
【0006】
また、齧歯動物の可変ドメインの相補性決定領域(CDR)ループをヒトのフレームワークに移植する(即ちヒト化)ことは、齧歯動物配列を最低に低減させることにさらに用いられる。Jonesら(1986)Nature 321: 522; Verhoeyenら(1988)Science 239: 1534。しかしながら、CDRループを交換しても、開始抗体と相同な結合性質を有する抗体を均一に産生することができない。ヒト化抗体では、抗原結合の親和力を維持するために、フレームワーク残基(FR)(関与CDRループによりサポートされている残基)を変える必要がある場合は多い。Kabatら(1991)J.Immunol.147:1709。多数のヒト化抗体構築体においてCDR移植とフレームワーク残基維持が使用されていることが報告されているが、特定配列が所望の結合性質及び/又は生物学的性質を有する抗体を発生させたか否かは予測しにくい。たとえばQueenら、(1989) Proc. Natl.Acad.Sci.USA 86:10029;Gormanら、(1991) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4181;及びHodgson、(1991) Biotechnology (NY)、9:421-5を参照する。さらに、従来の研究のほとんどでは動物の軽鎖と重鎖可変配列に異なるヒト配列が使用されることにより、このような研究の予測性には問題が生じる。既知の抗体の配列が使用されており、又はより一般的には既知のX線結晶構造を有する抗体たとえば抗体NEW、及びKOLの配列が使用されている。たとえばJonesら、同上;Verhoeyenら、同上;及びGormanなど、同上。少数のヒト化構築体の正確な配列情報が報告された。
【0007】
ヒト障害(たとえば炎症障害、自己免疫障害や増殖性障害)を治療する抗BTLA抗体、特に抗BTLAモノクローナル抗体への需要が存在している。このような抗体は、好ましくはヒト受検者において低免疫原性を有することが可能であり、不良な免疫応答を引き起こさずに繰り返して投与できる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、1種又は複数種の抗ヒトBTLA抗体又はその抗原結合フラグメント、及び前記抗体又はその抗原結合フラグメントの疾患治療における用途に関する。
【0009】
1つ又は複数の実施形態では、本発明はヒトBTLA(B-及びT-リンパ球アテニュエータ)と特異的に結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、それは、以下から選ばれる1種又は複数種の性質を有する。
A)、BTLAとHVEM(ヘルペスウイルスエントリーメディエータ)との結合をブロックすること
B)、カニクイザルBTLAと交差反応すること
C)、ヒトBTLAと結合されたKD≦0.28nM;又は
D)、ADCC効果を介しないこと。
【0010】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、SEQ ID NO:7、8、9、10、11、12、16、17、18、22、23、24、31、32及び33、から選ばれる少なくとも1つの軽鎖CDRドメインと、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、13、14、15、19、20、21、25、26、27、28、29及び30から選ばれる少なくとも1つの重鎖から選ばれる少なくとも1つの重鎖CDRドメインと、を含むヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0011】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、その軽鎖CDRのCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は以下のAーE群のうちのいずれか1つの群に示され、
【0012】
【表A】
及び/又はその重鎖CDRのCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列は、以下のFーK群のうちのいずれか1つの群に示される。
【0013】
【0014】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、その重鎖CDRのCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列、軽鎖CDRのCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列は、以下のI-IX群のうちのいずれか1つの群に示される。
【0015】
【0016】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、それは、軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含み、そのうち、軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:36、37、39、41、44、46、47又は48に示されるアミノ酸配列から選ばれ、重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:34、35、38、40、42、43又は45に示されるアミノ酸配列から選ばれる。
【0017】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:36に示され、その重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:34に示される。
【0018】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:36に示され、その重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:35に示される。
【0019】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:37に示され、その重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:34に示される。
【0020】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:37に示され、その重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:35に示される。
【0021】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:39に示され、その重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:38に示される。
【0022】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:41に示され、その重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:40に示される。
【0023】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:41に示され、その重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:42に示される。
【0024】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:44に示され、その重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:43に示される。
【0025】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:46に示され、その重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:45に示される。
【0026】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:47に示され、その重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:45に示される。
【0027】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:48に示され、その重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:45に示される。
【0028】
1つ又は複数の実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントはIgGタイプであり、より好ましくはIgG4サブタイプである。
【0029】
1つ又は複数の実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントは一本鎖Fv抗体であり、ある実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントはFab抗体であり、ある実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントはFab'抗体であり、ある実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは(Fab')2抗体である。
【0030】
別の実施形態では、本発明は、本明細書の前記任意の抗体又はその抗原結合フラグメントのVLドメイン又はVHドメインを含む分離ポリペプチドに関する。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、本明細書の前記任意の抗体又は抗原結合フラグメントのVLドメインとVHドメインをコードする単離核酸に関する。
【0032】
別の実施形態では、本発明は、本明細書の前記1種又は複数種の抗体又はその抗原結合フラグメントと薬学的に許容される担体又は希釈剤とを含む組成物に関する。
【0033】
別の実施形態では、本発明は、本明細書で開示された抗体又はその抗原結合フラグメント、核酸、発現ベクター、宿主細胞、免疫抱合体又は医薬組成物を治療有効量でこれを必要とする対象に投与することを含む、本明細書の前記1種又は複数種の抗体又はその抗原結合フラグメントを用いてBTLA活性を解消、抑制又は低減することにより疾患を予防又は治療する方法に関する。好ましくは、前記疾患又は障害の予防又は治療は、BTLA活性の解消、抑制又は低減により達成され、好ましくは、示される疾患又は病巣は癌、感染症又は炎症疾患から選ばれる。
別の実施形態では、本発明はまた、前記抗体又は抗原結合フラグメント、核酸、発現ベクター、宿主細胞、免疫抱合体又は医薬組成物の、疾患又は障害を治療又は予防する医薬品の製造における用途に関し、前記疾患又は障害は好ましくは、癌、感染症又は炎症疾患から選ばれ得るBTLA媒介性疾患である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】ヒトBTLA細胞外ドメインタンパク質のSDS-PAGE電気泳動図である。
【
図2】フローサイトメーターにより検出されたBTLAとHVEMとの結合能力である。
【
図3】キメラ抗体がヒトBTLAと結合したELISA実験である。
【
図4】キメラ抗体によるBTLAーHVEM結合ブロック能力である。
【
図5】キメラ抗体によるT細胞活性への影響の実験である。
【
図6】ヒト化抗体とBTLAとの特異的結合の実験である。
【
図7】ヒト化抗体と293F細胞上のhBTLAとの結合の実験である。
【
図8】ヒト化抗体によるBTLAと細胞表面のHVEMとの結合へのブロックの実験である。
【
図9】ヒト化抗体によるT細胞活性化促進の実験である。
【
図10】ヒト化抗体17とさまざまな種BTLAとの結合の比較実験である。
【
図11】hu18によるMC38-hHVEM細胞移植BーhBTLAマウスの腫瘍体積への影響である。
【
図12】試験品によるMC38-hHVEM細胞移植BーhBTLAマウスの体重への影響である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
哺乳動物の免疫系は、Tリンパ球とBリンパ球の潜在的な有害活性を抑制する複数の経路を発展している。各種のサイトカイン-受容体経路と受容体(たとえばCD28、CTLA-4、PD-1及びBTLA)に関する共刺激経路が含まれる。CD28-B7相互作用は正の共刺激経路の例(即ちCD28抗原特異的トリガーに対するメンバーのT細胞応答をトリガーする)であるが、他の3種類の受容体は抑制的共刺激経路として表現する。CTLA-4、PPD-1及びBTLAは重複しているが一意の発現のプロファイルを示し、Tリンパ球とBリンパ球やほかの免疫細胞の活性を制限する(Deppongら、JImmunol 2006;Taoら、J Immunol 2005を参照)。CTLA-4とCD28はB7.1とB7.2(CD80とCD86)を競合的に結合し、リンパ節と脾臓中のナイーブT細胞の活性化に元のしきい値を設定するが、PD-1とBTLAはそれぞれ特有のリガンド(それぞれPD-L1/-L2とHVEMを有し、末梢T細胞ホメオスタシスと再活性化(Kriegら、Nat Immunol 2007を参照)を制御するようである。
【0036】
BTLAはB細胞とT細胞の活性化をダウンレギュレートする。名前が示すように、BとTリンパ球アテニュエータ(BTLA)は休止、及び活性化のBリンパ球とTのリンパ球の両方に発現されている。BTLAはI型膜貫通糖タンパク質であり、チロシンモチーフを抑制する複数の細胞質尾部を含む(Watanabe、2003)。BTLAはCD28/CTLA-4ファミリーメンバーのある構造的類似性を有するものの、独特の性質を有する。BTLAは複数種の免疫性疾患、炎症疾患や増殖性疾患に関連している。したがって、疾患を治療するためにヒトBTLA-HVEM結合をブロックし得るモノクローナル抗体医薬品の開発は長期間にわたって期待される。
【0037】
[定義]
本発明をより容易に理解できるように、技術用語を以下のように定義する。本明細書の別の部分で明確に定義しない限り、使用されるすべての他の技術用語は、本発明の当業者が通常理解する定義を有する。
【0038】
本明細書では、文脈から別に明確に規定しない限り、細胞又は受容体について使用される「活性化」、「刺激」と「処理」、たとえば細胞又は受容体について使用されるリガンド活性化、刺激又は処理は同じ定義を有する。「リガンド」は天然リガンドと合成リガンド、たとえばサイトカイン、サイトカインバリアント、アナログ、変異タンパク質、及び抗体由来の結合化合物を含む。「リガンド」は、小分子、たとえばサイトカインのペプチド模倣物や抗体のペプチド模倣物も含む。「活性化」は内部メカニズム及び外部や環境の要因により調整された細胞の活性化を指す。「応答/反応」、たとえば細胞、組織、器官又は生体の応答は、生化学又は生理学的行動(たとえば生物学的区画内の濃度、密度、接着又は移動、遺伝子発現速度又は分化状態)の変化を含み、ここで、変化は、活性化、刺激又は処理に関連するか、又はたとえば遺伝子プログラミングなどの内部メカニズムに関連する。
【0039】
分子の「活性」は、この分子とリガンド又は受容体との結合、触媒活性、遺伝子発現又は細胞シグナル伝達、分化又は成熟を刺激する能力、抗原活性、他の分子を調整する活性などを説明するか、これらを意味する。分子の「活性」とは、細胞-細胞間の相互作用(たとえば接着)の調整又は保持における活性、又は細胞構造(たとえば細胞膜又は細胞骨格)の保持における活性をも指す。「活性」とは、比活性、たとえば[触媒活性]/[mgタンパク質]又は[免疫活性]/[mgタンパク質]、生物学的区画における濃度なども指す。「活性」とは、自然免疫系又は適応免疫系の成分の調整を指す。「増殖活性」は、たとえば正常な細胞分裂及び癌、腫瘍、異形成、細胞形質転換、転移や血管新生にとって必須な活性又はこれらに明確に関連している活性の促進を含む。
【0040】
動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官又は生体液で使用される「投与」と「治療」とは、外因性医薬品、治療薬、診断薬又は組成物と動物、ヒト、受検者、細胞、組織、器官又は生体液とを接触させることを意味する。「投与」と「治療」は、たとえば治療、薬物動態、診断、研究や実験方法を意味し得る。細胞の治療は、試薬と細胞を接触させること、及び試薬と流体(ここで該流体と細胞を接触させる)とを接触させることを含む。「投与」と「治療」は、また、生体外及びインビトロ治療、たとえば試薬、診断、結合化合物又は別の細胞を用いた細胞に対する生体外及びインビトロ治療も意味する。「治療」は、治療医薬品たとえば本発明の任意の抗体又はその抗原結合フラグメントを含有する組成物を、内部又は外部からことを必要とする患者に投与することをも含む。通常、治療対象となる患者又は集団の1種又は複数種の疾患症状を効果的に低減させ得る量で、本明細書の前記抗体又はその抗原結合フラグメント又は対応する医薬組成物を投与することで、これらの症状の解消を誘導するか、これらの症状の進行を抑制することにより任意の臨床的に測定可能な程度を実現する。任意の特定の疾患症状を効果的に低減させる治療医薬品の量(「治療有効量ともいう」)は、たとえば患者の疾患の状態、年齢、体重及び患者において所望の反応を引き起こす医薬品の能力などの要因に応じて変化し得る。医者や他のプロのヘルスケアプロバイダが疾患症状を認定する時によく使用する重症度又は進行状態についての任意の臨床的な測定においてこの症状が低減したか否かを認定することが可能である。
【0041】
用語「受検者」又は「患者」は任意の生体を含むが、好ましくは動物であり、より好ましくは哺乳動物(たとえばラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)であり、最も好ましくはヒトである。
【0042】
本明細書では、「投与」又は「治療」は、侵襲的経路、たとえば本明細書の前記のいずれか1つの抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメント又はそれに対応する医薬組成物を注射投与することにより実現できる。非侵襲的経路(たとえば経口投与;たとえば丸剤、カプセル剤又は錠剤で経口投与する)投与は本発明の範囲内である。本発明の一実施形態では、抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメント又はその医薬組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、動脈内、関節内(たとえば関節炎に罹った関節)を経路に、吸入投与、エアロゾル送達、又は腫瘍内投与において与えられる。
【0043】
本明細書の前記のいずれか1つの抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメント又はそれに対応する組成物は本分野で公知する医療装置において投与し得られる。たとえば、本発明の医薬組成物は皮下注射針により注射投与するか、又は静脈内注射針により注射投与されることができる。
【0044】
ある実施形態では、本明細書の前記のいずれか1つの抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメント又はそれに対応する医薬組成物は単独して又は組み合わせて使用して、このような治療又は予防を必要とする受検者の任意の疾患又は病状を治療又は予防することができる。
【0045】
本明細書では、用語「BとTリンパ球アテニュエータ」及び「BTLA」遺伝子/タンパク質は交換可能に使用することができ、バリアント、アイソタイプ、ホモログ、オルソログ(ortholog)、及びパラログ(paralog)を含む。たとえば、いくつかの実施形態では、ヒトBTLA特異的抗体は、非ヒト種に由来するBTLAと交差反応し得る。他の実施形態では、ヒトBTLA特異的抗体は、ヒトBTLAに対して完全に特異的であってもよく、且つ種の交差反応性又は他のタイプの交差反応性を有さない。特に断らない限り、用語「ヒトBTLA」又は「hBTLA」とは、ヒトBTLA配列を指す。特に断らない限り、ヒトBTLA配列は、すべてのヒトアイソタイプとBTLAバリアント、たとえばGenBank登録番号がAAP44003であるヒトBTLAの完全アミノ酸配列を含む。また、少なくとも2種のヒトBTLAトランスクリプトバリアントが存在し、トランスクリプトバリアント1はタンパク質長さが289個のアミノ酸(GenBank登録番号NP_861445)のタンパク質をコードし、登録番号AAP44003のBTLA配列とは約98%の同一性を有し、トランスクリプトバリアント2はタンパク質長さが241個のアミノ酸のタンパク質(GenBank登録番号NP_001078826)をコードする。
【0046】
BTLAは免疫応答の負の調整因子であり、そのC末端の抑制モチーフは、ILー2産生とT細胞増殖の抑制に関与する(Watanabeら、Nat.Immunol.、4、670-679、2003;Chemnitzら、J.Immunol.、176、6603-6614、2006)。また、ヒトBTLAは、本発明の前記抗体と特異的に結合するBTLAの細胞外ドメイン中のエピトープであってもよい。
【0047】
具体的なBTLA配列では、その細胞外ヌクレオチド配列は一般にSEQ ID NO:49のヒトBTLAの細胞外ドメイン又は他のアイソタイプのヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有し、且つ他の種(たとえばマウス)のBTLAアミノ酸配列と比べると、ヒトのアミノ酸配列であると同定されたアミノ酸残基を含む。いくつかの場合、ヒトBTLA細胞外ドメインは、SEQ ID NO:49のヒトBTLA細胞外ドメイン又は他のアイソタイプ又はバリアントと少なくとも95%又は、さらに少なくとも96%、97%、98%又は99%の同一性を有し得る。
【0048】
用語「免疫応答」とは、たとえばリンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球と上記細胞又は肝から産生する可溶性大分子(抗体、サイトカイン及び補体を含む)の作用を指し、該作用により、侵入病原体、病原体を感染した細胞又は組織、癌細胞又は自体免疫又は病理学的炎症の場合の正常なヒト細胞又は組織が人体から選択的に損害、破壊又は除去される。
【0049】
本明細書で使用される用語「抗体」とは、所望の生物学的活性を有する任意の形態の抗体を意味する。したがって、最も広義に使用される場合、それは、具体的には、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(たとえば二重特異性抗体)、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、キメラ抗体、及びキャメル化(camelized)単一ドメイン抗体を含むが、これらに制限されない。本明細書で使用される用語「抗BTLA抗体」又は抗体の「抗原結合フラグメント」とは、BTLAと結合し、BTLAとHVEMとの結合をブロックする抗体であり、抗体のフラグメント又は誘導体を含み、通常、抗体の少なくともいくつかの結合特異性を保持する抗体の抗原結合領域又は可変領域(たとえば1つ又は複数CDR)の少なくとも1つフラグメントを含む。抗体結合フラグメントの例は、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFvフラグメント、二重抗体、線形抗体、sc-Fvなどの一本鎖抗体分子、抗体フラグメントから形成されるナノ抗体(nanobody)、及び多重特異性抗体を含むが、これらに制限されない。BTLA結合活性がモル濃度で示される場合、結合フラグメント又は誘導体は、通常、そのBTLA結合活性の少なくとも10%を保持する。好ましくは、結合フラグメント又は誘導体は、少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%又は100%以上の抗体のBTLA結合親和力を保持する。抗BTLA抗原結合フラグメントは、その生物学的活性を明らかに変えない保存又は非保存アミノ酸置換(抗体の「保存バリアントという」又は「機能性保存バリアント」)を含み得ることが期待される。
【0050】
「単離抗体」とは、抗体又はその抗原結合フラグメントの精製状態を指し、且つこのような場合、該分子は実質的には他の生物分子、たとえば核酸、タンパク質、脂質、糖や、細胞破片と成長培地などの他の物質を含まないことを意味する。用語「分離(した)」とは、本明細書の前記抗体又はその抗原結合フラグメントの実験又は治療への使用を明らかに干渉する量で存在しない限り、このような物質が完全に存在しない、又は水、緩衝液又は塩が存在しないことを意味するのではない。
【0051】
本明細書で使用される用語「機能的フラグメント」又は「抗原結合フラグメント」は、特に抗体フラグメント、たとえばFv、scFv、Fab、F(ab')2、Fab'、scFvーFcフラグメント又は二重抗体、又は化学修飾又はリポソームに混合することにより半減期を増加させ得る任意のフラグメントを指し、前記化学修飾はたとえばポリ(アルキレン)グリコールたとえばポリエチレングリコール(「ポリエチレングリコール化、PEG化」)(Fv-PEG、scFv-PEG、Fab-PEG、F(ab')2-PEG 又はFab'-PEGのポリエチレングリコール化フラグメントという)(「PEG」はポリエチレングリコール)の添加であり、前記フラグメントはEGFR結合活性を有する。好ましくは、前記機能的フラグメントは、抗体由来の可変重鎖又は可変軽鎖の一部の配列から構成されるか、又はこれらを含み、前記一部の配列は、その由来となる抗体と同じ結合特異性と十分な親和力を保留するのに十分であり、BTLAの場合、好ましくは、少なくともその由来となる抗体親和力の1/100に等しく、より好ましくは、少なくとも1/10に等しい。この機能的フラグメントは、少なくとも5個のアミノ酸、好ましくはその由来となる抗体配列の10、15、25、50及び100個の連続アミノ酸を含む。
【0052】
「Fabフラグメント」は1本の軽鎖、CH1及び1本の重鎖の可変領域からなる。Fab分子の重鎖は他方の重鎖分子とジスルフィド結合を形成できない。
【0053】
「Fc」領域は、抗体のCH1とCH2ドメインを含む2個の重鎖フラグメントを含有する。該2個の重鎖フラグメントは2個以上のジスルフィド結合及びCH3ドメインの疎水性相互作用を通じて一体に保持される。
【0054】
「Fab'フラグメント」は1本の軽鎖と1本の重鎖の部分又はフラグメントを含有し、該重鎖の部分又はフラグメントはVHドメイン、CH1ドメイン及びCH1とCH2ドメインとの間の領域を含有し、それにより、2個のFab'フラグメントの2本の重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合が形成されてF(ab')2分子が形成される。
【0055】
「F(ab')2フラグメント」は2本の軽鎖とCH1とCH2ドメインの間に介在する定常領域の一部の2本の重鎖とを含有し、それにより、2本の重鎖の間に鎖ジスルフィド結合が形成される。したがって、F(ab')2フラグメントは2本の重鎖間のジスルフィド結合を通じて一体に保持されている2個のFab'フラグメントからなる。
「Fv領域」は重鎖と軽鎖の両方からの可変領域を含むが、定常領域がない。
【0056】
用語「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体とは、抗体のVHとVLドメインを含む抗体フラグメントを指し、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。scFvポリペプチドは一般にはVHとVLドメインの間のポリペプチドリンガーをさらに含み、それにより、scFvは抗原結合用の所望の構造を形成できる。
【0057】
「ドメイン抗体」とは、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域だけを含有する免疫機能性免疫グロブリンフラグメントである。いくつかの場合、2個以上のVH領域はペプチドリンガーと共有結合して二価ドメイン抗体を形成する。二価ドメイン抗体の2個のVH領域は、同じ又は異なる抗原にターゲティングできる。
【0058】
「二価抗体」は2個の抗原結合部位を含む。いくつかの場合、2個の結合部位は同じ抗原特異性を有する。しかしながら、二価抗体は二重特異性であってもよい。
【0059】
特に断らない限り、本明細書で使用される「抗BTLA抗体」とは、ヒトBTLA又はそのバリアント又はその任意の抗原フラグメントに対して産生する抗体のことである。
【0060】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体群から得る抗体であり、即ち、天然に存在し得る少量の変異以外、この群からなる各抗体は同じである。モノクローナル抗体は高い特異性を持ち、単一の抗原エピトープに対するものである。それに対して、通常の(ポリクローナル)抗体製造物は、通常、異なるエピトープに対する大量の(又は異なるエピトープに対して特異性を有する)抗体を含む。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体群から得た抗体の特徴を示し、任意の特定の方法を通じて抗体を産生する必要があると解釈されない。たとえば、本発明で使用されるモノクローナル抗体はハイブリドーマ法、又は組換えDNA方法により製造され得る。またファージ抗体ライブラリーにより「モノクローナル抗体」を分離してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、ここで、重鎖及び/又は軽鎖の一部は、特定の種に由来する又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同じ又は相同であり、一方、この鎖の残りの部分は、別の種に由来する又は別の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体、及びこのような抗体のフラグメントの対応する配列と同じ又は相同であり、これらは所望の生物学的活性を有すればよい。
【0062】
本明細書で使用される「キメラ抗体」とは、第1の抗体の可変ドメインと第2の抗体の定常ドメインとを有する抗体であり、第1の抗体と第2の抗体は異なる種に由来する。通常、可変ドメインは、齧歯動物などの実験動物から入手する抗体(「親抗体」)であり、定常ドメイン配列はヒト抗体から入手し、それにより、親齧歯動物抗体に比べて、得たキメラ抗体は、ヒト受検者において不良免疫応答を誘導する可能性が低くなる。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書のモノクローナル抗体は、キャメル化単一ドメイン抗体をさらに含む。たとえばMuyldermansら(2001)Trends Biochem.Sci.26:230;Reichmannら(1999)J.Immunol.Methods 231:25を参照。
【0064】
本明細書で使用される用語「二重抗体」とは、2個の抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを指し、前記フラグメントは、同一ポリペプチド鎖(VHーVL又はVLーVH)において軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同一鎖の2個のドメインの間のペアリングが不可能になるほど短いリンガーを使用することにより、該ドメインと別の鎖の相補ドメインがペアリングさせられて2個の抗原結合部位を産生する。
【0065】
本明細書で使用される用語「ヒト化抗体」とは、ヒトと非ヒト(たとえばマウス、ラット)抗体に由来する配列を含有する抗体の形態である。一般には、ヒト化抗体は、実質的にすべての少なくとも1個、通常、2個の可変ドメインを含み、ここで、すべて又は実質的にすべての超可変領域は、非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に相当し、すべて又は実質的にすべてのフレームワーク(FR)領域は、ヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域である。ヒト化抗体は、任意選択に、少なくとも一部のヒト免疫グロブリン定常領域(Fc)を含む。
【0066】
総じていえば、基本的な抗体構造単位が四量体を含むことが知られている。各四量体は、2個の同じポリペプチド鎖対を含み、1対は、1本の「軽」鎖(約25kDa)と1本の「重」鎖(約50-70kDa)を含む。各鎖のアミノ末端部分又はフラグメントは、主に抗原認識を行う約100~110個以上のアミノ酸の可変領域を含み得る。各鎖のカルボキシル末端部分又はフラグメントは、主にエフェクター機能を果たす定常領域を限定し得る。通常、ヒト軽鎖をκとλ軽鎖に分類する。さらに、通常、ヒト重鎖をμ、δ、γ、α又はεに、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEに定義する。軽鎖と重鎖では、可変領域と定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域を通じて連結され、重鎖はまた約10個あまりのアミノ酸の「D」領域を含む。一般には、Fundamental Immunology第7章(Paul、W.編、第2版を参照する。Raven Press、N.Y.(1989))。
【0067】
各軽鎖/重鎖対の可変領域はペアリングして抗体結合部位を形成する。したがって、完全なIgG抗体は一般には2個の結合部位を有する。二機能性又は二重特異性抗体以外、2個の結合部位は通常同じである。
【0068】
通常、各鎖は3個の超可変領域(相補性決定領域又はCDR)を通じて連結された同じ比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の通用構造を有する。各対の2本の鎖のCDRは、通常、フレームワーク領域を通じて揃えるとこで特定エピトープと結合する。。総じていえば、軽鎖と重鎖の両方は、N末端からC末端までのドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。一般には、以下の文献における定義に従って、各ドメインのアミノ酸を指定する。Sequences of Proteins of Immunological Interest、Kabatら;National Institutes of Health、Bethesda、Md.;第5版;NIH公告号91-3242(1991);Kabat(1978)Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabatら(1977) J.Biol.Chem.252:6609-6616;Chothiaら(1987) J Mol.Biol.196:901-917又はChothiaら(1989) Nature 342 :878-883。
【0069】
本明細書で使用される用語「超可変領域」とは、抗原結合を行う抗体アミノ酸残基である。超可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」のアミノ酸残基を含む。本明細書で使用される用語「フレームワーク」又は「FR」残基とは、本明細書においてCDR残基と定義されている超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0070】
「有効量」は、医学的な障害の症状又は症候の改善又は予防に十分な量を意味する。有効量は、また、診断を可能に、又は簡便にするのに十分な量を意味する。特定の患者又は獣医対象に対する有効量は、たとえば治療対象の病状、患者の全体的な健康状況、投与の方法や経路、用量や副作用の重症度などの要因に応じて変化し得る。有効量は、明らかな副作用又は毒性作用を回避できる最大用量又は投与態様である。結果として、診断測定又はパラメータは、少なくとも5%、通常少なくとも10%、より一般的には少なくとも20%、最も一般的には少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%、好適には少なくとも70%、更好適には少なくとも80%、最も好適には少なくとも90%改良でき、100%は、正常な受検者で見られる診断パラメータとして定義される(たとえばMaynardら(1996)A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice、Interpharm Press、Boca Raton、FL; Dent(2001)Good Laboratory and Good ClinicalPractice、Urch Publ.、London、UKを参照)。
【0071】
「相同性」とは、2個のポリヌクレオチド配列の間又は2個のポリペプチド配列の間の配列の類似性を指す。比較される2個の配列のうちある位置が同じ塩基又はアミノ酸モノマーサブユニットに占められている場合、たとえば2個のDNA分子のそれぞれのある位置がアデニンに占められている場合、該位置上の分子は相同である。2個の配列間の相同性百分率は、2個の配列が共有するマッチ位置又は相同位置の数を比較される位置数で割って100をかけた関数である。たとえば、配列に対して最適比較を行う場合、2個の配列の10 個の位置のうち6個がマッチし又は相同であると、2個の配列は60%相同である。一般には、2個の配列を比較する場合、最大百分率の相同性を得るために比較を行う。
【0072】
本明細書では、「免疫障害」は、たとえば病理学的炎症、炎症障害、自己免疫障害又は疾患を含む。「免疫障害」は、また、感染、持続感染や増殖性病状、たとえば癌、腫瘍や血管新生を意味し、疫系による根絶に抵抗する感染、腫瘍や癌を含む。「癌性病状」は、たとえば癌、癌細胞、腫瘍、血管新生や前癌病状、たとえば異形成を含む。本明細書で現れる「免疫病巣」と「癌性病状」の両方は好ましくはBTLAを介する。
【0073】
「炎症障害」とは、その病理のすべて又は一部が、たとえば免疫系細胞の数の変化、移動速度の変化や活性化の変化により引き起こされる障害又は病理状況である。免疫系細胞は、たとえばT細胞、B細胞、単球又はマクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹枝状細胞、ミクログリア、NK 細胞、NKT細胞、好中球、好酸球、肥満細胞や免疫学に特に関連する任意の他の細胞、たとえばサイトカイン産生内皮細胞又は上皮細胞を含む。本明細書で現れる「炎症障害」は好ましくはBTLAを介する。
【0074】
「単離核酸分子」とは、ゲノム、mRNA、cDNA又は合成した又はいくちかの組み合わせからのDNA又はRNAを意味し、ポリヌクレオチドのすべて又は一部と会合せず(ここで単離ポリヌクレオチドは天然に存在する)、又は天然に連結されていないポリヌクレオチドと連結されている。本開示内容の目的に関しては、特定ヌクレオチド配列「を含む」「核酸分子」は完全な染色体を含まないと理解すべきである。所定の配列以外、所定の核酸配列「を含む」単離核酸分子は、10個又は20個以上と多い他のタンパク質又はその一部の又はフラグメントのコード配列を含むか、又は効果的に連結されて当該核酸配列のコード領域の発現を制御する調節配列、及び/又はベクター配列を含むことができる。
【0075】
本明細書で使用される「細胞」、「細胞系」及び「細胞培養物」という表現は交換可能に使用され、このような名称はすべて子孫を含む。したがって、用語「形質転換体」と「形質転換細胞」は、接代回数を問わずに、初代表題細胞とそれから得た培養物を含む。また、意図的又は意図的ではない変異により、すべての子孫のDNA内容物は完全に同じではない可能性があることを了解する必要がある。最初の形質転換細胞からスクリーニングした同じ機能又は生物学的活性を有する変異型子孫が含まれている。異なる名称に指定されているが、文脈から明確である。
【0076】
本発明の前記宿主細胞は、原核宿主細胞、真核宿主細胞又はファージであり得る。原核宿主細胞は大腸菌、枯草菌、ストレプトミセス又はミラビリス変形菌などであり得る。真核宿主細胞は、たとえば、ピキア・パストリス、サッカロマイセス・セレビシエ、分裂酵母、トリコデルマなどの真菌;アーミーワームなどの昆虫細胞;タバコなどの植物細胞;BHK細胞、CHO細胞、COS細胞、骨髄腫細胞などの哺乳動物細胞であり得る。いくつかの実施態様では、本発明の前記宿主細胞は、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはBHK細胞、CHO細胞、NSO細胞又はCOS細胞である。
【0077】
本明細書で使用される「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」は一般には、オリゴヌクレオチドプライマーを設計するには目標領域末端又はそれ以外の配列情報が必ず入手可能であり、これらのプライマーは増幅対象テンプレートの反対鎖の配列と同じ又は類似する。2個のプライマーの5′末端ヌクレオチドは増幅材料の末端と一致してもよい。PCRは特定のRNA配列、全ゲノムDNAからの特定DNA配列及び細胞からの全RNA、ファージ又はプラスミド配列で転写されたcDNAなどを増幅することに用いられる。一般にはMullisら(1987)Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263 ;Erlich編(1989)PCR TECHNOLOGY(Stockton Press、N.Y)を参照する。本明細書で使用されるPCRは、(一意ではない)核酸試料を増幅するための核酸ポリメラーゼ反応方法の1つの例であり、該方法は、プライマーとしての既知の核酸と核酸ポリメラーゼを用いて特定の核酸フラグメントを増幅又は産生することを含む。
【0078】
[ヒトBTLA特異的抗体]
本発明は、要するに、BTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメント、及びこのような抗体又はその抗原結合フラグメントの用途を提供する。より具体的には、本発明は、単離抗BTLA抗体又はその抗原結合フラグメント及びこれらの抗体又はその抗原結合フラグメントの、疾患の治療と予防における使用を提供する。抗BTLA抗体の例は、本明細書の前記ch7、ch12、ch17、ch22、ch27、hu17、hu18、及びhu19を含むが、これらに制限されない。
【0079】
本発明はヒトBTLA(B-及びT-リンパ球アテニュエータ)と結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントを提供し、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは以下の1種又は複数種の性質を有する:A)、BTLAとHVEM(ヘルペスウイルスエントリーメディエータ)との結合をブロックすること;B)、カニクイザルBTLAと交差反応すること;C)、ヒトBTLAと結合されたKD≦0.28nM。
【0080】
1つ又は複数の実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖CDRは、SEQ ID NO:7、8、9、10、11、12、16、17、18、22、23、24、31、32及び33から選ばれる少なくとも1つの軽鎖CDRを含む。たとえば、いくつかの実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖CDRのうち、LCDR1はSEQ ID NO:7、10、16、22及び31から選ばれるいずれか1つのCDR配列であってもよく、いくつかの実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖CDRのうち、LCDR2は、SEQ ID NO:8、11、17、23及び32から選ばれるいずれか1つのCDR配列であってもよく、いくつかの実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖CDRのうち、LCDR3は、SEQ ID NO:9、12、18、24及び33から選ばれるいずれか1つのCDR配列であってもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖CDRのうち、LCDR1はSEQ ID NO:7、10、16、22及び31から選ばれるいずれか1つのCDR配列であってもよく、LCDR2はSEQ ID NO:8、11、17、23及び32から選ばれるいずれか1つのCDR配列であり、LCDR3はSEQ ID NO:9、12、18、24及び33から選ばれるいずれか1つのCDR配列である。
【0082】
いくつかの実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントにおいて、その軽鎖のLCDR1、LCDR2及びLCDR3配列は以下のAーE群のうちのいずれか1つの群に示される。
【0083】
【0084】
1つ又は複数の実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖CDRは、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、13、14、15、19、20、21、25、26、27、28、29及び30から選ばれる少なくとも1つの重鎖CDRを含む。たとえば、いくつかの実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖CDRのうち、HCDR1はSEQ ID NO:1、4、13、19、25及び28から選ばれるいずれか1つのCDR配列であってもよく、いくつかの実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖CDRのうち、HCDR2は、SEQ ID NO:2、5、14、20、26及び29から選ばれるいずれか1つのCDR配列であってもよく、いくつかの実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖CDRのうち、HCDR3は、SEQ ID NO:3、6、15、21、27及び30から選ばれるいずれか1つのCDR配列であってもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖CDRのうち、HCDR1は、SEQ ID NO:1、4、13、19、25及び28から選ばれるいずれか1つのCDR配列であり、HCDR2は、SEQ ID NO:2、5、14、20、26及び29から選ばれるいずれか1つのCDR配列であり、HCDR3は、SEQ ID NO:3、6、15、21、27及び30から選ばれるいずれか1つのCDR配列である。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントにおいて、その重鎖CDRのHCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列は、以下のF-K群のうちのいずれか1つの群に示される。
【0087】
【0088】
1つ又は複数の実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖CDRのうち、LCDR1は、SEQ ID NO:7、10、16、22及び31から選ばれるいずれか1つの配列であり、LCDR2は、SEQ ID NO:8、11、17、23及び32から選ばれるいずれか1つのCDR配列でありLCDR3は、SEQ ID NO:9、12、18、24及び33から選ばれるいずれか1つのCDR配列であり、その重鎖CDRのうち、HCDR1は、SEQ ID NO:1、4、13、19、25及び28から選ばれるいずれか1つのCDR配列であり、HCDR2は、SEQ ID NO:2、5、14、20、26及び29から選ばれるいずれか1つのCDR配列であり、HCDR3は、SEQ ID NO:3、6、15、21、27及び30から選ばれるいずれか1つのCDR配列である。
【0089】
1つ又は複数の実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントにおいて、その軽鎖のLCDR、LCDR、及びLCDR配列は以下のAーE群のうちのいずれか1つの群に示される。
【0090】
【0091】
及び/又はその重鎖CDRのHCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列は以下のF-K群のうちのいずれか1つの群に示される。
【0092】
【0093】
本明細書で開示された軽鎖の各CDR配列、特に各LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列と、重鎖の各CDR配列、特に各HCDR1、HLCDR2及びHCDR3配列は、任意に組み合わせられることを理解する必要である。たとえば、本明細書でLCDR1と定義されている配列のうち任意の1本の配列は、本明細書でLCDR2と定義されている配列のうち任意の1本、LCDR3と定義されている配列のうちの任意の1本、HCDR1と定義されている配列のうちの任意の1本、HCDR2と定義されている配列のうちの任意の1本、及びHCDR3と定義されている配列のうちの任意の1本と組み合わせて、本明細書の前記ヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに含まれる完全な6個のCDRドメインを形成し得る。
【0094】
したがって、一例として、1つ又は複数の実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントにおいて、その重鎖CDRのLCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列と、軽鎖CDRのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列は以下のIーIX群のうちのいずれか1つの群に示される。
【0095】
【0096】
1つ又は複数の実施形態では、本発明に係るヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントは、SEQ ID NO:36、37、39、41、44、46、47及び48から選ばれるいずれか1つに示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列、及び/又は、SEQ ID NO:34、35、38、40、42、43及び45から選ばれるいずれか1つに示される重鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。
【0097】
1つ又は複数の実施形態では、本発明の単離抗体は、重鎖定常領域、好ましくはヒト定常領域、たとえばγ1、γ2、γ3又はγ4ヒト重鎖定常領域又はそのバリアントを含む。別の実施形態では、本発明の単離抗体は、軽鎖定常領域、好ましくはヒト軽鎖定常領域、たとえばλ又はκヒト軽鎖領域又はそのバリアントを含む。限定的ではない例として、ヒト重鎖定常領域はγ4、ヒト軽鎖定常領域はκであってもよい。一実施形態では、抗体のFc領域は、保存修飾又は保存置換又は保存変異を有するγ4であり得る。
【0098】
本明細書では、用語「保存修飾バリアント」又は「保存置換」又は「保存変異」とは、タンパク質中のアミノ酸が類似した性質(たとえば電荷、側鎖の大きさ、疎水性/親水性、主鎖のコンホメーションや剛性など)を有するほかのアミノ酸で置換され、それにより、タンパク質の生物学的活性を変えずに頻繁に変化可能にすることを意味する。当業者が理解できるように、ポリペプチドの必須ではない領域の単一のアミノ酸置換は一般には生物学的活性を明らかに変化させることはない(たとえばWatsonら、(1987)Molecular Biology of the Gene、The Benjamin/Cummings Pub.Co.、第224頁(第4版)を参照)。また、構造又は機能的に類似したアミノ酸の置換は生物学的活性を破壊する可能性が低い。本発明の各実施形態の抗体又はその抗原結合フラグメントは、下記配列を有するポリペプチド鎖を含む。本明細書で開示された具体的なアミノ酸配列(たとえばSEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47及び48)と比較するときに、多くとも0(変化無し)、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20個以上の保存アミノ酸置換、たとえば、0~20個のアミノ酸置換、又は1~15、1~10、1~8、1~5個の置換、又は上記の任意の2個の数からなる範囲内での置換を含む。
【0099】
したがって、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントの機能性保存バリアント、即ち、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントの1つ又は複数のアミノ酸残基が抗体全体のコンホメーションと機能を変えずに変化したバリアントをも含み、アミノ酸が類似した性質のアミノ酸で置換されたものを含むが、これらに制限されない。通常、置換数は、前記範囲内であってもよく、0~20個の保存置換が挙げられる。
【0100】
1つ又は複数の実施形態では、本発明のヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントは一本鎖Fv抗体であり、いくつかの実施形態では、該抗体又はその抗原結合フラグメントはFab抗体であり、いくつかの実施形態では、該抗体又はその抗原結合フラグメントはFab'抗体であり、いくつかの実施形態では、該抗体又はその抗原結合フラグメントは(Fab')2抗体である。
【0101】
1つ又は複数の実施形態では、本発明のヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:36に示され、重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:34又は35に示される。
【0102】
1つ又は複数の実施形態では、本発明のヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:37に示され、重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:34又は35に示される。
【0103】
1つ又は複数の実施形態では、本発明のヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:39に示され、重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:38に示される。
【0104】
1つ又は複数の実施形態では、本発明のヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:41に示され、重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:40又は42に示される。
【0105】
1つ又は複数の実施形態では、本発明のヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:44に示され、重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:43に示される。
【0106】
1つ又は複数の実施形態では、本発明のヒトBTLAと結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:46、47又は48に示され、重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:45に示される。
【0107】
本発明は、また、本発明の単離抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする単離核酸、たとえばDNAを提供する。いくつかの実施形態では、本発明の単離核酸は、少なくとも1つの成熟抗体軽鎖可変(VL)ドメインと少なくとも1つの成熟抗体重鎖可変(VH)ドメインとを含む抗体又はその抗原結合フラグメントをコードし、ここでVLドメインは、SEQ ID NO:7-8、10-12、16-18、22-24及び31-33から選ばれる配列を有する少なくとも3個のCDRを含み、VHドメインはSEQ ID NO:1-3、4-6、13-15,19-21、25-27及び28-30から選ばれる配列を有する少なくとも3個のCDRを含む。一実施形態では、単離核酸は、それぞれSEQ ID NO:36とSEQ ID NO:34の成熟軽鎖と重鎖可変領域の配列をコードする。一実施形態では、単離核酸は、それぞれSEQ ID NO:36とSEQ ID NO:35の成熟軽鎖と重鎖可変領域の配列をコードする。一実施形態では、単離核酸は、それぞれSEQ ID NO:37とSEQ ID NO:34の成熟軽鎖と重鎖可変領域の配列をコードする。一実施形態では、単離核酸は、それぞれSEQ ID NO:37とSEQ ID NO:35の成熟軽鎖と重鎖可変領域の配列をコードする。一実施形態では、単離核酸は、それぞれSEQ ID NO:39とSEQ ID NO:38の成熟軽鎖と重鎖可変領域の配列をコードする。一実施形態では、単離核酸は、それぞれSEQ ID NO:41とSEQ ID NO:40の成熟軽鎖と重鎖可変領域の配列をコードする。一実施形態では、単離核酸は、それぞれSEQ ID NO:41とSEQ ID NO:42の成熟軽鎖と重鎖可変領域の配列をコードする。一実施形態では、単離核酸は、それぞれSEQ ID NO:44とSEQ ID NO:43の成熟軽鎖と重鎖可変領域の配列をコードする。一実施形態では、単離核酸は、それぞれSEQ ID NO:46とSEQ ID NO:45の成熟軽鎖と重鎖可変領域の配列をコードする。一実施形態では、単離核酸は、それぞれSEQ ID NO:47とSEQ ID NO:45の成熟軽鎖と重鎖可変領域の配列をコードする。一実施形態では、単離核酸は、それぞれSEQ ID NO:48とSEQ ID NO:45の成熟軽鎖と重鎖可変領域の配列をコードする。1つ又は複数の実施形態では、単離核酸は、単一の核酸分子上の軽鎖と重鎖の両方をコードし、他の実施形態では、2個以上の独立した核酸分子上に軽鎖と重鎖をコードする。
【0108】
本発明は、また、本発明の単離核酸を含む発現ベクターを提供する。また、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。本発明は、また、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントを産生する方法に関する。
【0109】
本発明は、また、本明細書の前記抗体ch7、ch12、ch17、ch22、ch27、hu17、hu18及びhu19と同様にヒトBTLA上の同じエピトープに結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、たとえば本発明の任意の抗体の結合を交差してブロックし得る抗体に関する。
【0110】
[疾患及びその治療又は予防]
本発明は、また、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメント(好ましくはヒト化抗体)を用いて、単離抗体又はその抗原結合フラグメントによる治療を必要とする受検者(ヒト受検者を含む)を治療又は予防する方法を提供する。該方法は、通常、治療又は予防有効量の本発明のいずれか1つの実施形態の前記抗体又はその抗原結合フラグメント、又は前記抗体又はその抗原結合フラグメントを含有する医薬組成物を、これを必要とする対象に、投与することを含む。実際の状況に応じて適切な投与方式を選択する。、この投与方式には、経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、動脈内投与、関節内投与(たとえば関節炎に罹った関節において)、吸入、エアロゾル送達又は腫瘍内投与などが含まれるが、これらに制限されない。
【0111】
受検者は、通常、BTLA媒介性疾患、つまり、BTLA活性の解消、抑制又は低減により改善できる疾患に罹患している。通常、BTLA媒介性疾患は、免疫抑制に関連するすべての疾患であり、自己免疫疾患、移植拒絶反応、腫瘍などを含む。この腫瘍にはメラノーマ、乳癌、腎臓癌、前立腺癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、骨癌、皮膚癌、頭癌又は首癌、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、睾丸癌、食道癌、小腸癌、子宮頸癌、膣癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副腎癌、軟部組織癌、尿道癌、慢性あるいは急性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、小児期固形腫、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎又は尿管癌、腎盂癌、中枢神経系の新生物、原発性中枢神経系リンパ腫、腫瘍血管形成、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、カポジ肉腫、表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、石綿により誘発されるものを含む環境誘発癌、これらの前記癌の組み合わせを含む。自己免疫疾患は、器官特異的自己免疫疾患及び全身性自己免疫疾患を含み、前記器官特異的自己免疫疾患は、慢性リンパ球性甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、インスリン依存性糖尿病、重症筋無力症、潰瘍性結腸炎、慢性萎縮性胃炎を伴う悪性貧血、肺出血腎炎症候群、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、多発性脳脊髄硬化症、急性特発性多神経炎などを含み、前記全身性自己免疫疾患としては、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、全身性血管炎、強皮症、天胞瘡、皮膚筋炎、混合性結合組織病、自己免疫性溶血性貧血、潰瘍性結腸炎などを含む。
【0112】
このような治療方法は、腫瘍ワクチン、標準的な腫瘍化学療法の治療薬、他の免疫誘導剤などの1つ以上の他の治療薬を投与することも含むことができる。
【0113】
[薬入れ]
本発明はまた、本発明の併用薬の成分を含む薬入れの形態の薬入れを提供する。本発明の薬入れは、1種又は複数種の成分を含み、このような成分には、本明細書の前記BTLAと特異的結合する抗体又は抗原結合フラグメント(たとえば抗体ch7、ch12、ch18、ch22、ch27、hu17、hu18及びhu19が挙げられるが、上記抗体に制限されない)と1種又は複数種の他の成分が含まれるが、これらに制限されなく、本明細書の前記薬学的に許容される担体及び/又は化学療法薬、が含まれるが、これらに制限されない。前記抗体又は抗原結合フラグメント及び/又は化学療法薬を単なる組成物にするか、又は医薬組成物において薬学的に許容される担体と組み合わせることができる。
【0114】
一実施形態では、薬入れは、1つの容器(たとえば滅菌ガラス又はプラスチックバイアル)における本発明の抗体又はその抗原結合フラグメント(たとえば抗体ch7、ch12、ch17、ch22、ch27、hu17、hu18及びhu19が含まれるが、上記抗体に制限されない)又はその医薬組成物と、別の容器(たとえば滅菌ガラス又はプラスチックバイアル)における本発明の抗体又はその抗原結合フラグメント又はその医薬組成物及び/又は化学療法薬と、を含む。
【0115】
本発明の別の実施形態では、薬入れは、本発明の併用薬を含み、単一の共用容器における抗体又は抗原結合フラグメント(たとえば抗体ch7、ch12、ch17、ch22、ch27、hu17、hu18及びhu19が挙げられるが、上記抗体に制限されない)が薬学的に許容される担体とともに、必要に応じて配合した1種又は複数種の化学療法薬の成分と併用して、必要に応じて医薬組成物に用いる場合を含む。
【0116】
薬入れは薬入れに収納された医薬組成物と剤形の情報を含む薬品の取扱書を含んでもよい。このような情報は一般には患者や医者が当該医薬組成物及び剤形を効果的かつ安全に使用することを補助する。たとえば、薬品の取扱書において、本発明の併用薬に関する以下の情報を提供することができる。薬物動態、薬効学、臨床研究、効果パラメータ、適応症と用法、禁忌症、警告事項、予防措置、副作用、過剰使用、適切な用量と投与、供給仕様、適切な保管条件、参照、メーカー/卸売業者情報、特許情報。
【0117】
[医薬組成物及び投与]
本発明は、本明細書の前記いずれか1つの抗ヒトBTLA抗体又はその抗原結合フラグメントを含有する医薬組成物も含む。本明細書で使用される用語「医薬組成物」は、ある特定の目的を達成するために一緒に組み合わされる少なくとも1つの医薬品と、必要に応じて薬学的に使用可能な担体又は補助材料との組み合わせを意味する。いくつかの実施態様では、本発明の目的を達成するために協働し得る限り、前記医薬組成物は、時間的及び/又は空間的に分離された組み合わせを含む。たとえば、前記医薬組成物に含まれる成分は(たとえば、本発明の抗体、核酸分子、核酸分子の組み合わせる及び/又は抱合体に応じて)全体として対象に投薬するか、又は別々対象に投薬することができる。前記医薬組成物に含まれる成分が別々対象に投薬される場合、前記成分は同時に又は順次対象に投薬できる。好ましくは、前記薬学的に使用可能な担体は、水、緩衝水溶液、PBS(リン酸塩緩衝液)などの等張食塩溶液、グルコース、マニトール、デキストロース、乳糖、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、炭酸マグネシウム、0.3%グリセリン、ヒアルロン酸、エタノール又はポリアルキレングリコールたとえばポリプロピレングリコール、トリグリセリドなどである。使用される薬学的に使用可能な担体のタイプは、特に、本発明に係る組成物が経口投与、経鼻投与、皮内投与、皮下投与、筋内投与又は静脈投与用として調製されるかどうかにより決まる。本発明に係る組成物は、湿潤剤、乳化剤又は緩衝液物質を添加剤として含むことができる。本発明の免疫抱合体は、治療剤と結合する本明細書のいずれか1つの実施形態の前記抗体又はその抗原結合フラグメントを含有することができ、好ましくは前記治療剤は、本分野で周知しておる、免疫抱合体の製造によく使用される免疫毒素、放射性同位体、医薬品又は細胞傷害性剤である。
【0118】
本発明の抗ヒトBTLA抗体又はその抗原結合フラグメントの医薬組成物又は無菌組成物を製造するために、該抗体又はその抗原結合フラグメントと薬学的に許容される担体又は賦形剤とを混合することができる。たとえばRemington's Pharmaceutical Sciences and U.S.Pharmacopeia :National Formulary、Mack Publishing Company、Easton、PA(1984)を参照する。
【0119】
本発明の医薬組成物を本分野で公知する各種の適切な投与剤形に製造することができる。この剤形には、凍結乾燥粉、膏剤、水溶液剤又は懸濁剤などが含まれるが、これらに制限されない。許容される担体、賦形剤又は安定化剤と混合することで以下の形態の治療剤と診断剤の剤形を製造することができる。たとえば凍結乾燥粉、膏剤、水溶液剤又は懸濁剤(たとえばHardman ら(2001)Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics、McGraw-Hill、New York、 NY ;Gennaro (2000) Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott、Williams、及びWilkins、New York、NY ;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms :Parenteral Medications、Marcel Dekker、NY ;Lieberman ら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms :Tablets、Marcel Dekker、NY ;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms :Disperse Systems、Marcel Dekker、NY ;Weiner及びKotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety、Marcel Dekker、Inc.、New York、NYを参照)。
【0120】
投与態様は、治療用抗体の血清又は組織回転率、症状のレベル、治療用抗体の免疫原性及び生物学的マトリックスにおける標的細胞のアクセス可能性を含むいくつかの因素によるものである。好ましい投与態様では、十分な治療用抗体を送達することで、不良な副作用を最低にしながらターゲット疾患の状態を改善する。したがって、送達する生物学的薬剤(biologic)の量は、部分的には具体的な治療用抗体と治療対象の病状の重症度により決まる。適切な用量の治療用抗体の選択についての指導を取得できる(たとえばWawrzynczak(1996)Antibody Therapy、Bios Scientific Pub.Ltd、Oxfordshire、UK ;Kresina(編)(1991)Monoclonal Antibodies、Cytokines and Arthritis、Marcel Dekker、New York、NY ;Bach(編)(1993)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases、Marcel Dekker、New York、NY ;Baertら(2003)New Engl.J.Med.348 :601-608 ;Milgromら(1999)New Engl.J.Med.341: 1966-1973 ;Slamonら(2001)New Engl.J.Med.344 :783-792 ;Beniaminovitzら(2000)New Engl.J.Med.342 :613-619 ;Ghoshら(2003)New Engl.J.Med.348 :24-32 ;Lipskyら(2000) New Engl.J.Med.343 :1594-1602を参照)。
【0121】
[使用]
本発明は、本明細書のいずれか1つの実施形態の前記抗BTLA抗体及びその抗原結合フラグメントの、BTLA媒介性疾患の治療、予防及び診断における使用を提供する。いくつかの実施態様では、本発明は、BTLA媒介性疾患を治療、予防及び診断するための本明細書のいずれか1つの実施形態の前記抗BTLA抗体及びその抗原結合フラグメントを提供する。
【実施例】
【0122】
本発明のいくつかの好ましい実施形態及び態様を証明し、さらに解釈するために以下の実施例を提供し、本発明の範囲を制限すると解釈られない。
【0123】
[実施例1、真核発現プラスミドへのヒトBTLA細胞外ドメインのクローン]
Sino Biological Inc.からヒトBTLA遺伝子cDNA配列を含有するプラスミドHG11895ーGーNを購入し、フォワードプライマー5'-gtacGCTCTTCATGTaaagaatcatgtgatgtacagcttta-3'(SEQ ID NO:50)とリバースプライマー5'-gatcGCTCTTCTAGCatacaggagccagggtctgcttgcca-3'(SEQ ID NO:51)、PCRを用いてヒトBTLA細胞外フラグメント(ヌクレオチド配列はSEQ ID NO:49に示される)を増幅した。増幅フラグメントをBSPQIで酵素消化した後、自作した真核発現プラスミドシステム(HX1-FC)に挿入し、ヒトBTLA細胞外ドメインタンパク質(hBTLA-ECD-FC)の発現プラスミドを生成した。このプラスミドを用いてPEIにより293E細胞をトランスフェクションし、6日間後、培地上清を収集して、アフィニティークロマトグラフィーによりヒトBTLA細胞外ドメイン組換えタンパク質(hBTLA-ECD-FC)を精製した。
図1はヒトBTLA細胞外ドメインタンパク質のSDS-PAGE電気泳動図を示す。
【0124】
[実施例2、FACSによる組換えタンパク質hBTLA-ECD-FCと細胞上のヒトHVEMの結合の検出]
ヒトHVEM(Gene Bank:NP_003811.2)を発現させた293F安定トランスフェクション細胞株の構築(hHVEM-293F)。hHVEM-293F細胞懸濁液とビオチン標識hBTLA(300ng/mL)とを混合し、室温で30分間インキュベートした。FACS緩衝液で細胞を3回洗浄した後、5μg/mlのNA-PEを加えて30分間インキュベートした。FACS緩衝液で細胞を3回洗浄した後、フローサイトメーター検出によりBTLA組換えタンパク質と293F細胞表面のHVEMとの結合を確認した。結果を
図2に示す。
【0125】
[実施例3、抗BTLAマウス抗体の製造]
<3.1、動物免疫>
実施例1で得られた組換えタンパク質hBTLA-ECD-FCを抗原として等量の免疫アジュバント(フロイントアジュバント)と混合し、5匹の6週齢の雌Balb/eラットを皮下免疫した。最初免疫以降、2週間おきにブースト免疫を1回行い、合計6回免疫した。
<3.2、細胞融合>
最後のブースト免疫後、マウスの股間のリンパ節を取り、生理食塩水にてミーリングした後、リンパ球を豊富に含む懸濁液を、一般的なエレクトロトランスフェクション方法(BTX社のエレクトロトランスフェクション装置のハンドブックを参照)に従ってSP2/0細胞と融合した。融合細胞を、HATを含有するDEMM完全培地(Corning)にて8%CO2、37℃条件で培養した。
【0126】
[実施例4、ハイブリドーマ細胞のスクリーニング実験]
11500株の異なるポリクローナルハイブリドーマ細胞において、酵素(ELISA)反応により、560株の分泌した、抗体がヒトBTLAタンパク質に結合し得るクローンをスクリーニングした。この560株のクローンのうち、33株は293F細胞で発現させたBTLAに結合でき、この33株のクローンのうち、16株はビオチン標識ヒトBTLAと293F上HVEMとの結合を抑制する能力を有する。ここでこの16株のクローンのうちの前の4株(2D12、3B3、3E3、及び6A7)を重点として検討し、後続実験を行い、具体的なスクリーニングの実験方法を以下に示す。
<4.1、ELISAによるハイブリドーマ抗体とhBTLAとの結合の検出>
酵素反応(ELISA)により、分泌した抗体がhBTLAに結合するハイブリドーマ細胞株をスクリーニングした。384ウェルマイクロプレートを、1μg/mlのhBTLAで被覆し、4℃で一晩インキュベートした。次に、ウェル内の溶液を捨てて、洗浄緩衝液で回3洗浄し、1% BSAを含有するPBS溶液を加えて60分間ブロックした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、ハイブリドーマ培養上清を加え、室温で60分間インキュベート後、洗浄緩衝液で3回リンスした。その後、1:5000倍で希釈したHPR標識ヤギ抗マウスIgG二次抗体を加え、室温で30分間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回リンスした後、30μl TMB基質溶液を加えて発色させ、室温で10分間反応させた後、30μlの塩酸溶液(2M)で反応を停止し、450nmで吸光度を読み出した。
<4.2、ELISAによるハイブリドーマ抗体結合hBTLAの種特異性の検出>
酵素反応(ELISA)によりハイブリドーマの分泌した抗体がカニクイザルBTLAに結合するハイブリドーマ細胞株をスクリーニングした。96ウェルマイクロプレートを、1μg/mlのカニクイザルBTLAで被覆し、室温で60分間インキュベートした。次に、ウェル内の溶液を捨てて、洗浄緩衝液で回3洗浄し、1% BSAを含有するPBS溶液を加えて60分間ブロックした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、ハイブリドーマ培養上清を加え、室温で60分間インキュベート後、洗浄緩衝液で3回リンスした。その後、1:5000倍で希釈したHPR標識ヤギ抗マウスIgG二次抗体を加え、室温で30分間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回リンスした後、100μl TMB基質溶液を加えて発色させ、室温で10分間反応させた後、100μlの塩酸溶液(2M)で反応を停止して450nmで吸光度を読み出した。
<4.3、FACSによるハイブリドーマ抗体のBTLAとHVEM結合へのブロック作用の検出>
33株の抗体培養液の上清とビオチン標識ヒトBTLA(300ng/mL)とを混合し、室温で30分間インキュベートした。その後、混合物とhHVEMー293F安定トランスフェクション細胞株懸濁液とを室温で30分間インキュベートした。FACS緩衝液で細胞を3回洗浄した後、5μg/mlのNA-PEを加えて30分間インキュベートした。FACS緩衝液で細胞を3回洗浄した後、フローサイトメーター検出により、ハイブリドーマ細胞の分泌した抗体がヒトBTLAと293F細胞表面のHVEMとの結合をブロックする作用を有することを確認した。
【0127】
[実施例5、候補抗体の可変領域配列の取得(Kabat又はIMGTで示される)]
縮重プライマーPCRに基づく方法により、候補ハイブリドーマで発現させたマウス抗体可変領域のDNA配列を測定した。簡単に言えば、ハイブリドーマ細胞株をそれぞれ拡大培養し、1000rpmで遠心分離して細胞を収集し、Trizolで全RNAを抽出した。これをテンプレートとして、第1の鎖cDNAを合成した後、第1の鎖cDNAを後続のテンプレートとしてPCRにより対応する可変領域配列を増幅し、使用されるPCRプライマーはIg-プライマー群に基づくものである。PCR産物を回収して精製し、増幅産物をシーケンシングしたところ、候補ハイブリドーマの重鎖可変領域と軽鎖可変領域配列が得られた。
【0128】
NCBI Ig-Blast(http://www.ncbi.nlm.nih. gov/projects/igblast/)を用いて生殖細胞系と再配置Ig可変領域配列データベースから共有配列を検索した。Kabat(Wu,T.T及びKabat,E.A. 1970 J.Exp.Med.、132:211-250)及びIMGTシステム(Lefranc M.-P.ら、1999 Nucleic Acids Research,27,209-212)に基づき、配列注釈及びインターネットに基づく配列分析(http://www. Imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/index.htmlとhttp://www.ncbi.nlm.nih. gov/igblast/)を通じて相補性決定領域(CDR)を同定した。
【0129】
ハイブリドーマ細胞がコードする軽鎖と重鎖可変領域及びCDRのアミノ酸配列は以下に示され(ここで太字の下線を付いた部分はKabatシステムに従って分類されたCDRsであり、太字斜体はIMGTシステムに従って分類されたCDRsである):
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
[実施例6、キメラ抗体発現ベクターの構築]
標準的なPCR技術により候補マウス抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域の遺伝子をそれぞれヒトIgG4のFC及びκ鎖定常領域のN末端に融合し、pcDNA3.1ベクターに挿入することにより、キメラ型重鎖又は軽鎖の発現プラスミドを構築した。後続のキメラ抗体はすべて上記重鎖と軽鎖の発現ベクタープラスミドを2つずつ組み合わせて発現細胞をトランスフェクションした後、精製して抽出することにより得られ、キメラ抗体ch7、ch12、ch17、ch22及びch27が得られた。ハイブリドーマ細胞がコードする軽鎖と重鎖の可変領域及びCDRのアミノ酸配列は以下に示される。
【0134】
【0135】
【0136】
[実施例7、ELISAによるキメラ抗体とhBTLAとの結合の検出]
酵素反応(ELISA)によりキメラ抗体のhBTLAとの結合能力を検出した。0.5μg/mlのhBTLAで96ウェルマイクロプレートを被覆し、37℃の恒温で60分間インキュベートした。次に、ウェル内の溶液を捨てて、洗浄緩衝液で回3洗浄し、2% BSAを含有するPBS溶液を加えて60分間ブロックした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、勾配希釈した抗体を加え、37℃で60分間インキュベート後、洗浄緩衝液で3回リンスし、その後、1:10000倍で希釈したHRP標識マウス抗ヒトIgG4二次抗体を加え、37℃で1時間インキュベートして、洗浄緩衝液で3回リンスした後、100μl TMB基質溶液を加えて発色させ、室温で30分間反応後、100μl2Mの塩酸溶液で反応を停止し、450nmで吸光度を読み出した。
結果として、
図3に示すように、キメラ抗体ch7、ch12、ch17、ch22及びch27はhBTLAと特異的結合し得る。そのEC
50値を下表1に示す。
【0137】
【0138】
[実施例8、FACSによるキメラ抗体のBTLAとHVEMとの結合へのブロック作用の検出]
FACSにより、キメラ抗体の、hBTLAが293F細胞上のhHVEMに結合して発現することへのブロック能力を検出した。hHVEM-293Fを細胞に安定的に発現させて消化した後、遠心分離してFACS緩衝液に再懸濁させ、細胞量が2.5×10
4個の/50ulとなるように96ウェル丸底板のウェルに加え、予めビオチンで標識させたhBTLA(1ug/ml)タンパク質を加えて混合し、4°Cで15分間インキュベートし、次に、50ulの異なる濃度のキメラ抗体希釈液(開始は5ug/ml、3倍で滴定)を加えて均一に混合し、室温で30minインキュベートし、FACS緩衝液で細胞を2回洗浄した後、100ulヤギ抗ヒトIgGーPE抗体を加え、遮光下30minインキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄した後、FACS検出を行った。洗浄した細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)及びレシピエント生体の内在化を防止する0.02%アジ化ナトリウムを含有する4°C緩衝剤に再懸濁させた後、フローサイトメトリーにより分析した。FSC/SSCゲートからPI陽性細胞を排除し、生細胞についてゲート制御を行い、その幾何学的平均蛍光強度(MFI)を計測した。Prism
TMソフトウェアのS形用量-応答モデルを用いてデータを分析した。
結果として、
図4と下記表2に示すように、キメラ抗体ch12、ch17、ch22、及びch27は、ヒトBTLAと細胞表面のHVEMとの結合を効果的にブロックできる。
【0139】
【0140】
[実施例9、ルシフェラーゼレポーター遺伝子実験による、キメラ抗体のT細胞活性への影響の検出]
抗原提示細胞(APC)において主な組織適合性複合体I類又はクラスIIタンパク質を通じて提示した特異性ペプチドのT細胞受容体(TCR)を刺激により識別することにより、T細胞を活性化させた。活性化させたTCRはシグナリングイベントのカスケードを起動させ、これは、転写因子(たとえば活性化子-タンパク質-l(APーI)、活性化させたT細胞の核因子(NFAT)又は活性化させたB細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー(NFκb))により駆動されるレポーター遺伝子を通じて監視できる。T細胞への構成又は誘導発現させた共同受容体の接合(engagement)によりT細胞応答を調整した。プログラム細胞死タンパク質(PD1)とBTLAはT細胞活性の負の調整物である。PDー1とBTLAはそれぞれAPC又は癌細胞を含む標的細胞で発現させたそのリガンド(PDーL1)及びHVEMと相互作用し、このような相互作用により、ホスファターゼをTCRシグナルサム(signalosome)に集めて抑制シグナルを送達することで、ポジティブシグナル伝達の抑制を発生させる。2個のエンジニアリングされた安定発現細胞系Jurkat細胞(Jurkat/NFATーLuc/hPD-1ーhBTLA)とCHO細胞(CHO/hPDーL1/hHVEM)を構築して、APCとT細胞の間の相互作用により誘導されたT細胞シグナル伝達を測定した。
【0141】
hPDーL1/hHVEMを安定的に発現させたCHO細胞を96ウェル板に接種し、各ウェルの細胞量を5×10
4とし、37℃、7%CO
2で一晩培養し、細胞上清を除去し、ウェルごとに40ulキメラ抗BTLA抗体希釈液(開始濃度60ug/ml、3倍で滴定)を加え、40ulを加えるとhPDーL1/hBTLA/NFAT-ルシフェラーゼのJurkatレポーター細胞を持続的に発現でき、全細胞数を1×10
5細胞とし、37℃、7%CO
2で6時間培養し、ルシフェラーゼ試薬を加え、マイクロプレートリーダーにより発光値を検出した。
結果として、
図5と下記表3に示すように、キメラ抗体ch12、ch17、ch22、及びch27はBTLAとPDー1を介するT細胞活性抑制作用を効果的に抑制できる。
【0142】
【0143】
[実施例10、抗体のヒト化改変]
上記で得たハイブリドーマ細胞の分泌した抗体の可変領域配列に従って、ヒト化改変を行った。簡単に言えば、ヒト化改変の過程には、以下のステップを含む。
A、各ハイブリドーマ細胞の分泌した抗体の遺伝子配列とヒト胚性抗体の遺伝子配列とを比較し、相同性の高い配列を探す。
B、HLAーDR親和性を分析して調べて、親和力の低いヒト胚性フレームワーク配列を選択する。
C、コンピュータシミュレーション技術を利用して、分子ドッキングにより可変領域及びその周辺のフレームワークアミノ酸配列を分析し、その空間的な結合方式を調べる。静電力、ファンデルワールス力、親疎水性やエントロピー値を計算することにより、各ハイブリドーマ細胞の分泌した抗体の遺伝子配列のうちhBTLAと作用して空間フレームワークをメンテナンスし得る重要な単一のアミノ酸を分析し、それを、選択されたヒト胚性遺伝子フレームワークにグラフトし、これに基づいて、保留しなければならないフレームワーク領域のアミノ酸の部位をマークし、ヒト化抗体を合成した(Pini, A.ら, et al. (1998). design and use of a phage display library: human antibodies with 10 subnanomolar affinity against a marker of angiogenesis eluted from a two-dimensional gel.,Journal of Biological Chemistry, 273(34): 21769-21776)。これに基づいて以下の複数のヒト化抗体が得られた。それには、クローンとして、hu17、hu18及びhu19が含まれる。
【0144】
hu17:
重鎖アミノ酸配列SEQ ID NO:45;
軽鎖アミノ酸配列SEQ ID NO:46;
hu18:
重鎖アミノ酸配列SEQ ID NO:45;
軽鎖アミノ酸配列SEQ ID NO:47;
hu19:
重鎖アミノ酸配列SEQ ID NO:45;
軽鎖アミノ酸配列SEQ ID NO:48。
【0145】
[実施例11、ELISAによるヒト化抗体とhBTLAとの結合の検出]
通常のELISA検出方法によりヒト化抗体とhBTLAとの結合特異性を検出した。0.5μg/mlのhBTLAで96ウェルマイクロプレートを被覆し、37℃の恒温で60分間インキュベートした。次に、ウェル内の溶液を捨てて、洗浄緩衝液で回3洗浄し、2% BSAを含有するPBS溶液を加えて60分間ブロックした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、勾配希釈した抗体を加え、37℃で60分間インキュベートした後、洗浄緩衝液で3回リンスし、その後、1:10000倍で希釈したHPR標識マウス抗ヒトIgG4二次抗体を加え、37℃で1時間インキュベートし、洗浄緩衝液で3回リンスした後、100μl TMB基質溶液を加えて発色させ、室温で30分間反応後、100μl 2Mの塩酸溶液で反応を停止して、450nmで吸光度を読み出した。
結果を
図6に示し、ヒト化抗体hu17、hu18、及びhu19は、hBTLAと特異的に結合し得る。そのEC
50値を下表4に示す。
【0146】
【0147】
[実施例12、FACSによる、ヒト化抗体と293F細胞上のhBTLAとの結合の検出]
細胞に基づくフローサイトメトリー(FACS)により、ヒト化抗BTLA抗体と細胞で発現させたhBTLAとの結合能力を測定した。hBTLAを発現させた293F細胞を消化した後、遠心分離してFACS緩衝液に再懸濁させ、細胞量が2.5×10
4、体積が50ulとなるように、96ウェル丸底板のウェルに加え、50ulの異なる濃度の抗体希釈液(開始濃度10ul/ml、3倍で滴定)を加えて均一に混合し、室温で30minインキュベートし、FACS緩衝液で細胞を2回洗浄した後、100ulのヤギ抗ヒトIgGーPE抗体を加え、遮光下30minインキュベートし、FACS bufferで2回洗浄した後、FACS検出を行った。洗浄した細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)及びレシピエント生体の内在化を防止するための0.02%アジ化ナトリウムを含有する4°C緩衝剤に再懸濁させた後、フローサイトメトリーにより分析した。FSC/SSCゲートからPI陽性細胞を排除し、生細胞に対してゲート制御を行い、その幾何学的平均蛍光強度を計測した。Prism
TMソフトウェアのS形用量-応答モデルを用いてデータを分析した。
結果として、
図7に示すように、ヒト化抗体hu17、hu18、hu19、及び293F細胞上のhBTLAは効果的に結合できる。各抗体のEC50値を下記表5に示す。
【0148】
【0149】
[実施例13、FACSによるヒト化抗体のBTLAとHVEMとの結合へのブロック作用の検出]
細胞に基づくフローサイトメトリー(FACS)により測定し、hBTLAが293F細胞上の hHVEMに結合されて発現することに対するヒト化抗体のブロック能力を検出した。hHVEMー293Fを安定的に発現させた細胞を消化した後、遠心分離してFACS緩衝液に再懸濁させ、細胞量が2.5×10
4個、体積が50ulとなるように、96ウェル丸底板のウェルに加え、予めビオチンで標識させたhBTLA(1ug/ml)タンパク質を加えて混合し、4°Cで15分間インキュベートし、次に、50ulの異なる濃度のヒト化抗体希釈液(開始5ug/ml、3倍で滴定)を加えて均一に混合し、室温で30minインキュベートし、FACS緩衝液で細胞を2回洗浄した後、100ulのヤギ抗ヒトIgG-PE抗体を加え、遮光下30minインキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄した後、FACS検出を行った。洗浄した細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)及びレシピエント生体の内在化を防止するための0.02%アジ化ナトリウムを含有する4°C緩衝剤に再懸濁させた後、フローサイトメトリーにより分析した。FSC/SSCゲートからPI陽性細胞を排除し、生細胞に対してゲート制御を行い、その幾何学的平均蛍光強度を計測した。Prism
TMソフトウェアのS形用量-応答モデルを用いてデータを分析した。
結果として、
図8に示すように、ヒト化抗体hu17、hu18、hu19は、BTLAと細胞表面のHVEMとの結合を効果的にブロックできる。各抗体のIC50値を下記表6に示す。
【0150】
【0151】
[実施例14、ヒト化抗BTLA抗体によるT細胞活性化の促進]
hPDーL1/hHVEMを安定的に発現させたCHO細胞を96ウェル板に接種し、各ウェルの細胞量を5×10
4とし、37℃、7%CO
2で一晩培養し、細胞上清を除去し、ウェルごとに40ulのヒト化抗BTLA抗体希釈液(開始濃度60ug/ml、3倍の濃度で勾配希釈)を加え、hPDー1/hBTLA/NFAT-ルシフェラーゼのを持続的に発現できる40ulのJurkatレポーター細胞を加え全細胞数を1×10
5細胞とし、37℃、7%CO
2で6時間培養し、ルシフェラーゼ試薬を加え、マイクロプレートリーダーにより発光値を検出した。
結果として、
図9に示すように、ヒト化抗BTLA抗体hu17、hu18は、T細胞活性化を効果的に促進できる。各抗体のEC50値を下記表7に示す。
【0152】
【0153】
[実施例15、ヒト化抗BTLA抗体とhBTLAとの親和力]
GEヘルスケアライフサイエンス社製のBiacore T200装置を用いて検出実験を行い、Series S CM5チップを装置にセットし、系の緩衝液としてHBS-EP+(10mM HEPES、pH 7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%界面活性剤P20)を用いた。BTLAーFc抗原をチップの検出チャンネルにおいて結合し、400mM EDC与100mM NHSの混合液を10μL/minで420sかけて活性化チップの表面に注入し、BTLA-Fc抗原を、10mM酢酸ナトリウム/酢酸(pH 5.5)緩衝液に希釈して、最終濃度を20μg/mLとし、10μL/minで注入して結合し、1Mエタノールアミン-塩酸溶液(pH 8.5)を10μL/minで注入し420sかけてブロックした。
【0154】
Biacore系緩衝液を用いて抗体を2倍で勾配希釈し、合計6個の濃度点がある。濃度勾配は、24nM、12nM、6nM、3nM、1.5nM、及び0.75nMであり、これらのうち、24nMは重複テストである。データ分析には、GEヘルスケアライフサイエンス社製のデータ分析ソフトウェアBiacore T200 Evaluation Softwareバージョンナンバー3.0が使用された。データフィッティングには、モデル1:1 Bindingが使用される。フィッティングにより抗体と抗原との間の結合の速度定数である結合速度Ka(1/Ms)、解離速度Kd(1/s)、親和力定数KD(M)が得られ、結果は表8に示される。
【0155】
【0156】
[実施例16、ヒト化抗体とさまざまな種BTLAとの結合の速度論的特性]
キメラ抗体とカニクイザル由来及びマウス由来のBTLAとの間の交差反応を検出するために、Fortebio検定が使用された。簡単に言えば、ヒトBTLA、カニクイザルBTLA又はマウスBTLAを活性化させたCM5生物学的センサチップに結合して、約100~200個の応答単位(RU)を得て、その後、IMエタノールアミンで未反応基をブロックした。30回/分間でSPR作動緩衝液に、0.12nMから90nMまで濃度が増加していくヒト化抗体サンプルを注射し、空白流動室からのRUを減算することにより異なる種源BTLAの場合の結合応答を算出した。
結果を
図10に示す。hu17とさまざまな種BTLAとの結合の比較結果から明らかなように、hu17は、ヒトBTLAと高親和力を有するだけでなく、カニクイザル由来BTLAとは類似した親和力を有し、しかし、マウスBTLAとはほぼ結合しなかった。
【0157】
[実施例17、ヒト化抗体によるマウス腫瘍成長への抑制作用]
MC38細胞(ATCC)にHxpーhHVEMプラスミドをエレクトロトランスフェクションして、MC38ーhHVEM細胞バンクを構築し、その後、限界希釈法により細胞サブクローンを行い、フローサイトメーターにより単一クローンをスクリーニングし、MC38ーhHVEM細胞を得て、次に、MC38-hHVEM細胞を1×106個の/0.1mL濃度でBーhBTLAヒト化雌マウスの右側の皮下に接種し、腫瘍が約118mm3まで成長すると、腫瘍の体積に応じてランダムに群分け、1群を8匹とし、合計5群に分け、それぞれ、G1 0.9%塩化ナトリウム注射液溶剤対照群、G2 KLH(10mg/kg)陰性対照群、G3 hu18(1mg/kg)群、G4 hu18(3mg/kg)群及びG5 hu18(10mg/kg)群とした。すべての群の投与経路は腹腔内注射とし、1週間ごとに2回投与し、連続的に7回投与し、最後回の投与4日間後、実験を終了した。毎週腫瘍の体積及び体重を2回測定し、マウスの体重と腫瘍の体積を記録した。実験終了時、動物を安楽死させ、腫瘍を取り重量を測り、写真を撮り、相対腫瘍抑制率(TGITW%)を算出した。
【0158】
各群の試験品によるMC38-hHVEM細胞移植BーhBTLAマウスの腫瘍体積への影響の結果を表9及び
図11に示す。初回投与してから21日間後、KLH(10mg/kg)陰性対照群の平均腫瘍体積は1560±256mm
3であり、他の投与群の平均腫瘍体積はそれぞれ1073±224mm
3、747±268mm
3、及び868±211mm
3であった。各投与群とKLH陰性対照群とを比較すると、TGI
TVpはそれぞれ33.7%、56.4%、及び48.0%であり、P値はそれぞれ0.175、0.046、及び0.056であり、このことから、試験医薬品hu18は、3mg/kg用量のレベルでは、腫瘍成長に対して一定の抑制作用を有することが示された。
【0159】
【0160】
各群の試験品によるMC38-hHVEM細胞移植BーhBTLAマウスの体重への影響結果を表10と
図12に示す。すべての実験動物は、投与期間に亘って、活動や摂食の状態が良好であり、各投与群の動物の体重には一定の程度の上昇が認められた。実験期間には実験動物の死亡がなかった。投与してから21日間後、KLH陰性対照群のマウスの体重と比較すると、各投与群のマウスの体重には有意な変化がなく(P>0.05)、このことから、実験動物の試験品への抵抗性が良好であることは分かった。
【0161】
【0162】
[実施例18、ヒト化抗体hu18にはADCC効果や機能がなかった]
抗体が細胞表面の標的タンパク質に結合され、その後、エフェクター細胞で発現させたFcγ受容体(FcγR)に連結されると、ADCCを起動させた。ヒトIgG1はFcγRに対し、特にFcγR-I及びFcγR-IIIAに対して、IgG4よりも明らかに高い結合親和力を示すことが明確に記載されている。この親和力はADCCを活性化するIgG1の強度と関わっている。ADCCに関しては、抗体が細胞表面のターゲット及びC1qタンパク質と架橋し、次に、補体複合体形成及び標的細胞分解のカスケード反応時、CDCが活性化された。ADCC及びCDCの代理として、抗体のFcγR及びC1qへの結合の検出は、ADCC及びCDCCの基本指標として機能できる。したがって、本発明では、biacoreT200(GE)を用いて、モノクローナル抗体の主なFcγRへの結合の速度論的親和力を評定した。
【0163】
GEの抗-His抗体はセンサウエハに固定されている。組換えヒトFcγRIIA(CD16a)V176、組換えヒトFcγRIIA(CD32a)V167、組換えヒトFcγRI(CD64)、及び組換えヒトFcRnを含む各種のFc受容体がキャプチャーされ、その後、一連の希釈した組換えヒト抗-BTLA抗体(即ちhu18)が注射され、相互作用の結合性質が検出されて分析された。hu18はIgG4サブタイプ抗体であり、hu18-IgG1はIgG1サブタイプであり、hu18とは同じFabを共有し、陽性対照とされた。
【0164】
結果として、表11に示すように、IgG1サブタイプの対照抗体に比べて、IgG4サブタイプの組換えヒト抗-BTLA抗体は、Fc受容体との結合が弱く、hu18抗体は、IgG1サブタイプ対照抗体に比べて、FcγRIIA(CD16a)V176との相互作用が400倍弱くなった。このことからhu18はADCC効果が低く又はなかったことが分かった。表12に示すように、hu18抗体はC1qと結合せず、一方、hu18-IgG1抗体はC1qと結合できる。
【0165】
【0166】
【配列表】